特許第6751330号(P6751330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6751330セメントアスファルトてん充層の補修用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751330
(24)【登録日】2020年8月18日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】セメントアスファルトてん充層の補修用組成物
(51)【国際特許分類】
   E01B 37/00 20060101AFI20200824BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20200824BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   E01B37/00 C
   C08F2/38
   C08F2/44 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-196343(P2016-196343)
(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公開番号】特開2018-59301(P2018-59301A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】柳田 学
(72)【発明者】
【氏名】西田 聖ニ
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−098527(JP,A)
【文献】 特開平07−330837(JP,A)
【文献】 特開2008−057318(JP,A)
【文献】 特開平09−208641(JP,A)
【文献】 特開2001−164152(JP,A)
【文献】 室伏克己,多官能二級チオールを用いたUV硬化組成物の特性,色材協會誌,日本,一般社団法人 色材協會,2010年 6月20日,第83巻第6号,pp.263-269
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 37/00
C08F 2/38 − 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンアクリレート樹脂、骨材、硬化剤、及びチオール化合物を含有することを特徴とする、スラブ式軌道のセメントアスファルトモルタルてん充層の補修用組成物。
【請求項2】
前記チオール化合物が2官能以上のものである、請求項1記載の補修用組成物。
【請求項3】
前記チオール化合物が、前記ウレタンアクリレート樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上20重量部以下で含有される、請求項1又は2に記載の補修用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ式軌道のセメントアスファルトてん充層の補修用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用の軌道として、路盤コンクリート上に形成されたセメントアスファルトモルタル(以下、CAモルタルと称する)てん充層と、該てん充層上に設置されたコンクリート製の軌道スラブとを有し、軌道スラブ上にレールが締結されたスラブ式軌道が知られている。
CAモルタルてん充層が外部に露呈する外周部分は、てん充層にしみ込んだ水分が凍結・融解を繰り返すことによる凍害によって劣化が早められるため、当該外周部分は比較的短期間のうちに補修が必要となる。
従来、てん充層の劣化部分を削り取った後、ポリウレタン系樹脂補修材料を充填する補修方法が提案されている。例えば、財団法人鉄道総合研究所の編集・発行に係る「スラブ軌道各部補修の手引き」(平成27年12月第3版)、第II章(合成樹脂によるてん充層および突起周辺部補修の手引き)には、このような従来方法が示されている。
【0003】
例えば、以下の特許文献1、特許文献2には、補修用樹脂てん充材として、アクリルシラップやウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートのラジカル硬化性樹脂が開示されている。
しかしながら、前記した鉄道総合研究所の規格において合格(硬化収縮率が5%以下)であったとしても、実際のスラブ軌道の補修においては、樹脂硬化物が厚く、樹脂の硬化発熱及び硬化収縮により、コンクリートへの接着が弱くなり、ひどい場合は剥離に至るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−98527号公報
【特許文献2】特開平10−316826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来技術の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ラジカル硬化性樹脂の特長である速硬化性を有するが、樹脂硬化物が厚くなっても、接着力の低下という欠点を有さないセメントアスファルトモルタルてん充層補修用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討し実験を重ねた結果、チオール化合物を含有することにより、接着力の低下という欠点を有さない補修用組成物が得られることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、下記のとおりのものである。
[1]ウレタンアクリレート樹脂、骨材、硬化剤、及びチオール化合物を含有することを特徴とする、スラブ式軌道のセメントアスファルトモルタルてん充層補修用組成物。
[2]前記チオール化合物が2官能以上のものである、前記[1]記載の補修用組成物。
[3]前記チオール化合物が、前記ウレタンアクリレート樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上20重量部以下で含有される、前記[1]又は[2]に記載の補修用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセメントアスファルトモルタルてん充層補修用組成物は、コンクリートとの接着が優れ、ラジカル硬化性樹脂の特長である速硬化性を有するが、樹脂硬化物が厚くなっても、接着力の低下という欠点を有さなないため、剥離を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態のセメントアスファルトモルタルてん充層補修用組成物は、ウレタンアクリレート樹脂、骨材、硬化剤、及びチオール化合物を含む。
[ウレタンアクリレート樹脂]
ウレタンアクリレート樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレートとラジカル重合性モノマーを配合したものである。
【0009】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物又は多価アルコール類とを反応させた後に、更に水酸基含有(メタ)アクリル化合物、及び必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって得ることができるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーであることができ、また、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリヒドロキシ化合物又は多価アルコール類とを反応させた後、更にポリイソシアネートを反応させても得ることができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料として用いられるポリイソシアネートとして、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート及びその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、バノックD−750、クリスボンNK(商品名;大日本インキ化学工業株式会社製)、テスモジュールL(商品名;住友バイエル社製)、コロネートL(商品名;日本ポリウレタン社製)、タケネートD102(商品名;武田薬品社製)、イソネート143L(商品名;三菱化学社製)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらのポリイソシアネートは、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0010】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料として用いられるポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、具体的には、グリセリン−エチレンオキシド付加物、グリセリン−プロピレンオキシド付加物、グリセリン−テトラヒドロフラン付加物、グリセリン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−テトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエスリトール−エチレンオキシド付加物、ジペンタエスリトール−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエスリトール−テトラヒドロフラン付加物、ジペンタエスリトール−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらポリヒドロキシ化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0011】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料として用いられる多価アルコール類として、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら多価アルコール類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0012】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料として用いられる水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されるものではないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0013】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料として必要に応じて用いられる水酸基含有アリルエーテル化合物としては、具体的には、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエスリトールトリアリルエーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら水酸基含有アリルエーテル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0014】
(ラジカル重合性モノマー)
ウレタンアクリレート樹脂は、上記ウレタン(メタ)アクリレートに、ラジカル重合性モノマーを配合したものである。
ラジカル重合性モノマーとしては、通常、スチレンモノマーや(メタ)アクリル酸メチルが用いられる。これ以外のラジカル重合性モノマーの具体例としては、スチレンのα−,ο−,m−,p−アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系モノマー、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン類、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−i−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニルなどのビニル化合物、シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド化合物、N−(メタ)アクリロイルフタルイミドなどが挙げられる。
【0015】
また、ウレタンアクリレート樹脂には、ラジカル重合性モノマーとして、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物も使用できる。具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、など各種グリコール類の(メタ)アクリル酸エステルや、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:BPE−100)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:BPE−200)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:BPE−500)、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:A−BPE−4)、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:A−BPE−10)などが挙げられる。
【0016】
これらのラジカル重合性モノマーは、ウレタンアクリレート樹脂の粘度を低下させ、硬度、強度、耐候性、耐水性、耐磨耗性等を向上させるために重要であり、ウレタン(メタ)アクリレート100重量部に対して、10〜250重量部、好ましくは20〜100重量部使用される。ラジカル重合性モノマーの使用量が10重量部以上であると、粘度が低く作業性、含浸性が良好である。他方、250重量部以下であると、充分な硬度が得られやすい傾向にある。
【0017】
[骨材]
ウレタンアクリレート樹脂に使用される骨材として、具体的には、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、ゾノトライト)、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサリト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、MOS、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、テフロン(登録商標)粉、木粉、パルプ、ゴム粉、アラミドなど各種繊維などが挙げられるが、特に限定されるものではない。これら骨材は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。また、同一種類の平均粒子径の異なる2つの以上を混合してもよい。
【0018】
骨材の配合量は、ウレタンアクリレート樹脂100重量部に対して、100〜300重量部が好ましく、100〜250重量部がより好ましい。骨材の配合量が100重量部以上であれば、補修用組成物の硬化収縮率を抑制できやすい。他方、骨材の配合量が300重量部以下であれば、硬化収縮率を確保し易く、かつ、補修用組成物の流動性が損なわれることなく充填することが可能である。
【0019】
[硬化剤]
硬化性樹脂の硬化に使用される硬化剤は、10℃以下の冬季施工条件下で、該樹脂を硬化させることができるものであり、このような硬化剤の例としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるものが挙げられ、また、アゾ化合物も有効である。具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミドなどが挙げられる。
【0020】
硬化剤の添加量は、ウレタンアクリレート樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部である。硬化剤の添加量が0.1重量部以上であると、充分な硬化が得られやすい。他方、硬化剤の添加量が10重量部以下であると、本実施形態の補修用組成物が適度な効果速度を有し、取扱性が良好であり、さらに、機械的強度も向上し、十分な接着性が得られやすい。
【0021】
[チオール化合物]
チオール化合物は、特に限定されるものではない。チオール化合物としては、例えば、デカンチオール、ドデカンチオール、オクタンチオール、ヘキサデカンチオール等の単官能チオール化合物、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン等の2官能チオール化合物、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)等の3官能チオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等の4官能チオール化合物、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等の6官能チオール化合物などが挙げられる。チオール化合物としては、保存安定性の観点から、2官能以上のチオール化合物が好ましく、より好まくは2官能チオール化合物乃至4官能チオール化合物である。
【0022】
チオール化合物としては、市販品を用いてもよい。チオール化合物の市販品の例としては、例えば、ドデカンチオール(単官能チオール化合物)、カレンズMT(登録商標)BD(商品名、2官能チオール化合物、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、昭和電工(株))、カレンズMT(登録商標)NR(商品名、3官能チオール化合物、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、昭和電工(株))、カレンズMT(登録商標)PE(商品名、4官能チオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、昭和電工(株))、EGMP−4(商品名、2官能チオール化合物、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学(株))、TMMP(商品名、3官能チオール化合物、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート、SC有機化学(株))、TEMPIC(商品名、3官能チオール化合物、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、SC有機化学(株))、PEMP(商品名、4官能チオール化合物、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学(株))、DPMP(商品名、6官能チオール化合物、ジペンタエリスリトールヘキサキス、(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学(株))等が挙げられる。
ウレタンアクリレート樹脂は、多官能チオール化合物を、1種単独又は2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0023】
ウレタンアクリレート樹脂中におけるチオール化合物の含有量は、補修用組成物の硬化性を損なわない範囲で適宜調整することができ、チオール化合物の種類にも異なるが、例えば、ウレタンアクリレート樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。チオール化合物の含有量が0.5重量部以上であると、充分な接着が得られやすい。他方、チオール化合物の含有量が20重量部以下であると、本実施形態の補修用組成物の機械的強度が向上し、十分な接着性を示しやすい。
【0024】
[その他添加剤]
ウレタンアクリレート樹脂には、必要に応じて芳香族3級アミン類やコバルト金属石鹸のような硬化促進剤やその助剤を配合することができる。また、重合禁止剤、可塑剤、ワックス、界面活性剤、カップリング剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、湿潤剤、沈降防止剤等の添加剤の配合することもできる。
【0025】
(硬化促進剤)
硬化促進剤やその助剤として使用される芳香族3級アミン類は特に限定されるものはなく、例えば、以下のようなものが挙げられる:N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシプロピル−p−トルイジン、N,N−ジイソプロピロール−p−トルイジン等。これらから選ばれた1種又は2種以上が使用できる。芳香族3級アミン類の添加量は、ウレタンアクリレート樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部である。
硬化促進剤及びその助剤として使用されるコバルト金属石鹸は特に限定されるものではなく、例えば、以下のようなものが挙げられる:ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、水酸化コバルト等。これらに、芳香族3級アミン類を混合して使用することもできる。コバルト金属石鹸の添加量は、ウレタンアクリレート樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部である。
【0026】
(重合禁止剤)
重合禁止剤としては、キノン類、ハイドロキノン類、フェノール類等があり、例えば、ベンゾキノン、p − ベンゾキノン、p − トルキノン、p − キシロキノン、ナフトキノン、2 , 6 − ジクロロキノン、ハイドロキノン、p − t − ブチルカテコール、2 ,5 − ジ− t − ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、p − メトキシフェノール、2 , 6 − ジ− t − ブチル− p − クレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等を必要量添加することができるが、キノン類はアミン類と反応し、着色等の変化を起こすことがあるため、ハイドロキノン類、フェノール類を添加することが好ましく、最も効果的なものはクレゾール類である。
【0027】
(可塑剤)
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類;アルキルスルホン酸フェニルエステル、アジピン酸ポリエステル等が挙げられる。但し、上記のパラフィン類は、パラフィンワックスを含まないものである。また、可塑剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。可塑剤を添加する場合の含有量は、ウレタンアクリレート樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。可塑剤の含有量が20重量部以下であれば、補修用組成物を硬化させた際の柔軟性が良好となる。
【0028】
(ワックス)
ワックスとしては公知のものを使用することができる。具体例としては融点が40〜80℃程度のパラフィンワックスやBYK−S−750、BYK−S−740、BYK−LP−S6665(ビックケミー(株)製)などが挙げられ、異なる融点のものを組み合わせて使用してもよい。添加量は、通常、上記の樹脂100重量部に対して0.1〜3.0重量部である。また、樹脂中にアリル基を有する場合、コバルト類との組み合わせで乾燥性を向上させることも有効である。
【0029】
(カップリング剤)
カップリング剤としては公知のものを使用することができる。具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、ポリエトキシジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0030】
(消泡剤)
消泡剤は、作業性や、補修用組成物の硬化体の物性を安定化させる等の目的で配合される。このような消泡剤としては、公知の消泡剤が挙げられる。具体的には、例えば、特殊アクリル系重合物を溶剤に溶解させたアクリル系消泡剤、特殊ビニル系重合物を溶剤に溶解させたビニル系消泡剤等を挙げることができる。また、市販品の消泡剤としては、ディスパロンシリーズ(楠本化成株式会社製:登録商標)等が挙げられる。消泡剤は、脱泡剤と組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(顔料)
顔料の例としては、チタン白、亜鉛華、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、べんがら、黄鉛、黄土、酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられる。
【0032】
(湿潤剤)
湿潤剤は、樹脂組成物と、骨材との分散性の向上や、てん充材組成物の流動性を向上させる目的で配合される。このような湿潤剤としては、例えば、市販品であるDisperbykシリーズ(商品名:103、112、163、164、166、167、182,183、184、2000、2050、2150、2163、2164:ビックケミー・ジャパン株式会社製:登録商標)や、BYKシリーズ(商品名:W969、W980、W9010:同:登録商標)等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、各例中の「部」、「%」は重量基準を示す。各例における評価試験は次のように行なった。
【0034】
(接着性)
(1)付着強度
建研式引張試験(JIS−A6909)に準拠し測定した。
(2)破壊状況
上記により得られた樹脂硬化物の破壊状態を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した:
母材破壊:モルタル舗道板の素地破壊
層間剥離:モルタル舗道板と樹脂硬化物との界面剥離
ここで、「母材破壊」の場合、接着層はモルタル舗道板の素地より高い強度を有すると推定されるため、接着性は良好であると考えられる。これに反し、「層間剥離」の場合、接着層の強度がモルタル舗道板の素地より低いと推定されるため、接着性は不良と考えられる。
【0035】
[実施例1]
ウレタン(メタ)アクリレート55%、メタクリル酸メチル30%、メタクリル系モノマー15%からなるウレタンアクリレート樹脂100重量部に、チオール化合物として単官能のドデカンチオール1%を添加し、炭酸カルシウム100重量部を加えた硬化性樹脂にパーカドックスCH−50L(商品名、化薬アクゾ社製、純度50%硬化剤)3重量部を加えて、補修用組成物を調製した。調製した補修用組成物100gを、サイズ300×300×60mmのモルタル舗道板に適用し、24時間静置して十分に硬化させた後、接着性を建研式引張試験(JIS A 6909)により評価した。結果を以下の表1に示す。
【0036】
[実施例2]
チオール化合物を2官能チオール化合物(1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン)に代えた以外は実施例1と同様に補修用組成物を調製し、同様に評価した。結果を以下の表1に示す。
【0037】
[実施例3]
チオール化合物を3官能チオール化合物1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンに代えた以外は実施例1と同様に補修用組成物を調製し、同様に評価した。結果を以下の表1に示す。
【0038】
[実施例4]
チオール化合物を4官能チオール化合物(ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)に代えた以外は実施例1と同様に補修用組成物を調製し、同様に評価した。結果を以下の表1に示す。
【0039】
[実施例5]
2官能チオール化合物(1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン)の添加量を3%に変更した以外は実施例2と同様に補修用組成物を調製し、同様に評価した。結果を以下の表1に示す。
【0040】
[実施例6]
2官能チオール化合物(1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン)の添加量を5%に変更した以外は実施例2と同様に補修用組成物を調製し、同様に評価した。結果を以下の表1に示す。
【0041】
[比較例1]
チオール化合物を添加なしとした以外は実施例1と同様に補修用組成物を調製し、同様に評価した。結果を以下の表1に示す。
【0042】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の補修用組成物は、スラブ式軌道のセメントアスファルトモルタルてん充層の補修に好適に利用可能である。