(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハムスターPLBL2の量が、20ng/mg未満、又は15ng/mg未満、又は10ng/mg未満、又は8ng/mg未満、又は5ng/mg未満、又は3ng/mg未満、又は2ng/mg未満、又は1ng/mg未満、又は0.5ng/mg未満である、請求項5に記載の方法。
HIC工程が、樹脂含有カラムをフロースルーモードで且つ平衡バッファー及び洗浄バッファー中で操作することを含み、平衡バッファー及び洗浄バッファーの各々が50mMの酢酸ナトリウム(pH5.0)を含む、請求項5から21のいずれか一項に記載の方法。
第1のプロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程と第2の陰イオン交換クロマトグラフィー工程を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程の前に含む、請求項22に記載の方法。
治療用組成物が、少なくとも一ヶ月、又は少なくとも三か月、又は少なくとも六か月、又は少なくとも九か月、又は少なくとも十二か月、又は少なくとも18か月、又は少なくとも二年、又は二年を超える期間にわたって、四週に一度投与される、請求項34に記載の医薬。
IL−13媒介性障害が、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、じん麻疹、食物アレルギー、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、RSV感染、ブドウ膜炎、強皮症、及び骨粗鬆症から選択される、請求項32に記載の医薬。
【発明を実施するための形態】
【0036】
特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994), and March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は、本願において使用される多くの用語に対する一般的な指針を当業者に提供する。
【0037】
特定の定義
本明細書の説明のために、以下の定義を適用し、適切な場合はいつでも、単数形で用いられる用語は複数形を含み、その逆も同じである。以下に記載される任意の定義が参照により本明細書に組み込まれる任意の文献と競合する場合には、以下に記載される定義が適用されるものとする。
【0038】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでない場合を指さない限り複数形を含む。したがって、例えば、「タンパク質」又は「抗体」への言及は、それぞれ複数のタンパク質又は抗体を含み、「細胞」への言及は、細胞の混合物などを含む。
【0039】
「検出する」という用語は、本明細書においては、最も広い意味で使用され、標的分子の定性的及び定量的測定値の両方を含む。検出することは、単に試料中における標的分子の存在を特定すること、並びに標的分子が試料中に検出可能なレベルで存在するかどうかを決定することを含む。
【0040】
「試料」は、大量の材料の小部分を指す。一般に、本明細書に記載の方法による試験は、試料に対して実行される。試料は、典型的には、例えば培養した宿主細胞から得られる組み換えポリペプチド調製物から得られる。試料は、例えば限定されないが、採取された細胞培養液から、精製方法の特定の工程の工程中プールから、又は最終的な精製生成物から得られる。
【0041】
本明細書に記載される用語「生成物」は、様々なクロマトグラフィー法によって精製される物質、例えばポリペプチドである。
【0042】
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、本明細書においては、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために互換可能に使用される。ポリマーは、直鎖状でも分枝状でもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸が割り込んでいてもよい。この用語は、自然に又は介入により修飾されているアミノ酸ポリマーも包含し;その例として、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識化成分とのコンジュゲーションが挙げられる。この定義には、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の一又は複数の類似体を含むポリペプチド、並びに、当技術分野において公知の他の修飾も含まれる。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書において使用される場合、特に抗体を包含する。
【0043】
「精製された」ポリペプチド(例えば、抗体又はイムノアドヘシン)とは、ポリペプチドの純度が増加し、その天然環境に存在するよりも、及び/又は実験室条件下で最初に合成及び/又は増幅された時よりも純粋な形態で存在することを意味する。純度は相対用語であり、必ずしも絶対純度を意味するのではない。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープタグ付けされた」は、「タグポリペプチド」に融合したポリペプチドを含むキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、抗体の作製対象となりうるエピトープを提供するために十分であるが、融合されるポリペプチドの活性に干渉するためには不足する残基を有する。タグポリペプチドは更に、好ましくは極めて独特であり、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しない。適切なタグポリペプチドは一般に、少なくとも六つのアミノ酸残基と、通常約8から50のアミノ酸残基(特定の事例では約10から20のアミノ酸残基)を有する。
【0045】
本明細書における目的のために、「活性な」又は「活性化」とは、対象の生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するポリペプチドの形態に言及し、ここで「生物学的」活性とは、ポリペプチドによって生じる生物学的機能(抑制性又は刺激性)のうち、ポリペプチドが持つ抗原エピトープに対する抗体の生成を誘導する能力以外のものに言及し、「免疫学的」活性は、ポリペプチドが持つ抗原エピトープに対する抗体の生成を誘導する能力に言及する。
【0046】
用語「アンタゴニスト」は最も広い意味で使用され、天然ポリペプチド、例えばサイトカインの生物学的活性を部分的に又は完全に阻止、阻害、又は中和する任意の分子を含む。同様に用語「アゴニスト」は最も広い意味で使用され、天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を含む。適切なアゴニスト又はアンタゴニス分子は特に、アゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然ポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体などを含む。ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定するための方法は、ポリペプチドを候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子と接触させること、及び通常ポリペプチドに関連付けられる一又は複数の生物活性の検出可能な変化を測定することを含む。
【0047】
目的の抗原、例えば、腫瘍関連ポリペプチド抗原標的と「結合する」ポリペプチドとは、十分な親和性で抗原と結合することから、抗原、その抗原を発現する細胞又は組織を含有する試料の標的化におけるアッセイ試薬、診断剤及び/又は治療剤として有用であり、他のポリペプチドとはそれほど交差反応しないような、ポリペプチドである。
【0048】
ポリペプチドと標的分子との結合に関して、特定のポリペプチド、又は特定のポリペプチド標的上のエピトープについて、その「特異的結合」、又はそれと「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という表現は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、分子の結合を対照分子の結合との比較で決定することにより測定でき、対照分子は、一般に、結合活性を有さない類似構造の分子である。例えば、特異的結合は、標的と類似の対照分子、例えば過剰な非標識標的との競合により決定されうる。この場合、特異的結合は、プローブとの標識標的の結合が、過剰な非標識標的により競合的に阻害される場合に示される。
【0049】
本明細書において用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つのインタクトな抗体から形成される多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書では抗体と互換可能に使用される。
【0050】
抗体は、すべて免疫グロブリンフォールドに基づく、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子である。例えば、IgG抗体は、ジスルフィド結合されて機能的抗体を形成する、二つの「重」鎖及び二つの「軽」鎖を有する。各重鎖及び軽鎖自体は、「定常」(C)及び「可変」(V)領域を含む。V領域は抗体の抗原結合特異性を決定し、一方、C領域は、構造的な支持を提供し、免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用において機能する。抗体又は抗体の抗原結合断片の抗原結合特異性とは、抗体が特定の抗原と特異的に結合する能力のことである。
【0051】
抗体の抗原結合特異性は、V領域の構造的特徴により決定される。可変性は、可変ドメインの110個のアミノ酸全長にわたり一様に分布してはいない。そうではなく、V領域は、それぞれ9〜12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域で分割されている、15〜30個のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチから成る。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ四つのFRを含み、大部分がβシート構成をとり、三つの超可変領域により繋がっており、この三つの超可変領域はβシート構造と繋がり、場合によってはβシート構造の一部を形成する、ループを形成する。各鎖における超可変領域は、FRにより互いに極めて近接した状態で保持され、他の鎖由来の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md, (1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しているものではないが、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)への抗体の関与といった、種々のエフェクター機能を呈する。
【0052】
各V領域は典型的には三つの相補性決定領域(それぞれが「超可変ループ」を含む「CDR」)と四つのフレームワーク領域を含む。特定の所望の抗原に対して実質的な親和性で結合するのに必要とされる最少の構造単位である抗原結合部位は、したがって三つのCDRと、適切な高次構造でCDRを保持し提示するためにそれらの間に散在した少なくとも三つ、好ましくは四つのフレームワーク領域を含むであろう。古典的な四本鎖抗体は、VH及びVLドメインが協働して定める抗原結合部位を有している。ある種の抗体、例えばラクダ及びサメ抗体は、軽鎖を欠き、重鎖のみによって形成される結合部位に依存する。結合部位が重鎖又は軽鎖のみによって形成され、VH及びVLの間に協働がない単一ドメイン操作免疫グロブリンを調製することができる。
【0053】
「超可変領域」なる用語は、本明細書において使用される場合、抗原結合性を生じる抗体の特定のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、上述のような「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、V
Lの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、並びにV
Hの31−35B(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))及び/又は「超可変ループ」由来の残基(例えば、V
Lの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)、並びにV
Hの残基26−32(H1)、52A−55(H2)及び96−101(H3)(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987))を含みうる。
【0054】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義している超可変可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0055】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)
2、及びFv断片;ダイアボディ;タンデムダイアボディ(taDb)、線状抗体(例えば、米国特許第5641870号、実施例2;Zapata et al., Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995));1アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ、単鎖抗体分子;抗体断片(例えば、限定されないが、Db−Fc、taDb−Fc、taDb−CH3、(scFV)4−Fc、ジ−scFv、バイ−scFv、又はタンデム(ジ,トリ)−scFvを含む)から形成される多特異性抗体;及び二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)が挙げられる。
【0056】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を持つ「Fab」断片と呼ばれる二つの同一の抗原結合断片と、その名前が容易に結晶化する能力を反映している残りの「Fc」断片を生成する。ペプシン処置は、二つの抗原結合部位を有し、なお抗原を結合することが可能なF(ab’)
2断片を生成する。
【0057】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合した一本の重鎖と一本の軽鎖の可変ドメインの二量体からなる。この構成において、各可変ドメインの三つの超可変領域は相互作用し、V
H−V
L二量体の表面に抗原結合部位を規定する。集合的に、六つの超可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な三つの超可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低いものの、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0058】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されている点でFab断片とは異なる。Fab’−SHは、本明細書において、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を持つFab’を指す。F(ab’)2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab’2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0059】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる二つの明確に区別される型の一つに割り当てられる。
【0060】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は異なるクラスに割り当てられる。インタクトな抗体には五つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IGA、及びIgA2に分けられる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
【0061】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のV
Hドメイン及びV
Lドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。いくつかの実施態様において、FvポリペプチドはV
H及びV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFVが抗原結合に所望の構造を形成することを可能にする。scFvの概説については、例えば、Pluckthun, The Pharmacology of モノクローナル Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
【0062】
用語「ダイアボディ」は、二つの抗原結合部位を持つ小さな抗体断片を指し、その断片は、同一ポリペプチド鎖(V
H−V
L)の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成ができないリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、例えば、EP404097号;WO93/01161;及びHollingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
【0063】
用語「多特異性抗体」は、最も広い意味で使用され、ポリエピトープ特異性を有する抗体を特に網羅する。このような多特異性抗体は、限定されないが、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含みV
HV
L単位がポリエピトープ特異性を有する抗体、二つ以上のV
L及びV
Hドメインを有し各V
HV
L単位が異なるエピトープと結合する抗体、二つ以上の単一可変ドメインを有し各単一可変ドメインが異なるエピトープと結合する抗体、完全長抗体、抗体断片、例えばFab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三重機能性抗体、共有結合的又は非共有結合的に連結している抗体断片を含む。「ポリエピトープ特異性」とは、同じ又は異なる標的上で二つ以上の異なるエピトープと特異的に結合する能力を指す。「単一特異性の」とは、一つのエピトープのみとの結合能を指す。一実施態様によれば、多特異性抗体は、5μMから0.001pM、3μMから0.001pM、1μMから0.001pM、0.5μMから0.001pM,又は0.1μMから0.001pMの親和性で各エピトープと結合するIgG抗体である。
【0064】
「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「単一可変ドメイン(SVD)抗体」なる表現は、単一可変ドメイン(VH又はVL)が抗原結合を付与することができる抗体を一般に指す。言い換えれば、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要がない。単一ドメイン抗体の例には、ラクダ科の動物(ラマ及びラクダ)並びに軟骨魚(例えば、テンジクザメ)に由来するもの、並びに、ヒト及びマウス抗体からの組換法に由来するものが含まれる(Nature (1989) 341:544-546; Dev Comp Immunol (2006) 30:43-56; Trend Biochem Sci (2001) 26:230-235; Trends Biotechnol (2003):21:484-490;WO2005/035572;WO03/035694;Febs Lett (1994) 339:285-290;WO00/29004;WO02/051870)。
【0065】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、モノクローナル抗体の生成中に生じうる変異体(そのような抗体は通常少量で存在する)を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で作製しなければならないことを意味するものではない。例えば、本明細書において提供される方法により使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製されてもよく、又は組み換えDNA法により作製されてもよい(例えば、米国特許第4816567号を参照のこと)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)に記載されている手法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0066】
本明細書においては、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分は特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一若しくは相同であるが、鎖(複数可)の残りの部分は別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一若しくは相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに、所望の生物学的活性を呈するものである限りそのような抗体の断片を、特に含む(米国特許第4816567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。本明細書における目的のキメラ抗体は、非ヒト霊長動物(例:旧世界サル、例えばヒヒ、アカゲザル、又はカニクイザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5693780号)。
【0067】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大抵の場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、非ヒト種、例えば、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長動物の超可変領域(ドナー抗体)由来の残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体において見出されない残基を含みうる。これらの修飾は、抗体性能を更に洗練させるためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインのすべてを実質的に含み、超可変ループのすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、上記のFR置換基(複数可)を除き、FRのすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン、通常はヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。更なる詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0068】
本明細書での目的に関して、「インタクトな抗体」は、重及び軽可変ドメイン並びにFc領域を含むものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。好ましくは、インタクトな抗体は、一又は複数のエフェクター機能を有する。
【0069】
「天然抗体」は、通常、二つの同一の軽(L)鎖及び二つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有している。各重鎖は、複数の定常ドメインが続く可変ドメイン(V
H)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V
L)を、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の境界面を形成すると考えられる。
【0070】
「参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用して生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁、ワシントンD.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN−2プログラムは、ジェネンテック社、サウスサンフランシスコ、カリフォルニアから公的に入手可能であるか、又はそのソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIXのV4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされるべきである。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN−2プログラムによって設定されて変動しない。
【0071】
アミノ酸配列比較にALIGN−2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(或いは、所与のアミノ酸配列Bと、又はそれに対しての%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む所与のアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
100×分率X/Y
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN−2により、AとBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一であるとして一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN−2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落で説明したように得られる。
【0072】
用語「抗IL−13抗体」及び「IL−13に結合する抗体」は、IL−13を標的とする際に診断薬及び/又は治療剤として抗体が有用であるように、十分な親和性でIL−13を結合可能な抗体を指す。いくつかの実施態様において、抗IL−13抗体の、無関係な、非IL−13タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体のIL−13への結合の約10%未満である。特定の実施態様では、IL−13に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば、10−8M以下、例えば10−8Mから10−13M、例えば、10−9Mから10−13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様では、抗IL−13抗体は、異なる種由来のIL−13間で保存されているIL−13のエピトープに結合する。
【0073】
「IL−13媒介性障害」は、IL−13のレベル又は活性に起因して身体の局所的に及び/又は全身的に非定型症状が現れる、過剰なIL−13レベル又は活性に関連付けられる障害を意味する。IL−13媒介性障害の例には、がん(例えば、非ホジキンリンパ腫、膠芽細胞腫)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息、線維症、炎症性腸疾患、クローン病、肺の炎症性障害(IPFのような肺線維症を含む)、COPD、及び肝臓の線維症が含まれる。
【0074】
用語「呼吸器疾患」には、限定されないが、喘息(例えば、アレルギー性及び非アレルギー性喘息(例えば低年齢児の、例えば呼吸器合胞体ウイルス(RSV)による炎症など));気管支炎(例えば、慢性気管支炎);慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば、肺気腫(例えば、タバコによって誘導された肺気腫);気道の炎症を含む状態、好酸球増加症、線維症及び過剰な粘液生成、例えば、嚢胞性線維症、肺線維症、及びアレルギー性鼻炎が含まれる。気道炎症、過剰な気道分泌物、及び気道閉塞によって特徴付けられる疾患の例には、喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、及び嚢胞性線維症が含まれる。
【0075】
用語「治療剤」は、疾患を使用するために使用される任意の薬剤を指す。治療剤は、例えば、(一又は複数の)ポリペプチド(例えば、抗体、イムノアドヘシン又はペプチボディ)、タンパク質に結合できるアプタマー若しくは小分子、又は標的(例えば、siRNA)をコードする核酸分子に結合できる核酸分子などである。
【0076】
「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分又は放射性標識などの異種分子とコンジュゲートされない、(本明細書において定義する)抗体である。
【0077】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は互換可能に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含める。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、それには、継代の数に関係なく、それに由来する一次形質転換細胞及び子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸含量が完全に同一ではないかもしれず、突然変異が含まれる場合がある。本明細書には、最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異型子孫が含まれる。
【0078】
本明細書で使用される、用語「ベクター」は、それがリンクされている別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、並びにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。ある種のベクターは、それらが動作可能なように結合されている核酸の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と言う。
【0079】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により決定されるように、95%又は99%以上の純度に精製される。抗体純度の評価法の総説としては、例えばFlatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照のこと。
【0080】
本明細書においてクロマトグラフィーに言及して使用される用語「順次的」とは、第1のクロマトグラフィーに続いて第2のクロマトグラフィーを行うことに言及している。追加の工程が、第1のクロマトグラフィーと第2のクロマトグラフィーの間に含まれてもよい。
【0081】
本明細書においてクロマトグラフィーに言及して使用される用語「連続的」とは、第1のクロマトグラフィー材料と第2のクロマトグラフィー材料とが直接、又は二つのクロマトグラフィー材料間の連続フローを可能にする他の何らかのメカニズムにより接続されることに言及している。
【0082】
「不純物」及び「夾雑物」は、所望のポリペプチド生成物とは異なる物質を指す。不純物及び夾雑物には、限定されないが:宿主細胞物質、例えば単一CHOP種を含むCHOP;浸出されたプロテインA;核酸;所望のポリペプチドの変異体、断片、凝集体又は誘導体;別のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス性混入物;細胞培養培地成分などが含まれる。いくつかの例において、混入物は、例えば限定されないが、細菌細胞(大腸菌細胞など)、昆虫細胞、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、真菌細胞に由来する宿主細胞タンパク質(HCP)であってもよい。
【0083】
用語「チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質」と「CHOP」は、交換可能に使用されてチャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞培養物から得られる宿主細胞タンパク質(「HCP」)の混合物を指す。HCP又はCHOPは、通常、CHO細胞中に発現される抗体又はイムノアドヘシンのような対象のタンパク質を含む細胞培地又は溶解物(収穫された細胞培養液(「HCCF」))中の不純物として存在する。対象のタンパク質を含む混合物中に存在するCHOPの量は、対象タンパク質の純度の指標となる。HCP又はCHOPには、限定されないが、CHO宿主細胞のような宿主細胞によって発現される対象タンパク質が含まれる。典型的には、タンパク質混合物中のCHOPの量は、混合物中の対象タンパク質の量に対して百万分の一で表現される。宿主細胞が別の哺乳動物の細胞型、大腸菌、酵母、昆虫細胞、又は植物細胞である場合、HCPは、宿主細胞の溶解物中に見られる、標的タンパク質以外のタンパク質を指していることを理解されたい。
【0084】
「百万分の一」又は「ppm」は、本明細書では交換可能に使用されて、本発明の方法により精製された対象タンパク質の純度の指標を指す。単位ppmは、ミリグラム/ミリリットルで表される対象タンパク質に含まれるナノグラム/ミリリットルで表されるHCP又はCHOPの量に言及する(即ち、タンパク質が溶液中にある場合、CHOPppm=対象タンパク質1mg/ml当たりのCHOP(ng/ml))。タンパク質が乾燥している場合(例えば凍結乾燥により)、ppmは、対象タンパク質1mg当たりのCHOP(ngを指す。不純物は、ppmと互換可能に使用される「ng/mg」として表されてもよい。
【0085】
ポリペプチドと一又は複数の不純物を含む組成物からポリペプチドを「精製する」ことは、組成物から少なくとも一つの不純物を(完全に又は部分的に)除去することにより組成物中のポリペプチドの純度を上昇させることを意味する。
【0086】
「精製工程」は、「均一な」組成物を生じさせる全体の精製工程の一部としてもよく、「均一」な組成物とは、本明細書では、対象タンパク質を含む組成物中100ppm(100ng/mg)未満、又は90ppm(90ng/mg)未満、又は80ppm(80ng/mg),未満、又は70ppm(70ng/mg)未満、又は60ppm(60ng/mg)未満、又は50ppm(50ng/mg)未満、又は40ppm(40ng/mg)未満、又は30ppm(30ng/mg)未満、又は20ppm(20ng/mg)未満、又は10ppm(10ng/mg)未満、又は5ppm(5ng/mg)未満、又は3ppm(3ng/mg)未満、又は1ppm(1ng/mg)未満のHCPを含む組成物を指す。特定の実施態様では、HCPは単一のHCP種である。一実施態様では、単一のHCP種はハムスターPLBL2である。
【0087】
本明細書において精製される[組成物」は、対象のポリペプチドと一又は複数の不純物若しくは夾雑物を含む。組成物は、「部分的に精製」されてもよく(即ち、一又は複数の精製工程を受けている)、又はプリペプチドを生成する宿主細胞若しくは生物体から直接得られてもよい(例えば、組成物は採取された細胞培養液を含んでもよい)。
【0088】
用語「プロテインA」及び「ProA」は、本明細書では交換可能に使用されて、その天然源から回収されたプロテインA、合成により生成されたプロテインA(例えば、ペプチド合成又は組み換え技術により)、及びCH2/CH3領域、例えばFc領域を含むタンパク質への結合能を保持するその変異体を包含する。プロテインAは、様々な販売元から購入することができる。プロテインAは通常、固体相の支持材料上に固定化されている。用語「ProA」は、プロテインAが共有結合的に付着するクロマトグラフィー固体支持マトリックスを含む、アフィニティークロマトグラフィー樹脂又はカラムも指す。
【0089】
用語「クロマトグラフィー」は、混合物中の対象の溶質が混合物中の他の溶質から、混合物の個々の溶質が移動相の影響下において又は結合及び溶出法において固定媒質を通って移動する速度の違いにより、分離される方法を指す。
【0090】
用語「アフィニティークロマトグラフィー」及び「プロテインアフィニティークロマトグラフィー」は、本明細書では交換可能に使用されて、対象タンパク質又は対象抗体を不可逆的且つ特異的に生物特異的なリガンドに結合させるタンパク質分離技術を指す。典型的には、生物特異的リガンドは、共有結合的にクロマトグラフィーの固体相材料に付着し、溶液がクロマトグラフィーの固体相材料に接触するとき溶液中の対象タンパク質に到達しうる。対象タンパク質(例えば、抗体、酵素、又は受容体タンパク質)は、生物特異的リガンド(例えば、抗原、基質、補助因子、又はホルモン)に対するその特異的結合親和性をクロマトグラフィー工程の間に保持し、一方混合物中の他の溶質及び/又はタンパク質は認識可能にも特異的にもリガンドに結合しない。固定化されたリガンドに対する対象タンパク質の結合は、夾雑タンパク質又はタンパク質不純物がクロマトグラフィー培地を通過することを可能にし、一方対象タンパク質は固体相材料上において固定化されたリガンドに特異的に結合したままである。特異的に結合した対象タンパク質は次いで、低pH、高pH、高塩濃度の固定化されたリガンド、競合リガンドなどから活性形態で除去されて、溶出バッファーを含むクロマトグラフィーカラムを通過する。この溶出バッファーには、それ以前にカラムを通過できた夾雑タンパク質又はタンパク質不純物は含まれていない。任意の成分をそれぞれの特異的結合タンパク質、例えば抗体を精製するためのリガンドとして使用することができる。
【0091】
「非アフィニティークロマトグラフィー」及び「非アフィニティー精製」は、アフィニティークロマトグラフィーを利用しない精製方法を指す。非アフィニティークロマトグラフィーは、対象分子(例えば抗体などのタンパク質)と固体相マトリックスの非特異的相互作用に基づくクロマトグラフィー技術を含む。
【0092】
本明細書において、例えば対象分子と固体相マトリックスに結合したリガンドとの相互作用を説明するために、クロマトグラフィーの文脈で使用される用語「特異的結合」は、通常、静電力に結合する結合部位におけるタンパク質とリガンド構造の空間的相補性、水素結合、疎水性力及び/又は結合部位におけるファンデルワース力の合併効果による、対象タンパク質のリガンドへの通常は可逆的な結合を指す。空間相補性が大きく、結合部位におけるその他の力が強い程、タンパク質のその対応のリンガンドに対する結合特異性は大きくなる。特異的結合の非限定的な例には、抗体−抗原の結合、酵素−基質の結合、酵素−補助因子の結合、金属イオンキレート化、DNA結合タンパク質−DNAの結合、制御タンパク質−タパク質の相互作用などが含まれる。典型的には、アフィニティークロマトグラフィーでは、特異的結合は、自由溶液中において約10
−4から10
−8Mの親和性で起こる。
【0093】
本明細書において、例えば対象分子と固体相マトリックスに結合した他のリガンド又は他の化合物との相互作用を説明するために、クロマトグラフィーの文脈で使用される用語「非特異的結合」は、相互作用部位における静電力、水素結合、疎水性力、及び/又はファンデルワース力による、但し非構造力の効果を増強する構造的相補性を欠く、対象タンパク質の、固体相マトリックス上のリガンド又は化合物への結合に言及する。非特異性相互作用の例には、限定されないが、静電力、疎水性力、及びファンデルワース力、並びに水素結合が含まれる。
【0094】
「塩」は、酸と塩基の相互作用により形成される化合物である。例示的塩には、限定されないが、アセテート(例えば酢酸ナトリウム),シトレート(例えばクエン酸ナトリウム)、塩化物(例えば塩化ナトリウム)、硫酸(例えば硫酸ナトリウム)、又はカリウム塩が含まれる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「溶媒」は、溶液を供するための一又は複数の他の物質を溶解又は分散させることができる液体物質を指す。溶媒には水性及び有機溶媒が含まれ、特定の有機溶媒には、非極性溶媒、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、及び2,2−チオジグリコールが含まれる。
【0096】
用語「洗浄剤」は、ポリソルベートのようなイオン性及び非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート20又は80);ポロキサマー(例えばポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;ナトリウムオクチルグルコシド;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−、又はステアリル−スルホベタイン;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−又はステアリル−サルコシン;リノレイル−、ミリスチル−、又はセチル−ベタイン;ラウロアミドプロピル−、コカミドプロピル−、リノールアミドプロピル−、ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアラミドプロピル−ベタイン(例えばラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル−、パルミドプロピル−、又はイソステアラミドプロピル−ジメチルアミン;メチルココイルナトリウム(sodium methyl cocoyl)−、又はメチルオレイル−タウレート二ナトリウム塩;及びMONAQUAT(tm)シリーズ(Mona Industries、Inc.,ニュージャージー州パターソン);ポリソルベート20のようなポリソルベート(TWEEN−20(r))又はポリソルベート80(TWEEN 80(r))を含む。
【0097】
本明細書において「ポリマー」は、二つ以上のモノマーの共有結合により形成される分子であり、ここでモノマーはアミノ酸残基ではない。ポリマーの例には、限定されないが、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及び共重合体(例えばPLURONICS
TM、PF68など)、ポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEG 400及びPEG8000が含まれる。
【0098】
用語「イオン交換」及び「イオン交換クロマトグラフィー」は、混合物中の対象(例えばタンパク質)の溶質が固体相のイオン交換物質に結合した(例えば共有結合により)荷電化合物と相互作用して、対象の溶質が、混合物中の溶質不純物又は夾雑物よりも多かれ少なかれ荷電化合物と非特異的に相互作用するクロマトグラフィー法を指す。混合物中の夾雑溶質は、対象の溶質より速く又はゆっくりとイオン交換物質のカラムから溶出するか、又は対象の溶質と比較して樹脂に結合するか又は樹脂から除かれる。「イオン交換クロマトグラフィー」は、特に、陽イオン交換、陰イオン交換、及び混合モードクロマトグラフィーを含む。
【0099】
「イオン交換物質」という表現は、負に帯電した(即ち、陽イオン交換樹脂)又は正に帯電した(即ち、陰イオン交換樹脂)固体相を指す。電荷は、一又は複数の電荷を有するリガンドを、例えば共有結合により、固体相に付着させることにより提供される。それに替えて、又は加えて、電荷は固体相の固有の性質でありうる(例えばシリカの場合、全体に負の電荷を有する)。
【0100】
「固体相」とは、一又は複数の電荷を有するリガンドが付着できる、非水性のマトリックスである。固体相は、精製カラム、個別の粒子の不連続相、膜、又はフィルターなどでありうる。固体相を形成するための物質の例には、多糖類(例えばアガロース及びセルロース);及び他の機械的に安定なマトリックス、例えばシリカ(孔制御ガラスなど)、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、セラミック粒子及び上記のいずれかの誘導体が含まれる。
【0101】
「陽イオン交換樹脂」は、固体相上又は固体相上を通過した水溶液中の陽イオンと交換される、負に帯電しておりしたがって遊離陽イオンを有する固体相である。固体相に付着して陽イオン交換樹脂を形成する負に帯電したリガンドは、例えば、カルボキシレート又はスルホネートとすることができる。市販の陽イオン交換樹脂には、限定されないが、アガロース(例えばSP−SEPHAROSE FAST FLOW(又はSP−SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE)上に固定されたカルボキシ−メチル−セルロース、及びスルホプロピル(sulphopropyl)(SP)、及びアガロース(例えばS−SEPHAROSE FAST FLOW)上に固定化されたスルホニル、及びPOROS(登録商標)HSが含まれる。
【0102】
「混合モードイオン交換樹脂」は、陽イオン、陰イオン、及び疎水性部分で共有結合的に修飾された固体相を指す。混合モードイオン交換は、「多モードイオン交換」とも呼ばれる。市販の混合モードイオン交換樹脂、例えば、弱い陽イオン交換基、低濃度の陰イオン交換基、及びシリカゲル固体相支持マトリックスに結合した疎水性リガンドを含有するBAKERBOND ABXが利用可能である。更なる例示的混合モードイオン交換樹脂には、限定されないが、CAPTO
TM Adhere樹脂、QMA樹脂、CAPTO
TM MMC樹脂、MEP HyperCel樹脂、HEA HyperCel樹脂、PPA HyperCel樹脂、又はChromaSorb膜又はSartobind STICが含まれる。いくつかの実施態様では、混合モード物質はCAPTO
TM Adhere樹脂である。
【0103】
用語「陰イオン交換樹脂」は、本明細書では、例えば四級アミノ基のような一又は複数の正に帯電したリガンドが付着した、正に帯電した固体相である。市販の陰イオン交換樹脂には、DEAEセルロース、QAEセファデックス及びFAST Q SEPHAROSE
TM及びQ SEPHAROSE
TM FAST FLOWが含まれる。
【0104】
「バッファー」は、酸−塩基コンジュゲート成分の作用によってpHの変化に抵抗する緩衝液である。例えばバッファーの所望のpHに応じて利用することのできる様々なバッファーが、Buffers. A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D., ed. Calbiochem Corporation (1975)に記載されている。特定の事例では、バッファーは約2から約9、代替的には約3から約8、代替的には約4から約7、代替的には約5から約7の範囲のpHを有する。この範囲内にpHを制御するバッファーの非限定的な例には、MES、MOPS、MOPSO、トリス、HEPES、ホスフェート、アセテート、シトレート、コハク酸塩、及びアンモニウムバッファー、並びにこれらの組合せが含まれる。
【0105】
用語「疎水性相互作用クロマトグラフィー」又は「HIC」は、本明細書では、それらの疎水性に基づいて分子を分離するクロマトグラフィー法に言及する。HICに使用できる例示的樹脂には、限定されないが、フェニル−、ブチル−、オクチル−SEPHAROSE、BUTYL−SEPHAROSE(登録商標)4 Fast Flow、PHENYL SEPHAROSE
TM High Performance、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(low sub)、及びPHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub)が含まれる。典型的には、高塩濃度バッファー中の試料分子は、HICカラムにロードされる。バッファー中の塩は水分子と相互作用して溶液中の分子の溶媒和を低下させ、それにより、結果としてHICカラムにより吸着される試料分子中の疎水性領域を露出させる。分子の疎水性が高まる程、結合を促進するために必要な塩が少なくなる。典型的には、塩勾配を低下させることが、カラムから試料を溶出するために使用される。イオン強度が低下する程、分子の親水性領域の露出は増大し、疎水性を上昇させるために分子がカラムから溶出する。試料の溶出は、溶出バッファーに対する弱い有機修飾剤又は洗浄剤の添加によっても達成される。
【0106】
「ローディングバッファー」は、対象のポリペプチド分子と一又は複数の不純物を含む組成物をイオン交換樹脂上にロードするために使用されるものである。ローディングバッファーは、対象のポリペプチド分子(及び通常は一又は複数の不純物)がイオン交換樹脂に結合するような、又は対象タンパク質がカラムを通過する間に不純物が樹脂に結合するような伝導性及び/又はpHを有する。
【0107】
「中間バッファー」は、対象のポリペプチド分子を溶出することに先立ち、イオン交換樹脂から一又は複数の不純物を溶出するために使用される。中間バッファーの伝導性及び/又はpHは、一又は複数の不純物が、イオン交換樹脂から溶出されるが、対象ポリペプチドの大部分は溶出されないようなものである。
【0108】
本明細書で使用される場合の用語「洗浄バッファー」は、対象のポリペプチド分子の溶出に先立ってイオン交換樹脂を洗浄又は再平衡化するために使用されるバッファーを指す。特定の事例では、便宜上、洗浄バッファーとローディングバッファーとは同じものでよいが、これは必須ではない。
【0109】
「溶出バッファー」は、対象のポリペプチドを固体相から溶出するために使用される。溶出バッファーの伝導性及び/又はpHは、対象ポリペプチドがイオン交換樹脂から溶出されるようなものである。
【0110】
「再生バッファー」は、再使用可能となるようにイオン交換樹脂を再生するために使用される。再生バッファーは、イオン交換樹脂からほぼすべての不純物及び対象ポリぺプチドを除去するために必要な伝導性及び/又はpHを有する。
【0111】
用語「伝導性」は、二つの電極間に電流を導く水溶液の能力を指す。溶液中、電流はイオン輸送により流れる。したがって、水溶液中のイオン量が増加すると、溶液はより高い伝導性を有することになる。伝導性の測定値の単位は、1センチメートルにつきmilliSeimen(mS/cm)であり、Orion社により販売されている伝導率計を用いて測定することができる。溶液の伝導性は、その中のイオンの濃度を変化させることにより変更することができる。例えば、溶液中のバッファー剤の濃度及び/又は塩(例えばNaCl又はKCl)の濃度は、所望の伝導性を達成するために変更されてもよい。
【0112】
ポリペプチドの「pI」又は「等電点」は、ポリペプチドの正の電荷がその負の電荷と均衡するpHを指す。pIは、ポリペプチドの結合糖(炭水化物)のアミノ酸残基又はシアル酸残基の正味電荷から計算することができるか、又は等電点電気泳動法により決定することができる。
【0113】
イオン交換物質に分子を「結合させる」ことは、分子がイオン交換物質中又はイオン交換物質上に、分子とイオン交換物質の一又は複数の荷電基とのイオン性相互作用により可逆的に固定化されるために適切な条件下(pH/伝導性)において、イオン交換物質に対して分子を露出させることを意味する。
【0114】
イオン交換物質を「洗浄する」とは、イオン交換物質中に又はイオン交換物質上に、適切なバッファーを通過させることを意味する。
【0115】
イオン交換物質から分子(例えばポリペプチド又は不純物)を「溶出する」ことは、イオン交換物質の荷電部位についてバッファーが分子と競合するように、イオン交換物質を囲むバッファーのイオン強度を変更することにより、イオン交換物質から分子を除去することを意味する。
【0116】
「限外濾過」は、静水圧が半透性膜に対して液体を押し付ける膜濾過の一形態である。高分子量の懸濁された固体及び溶質が保持される一方で、水及び低分子量の溶質は膜を通過する。いくつかの実施例では、限外濾過膜は1から100nmの範囲の孔径を有する。用語「限外濾過膜」及び「限外濾過フィルタ」は、交換可能に使用される。
【0117】
「透析濾過」は、溶液から塩又は他の微量溶質を除去するための限外濾過膜を組み込んだ方法である。残余分中の小分子が溶液から分離される一方、大きな分子は保持される。この方法は、溶液の成分及び懸濁物を分子サイズに基づいて分離するために、透過性(多孔性)膜フィルターを選択的に使用する。
【0118】
本明細書において使用される「濾液」は、濾過膜を通過する試料の部分を指す。
【0119】
本明細書において使用される「残余分」は、濾過膜によって実質的に保持される試料の部分を指す。
【0120】
用語「薬学的製剤」は、その中に含有される活性成分の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態であって、製剤が投与される対象にとって許容できない毒性を有する他の成分を含まない調製物を指す。
【0121】
「薬学的に許容される担体」は、対象に非毒性である、有効成分以外の薬学的製剤の成分を指す。薬学的に許容される担体には、限定されないが、バッファー、賦形剤、安定剤、又は保存剤が含まれる。
【0122】
本明細書で用いられる場合、「治療」(及び「治療する(treat)」又は「治療している(treating)」など文法的変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の過程において実行できる。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様では、抗体は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0123】
本明細書中の「約」の値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター自体に対するバリエーションを含む(記載する)。例えば、「約X」との記載には「X」の記載が含まれる。
【0124】
抗IL13抗体
いくつかの実施態様では、IL−13に結合する単離及び精製された抗体が提供される。例示的抗IL13抗体は、既知であり、例えば、限定しないが、レブリキズマブ、IMA−026、IMA−638(アンルキンズマブ(anrukinzumab)とも呼ばれる、INN No.910649−32−0;QAX−576)、トラロキヌマブ(tralokinumab)(CAT−354とも呼ばれる、CAS No.1044515−88−9);AER−001、ABT−308(ヒト化13C5.5抗体とも呼ばれる)を含む。このような抗IL13抗体及びIL13の他の阻害剤の例は、例えば、WO2005/062967、WO2008/086395、WO2006/085938、米国特許第7615213号、米国特許第7501121号、WO2007/036745、WO2010/073119、WO2007/045477に記載されている。一実施態様では、抗IL13抗体はヒト化IgG4抗体である。一実施態様では、抗IL13抗体はレブリキズマブである。一実施態様では、抗IL13抗体は三つの重鎖CDR、即ちCDR−H1(配列番号1)、CDR−H2(配列番号2)、及びCDR−H3(配列番号3)を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は三つの軽鎖CDR、即ちCDR−L1(配列番号4)、CDR−L2(配列番号5)、及びCDR−L3(配列番号6)を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、三つの重鎖CDRと三つの軽鎖CDR、即ちCDR−H1(配列番号1)、CDR−H2(配列番号2)、CDR−H3(配列番号3)、CDR−L1(配列番号4)、CDR−L2(配列番号5)、及びCDR−L3(配列番号6)を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号7及び8から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域VHを含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域VLを含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号7及び8から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域VHと、配列番号9のアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域VLを含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号10又は配列番号11又は配列番号12又は配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、及び配列番号13から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0125】
別の態様では、抗IL13抗体は、配列番号8のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含むIL13抗体は、ヒトIL13へ結合する能力を保持する。特定の実施態様では、配列番号8において、合計1から10のアミノ酸が、置換、改変、挿入及び/又は欠失している。所定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、CDR外の(すなわちFR内の)領域で生じる。任意選択的に、抗IL13抗体は、配列番号8にVH配列を、この配列の翻訳後修飾を含め、含む。
【0126】
別の態様において、配列番号9のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗IL−13抗体が提供される。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗IL−13抗体は、IL抗体へ結合する能力を保持する。特定の実施態様では、配列番号9において、合計1から10のアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失している。特定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、CDR外の領域で(すなわちFR内で)生じる。任意選択的に、抗IL13抗体は、配列番号9にVL配列を、この配列の翻訳後修飾を含め、含む。
【0127】
また別の実施態様では、抗IL−13抗体は、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVL領域と、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVH領域とを含む。
【0128】
以下の表は、レブリキズマブのCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2、及びCDR−L3領域のアミノ酸配列と共に、VH、VL、重鎖配列及び軽鎖配列を示す。以下の表1に示すように、VH及び重鎖はN末端グルタミンを含み、重鎖はC末端リジンも含みうる。当技術分野で既知のように、N末端グルタミン残留物はピログルタミン酸を形成することができ、C末端リジン残留物は、製造方法の間にクリップすることができる。
【0130】
他の組み換えポリペプチド
CHO細胞内で生成される組み換えポリペプチドは、残量又は検出不能な量のみを残してハムスターPLBL2を除去又はそのレベルを低減するために、本明細書に記載の方法によって精製される。このようなポリペプチドには、限定されないが、増殖因子、サイトカイン、免疫グロブリン、抗体、ペプチボディなどが含まれる。
【0131】
特定の例示的抗体には、Abetaに対する抗体、IL17A/Fに対する抗体及びCMVに対する抗体が含まれる。例示的抗Abeta抗体及びこのような抗体を生成する方法については、例えばWO2008011348、WO2007068429、WO2001062801、及びWO2004071408に以前に記載がある。例示的抗IL17 A/F抗体及びこのような抗体を生成する方法については、例えばWO2009136286及び米国特許第8715669号に以前に記載がある。抗CMV−MSLを含む例示的抗CMV抗体、及びこのような抗体を生成する方法については、例えばWO2012047732に以前に記載がある。
【0132】
例示的ポリペプチドには、例えば、CD4、インテグリン及びそれらのサブユニット、例えばベータ7、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモンのような哺乳動物タンパク質;成長ホルモン放出因子;甲状腺傍ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;ct−l−抗トリプシン;インシュリンA鎖;インシュリンB鎖;プロインシュリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体ホルモン;グルカゴン;要因VIIIC、要因IX、組織因子及びフォン・ヴィレブランド因子のような凝固因子;プロテインCのような抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼ又は組織型プラスミノゲン活性剤(t−PA、例えばActivase(登録商標)、TNKase(登録商標)、Retevase(登録商標)のようなプラスミノゲン活性剤;ボンバジーン;トロンビン;腫瘍壊死因子−α及び−β;エンケファリナーゼ;RANTES(通常、T細胞が発現又は分泌される活性化に規制される);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP−I−a);血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン;ミュラー管−阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;DNase;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);IgE、ホルモン又は増殖因子の受容体;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ性因子;神経栄養因子、例えば骨由来の神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、又は−6(NT−3、NT−4、NT−5、又はNT−6)、又は神経成長因子、例えばNGF−β;血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子、例えばaFGF及びbFGF;上皮増殖因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えばTGF−α、及びTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、又はTGF−β5を含むTGF−β;インスリン様増殖−I及び−II(IGF−I及びIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I);インスリン様増殖因子結合タンパク質;他のCDタンパク質、例えばCD3、CD8、CD19及びCD20;エリスロポエチン(EPO);トロンボポエチン(TPO);骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−β、又は−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF、及びG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33など;スーパーオキシドジスムターゼ;T−細胞受容体;表面膜タンパク質;分解促進因子(DAF);例えば、HIVエンベロープの一部分といったウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;制御タンパク質;インテグリン、例えばCDlla、CDllb、CDllc、CD18、インテグリンサブユニット、例えばアルファ4、アルファE、ベータ7;細胞接着分子、例えばICAM、VLA−4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER1、(EGFR)、HER2、HER3又はHER4受容体;Apo2L/TRAIL、及び上に列挙したポリペプチドのいずれかの断片;並びに結合するイムノアドヘシン及び抗体;及び上に列挙したタンパク質のいずれかの生物学的に活性な断片又は変異体が含まれる。
【0133】
追加の例示的ポリペプチドは脳ポリペプチドを含み、これには、限定されないが、βセクレターゼ1(BACE1)、Abeta、上皮増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、tau、アポリポタンパク質E(ApoE)、αシヌクレイン、CD20,ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、γセクレターゼ、デスレセプター6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、P−セレクチン、及びカスパーゼ6、及び上に列挙したポリペプチドのいずれかの断片;並びに結合するイムノアドヘシン及び抗体;及び上に列挙したタンパク質のいずれかの生物学的に活性な断片又は変異体が含まれる。
【0134】
更なる例示的ポリペプチドは治療抗体及びイムノアドヘシンを含み、これには、限定されないが、抗体断片を含む抗体が含まれ、このような抗体は、以下の抗原、即ち:HER1(EGFR)、HER2(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ)、HER3、HER4、VEGF(例えば、ベバシズマブ、ラニビズマブ)、MET(例えば、オナルツズマブ)、CD20(例えば、リツキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ)、CD22、CD1la、CD1lb、CDllc、CD18、ICAM、VLA−4、VCAM、IL−17A及び/又はF、IgE(例えば、オマリズマブ)、DR5、CD40、Apo2L/TRAIL、EGFL7(例えば、パルサツズマブ(parsatuzumab))、NRP1、インテグリンベータ7(例えば、エトロリズマブ(etrolizumab))、IL−13(例えば、レブリキズマブ)、Abeta(例えば、クレネズマブ(crenezumab)、ガンテネルマブ(gantenerumab))、P−セレクチン(例えば、インクラクマブ(inclacumab))、IL−6R(例えば、トシルズマブ(tociluzumab))、IFNα(例えば、ロンタリズマブ)、M1prime(例えば、クイリズマブ(quilizumab))、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、OX40L、TSLP、D因子(例えば、ランパリズマブ(lampalizumab))及び受容体、例えば:IL−9受容体、IL−5受容体、IL−4受容体アルファ、IL−13受容体アルファ1及びIL−13受容体アルファ2、OX40、TSLP−R、IL−7Rアルファ(TSLPの共受容体)、IL17RB(IL−25の受容体)、ST2(IL−33の受容体)、CCR3、CCR4、CRTH2、FcepsilonRI及びFcepsilonRII/CD23(IgEの受容体)のうちの一又は複数に対するものである。他の例示的抗体には、限定されないが、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン受容体抗体、抗p53抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl−2抗体、抗E−カドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15−3抗体、抗CA19−9抗体、抗c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗rasオンコプロテイン抗体、抗Lewis X抗体、抗Ki−67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CDllc抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c−myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパ軽鎖抗体、抗ラムダ軽鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異性抗原抗体、抗S−100抗体、抗tau抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体及び抗Tn−抗原抗体から選択されるものが含まれる。
【0135】
特定の精製方法
本明細書に記載される方法を用いて精製されるタンパク質は、通常、組み換え技術を用いて生成される。組み換えタンパク質を生成するための方法は、例えば、米国特許第5534615号及び同第4816567号に記載されており、これらは参照により本明細書に特に取り込まれる。いくつかの実施態様において、目的のタンパク質は、CHO細胞において生成される(例えば、WO94/11026を参照のこと)。本明細書に記載の方法を用いて精製することができる抗IL13モノクローナル抗体(抗IL13MAb)を含むタンパク質の例は上述した。
【0136】
組み換え技術を用いる場合、本発明のタンパク質は、細胞内、細胞周辺腔内で生成されるか、又は培地中に直接分泌されうる。タンパク質が細胞内に生成される場合、最初の工程として、宿主細胞か又は溶解断片のいずれかである微粒子状破片は、例えば遠心分離又は限外濾過により除去される。タンパク質が培地中に分泌される場合、組み換え宿主細胞は、例えば、タンジェント流濾過により細胞培地から分離されうる。
【0137】
固体相上に固定化されたプロテインAは、抗IL13MAb調製物を精製するために使用される。特定の実施態様では、固体相は、プロテインAを固定化するためのガラス、シリカ、アガロース又はポリスチレン表面を含むカラムである。特定の実施態様では、固体相は孔制御ガラスカラム又はケイ酸カラムである。時に、カラムは、カラムへの非特異的付着を防ぐ目的で、グリセロールといった試薬でコーティングされた。PROSEP A
TMカラムは、Bioprocessing Limitedから市販されており、グリセロールでコーティングされるプロテインA孔制御ガラスカラムの一例である。本明細書で考慮されるカラムの他の例には、POROS(登録商標)50 ATM(ポリスチレン)カラム又はGE Healthcare Life Sciences(アガロース)から市販されているrProtein SEPHAROSE FAST FLOW
TM(アガロース)カラム又はMABSELECT SURE
TM(アガロース)カラムが含まれる。
【0138】
プロテインAクロマトグラフィーのための固体相は、適切なバッファーにより平衡化されている。例えば、平衡バッファーは、25mMのトリス+25mMのNaCl(pH7.70+0.20)である。
【0139】
不純物及び/又は夾雑物を含む、組み換え宿主細胞に由来する調製物は、平衡バッファーと同じであってよいローディングバッファーを用いて平衡化された固体相にロードされる。不純物/夾雑物を含有する調製物が固体相を通って流れるとき、タンパク質は固定化されたプロテインAに吸着され、他の不純物/夾雑物(例えば、タンパク質がCHO細胞内で生成される場合、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP))は固体相に非特異的に結合しうる。
【0140】
順次的に実施される次の工程には、固体相,抗体及び/又はプロテインAに結合した不純物/夾雑物を、中間の洗浄工程において固体相を洗浄することにより除去することが含まれる。ローディング後、固体相は、中間の洗浄工程を開始する前に平衡バッファーで平衡化されうる。
【0141】
中間の洗浄バッファーは、塩と、任意選択的に更なる化合物、例えば洗浄剤(例えば、ポリソルベート、例えばポリソルベート20又はポリソルベート80);(b)溶媒(例えばヘキシレングリコール);及び(c)ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール{PEG])を含みうる。
【0142】
使用される塩は、対象タンパク質に基づいて選択される。例示的塩には、限定されないが、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及びリン酸カリウムが含まれる。
【0143】
組成物中の塩及び(含まれる場合は)更なる化合物の量は、その合計量が不純物/夾雑物を、対象タンパク質を実質的に除去するようなものである。そのような洗浄バッファー中の例示的な塩濃度は、約0.1から約2Mであるか、又は約0.2Mから約0.6Mである。有用な洗浄剤濃度は、例えば洗浄剤がポリソルベートである場合、約0.01から約5%、又は約0.1から1%、又は約0.5%である。例示的溶媒濃度は、約1%から40%、又は約5から約25%である。更なる化合物がポリマー(例えばPEG400又はPEG8000)である場合、その濃度は、例えば約1%から約20%、又は約5%から約15%である。
【0144】
中間の洗浄バッファーのpHは、典型的には約4から約8、又は約4.5から約5.5、又は約5.0である。一実施態様では、pHは7.00+0.10である。
【0145】
上記中間の洗浄工程に続いて、対象タンパク質がカラムから回収される。これは典型的には、適切な溶出バッファーを用いて達成される。タンパク質は、例えば、低いpH、例えば約2から5の範囲、又は約2.5から約3.5の範囲のpHを有する(酸性条件とも言う)溶出バッファーを用いるカラムから溶出される。この目的のための溶出バッファーの例には、シトレート又はアセテートバッファーが含まれる。
【0146】
溶出されたタンパク質調製物は、プロテインAクロマトグラフィー工程の前に又は後で、更なる精製工程に供することができる。更なる生成工程には、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー;透析;タンパク質を捕獲するための抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィー;疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC);硫酸アンモニウム沈殿;陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;限外濾過−ダイアフィルトレーション(UFDF)、及びゲル濾過が含まれる。本明細書の実施例では、プロテインAクロマトグラフィー工程に続いて下流での陰イオン交換(例えば、Q−Sepharose−Fast Flow)又は多モード(例えば混合モード)イオン交換(例えば、CAPTO
TM Adhere)及びHIC(例えば、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 fast flow − high sub)精製工程が行われる。
【0147】
このようにして回収されたタンパク質は、薬学的に許容される担体に製剤化され、そのような分子について既知の様々な診断的使用、治療的使用、又はその他の使用のために使用される。
【0148】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施態様では、クロマトグラフィー材料は、イオン交換クロマトグラフィー材料、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー材料である。いくつかの実施態様において、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、陽に帯電した固体相であり、この固体相の上又は中を通過する水溶液中の陰イオンと交換される遊離陰イオンを有する。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施態様において、陰イオン交換材料は、膜、モノリス、又は樹脂とすることができる。一実施態様において、陰イオン交換材料は樹脂である。いくつかの実施態様において、陰イオン交換材料は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン若しくは第四級アンモニウムイオン官能基、ポリアミン官能基、又はジエチルアミノエチル官能基を含んでもよい。上記のいくつかの実施態様において、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は陰イオン交換クロマトグラフィーカラムである。上記のいくつかの実施態様において、陰イオン交換クロマトグラフィー材料は陰イオン交換クロマトグラフィー膜である。
【0149】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施態様では、イオン交換材料は、従来のクロマトグラフィー材料又は対流性のクロマトグラフィー材料を利用してもよい。従来のクロマトグラフィー材料は、例えば、灌流性の材料(例えば、ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)樹脂)及び拡散性の材料(例えば、架橋アガロース樹脂)を含む。いくつかの実施態様では、ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)樹脂は、Poros(登録商標)樹脂とすることができる。いくつかの実施態様では、架橋アガロース樹脂は、スルホプロピル−Sepharose Fast Flow(「SPSFF」)樹脂である。対流性のクロマトグラフィー材料は、膜(例えば、ポリエーテルスルホン)又はモノリス材料(例えば架橋ポリマー)であってもよい。ポリエーテルスルホンの膜は、Mustangであってもよい。架橋ポリマーのモノリス材料は、架橋ポリ(メタクリル酸グリシジル−co−ジメタクリル酸エチレン)であってもよい。
【0150】
陰イオン交換材料の例には、限定されないが、POROS(登録商標)HQ 50、POROS(登録商標)PI 50、POROS(登録商標)D、Mustang Q、Q SEPHAROSE
TM FF、及びDEAE Sepharoseが含まれる。
【0151】
いくつかの態様では、クロマトグラフィー材料は疎水性相互作用クロマトグラフィー材料である。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、疎水性によって生体分子を分離する液体クロマトグラフィー技術である。HICクロマトグラフィー材料の例には、限定されないが、Toyopearl hexyl 650、Toyopearl butyl 650、Toyopearl phenyl 650、Toyopearl ether 650、Source、Resource、Sepharose Hi−Trap、Octyl sepharose、PHENYL SEPHAROSE
TM high performance、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 fast flow(low sub)and PHENYL SEPHAROSE
TM 6 fast flow(high sub)が含まれる。上記のいくつかの実施態様では、HICクロマトグラフィー材料はHICクロマトグラフィーカラムである。上記のいくつかの実施態様では、HICクロマトグラフィー材料はHICクロマトグラフィー膜である。
【0152】
いくつかの態様では、クロマトグラフィー材料はアフィニティークロマトグラフィー材料である。アフィニティークロマトグラフィー材料の例には、限定されないが、プロテインA又はプロテインGにより誘導体化されるクロマトグラフィー材料が含まれる。アフィニティークロマトグラフィー材料の例には、限定されないが、Prosep−VA、Prosep−VA Ultra Plus、Protein A sepharose fast flow、Tyopearl Protein A、MAbSelect、MABSELECT SURE
TM及びMABSELECT SURE
TM LXが含まれる。上記のいくつかの実施態様では、アフィニティークロマトグラフィー材料は、アフィニティークロマトグラフィーカラムである。上記のいくつかの実施態様では、アフィニティークロマトグラフィー材料はアフィニティークロマトグラフィー膜である。
【0153】
様々なバッファーを、例えば、バッファーの所望のpH、バッファーの所望の伝導性、対象のタンパク質の特性及び精製方法に応じて用いることができる。本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施態様では、本方法はバッファーの使用を含む。バッファーは、ローディングバッファー、平衡バッファー、又は洗浄バッファーとすることができる。いくつかの実施態様では、ローディングバッファー、平衡バッファー及び/又は洗浄バッファーのうちの一又は複数は同じである。いくつかの実施態様では、ローディングバッファー、平衡バッファー及び/又は洗浄バッファーは異なっている。本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施態様では、バッファーは塩を含む。ローディングバッファーは、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、又はこれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施態様では、ローディングバッファーは塩化ナトリウムバッファーである。いくつかの実施態様では、ローディングバッファーは酢酸ナトリウムバッファーである。
【0154】
本明細書で使用される「ロード」とは、クロマトグラフィー材料にローディングされる組成物である。ローディングバッファーは、対象の生成物を含む組成物をクロマトグラフィー材料上にロードするために使用されるバッファーである。クロマトグラフィー材料は、精製される組成物のローディングに先立ち、平衡バッファーを用いて平衡化される。いくつかの実施例では、洗浄バッファーは、組成物のクロマトグラフィー材料上へのローディング後、対象ポリペプチドの固体相からの溶出前に使用される。しかしながら、対象生成物のいくつか、例えばポリペプチドは、洗浄バッファーによりクロマトグラフィー材料から除去されてもよい(例えばフロースルーモード)。
【0155】
溶出とは、本明細書で使用される場合、生成物の除去(例えばクロマトグラフィー材料からポリペプチドの)である。溶出バッファーは、クロマトグラフィー材料からポリペプチド又は対象のその他生成物を溶出するために使用されるバッファーである。多くの場合、溶出バッファーは、ロードバッファーとは異なる物理的特性を有する。例えば、溶出バッファーは、ロードバッファーとは異なる伝導性又は異なるpHを有する。いくつかの実施態様では、溶出バッファーはロードバッファーより低い伝導性を有する。いくつかの実施態様では、溶出バッファーはロードバッファーより高い伝導性を有する。いくつかの実施態様では、溶出バッファーはロードバッファーより低いpHを有する。いくつかの実施態様では、溶出バッファーはロードバッファーより高いpHを有する。いくつかの実施態様では、溶出バッファーはロードバッファーとは異なる伝導性及び異なるpHを有する。溶出バッファーは、より高い又はより低い伝導性、並びにより高い又は低いpHのあらゆる組み合わせを有することができる。
【0156】
伝導性とは、二つの電極間の電流を伝導する水溶液の能力を指す。溶液中、電流はイオン輸送により流れる。したがって、水溶液中に存在するイオン量が増加すると、溶液はより高い伝導性を有することになる。伝導性の基本測定単位は、Siemen(又はmho)、mho(mS/cm)であり、Orion伝導率計の様々なモデルのような伝導率計を使用して測定することができる。電解質伝導率は溶液中のイオンの電流を流す能力であるため、溶液の導電率は、その中のイオンの濃度を変化させることにより変更されうる。例えば、溶液中のバッファー剤の濃度及び/又は塩(例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化カリウム)の濃度は、所望の伝導性を達成するために変更されてもよい。好ましくは、様々なバッファーの塩濃度は、所望の伝導性を達成するために改変される。
【0157】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施態様では、流量は、約50CV/時間未満、約40CV/時間未満、又は約30CV/時間未満である。流量は、約5CV/時間から50CV/時間、約10CV/時間から40CV/時間、又は18CV/時間から36CV/時間であってもよい。いくつかの実施態様では、流量は、約9CV/時間、約18CV/時間、約25CV/時間、約30CV/時間、約36CV/時間、又は約40CV/時間である。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施態様では、流量は、約100cm/hr未満、約75cm/hr未満、又は約50cm/hr未満である。流量は、約25cm/hrから150cm/hr、約25cm/hrから100cm/hr、約50cm/hrから100cm/hr、又は約65cm/hrから85cm/hr、又は約50cm/hrから250cm/hr、又は約100cm/hrから250cm/hr、又は約150cm/hrから250cm/hrでもよい。
【0158】
ベッド高は、使用されるクロマトグラフィー材料の高さである。本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施態様では、ベッド高は、約3cm、約10cm、又は15cmより大きい。ベッド高は、約3cmから35cm、約5cmから15cm、約3cmから10cm、又は約5cmから8cmでもよい。いくつかの実施態様では、ベッド高は、約3cm、約5cm、約10cm、又は約15cmである。いくつかの実施態様では、ベッド高は、ロード中のポリペプチド又は夾雑物の量に基づいて決定される。
【0159】
いくつかの実施態様では、クロマトグラフィーは、約1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、25mL、30mL、40mL、50mL、75mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、1L、2L、3L、4L、5L、6L、7L、8L、9L、10L、25L、50L、100L、200L、400L、又は450Lの容積の容器のカラムにおいて行われる。
【0160】
いくつかの実施態様では、画分がクロマトグラフィーから収集される。いくつかの実施態様では、収集される画分は、約0.01CV、0.02CV、0.03CV、0.04CV、0.05CV、0.06CV、0.07CV、0.08CV、0.09CV、0.1CV、0.2CV、0.3CV、0.4CV、0.5CV、0.6CV、0.7CV、0.8CV、0.9CV、1.0CV、2.0CV、3.0CV、4.0CV、5.0CVより大きい。いくつかの実施態様では、ポリペプチドなどの生成物を含有する画分がプールされる。いくつかの実施態様では、ロードされた画分由来及び溶出画分由来のポリペプチドを含有する画分がプールされる。画分中のポリペプチドの量は当業者であれば決定することができ、例えば、画分中のポリペプチドの量は紫外分光法により決定することができる。いくつかの実施態様では、検出可能なポリペプチド断片を含有する画分がプールされる。
【0161】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施態様では、少なくとも一つの不純物又は夾雑物は、宿主細胞物質、例えばCHOP;浸出されたタンパク質A;核酸;所望のポリペプチドの変異体、断片、凝集体又は誘導体;別のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス性夾雑物;細胞培養培地成分、ゲンタマイシン等のうちの一又は複数である。いくつかの実施例では、不純物又は夾雑物は、例えば限定されないが、細菌細胞(大腸菌細胞など)、昆虫細胞、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、真菌細胞に由来する宿主細胞タンパク質(HCP)であってもよい。
【0162】
宿主細胞タンパク質(HCP)は、ポリペプチドが生成された細胞由来のタンパク質である。例えば、CHOPは、宿主細胞由来のタンパク質、即ち、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質である。CHOPの量は、酵素結合免疫吸着法(「ELISA」)又は質量分析によって測定されうる。本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施態様では、HCP(例えばCHOP)の量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%を上回って低減される。HCPの量は、約10%から99%、約30%から95%、約30%から99%、約50%から95%、約50%から99%、約75%から99%、又は約85%から99%だけ低減されうる。いくつかの実施態様では、HCPの量は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%だけ低減される。いくつかの実施態様では、低減は、精製工程において回収された組成物中のHCPの量を、精製工程前の組成物中のHCPの量と比較することにより決定される。
【0163】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施態様では、本方法は、精製されたポリペプチドを回収することを更に含む。いくつかの実施態様では、精製されたポリペプチドは、本明細書に記載の精製工程のいずれかから回収される。クロマトグラフィー工程は、陰イオン交換クロマトグラフィー、HIC、又はプロテインAクロマトグラフィーとすることができる。いくつかの実施態様では、第1のクロマトグラフィー工程では、プロテインAに続いて陰イオン交換が行われるか、又は多モードイオン交換に続いてHICが行われる。
【0164】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、ウイルス濾過によりクロマトグラフィーに続いて更に精製される。ウイルス濾過は、ポリペプチド精製供給流中のウイルス性夾雑物の除去である。ウイルス濾過の例には、限外濾過及び精密濾過が含まれる。いくつかの実施態様では、ポリペプチドは、パルボウイルスフィルターを用いて精製される。
【0165】
いくつかの実施態様では、ポリペプチドはクロマトグラフィー後に濃縮される。濃縮法の例は、当技術分野において既知であり、限外濾過及びダイアフィルトレーションを含むがこれらに限定されない。
【0166】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施態様では、本方法は、本精製方法の精製ポリペプチドを薬学的に許容される担体と組み合わせることを更に含む。
【0167】
モノクローナル抗体
いくつかの実施態様では、本発明の方法により精製される抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られ、即ち、モノクローナル抗体の生成中に生じうる変異体(通常少量で存在する変異体など)を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。したがって、修飾語「モノクローナル」は、個別抗体又はポリクローナル抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。
【0168】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製されてもよく、又は、組み換えDNA法により作製されてもよい(米国特許第4816567号)。
【0169】
ハイブリドーマ法において、マウス又はハムスター等のその他適切な宿主動物は、免疫付与に使用されるポリペプチドと特異的に結合することになる抗体を生成するか又は生成する能力があるリンパ球を生じさせるように、本明細書に記載されるように免疫化される。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫化されてもよい。次いで、リンパ球は、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。
【0170】
したがって、ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、非融合の親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を含む適切な培養培地中で播種され、培養される。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマの培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むことになり、この物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。
【0171】
いくつかの実施態様において、骨髄腫細胞は、効率的に融合するものであり、選択された抗体生成細胞による抗体の安定した高レベルの生成をサポートし、HAT培地などの培地に対して感受性である。いくつかの実施態様において、これらのうち骨髄腫細胞株は、マウス骨髄種株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍に由来するもの及びAmerican Type Culture Collection, Rockville, Maryland USAから入手可能なSP−2又はX63−Ag8−653細胞である。ヒトモノクローナル抗体の生成のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も記載されている(Kozbor, J. Immunol. 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0172】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の生成についてアッセイする。いくつかの実施態様において、ハイブリドーマ細胞により生成されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降により又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定される。
【0173】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al., Anal. Biochem. 107:220 (1980)のスキャッチャード解析により決定することができ。
【0174】
所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を生成するハイブリドーマ細胞が同定された後で、クローンを、限定希釈手順によりサブクローニングし、標準的な方法により成長させてもよい(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。この目的のための好適な培養培地は、例えば、D−MEM又はRPMI−1640培地である。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長させてもよい。
【0175】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、ポリペプチドA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーにより、培養培地、腹水又は血清から適切に分離される。
【0176】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定される。いくつかの実施態様において、ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAのソースとして機能する。単離されたDNAを発現ベクター中に配置し、次いでこれを、他の形では免疫グロブリンポリペプチドを生成しない宿主細胞中、例えば、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞中にトランスフェクトして、組み換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成してもよい。抗体をコードするDNAの細菌における組み換え発現に関する総説は、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol. 5:256-262 (1993) and Pluckthun, Immunol. Revs., 130:151-188 (1992)を含む。
【0177】
更なる実施態様において、抗体又は抗体断片は、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)に記載される技術を使用してつくられた抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用した、それぞれ、マウス及びヒト抗体の単離について記載している。後の出版物は、鎖シャッフリングによる高親和性(nMレンジ)ヒト抗体の生成(Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992))、並びに、非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組み換え(Waterhouse et al., Nuc. Acids. Res. 21:2265-2266 (1993))について記載している。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替手段である。
【0178】
DNAは、例えば相同マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(米国特許第4816567号;Morrison et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 81:6851 (1984))、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部若しくは一部を共有結合することによっても修飾されうる。
【0179】
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換されるか、又は抗体の一の抗原結合部位の可変ドメインに置換されて、抗原に対して特異性を有する一の抗原結合部位と、異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原部位とを含むキメラ二価抗体が創出される。
【0180】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様において、抗体はIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMである。いくつかの実施態様において、抗体はIgGモノクローナル抗体である。
【0181】
ヒト化抗体
いくつかの実施態様において、抗体はヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化する方法は、当技術分野で記載されている。いくつかの実施態様において、ヒト化抗体は、非ヒトであるソースから導入された一又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、典型的には「インポート」可変ドメインから取得される。ヒト化は、基本的には、Winteら(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988))の方法に従って、超可変領域の配列をヒト抗体の対応する配列と置換することにより実施することができる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ないドメインが、非ヒト種由来の対応する配列により置換されている、キメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域残基及び可能であればいくつかのFR残基が、齧歯動物抗体における相似部位由来の残基により置換されているヒト抗体である。
【0182】
抗原性を低下させるには、ヒト化抗体を作製する際に使用する軽重両方のヒト可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメインの配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次いで、その齧歯動物の配列と最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク領域(FR)として採択する(Sims et al., J. Immunol. 151:2296 (1993); Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901 (1987))。別の方法は、軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループの、すべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体について使用してもよい(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285 (1992); Presta et al., J. Immunol. 151:2623 (1993))。
【0183】
抗体が、抗原に対する高親和性及び他の望ましい生物学的特性を保持した状態でヒト化されることが更に重要である。この目標を達成するために、本方法のいくつかの実施態様において、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用した、親配列及び多様な概念的ヒト化生成物の分析方法により調製される。三次元の免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者にはなじみがある。選択された候補免疫グロブリン配列の推定される三次元立体配座構造を図示及び表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示を精査することにより、候補免疫グロブリン配列が機能する際に残基が果たすと考えられる役割の分析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原と結合する能力に影響する残基の分析が可能になる。このようにして、FR残基がレシピエント配列及びインポート配列から選択され、組み合わされて、所望の抗体特性(例えば、標的抗原に対する親和性の向上が達成されうる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合への影響を及ぼすことに直接且つ最も実質的に関わっている。
【0184】
ヒト抗体
いくつかの実施態様において、抗体はヒト抗体である。ヒト化の代替策として、ヒト抗体を生成することができる。例えば、免疫化の際に、内因性の免疫グロブリンが生成されなくてもヒト抗体の完全なレパートリーを生成する能力があるトランスジェニック動物(例えばマウス)を生成することが、現在可能である。例えば、キメラマウス及び生殖細胞系変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J
H)遺伝子のホモ接合型欠失は、内因性抗体生成の完全な阻害をもたらすことが記載されている。こうした生殖細胞系変異体マウスにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの導入により、抗原チャレンジの際にヒト抗体が生成される。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature 362:255-258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immuno. 7:33 (1993);並びに米国特許第5591669号;同第5589369号;及び同第5545807号参照。
【0185】
或いは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., Nature 348:552-553 (1990))を使用して、免疫化されていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメインの遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を生成することができる。この技術によれば、抗体のVドメインの遺伝子は、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdのメジャー又はマイナーコートポリペプチド遺伝子中にインフレームでクローニングされて、ファージ粒子の表面上で機能的抗体断片としてディスプレイされる。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAのコピーを含んでいるため、抗体の機能特性に基づく選択は、それらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子の選択にもなる。したがって、ファージは、B細胞の特性の一部を模倣する。ファージディスプレイは、様々なフォーマットで実施することができ、それらの総説については、例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993)を参照のこと。複数のソースのV遺伝子セグメントを、ファージディスプレイに使用することができる。Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)は、免疫化されたマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小規模なランダムコンビナトリアルライブラリーから、抗オキサゾロン抗体の多種多様なアレイを単離した。免疫化されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築し、抗原の多種多様なアレイに対する抗体(自己抗原を含む)を、Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991), or Griffith et al., EMBO J. 12:725-734 (1993)により記載された技術に基本的に従って単離することができる。米国特許第5565332号及び第5573905号も参照のこと。
【0186】
ヒト抗体は、インビトロで活性化されたB細胞により生成されてもよい(米国特許第5567610号及び第5229275号を参照のこと)。
【0187】
抗体断片
いくつかの実施態様において、抗体は抗体断片である。様々な技術が抗体断片の生成のために開発されてきた。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク分解性消化を介して誘導された(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992) and Brennan et al., Science 229:81 (1985)を参照のこと)。しかしながら、これらの断片は、今では組み換え宿主細胞により直接生成することができる。例えば、抗体断片は、前述の抗体ファージライブラリーから単離することができる。或いは、Fab’−SH断片は、大腸菌から直接回収し、化学的に結合してF(ab’)2断片を形成しうる(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。F(ab’)2断片は、別の方法によって、組み換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗体断片の生成のためのその他の技術は、当業者にとって明らかであろう。その他の実施態様において、抗体の選定は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。抗体断片は、例えば、米国特許第5641870号に記載されるように「直線抗体」であってもよい。そのような直線抗体断片は、単一特異的又は二重特異的であってよい。
【0188】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗体の断片が提供される。いくつかの実施態様において、抗体断片は抗原結合断片である。いくつかの実施態様において、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2断片、scFv、Fv及びダイアボディからなる群より選択される。
【0189】
キメラポリペプチド
本明細書に記載されているポリペプチドは、別の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列と融合されるポリペプチドを含むキメラ分子を形成する方式で修飾されてもよい。いくつかの実施態様において、キメラ分子は、ポリペプチドと、抗タグ抗体が選択的に結合することができるエピトープをもたらすタグポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般に、ポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に配置される。そのようなエピトープタグが付加された形態のポリペプチドの存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出することができる。また、エピトープタグがもたらされることで、抗タグ抗体、又は、エピトープタグに結合する別の種類の親和性マトリックスを使用したアフィニティー精製により、ポリペプチドを容易に精製することができる。
【0190】
その他
ポリペプチドの、別の種類の共有結合性修飾は、ポリペプチドを、様々な非タンパク質ポリマーの一つ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又は、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーと連結させることを含む。ポリペプチドは、例えば、コアセルベーション技術又は界面重合法によって調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ(メチルメタシレート)マイクロカプセル)、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)、又はマクロエマルジョンに封入されてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Gennaro, A.R., Ed., (1990)に開示されている。
【0191】
ポリペプチドの取得
本明細書に記載されている精製方法において使用されるポリペプチドは、組み換え法を含め、当技術分野において周知の方法を使用して取得することができる。次の項では、これらの方法に関する手引きを提供する。
【0192】
ポリヌクレオチド
本明細書で互換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。
【0193】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、任意の供給源から入手されてもよく、そのような供給源は、限定されないが、ポリペプチドmRNAが備わっており検出可能なレベルでそれを発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリーを含む。したがって、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に取得できる。ポリペプチドをコードする遺伝子は、ゲノムライブラリーから、又は、既知の合成手順(例えば、自動化された核酸合成)により取得されてもよい。
【0194】
例えば、ポリヌクレオチドは、免疫グロブリン分子鎖全体、例えば軽鎖又は重鎖をコードしていてもよい。完全な重鎖は、重鎖可変領域(V
H)だけでなく、重鎖定常領域(C
H)を含み、C
Hは、典型的には三つの定常ドメイン:C
H1、C
H2及びC
H3;及び「ヒンジ」領域を含むであろう。状況によっては、定常領域が存在することが望ましい。
【0195】
ポリヌクレオチドによりコードされうる他のポリペプチドは、抗原結合抗体断片、例えば単一ドメイン抗体(「dAb」)、Fv、scFv、Fab’及びF(ab’)2、並びに「ミニボディ」が挙げられる。ミニボディは、そこからCH1及びCK又はCLドメインが切り取られた、(典型的には)二価の抗体断片である。ミニボディは従来の抗体より小さいため、臨床的/診断的用途において、より良好な組織浸透を達成するはずであるが、二価であることから、dAb等の一価抗体断片より高い結合親和性を保持するはずである。したがって、文脈でそうでないことが指示されない限り、用語「抗体」は、本明細書において使用される場合、全抗体分子だけでなく、上述の種類の抗原結合抗体断片を包含する。好ましくは、コードされているポリペプチド中に存在する各フレームワーク領域は、対応するヒトアクセプターフレームワークに関連する少なくとも一のアミノ酸置換を含むであろう。したがって、例えば、フレームワーク領域は、アクセプターフレームワーク領域に関して合計で3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15のアミノ酸置換基を含みうる。
【0196】
適切には、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、単離及び/又は精製されうる。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドは単離されたポリヌクレオチドである。
【0197】
用語「単離されたポリヌクレオチド」は、分子がその正常環境又は天然環境から除去又は分離されること、又はその正常環境又は天然環境に存在しないように生成されていることを示すことを意図している。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドは精製されたポリヌクレオチドである。「精製された」という用語は、少なくともいくつかの夾雑分子又は物質が除去されたことを示すことを意図している。
【0198】
適切には、ポリヌクレオチドは、関連のポリヌクレオチドが組成物中に存在する主要な(即ち、最も豊富な)ポリヌクレオチドを構成するように、実質的に精製される。
【0199】
ポリヌクレオチドの発現
後述は、主に、ポリペプチドコード化ポリヌクレオチドを含有するベクターで形質転換又はトランスフェクトされた細胞を培養することによるポリペプチドの生成に関する。言うまでもなく、当技術分野で周知の別法を用いてポリペプチドを調製することが考慮される。例えば、適切なアミノ酸配列又はその一部を、固相技術を用いた直接的ペプチド合成により生成することができる(例えば、Stewart et al., Solid-Phase Peptide Synthesis W.H. Freeman Co., San Francisco, Calif. (1969); Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154 (1963)参照)。インビトロでのタンパク質合成を、手作業による技術を用いて又は自動化により実施してもよい。自動化された合成は、例えば、製造者の指示を用いるApplied Biosystems Peptide Synthesizer(Foster City、Calif.)を用いて達成することができる。ポリペプチドの様々な部分を別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて組み合わせて所望のポリペプチドを生成してもよい。
【0200】
本明細書に記載のポリヌクレオチドは、ポリペプチドの生成のための発現ベクター中に挿入される。用語「制御配列」は、特定の宿主生物中において動作可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。制御配列には、限定されないが、プロモーター(例えば、天然に結合した又は異種プロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント、及び転写終結配列が含まれる。
【0201】
ポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチド配列と機能的関係に配置されたとき、「動作可能に連結される」。例えば、プレ配列又は分泌リーダーの核酸は、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されるならば、ポリペプチドの核酸に動作可能に連結されており、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に動作可能に連結されており、又は、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されているならば、コード配列に動作可能に連結されている。通常、「作動可能に結合」とは、結合する核酸配列が近接しており、分泌リーダーの場合には、近接しており且つ読み取り相(reading phase)にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。連結は、簡便な制限部位におけるライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合は、慣行に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0202】
抗体の場合、軽鎖及び重鎖は、同じ又は異なる発現ベクターにおいてクローニングすることができる。免疫グロブリン鎖をコードする核酸セグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を保証する発現ベクター中の制御配列に動作可能に連結する。
【0203】
ポリヌクレオチド配列を含有するベクター(例えば、可変重及び/又は可変軽鎖コード化配列及び任意選択的発現制御配列)は、細胞宿主の型に応じて決定される周知の方法により宿主細胞中に導入することができる。例えば、原核細胞には塩化カルシウムのトランスフェクションが一般に用いられ、この場合、リン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、微粒子銃又はウイルスに基づくトランスフェクションが他の細胞宿主のために使用可能である。(概要に関してはSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, 2nd ed., 1989を参照。)哺乳動物細胞を形質転換するために使用される他の方法には、ポリブレン、原形質融合、リポソーム、エレクトロポレーション、及び微量注入が含まれる。トランスジェニック動物の生成のために、導入遺伝子を受精卵母細胞に微量注入することができるか、又は胚性幹細胞のゲノムに取り込むことができ、このような細胞の核が除核卵母細胞に導入される。
【0204】
ベクター
用語「ベクター」は、発現ベクター及び形質転換ベクター及びシャトルベクターを含む。
【0205】
用語「発現ベクター」は、インビボ又はインビトロ発現能を有するコンストラクトを意味する。
【0206】
用語「形質転換ベクター」は、一つのエンティティから(その種又は別の種の)別のエンティティへ移動させることのできるコンストラクトを意味する。コンストラクトが一つの種から別の種へ、例えば大腸菌族大腸菌プラスミドから、バチルス属といった細菌へと移動させることができるものである場合、形質転換ベクターは「シャトルベクター」と呼ばれることがある。場合によっては、それは大腸菌プラスミドから植物のアグロバクテリウムへ移動させることができるコンストラクトでありうる。
【0207】
ベクターを、後述のように適切な宿主細胞に形質転換することで、ポリペプチドの発現をもたらすことができる。様々なベクターが公的に入手可能である。例えば、ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージである。適切な核酸配列が、様々な手順によりベクター中に挿入されうる。一般に、DNAは、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に、当技術分野で既知の技術を用いて挿入される。これら成分のうちの一又は複数を含有する適切なベクターの構築には、当業者に既知の標準のライゲーション技術が用いられる。
【0208】
ベクターは、例えば、複製開始点を持つプラスミド、ウイルス又はファージベクターであり、任意選択的に前記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター及び任意選択的にプロモーターの制御因子である。ベクターは、当技術分野で周知の一又は複数の選択可能なマーカー遺伝子を含みうる。
【0209】
これら発現ベクターは、エピソーム又は宿主染色体DNAの一体部分として、典型的には複製可能な宿主生物中にある。
【0210】
宿主細胞
宿主細胞は、例えば、細菌、酵母又は他の真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞である。
【0211】
遺伝子操作されたトランスジェニック多細胞宿主生物を使用してポリペプチドを生成することができる。生物体は、例えば、トランスジェニック哺乳動物生物体(例えば、トランスジェニックヤギ又はマウス株)でよい。
【0212】
適切な原核生物には、限定されないが、グラム陰性又はグラム陽性生物体のような真正細菌、例えば、大腸菌のような腸内細菌科が含まれる。様々な大腸菌株、例えば大腸菌K12株MM294(ATCC31446);大腸菌X1776(ATCC31537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5 772(ATCC53635)が公的に利用可能である。他の適切な原核宿主細胞には、大腸菌属のような腸内細菌科、例えば、大腸菌、エンテロバクター属、エルウイニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えば、ネズミチフス菌、セラチア属、例えば、セラチア菌(Serratia marcescans)、及び赤痢菌、並びに枯草菌及びバチルスリケニフォルミス(B.licheniformis)(例えば、バチルス・リケニフォルミス(B.licheniformis)41P)といった桿菌、緑膿菌といったシュードモナス属、及びストレプトミセス属(Streptomyces)が含まれる。これらの例は限定的なものではなく説明的なものである。株W3110は、組み換えポリヌクレオチド生成物の発酵のための共通の宿主株であるため、一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞はタンパク質分解酵素の最小量を分泌する。例えば、株W3110は、宿主に内因性のポリペプチドをコードする遺伝子中において遺伝子変異を生じさせるように修飾することができ、そのような宿主の例には、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF−lac)169 degP ompT kan’を有する大腸菌W3110株27C7(ATCC55244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF−lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kan’を有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を有する株37D6である大腸菌W3110株40B4;及び変異体周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株である。代替的に、クローニングのインビトロ法、例えば、PCR又は他の核酸ポリメラーゼ鎖が適切である。
【0213】
このような原核生物宿主中において、典型的には宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば、複製開始点)を含有するであろう発現ベクターを作製することができる。加えて、任意の数の種々の周知のプロモーター、例えばラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、又はファージラムダ由来のプロモーター系が存在するであろう。プロモーターは、任意選択的にオペレーター配列により、典型的には発現を制御し、転写及び翻訳の開始及び完了のための、リボソーム結合部位配列などを有するであろう。
【0214】
真核微生物を発現に使用してもよい。糸状菌又は酵母等の真核微生物は、ポリペプチドコード化ベクターにとって適切なクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、一般的に使用される下等真核生物宿主微生物である。他には、分裂酵母;例えば、クルイベロミセス・ラクチス(MW98−8C、CBS683、CBS4574)、クルイベロミセス・フラジリス(ATCC12424)、クルイベロミセス・ブルガリカス(ATCC16045)、クルイベロミセス・ウィッカーラミ(wickeramii)(ATCC24178)、クルイベロミセス・ワルティ(waltii)(ATCC56500)、クルイベロミセス・ドロソフィラルム(drosophilarum)(ATCC36906)、クルイベロミセス・サーモトレランス(thermotolerans)及びクルイベロミセス・マルキシアナス(marxianus)等のクルイベロミセス宿主;ヤロウィア属(EP402226);ピキア・パストリス;カンジダ属;トリコデルマ・リージア(Trichoderma reesia);アカパンカビ;シュワンニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)等のシュワンニオミセス(Schwanniomyces)属;及び、例えばアカパンカビ属、アオカビ属、トリポクラディウム属(Tolypocladium)などの糸状菌、及び為巣性麹菌及びクロカビ等のアスペルギルス宿主が含まれる。メチロトローフ酵母がここでは適切であり、これには、限定されないが、ハンゼヌラ属、カンジダ属、クロエケラ属、ピキア属、サッカロミセス属、トルロプシス属、及びロドトルラ属からなる属から選択されるメタノール上で増殖できる酵母が含まれる。サッカロミセス属は、所望の発現制御配列(例えば、プロモーター)、複製開始点、終止配列などを有する適切なベクターを含む、好ましい酵母宿主である。典型的なプロモーターは、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ及び解糖酵素を含む。誘導可能な酵母プロモーターは、中でも、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソシトクロム(isocytochrome)C、並びにマルトース及びガラクトースの利用に関与する酵素由来のプロモーターを含む。
【0215】
微生物に加えて、哺乳動物組織細胞培養物も、本明細書に記載のポリペプチドを発現及び生成するために使用することができ、いくつかの事例ではそれが好ましい(Winnacker, From Genes to Clones VCH Publishers, N.Y., N.Y. (1987)参照)。いくつかの実施態様の場合、異種ポリペプチド(例えば、インタクトな免疫グロブリン)を分泌できる複数の適切な宿主細胞株が当技術分野で開発されているため、真核細胞が好ましく、それにはCHO細胞株、様々なCos細胞株、ヒーラ細胞、好ましくは骨髄腫細胞株、又は形質転換B細胞又はハイブリドーマが含まれる。いくつかの実施態様では、哺乳動物の宿主細胞はCHO細胞である。
【0216】
いくつかの実施態様では、宿主細胞は脊椎動物の宿主細胞である。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(浮遊培養における増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO又はCHO−DP−12株);マウスセルトリ細胞;サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞;MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝ヘパトーマ株(Hep G2)である。
【0217】
製剤及び製剤作製方法
本明細書においては、本明細書に記載の方法により精製されたポリペプチド(例えば、抗体)を含む製剤及び製剤の作製方法も提供される。例えば、精製されたポリペプチドは、薬学的に許容される担体と組み合わせらることができる。
【0218】
いくつかの実施態様におけるポリペプチド製剤は、所望の純度を有するポリペプチドを、任意選択的な薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と混合することによって(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で貯蔵のために調製されうる。
【0219】
本明細書において使用される「担体」は、用いられる投与量及び濃度でそれに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性の、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤を含む。時に、生理的に許容可能な担体は、水性のpH緩衝液である。
【0220】
許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸のようなバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む、単糖類、二糖類及び他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム、金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体);及び/又はTWEEN
TM、PLURONICS
TM若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0221】
いくつかの実施態様では、ポリペプチド製剤中のポリペプチドは機能活性を維持する。
【0222】
インビボ投与に用いられる製剤は滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【0223】
また、本明細書中の製剤は治療される特定の徴候に必要な一を超える活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するも含有していてよい。例えば、ポリペプチドに加えて、一つの製剤に別のポリペプチド(例えば、抗体)を含めることが望ましい。代替的に、又は追加的に、組成物は、化学療法剤、細胞傷害性剤、サイトカイン、成長阻害剤、抗ホルモン剤,及び/又は心保護剤を更に含むことができる。そのような分子は、適切には、意図される目的に有効な量の組み合わせで存在する。
【0224】
本明細書に記載される抗IL13抗体の例示的製剤は、WO2013/066866に提供されている。
【0225】
製造品
本明細書に記載の方法により精製されるポリペプチド及び/又は本明細書に記載の方法により精製されたポリペプチドを含む製剤は、製造品内部に収容されうる。製造品は、ポリペプチド及び/又はポリペプチド製剤を収容する容器を含むことができる。特定の実施態様では、製造品は、(a)本明細書に記載のポリペプチド及び/又はポリペプチド製剤を含む組成物を中に含む容器;及び(b)対象に対して製剤を投与するための指示を有する添付文書を備える。
【0226】
製造品は、容器と容器上の又は容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物を含む。適切な容器は、例えばボトル、バイアル、シリンジなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。容器は、製剤を保持又は収容し、且つ滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針により穿刺可能な静脈内溶液バッグ又はストッパーを有するバイアルでありうる)。組成物中の少なくとも一つの活性な薬剤はポリペプチドである。ラベル又は添付文書は、提供されるポリペプチド及び任意の他の薬物の投与量及び投与間隔に関する特定の指針により対象における組成物の使用を示す。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでもよい。いくつかの実施態様では、容器はシリンジである。いくつかの実施態様では、シリンジは、注射器内部に更に収容される。いくつかの実施態様では、注射器は自己注射器である。
【0227】
「添付文書」は、治療薬の商業的パッケージに慣習的に含められる説明書を指すために使用され、そのような説明書は、当該治療薬の使用に関する徴候、用法、用量、投与、禁忌、パッケージされている製品と併用させる他の治療薬、及び/又は警告を含む。
【0228】
本明細書に記載の抗IL13抗体の製剤を含有する例示的製造品は、WO2013/066866に提供されている。
【0229】
本発明の更なる詳細は、以下の非限定的な実施例により説明される。本明細書中のすべての参照文献の開示は、参照により本明細書中に明示的に援用される。
【実施例】
【0230】
本明細書の以下の実施例及び他で使用される「PLB2」及び「PLBL2」及び「PLBD2」は、交換可能に使用され、酵素「ホスホリパーゼB様2」又はその同義語である「ホスホリパーゼBドメイン様2」を指す。
【0231】
実施例1−一般的方法
すべての実施例の材料及び方法は、実施例の中で特に断らない限り、下記に示すように実施された。
【0232】
MAb供給原料
すべての実施例のMAb供給原料は、Genentech社(South San Francisco、CA、U.S.A.)の工業規模、パイロット規模又は小規模の細胞培養物バッチから選択された。下記実施例に示すように、細胞培養物の発酵期間の後、細胞を分離し、特定の事例では清澄液(採取された細胞培養液、HCCF)を、プロテインAクロマトグラフィー及び一又は複数の追加的クロマトグラフィー工程及び濾過工程により精製した。
【0233】
MAb定量化
抗体の濃度を、UV可視分光光度計(8453モデルG1103A;Agilent Technologies;Santa Clara、CA、U.S.A.)又はNanoDrop 1000モデルND−1000(Thermo Fisher Scientific;Waltham、MA、U.S.A.)を用いて、280及び320nmの吸光度により決定した。抗体以外の種(即ち不純物)の濃度は十分に低く、UV吸光度に大きな影響を有さなかった。必要に応じて、0.1〜1.0の範囲の吸光度単位の適切な非干渉性の希釈剤を用いて試料を希釈した。試料調製及びUV測定を2回行い、平均値を記録した。mAb吸収係数は1.42から1.645/mg・ml・cmであった。
【0234】
総CHO宿主細胞タンパク質(CHOP)の定量化
ELISAを用いて総宿主細胞タンパク質(CHOPと呼ぶ)のレベルを定量化した。生成物中のCHOタンパク質を検出するために使用されたELISAは、サンドイッチELISAフォーマットに基づくものであった。CHOPに対してアフィニティー精製されたポリクローナル抗体を、96ウェルマイクロタイタープレート上にコートした。標準、コントロール、及び試料を、次いで別々のウェル中に二つずつロードした。試料中に存在する場合、CHOPはコート抗体(ポリクローナル抗CHOP)に結合する。インキュベーション工程の後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした抗CHOPポリクローナル抗体をプレートに加えた。最終洗浄工程の後、CHOPを、KPL社からSUREBLUE RESERVE
TMとしても入手可能なテトラメチルベンジジン(TMB)(Kirkegaard & Perry Laboratories、Inc.,Gaithersburg、MD、cat no.53−00−03)の溶液を加えることにより精製した。これは、HRP酵素により作用させると、比色シグナルを生成する。450nmにおける光学濃度(OD)を各ウェル中において測定した。5パラメーター曲線適合プログラム(SOFTMAX(登録商標)Pro、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して標準曲線を生成し、標準曲線から試料のCHOP濃度を算出した。総CHOP ELISAのアッセイ範囲は5から320ng/mlであった。CHOP濃度(ng/mL)は、CHOP標準をキャリブレーターとして使用した試料中のCHOPの量を指す。CHOP比(ng/mg又はppm)は、生成物濃度に対するCHOP濃度の算出比を指し、特定の事例では、試験方法に関する報告値であった。総CHOP ELISAを使用して試料中の総CHOPレベルを定量化できるが、これにより個々のタンパク質の濃度は定量化されない。
【0235】
マウスモノクローナル抗ハムスターPLBL2 ELISAアッセイ
マウス抗ハムスターPLBL2モノクローナル抗体の生成及びこのような抗体を用いた組み換えポリペプチド調製物中におけるPLBL2の検出及び定量化のためのELISAアッセイの開発は、米国仮特許出願第61/877503号及び同第61/991228号に記載されている。簡単に説明すると、アッセイは以下のように実行される。
【0236】
マウスのモノクローナル抗体19C10を、半分の面積の96ウェルマイクロタイタープレート上に、炭酸塩バッファー(0.05Mの炭酸ナトリウム、pH9.6)中0.5/mLの濃度で、一晩にわたり2〜8℃でコートした。コーティング後、プレートを、ブロッキングバッファー(0.15MのNaCl、0.1Mのリン酸ナトリウム、0.1%の魚ゼラチン、0.05%のポリソルベート20、0.05%のProclin(登録商標)300[Sigma−Aldrich];アッセイ希釈剤とも呼ばれる)を用いてブロックし、タンパク質の非特異的な付着を防止した。標準、コントロール、及び試料をアッセイ希釈剤(0.15MのNaCl、0.1Mのリン酸ナトリウム、0.1%の魚ゼラチン、0.05%のポリソルベート20、0.05%のProclin(登録商標)300[Sigma−Aldrich])中において希釈し、次いで別々のウェルに二つずつロードし、2時間に渡り室温(22〜27℃)でインキュベートした。試料中に存在する場合、PLBL2はコート抗体に結合する(本明細書では捕捉とも呼ぶ)。上記インキュベーション工程の後、未結合の材料を洗浄バッファー(0.05%のポリソルベート 20/PBS[Corning cellgro Cat.No.99−717−CM])を用いて洗い流し、ビオチンにコンジュゲートした15G11抗PLBL2マウスのモノクローナル抗体をアッセイ希釈剤中において、0.03125/mLの濃度に希釈し、マイクロタイタープレートのウェルに加えた。
【0237】
ビオチンコンジュゲーションは以下のように実行された。ビオチン化キットはPierce Thermo Scientific社から購入し(P/N 20217、E−Z Link NHS−Biotin)、ストレプトアビジン−HRP(SA−HRP)はJackson Immuno社のCat.No.016−030−084から購入した。Pierce Kit中の指示書に従った。簡単に説明すると、IgGをPBS(pH7.4)中に透析し、ビオチンをタンパク質に加え、室温で1時間混合した。次いで標識された抗体を、PBS(pH7.4)に対して透析して余分なビオチンを除去し、濾過し、タンパク質濃度をA280により決定した。
2時間にわたる室温でのビオチン化15G11によるインキュベーション工程後、ストレプトアビジンHRP(アッセイ希釈材中において1:200000に希釈)をマイクロタイタープレートのウェルに加えた。洗浄バッファー(上述)による最終洗浄工程の後、TMB(50/μlウェル)(SUREBLUE RESERVE
TM/KPL、Kirkegaard & Perry Laboratories、Inc.,Gaithersburg、MD、cat no.53−00−03)の溶液を加えることにより(PLBL2定量化のために)発色させ、続いて室温で10〜20分のインキュベーションを行った。検出は、各ウェルにおいてMolecular Devices SpectraMax M5eを用いて450nmにおける光学濃度(OD)を評価することにより実行した。4パラメーター曲線適合プログラム(SoftMax Pro v5.2 rev C)を使用して標準曲線を生成し、その標準曲線の線形範囲から試料のPLBL2濃度を算出した。標準曲線の線形範囲の値を使用して、名目上のPLBL2(ng/mg又はppm)を算出した。線形範囲は、プレートによって若干変動しており、約EC
10〜EC
85又は1.5〜40ng/mLであった。このELISAを使用してPLBL2に得られた値は、他の方法(例えば、アッセイのLOQに希釈されたとき、LC−MS/MS、ポリクローナルPLBL2 ELISA又は総CHOP ELISA)により得られた推定値と同等であった。
【0238】
ウサギポリクローナル抗ハムスターPLBL2 ELISAアッセイ
ウサギ抗ハムスターPLBL2ポリクローナル抗体の生成、並びにそのような抗体を用いた組み換えポリペプチド調製物中のPLBL2の検出及び定量化のためのELISAアッセイの開発は、米国仮特許出願第61/877503号及び同第61/991228号に記載されている。簡単に説明すると、このアッセイは以下のように実行される。
【0239】
アフィニティー精製されたウサギのポリクローナル抗体を、半分の面積の96ウェルマイクロタイタープレート上に、炭酸塩バッファー(0.05Mの炭酸ナトリウム、pH9.6)中0.5ug/mLの濃度で、一晩にわたり2〜8℃でコートした。コーティング後、プレートを、ブロッキングバッファー(0.15MのNaCl、0.1Mのリン酸ナトリウム、0.1%の魚ゼラチン、0.05%のPolysorbate20、0.05%のProclin(登録商標)300[Sigma−Aldrich])を用いてブロックし、タンパク質の非特異的な付着を防止した。標準、コントロール、及び試料をアッセイ希釈剤(0.15MのNaCl、0.1Mのリン酸ナトリウム、0.1%の魚ゼラチン、0.05%のPolysorbate20、0.05%のProclin(登録商標)300[Sigma−Aldrich])中において希釈し、次いで別々のウェルに二つずつロードし、2時間に渡り室温(22〜27℃)でインキュベートした。試料中に存在する場合、PLBL2はコート抗体に結合する(本明細書では捕捉とも呼ぶ)。上述のインキュベーション工程の後、未結合の材料を洗浄バッファー(0.05%のPolysorbate20/PBS[Corning Cellgro Cat.No.99−717−CM])を用いて洗い流し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした、アフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗体を、アッセイ希釈剤中において40ng/mLの濃度に希釈し、マイクロタイタープレートのウェルに加えた。
【0240】
HRPコンジュゲーションは以下のように実行された。HRPコンジュゲーションキットは、Pierce Thermo Scientific社から購入した(P/N 31489、E−Z Link Plus Activated Peroxidase and Kit)。Pierce Kit中の指示書に従った。簡単に説明すると、IgGを炭酸−重炭酸塩バッファー(pH9.4)中に透析し、EZ−Link Plus Activated Peroxidaseをタンパク質に加え、室温で1時間混合した。続いてシアノ水素化ホウ素ナトリウム及びクエンチングバッファーを加え、コンジュゲーションを安定させて反応をクエンチした。次いで標識された抗体を、PBS(pH7.4)に対して透析し、濾過し、タンパク質濃度をA280により決定した。
【0241】
2時間後、HRPコンジュゲートウサギポリクローナル抗体を用いた室温でのインキュベーション工程、洗浄バッファー(上述)による最終洗浄工程を実施した。その後、TMB(50ul/ウェル)(SUREBLUE RESERVE
TM/KPL、Kirkegaard & Perry Laboratories、Inc.,Gaithersburg、MD、cat no.53−00−03)の溶液を加えることにより(PLBL2定量化のために)発色させ、続いて室温で10〜20分のインキュベーションを行った。検出は、各ウェルにおいてMolecular Devices SpectraMax M5eを用いて450nmにおける光学濃度(OD)を評価することにより実行した。5パラメーター曲線適合プログラム(SoftMax Pro v5.2 rev C)を使用して標準曲線を生成し、その標準曲線の線形範囲から試料のPLBL2濃度を算出した。標準曲線の線形範囲の値を使用して、名目上のPLBL2(ng/mg又はppm)を算出した。アッセイの定量範囲は0.5〜50ng/mLであった。このELISAを使用してPLBL2に得られた値は、他の方法(例えば、アッセイのLOQに希釈されたとき、マウスモノクローナルPLBL2 ELISA、LC−MS/MS又は総CHOP ELISA)により得られた推定値と同等であった。
【0242】
LC−MS/MSアッセイ
LC−MS/MSによるPLBL2の定量化のために、Waters Acquity H−Class Bio UPLC及びAB Sciex TripleTOF 5600+質量分析計を使用した。試料及び較正標準(マウスNS0細胞株[NS0細胞株はハムスターPLBL2を含有しない]から得られた組み換えヒト化モノクローナル抗体調製物中にスパイクされた組み換えPLBL2)を、トリプシンにより低減及び消化した。合計で40μgの消化された試料を、Waters BEH300 C18カラム(粒径1.7μm)を使用してUPLC上に注入した。アセトニトリルの直線勾配を使用して、流速300μl/分及びカラム温度60℃でペプチドを溶出した。
【0243】
UPLCから溶出するペプチドを、ポジティブイオン化モードでのエレクトロスプレイイオン化により質量分析計に導入した。イオン源の温度は400℃に、IonSpray電圧は5500ボルトに、及びデクラスタリング電位は76ボルトに設定された。選択されたペプチドイオンの断片化のために、衝突エネルギーの設定は32を使用した。質量分析計は、多重反応モニタリング高分解能(MRM
HR)モードで、四つの特異的PLBL2ペプチド及びそれらの断片イオン遷移を用いて動作させた。親イオンは、1.2amu.の質量対電荷(m/z)選択ウィンドウを有する四重極質量分析計により選択された。各親イオンの断片イオンは、飛行時間型質量分析計により分離され、0.025amu.の選択ウィンドウを用いるデータ取得後定量化のために選択された。
試料中のPLBL2の濃度は、四つの遷移の特異的シグナル応答を測定することにより決定され、線形適法を用いる2〜500ppmの範囲の標準由来の濃度により較正された。以下の表2は、LC−MS/MSによりモニタリングされたPLBL2ペプチドのリストを示す。
【0244】
【0245】
実施例2−ハムスターPLBL2を低減させるための改善された精製法
初期段階の臨床治験をサポートするためのCHO生成抗IL13MAb(レブリキズマブ)の精製法が確立され、本明細書ではこれを「イニシャルプロセス」と呼ぶ。イニシャルプロセスには以下のクロマトグラフィー工程を順に用いた:プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(MABSELECT SURE
TM)、続いて陽イオン交換(POROS(登録商標)HS)、続いて陰イオン交換(Q SEPHAROSE
TM Fast Flow)。更にはウイルス不活性化及び濾過工程が含まれ、最後に限外濾過−ダイアフィルトレーション(UFDF)工程が行われた。最終生成物(原体)は、20mMのヒスチジンアセテート、6%のスクロース、0.03%のポリソルベート20(pH5.7)中において125mg/mLの濃度で製剤化された。
【0246】
総CHOP ELISAアッセイ(上記実施例1に記載)を用いたとき、本発明者らは、処理中の中間体及びイニシャルプロセスによって精製された原体が、不定型な希釈依存性の挙動を示し、正規化された試料希釈系列全体の変動係数が>20%となることを観察した。このような希釈依存性の挙動は、表3に提示するデータにより例証されており、抗IL13MAb生成物の連続する二倍希釈は、総CHOP ELISAを用いて決定した場合に各回ともCHOPのレベル(ppm)を上昇させた。LC−MS/MSのような感受性分析方法を用いて、本発明者らは、単一のCHOP種又はHCPが、このような不定型の希釈依存性の挙動の原因であることを決定した。特に、本発明者らは、総CHOP ELISAでの希釈依存性の挙動が抗原過剰に起因するものであることを立証した。更なる調査により、本発明者らは、単一のHCPを、ハムスターホスホリパーゼB様2(PLBL2)という酵素として同定することができた。生成物の試料をアッセイの定量限界(LOQ)に希釈することにより、イニシャルプロセスを用いて精製されたレブリキズマブの臨床ロット中のPLBL2のレベルを推定することができ、300ppm(300ng/mg)以上のレベルが存在することが決定された。
【0247】
【0248】
本発明者らが観察したような単一CHOP種のこのような不純度のレベル(>300ppm)は、ヒトの臨床及び/又は治療に使用することを意図するMAb生成物において、特に後期臨床試験以降、望ましくないと考えられる。例えば、このようなレベルは、実施例3に記載するように、ヒト対象に投与されると、免疫原性となりうる。
【0249】
したがって、本発明者らは、以下に簡単に要約されるようなイニシャルプロセスに対する様々な修正を調査した。これら調査の結果に基づき、本発明者らは、以下に詳述する改良型精製法を開発した。この方法を、本明細書では「改良プロセス」と呼ぶ。改良プロセスの使用により、実質的に低下させたPLBL2のレベルを含有する、精製された抗IL13MAb(レブリキズマブ)生成物が得られた。
【0250】
PLBL2を低減するための精製法修正の努力はイニシャルプロセスに対する方法を含み、それには:沈殿、HCCFに対する様々な添加剤の試験、追加的なカラム洗浄、疎水性相互作用及び混合モードクロマトグラフィーが含まれた。これらの努力は、実施例1に記載のアッセイのうちの一又は複数の使用から情報を得て、総CHOP及び/又はPLBL2レベルの低下について調査される各修正の効率をモニタリングした。研究された様々な修正について後述する。
【0251】
カプリル酸によるHCCF及びプロテインAプール中のCHOPの沈殿
カプリル酸の沈殿については、対象の標的タンパク質から不純物を選択的に沈殿させるためのモノクローナル抗体業界における使用(Wang et al., BioPharm International; Downstream Processing 2010, p4-10, Oct2009; Brodsky et al., Biotechnology and Bioengineering, 109(10):2589, 2012)を含め、以前に記載がある。カプリル酸は、オクタン酸としても知られ、八つの炭素を有する飽和脂肪酸である(式CH
3(CH
2)
6COOH)。抗IL13MAbによる試験を行い、採取した細胞培養液(HCCF)又はプロテインAプールのカプリル酸による沈殿が、CHOPの低減及び/又は総CHOP ELISAにおける希釈依存性挙動の低減につながるかどうかを決定した。
【0252】
このような試験のための抗IL13MAb出発物質は、1kL採取由来のHCCF及びプロテインAプールであった。1%(v/v)のカプリル酸をHCCFに加え、様々な濃度のカプリル酸を(0%〜3%v/v)、pH4.5又はpH5.0のプロテインAプールに加えた。総CHOP ELISAを用いた検出及び定量化のために、試料を、常温で5時間混合し、0.2濾過し、総CHOP ELISA希釈剤で希釈した。カプリル酸処理の前と後での、HCCF中での抗IL13MAbの力価を、当技術分野で既知の標準的方法により実施されたHPLC力価アッセイを用いて決定した。
【0253】
1%v/vのカプリル酸でのHCCFの処理により、CHOPは約5倍低減し、抗IL13MAbの収率は91%であった。プロテインAプールを0〜3%v/vにわたる様々な濃度のカプリル酸で処理したとき、pH5.0において収率に>20%の損失が観察され、pH4.5においては収率に損失はなかった。これらカプリル酸処理したプロテインAプール中の総CHOPを評価したとき、2倍から3倍のCHOPの低減が見られた(
図1A及びB)。しかしながら、やはり
図1A及びBに示すように、試験した条件の各々において希釈依存性は依然として存在しており、これは、カプリル酸の沈殿が、総CHOP ELISAに観察される希釈依存性の挙動に対処するために有効ではなく、したがってこの生成物のPLBL2レベルを低下させるために有効でないことを示唆している。
【0254】
HCCFに対する添加剤
Sisodiya et al., Biotech J. 7:1233 (2012)による先行研究により、HCCFに対するグアニジン又は塩化ナトリウムなどの添加剤が、その後で精製されるプロテインAプールにおいてCHOPを低減できることが実証されている。アルギニンも、プロテインAカラム上で洗浄剤として用いられるとCHOPを低減することが示されている(Millipore Technical Bulletin, Lit. No. TB1024EN00, Rev. A, December, 2005; Millipore Technical Bulletin, Lit. No. 1026EN00, July, 2006, available at www(dot)Millipore(dot)com)ため、HCCFに対する添加剤として含めた。様々な塩、カオトロープ、及びカプリル酸を抗IL13MAb HCCFに加え、MABSELECT SURE
TM(MSS)プロテインA クロマトグラフィー上で生成物を捕獲する間の生成物とCHOPとの相互作用を低減させるための各々の有効性を評価した。試験したHCCFへの添加剤は:0.6Mのグアニジン、0.6Mのアルギニン、0.6MのNaCl、リン酸緩衝生理食塩水、及び1%のカプリル酸であった。
【0255】
HCCF添加剤の各々で処理された試料をMSS上でのプロテインAクロマトグラフィーに供した。プロテインAプールを、pH4.9に調整し、イニシャルプロセス条件を用いたPOROS(登録商標)HS陽イオン交換クロマトグラフィー工程で更に精製した。プロテインAプール及びPOROS(登録商標)HSプールを希釈し、総Chop ELISAに供した。調製されたプロテインAプールは、%凝集、%変異種などの評価のために、当技術分野で既知の方法にしたがってSEC−HPLCでも試験された。
【0256】
MABSELECT SURE
TMでの収率は、グアニジン又はアルギニンをHCCFに加えた実行回についてはやや低下した。試験したHCCFに対するすべての添加剤のうち、CHOPレベルを実質的に低下させるためにグアニジン及びアルギニンが最も有効であり(表4参照)、プロテインAプールの希釈依存性を低下させると思われた(データは示さない)。しかしながら、POROS(登録商標)HSでのプロテインAプールの下流での更なる処理により、
図2に示すように、対応するPOROS(登録商標)プールに残るCHOP ELISA希釈依存性が示された。したがって、データは、HCCFに対するグアニジン又はアルギニンの追加が、この生成物におけるPLBL2のレベルを低下させるために有効でないことを実証するものである。
【0257】
【0258】
プロテインAカラム(MABSELECT SURE
TM)の洗浄
更に多くの希釈依存性CHOPが、MABSELECT SURE
TM(MSS)プロテインAクロマトグラフィーにおいて初期の生成物含有画分中に溶出したことが観察された。これは、溶出前のMSSでの追加の洗浄工程が、CHOP/PLBL2を更に低減することを示唆している。MSSでの複数回の洗浄を、プロテインAプール中のCHOP/PLBL2を低減する能力について試験した。この試験のために、精製した抗IL13MAb UFDプールをロード材料として使用した。UFDFプールを、1.7mg/mL(概ねHCCFの力価)に希釈し、樹脂1L当たり29gでロードした。様々な洗浄、例えば;1%のポリソルベート20の存在下及び非存在下での0.5Mのアルギニン(pH9.5)、アルギニン(pH8.5)、0.5M、0.5MのTMAC(pH7.1)、25mMのMOPS(pH7.1)を試験し、高塩濃度洗浄(pH7.0)と比較した。酸性条件下(pH2.8)において生成物を溶出し、0.5OD(A280)から開始して総用量2.4のカラム容積について継続してプールした。各調製プールを希釈し、総CHOP ELISAを使用してアッセイした。これらの結果は、洗浄剤のいずれもが、CHOP/PLBL2又は総CHOP ELISAの希釈依存性を十分に低減しなかったと総括される。したがって、この抗IL13MAb生成物中のPLBL2レベルを低下させるために有効であろうプロテインA洗浄条件を見つける可能性は低いと思われ、これ以上の調査はしなかった。
【0259】
陽イオン交換カラム(POROS(登録商標)HS)の洗浄
抗IL13MAbのアミノ酸配列及びPLBL2不純物を使用した理論的計算に基づき、本発明者らは、PLBL2のpIが約6.0であり、抗IL13MAb(pI6.1)に類似していると予測した。本発明者らは、≦pH4及び≧pH10における抗IL13MAbとPLBL2には正味電荷に有意な差があると予測した。したがって、イニシャルプロセスのPOROS(登録商標)HS陽イオン交換工程での様々な低pH洗浄を、これらが総CHOP及び/又はPLBL2並びに希釈依存性の挙動を選択的に低減するために有効かどうかについて評価するために試験した。以下の洗浄をpH4において試験した:(i)アセテート勾配、20カラム容積(CV)に300mM〜1,000mM;(ii)シトレート勾配、20CVに100mM〜500mM;(iii)260mMのシトレート洗浄工程;及び(iv)20CVに15mS/cm(伝導性測定値)までのアルギニン勾配。
【0260】
結果は、抗IL13MAb及びCHOPが、pH4のアセテート勾配から試験した1Mの塩濃度まででは溶出しないことを示すものであった。シトレート又はアセテートの量を増大させると、生成物は溶けずに沈殿した。pH4での洗浄はすべてPOROS(登録商標)HS工程での収率が低く、洗浄のいずれもがCHOP希釈依存性を有意に低下させなかった。したがって、陽イオン交換カラムの低pH洗浄を含めることは、この生成物のPLBL2レベルを低下させるために有効ではなかった。
【0261】
ヒドロキシアパタイト樹脂及びCAPTO
TMAdhere樹脂
セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)マクロ孔質樹脂TypeI、40um(BioRad)は、反復する六角構造のリン酸カルシウム(Ca
5(PO
4)
3OH)
2からなる。二つの異なる結合部位;5つのカルシウムイオンのダブレットの組を有するC部位、及びホスフェートトリプレットを含有する−OHの対を含有するP部位が存在する。この樹脂は、混合モード特性を有し、凝集体のような難しい不純物を分離することが示された(P. Gagnon, New Biotechnology 25(5):287 (2009))。
【0262】
CHTカラムを実行するための初期条件を同定するため、溶出のための、6.5〜8.0のpH範囲、及び様々な濃度の塩化ナトリウム及びリン酸ナトリウムを試験する、CHT樹脂TypeI(40um)のハイスループットロボットスクリーニングが実行された。このようなハイスループットロボットスクリーニングについては、例えばWensel et al., Biotechnol. Bioeng. 100:839 (2008)に先行する記載がある。これらスクリーニング由来の試料は、総CHOP ELISAにおいて試験された。
【0263】
CAPTO
TM Adhere(GE Healthcare)は、イオン性及び疎水性両方の特性を呈する混合モード樹脂である。基剤のマトリックスは剛性アガロースであり、リガンドはN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンである。この樹脂の、総CHOP及び/又はPLBL2を低減する能力を、まずハイスループットスクリーニング試験により、次いで後続のカラム条件により、評価した。
【0264】
CAPTO
TM Adhereカラムを実行するための条件を同定するための初期研究が、二つのロード密度(樹脂1L当たり5g及び40g)における抗IL13MAbのCAPTO
TM Adhereへの結合を試験するために、上記と同様のハイスループットロボットスクリーニング法を用いて行われた。塩及びpH範囲;25mM〜200mMの酢酸ナトリウム及びpH4.0〜6.5も試験された。ロード材料は、総CHOP ELISAによれば約200ppmの総CHOPをLOQで含有するイニシャルプロセスUFDFプールであった。CAPTO
TM Adhereに未結合(フロースルー)の試料を希釈し、総CHOP ELISAを用いてアッセイした。
【0265】
結果は以下の通りであった。CHTクロマトグラフィーの場合、試験した条件はいずれも、総CHOP又はPLBL2又は影響を受けたアッセイの希釈依存性の挙動を有意に低減しなかった。加えて、収率は低く、高分子量種の除去も達成されなかった。CAPTO
TM Adhereクロマトグラフィーの場合、収率は低く、アッセイした材料は総CHOP ELISAにおいて有意な希釈依存性の挙動を示した。したがって、CHT及びCAPTOTM Adhere樹脂の使用は、これら樹脂を使用してこの抗IL13MAb生成物中のPLBL2のレベルを低下させるために有効な条件が見つかりそうになかったため、それ以上調査されなかった。
【0266】
疎水性相互作用クロマトグラフィーの樹脂と膜
最初に、Sartobindと呼ばれ、Sartoriusによって製造されるHIC膜吸着器を試験した。Sartobindは、再生セルロースからなる基材マトリックスと、共有結合した疎水性フェニルリガンド基で作製される。
【0267】
試験された膜は、Sartobind HIC 3mL装置(8mmのベッド高)であった。イニシャルプロセスPOROS(登録商標)HSプール由来のプールを、0.55Mのリン酸カリウム(pH7.0)に調整し、10mL/分の流量を使用した。生成物を0.55Mのリン酸カリウム(pH7.0)に溶出した(3mLの画分中の未結合画分を収集)。
【0268】
本発明者らの観察によれば、抗IL13MAb、0.55Mのリン酸カリウムへのコンディショニングにより混濁して不透明となり、追加的な0.2umでの濾過工程を必要とした。この結果は、総CHOPの低減を示すものであったが、残りのCHOPは、総CHOP ELISAにおいて依然として希釈依存性の挙動を示した。この生成物中におけるPLBL2のレベルを低下させるために有効な条件が同定される可能性は低いと思われたため、この膜の使用についてはそれ以上評価しなかった。
【0269】
次に、ハイスループットスクリーンを用いて複数の異なるHIC樹脂を評価した。OCTYL−SEPHAROSE(登録商標)Fast Flow(FF)、BUTYL−SEPHAROSE(登録商標)4 Fast Flow、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub)及びPHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(low sub)をGE Healthcareより得た。これら四つの樹脂は、広範囲の変動疎水性を呈するために選択された(OCTYL−SEPHAROSE(登録商標)Fast Flowが最も疎水性が低く、続いてPHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(low sub)及びBUTYL−SEPHAROSE(登録商標)4 Fast Flowの疎水性が低く、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub)の疎水性が最も高かった)。本発明者らは、抗IL13MAb調製物中のPLBL2を低減する有効性について、pHと塩濃度の複数の組合せを試験した。HIC樹脂の実験に用いた抗IL13MAb調製物は、イニシャルプロセスを使用する実行回のUFDFプールであった。抗IL13MAbの濃度は180mg/mLであり、ロード密度は樹脂1mL当たり抗体40mgであった。pH5.5(25mMの酢酸ナトリウム)、pH6.0(25mMのMES)、pH7.0(25mMのMOPS)、及びpH8.0(25mMのトリス)、並びに0mMから400mMの硫酸ナトリウム濃度を試験した。試験された各条件について、フロースルー試料を収集し、希釈し、総CHOP ELISAアッセイを使用して試験した。
【0270】
結果を
図3A〜Dに示す。塩を増量すると、各樹脂のフロースルー中の総CHOPが低減することが観察された。OCTYL−SEPHAROSE(登録商標)Fast Flow樹脂(
図3A)は最高レベルの総CHOPを示し、少量の塩の存在下においてさえPHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub)樹脂は総CHOPを極めて低レベルまで低減し(
図3D)、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(low sub)及びBUTYL−SEPHAROSE(登録商標)Fast Flow樹脂は中程度のレベルの総CHOPを示した。また、興味深いことに、低塩条件におけるPHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub)を除き(
図3D)、各樹脂を用いたCHOP除去に対するpHの影響は最小であった。PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub)樹脂の場合、低塩条件では、pHが高い程フロースルー画分中のCHOPは高かった(
図3D)。これらの結果に基づいて、PHENYL SEPHAROSETM 6 Fast Flow(high sub)は有望と考えられ、結合−溶出又はフロースルーモードにおいてカラムを実行することを含む更なる試験のために選択された。
【0271】
結合−溶出モードでPHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub)樹脂を用いるHICの操作には、抗体の樹脂への結合を可能にするために、塩による抗IL13MAbロードのコンディショニングが必要であった。塩を増加させると、樹脂に生成物をロードするための動的結合容量(樹脂1mL当たりの抗IL13(mg))が増大した。しかし、生成物中の塩濃度を増加させると、特に低いpHとの組み合わせで、混濁の増大及び高分子量種(HMW)の形成が観察された。
【0272】
上述のように、PHENYL SEPHAROSETM 6 Fast Flow(high sub)はフロースルーモードで操作することができ、このような操作にはロードの塩コンディショニングが少なくて済む。生成物の品質及び安定性の観点から、例えば、濁度及びHMWが低く、塩コンディショニングが少ない生成物が望ましい。したがって、本発明者らは、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub)樹脂をフロースルーモードで用いる方法の最適化を進めた。
【0273】
この方法を最適化するために、ロード濃度、ロードpH、ロード塩モル濃度、樹脂上のロード密度、ベッド高、流量、温度、平衡バッファーのpH及びモル濃度を含む、HICカラムを実行するための複数のパラメーターを調査した。これら実験のために、総CHOP ELISAを用いて総CHOPをモニタリングし、更にはLC−MS/MSによりPLBL2をモニタリングした。一部の例示的データを表5に示す。表5のデータは、フロースルーモードにおいて表に示す条件下で実行されたHICカラムが、プロテインAプールに検出された高レベルからPLBL2レベルを実質的に低下させるために有効であったことを示している。HIC後のPLBL2レベルは、プロテインAプールのレベルと比較して数百倍低下した。
【0274】
【0275】
方法パラメーターの選択をガイドするためのPLBL2 LC−MS/MSアッセイ及び他の典型的な生成物品質アッセイ(例えば、SE−HPLC、CE−SDS、iCIEF)を使用して、本発明者らは、生成物の品質属性及びPLBL2の低減により評価した場合の、HICカラムの実行に望ましいものとして、以下の条件を同定した:平衡及び洗浄バッファー:50mMの酢酸ナトリウム(pH5.0);標的ロード密度:100g/L、流量:150cm/hr、22℃±3℃。これら条件の特定の小さな変更、例えば、25℃±3℃又は27℃±3℃も望ましい。光学濃度(OD)を、280nmでの吸光度(A280)によりモニタリングし、プール(即ちフロースルー)を、0.5ODから1.5ODの間で、又は8カラム容積の洗浄後に収集した。
【0276】
上述のように、イニシャルプロセスは:プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(MABSELECT SURE
TM)、続いて陽イオン交換(POROS(登録商標)HS)、続いて陰イオン交換(Q SEPHAROSE
TM Fast Flow)であった。上述のようにPLBL2レベルを低下させる方法を開発した後、次に、簡便な方法で方法の変更を実施することを模索した。したがって、本発明者らは、HICカラムをイニシャルプロセスに加えることにより、4カラム法を作成すること、並びにHICカラムでCEXカラム又はAEXカラムを置換することを研究し、最後にカラムの順序を研究した。3カラム法、即ち、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(MABSELECT SURE
TM)、続いて陰イオン交換(Q SEPHAROSE
TM Fast Flow)、続いてフロースルーモードで操作されるHIC(PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub))は、最も簡便な方法を提供し、且つ最終的な原体中のPLBL2を低減させるために最も有効であった。この3カラム法については以下に詳述する。
【0277】
第1のアフィニティークロマトグラフィー工程は、MABSELECT SURE
TM樹脂を用いる結合及び溶出法であった。カラム平衡化後(25mMの塩化ナトリウム、25mMのトリス(pH7.7))、HCCFをカラムにロードし、平衡バッファー及び高塩濃度(pH7.0)洗浄バッファーで洗浄した。抗IL13MAbを、酸性条件下(pH2.8)においてカラムから溶出した。
【0278】
第2の陰イオン交換クロマトグラフィー工程を、Q SEPHAROSE
TM Fast Flow(QSFF)樹脂を用いて結合及び溶出モードで操作した。カラム平衡化後(50mM のトリス(pH8.0))、MABSELECT SURE
TMカラムからの抗IL13プールをpH8.05に調整し、カラムにロードした。カラムを洗浄し(50mMのトリス(pH8.0))、85mMの塩化ナトリウム、50mMのトリス(pH8.0)を用いてカラムから抗IL13MAbを溶出した。
【0279】
第3の、そして最後の疎水性相互作用クロマトグラフィー工程を、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(High Sub)樹脂を使用して、フロースルーモードで操作した。カラム平衡化後(50mMの酢酸ナトリウム(pH5.0))、QSFFカラムからの抗IL13プールをpH5.0に調整し、カラムにロードした。抗IL13MAbは通過し、カラムは更に平衡バッファー(50mMの酢酸ナトリウム(pH5.0))で洗浄した。抗IL13MAbプールはA280に基づいて開始及び終了され、プーリングは0.5から1.5ODの間で、又は最大8カラム容積で起こった。
【0280】
イニシャルプロセスと同様、更にはウイルス不活性化及び濾過工程が含まれ、最後に限外濾過−ダイアフィルトレーション(UFDF)工程が行われた。最終生成物(原体)は、20mMのヒスチジンアセテート、6%のスクロース、0.03%のポリソルベート20(pH5.7)中において125mg/mLの濃度で製剤化された。
【0281】
総CHOP ELISA及びモノクローナル PLBL2 ELISAによりそれぞれ測定した場合の総CHOP及びPLBL2に関するイニシャルプロセスと改良プロセスとの比較を、表6(イニシャルプロセス)及び7(改良プロセス)に示す。表6のデータは、明らかに、イニシャルプロセスの結果、高レベルの総CHOP(三つの異なる実行回において179、310、及び189ng/mg)及び高レベルのPLBL2(三つの異なる実行回において242、328、及び273ng/mg)を含む精製済み生成物(UFDFプール)が生じたことを示しており、表7のデータは、明らかに、改良プロセスが、総CHOPのレベルが有意に低下した(四つの異なる実行回において1.1、<0.9、2.8、及び3.4ng/mg)且つPLBL2のレベルが有意に低下した(四つの異なる実行回において0.21、0.42、0.35、及び0.24ng/mg)精製済み生成物を生成するために有効であったことを示している。上記のデータと一致して、表7のデータは、上記条件下において実行されたHICカラムが、抗IL13MAb調製物中の総CHOP及びPLBL2レベルを低下させるために特に有効であったことを示している。
【0282】
【0283】
【0284】
要約すると、精製された抗IL13MAb調製物中における高レベルの単一CHOP種に起因する非線形の希釈挙動というアッセイの問題に対して、本発明者らはまず、CHOP種を、CHO細胞から精製された組み換えタンパク質調製物においてこれまで記載のない不純物であるハムスターPLBL2と同定した。本発明者らは次に、抗IL13MAb調製物中のPLBL2のレベルを効果的に低下させるための精製条件を同定した。最後に、本発明者らは、これら生成条件を全体の精製法に統合し、以前の抗IL13MAb精製方法を改善した。この改良プロセスは、フロースルーモードでのHICカラム実行を用いてPLBL2レベルを低下させるもので、HICカラムは、アフィニティークロマトグラフィー工程及び陰イオン交換クロマトグラフィー工程と組み合わせて実行される。本発明者らは、改良プロセスが抗IL13MAb調製物中のハムスターPLBL2レベルを実質的に低下させるためにロバスト且つ効果的であることを示した。本発明者らは、改良プロセスが、PLBL2レベルを、イニシャルプロセスと比較して約1000倍だけ再現性よく低下させることを示した。PLBL2レベルのこのような低下は、後期臨床治験以降における患者への治療的使用に適した精製抗IL13MAb生成物を生成するために重要である。
【0285】
抗Abeta抗体調製物中のハムスターPLBL2を低減させる精製方法
本発明者らは、次に、上述の精製法、特に最後のクロマトグラフィー工程のためのHICカラムの使用が、他の抗体調製物中のPLBL2レベルを低減させるために同様に有効であるかどうかを評価することを模索した。この実験のために、CHO細胞において生成された抗Abeta抗体を選択する。例示的抗Abeta抗体及びこのような抗体を生成する方法については以前に、例えば、WO2008011348、WO2007068429、WO2001062801、及びWO2004071408に記載がある。これらの特定の実験には、クレネズマブ(crenezumab)として知られる抗Abeta抗体を使用した。抗IL13MAbについて記載したように、プロテインAアフィニティーカラムの後の第2のカラムのための様々な樹脂及びバッファーを調査し、またHICカラムのバッファー及び実行条件を調査し、生成物の品質及び安定性属性、並びにハムスターPLBL2の除去について、抗Abetaのために最適であるものを同定した。
【0286】
本発明者らは、3カラム法、即ち、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(MABSELECT SURE
TM)、続いて混合モード樹脂の使用(CAPTO
TM Adhere)、続いてフロースルーモードで操作されるHIC(PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub))が、最終的な原体中のPLBL2を低減させるために簡便且つ有効であることを発見した。この3カラム法について以下に詳述する。
【0287】
第1のアフィニティークロマトグラフィー工程は、抗IL13MAbについて上述したものと類似のMABSELECT SURE
TM樹脂を用いる結合及び溶出法であった。
【0288】
第2の混合モードクロマトグラフィー工程を、CAPTO
TM Adhere樹脂を用いてフロースルーモードで操作した。カラム平衡化後(20mMのMES、150mMの酢酸ナトリウム(pH6.25))、MABSELECT SURE
TMカラムからの抗AbetaプールをpH6.25に調整し、カラムにロードした。プーリングは、ロードフェーズ中に0.5ODで開始された。ロード完了後、カラムを、5カラム容積(CV)の平衡バッファー(20mMのMES、150mMの酢酸ナトリウム(pH6.25))で洗浄し、更に5CV全部を収集した。
【0289】
第3の、そして最後の疎水性相互作用クロマトグラフィー工程を、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(High Sub)樹脂を用いてロースルーモードで操作した。カラム平衡化後(150mMの酢酸ナトリウム(pH5.0))、CAPTO
TM Adhereカラムからの抗AbetaプールをpH5.0に調整し、カラムにロードした。抗Abeta Abは通過(フロースルー)し、カラムは更に平衡バッファー(150mMの酢酸ナトリウム(pH5.0))で洗浄された。抗Abeta MAbプールは、ロードフェーズの間に、A280に基づいて開始され、プーリングは0.5ODにおいて開始された。カラムを10CVの平衡バッファー(150mMの酢酸ナトリウム(pH5.0))で洗浄し、更に10CV全部を収集した。抗IL13 MAbと同様、更にはウイルス不活性化及び濾過工程が含まれ、最後の限外濾過−ダイアフィルトレーション(UFDF)工程が行われた。
【0290】
四つの異なる精製実行回の間の上記方法の結果を以下の表8に示す。
【0291】
【0292】
表8に示す結果は、最後のクロマトグラフィー工程としてのHIC樹脂の使用が、抗Abeta MAb調製物中の残存PLBL2レベルを、抗IL13 MAbに見られたものと同様の量に低減したことを実証するものである。300g/Lのロード密度は、生成物回収及びPLBL2の低減両方の観点から所望の結果を生むと同時に、HICカラムのロード密度を300g/Lから100g/Lに低減させることにより、残存PLBL2に更なる低減が見られた。
【0293】
本発明者らは更に、HICクロマトグラフィー工程の他の二つの条件、即ちロードpH及びロード硫酸塩モル濃度を調査した。これら実験は、51ng/mgのPLBL2(ELISAにより測定)、15mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)を含有するCAPTO
TM Adhereプールから開始した。ロードpH及びロード硫酸塩モル濃度を、様々なpHの、0mMの硫酸ナトリウム又は800mMの硫酸ナトリウム貯蔵液を用いて以下の表9に示す値に調整した。低硫酸塩モル濃度条件下(0mM)及び高硫酸塩モル濃度条件下(240mM)における表9に示される各ロードpHを試験した。各条件は、ロード密度60g/Lにおいて試験された。表9に提示される結果が示すように、ロードpHをpH4又はpH5に低下させること、又はロード硫酸塩モル濃度を上昇させること(240mMの硫酸塩に)は、最終的なHICプール中のPLBL2のレベルを低下させるためにそれぞれ有効であった。ロードにおけるpH4.0と240mMの硫酸塩の組合せは、HICプール中の残存PLBL2の量を最小化するために特に有効であった。
【0294】
【0295】
したがって、本明細書に記載の抗IL13 MAb及び抗Abeta MAbといったCHO生成ポリペプチドの精製における最後のクロマトグラフィー工程としてのHIC樹脂の使用は、ハムスターPLBL2の残存量を極めて低いレベル、例えば、HICプール中において1ng/mg以下に低下させた。
【0296】
IgG1抗体調製物中においてハムスターPLBL2を低減するための精製方法
次に、本発明者らは、抗IL13及び抗Abeta IgG4抗体調製物について記載した精製方法、特に最後のクロマトグラフィー工程のためのHICカラムの使用が、IgG1抗体調製物中のPLBL2レベルを低下させるために同様に有効であるかどうかを評価した。これら実験のために、まず、IgG1抗体であり、CHO細胞中において生成された抗IL17 A/F抗体が選択される。例示的抗IL17 A/F抗体及びこのような抗体を生成する方法については以前に、例えば、WO2009136286及び米国特許第8715669号に記載がある。抗IL13及び抗Abeta MAbsについて記載したように、HICカラムのための様々な樹脂(特に、PHENYL SEPHAROSE
TM FF[low sub]及びPHENYL SEPHAROSE
TM FF[high sub]、並びにバッファー条件(特に、50mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)及び50mMのトリス、85mMの酢酸ナトリウム(pH8.0))を研究し、生成物の品質及び安定性属性、並びにハムスターPLBL2の除去に関して抗IL17 A/Fに最適なものを同定した。
【0297】
本発明者らは、3カラム法、即ち、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(MABSELECT SURE
TM)、続いて結合及び溶出モードで操作される陽イオン交換クロマトグラフィー(POROS(登録商標)50HS)、及びフロースルーモードで操作されるHIC(PHENYL SEPHAROSETM 6 Fast Flow(high sub))とが、最終的な原体中のPLBL2を低減させるために簡便且つ有効であることを発見した。この3カラム法について以下に詳述する。
【0298】
第1のアフィニティークロマトグラフィー工程は、抗IL13及び抗Abeta MAbについて上述したものに類似のMABSELECT SURE
TM樹脂を用いる結合及び溶出法であった。第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程はPOROS(登録商標)50HS樹脂を使用し、結合及び溶出モードで操作された。カラム平衡化後(40mMの酢酸ナトリウム(pH5.5))、pH調整抗IL17 A/F MABSELECT SURE
TMプール(pH5.0)をカラムにロードした。カラムを洗浄し(40mMの酢酸ナトリウム(pH5.5))、次いで40及び400mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)で生成した伝導性勾配により抗IL17 A/F抗体をカラムから溶出した。プーリングは、A280に基づいており、勾配溶出フェーズ中に≧0.5ODで開始され、≦2.0ODで終了した。
【0299】
第3の、そして最後の疎水性相互作用クロマトグラフィー工程は、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(High Sub)樹脂を使用し、フロースルーモードで操作された。カラム平衡化後(50mMの酢酸ナトリウム(pH5.5))、POROS(登録商標)50HSカラムからの抗IL17 A/Fプールを、pH調整なしでカラムに直接ロードした。抗IL17 A/F MAbは通過(フロースルー)した。抗IL17 A/F MAbのプーリングはA280に基づいており、ロードフェーズ中に≧0.5ODで開始された。カラムを10CVの平衡バッファー(50mMの酢酸ナトリウム(pH5.5))で洗浄し、プーリングはこの洗浄フェーズ中に≦1.0ODにおいて終了した。
【0300】
一回の精製実行中に上記方法を使用した結果を以下の表10に示す。
【0301】
【0302】
表10に示す結果は、最後のクロマトグラフィー工程としてのHIC樹脂の使用が、抗IL17 A/F MAb(IgG1)調製物中の残存PLBL2レベルを、抗IL13及び抗ABeta MAb(IgG4)に見られたものと同様の量に低減したことを実証するものである。
【0303】
抗CMV抗体
抗IL17 A/Fを試験することに加えて、本発明者らは、別のIgG1 MAbであり、やはりCHO細胞中において生成される抗CMV−MSL抗体を試験した。抗CMV−MSLを含む例示的抗CMV抗体、及びこのような抗体を生成する方法については以前に、例えばWO2012047732に記載がある。
【0304】
この場合も、本発明者らは、3カラム法、即ち、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(MABSELECT SURE
TM)、続いて結合及び溶出モードで操作される陽イオン交換クロマトグラフィー(POROS(登録商標)50HS)、及びフロースルーモードで操作されるHIC(PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(high sub))が、最終的な原体中のPLBL2を低減させるために簡便且つ有効であることを発見した。この3カラム法について以下に詳述する。
【0305】
第1のアフィニティークロマトグラフィー工程は、抗IL13、抗Abeta及び抗IL17 A/F MAbについて上述したものと類似のMABSELECT SURE
TM樹脂を用いる結合及び溶出法であった。POROS(登録商標)50HS樹脂を使用する第2の陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、結合及び溶出モードで操作された。カラム平衡化後(40mMの酢酸ナトリウム(pH5.5))、pH調整aCMV−MSL MABSELECT SURE
TMプール(pH5.0)をカラムにロードした。カラムを洗浄し(40mM 酢酸ナトリウム(pH5.5))、次いで40及び400mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)で生成した伝導性勾配によりaCMV−MSL抗体をカラムから溶出した。プーリングはA280に基づいており、勾配溶出フェーズ中に≧0.5ODで開始され、≦1.0ODで終了した。
【0306】
この特定の実行回においては、ウイルス濾過工程が、陽イオン交換工程と疎水性相互作用クロマトグラフィー工程の間で、ウイルスフィルターとしてViresolve Proを、プレフィルターとしてFluorodyne UEDFフィルターを用いて実施された。
【0307】
第3の、そして最後の疎水性相互作用クロマトグラフィー工程は、PHENYL SEPHAROSE
TM 6 Fast Flow(High Sub)樹脂を使用し、フロースルーモードで操作された。カラム平衡化後(50mMの酢酸ナトリウム(pH5.5))、POROS(登録商標)50HSカラムからの抗CMV−MSLプールを、pH調整なしでカラムに直接ロードした。抗CMV−MSL MAbは通過(フロースルー)した。抗CMV−MSL MAbのプーリングはA280に基づいており、ロードフェーズ中に≧0.5ODにおいて開始された。カラムを10CVの平衡バッファー(50mMの酢酸ナトリウム(pH5.5))で洗浄し、プーリングはこの洗浄フェーズ中に≦0.5ODにおいて終了した。
【0308】
一回の精製実行中に上記方法を使用した結果を以下の表11に示す。
【0309】
【0310】
表11に示す結果は、最後のクロマトグラフィー工程としてのHIC樹脂の使用が、抗CMV−MSL MAb調製物中の残存PLBL2レベルを、抗IL13、抗ABeta、及び抗IL17 A/F MAbに見られたものと同様の量まで効果的に低減したことを示すものである。したがって、本明細書に記載の抗IL13MAb及び他のMAbといったCHO生成ポリペプチドの精製における最後のクロマトグラフィー工程としてのHIC樹脂の使用は、ハムスターPLBL2の残存量を極めて低いレベル、例えば、HICプール中において1ng/mg未満へと効果的に低下させた。このように、本発明者らは、PLBL2のレベルを低下させるための本明細書に記載のHICクロマトグラフィー工程の使用が、IgG4 MAbに対して有効であるのと同様にIgG1 MAbについても有効であることを示し、組み換えポリペプチド調製物中のハムスターPLBL2のレベルを低下させるためのこの方法の一般的適合性を説明した。
【0311】
実施例3−様々な量のハムスターPLBL2を含有する抗IL13 MAb組成物を投与された患者のヒト抗ハムスターPLBL2応答の評価
CHO PLBL2不純物の潜在的な影響を評価するために、本発明者らは、抗IL13 MAb(レブリキズマブ)を投与されたヒト対象におけるハムスターPLBL2に対する抗体を検出するためのELISAアッセイ(ブリッジングELISAアッセイ)を開発した。レブリキズマブの様々な臨床試験に参加した患者由来の血清試料を、投与前及び投与後の、並びにプラセボを投与された対象中の、抗ハムスターPLBL2抗体の証拠について分析した。臨床試験の詳細は以前に記載されており(WO2012/083132、Corren et al., N Engl J Med 365:1088-98 (2011))、これら研究の最も関連性の高い詳細のみを後述する。
【0312】
ヒト血清中のハムスターPLBL2に対する抗体を検出するために開発及び検証された抗体ブリッジングELISAアッセイには、ハムスターPLBL2:ビオチン(ビオチン−PLBL2)にコンジュゲートした精製済みハムスターPLBL2及びジゴキシゲニンにコンジュゲートした精製済みハムスターPLBL2(DIG−PLBL2)に対する抗体のすべてのアイソタイプを捕獲する二つのコンジュゲート試薬が使用された。ハムスターPLBL2の生成及び精製は、米国仮特許出願第61/877503号及び同第61/991228号に記載されている当業者に既知の標準的な方法を使用して実行され、ビオチン又はDIGへのコンジュゲーションは当業者に既知の標準的方法を使用して実行された。この半均一抗体ブリッジングELISAアッセイでは、それぞれ3μg/mLのビオチン−PLBL2及びDIG−PLBL2を含有するアッセイ希釈剤(PBS/0.5%のBSA/0.05%のポリソルベート20/0.05%のProClin 300(pH7.4±0.1))中75μL/ウェルのコンジュゲート溶液を、ポリプロピレン製のミクロニックチューブ(National Scientific Supply Co.;Claremont、CA)内において、アッセイ希釈剤中75μL/ウェルの1:20に希釈した血清試料及びコントロールと共に一晩(16〜24時間)常温で共インキュベートした。インキュベーション後、100μL/ウェルの混合物をミクロミックチューブからストレプトアビジンでコートした96ウェルマイクロプレート(StreptaWell
TM High Bind;Roche Diagnostics;Indianapolis、IN)に移し、それを3回にわたり、自動プレート洗浄器(BioTek ELx405)内で400μL/ウェルの洗浄バッファー(PBS/0.05%ポリソルベート 20)により洗浄し、常温で2時間±10分インキュベートした。プレートを、プレート洗浄器内で400μL/ウェルの洗浄バッファーを用いて4回洗浄し、その後、100μL/ウェルの、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)(Jackson ImmunoResearch Cat.200−032−156)にコンジュゲートしたマウス抗ジゴキシン抗体400ng/mLを加え、常温で2時間±10分にわたり検出のためにインキュベートした。プレートを、プレート洗浄器内で400μL/ウェルの洗浄バッファーを用いて4回洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質(テトラメチルベンジジン)(TMB1L当たり0.4g)とPeroxidase Solution B(0.02%の過酸化水素)(KPL Cat.50−76−03)の100μL/ウェルの均等な混合物溶液を加え、常温で18〜28分間、発色のためにインキュベートし、100μL/ウェルの1Mのリン酸を加えることにより反応を止めた。プレートは、検出吸光度として450nmで、参照吸光度として630nmで、読み取った。アッセイのポジティブコントロールは、ヒトIgG1フレームワーク上の、マウスの抗ハムスターPLBL2特異的相補性決定領域(CDR)からなるモノクローナル抗体コンストラクトであった。この抗体を用いたアッセイの相対的感度は、25ng/mLと決定された。この抗体を用いたアッセイの薬物忍容性の実験は、血清中、50μg/mLまでのレブリキズマブ又は1μg/mLまでのハムスターPLBL2がアッセイに干渉又は交差反応を生じさせないことを実証した。
【0313】
アッセイを実行するために、まずアッセイにおいて血清試料を1/20の最小希釈でスクリーニングした。次いで、ポジティブとスクリーニングされた試料を、競合確認アッセイを用いてハムスターPLBL2特異性について確認した。試料は、ポジティブと確認された場合、続いて力価値を取得するために希釈された。力価単位においてポジティブな応答が報告され、これは試料シグナルがアッセイのカットポイント(ポジティブと決定するためのしきい値)のシグナルと等しかった希釈係数のlog10である。
【0314】
患者の試料を上述の抗ハムスターPLBL2 ELISを用いて分析した四つの臨床試験について簡単に後述する。試験1は、吸入ステロイド(ICS)による長期治療の間に疾患の制御が不十分であった喘息患者におけるレブリキズマブの効果を評価するための、プラセボコントロールを用いた、第II相無作為化二重盲検の概念実証試験であった。合計219名の患者が無作為化されて、106名が少なくとも一回の250mgのレブリキズマブの皮下(SC)投与を受け、92名が毎月6回の投与を受けた。
【0315】
試験2は、ICS療法を受けていない喘息患者における、プラセボコントロールを用いた第II相無作為化二重盲検の用量範囲探索試験であった。患者は、SC投与により、レブリキズマブ又はプラセボの三つの用量(500、250、又は125mg)のうちの一つを投与された。試験薬は、12週の治療期間の間に四回投与された。合計158名の患者は少なくとも一用量のレブリキズマブに暴露され、145名の患者は四回すべての投与を受けた。
【0316】
試験3は、健常な日本人及び白色人種のボランティアにおけるレブリキズマブの第I相PK試験であった。20名の健常な日本人及び白色人種の対象(人種群毎に10名の対象)からなる三つの別個のコホートを、レブリキズマブ(125、250、及び375mgのSC)とプラセボとに、7:3の比で無作為化した。対象は、1日目に一回の投与を受け、その後120日間モニタリングされた。合計42名の対象は、各々が一用量のレブリキズマブを投与された。
【0317】
試験1〜3において、合計306名の対象(うち264名は喘息患者であった)は各々が、ハムスターPLBL2を含有する材料の少なくとも一用量を投与された。ハムスターPLBL2への曝露は、投与されたレブリキズマブの用量に応じて変動した。
【0318】
試験4は、ICS及び第2のコントローラー薬物を用いる制御されていない喘息患者におけるレブリキズマブの有効性及び安全性を評価するための、プラセボコントロールを用いた、第IIb相の無作為化二重盲検試験であった。患者は、毎月SC投与によりレブリキズマブ又はプラセボの三つの用量(250、125、又は37.5mg)のうちの一つを投与された。試験4では、合計463名の患者が無作為化され、347名が少なくとも一用量のレブリキズマブを投与された。ハムスターPLBL2への曝露は、投与されたレブリキズマブの用量に応じて変動した。
【0319】
以下の表12は、試験1〜4それぞれの要約であり、対象が曝露されたハムスターPLBL2のレベル範囲と、レブリキズマブの用量を示している。
【0320】
【0321】
ハムスターPLBL2に対する抗体を検出するために、上記の抗ハムスターPLBL2抗体を用いて、試験1の選択された時点のレトロスペクティブ分析を実施した。既存の応答並びにレブリキズマブ投与に対する抗体の発生を決定するために、プラセボ対象及び投与対象両方由来の試料を分析した。113名のプラセボ対象と、少なくとも一用量のレブリキズマブを投与された106名の対象とを試験した。分析のために選択された時点は、0日目、29日目、85日目、141日目、225日目、及び早期終了時であった。試料は次の投与の前に採取するものとし、したがって、29日目の試料は二回目の用量が投与される前に採取された。各時点における抗ハムスターPLBL2抗体陽性の対象のパーセンテージは、各時点の陽性対象の数を取得し、それを各時点で試験された対象の全数で除すことにより算出した。データを表13に示す。
【0322】
【0323】
0日目において投与前に陽性であった6名の試験1のプラセボ対象は、試験を通じて陽性のままであった。これら対象由来の試料は、確認協業アッセイにおいて陽性と確認され、0日目に1.6から2.9の力価単位にわたる力価を有していた。その後の訪問時に取得された力価は、0日目に取得されたものと類似であった。更に数名のプラセボ対象が、試験中に低レベルの陽性反応を有していた。
【0324】
レブリキズマブを投与された試験1の対象のうち、98%(104/106)が、投与後に陽性抗体反応を有し、試験の最後まで陽性のままであり、大部分の対象が少なくとも二用量のレブリキズマブを投与された後に陽性となった。投与後の力価は1.35から4.76の力価単位にわたっており、力価は概ね時間の経過とともに上昇した。抗ハムスターPLBL2抗体の開発の臨床的意義は知られていない。この試験において、臨床的に重要な安全性シグナルは同定されず、ハムスターPLBL2に対する抗体の高い発生率を考慮すると、安全性イベントと相関させることはできなかった。
【0325】
また、試験4において収集された試料に対して中間分析を実施した。既存の応答並びにレブリキズマブ投与に対する抗ハムスターPLBL2抗体の発生を決定するために、プラセボ対象及び投与対象両方由来の試料を分析した。116名のプラセボ対象と、少なくとも一用量のレブリキズマブを投与された347名の対象とを試験した。92名のプラセボ対象及び268名の投与対象由来の試料がこのデータセットに示されている。結果を14に示す。
【0326】
【0327】
0日目において投与前に陽性であった四名の試験4のプラセボ対象は、アッセイの検出限界をわずかに上回る低レベルの陽性反応を有していた。低レベルの反応が、その後すべてではないがいくつかの時点で検出可能であった。
【0328】
0日目において投与前に陽性であった、15名の試験4のレブリキズマブ投与対象は、その後の時点でも引き続き陽性であり、複数回の投与後は力価が増大した。加えて、試験4には、試験1において以前にレブリキズマブを投与された10名の対象が存在した。これら対象のうち9名にはその後試験4においてレブリキズマブを再投与し、1名の対象にはプラセボを投与した。10名の対象すべては、試験4の0日目において投与前に陽性であり、その後の時点でも引き続き陽性であった。これら10名の対象のデータは、過去のレブリキズマブへの曝露を理由に表14から除外した。
【0329】
レブリキズマブを投与された試験4の対象間には、投与群の間に陽性率の差が存在するように思われる。しかしながら、これらデータは不完全であるので、これら差異の有意性に関する結論は、この時点では出すことはできない。試験1のデータと同様に、対象の大部分は少なくとも二用量のレブリキズマブを投与された後に陽性となった。投与後の力価は1.68から4.55の力価単位にわたっており、力価は概ね時間の経過とともに上昇した。これは不完全なデータセットであるため、陽性のパーセンテージ及び力価範囲は、更なるデータが蓄積されるにつれて変わる可能性がある。
【0330】
試験4の中間安全性評価は、アナフィラキシー又は重度の過敏症反応の報告がないことを含め、先に完了した試験と類似の、臨床的に重要な安全性シグナルのない安全性プロファイルを示した。注目すべきことに、試験1でレブリキズマブを投与され、その後試験4でレブリキズマブを再投与された9名のうち6名の患者には、中間分析の時点でどのような副作用も報告されず、あるとすれば1名のみに局所的注射部位に反応が報告された。この抗ハムスターPLBL2抗体応答に臨床的続発性がないことが、今日までの臨床治験において確認されている。
【0331】
本発明者らは、更に、試験2の125mg用量群の評価を行った。この結果を表15に示す。
【0332】
【0333】
0日目において投与前に陽性であった、二名の試験2の対象は、その後のすべての時点において引き続き陽性であり、複数回の投与後は力価が増大した。125mgのレブリキズマブを投与された試験2の対象のうち、87%(46/53)が、投与後に陽性抗体反応を有しており、試験の最後まで陽性のままであり、大部分の対象が少なくとも二用量のレブリキズマブを投与された後に陽性となった。投与後の力価は1.51から4.09の力価単位にわたっており、力価は概ね時間の経過とともに上昇した。
【0334】
結論
CHO PLBL2不純物の影響の可能性を評価するために、有意なレベルのハムスターPLBL2を含有するレブリキズマブ調製物を投与された対象におけるハムスターPLBL2に対する抗体を検出するためのアッセイが開発された。試験1の完了データセット、及び試験2の125mg用量群、及び試験4の部分的データセットに基づくと、レブリキズマブ調製物中のハムスターPLBL2の存在は、ハムスターPLBL2に曝露された大部分の対象に免疫応答を生じさせた。
【0335】
プラセボ及びレブリキズマブ用量群両方の多くの対象は、抗ハムスターPLBL2抗体アッセイにおいて既存の免疫応答性を有していた。このような既存の応答の原因は未知であり;CHO宿主細胞タンパク質に対する抗体応答性は、以前に特徴付けられており、知る限りCHO由来の生物学的生成物への曝露歴を持たない正常なヒト血清試料において確認されている(Xue et al., The AAPS Journal 12(1):98-106 (2010))。しかしながら、CHOP、PLBL2の単一種に特定の公開済みデータは存在しない。
【0336】
抗ハムスターPLBL2抗体アッセイにおいて既存の免疫応答性を有する対象の場合、レブリキズマブの反復投与後抗体力価の上昇が維持された。試験開始時に抗体陰性であった対象の場合、四つの試験すべてにわたってその大部分が少なくとも二回のレブリキズマブ投与後に陽性となり、その後すべての時点で引き続き陽性であった。
【0337】
抗ハムスターPLBL2抗体の発生の臨床的重要性は知られていない。試験対象にはハムスターPLBL2に対する抗体の高い発生率が存在したが、安全性イベントと相関させることはできなかった。重要なのは、これら完了試験又は中間試験において安全性シグナル、特にアナフィラキシー、アナフィラキシー様、又は重度の過敏症反応が同定されなかったことである。それでも、依然として反復投与による長期曝露が、特に喘息患者集団及び他のアレルギー又は過敏症の患者集団において、アナフィラキシー、過敏症、及び免疫複合体沈着といった望ましくない影響の可能性を増大させうるという懸念がある。したがって、後期臨床試験以降において、長期にわたりそのような反復投与の可能性がある場合、患者に実質的に低レベルのハムスターPLBL2を含有する抗IL13 MAb(例えば、レブリキズマブ)調製物を投与して、免疫原性を可能な限り最小化することが重要である。
【0338】
更なる抗体配列を以下の表16に示す。
【0339】