(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751346
(24)【登録日】2020年8月18日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】精密シリンジ・ポンプおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20200824BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
A61M5/145 500
A61M5/168 500
A61M5/168 510
A61M5/168 514D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-553294(P2016-553294)
(86)(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公表番号】特表2017-506113(P2017-506113A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】CN2015072868
(87)【国際公開番号】WO2015124081
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】201410058046.9
(32)【優先日】2014年2月20日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーク、ジェイムズ ゲーザ
(72)【発明者】
【氏名】チン、ユイチン
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0281965(US,A1)
【文献】
特開2004−283378(JP,A)
【文献】
特開2008−264140(JP,A)
【文献】
特表2008−544315(JP,A)
【文献】
特表2007−516415(JP,A)
【文献】
特表2005−523402(JP,A)
【文献】
特表2004−504713(JP,A)
【文献】
特開平02−088140(JP,A)
【文献】
特開2005−326291(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/113794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダおよびプランジャを備えるシリンジを採用するシリンジ・ポンプであって、該シリンジ・ポンプが、モータと、リード・スクリューと、該リード・スクリューに接続されたシリンジ駆動ヘッドと、を備え、
該モータが、該リード・スクリューを駆動して時計回りにまたは反時計回りに回転させて、該シリンジ駆動ヘッドを駆動し、該プランジャを押して該シリンダ内を移動させ、
該シリンジ・ポンプが、
該リード・スクリュー上に配置され、これとともに回転する、少なくとも1つの永久磁石と、
該少なくとも1つの永久磁石によって生成される磁場を感知できる磁気抵抗センサと、
該磁気抵抗センサから信号を受信し、該磁気抵抗センサの信号フィードバックに従って、該モータによって回転される該リード・スクリューの方向および速度を制御するMCUと、をさらに備え、
前記リード・スクリューと平行な少なくとも1つの案内ロッドをさらに備え、前記シリンジ駆動ヘッドの一方の端部が該案内ロッド上に摺動するように接続され、前記リード・スクリューが前記シリンジ駆動ヘッドの他方の端部上に配置されるねじ山を有する穴を通過し、該案内ロッドが基部上に固定され、前記リード・スクリューが該基部上に回転可能に固定され、
前記モータがDCモータであり、
前記磁気抵抗センサがTMRセンサであり、
2つの永久磁石が設けられ、該永久磁石の各々が複数の異なる磁極を有し、該2つの永久磁石はそれぞれ、前記リード・スクリューの2つの端部上に配置されるか、または前記リード・スクリューの同じ端部上に直列に置かれ、前記永久磁石が、前記永久磁石の直径もしくは対角線に沿って、または前記リード・スクリューの長軸に対して垂直な方向に沿って磁化され、前記永久磁石の内部磁化方向が、前記リード・スクリューの該長軸に対して直角であり、
前記MCUが、前記リード・スクリューの回転速度を前記シリンジの輸液速度に変換するための磁気抵抗センサ情報管理ユニットを備え、
前記磁気抵抗センサ情報管理ユニットが、モータ回転角度計数ユニット、リード・スクリュー位置ユニットおよび/またはプランジャ位置ユニット、溶液体積ユニット、ならびに流量ユニットを備え、
前記MCUが、前記シリンジの前記輸液速度を設定された輸液速度と比較するための比較器を備え、前記MCUが、比較結果に従い、前記リード・スクリューの前記回転速度を調節する、シリンジ・ポンプ。
【請求項2】
前記磁気抵抗センサが、2軸回転磁気センサまたは直交する2つの単軸回転センサである、または、
前記磁気抵抗センサが、単軸直動磁気センサまたは2軸直動磁気センサである、請求項1記載のシリンジ・ポンプ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの永久磁石および前記リード・スクリューの中心軸が、前記磁気抵抗センサの中心を通過する、請求項1記載のシリンジ・ポンプ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの永久磁石が、一体になった永久磁石または分割された永久磁石であり、かつ円盤形状、環状、または正方形であり、該一体になった永久磁石または分割された永久磁石が、前記リード・スクリューの前記モータと同じ端部または前記リード・スクリューの他方の端部上に配置される、請求項1記載のシリンジ・ポンプ。
【請求項5】
XY平面における前記磁気抵抗センサの表面積が、該XY平面における前記永久磁石のカバー面積よりも小さい、請求項1記載のシリンジ・ポンプ。
【請求項6】
モータ制御装置および警報装置をさらに備え、前記MCUが該モータ制御装置を通して前記モータの回転方向および回転速度を制御し、該警報装置が該モータ制御装置に接続される、請求項1記載のシリンジ・ポンプ。
【請求項7】
前記モータと前記リード・スクリューを接続する機械的伝動デバイスを備え、該機械的伝動デバイスが、少なくとも1つのギアおよび減速ギア、またはプーリおよび伝動ベルトである、請求項1記載のシリンジ・ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスに、特に、輸液用シリンジ・ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床での使用において、輸液ポンプは、比較的長い時間内において設定速度で薬液または栄養物を静注により自動的に患者に輸液することを可能にするが、このことは、医療担当者の作業負荷を軽減し、輸液の確実性を向上させる。動作原理の違いにより、輸液ポンプは様々な種類に分けられるが、それらの中でも、容量ポンプおよびシリンジ・ポンプが一般的である。容量ポンプは、ぜん動ポンプによって駆動され得る。また、シリンジ・ポンプは、リード・スクリュー・ポンプによって駆動され得る。モータが、リード・スクリューを駆動して回転させ、回転運動を直線運動へと変え、プランジャを押して、プランジャと接続されたナットを通してシリンジ内の液体を患者の静脈内へと注入する。シリンジ・ポンプの輸液速度の精度は、容量ポンプの精度よりも高く、その誤差は約±5%である。しかしながら、新生児のための静脈注射および糖尿病患者のためのインスリン注射など、いくつかの臨床用途においては、シリンジ・ポンプの輸液速度の精度をさらに向上させることが必要である。輸液中に、シリンジ中のプランジャの位置を知ることも必要である。ステップ・モータを使用するのが慣行であり、また、直動ポテンショメータもしくは回転ポテンショメータまたは光学デコーダを使用しての輸液速度の制御も実施可能であるが、これらの方法は依然として、精度が低い、信頼性が不十分である、および製造コストが高いという問題を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既存のシリンジにおいて存在する低い精度および不十分な信頼性の問題に関して、本発明は、以下の技術的解決法を採択する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、シリンダおよびプランジャを備えるシリンジを採用するシリンジ・ポンプを開示し、このシリンジ・ポンプは、モータと、リード・スクリューと、リード・スクリューに接続されたシリンジ駆動ヘッドと、を備え、モータは、リード・スクリューを駆動して時計回りにまたは反時計回りに回転させて、シリンジ駆動ヘッドを駆動し、プランジャを押してシリンダ内を移動させ、
この場合シリンジ・ポンプは、リード・スクリュー上に配置されこれとともに回転する、少なくとも1つの永久磁石と、少なくとも1つの永久磁石によって生成される磁場を感知できる磁気抵抗センサと、磁気抵抗センサから信号を受信し、磁気抵抗センサの信号フィードバックに従って、モータによって回転されるリード・スクリューの方向および速度を制御するMCUと、をさらに備える。
【0005】
好ましくは、磁気抵抗センサは、2軸回転磁気センサまたは直交する2つの単軸回転センサである。
【0006】
好ましくは、磁気抵抗センサは、単軸のまたは2軸の、直動磁気センサである。
【0007】
好ましくは、磁気抵抗センサは、ホール・センサ、AMRセンサ、GMRセンサ、またはTMRセンサである。
【0008】
好ましくは、少なくとも1つの永久磁石およびリード・スクリューの中心軸は、磁気抵抗センサの中心を通過する。
【0009】
好ましくは、磁気抵抗センサは、少なくとも1つの永久磁石の近傍にある。
【0010】
好ましくは、少なくとも1つの永久磁石は、一体になった永久磁石または分割された永久磁石であり、かつ円盤形状、環状、または正方形である。一体になった永久磁石または分割された永久磁石は、リード・スクリューのモータと同じ端部またはリード・スクリューの他方の端部上に配置される。
【0011】
好ましくは、2つの永久磁石が設けられ、永久磁石の各々は、複数の異なる磁極を有し、またこれらの2つの永久磁石はそれぞれ、リード・スクリューの2つの端部上に配置されるか、またはリード・スクリューの同じ端部上に直列に置かれる。
【0012】
好ましくは、永久磁石は、永久磁石の直径もしくは対角線に沿って、またはリード・スクリューの長軸に対して垂直な方向に沿って磁化され、永久磁石の内部磁化方向は、リード・スクリューの長軸に対して直角である。
【0013】
好ましくは、XY平面における磁気抵抗センサの表面積は、XY平面における永久磁石のカバー面積よりも小さい。
【0014】
好ましくは、MCUは、リード・スクリューの回転速度をシリンジの輸液速度に変換するための、磁気抵抗センサ情報管理ユニットを備える。
【0015】
好ましくは、磁気抵抗センサ情報管理ユニットは、モータ回転角度計数ユニット、リード・スクリュー位置ユニットおよび/またはプランジャ位置ユニット、溶液体積ユニット、ならびに流量ユニットを備える。
【0016】
好ましくは、MCUは、シリンジの輸液速度を設定された輸液速度と比較するための比較器を備え、またMCUは、比較結果に従い、リード・スクリューの回転速度を調節する。
【0017】
好ましくは、シリンジ・ポンプは、モータ制御装置および警報装置を備え、この場合、MCUは、モータ制御装置を通してモータの回転方向および回転速度を制御し、警報装置はモータ制御装置に接続される。
【0018】
好ましくは、シリンジ・ポンプはリード・スクリューと平行な少なくとも1つの案内ロッドを備え、この場合、シリンジ駆動ヘッドの一方の端部はこれが摺動できるような様式で案内ロッド上に置かれ、リード・スクリューはシリンジ駆動ヘッドの他方の端部上に配置されるねじ山を有する穴を通過し、案内ロッドは基部上に固定され、リード・スクリューは基部上に回転可能に固定される。
【0019】
好ましくは、モータはDCモータまたはステップ・モータである。
【0020】
好ましくは、シリンジ・ポンプは、モータとリード・スクリューを接続する機械的伝動デバイスを備える。この機械的伝動デバイスは、少なくとも1つのギアおよび減速ギア、またはプーリおよび伝動ベルトである。
【0021】
本発明は、シリンジ・ポンプを製造する方法を開示する。シリンジ・ポンプは、モータと、リード・スクリューと、リード・スクリューに接続されたシリンジ駆動ヘッドと、を備え、モータは、リード・スクリューを駆動して時計回りにまたは反時計回りに回転させて、シリンジ駆動ヘッドを駆動し、プランジャを押してシリンダ内を移動させ、この場合、少なくとも1つの永久磁石が、リード・スクリュー上に配設されて、永久磁石をリード・スクリューとともに回転させ、磁気抵抗センサは、シリンジ・ポンプ上の、少なくとも1つの永久磁石によって生成される磁気信号を受信できる位置に配設され、モータによって回転されるリード・スクリューの方向および速度を磁気信号フィードバックに従い制御するためのMCUが、シリンジ・ポンプ上に設置される。
【0022】
好ましくは、磁気抵抗センサは、ホール・センサ、AMRセンサ、GMRセンサ、またはTMRセンサである。
【0023】
本発明のリード・スクリュー・ポンプによって駆動されるシリンジ・ポンプにおいては、輸液速度をフィードバックおよび制御し、シリンジ内のプランジャの位置を監視するために、磁気抵抗センサおよびマイクロ制御ユニット(MCU)が採用されるが、これは、ステップ・モータを用いて輸液速度を制御する方法に代わるものである。ステップ・モータが輸液速度を制御する精度は、相の数および拍の数によって決まり、相の数および拍の数が大きくなるほど、精度が高くなる。低速では、ステップ・モータは、低周波数振動を起こしやすい。開始周波数が高過ぎるかまたは負荷が大き過ぎる場合、容易にステップ損失または回転阻止につながり、またステップ・モータが停止するとき、高過ぎる回転速度に起因して容易にオーバーシュートにつながる。本発明では、別のモータを使用してステップ・モータを置き換えることができ、また、ステップ・モータとともに別のモータを使用することもでき、このことにより、シリンジ・ポンプの輸液速度の精度および信頼性が改善される。本発明によれば、高価なステップ・モータの代わりに通常のDCモータを使用することができ、したがってこのことにより、シリンジ・ポンプのコストが低減される。加えて、低電力消費の磁気抵抗センサの適用により、シリンジ・ポンプの電力消費を低減し充電頻度を少なくすることもできるが、このことは、全体にバッテリによって給電されるシリンジ・ポンプにとって重要な改善であり、使用を容易にする。まとめると、本発明の精密シリンジ・ポンプは、高い感度、高い信頼性、低い電力消費、および低いコストにより特徴付けられ、使用するのに便利である。
【0024】
上記の説明は、本発明の技術的解決法の概要に過ぎない。本発明の技術的手段をより明瞭に説明し、本明細書の内容に従って本発明を実施するために、本発明は、実施形態と組み合わせておよび添付の図面を参照して、以下で詳細に説明される。本発明の具体的な実施態様が、以下の実施形態を通して詳細に与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】磁気抵抗センサと永久磁石との間の位置関係を示す概略断面図、および永久磁石の磁化方向を示す概略図である。
【
図4】磁気抵抗センサ情報管理ユニットの概略ダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、シリンジ・ポンプ2の上面図である。シリンジ4を採用できるシリンジ・ポンプ2は、モータ52と、リード・スクリュー22と、シリンジ駆動ヘッド18と、を備える。シリンジ4は、シリンダ6およびプランジャ8を備える。モータ52は、リード・スクリュー22を駆動して時計回りにまたは反時計回りに回転させて、シリンジ駆動ヘッド18を駆動し、プランジャ8を押してシリンダ6内を移動させる。シリンジ・ポンプ2は、磁気抵抗センサ28と、少なくとも1つの永久磁石30と、MCU50と、をさらに備える。永久磁石30はリード・スクリュー22上に配置され、これとともに回転する。磁気抵抗センサ28は、永久磁石30によって生成される磁場を感知することができる。MCU50の入力端部は磁気抵抗センサ28と接続され、出力端部はモータ52と接続される。MCU50は磁気抵抗センサ28から信号を受信し、信号フィードバックに従い、モータ52によって回転されるリード・スクリュー22の方向および速度を制御する。
【0027】
モータ52と接続されたリード・スクリュー22の一方の端部は、ベアリング21を通して前方基部16A上に回転可能に固定され、他方の端部は、後方基部16B上のねじ山のない穴20を通過して、基部16B上に回転可能に固定される。シリンジ駆動ヘッド18を駆動するために、リード・スクリュー22は、リード・スクリュー22の外部ねじ山と適合する内部ねじ山を有する、シリンジ駆動ヘッド18上の穴7を通過する。モータ52は、回転速度を変更できる機械的伝動デバイス、たとえば1つまたは複数の減速ギア13およびギア31を通して、リード・スクリュー22を駆動して、シリンジ駆動ヘッド18の穴7の中で時計回りにまたは反時計回りに回転させ、この結果、リード・スクリュー22は、シリンジ駆動ヘッド18を駆動して、繰り返し直線的に移動させる。コストを低減するために、ギア31および減速ギア13をプーリおよび伝動ベルトで置き換えることも実施可能である。
【0028】
安定化および案内の役割を果たす案内ロッド26が、シリンジ駆動ヘッド18の他方の端部上のねじ山のない穴5を通過し、リード・スクリュー22と平行に配設される。安定化の役割を果たす1つまたは複数の案内ロッド26が存在してよく、これらの2つの端部は、前方基部16Aおよび後方基部16B上にそれぞれ固定される。
【0029】
案内ロッド26を使用しない場合、シリンジ駆動ヘッド18は、リード・スクリュー22と平行である摺動レールに沿って移動してもよい。
【0030】
モータ52は、DCモータ、ACモータ、ステップ・モータ、サーボ・モータなどであってよい。
【0031】
シリンジ駆動ヘッド18には、様々な直径を有するシリンジ4のプランジャ8を固定し保持できる、1対のプランジャ・クランプ14が設けられる。したがって、リード・スクリュー22がシリンジ駆動ヘッド18の穴7内で回転するとき、シリンジ駆動ヘッド18は、案内ロッド26の方向に沿って直線運動して、プランジャ8を押してまたは引いて、シリンダ6内を移動させる。様々な直径を有するシリンジ4のシリンダ6を固定できる、1対のシリンダ・クランプ12が、後方端部16B上に装着される。
【0032】
図2は、磁気抵抗センサと永久磁石との間の位置関係を示す概略断面図、および永久磁石の磁化方向を示す概略図である。永久磁石30は、リード・スクリュー22とともに回転方向17に沿って回転し、この間、磁気抵抗センサ28は不動である。磁気抵抗センサ28は、2軸回転磁気センサまたは直交する2つの単軸回転センサであり、また、単軸直動センサまたは2軸直動センサであってもよい。既存の磁気抵抗感知素子は、ホール素子、異方性磁気抵抗(AMR)素子または巨大磁気抵抗(GMR)素子、およびトンネル磁気抵抗(TMR)素子を含む。TMR技術は最先端のものであり、本発明の好ましい技術でもあるが、磁気抵抗センサ28として、他の磁気抵抗感知素子を使用することもできる。
【0033】
永久磁石30は、一体になったまたは分割された永久磁石であり、円盤形状、環状、または正方形である。2つの永久磁石30を設けることができ、これらの各々は、複数の異なる磁極を有する。
図2B、
図2C、および
図2Dは、永久磁石30が円盤形状、正方形であり、かつ分割された永久磁石であることを示し、それぞれのいくつかの可能な磁化方向を示すが、全ての可能な形状および磁化方向を示す訳ではない。上述の永久磁石30は、好適な適用条件を満足する厚さを有する。XY平面における磁気抵抗センサ28の表面積は、XY平面における永久磁石30のカバー面積よりも小さい。リード・スクリュー22は、Z軸方向において長軸15を有し、この長軸15は、XY平面に対して直角であり、永久磁石30の中心を通過し、永久磁石30と同軸である。永久磁石30およびリード・スクリュー22の中心軸は、磁気抵抗センサ28の中心を通過する。永久磁石30は、直径または対角線方向に沿って磁化され、その磁化方向は、Z軸方向またはリード・スクリュー22の長軸方向に対して直角である。円盤形状の永久磁石および環状の永久磁石は、直径方向に沿って磁化され、正方形の永久磁石は、対角線方向に沿って磁化される。永久磁石を、リード・スクリューの長軸と直角の方向に沿って磁化することもできる。永久磁石30は、リード・スクリュー22の、モータ52から離れた一方の端部上に配置されてよく、また、モータ52と同じ端部上にあってもよい。2つの永久磁石30が設けられる場合、これら2つの永久磁石はそれぞれ、リード・スクリュー22の2つの端部上にそれぞれ配置されるか、またはリード・スクリューの同じ端部上に直列に置かれる。磁気抵抗センサ28は、永久磁石30の近傍にあり、また、永久磁石30から離れていてもよい。2つの永久磁石30がリード・スクリュー22の同じ端部上に直列に設けられる場合、磁気抵抗センサ28は、リード・スクリュー22の近傍にあってよく、またリード・スクリュー22から離れていてもよい。
【0034】
永久磁石30は、回転中の回転位相角αを有する。動作中、磁気抵抗センサ28は、永久磁石30の検出磁場成分と磁気抵抗センサ28の感知軸との間に形成される、回転磁場位相角fを出力するための、正弦および余弦を形成する。aとfとの間に形成される線形の関係が、0°から360°の範囲内で1対1の対応関係を満足するときのみ、磁気抵抗センサ28によって検出される回転磁場位相角fと永久磁石30の回転位相角aとの間の位置関係が、互いに一致し得る。磁気抵抗センサ28は、先述の要件を満足できる、永久磁石30の検出領域内に配設されるべきである。
【0035】
図4は、MCU50の制御の概略ダイアグラムである。シリンジ・ポンプ2は、磁気抵抗センサ28から信号を受信し、モータ制御装置48を通してモータ52の回転方向および速度を制御する、MCU50を備える。加えて、MCU50は、操作キーボード56、ディスプレイ60、およびバッテリ64と接続される。
【0036】
モータ制御装置48は、磁気抵抗センサ28の出力信号を監視し、また警報装置48に接続される。事前設定された位置および流量が見つかると、モータ制御装置48は、警報装置54を起動させることになる。
【0037】
MCU50は、シリンジ・ポンプの使用者が知る必要のある情報を、ディスプレイ60上に表示する。使用者は、MCU50と接続されたキーボード56を通して、シリンジ・ポンプ2と通信することもできる。MCU50を、シリンジ4に加えられる力を検出し、起こり得る閉塞を検出し、正常な輸液を保証することが可能な、力センサ51と接続することもでき、力が設定値を超えるとき、力センサ51は、モータ制御装置48を通して、警報装置54を起動させることになる。
【0038】
バッテリ64は、電気素子およびモータによって必要とされる電力を提供するが、シリンジ・ポンプ2は、AC電源を使用することもできる。
【0039】
MCUは、リード・スクリュー22の回転速度をシリンジの輸液速度に変換するための、磁気抵抗センサ情報管理ユニット49を備える。
図5は、MCU50内の磁気抵抗センサ情報管理ユニット49の機能を示す。磁気抵抗センサ情報管理ユニット49は、モータ回転角度計数ユニット66、リード・スクリュー位置ユニット70、プランジャ位置ユニット74、溶液体積ユニット68、流量ユニット72、および比較ユニット47を備え、またこれらにおいて、様々な直径を有するシリンジ4の輸液体積およびシリンダ6内でのプランジャ8の位置の変換テーブル、シリンダ6内での様々な直径を有するシリンジ4のプランジャ8の位置およびリード・スクリュー22の位置の変換テーブル、ならびにリード・スクリュー22の回転角度およびリード・スクリュー22の位置のアルゴリズムが、事前設定される。
【0040】
シリンジ・ポンプ2が使用されるとき、シリンジ・ポンプ2を較正することが必要である。MCU50は、上記の全ての変換テーブルを含む設定されたプログラムに従い、シリンジ・ポンプ2を較正することができ、輸液体積および速度を計算することができる。プランジャ8はリード・スクリュー22の回転とともに移動し、また、磁気抵抗センサ28からの信号に従い、モータ回転角度計数ユニット66は、リード・スクリュー22の回転角度および時間を記録する。リード・スクリュー22の回転角度、およびリード・スクリュー22の回転角度のアルゴリズム、およびMCU50において事前設定されたリード・スクリュー22の並進位置、すなわち、
リード・スクリューの直線移動の距離=(回転角度)*(長手方向のねじ山のピッチ)に従い、
リード・スクリュー位置ユニット70は、リード・スクリュー22の位置またはZ軸方向におけるその移動の直線距離を計算することができる。同時に、リード・スクリュー22の位置、およびシリンダ内での様々な直径を有するシリンジ4のプランジャ8の位置の変換テーブルに従い、プランジャ位置ユニット74は、シリンダ6内でのプランジャ8の位置を知ることができる。さらに、溶液体積ユニット68は、様々な直径を有するシリンジ4の体積およびシリンダ6内でのプランジャ8の位置の変換テーブルに従い、輸液体積を知ることができる。また流量ユニット72は、輸液体積および上記の時間に従い、輸液速度を計算することができる。リード・スクリュー22の回転角度および様々な直径を有するシリンジ4の輸液体積の変換テーブルが事前設定される場合、流量ユニット72は、変換テーブルならびにモータ回転角度計数ユニット66によって記録されたリード・スクリュー22の回転角度および時間に従い、輸液速度をより迅速に計算することができる。MCUは、測定された輸液速度を事前設定された輸液速度と比較するための比較器47をさらに備え、測定された輸液速度が事前設定された輸液速度から上に外れるかまたは下に外れるときに、MCU50は、モータ52の回転方向および速度を調節するように、モータ制御装置48に命令することになる。MCU50は、プランジャ位置ユニット74によって提供される、シリンダ6内でのプランジャ8の位置に従い、または、溶液体積ユニット68によって提供される輸液体積のデータに従い、モータ52の回転方向および速度を調節するように、モータ制御装置48に命令することになる。
【0041】
シリンジ・ポンプ2の較正プロセスは以下の通りである。空のシリンジ4がシリンジ・ポンプ2上に配設される。磁気抵抗センサ情報管理ユニット49が、磁気抵抗センサ28によって測定された、シリンダ6内でのプランジャ8の位置を記録する。次いで知られている体積の液体が、シリンジ4内に加えられる。体積の値が、MCU50に入力される。磁気抵抗センサ情報管理ユニット49は、液体の体積とシリンダ6内でのプランジャ8の位置との間の関係、および、液体の体積とリード・スクリュー22の位置との間の関係を得、較正パラメータを計算することができる。
【0042】
ステップ・モータが使用されるとき、モータ52がモータの回転速度を調節する機能を有することに加えて、MCU50はさらに、磁気抵抗センサ28の信号フィードバックに従ってモータ制御装置48を通してモータ52の速度を規制することができ、したがってこのことにより、輸液速度をより精確にすることができる。
【0043】
図5は変換曲線である。永久磁石30がリード・スクリュー22とともに回転方向17において回転するとき、磁気抵抗センサ28によって検出される、回転角度の関数としてのX軸およびY軸の磁場成分の曲線は、それぞれ、
図4における曲線41および曲線42で示されるようなものである。磁気抵抗センサ28は、永久磁石30によって生成された磁場振幅をアナログ電圧信号に変換し、得られたアナログ電圧信号は、直接出力することができ、また、アナログデジタル変換回路(ADC)を通して、デジタル信号に変換してから出力することもできる。永久磁石30の回転角度、すなわちリード・スクリュー22の回転角度は、出力信号に従い知ることができる。
【0044】
シリンジ・ポンプ2を製造するための方法が提供される。シリンジ・ポンプ2は、モータ52と、リード・スクリュー22と、リード・スクリュー22に接続されたシリンジ駆動ヘッド18と、を備え、モータ52は、リード・スクリュー22を駆動して時計回りにまたは反時計回りに回転させて、シリンジ駆動ヘッド18を駆動し、プランジャ8を押してシリンダ6内を移動させる。永久磁石30はリード・スクリュー22上に配設され、永久磁石30をリード・スクリュー22とともに回転させる。磁気抵抗センサ28は、シリンジ・ポンプ2上の、永久磁石30によって生成される磁気信号を受信できる位置に配設される。モータによって回転されるリード・スクリュー22の方向および速度を磁気信号フィードバックに従い制御するMCU50が、シリンジ・ポンプ2上に設置される。磁気抵抗センサ28は、ホール・センサ、AMRセンサ、GMRセンサ、またはTMRセンサである。
【0045】
上記の説明は本発明の好ましい例に過ぎず、本発明を限定することは意図していない。当業者にとり、本発明は、様々な修正形態および変更形態を有し得る。本発明における複数の器具を、別様に組み合わせることおよび変更することもできる。本発明の趣旨および原理の中で行われる任意の修正、等価な置換、改善などは、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。