特許第6751372号(P6751372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751372
(24)【登録日】2020年8月18日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】建物の警戒システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 13/20 20060101AFI20200824BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   G08B13/20
   G08B25/04 H
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-123403(P2017-123403)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-8533(P2019-8533A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 宏一
(72)【発明者】
【氏名】林 康治
【審査官】 藤江 大望
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−250675(JP,A)
【文献】 特開2001−243562(JP,A)
【文献】 特開2003−173476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B13/00−15/02
19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内と屋外とを連通するとともに開閉体により開閉される開口部を備えた建物に適用され、
前記開口部が前記開閉体により閉鎖されている状態で、屋内の気圧を屋外の気圧よりも低い又は高い所定の気圧に調整することが可能な気圧調整手段と、
屋内の気圧を検知する屋内気圧検知手段と、
前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が前記所定の気圧から屋外の気圧に近づく側に変化した場合に警戒制御を実行する制御手段と、を備え
前記制御手段は、前記建物内に何者かが侵入した旨を所定の報知対象者に報知する侵入報知処理を前記警戒制御として実行し、
前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が前記所定の気圧から屋外の気圧に近づく側に変化した後、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が前記所定の気圧に戻ったか否かを判定する気圧復帰判定手段と、
その気圧復帰判定手段の判定結果に基づき、前記建物への侵入者の侵入態様を判定する侵入態様判定手段とを備え、
前記制御手段は、前記侵入報知処理に際し、前記侵入態様判定手段の判定結果を併せて報知することを特徴とする建物の警戒システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になった場合に前記警戒制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の建物の警戒システム。
【請求項3】
前記建物の付近に設けられ、屋外の気圧を検知する屋外気圧検知手段を備え、
前記制御手段は、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が、前記屋外気圧検知手段により検知される屋外の気圧に近づく側に変化した場合に前記警戒制御を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の警戒システム。
【請求項4】
警戒モードの設定及びその解除が可能となっており、
前記制御手段は、前記警戒モードが設定されている場合に前記警戒制御を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物の警戒システム。
【請求項5】
前記屋内気圧検知手段により検知された屋内の気圧が前記所定の気圧になった場合に、前記警戒モードを設定する設定手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の建物の警戒システム。
【請求項6】
前記建物内に居住者が不在となったことを判定する不在判定手段と、
前記不在判定手段により居住者が不在となったと判定された場合に前記警戒モードを設定する設定手段と、を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の建物の警戒システム。
【請求項7】
前記不在判定手段による不在判定から所定時間が経過しても、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が前記所定の気圧になっていない場合には、外出中の居住者に前記開口部が開放されている旨を報知する開放報知手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の建物の警戒システム。
【請求項8】
前記建物には、前記開口部が複数設けられ、
前記屋内気圧検知手段は、屋内における複数箇所に配置され、
前記制御手段は、前記各屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧がいずれも屋外の気圧に近づく側に変化した場合に前記警戒制御を実行し、
前記各屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧について屋外の気圧に近づく側に変化した際のその変化した順序を判定するとともに、その判定した順序に基づいて人がいずれの前記開口部から前記建物内に侵入したかを判定する侵入位置判定手段を備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の建物の警戒システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の警戒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物への人の侵入を検出した場合に警報を発する等、所定の警戒制御を実行する警戒システムが知られている。この種の警戒システムとして、特許文献1には、室内の気圧の変化を検知する圧力変化検知装置を備え、その検知装置により室内の気圧の変化を検知した場合に、室内への人の侵入を検出するようにしたものが開示されている。人が扉を開放して室内に侵入する際には、扉の開放により室内の気圧が変化するため、この場合、その気圧の変化に基づき人の侵入を好適に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−151470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、扉の開放前に室内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になっている場合には、扉の開放に際し室内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧のまま変化しないことが想定される。その場合、上記特許文献1のシステムでは、室内に侵入者が侵入したにもかかわらず、その侵入が検出されないこととなり、当該侵入に対して警戒制御が実行されないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物内への人の侵入を確実に検出することで、人の侵入に対し確実に警戒制御を実行させることができる建物の警戒システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の警戒システムは、屋内と屋外とを連通するとともに開閉体により開閉される開口部を備えた建物に適用され、前記開口部が前記開閉体により閉鎖されている状態で、屋内の気圧を屋外の気圧よりも低い又は高い所定の気圧に調整することが可能な気圧調整手段と、屋内の気圧を検知する屋内気圧検知手段と、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が前記所定の気圧から屋外の気圧に近づく側に変化した場合に警戒制御を実行する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、開口部が開閉体により閉鎖されている状態で、気圧調整手段により屋内の気圧を屋外の気圧よりも低い又は高い所定の気圧に調整することができる。ここで、このように屋内の気圧が所定の気圧に調整された状態で、建物内に人が開口部より侵入する際には、開口部が開放されるため、屋内の気圧が所定の気圧から屋外の気圧に近づく側に変化すると考えられる。そこで本発明では、屋内の気圧を検知する屋内気圧検知手段を設け、その検知手段により検知される屋内の気圧が所定の気圧から屋外の気圧に近づく側に変化した場合に警戒制御を実行することとしている。この場合、建物内への人の侵入を確実に検出することができるため、人の侵入に対し確実に警戒制御を実行させることができる。
【0008】
第2の発明の建物の警戒システムは、第1の発明において、前記制御手段は、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になった場合に前記警戒制御を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になった場合に警戒制御が実行される。これにより、人の侵入がないにもかかわらず、屋内の気圧が屋外の気圧に近づく側に若干変化した場合に、誤って警戒制御が実行されてしまうのを回避することができる。
【0010】
第3の発明の建物の警戒システムは、第1又は第2の発明において、前記建物の付近に設けられ、屋外の気圧を検知する屋外気圧検知手段を備え、前記制御手段は、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が、前記屋外気圧検知手段により検知される屋外の気圧に近づく側に変化した場合に前記警戒制御を実行することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、建物付近に屋外の気圧を検知する屋外気圧検知手段が設けられ、屋内の気圧がその検知手段により検知された屋外の気圧に近づく側に変化した場合に警戒制御が実行される。屋外の気圧は季節や天候等により変化すると考えられるため、このように検知された屋外の気圧を基に警戒制御を実行することで、精度の高い警戒制御を実現することができる。
【0012】
第4の発明の建物の警戒システムは、第1乃至第3のいずれかの発明において、警戒モードの設定及びその解除が可能となっており、前記制御手段は、前記警戒モードが設定されている場合に前記警戒制御を実行することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、警戒モードが設定されている場合に限り警戒制御が実行される。これにより、警戒モードが解除されている場合には警戒制御が実行されないようにすることができるため、例えば居住者が帰宅しようとしている際に警戒モードを解除することで、居住者の建物への出入りに際し、警戒制御が意図せず実行されてしまうのを回避することができる。
【0014】
第5の発明の建物の警戒システムは、第4の発明において、前記屋内気圧検知手段により検知された屋内の気圧が前記所定の気圧になった場合に、前記警戒モードを設定する設定手段を備えることを特徴とする。
【0015】
ところで、いずれかの開口部が開放されたまま警戒モードが設定されると、建物内に誰も侵入していないにもかかわらず、屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になる等して警戒制御が実行されてしまう誤警戒が生じるおそれがある。その点本発明では、屋内の気圧が所定の気圧になった場合に、つまり開口部が閉鎖された状態で屋内の気圧が所定の気圧に調整された場合に警戒制御が実行されるため、上述のような誤警戒が生じるのを回避することができる。
【0016】
第6の発明の建物の警戒システムは、第4又は第5の発明において、前記建物内に居住者が不在となったことを判定する不在判定手段と、前記不在判定手段により居住者が不在となったと判定された場合に前記警戒モードを設定する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、居住者が外出する等して建物内が不在になった場合に警戒モードが設定されるため、居住者が外出時にいちいち手動で警戒モードを設定する必要がなく、利便性の向上を図ることができる。また、居住者が建物に在宅している際には警戒モードが設定されないため、居住者が窓部を開け閉めする際等に意図せず警戒制御が実行されてしまうのを回避することができる。
【0018】
第7の発明の建物の警戒システムは、第6の発明において、前記不在判定手段による不在判定から所定時間が経過しても、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が前記所定の気圧になっていない場合には、外出中の居住者に前記開口部が開放されている旨を報知する開放報知手段を備えることを特徴とする。
【0019】
居住者が外出して建物内が不在となった際に、いずれかの開口部が開放されていると、屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になる等、屋内の気圧が所定の気圧に調整されない場合が想定される。そこで本発明では、その点に鑑み、居住者不在の判定から所定時間が経過しても屋内の気圧が所定の気圧になっていない場合には、外出中の居住者に開口部が開放されている旨を報知することとしている。この場合、その報知を受けた居住者は建物に戻って開閉体を閉める等の対応をとることが可能となるため、防犯性の向上を図ることができる。
【0020】
第8の発明の建物の警戒システムは、第1乃至第7のいずれかの発明において、前記制御手段は、前記建物内に何者かが侵入した旨を所定の報知対象者に報知する侵入報知処理を前記警戒制御として実行し、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が前記所定の気圧から屋外の気圧に近づく側に変化した後、前記屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧が前記所定の気圧に戻ったか否かを判定する気圧復帰判定手段と、その気圧復帰判定手段の判定結果に基づき、前記建物への侵入者の侵入態様を判定する侵入態様判定手段とを備え、前記制御手段は、前記侵入報知処理に際し、前記侵入態様判定手段の判定結果を併せて報知することを特徴とする。
【0021】
本発明では、警戒制御として、建物内に侵入者が侵入した旨を所定の報知対象者に報知する侵入報知処理が実施される。これにより、報知を受けた報知対象者は侵入者の侵入に対して適切な対応をとることが可能となる。なお、報知対象者としては、建物に居住する居住者や警察等の外部機関が挙げられる。
【0022】
ところで、建物内に人が侵入する場合の侵入方法としては、例えば開閉体(ドアや窓戸等)を施錠する施錠部を不正に解錠して侵入する方法が考えられる。また、開閉体(例えばガラス戸)を壊して(割って)侵入する方法も考えられる。ここで、前者の方法で侵入者が建物内に侵入する場合には、開閉体を開けて建物内に入り、入った後開閉体を閉めると考えられる。そのため、この場合には、侵入者が建物内に侵入した後、屋内の気圧が再び所定の気圧に戻ると考えられる。一方、後者の方法で侵入者が建物内に侵入する場合には、開閉体を壊して建物内に入るため、侵入者が建物内に侵入した後も屋内の気圧が所定の気圧に戻ることなく、例えば屋外の気圧と同じ気圧になることが考えられる。
【0023】
そこで、本発明では、こうした点に着目し、建物内に侵入者が侵入して屋内の気圧が所定の気圧から屋外の気圧に近づく側に変化した後、屋内の気圧が所定の気圧に戻ったか否かを判定するとともに、その判定結果に基づいて侵入者の侵入態様を判定することとしている。例えば、侵入者が、上述した2つの侵入方法(侵入態様)、すなわち(不正解錠等した後)開閉体を開け閉めして侵入する方法、及び開閉体を破壊して侵入する方法のうち、いずれの方法で侵入したかを判定するようにしている。そして、その侵入態様に関する判定結果を侵入報知処理に際し、併せて居住者に報知することとしている。これにより、居住者は侵入者の侵入態様についても知ることができるため、その侵入態様に応じて適切な対応をとることが可能となる。
【0024】
第9の発明の建物の警戒システムは、第1乃至第8のいずれかの発明において、前記建物には、前記開口部が複数設けられ、前記屋内気圧検知手段は、屋内における複数箇所に配置され、前記制御手段は、前記各屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧がいずれも屋外の気圧に近づく側に変化した場合に前記警戒制御を実行し、前記各屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧について屋外の気圧に近づく側に変化した際のその変化した順序を判定するとともに、その判定した順序に基づいて人がいずれの前記開口部から前記建物内に侵入したかを判定する侵入位置判定手段を備えることを特徴とする。
【0025】
ところで、建物内(屋内)は間仕切壁等によって複数の屋内空間(部屋)に区画されているため、いずれかの開口部より侵入者が建物内に侵入した際には、その開口部が設けられた屋内空間の気圧がまず屋外の気圧に近づく側に変化し、それから順に隣接する屋内空間の気圧が屋外の気圧に近づく側に変化していくと考えられる。そこで本発明では、このような点に着目し、屋内における複数箇所に屋内気圧検知手段を設け、それら複数の屋内気圧検知手段により検知される屋内の気圧について屋外の気圧に近づく側に変化した際のその変化した順序を判定し、そして、その判定した順序に基づいて、侵入者がいずれの開口部より侵入したか、つまり侵入者の侵入位置を判定することとしている。この場合、例えばその侵入者の侵入位置近くで警告を行う等、侵入者の侵入位置に応じた警戒制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】警戒システムが設けられた建物の概要を示す図。
図2】制御処理を示すフローチャート。
図3】警戒制御処理を示すフローチャート。
図4】他の実施形態における警戒システムが設けられた建物の概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は、警戒システムが設けられた建物の概要を示す図である。また、図1では、警戒システムの電気的構成を併せて示している。
【0028】
図1に示すように、住宅等の建物10には、その外周部に外壁部11が設けられている。外壁部11には、開口部としての玄関口12が設けられている。玄関口12は、屋内と屋外とを連通しており、この玄関口12を通じて建物10内への出入りが行われる。玄関口12には、開閉体としての玄関ドア13が設けられている。玄関ドア13は、例えば開き戸からなる。この玄関ドア13により玄関口12の開閉が行われる。
【0029】
玄関ドア13には、施錠装置14が設けられている。施錠装置14は、玄関ドア13を電気的に施解錠する電気錠からなり、屋内側につまみ(サムターン)を有している。施錠装置14は、屋内側からはつまみによる手動操作により施解錠され、屋外側からは建物10の居住者が所持する電子キーにより施解錠される。
【0030】
外壁部11には、開口部としての窓部16が設けられている。窓部16は、屋内と屋外とを連通しており、その窓部16には、開閉体としてのガラス戸17が配設されている。このガラス戸17により窓部16の開閉が行われる。また、図示は省略するが、ガラス戸17には施錠部(クレセント)が設けられている。なお、図1では、窓部16(及びガラス戸17)が1つしか示されていないが、実際には窓部16は外壁部11に複数設けられている。
【0031】
建物10には、屋内の換気を行う換気装置18が設けられている。換気装置18は、排気ファンを有しており、屋内の空気を屋外に排出することで屋内の換気を行う。そのため、本建物10では、いわゆる第三種換気方式が採用されている。換気装置18は、例えば建物10においてトイレや浴室、キッチン等に設置されている。また、換気装置18は、常時運転されており、それにより24時間換気が行われている。
【0032】
ところで、本建物10は、気密性能に優れた高気密住宅となっている。そのため、換気装置18による屋内換気時には、屋内の空気が屋外に排出されることで屋内の気圧が屋外の気圧よりも低い所定の気圧Po(負圧)に維持(調整)されるようになっている。詳しくは、各ガラス戸17が閉められかつ玄関ドア13が閉められた状態で(換言すると、屋内が屋外から閉鎖された閉空間となっている状態で)、換気装置18により屋内の換気が行われている場合には、屋内の気圧が所定の気圧Poに維持されるようになっている。なお、この場合、換気装置18が気圧調整手段に相当する。
【0033】
ここで、屋内の気圧が所定の気圧Poに維持された状態で、何者かが玄関口12や窓部16より建物10内に侵入する際には、その侵入口(玄関口12等)が開放されるため、屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧に変化すると考えられる。そこで、本実施形態では、この点に着目し、建物10に屋内の気圧を検知する屋内気圧検知手段を設け、その検知手段により検知された屋内の気圧が所定の気圧Poから屋外の気圧と同じ気圧になった(変化した)場合に所定の警戒制御を行う警戒システムを建物10に設けている。以下においては、その警戒システムについて説明する。
【0034】
本警戒システムは、制御手段としてのコントローラ20を備えている。コントローラ20は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを備えて構成され、例えば建物10内の壁面に取り付けられている。
【0035】
建物10には、屋内の気圧を検知する屋内気圧センサ21と、屋外の気圧を検知する屋外気圧センサ22とが設けられている。屋内気圧センサ21は、建物10内において(平面視における)中央部に設けられ、例えば壁面や天井面に取り付けられている。また、屋外気圧センサ22は屋外に設けられ、例えば外壁部11の屋外面に取り付けられている。なお、本実施形態では、各気圧センサ21,22がそれぞれ1つずつ設けられている。
【0036】
各気圧センサ21,22はいずれもコントローラ20に接続されている。コントローラ20には、これら各気圧センサ21,22から逐次検知結果が入力される。なお、屋内気圧センサ21が屋内気圧検知手段に相当し、屋外気圧センサ22が屋外気圧検知手段に相当する。
【0037】
建物10には、当該建物10への侵入者に対し警告を行う警告装置23が設けられている。警告装置23は、スピーカ等の音声出力機器からなり、警告音(例えばブザー音)を出力することで侵入者に警告を行う。警告装置23は、例えば建物10内の壁面に取り付けられている。警告装置23はコントローラ20に接続されている。コントローラ20は、各気圧センサ21,22からの検知結果に基づいて、警告装置23に警告信号を出力し、当該装置23に警告処理を行わせる。
【0038】
コントローラ20は、居住者の携帯する携帯端末28との間で無線通信可能な通信部20aを有している。携帯端末28は、例えばスマートフォンや携帯電話機等からなる。コントローラ20は、各気圧センサ21,22からの検知結果に基づいて、通信部20aより居住者の携帯端末28に建物10内への人の侵入に関する侵入情報をメール(文字情報)で送信する。なお、侵入情報は必ずしもメールで送信する必要はなく、例えば音声情報で送信してもよい。
【0039】
コントローラ20には、施錠装置14が接続されている。居住者により施錠装置14に対して電子キーによる施錠操作又は解錠操作が行われると、その操作に応じて施錠操作信号又は解錠操作信号が施錠装置14からコントローラ20に入力される。詳しくは、居住者が外出する際には居住者により施錠操作が行われるため、施錠装置14から施錠操作信号がコントローラ20に入力される。また、居住者が帰宅する際には居住者により解錠操作が行われるため、施錠装置14から解錠操作信号がコントローラ20に入力される。コントローラ20は、施錠装置14から入力される施錠操作信号及び解錠操作信号に基づいて、居住者が建物10から外出するか建物10に帰宅するかを都度判定する。そして、コントローラ20は、その判定(外出帰宅判定)の結果に基づいて、建物10内にて居住者が不在となったか否かを判定する。
【0040】
次に、コントローラ20により実行される制御処理について図2に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、本処理は所定の周期で繰り返し実行される。
【0041】
図2に示すように、まずステップS11では、警戒モードが設定されているか否かを判定する。警戒モードとは、建物10の警戒制御を実施する際に設定されるモードであり、本警戒システムでは、後述するように、この警戒モードが自動で設定及び設定解除されるようになっている。警戒モードが設定されている場合にはステップS17に進み、警戒制御処理を行う。一方、警戒モードが設定されていない場合にはステップS12に進む。
【0042】
ステップS12では、建物10内にて居住者が不在となったか否かを判定する(不在判定手段に相当)。この判定は、上述したように、施錠装置14から入力される解錠操作信号及び施錠操作信号に基づいて行われる。建物10内に居住者が在宅している場合には本処理を終了する。一方、建物10内にて居住者が不在となった場合にはステップS13に進む。なお、居住者が不在となる場合には、居住者が玄関口12より玄関ドア13を開いて外出するため、屋内が一時的に屋外に開放され、屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になる。
【0043】
ステップS13では、タイマをセットし、タイマによる計時を開始する。続くステップS14では、屋内気圧センサ21からの検知結果に基づいて、屋内の気圧が所定の気圧Poになった(戻った)か否かを判定する。屋内の気圧が所定の気圧Poになった場合にはステップS16に進み、警戒モードを設定する。そして、警戒モードを設定後、ステップS17に進み、警戒制御処理を実行する。なお、警戒制御処理については後述する。
【0044】
屋内の気圧が所定の気圧Poになっていない(戻っていない)場合にはステップS15に進み、タイマによる計時開始から所定時間が経過したか否かを判定する。つまり、ここでは、居住者が不在になってから所定時間が経過したか否かを判定する。なお、所定時間は、居住者の外出に伴い屋外の気圧と同じ気圧になった屋内の気圧が、換気装置18による換気(排気)により所定の気圧Poに戻るのに必要十分な時間に設定されている。
【0045】
居住者が不在になってからまだ所定時間が経過していない場合には、再びステップS14に戻って同ステップS14の判定を行う。つまり、この場合、居住者が不在になってから所定時間が経過するまでステップS14及びS15の処理を繰り返し行う。居住者が不在になってから所定時間が経過した場合、換言すると居住者が不在になってから所定時間が経過しても屋内の気圧が所定の気圧Poになっていない(戻らない)場合には、ステップS21に進む。この場合、居住者がガラス戸17(又は玄関ドア13)を開けたまま外出したとみなすことができる。
【0046】
ステップS21では、ガラス戸17が開いたままである旨を居住者に報知する開放報知処理を行う(開放報知手段に相当)。この処理では、居住者の携帯する携帯端末28にメールにより「ガラス戸が開いています」等のメッセージを送信する。これにより、居住者がガラス戸17を開けたまま外出した場合には、居住者はその旨を知ることができる。その後、本処理を終了する。
【0047】
続いて、ステップS17の警戒制御処理について図3に示すフローチャートに基づき説明する。
【0048】
図3に示すように、警戒制御処理では、まずステップS31において、各気圧センサ21,22からの検知結果に基づいて、屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になったか否かを判定する。屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になっていない場合には本処理を終了する。一方、屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になった場合にはステップS32に進む。この場合、屋内が玄関口12又は窓部16を介して屋外に開放されたとみなすことができるため、何者かが玄関口12又は窓部16を通じて建物10内に侵入したとみなすことができる。
【0049】
ステップS32では、建物10内への侵入者に警告を行う警告処理(警戒制御に相当)を実行する。この処理では、警告装置23に警告信号を出力することで、同装置23により警告音を出力する。この場合、警告音として、例えばブザー音を出力したり、「建物から退出してください」等のアナウンスを出力したりすることが考えられる。これにより、侵入者を威嚇することができるため、侵入者の建物10からの退出を促すことができる。
【0050】
続くステップS33では、所定時間が経過するのを待つ待機処理を行う。ここで、所定時間は、ステップS15の所定時間と同じ時間に設定されており、つまりは屋内の気圧が換気装置18による換気(排気)により、屋外の気圧と同じ気圧から所定の気圧Poに戻るのに必要十分な時間に設定されている。
【0051】
待機処理後のステップS34では、屋内気圧センサ21からの検知結果に基づいて、屋内の気圧が所定の気圧Poに戻ったか否かを判定する気圧復帰判定処理を行う(気圧復帰判定手段に相当)。この判定処理では、すなわち、建物10への侵入者の侵入があった後、換気装置18による換気により屋内の気圧が所定の気圧Poに戻ったか否かを判定する。
【0052】
ここで、気圧復帰判定処理の結果、屋内の気圧が所定の気圧Poに戻った場合には、建物10への侵入者の侵入後に玄関ドア13やガラス戸17が閉められたと考えられる。つまり、この場合、侵入者が玄関ドア13の施錠装置14やガラス戸17の施錠部を不正に解錠し、その後玄関ドア13又はガラス戸17を開け閉めして建物10に侵入したと考えられる。
【0053】
一方、気圧復帰判定処理の結果、屋内の気圧が所定の気圧Poに戻っていない場合には、侵入者が建物10に侵入した後も、屋内が屋外に開放されていると考えられる。したがって、この場合、侵入者が玄関ドア13やガラス戸17を破壊して(割って)侵入したと考えられ、それにより屋内が玄関口12又は窓部16を介して屋外に開放された状態になっていると考えられる。
【0054】
このように、侵入者が建物10内に侵入する際の侵入方法としては、以下の(a)及び(b)の方法が考えられる。
【0055】
(a)侵入者が玄関ドア13の施錠装置14やガラス戸17の施錠部を不正に解錠した後、玄関ドア13やガラス戸17を開け閉めして侵入する方法
(b)侵入者が玄関ドア13やガラス戸17を破壊して侵入する方法
そこで、続くステップS35では、上記の点に鑑み、気圧復帰判定処理の判定結果に基づいて、侵入者の建物10への侵入態様(侵入方法)を判定する侵入態様判定処理を行う(侵入態様判定手段に相当)。具体的には、本処理では、侵入者が、建物10内に上記(a)及び(b)の方法のうちいずれの方法で侵入したかを判定する。
【0056】
続くステップS36では、建物10内へ何者かが侵入した旨を居住者に報知する侵入報知処理(警戒制御に相当)を行う。この処理では、居住者の携帯端末28に「侵入者あり」「建物に何者かが侵入しました」等のメッセージをメールで送信する。これにより、居住者は外出中であっても建物10内に侵入者があったことを知ることができる。
【0057】
また、侵入報知処理では、上記侵入態様判定処理の判定結果、つまり侵入者が上記(a)及び(b)の侵入方法のうちいずれの方法で建物10内に侵入したかを併せて報知する。この報知は、例えば居住者の携帯端末28に「ドア等を破壊して侵入」、「ドア等を不正解錠して侵入」等のメッセージをメールで送信することで行う。これにより、居住者は侵入者の建物10への侵入態様(侵入方法)についても知ることができる。その後、本処理を終了する。
【0058】
図2の説明に戻って、上述した警戒制御処理(ステップS17)の後のステップS18では、居住者が建物10に帰宅しようとしている(入ろうとしている)か否かを判定する。この判定は、施錠装置14から解錠操作信号が入力されたか否かに基づいて、すなわち居住者により施錠装置14に対する解錠操作が行われたか否かに基づいて行われる。帰宅しようとしている居住者がいない場合には本処理を終了する。一方、居住者が建物10に帰宅しようとしている場合にはステップS19に進み、警戒モードを解除する。その後、本処理を終了する。
【0059】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0060】
玄関口12が玄関ドア13により閉鎖され、かつ各窓部16がガラス戸17により閉鎖された状態(つまり各開口部12,16のいずれもが閉鎖された状態)では、換気装置18により屋内の空気を屋外に排出することで、屋内の気圧を屋外の気圧よりも低い所定の気圧Poに調整することが可能となる。ここで、このように屋内の気圧が所定の気圧Poに調整された状態で、建物10内に人が開口部12,16より侵入する際には、開口部12,16が開放されるため、屋内の気圧が屋外の気圧に近づく側に変化すると考えられる。そこで、上記の実施形態では、この点に鑑み、屋内の気圧を検知する屋内気圧センサ21を設け、同センサ21により検知される屋内の気圧が所定の気圧Poから屋外の気圧と同じ気圧に変化した場合に警戒制御(具体的には、警告処理(ステップS32)や侵入報知処理(ステップS36))を実行することとした。この場合、建物10内への人の侵入を確実に検出することができるため、人の侵入に対し確実に警戒制御を実行させることができる。
【0061】
屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になった場合に警戒制御を実行するようにした。これにより、人の侵入がないにもかかわらず屋内の気圧が屋外の気圧に近づく側に若干変化した場合に、誤って警戒制御が実行されてしまうのを回避することができる。
【0062】
屋外の気圧は季節や天候等により変化すると考えられる。その点、屋内の気圧が屋外気圧センサ22により検知された屋外の気圧と同じ気圧になった場合に警戒制御を実行するようにしたため、精度の高い警戒制御を実現することができる。
【0063】
警戒モードが設定されている場合に限り警戒制御を実行するようにした。これにより、警戒モードが解除されている場合には警戒制御が実行されないようにすることができるため、例えば居住者が建物10に帰宅しようとしている際に(建物10に入ろうとしている際に)警戒モードを解除することで、居住者の建物10への出入りに際し警戒制御が意図せず実行されてしまうのを回避することができる。
【0064】
ところで、いずれかの開口部12,16が開放されたまま警戒モードが設定されると、建物10内に誰も侵入していないにもかかわらず、屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になって警戒制御が実行されてしまう誤警戒が生じるおそれがある。その点、上記の実施形態では、屋内気圧センサ21により検知された屋内の気圧が所定の気圧Poになった場合に、換言すると各開口部12,16がいずれも閉鎖された状態で屋内の気圧が所定の気圧Poに調整された場合に警戒制御を実行するようにしたため、上述のような誤警戒が生じるのを回避することができる。
【0065】
居住者が外出する等して建物10内が不在になった場合に警戒モードを設定するようにしたため、居住者が外出時にいちいち手動で警戒モードを設定する必要がなく、利便性の向上を図ることができる。また、居住者が建物10に在宅している際には警戒モードが設定されないため、居住者がガラス戸17を開け閉めしたりする際等に意図せず警戒制御が実行されてしまうのを回避することができる。
【0066】
居住者が外出して建物10内が不在となった際に、いずれかの窓部16が開放されていると、屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になって屋内の気圧が所定の気圧Poに調整されないことが想定される。そこで、上記の実施形態では、その点に鑑み、居住者が不在であるとの判定から所定時間が経過しても屋内の気圧が所定の気圧Poになっていない場合には、外出中の居住者に窓部16が開放されている旨を報知する開放報知処理を行うこととした。この場合、その報知を受けた居住者は建物10に戻ってガラス戸17を閉める等の対応をとることが可能となるため、防犯性の向上を図ることができる。
【0067】
警戒制御として、建物10内に侵入者が侵入した旨を居住者に報知する侵入報知処理(ステップS36)を行ったため、報知を受けた居住者は侵入者の侵入に対し適切な対応をとることが可能となる。
【0068】
また、建物10内に侵入者が侵入して屋内の気圧が所定の気圧Poから屋外の気圧と同じ気圧になった後、屋内の気圧が所定の気圧Poに戻ったか否かを判定するとともに(ステップS34)、その判定結果に基づいて侵入者の侵入態様を判定するようにした(ステップS35)。具体的には、侵入態様として、侵入者が、(施錠部を不正解錠等した後)開閉体(玄関ドア13やガラス戸17)を開け閉めして侵入したか、又は開閉体13,17を破壊して侵入したか、のいずれであるかを判定するようにした。そして、侵入報知処理(ステップS36)の際、その判定した侵入態様についても併せて居住者に報知することとした。これにより、居住者は侵入者の侵入態様についても知ることができるため、その侵入態様に応じて適切な対応をとることが可能となる。
【0069】
建物の警戒システムとしては、建物10における複数箇所に人の存在を検知する人検知センサ(赤外線センサ等)を設け、それら人検知センサによる人検知に基づき警戒制御を実行するものが一般的である。これに対して、本警戒システムでは、屋内の気圧を検知する一の屋内気圧センサ21を設け、その一の屋内気圧センサ21で検知された屋内の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になった場合に警戒制御を実行するものであるため、センサの個数が少なくて済み、その分コストの低減等を図ることができる。また、リフォーム等で事後的に建物10に警戒システムを導入する際にもその導入が容易となる。
【0070】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0071】
(1)例えば、建物10内における複数の箇所に屋内気圧センサ21を設け、それら各屋内気圧センサ21による検知結果に基づいて、侵入者がいずれの開口部から建物10内に侵入したかを判定するようにしてもよい。以下、その場合の具体例を図4に基づいて説明する。
【0072】
図4に示すように、建物40は、屋内空間として、玄関41、居室42及び寝室43を備える。これらの屋内空間41〜43は間仕切壁45によって区画されている。玄関41には、開口部としての玄関口46が設けられ、玄関口46には開閉体としての玄関ドア47が設けられている。また、寝室43には、開口部としての窓部48が設けられ、窓部48には開閉体としてのガラス戸49が設けられている。
【0073】
玄関41、居室42及び寝室43にはそれぞれ屋内気圧センサ21が設けられている。これら各屋内気圧センサ21は、当該センサ21が設けられている屋内空間41〜43の気圧を検知するものである。以下では、それら各屋内気圧センサ21のうち、玄関41に設けられたセンサ21の符号にaを付し、居室42に設けられたセンサ21の符号にbを付し、寝室43に設けられたセンサ21の符号にcを付す。また、玄関41、居室42及び寝室43にはそれぞれ警告装置23が設けられている。以下では、これら各警告装置23のうち、玄関41に設けられた警告装置23の符号にaを付し、居室42に設けられた警告装置23の符号にbを付し、寝室43に設けられた警告装置23の符号にcを付す。
【0074】
コントローラ20には、各屋内気圧センサ21a〜21cと、各警告装置23a〜23cとがそれぞれ接続されている。コントローラ20には、各屋内気圧センサ21a〜21cから逐次検知結果が入力され、コントローラ20は、それら入力される各屋内気圧センサ21a〜21cからの検知結果に基づいて、玄関41、居室42及び寝室43の気圧がそれぞれ所定の気圧Poから屋外の気圧と同じ気圧になったか否かを判定する。そして、判定の結果、玄関41、居室42及び寝室43の気圧がいずれも屋外の気圧と同じ気圧になった場合に、警告装置23a〜23cに警告処理を実行させる。これにより、何者かが建物40内に侵入した場合には、その侵入者を威嚇することができるため、侵入者の退出を促すことができる。
【0075】
また、コントローラ20は、各屋内気圧センサ21a〜21cにより検知される屋内空間41〜43の気圧について、屋外の気圧と同じ気圧になる際の順序を判定し、そして、その判定の結果(判定された順序)に基づいて、侵入者が玄関口46及び窓部48のうちいずれから建物10内に侵入したかを判定する(侵入位置判定手段に相当)。この判定に関して具体的には、例えば侵入者が玄関口46より建物10内つまり玄関41に侵入する場合には、まず玄関41の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になって、その後、居室42の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になり、最後に寝室43の気圧が屋外の気圧と同じ気圧になると考えられる。したがって、コントローラ20が、屋外の気圧と同じ気圧になる際の順序を、玄関41の気圧→居室42の気圧→寝室43の気圧の順序と判定した場合には、侵入者が玄関口46より建物10内に侵入したと判定する。一方、コントローラ20が、屋外の気圧と同じ気圧になる際の順序を、寝室43の気圧→居室42の気圧→玄関41の気圧の順序と判定した場合には、侵入者が窓部48より建物10内(つまり寝室43)に侵入したと判定する。
【0076】
また、コントローラ20は、上記侵入位置の判定結果に基づいて、各警告装置23a〜23cによる警告処理を実行する。具体的には、コントローラ20は、侵入者が侵入した開口部46,48(換言すると侵入口)に最も近い位置に配置された警告装置23に警告処理を実行させる。詳しくは、侵入者が玄関口46から侵入した場合には玄関41の警告装置23aに警告処理を実行させ、侵入者が窓部48から侵入した場合には寝室43の警告装置23cに警告処理を実行させる。これにより、侵入者の侵入位置に応じて、その侵入位置近くで警告処理を実施することができるため、侵入者を効果的に威嚇することができる。
【0077】
さらに、コントローラ20は、上記の警告処理を実行してから所定時間が経過した後、それ以外の警告装置23にも警告処理を実行させる。例えば、侵入者が玄関口46から侵入した場合には、上述したようにまず玄関41の警告装置23aに警告処理を実行させるが、その警告処理から所定時間が経過したら、居室42及び寝室43の警告装置23b,23cにも警告処理を実行させる。この場合、警告装置23a〜23cによる警告範囲を侵入者の侵入位置から徐々に広げることができるため、侵入者に対する威嚇効果を高めることができる。また、この際、各警告装置23b,23cによる警告処理を同時に実行させてもよいし、警告装置23b→警告装置23cの順で実行させてもよい。例えば、後者の場合、侵入位置から近い警告装置23から順に警告処理を行わせることになるため、侵入者に何者かに追跡されている間隔を抱かせることができ、侵入者に対する威嚇効果をより一層高めることができる。
【0078】
(2)上記実施形態では、建物10内が不在となった場合に警戒モードを自動で設定するようにしたが、警戒モードを設定及び解除可能な操作部を設け、その操作部の操作に基づいて警戒モードを手動で設定できるようにしてもよい。そうすれば、居住者の不在時(外出時)だけでなく、居住者が在宅している際にも警戒モードを設定することができる。そのため、例えば、居住者の就寝時に警戒モードを設定することで、就寝時において建物10を警戒状態とすることができる。また、この場合、建物10内(例えば寝室)にスピーカ等からなる報知部を設け、その報知部に侵入報知処理を行わせるようにしてもよい。なお、建物10にHEMSが導入されている場合には、操作部としてHEMSのモニタを利用するようにしてもよい。
【0079】
ちなみに、警戒モードは必ずしも設ける必要はない。その場合、建物10内を常時警戒状態にすることが考えられる。
【0080】
(3)上記実施形態では、建物10に設けた屋外気圧センサ22により屋外の気圧を検知し取得するようにしたが、これを変更して、屋外の気圧を気象センタ(気象庁など)からインターネットを介して取得するようにしてもよい。また、屋外の気圧に関する情報(屋外気圧情報)を予めコントローラ20の記憶部に記憶しておき、その記憶部から屋外気圧情報を読み出して取得するようにしてもよい。これらの場合、屋外気圧センサ22を不具備とすることができるため、コストの低減等を図ることができる。
【0081】
(4)上記実施形態では、屋内の気圧が所定の気圧Poから屋外の気圧と同じ気圧になった場合に、警戒制御(警告処理(ステップS32)や侵入報知処理(ステップS36))を実行することとしたが、これを変更して、屋内の気圧が所定の気圧Poと屋外の気圧との中間の気圧に変化した場合に警戒制御を実行するようにしてもよい。その場合、侵入者の建物10への侵入をより迅速に検出することができ、その結果、その侵入に対する警戒制御をより迅速に実行させることができる。
【0082】
(5)上記実施形態では、施錠装置14からの解錠操作信号及び施錠操作信号に基づき、建物10内にて居住者が不在になったか否かを判定したが、かかる居住者不在の判定は必ずしもこのようにして行う必要はない。例えば、居住者の携帯する携帯端末28にGPS機能を設け、そのGPS機能を用いて居住者の現在位置を取得するようにする。そして、取得した居住者の現在位置に基づき、建物10内にて居住者が不在となったか否かを判定するようにしてもよい。
【0083】
(6)上記実施形態では、排気ファンを備える換気装置18(気圧調整手段に相当)により屋内の空気を屋外に排出することで、屋内の気圧を屋外の気圧よりも低い所定の気圧Po(負圧)に調整するようにしたが、これを変更してもよい。例えば、給気ファンを備える換気装置を設け、その換気装置により屋外の空気を屋内に取り込むことで、屋内の気圧を屋外の気圧よりも高い所定の気圧(正圧)に調整するようにしてもよい。つまり、屋内の換気方式として第二種換気方式を採用することで、屋内の気圧を上記所定の気圧(正圧)に調整するようにしてもよい。その場合にも、屋内の気圧が所定の気圧(正圧)に調整された状態で、侵入者が玄関口12や窓部16から建物10に侵入する際には、玄関口12等が開放されるため、屋内の気圧が所定の気圧(正圧)から屋外の気圧と同じ気圧になると考えられる。したがって、かかる場合にも、屋内の気圧が所定の気圧(正圧)から屋外の気圧と同じ気圧になったことをもって、侵入者の建物10への侵入を検出することが可能となる。
【0084】
(7)上記実施形態では、侵入報知処理(ステップS36)の際、建物10内に何者かが侵入した旨を居住者に報知するようにしたが、この場合の報知対象者は必ずしも居住者に限定する必要はなく、例えば警備会社等の外部機関に報知するようにしてもよい。そうすれば、外部機関の者に建物10にかけつけてもらい侵入者を追い出す等の対応をとってもらうことが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
10…建物、12…開口部としての玄関口、13…開閉体としての玄関ドア、16…開口部としての窓部、17…開閉体としてのガラス戸、18…気圧調整手段としての換気装置、20…制御手段としてのコントローラ、21…屋内気圧検知手段としての屋内気圧センサ、22…屋外気圧検知手段としての屋外気圧センサ。
図1
図2
図3
図4