特許第6751383号(P6751383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751383
(24)【登録日】2020年8月18日
(45)【発行日】2020年9月2日
(54)【発明の名称】無人航空機
(51)【国際特許分類】
   B64D 47/08 20060101AFI20200824BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20200824BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20200824BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20200824BHJP
   G06T 5/50 20060101ALI20200824BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20200824BHJP
【FI】
   B64D47/08
   B64C39/02
   B64C13/18 Z
   G08G5/00 A
   G06T5/50
   G01C15/00 101
   B64C13/18 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-237902(P2017-237902)
(22)【出願日】2017年12月12日
(65)【公開番号】特開2019-104372(P2019-104372A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2019年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 耕二
(72)【発明者】
【氏名】今岡 静男
(72)【発明者】
【氏名】江原 基
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−189036(JP,A)
【文献】 特開2005−315770(JP,A)
【文献】 特開2012−098084(JP,A)
【文献】 特開2017−143339(JP,A)
【文献】 中国実用新案第206528620(CN,U)
【文献】 特開2010−010957(JP,A)
【文献】 特開2007−104637(JP,A)
【文献】 特開2017−090145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 47/08
B64C 13/18
B64C 39/02
G01C 15/00
G06T 5/50
G08G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作又は自律飛行によって移動する無人航空機において、
フレームと、
フライトコントローラと、
ロータと、
を備え、
前記フレームは、中心に水平方向に二分する凹部を設け、
前記凹部は、
CCDカメラと、
前記CCDカメラの撮影範囲の放射線量を測定する放射線計測部と、
前記CCDカメラの撮影画像に前記放射線計測部の測定値を合成するOSDと、
前記OSDの合成画像を外部端末に転送する映像転送部と、
を収容し、
前記放射線計測部にセンサ部分の外周に沿って囲むように突出して放射線量の測定範囲を前記CCDカメラの撮影範囲と同範囲にする放射線の遮蔽材を設け、
又は前記放射線計測部の方向特性に合う広角レンズを備えた前記CCDカメラにより前記CCDカメラの撮影範囲と前記放射線計測部の測定範囲を同範囲としたことを特徴とする無人航空機。
【請求項2】
前記放射線計測部の測定値を前記OSDに入力可能な信号に変換する信号変換部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
自律移動する請求項1又は2に記載の無人航空機において、
移動量を計測するジャイロセンサと、
障害物の距離を計測する測域センサを備え、
前記ジャイロセンサの測定値に基づいて自己位置を推測し、前記測域センサの測定値と比較して自己位置の同定を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする無人航空機。
【請求項4】
前記OSDは、前記測域センサの測定値又は/及び前記制御部による自己位置の情報を前記撮影画像に付加することを特徴とする請求項3に記載の無人航空機。
【請求項5】
前記フライトコントローラと前記画像転送部の間に電磁遮蔽材を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1に記載の無人航空機。
【請求項6】
前記映像転送部は、少なくとも表示部を備えた映像受信機に転送することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1に記載の無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作又は自律飛行によって遠隔地の画像及び各種測定値を取得可能な無人航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔操作又は自律飛行による無人航空機があり、CCD(Charge−Coupled Deviceの略、以下同じ)カメラ、各種センサ、通信機器などを搭載して、所望の位置における画像、各種センサによる測定値などを取得することができる。
一例として、特許文献1に開示の無人航空機は、測距計、CCDカメラを搭載して風車ブレードの変形情報、風速情報を取得してブレードの剛性評価に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−90145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなCCDカメラや各種センサを備えた無人航空機は産業上多く利用されているが、撮影画像の転送時や、自律飛行時において以下のような課題があった。
<撮影画像の転送時>
従来の撮影画像の転送は、CCDカメラの撮影画像を映像転送装置で、各種センサの計測値をWiFi送信機で別々に受信機側に送信する構成がある。この場合、受信側で受信データを自由に加工することができるが、無人航空機の本体に2種類の送信機を搭載しなければならずその分、重量が増加してしまい、かつ、受信側には受信データを加工するために、アプリケーションプログラムを実行するCPU、アプリケーションプログラムを格納しているROM、アプリケーションプログラム実行中の処理内容を一時的に格納するRAMを備えたパーソナルコンピュータ(以下、単にPCということあり)あるいは処理ボードが必要となる。
【0005】
また、無人航空機の本体にCCDカメラの撮影映像及び各種センサの測定値を取り込むPCあるいは処理ボードと、WiFi送信機を搭載した構成の場合は、受信側で受信データを容易に加工することができるが、無人航空機に搭載するPCあるいは処理ボードに映像を処理するための処理仕様(スペック)が必要となり大型化かつ高価となる。また受信側には前述同様にPCあるいは処理ボードが必要となる。
【0006】
<自律飛行>
従来の自律飛行は、無人航空機に搭載する測域センサの測定値を時系列毎に蓄積してマッピングを行い、同じく搭載するPCあるいは処理ボードで自己位置の同定を行う構成である。この場合、マッピングデータを記録することができ、かつ無人航空機に搭載するシステム構成が容易になる。しかし自己位置を同定する演算処理が複雑であるため演算処理仕様の大きなPCあるいは処理ボードが必要となり、無人航空機が大型化してしまう。この他、無線通信でデータを受信側に送り演算させる方法もあるが、受信側に同様のPCあるいは処理ボードが必要となる。
【0007】
<その他>
放射線量の高い原子力発電所に無人航空機を適用した場合、画像データ及び放射線量の測定値が必要となるが、前述の撮像画像の転送の課題に加えて、狭隘な箇所のために無人航空機本体の簡易構成かつ小型化の要請が高い。
【0008】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、遠隔地の画像を自己位置、障害物との距離などの現場情報、特に放射線量と共にユーザへ転送でき、かつ、簡易な構成で小型化を図れる無人航空機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の手段として、本発明は、遠隔操作又は自律飛行によって移動する無人航空機において、
CCDカメラの撮影画像に現場情報取得部の測定値を合成するOSD(On Screen Displayの略、以下同じ)と、
前記OSDの合成画像を外部端末に転送する映像転送部と、
を備えたことを特徴とする無人航空機を提供することにある。
上記第1の手段によれば、簡易な構成で撮影画像に現場情報、例えば放射線量を付加した合成画像を生成することができ無人航空機の小型化が図れる。また合成画像を複数の外部端末に転送することができる。従って現場情報付き画像をリアルタイムで多数のユーザが共有することができる。
【0010】
上記課題を解決するための第2の手段として、本発明は、遠隔操作又は自律飛行によって移動する無人航空機において、
フレームと、
フライトコントローラと、
ロータと、
を備え、
前記フレームは、中心に水平方向に二分する凹部を設け、
前記凹部は、
CCDカメラと、
前記CCDカメラの撮影範囲の放射線量を測定する放射線計測部と、
前記CCDカメラの撮影画像に前記放射線計測部の測定値を合成するOSDと、
前記OSDの合成画像を外部端末に転送する映像転送部と、
を収容し、
前記放射線計測部にセンサ部分の外周に沿って囲むように突出して放射線量の測定範囲を前記CCDカメラの撮影範囲と同範囲にする放射線の遮蔽材を設け、
又は前記放射線計測部の方向特性に合う広角レンズを備えた前記CCDカメラにより前記CCDカメラの撮影範囲と前記放射線計測部の測定範囲を同範囲としたことを特徴とする無人航空機を提供することにある。
【0011】
上記第2の手段によれば、衝突または落下による搭載機器の破損を防止すると共に、設計の際、フレームの重量バランス調整が容易となる。また簡易な構成で撮影画像に放射線量を付加した合成画像を生成することができ無人航空機の小型化が図れる。さらに合成画像を複数の外部端末に転送することができる。従って現場の放射線量付き画像をリアルタイムで多数のユーザが現場情報を共有することができる。
【0012】
上記課題を解決するための第3の手段として、本発明は、第2の手段において、前記放射線計測部の測定値を前記OSDに入力可能な信号に変換する信号変換部を備えたことを特徴とする無人航空機を提供することにある。
上記第3の手段によれば、処理ボードの処理仕様(スペック)を小さくでき、無人航空機全体の小型化が図れる。
【0013】
上記課題を解決するための第4の手段として、本発明は、自律飛行する第2又は第3に記載の無人航空機において、
前記移動本体の移動量を計測するジャイロセンサと、
前記移動本体と障害物との距離を計測する測域センサを備え、
前記制御部は、前記ジャイロセンサの測定値に基づいて自己位置を推測し、前記測域センサの測定値と比較して自己位置の同定を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする無人航空機を提供することにある。
上記第4の手段によれば、処理ボードの演算処理の処理仕様を小さくして、無人航空機全体の小型化を図ることができる。また障害物を回避しながら目標位置まで自律飛行することができる。
【0014】
上記課題を解決するための第5の手段として、本発明は、第4の手段において、前記OSDは、前記測域センサの測定値又は/及び前記制御部による自己位置の情報を前記撮影画像に付加することを特徴とする無人航空機を提供することにある。
上記第5の手段によれば、合成画像に障害物との距離又は/及び移動本体の自己位置を付加して現場の位置関係を把握することができる。また放射線量と映像を関連付けすることにより現場の放射線量を視覚的に把握することができる。
【0015】
上記課題を解決するための第6の手段として、本発明は、第2ないし第5のいずれか1の手段において、前記CCDカメラの撮影範囲と前記放射線計測部の測定範囲を同範囲にすることを特徴とする無人航空機を提供することにある。
上記第6の手段によれば、放射線計測部の方向特性(放射線を検知可能な角度)に合う広角レンズを備えたCCDカメラを用いて、CCDカメラの撮影範囲と放射線計測領域をほぼ一致させることができる。これにより観察者又は作業者による現場状況の把握が容易となる。
【0016】
上記課題を解決するための第7の手段として、本発明は、第6の手段において、前記放射線計測部は、放射線量の測定範囲を前記CCDカメラの撮影範囲と同範囲にする放射線の遮蔽材を設けたことを特徴とする無人航空機を提供することにある。
上記第7の手段によれば、放射線計測部の方向特性がCCDカメラより広いときに、放射線の遮蔽材で検知する角度を遮って方向特性をCCDカメラに合わせてCCDカメラの撮影範囲と放射線計測領域をほぼ一致させることができる。これにより観察者又は作業者による現場状況の把握が容易となる。
【0017】
上記課題を解決するための第8の手段として、本発明は、第2ないし第7のいずれか1の手段において、前記フライトコントローラと前記画像転送部の間に電磁遮蔽材を設けたことを特徴とする無人航空機を提供することにある。
上記第8の手段によれば、映像転送部から放出される電波(電磁ノイズ)が及ぼすフライトコントローラへの悪影響を除去して、制御信号に従って移動本体を飛行させることができる。
【0018】
上記課題を解決するための第9の手段として、本発明は、第1ないし第8のいずれか1の手段において、前記映像転送部は、少なくとも表示部を備えた映像受信機に転送することを特徴とする無人航空機を提供することにある。
上記第9の手段によれば、合成画像の受信側は少なくとも受信機及び表示部を備えていればよく、画像を加工するためのPCあるいは処理ボードなどを用意する必要がない。また複数の受信機に転送することにより多数のユーザがリアルタイムで現場情報を共有することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、現場の様子、画像及び放射線量を即座に知ることができる。また複数の箇所でデータを同時に受信することができる。従って、多くのユーザが情報を共有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の無人航空機の概略説明図である。
図2】本発明の無人航空機のブロック図である。
図3】放射線計測部の計測範囲の説明図である。
図4】本発明の無人航空機の画像転送の動作フロー図である。
図5】本発明の無人航空機の自律飛行のイメージ図である。
図6】本発明の無人航空機の自律飛行の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の無人航空機の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
[無人航空機10]
図1は本発明の無人航空機の概略説明図である。図2は本発明の無人航空機のブロック図である。図2中の実線は映像信号、小鎖線はセンサ信号、大鎖線は制御信号を示している。
本発明の無人航空機10は、CCDカメラの撮影画像に現場情報取得部の測定値を合成するOSD12と、OSD12の合成画像を外部端末18に転送する映像転送部14と、を備えている。
本実施形態の現場情報取得部とは、無人航空機10に取り付けて現場の各種情報を取得可能な放射線計測部20、測域センサ24であり、測定値とは、現場の各種情報となる放射線量、無人航空機の移動量、無人航空機と障害物の間の距離などである。
【0022】
より具体的な本発明の無人航空機10は、フレーム301と、フライトコントローラ34と、ロータ32と、を備え、前記フレーム301は、中心に水平方向に二分する凹部302を設け、前記凹部302は、CCDカメラ40と、前記CCDカメラ40の撮影範囲の放射線量を測定する放射線計測部20と、前記CCDカメラ40の撮影画像に前記放射線計測部20の測定値を合成するOSD12と、前記OSD12の合成画像を外部端末に転送する映像転送部14と、を収容することを特徴としている。
移動本体30は、フレーム301に一般的な無人航空機に適用される複数のロータ32(本実施形態では4個のロータ)、駆動モータ、フライトコントローラ34、バッテリー38を備えている。各ロータ32は独立した回転制御が可能であり、遠隔操作用端末36を用いた遠隔操作又は処理ボード16の制御部164による自律飛行により任意の方向へ移動できる。
【0023】
フレーム301は、軽量かつ所定の剛性を備えており、材質に一例としてカーボン樹脂を適用している。このフレーム301は、側面外周を囲ってあり衝突又は落下による破損を防止し、中心に水平方向に二分する凹部302を設けている。本実施形態の凹部302は4つのロータ32を左右2個ずつ水平方向に貫通するように2分割している、また凹部302は上面開口の一部(中央付近)を覆う蓋303を設けている。本実施形態の具体的な凹部302の搭載機器の配置は、水平方向のいずれか一方の開口側に放射線計測部20と(遮蔽材201を含むことあり)、CCDカメラ40を取り付けている。また水平方向の他方の開口側にバッテリー38を取り付けている。バッテリー38は、充電式であり、コネクタ、又は面ファスナーを用いて容易に着脱し易い箇所に配置している。凹部302の中心側には蓋303に映像転送部14と、測域センサ24と、OSD12を配置している。また蓋303で覆われた凹部302の中心側内部のフレーム301上には、処理ボード16と、フライトコントローラ34を配置している。
【0024】
なお、電磁ノイズに弱いフライトコントローラ34は、電波を放出する映像転送部14と電磁遮蔽性を有する板材(例えばアルミ板、銅板など)で分離されている。より具体的には、映像転送部14は蓋303の外側(表面)に、フライトコントローラ34は蓋303の内側に配置されている。電磁遮蔽材は、カーボン樹脂に金属の薄板を張っても良いし、金属板のみで製作(換言すれば蓋303は電磁遮蔽性を有する板材で製作)しても良い。
このような凹部302の構成及び搭載機器の配置により、重量バランスの調整を容易とし、飛行時の風による抵抗も低減できる。
【0025】
[画像転送機能]
CCDカメラ40は移動本体30から現場を撮影し撮影画像(映像、動画を含む)を取得できる。なおCCDカメラ40の画角は任意に設計変更可能としている。
放射線計測部20は、移動本体30に取り付けて現場の放射線量を測定可能なセンサである。放射線計測部20は、任意の検出範囲(一例として計測範囲±90°)を選択・変更可能とし、移動本体30の周辺、好ましくはCCDカメラ40の撮影範囲の放射線量を計測可能に構成している。図3は、放射線計測部の計測範囲の説明図である。本実施形態の放射線計測部20は、CCDカメラ40と同様に凹部302の一方の側面開口に設けている。そして放射線量の計測範囲を制限する遮蔽材201を設けている。遮蔽材201は、放射線の遮蔽効果の高い鉛、鉄などの材質を用いており、図1又は3に示すように放射線計測部20のセンサ部分の外周に沿って突出するように形成して前述の計測範囲を任意範囲に制限している。このような遮蔽材201によりCCDカメラ40の撮影範囲Aと放射線量の計測範囲Bをほぼ一致させることができ、作業者等による現場状況の把握が容易となる。なおこの他、放射線計測部20の方向特性(放射線を検知可能な角度)に合う広角レンズを備えたCCDカメラ40を用いて、CCDカメラ40の撮影範囲と放射線計測領域をほぼ一致させる構成を採用することもできる。
【0026】
また放射線計測部20は、センサ部分の遮蔽材201で覆われた部分以外を緩衝材202で覆うように構成している。緩衝材202は、所定の弾性力を有する発泡樹脂(発砲プラスチックなど)、ゴム等を用いることができる。このような緩衝材202により、無人航空機10が落下、衝突したときの衝撃を吸収して、放射線計測部20を衝撃から保護することができる。
処理ボード16は、CCDカメラ40、放射線計測部20、測域センサ24、OSD12と電気的に接続して各種信号が入出力される信号入出力部161と、信号入出力部161の各種信号を変換する信号変換部162と、アプリケーションを用いて演算処理を行う演算部163と、演算部163を制御すると共に、フライトコントローラ34と接続して自律飛行の制御を行う制御部164と、アプリケーションプログラム等を格納及びアプリケーションプログラム実行中の処理内容を一時的に格納するメモリ165を備えている。また制御部164は信号変換部162を用いて放射線計測部20からの放射線量の測定値となる数値データをOSD12に入力可能な信号(例えば電圧)に変換させている。電圧は後述するOSD12へ入力している。これにより処理ボードの処理仕様(スペック)を小さくでき、無人航空機全体の小型化が図れる。
【0027】
OSD12は、CCDカメラ40の撮影画像に放射線計測部20の放射線量を付加した合成画像を生成できる。OSD12は、この他、後述するジャイロセンサ22及び測域センサ24の測定値に基づいて、障害物との距離、処理ボード16で同定した移動本体30の自己位置を撮影画像に付加した合成画像を生成できる。
映像転送部14は、OSD12で生成した合成画像をユーザの外部端末18へ転送している。本実施形態のユーザの外部端末18(受信機)は、少なくとも合成画像の受信部、合成画像の表示部を備えていればよく、必ずしもPC又は処理ボードを用意する必要がない。
【0028】
図4は本発明の無人航空機の画像転送の動作フロー図である。遠隔操作又は自律飛行により無人航空機10を現場に移動させて、放射線計測部20で現場の放射線量の測定値を取得する(S10)。またCCDカメラ40で現場の撮影画像(以下、映像ともいう)を取得する(S20)。
処理ボード16による放射線計測部20の測定値の受信を開始する(S30)。そして、数値データをOSD12に入力可能な信号(例えば電圧)に変換する処理が行われる(S40)。
処理ボード16からOSD12に電圧が入力される。またCCDカメラ40から撮影画像のRGB信号がOSD12に入力される。OSD12では電圧を放射線量の測定値に変換し(S50)、撮影画像に付加した合成画像を生成する(S60)。なおOSDによる撮影画像への付加は、放射線量に限らず、障害物との距離又は/及び移動本体の自己位置とすることもできる。
【0029】
OSD12から映像転送部14へ合成画像のRGB信号が入力される。映像転送部14からユーザの外部端末18へ映像が送信される(S70)。ユーザの映像受信機に合成画像が受信され(S80)、ディスプレイに合成画像が表示される(S90)。
なお映像転送部14は、複数の外部端末18へ合成画像を送信できる。これにより、複数のユーザが現場の放射線量付き撮影画像を共有して即座に確認することができる。また外部端末18は少なくとも映像受信機181と表示部182(ディスプレイ)を備えていればよく、従来のような合成画像を加工するためのPCあるいは処理ボードを用意する必要がない。
【0030】
また、前述の画像転送機能は遠隔操作又は自律飛行の無人航空機のうち、どちらの形態にも適用できる。
このような本発明の無人航空機によれば、簡易な構成で撮影画像に放射線量を付加した合成画像を生成することができ無人航空機の小型化が図れる。また合成画像を複数の外部端末に転送することができる。従って現場の情報、一例として放射線量付き画像をリアルタイムで多数のユーザが現場情報を共有することができる。
【0031】
[自律飛行機能]
次に無人航空機の自律飛行について説明する。
移動本体30はフライトコントローラ34と、測域センサ24を備え、フライトコントローラ34にはジャイロセンサ22と高度センサ23が取り付けられている。フライトコントローラ34は、凹部302の中心側内部のフレーム301上に開口を介して配置している。この開口はフライトコントローラ34が備える各種センサのセンサ素子を下面に露出させるためのものである。
【0032】
ジャイロセンサ22は、あらかじめ定めた移動本体30の自己位置から図5に示すX軸及びY軸の2軸方向の移動量(距離)を測定可能なセンサである。なおジャイロセンサ22は加速度センサを適用することもできる。
測域センサ24は、移動本体30周囲の障害物との間の距離(移動本体30を中心としてX軸及びY軸の2軸方向)を測定可能なセンサである。
高度センサ23は、移動本体30の高度(地面や床面と移動本体30との距離)を測定可能なセンサである。その他、高度を測定可能なセンサであれば、高度センサ23に換えて気圧センサ、超音波センサなどを適用する構成としても良い。このような高度センサ23の測定値は、自律飛行の際、移動本体のZ方向(高さ)を所定位置に維持する制御に用いている。
【0033】
なお自律飛行時の移動本体30のZ方向(高さ)は、地面効果を発現できる高さ(約数十cm)となるように設定している。これにより、墜落時の機材破損の可能性を低減できる。また飛行時の揚力を増加させることもできる。さらに、地面や床面上の障害物等により直進できない場合には、高度を上昇させることにより障害物を回避できる。
制御部164は、フライトコントローラ34と電気的に接続して、フライトコントローラ34が備えるジャイロセンサ22及び高度センサ23からの信号と測域センサ24の測定値が入力され、移動本体30の位置座標の演算を行うと共に、自律飛行の制御信号をフライトコントローラ34に送信可能に構成している。
【0034】
図5は本発明の無人航空機の自律飛行のイメージ図である。同図は建屋のフロア平面図であり、太線は壁を示している。三角印は無人航空機10の自己位置(Xn、Yn、Zn)を示し、丸印は目標位置(X0、Y0、Z0)を示し、四角印は通過位置(Xn+Xi、Yn+Yi、Zn+Zi)、矢印は経路を示している。処理ボード16は、あらかじめ現場の地図情報(建屋の場合、壁と空間の情報をピクセル化した地図)、移動本体30の自己位置(最初はスタート点)・目標位置(ゴール)・通過位置(あらかじめ通過すべき位置を設定した点)を記録している。
【0035】
移動本体30が移動したとき、制御部164はジャイロセンサ22及び高度センサ23の測定値から自己位置を推測できる。すなわち制御部164は、移動前の自己位置(スタート)から、ジャイロセンサ22及び高度センサ23の測定値に基づいて、X方向にXiメートル、Y方向にYiメートル、Z方向にZiメートル移動した現在の位置を自己位置(Xn+Xi、Yn+Yi、Zn+Zi:移動に伴い自己位置は変化する)として推測する。このとき、移動本体30の高度(Z方向位置:Zn+Zi)は数十cmで一定となるように設定してあるが、障害物に応じて回避するようにしている。
また制御部164は、測域センサ24の測定値から周囲の形状(想定外に存在する突起物等の構造物等)などの障害物を検出できる。すなわち制御部164は、地図情報と測域センサ24の測定値から周囲の形状を判断し、一般の回避行動に基づいて障害物を回避して目標位置まで自律飛行する。
【0036】
図6は本発明の無人航空機の自律飛行の動作フロー図である。
まず事前作業としてSTEP1から2の作業を行う。
現場の地図情報を登録する(STEP1)。
次に地図上における現在の移動本体30の向き及び移動本体30の自己位置の座標、目標位置及び通過位置の座標を登録する(STEP2)。
作業者の手元スイッチ等の信号入力により無人航空機10の自律飛行を開始する(STEP3)。
移動本体30の自己位置と、目標位置又は通過位置の座標が同じか否かの判断を行う(STEP4)。
STEP4の判断が異なる場合、目標位置又は通過位置までの経路を検索する(STEP5)。
【0037】
検索した経路から進むべき距離を抽出する(STEP6)。この距離は、直進方向、右折または左折位置までの距離であり、制御部164により自己位置の座標と、目標位置又は通過位置の座標から算出することができる。例えばY座標の+方向にYim直進などとなる。
抽出後、(A)直進方向に向かってCCDカメラが向くように移動本体30を旋回し、その後、抽出した距離まで直進する。その間、(B)移動距離をフライトコントローラ34内のジャイロセンサ22及び高度センサ23の計測値から演算する。(C)測域センサ24で周囲の形状を監視する。例えば、Y座標の+方向、数メートル先に障害物有りなど(STEP7)である。
右折または左折位置までに直進不可能な障害物があるか否かの判断を行う(STEP8)。
【0038】
障害物がない場合、STEP4に戻る。
障害物がある場合、移動本体30の高度を上昇して障害物を回避できるか否かの判断を行う(STEP9)。
回避可能であれば障害物を回避した後、STEP4に戻る。
回避不可能な場合、目標位置または通過位置へ移動できないため、STEP2で登録したスタート点に帰還する(STEP10)。
STEP4の判断が同じ場合、通過位置または目標位置に到達したとし、移動本体をその場で一周旋回させて、放射線計測部20により移動本体30の全周囲(360°)に渡って放射線量を測定する(STEP11)。
【0039】
次に移動本体30が通過していない通過位置や到達していない目標位置が残っていないかの判断を行う(STEP12)。
残っていればSTEP4に戻る。
残っていなければ自律飛行の動作が終了する。
このような本発明の無人航空機によれば、移動本体の自己位置を求める演算量が少ないため制御部の演算処理の処理仕様を小さくして、無人航空機全体の小型化を図ることができる。また障害物を回避しながら目標位置まで自律飛行することができる。
なお、放射線量の計測は、スタート地点から目標位置までの経路全てで行っても良いし、あらかじめ設定した通過位置のみで行っても良い
【符号の説明】
【0040】
10………無人航空機、12………OSD、14………映像転送部、16………処理ボード、161………信号入出力部、162………信号変換部、163………演算部、164………制御部、165………メモリ、18………外部端末、181………映像受信機、182………ディスプレイ(表示部)、20………放射線計測部、201………遮蔽材、202………緩衝材、22………ジャイロセンサ、23………高度センサ、24………測域センサ、30………移動本体、301………フレーム、302………凹部、303………蓋、32………ロータ、34………フライトコントローラ、36………遠隔操作用端末、38………バッテリー、40………CCDカメラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6