特許第6751512号(P6751512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751512
(24)【登録日】2020年8月19日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】車載用電源装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/03 20060101AFI20200831BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200831BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20200831BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20200831BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B60R16/03 S
   H02J7/00 P
   H02J1/00 308C
   B60L9/18 J
   H02M3/155 K
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-238537(P2016-238537)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-94954(P2018-94954A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 成治
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−071898(JP,A)
【文献】 特開2010−098779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
H02J 1/00 − 1/16
H02M 3/00 − 3/44
B60R 16/00 − 17/02
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用の蓄電部に電気的に接続される第1導電路及び第2導電路に接続され、前記第1導電路に印加された電圧を降圧して第2導電路に印加する降圧動作と、前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記第1導電路に印加する昇圧動作とを行う電圧変換部と、
外部電源からの電力供給路を接続するときの接続対象部位となる外部端子と、
前記外部端子に前記電力供給路が接続されたことを検知する検知部と、
少なくとも前記外部端子に前記電力供給路が接続されている場合に、前記外部端子側から前記第2導電路側に電流が流れることが許容される給電回路部と、
前記電圧変換部の前記降圧動作及び前記昇圧動作を制御し、前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知した場合に前記昇圧動作を行わせる制御部と、
を有し、
前記給電回路部は、
少なくとも前記第2導電路が所定の正常出力状態である場合に前記第2導電路から前記外部端子側に電流が流れることを遮断し、前記外部端子に前記電力供給路が接続された場合に前記外部端子側から前記第2導電路側に電流が流れ、
前記外部端子にアノードが電気的に接続され前記第2導電路にカソードが電気的に接続されたダイオード部と、前記第2導電路と前記外部端子との間で導通状態と非導通状態とに切り替わるスイッチ部とを備えた半導体スイッチと、
前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知していない場合に前記スイッチ部を非導通状態とし、前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知した場合に前記スイッチ部を導通状態とする切替部と、
を有する車載用電源装置。
【請求項2】
前記電圧変換部は、前記降圧動作又は前記昇圧動作を選択的に行う昇降圧回路部を備える請求項1に記載の車載用電源装置。
【請求項3】
前記電圧変換部は、
前記第1導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に印加する前記降圧動作を行う降圧回路部と、
前記降圧回路部とは別の経路として構成され、前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記第1導電路に印加する昇圧回路部と、
を備える請求項1に記載の車載用電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知した場合に、前記昇圧回路部に前記昇圧動作を行わせつつ前記降圧回路部に前記降圧動作を行わせ、前記昇圧回路部及び前記降圧回路部がいずれも動作する期間を生じさせる請求項3に記載の車載用電源装置。
【請求項5】
車載用の蓄電部に電気的に接続される第1導電路及び第2導電路に接続され、前記第1導電路に印加された電圧を降圧して第2導電路に印加する降圧動作と、前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記第1導電路に印加する昇圧動作とを行う電圧変換部と、
外部電源からの電力供給路を接続するときの接続対象部位となる外部端子と、
前記外部端子に前記電力供給路が接続されたことを検知する検知部と、
少なくとも前記外部端子に前記電力供給路が接続されている場合に、前記外部端子側から前記第2導電路側に電流が流れることが許容される給電回路部と、
前記電圧変換部の前記降圧動作及び前記昇圧動作を制御し、前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知した場合に前記昇圧動作を行わせる制御部と、
を有し、
前記電圧変換部は、
前記第1導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に印加する前記降圧動作を行う降圧回路部と、
前記降圧回路部とは別の経路として構成され、前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記第1導電路に印加する昇圧回路部と、
を備え、
前記制御部は、前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知した場合に、前記昇圧回路部に前記昇圧動作を行わせつつ前記降圧回路部に前記降圧動作を行わせ、前記昇圧回路部及び前記降圧回路部がいずれも動作する期間を生じさせる車載用電源装置。
【請求項6】
前記給電回路部は、少なくとも前記第2導電路が所定の正常出力状態である場合に前記第2導電路から前記外部端子側に電流が流れることを遮断し、前記外部端子に前記電力供給路が接続された場合に前記外部端子側から前記第2導電路側に電流が流れる請求項5に記載の車載用電源装置。
【請求項7】
前記給電回路部は、
前記外部端子にアノードが電気的に接続され前記第2導電路にカソードが電気的に接続されたダイオード部と、前記第2導電路と前記外部端子との間で導通状態と非導通状態とに切り替わるスイッチ部とを備えた半導体スイッチと、
前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知していない場合に前記スイッチ部を非導通状態とし、前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知した場合に前記スイッチ部を導通状態とする切替部と、
を有する請求項6に記載の車載用電源装置。
【請求項8】
前記給電回路部は、前記外部端子にアノードが電気的に接続され前記第2導電路にカソードが電気的に接続されたダイオードによって構成されている請求項6に記載の車載用電源装置。
【請求項9】
前記第1導電路には発電機が接続され、
前記制御部は、前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知した場合に、前記発電機の出力電圧よりも低い電圧を前記第1導電路に出力するように前記電圧変換部に前記昇圧動作を行わせる請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の車載用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用のシステムとして、低圧系と高圧系の二系統に電力を供給するシステムが知られており、このシステムに関連する技術として、特許文献1のような技術が提案されている。特許文献1で開示される給電回路は、高電圧直流電源と低電圧用負荷との間に電圧降下用のDC−DCコンバータとして小容量DC−DCコンバータ及び大容量DC−DCコンバータを設けており、必要供給電力に応じてコンバータを切り替えて用いる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−204137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、低圧系と高圧系の二系統に電力を供給するシステムでは、高圧系に蓄電部を設け、この高圧系の蓄電部の出力を降圧して低圧系の負荷に対しても利用できるようにすれば、低圧系の蓄電部の必要性を低減又は無くすことができ、低圧系の蓄電部の削減又は小型化が可能となる。例えば、高圧系の蓄電部の電力によってスタータを動作させることができれば、エンジン始動時に低圧系の蓄電部が不要となるため、低圧系の蓄電部を省略又は小型化しやすくなる。
【0005】
しかし、このように高圧系の蓄電部に依存する構成では、高圧系の蓄電部の容量が著しく低下した場合に対応しにくいという問題がある。
【0006】
高圧系の蓄電部の容量が著しく低下した場合、このままではスタータを動作させることができず、エンジンを始動させることができないため、例えば、他の車両に搭載されたバッテリ(例えば、12Vバッテリ)などの外部電源を用いて高圧系の蓄電部を充電しなければならない。しかし、出力電圧が低いバッテリを外部電源として用いる場合、そのまま接続しても充電動作を行うことができないため、外部電源が接続されたことを確実に検知した上で、外部電源の出力を昇圧し、高圧系の蓄電部に供給するような構成が必要となる。
【0007】
本発明は、本発明は上述した事情に基づいてなされたものであり、外部電源の接続を確実に検知し、外部電源に基づく供給電圧を昇圧して蓄電部の充電を行い得る車載用電源装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一例である車載用電源装置は、
車載用の蓄電部に電気的に接続される第1導電路及び第2導電路に接続され、前記第1導電路に印加された電圧を降圧して第2導電路に印加する降圧動作と、前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記第1導電路に印加する昇圧動作とを行う電圧変換部と、
外部電源からの電力供給路を接続するときの接続対象部位となる外部端子と、
前記外部端子に前記電力供給路が接続されたことを検知する検知部と、
少なくとも前記外部端子に前記電力供給路が接続されている場合に、前記外部端子側から前記第2導電路側に電流が流れることが許容される給電回路部と、
前記電圧変換部の前記降圧動作及び前記昇圧動作を制御し、前記外部端子と前記電力供給路との接続を前記検知部が検知した場合に前記昇圧動作を行わせる制御部と、
を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記車載用電源装置では、外部端子に電力供給路が接続されたことを検知部が検知し、給電回路部では、少なくとも外部端子に外部の電力供給路が接続されている場合に、外部端子側から第2導電路側に電流が流れることが許容される。そして、制御部は、このように外部端子を介して外部から第2導電路側に電力が供給される状態で電圧変換部に昇圧動作を行わせるため、蓄電部に電気的に接続された第1導電路に対して相対的に高い電圧を印加することができ、蓄電部の充電を良好に行うことができる。特に、蓄電部の充電電圧が低下して車載機器を動作させることに支障が生じるような場面において、外部電源の接続を確実に検知し、外部電源に基づく供給電圧を昇圧した形で蓄電部の充電が可能となるため、このような場面で適正な復帰が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1の車載用電源装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
図2図2は、図1の車載用電源システムにおいて外部端子に外部電源からの電力供給路が接続された状態を示す説明図である。
図3図3は、図1の車載用電源システムにおける制御シーケンスを概念的に示すタイミングチャートである。
図4図4は、実施例2の車載用電源装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
図5図5は、他の実施例の車載用電源装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、発明の望ましい例を示す。
【0012】
給電回路部は、少なくとも第2導電路が所定の正常出力状態である場合に第2導電路から外部端子側に電流が流れることを遮断し、外部端子に電力供給路が接続された場合に外部端子側から第2導電路側に電流が流れる構成であってもよい。
【0013】
このように構成された車載用電源装置は、第2導電路に印加される電圧が正常出力状態であるときには、第2導電路から外部端子側に電流が流れることを防ぎ、第2導電路の影響を受けにくい状態で外部端子を維持することができる。一方で、外部端子に電力供給路が接続された場合(即ち、外部電源から外部端子を介して電力が供給され得る場合)には、外部端子側から第2導電路側に電流が流れる状態となり、外部電源に基づく入力電圧を昇圧して第1導電路に印加する昇圧動作を行うことが可能となる。
【0014】
給電回路部は、外部端子にアノードが電気的に接続され第2導電路にカソードが電気的に接続されたダイオード部と、第2導電路と外部端子との間で導通状態と非導通状態とに切り替わるスイッチ部とを備えた半導体スイッチと、外部端子と電力供給路との接続を検知部が検知していない場合にスイッチ部を非導通状態とし、外部端子と電力供給路との接続を検知部が検知した場合にスイッチ部を導通状態とする切替部と、を有していてもよい。
【0015】
このように構成された車載用電源装置は、外部端子と電力供給路との接続(即ち、外部電源から外部端子を介して電力が供給される状態)を検知部が検知していない場合には第2導電路から外部端子側に電流が流れることを防ぎ、外部端子と電力供給路との接続を検知部が検知した場合には、スイッチ部を導通状態とすることができるため、外部端子側から第2導電路側に電流を流すことができ、且つその際の導通損失を抑えることができる。
【0016】
給電回路部は、外部端子にアノードが電気的に接続され第2導電路にカソードが電気的に接続されたダイオードによって構成されていてもよい。
【0017】
このように構成された車載用電源装置は、第2導電路が所定の正常出力状態である場合に第2導電路から外部端子側に電流が流れることを遮断し、外部端子に電力供給路が接続された場合に外部端子側から第2導電路側に電流を流し得る回路を、より簡易に構成することができる。
【0018】
第1導電路には発電機が接続されていてもよい。制御部は、外部端子と電力供給路との接続を検知部が検知した場合に、発電機の出力電圧よりも低い電圧を第1導電路に出力するように電圧変換部に昇圧動作を行わせてもよい。
【0019】
このように構成された車載用電源装置は、例えば、発電機の発電と電圧変換部による昇圧動作とを同時期に行う場合に、発電機の電力を優先的に利用して蓄電部を充電することができるため、外部電源の電力消費を抑えやすくなる。
【0020】
電圧変換部は、降圧動作又は昇圧動作を選択的に行う昇降圧回路部を備えていてもよい。
【0021】
このように構成された車載用電源装置は、降圧動作を行うべき正常時には第1導電路に印加された電圧を降圧して第2導電路に印加する降圧動作を行うことができ、外部端子に外部電源を電気的に接続させて充電させるべき場合には外部端子に電力供給路が接続されたことを条件として昇圧動作を行うことができる構成を、より簡易に実現することができる。
【0022】
電圧変換部は、第1導電路に印加された電圧を降圧して第2導電路に印加する降圧動作を行う降圧回路部と、降圧回路部とは別の経路として構成され、第2導電路に印加された電圧を昇圧して第1導電路に印加する昇圧回路部と、を備えていてもよい。
【0023】
この車載用電源装置は、正常状態のときに、第1導電路に印加された電圧を降圧して第2導電路に印加するように降圧回路部によって降圧動作を行うことができ、外部端子に電力供給路が接続されたときには、第2導電路に印加された電圧を昇圧して第1導電路に印加するように昇圧回路部によって昇圧動作を行うことができる。降圧動作と昇圧動作とを別々の回路部で独立して行うことができるため、いずれか一方の動作が他方の動作の制約を受けにくくなる。
【0024】
制御部は、外部端子と電力供給路との接続を検知部が検知した場合に、昇圧回路部に昇圧動作を行わせつつ降圧回路部に降圧動作を行わせ、昇圧回路部及び降圧回路部がいずれも動作する期間を生じさせるように機能してもよい。
【0025】
この車載用電源装置は、蓄電部を充電し得る昇圧動作時に降圧動作を並行して行うことができるため、充電時であっても第2導電路に接続された機器に対して適正な電力を供給することができる。
【0026】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示す車載用電源システム100(以下、電源システム100ともいう)は、高圧系の電源路81と低圧系の電源路82の二系統に電力を供給し得るシステムとして構成されている。電源システム100は、高圧系の電源路81に相対的に高い電圧(例えば48V程度)を印加し、低圧系の電源路82に相対的に低い電圧(例えば12V程度)を印加する電源システムとなっており、電源路81,82に接続された電気機器に電力を供給し得るシステムとして構成されている。
【0027】
電源システム100は、主として、発電機92、蓄電装置94、電源路81,82、車載用電源装置1(以下、電源装置1ともいう)などを備え、1又は複数の制御装置(図1の例では、車両制御ECU70)によって制御される構成をなす。電源システム100において、高圧系の電源路81には発電機92や蓄電装置94が電気的に接続され、低圧系の電源路82には低圧系の負荷98が接続されている。なお、図示はしていないが、高圧系の電源路81に、ヒータなどの高圧系の負荷が接続されていてもよい。電源路81及び電源路82は、電力を伝送する電力路として機能する配線部である。
【0028】
車両制御ECU70は、発電機92、蓄電装置94、電源装置1からの情報受信及びこれらに対する情報送信を行い得る車載用の電子制御装置であり、1又は複数の情報処理装置、記憶装置、AD変換器など、様々な装置を備えてなる。車両制御ECU70は、スタータ93にスタータ動作を指示する機能、蓄電装置94にリレー94Bのオンオフ動作を指示する機能、制御装置10に対し、昇圧動作や降圧動作を指示する機能などを有する。なお、車両制御ECU70は、単一の電子制御装置によって構成されていてもよく、複数の電子制御装置によって構成されていてもよい。
【0029】
発電機92は、公知の車載用発電機として構成され、エンジン(図示略)の回転軸の回転によって発電する機能を備える。スタータ93は、公知の車載用スタータとして構成され、エンジンの回転軸に対して回転力を与えるスタータとしての機能とを備える。発電機92が動作する場合、発電機92の発電によって生じた電力は整流後に直流電力として蓄電装置94に供給される。発電機92は、発電時に、例えば所定値V1(例えば、48V程度)の出力電圧を電源路81に印加する。スタータ93は、エンジンが停止状態であるときに蓄電装置94から電力供給を受けて動作し、エンジンに対し始動用の回転力を与える。
【0030】
蓄電装置94は、車載用の蓄電部94A(以下、蓄電部94Aともいう)とリレー94Bとを備える。
【0031】
蓄電部94Aは、例えば、電気二重層コンデンサ、鉛バッテリ、リチウムイオン電池などの公知の車載用蓄電手段によって構成されており、リレー94B及びヒューズ96を介して電源路81に電気的に接続されている。蓄電部94Aは、満充電時の出力電圧が例えば48Vであり、満充電時には高電位側の端子が48V程度に保たれる。蓄電部94Aの低電位側の端子は、例えばグラウンド電位(0V)に保たれている。
【0032】
リレー94Bは、蓄電部94Aの出力端子(高電位側の端子)と電源路81との間に設けられ、蓄電部94Aと電源路81との間の導通及び非導通を切り替えるように動作する。例えば、蓄電装置94の内部或いは電源装置1の内部に図示しない蓄電制御装置が設けられ、蓄電部94Aの過放電を監視し得るように構成されている。例えば、この蓄電制御装置は、蓄電部94Aの出力電圧を監視し、蓄電部94Aの出力電圧が閾値電圧Vth1(上記所定値V1よりも低く設定された閾値)以上である場合には、リレー94Bをオン状態で維持し、蓄電部94Aと電源路81との間を通電状態とする。一方、蓄電制御装置は、蓄電部94Aの出力電圧が閾値電圧Vth1未満となった場合にリレー94Bをオフ状態とし、蓄電部94Aと電源路81との間の通電を遮断する。なお、リレー94Bと電源路81との間には、過電流時に電流を遮断するヒューズ96が設けられている。
【0033】
低圧系の負荷98は、車両に搭載される公知の車載用電気機器であり、第2導電路22に接続された電源路82を介して供給される電力によって動作し得る機器であればよい。従って、負荷98の種類や数は限定されない。
【0034】
電源装置1は、昇圧動作及び降圧動作を行い得るスイッチング電源装置として構成されている。
【0035】
電源装置1は、第1導電路21、第2導電路22、制御装置10、電圧変換部12、検知部30、補助回路部42、ダイオード32、端子P1,P2、外部端子P3、第1電流センサ及び第2電流センサ(図示略)、第1電圧センサ及び第2電圧センサ(図示略)などを備える。
【0036】
第1導電路21は、所定電圧V1の直流電圧を出力する発電機92が電気的に接続された導電路であり、車両動作中に第2導電路22よりも相対的に高い電圧が印加される高圧側の電源ラインとして構成されている。第1導電路21は、電源路81に接続されるとともに、この電源路81を介して発電機92及び蓄電部94Aに電気的に接続されている。第1導電路21には、発電機92又は蓄電部94Aの出力に応じた電圧が印加される。図1の例では、第1導電路21の端部に端子P1が設けられ、この端子P1に外部の電源路81が接続されている。
【0037】
第2導電路22は、車両動作中に第1導電路21よりも相対的に低い電圧が印加される低圧側の電源ラインとして構成されている。第2導電路22は、電圧変換部12が降圧モードで降圧動作を行っているときに電圧変換部12からの出力電圧(例えば12V程度の出力電圧)が印加される。図1の例では、第2導電路22の端部に端子P2が設けられ、この端子P2に外部の電源路82が接続されている。
【0038】
制御装置10は、電圧変換部12を制御する制御部10Aとして機能する部分と、補助回路部42を切り替える切替部10Bとして機能する部分とを備える。この制御装置10は、具体的には、演算機能を有する制御回路と、制御回路からの信号に応じたPWM信号を出力する駆動回路とを有する。制御回路は、例えば、マイクロコンピュータとして構成され、CPU等の演算装置、ROMやRAM等のメモリ、A/D変換器などを有する。駆動回路は、制御回路で決定されたデューティ比のPWM信号を出力し、電圧変換部12に昇圧動作又は降圧動作を行わせるように機能する。これら制御回路及び駆動回路が制御部10Aとして機能する。また、制御回路は、切替部10Bとしても機能し、半導体スイッチ44のオンオフを制御し得る構成となっている。更に、制御装置10は、後述する検知部30から検知信号や非検出信号が入力され得る構成となっている。制御装置10は、図示しない電圧検出回路から蓄電部94Aの出力電圧(充電電圧)が入力されるようになっていてもよく、リレー94Bがオン状態であるかオフ状態であるかを特定し得る信号が入力されるようになっていてもよい。なお、ここでは、制御回路が制御部10Aとしても機能し、切替部10Bとしても機能する例を挙げたが、制御部10Aと切替部10Bとが別々の回路として構成され、それぞれが検知部30からの信号を取得し得る構成となっていてもよい。
【0039】
電源装置1には、図示しない第1電流センサ及び第2電流センサが設けられ、第1導電路21及び第2導電路22の各電流値を検出し得る。第1電流センサは、公知の電流検出回路によって構成され、第1導電路21を流れる電流値を検出し、その電流値を示すアナログ電圧信号を制御装置10に入力する。同様に、第2電流センサも、公知の電流検出回路によって構成され、第2導電路22を流れる電流値を検出し、その電流値を示すアナログ電圧信号を制御装置10に入力する。制御装置10における制御部10Aは、これらアナログ電圧信号を取得し得る。
【0040】
電源装置1には、図示しない第1電圧センサ及び第2電圧センサが設けられ、第1導電路21及び第2導電路22の各電圧値を検出し得る。第1電圧センサは、公知の電圧検出回路によって構成され、第1導電路21の電圧値を検出し、その電圧値を示すアナログ電圧信号を制御装置10に入力する。同様に、第2電圧センサも、公知の電圧検出回路によって構成され、第2導電路22の電圧値を検出し、その電圧値を示すアナログ電圧信号を制御装置10に入力する。制御装置10における制御部10Aは、これらアナログ電圧信号を取得し得る。
【0041】
電圧変換部12は、蓄電部94Aに電気的に接続される第1導電路21と第2導電路22との間において、これらの導電路に接続された形で設けられている。電圧変換部12は、昇降圧回路部の一例に相当し、第1導電路21に印加された電圧を降圧して第2導電路22に印加する降圧動作と、第2導電路22に印加された電圧を昇圧して第1導電路21に印加する昇圧動作とを選択的に行う回路として構成されている。電圧変換部12は、例えば、半導体スイッチング素子及びインダクタなどを備えてなる公知の双方向型昇降圧DCDCコンバータとして構成されている。具体的には、電圧変換部12は、例えば同期整流方式の非絶縁型DCDCコンバータとして構成され、降圧動作を行う場合、第1導電路21に印加された入力電圧を同期整流方式で降圧して第2導電路22に出力し、昇圧動作を行う場合、第2導電路22に印加された入力電圧を同期整流方式で昇圧して第1導電路21に出力する。
【0042】
制御装置10のうち、制御部10Aとして機能する部分は、電圧変換部12に降圧動作を行わせる降圧モードの制御と、電圧変換部12に昇圧動作を行わせる昇圧モードの制御とを行いうる。
【0043】
制御部10Aは、降圧モードの制御を行う場合、電圧変換部12に対して降圧動作用の制御信号(PWM信号)を与え、第1導電路21に印加された電圧を降圧して第2導電路22に印加するように電圧変換部12に降圧動作を行わせる。降圧モードでは、電圧変換部12から第2導電路22に出力する出力電圧が所定の目標電圧Va(例えば、12V)となるように制御信号(PWM信号)のフィードバック制御がなされ、制御信号(PWM信号)のデューティはフィードバック演算によって調整される。
【0044】
制御部10Aは、昇圧モードの制御を行う場合、電圧変換部12に対して昇圧動作用の制御信号(PWM信号)を与え、第2導電路22に印加された電圧を昇圧して第1導電路21に印加するように電圧変換部12に昇圧動作を行わせる。昇圧モードでは、電圧変換部12から第1導電路21に出力する出力電圧が所定の目標電圧Vb(発電機92の出力電圧V1よりも少し低い値)となるように制御信号(PWM信号)のフィードバック制御がなされ、制御信号(PWM信号)のデューティはフィードバック演算によって調整される。
【0045】
外部端子P3は、外部電源Bpからの電力供給路Lpを接続するときの接続対象部位となる端子である。外部電源Bpは、電力供給路Lpを介して電力を供給し得る電源であればよく、例えば、出力電圧が12V程度の鉛バッテリなど、公知の蓄電池が挙げられる。電力供給路Lpは、外部電源Bpの正側の出力端子と外部端子P3とを電気的に接続し得る導電路であればよく、公知のブースタケーブルなどであってもよく、これ以外の配線部であってもよい。外部端子P3は、図2のように、電力供給路Lpによって外部電源Bpの正側の電極部が電気的に接続された場合に、外部電源Bpの出力電圧が印加される。
【0046】
給電回路部40は、補助回路部42と上述した制御装置10(具体的には制御装置10のうちの切替部10B)とによって構成されている。補助回路部42は、半導体スイッチ44及び半導体スイッチ44を各部位(第2導電路22、外部端子P3、制御装置10)に電気的に接続する導電路によって構成されている。半導体スイッチ44は、例えば、Nチャンネル型のMOSFETとして構成されており、ドレインが第2導電路22に電気的に接続され、ソースが外部端子P3及びダイオード32のアノードに電気的に接続され、ゲートは制御装置10からの信号線に接続されている。
【0047】
半導体スイッチ44は、外部端子P3にアノードが電気的に接続され第2導電路22にカソードが電気的に接続されたボディダイオードであるダイオード部44Bと、第2導電路22と外部端子P3との間で導通状態と非導通状態とに切り替わるスイッチ部44A(ボディダイオードを除く部分)とを備える。制御装置10のうちの切替部10Bとして機能する部分は、半導体スイッチ44のゲートに対して、オン信号及びオフ信号を選択的に出力する。切替部10Bから半導体スイッチ44のゲートにオン信号が与えられた場合には、半導体スイッチ44がオン状態となり、オフ信号が与えられた場合には、半導体スイッチ44がオフ状態となる。具体的には、切替部10Bは、検知部30からの信号を検出し得る構成をなし、外部端子P3と電力供給路Lpとの接続を検知部30が検知していない場合にスイッチ部44Aを非導通状態とし、外部端子P3と電力供給路Lpとの接続を検知部30が検知した場合にスイッチ部44Aを導通状態とする。なお、図1では、半導体スイッチ44を例示したが、半導体スイッチ44又はスイッチ部44Aを機械式リレーなどの他のスイッチに置き換えてもよい。
【0048】
このように構成された給電回路部40は、少なくとも外部端子P3に電力供給路Lpが接続されている場合に、外部端子P3側から第2導電路22側に電流が流れることが許容される。具体的には、給電回路部40は、第2導電路22が所定の正常出力状態である場合(第2導電路22に所定閾値以上の電圧が印加され、且つ、外部端子P3に電力供給路Lpが接続されていない場合)に第2導電路22から外部端子P3側に電流が流れることを遮断し、外部端子P3に電力供給路Lpが接続された場合に外部端子P3側から第2導電路22側に電流が流れる構成となっている。
【0049】
ダイオード32は、外部端子P3側から検知部30側に電流が流れることを許容し、その逆方向に電流が流れることを規制する素子である。図1の構成では、外部端子P3に電力供給路Lpが接続されることで外部端子P3に外部電源Bpの出力電圧が印加された場合、導電路34に対して外部電源Bpの出力電圧に応じた電圧(ダイオード32の電圧降下分を差し引いた電圧)が印加される。後述の閾値電圧Vth2は、想定される外部電源Bpの出力電圧(例えば、12V)よりも低い値となっており、想定される外部電源Bpの出力電圧(例えば、12V)が外部端子P3に印加された場合、導電路34の電圧は閾値電圧Vth2よりも十分大きくなる。一方、外部端子P3に電力供給路Lpが接続されないオープン状態のときには、導電路34は、後述の閾値電圧Vth2よりも十分小さい低レベルとなる。
【0050】
検知部30は、外部端子P3に電力供給路Lpが接続されたことを検知する回路である。この検知部30は、例えば、導電路34に印加される電圧が閾値電圧Vth2以上であるか否かを判定する判定回路として構成され、導電路34に印加される電圧が閾値電圧Vth2以上である場合には、制御装置10に所定の検知信号を出力する。導電路34に印加される電圧が閾値電圧Vth2未満の場合、検知部30は、制御装置10に所定の非検知信号を出力する。制御装置10において、制御部10A及び切替部10Bは、検知部30から検知信号及び非検知信号のいずれが出力されているかを認識し得る。
【0051】
次に、電源システム100でなされる具体的な動作を詳述する。
図1の電源システム100は、例えば、低圧系の電源路82にバッテリが接続されておらず、高圧系の電源路81に接続された蓄電部94Aの出力を降圧して低圧系の電源路82に供給するシステムとなっている。更に、高圧系の電源路81に発電機92及びスタータ93が設けられている。このような構成では、何らかの理由で蓄電部94Aの出力が低下或いは停止した場合、スタータ93にスタータ動作を行わせることができずにエンジンを始動できない虞がある。そこで、電源装置1では、このような非常時に、外部電源Bpからの電力を用いて昇圧動作を行い、蓄電部94Aを適正な充電電圧まで復帰できるようにしている。
【0052】
図3は、図1の電源システム100における制御シーケンスを示すタイミングチャートである。図3において、第1段は第2導電路22の状態の経時変化を示し、第2段は、外部端子の状態の経時変化を示し、第3段は、電圧変換部12の状態の経時変化を示し、第4段は、車両制御ECU70の状態の経時変化を示し、第5段は、蓄電装置94の状態の経時変化を示す。
【0053】
図3の例では、時間t1より前の時間帯は、イグニッションスイッチがオフの状態であり、エンジン及び発電機92が停止している状態である。時間t1より前の時間帯は、蓄電部94Aの出力電圧が閾値電圧Vth1以上となっている状態(過放電となっていない状態)である。この時間帯では、蓄電部94Aの出力電圧が閾値電圧Vth1以上であるため、蓄電制御装置によってリレー94Bがオン状態で維持され、蓄電部94Aの出力に応じた電圧が電源路81に印加される。時間t1より前の時間帯では、車両制御ECU70は所定のスリープ状態で維持されていてもよく、停止状態となっていてもよい。また、時間t1より前の時間帯では、制御装置10の制御部10Aによって電圧変換部12が暗電流モードで降圧制御され、第2導電路22を介して車両制御ECU70などの最低限の機器に動作電力が供給される。時間t1よりも前の時間帯は、正常な停止状態(蓄電部94Aから電源路81に閾値電圧Vth1以上の電圧が印加され、且つ電圧変換部12によって電力供給がなされている状態)であり、スタータ93に対してスタータ動作させる電力が確保されている状態であるため、外部端子P3に外部電源Bpを接続する必要はない。
【0054】
図3の例では、時間t1の時点で蓄電部94Aの出力電圧が閾値電圧Vth1未満となり、蓄電制御装置によって時間t1からリレー94Bがオフ状態に切り替えられている。つまり、時間t1以降に蓄電部94Aからの出力が停止し、電源路81及び第1導電路21に電力が供給されなくなっている。このように電圧変換部12に適正な入力がなされなくなると、電圧変換部12から第2導電路22に適正な出力電圧(例えば、12V)が出力できなくなり、電圧変換部12は停止状態となる。時間t1以降は、蓄電部94Aからの出力が停止し続け、電圧変換部12の出力停止状態が継続するため、車両制御ECU70に対しても電力供給がなされず、車両制御ECU70の動作も停止する。
【0055】
このように、時間t1の後、後述する時間t3の前には、第1導電路21及び第2導電路22のいずれにも電力が供給されない状態となり、第1導電路21及び第2導電路22のいずれにも適正な電圧が印加されない状態となる。この状態では、スタータ93の動作電力が確保できず、エンジンを始動させることができない。つまり、発電機92を動作させて蓄電部94Aを充電することができず、蓄電装置94を復帰させることができない。
【0056】
このような状態を解消するために、図2のように外部端子P3に対して外部電源Bpに接続された電力供給路Lpを接続すると、外部端子P3を介して外部電源Bpからの電力が供給される。所定電圧(例えば12V)を出力し得る外部電源Bpが外部端子P3に対して電気的に接続されると、導電路34の電圧が、上述した閾値電圧Vth2以上となるため、検知部30がこの状態(外部端子P3に外部電源Bpが電気的に接続された状態であり、導電路34の電圧が閾値電圧Vth2以上となった状態)を検知し、制御装置10に対して上述した検知信号を出力する。
【0057】
一方、制御装置10は、外部端子P3に対して電力供給路Lpが接続され、外部端子P3に外部電源Bpが電気的に接続されたときに、外部端子P3又は導電路34に接続された図示しない経路を介して外部電源Bpからの電力を受け得る構成となっている。つまり、外部端子P3に外部電源Bpが電気的に接続された場合、制御装置10は外部電源Bpからの電力供給によって動作可能状態(図3で示す「起動」の状態)となる。そして、制御装置10は、このように動作可能状態となった後、検知部30から検知信号を受けた場合には、この受信に応じて、制御部10Aにより車両制御ECU70に対して所定の通知信号を出力する動作と、切替部10Bにより半導体スイッチ44にオン信号を出力する動作とを行う。なお、所定の通知信号は、少なくとも車両制御ECU70が起動してこの信号を受信するまでは出力され、半導体スイッチ44に対するオン信号は、少なくとも後述する降圧動作が実行されるまでは継続される。
【0058】
切替部10Bが半導体スイッチ44にオン信号を出力すると、オン信号の出力を開始した時間t3で半導体スイッチ44がオン状態となり、外部電源Bpからの電力が半導体スイッチ44を介して第2導電路22に供給される。半導体スイッチ44がオン状態となった後には、第2導電路22に外部電源Bpの出力電圧(例えば12V)程度の電圧が印加される。なお、時間t2から時間t3の間にもダイオード部44B(ボディダイオード)を介して電力が供給されるが、時間t3の後は、損失が抑えられた状態でより多くの電流を流すことができる。
【0059】
一方、車両制御ECU70は、少なくとも時間t3の時点で第2導電路22を介して動作電圧が供給されるため、動作可能状態(図3で示す「起動」の状態)となる。車両制御ECU70は、このように動作可能状態となった後、制御部10Aから送信された上記所定の通知信号を受信すると、この通知信号に応じて、蓄電部94Aが充電すべき状態であるか否かを判定する。車両制御ECU70は、所定の充電開始条件の成立時(例えば、蓄電部94Aの出力電圧(充電電圧)が所定の充電判定閾値以下であると判定した場合)に、制御部10Aに対して充電を指示する充電指示信号を出力するとともに、上述した蓄電制御装置(図示略)に対してリレー94Bのオン動作を指示するオン動作指示信号を出力する。図3の例では、時間t4に、車両制御ECU70から充電指示信号及びオン動作指示信号が出力されている。このような制御によって、リレー94Bのオン動作及び制御部10Aによる充電動作(昇圧動作)が開始することになる。なお、車両制御ECU70は、起動後に上記所定の通知信号を受信した場合、即座に、制御部10Aに対する充電指示信号及び蓄電制御装置に対するオン動作指示信号を出力してもよい。
【0060】
時間t4で車両制御ECU70から充電指示信号及びオン動作指示信号が出力されると、その時点から、リレー94Bがオン状態に切り替えられ、制御部10Aは電圧変換部12に昇圧動作を行わせる制御を実行する。具体的には、第2導電路22に印加される電圧(外部電源Bpからの電力供給に基づく電圧)を入力電圧とし、この入力電圧を昇圧して所望の目標値(発電機92の出力電圧V1よりも低い電圧Vb)を第1導電路21に出力するように電圧変換部12に昇圧動作を行わせる。
【0061】
このように、本構成では、時間t2の直後に検知部30が外部端子P3と電力供給路Lpとの接続を検知すると、この検知部30の検知に応じて、制御部10Aが電圧変換部12に昇圧動作を行わせ、発電機92の出力電圧V1よりも低い電圧Vbを第1導電路21に出力することになる。
【0062】
制御部10Aは、時間t4に電圧変換部12の昇圧動作を開始した後、所定の終了条件が成立した場合(例えば、蓄電部94Aの出力電圧が、スタータ93にスタータ動作を行わせ得る所定の充電停止閾値(動作可能閾値)に達した場合)に、電圧変換部12の昇圧動作を停止させる。図3の例では、時間t5の時点で電圧変換部12の昇圧動作を停止させ、電圧変換部12による蓄電部94Aの充電を停止している。
【0063】
車両制御ECU70は、所定の始動条件成立時(例えば、蓄電部94Aの出力電圧(充電電圧)がスタータ93にスタータ動作を行わせ得る所定の充電停止閾値(動作可能閾値)に達した場合、或いは、時間t4から行われた電圧変換部12の昇圧動作が停止した場合など)に、スタータ93に対して始動を指示し、スタータ動作を行わせるとともにエンジンを始動させる。なお、車両制御ECU70は、所定の始動条件成立時に自動的にスタータ93にスタータ動作を行わせエンジンを始動してもよく、所定の始動条件成立を前提とし、所定の操作スイッチ(イグニッションスイッチのオンオフを切り替える操作スイッチ)にオン操作がなされた時にスタータ93にスタータ動作を行わせエンジンを始動してもよい。
【0064】
スタータ93によってスタータ動作が行われてエンジンが始動すると、発電機92は発電動作を行う。制御部10Aは、このように発電機92の発電動作が開始した後、電圧変換部12に降圧動作を行わせる。図3の例では、制御部10Aが時間t6から電圧変換部12に降圧動作(所定の目標電圧(例えば、12V)を第2導電路22に出力する降圧動作)を行わせている。このように電圧変換部12が降圧動作を開始した後、切替部10Bは、半導体スイッチ44をオフ状態に切り替える。切替部10Bが半導体スイッチ44をオフ状態に切り替えた後には、外部端子P3から電力供給路Lpを取り外しても支障はない。
【0065】
図3の例では、時間t3で半導体スイッチ44がオン状態に切り替えられてから、時間t6で降圧動作が開始されるまで、第2導電路22には外部電源Bpの電力に基づく電圧が印加され、時間t6で降圧動作が開始された後は、第2導電路22に対して電圧変換部12の出力に基づく電圧を印加することができる。そして、このように電圧変換部12が第2導電路22に所定の出力電圧(例えば、12V)を印加する降圧動作を行い且つ半導体スイッチ44がオフ状態となっている状態が電圧変換部12の正常出力状態(通常状態)であり、車両動作中は、イグニッションスイッチがオフ状態に切り替わるまで、このような正常出力状態(通常状態)が継続する。
【0066】
なお、図3の例では、発電機92が始動して発電動作を行う前の時間t5で電圧変換部12の昇圧動作を停止させているが、時間t4で電圧変換部12が昇圧動作を開始した後、発電機92が始動して発電動作を行った後に、電圧変換部12の昇圧動作を停止させてもよい。例えば、時間t4の後、蓄電部94Aの出力電圧がスタータ93にスタータ動作を行わせ得る所定閾値(動作可能閾値)に達した場合に電圧変換部12の昇圧動作が継続している状態でスタータ93にスタータ動作を行わせるとともにエンジンを始動させ、エンジンの始動に応じて発電機92が発電を開始した後に、電圧変換部12の昇圧動作を停止させてもよい。
【0067】
次に、本構成の効果を例示する。
上記車載用電源装置1では、外部端子P3に電力供給路Lpが接続されたことを検知部30が検知し、給電回路部40では、少なくとも外部端子P3に外部の電力供給路Lpが接続されている場合に、外部端子P3側から第2導電路22側に電流が流れることが許容される。そして、制御部10Aは、このように外部端子P3を介して外部から第2導電路22側に電力が供給される状態で電圧変換部12(昇降圧回路部)に昇圧動作を行わせるため、蓄電部94Aに電気的に接続された第1導電路21に対して相対的に高い電圧を印加することができ、蓄電部94Aの充電を良好に行うことができる。特に、蓄電部94Aの充電電圧が低下して車載機器を動作させることに支障が生じるような場面において、外部電源Bpの接続を確実に検知し、外部電源Bpに基づく供給電圧を昇圧した形で蓄電部94Aの充電が可能となるため、このような場面で適正な復帰が可能となる。
【0068】
給電回路部40は、少なくとも第2導電路22が所定の正常出力状態である場合に第2導電路22から外部端子P3側に電流が流れることを遮断し、外部端子P3に電力供給路Lpが接続された場合に外部端子P3側から第2導電路22側に電流が流れる構成となっている。
【0069】
このように構成された車載用電源装置1は、第2導電路22が正常出力状態であるときには、第2導電路22から外部端子P3側に電流が流れることを防ぎ、第2導電路22の影響を受けにくい状態で外部端子P3を維持することができる。一方で、外部端子P3に電力供給路Lpが接続された場合(即ち、外部電源Bpから外部端子P3を介して電力が供給され得る場合)には、外部端子P3側から第2導電路22側に電流が流れる状態となり、外部電源Bpに基づく入力電圧を昇圧して第1導電路21に印加する昇圧動作を行うことが可能となる。
【0070】
給電回路部40は、外部端子P3にアノードが電気的に接続され第2導電路22にカソードが電気的に接続されたダイオード部44Bと、第2導電路22と外部端子P3との間で導通状態と非導通状態とに切り替わるスイッチ部44Aとを備えた半導体スイッチ44と、外部端子P3と電力供給路Lpとの接続を検知部30が検知していない場合にスイッチ部44Aを非導通状態とし、外部端子P3と電力供給路Lpとの接続を検知部30が検知した場合にスイッチ部44Aを導通状態とする切替部10Bとを有する。
【0071】
このように構成された車載用電源装置1は、外部端子P3と電力供給路Lpとの接続(即ち、外部電源Bpから外部端子P3を介して電力が供給される状態)を検知部30が検知していない場合には第2導電路22から外部端子P3側に電流が流れることを防ぎ、外部端子P3と電力供給路Lpとの接続を検知部30が検知した場合には、スイッチ部44Aを導通状態とすることができるため、外部端子P3側から第2導電路22側に電流を流すことができ、且つその際の導通損失を抑えることができる。
【0072】
第1導電路21は所定電圧V1を出力する発電機92が電気的に接続された導電路であり、制御部10Aは、外部端子P3と電力供給路Lpとの接続を検知部30が検知した場合に、発電機92の出力電圧V1よりも低い電圧Vbを第1導電路21に出力するように電圧変換部12(昇降圧回路部)に昇圧動作を行わせる。
【0073】
このように構成された車載用電源装置1は、例えば、発電機92の発電動作と電圧変換部12の昇圧動作とを同時期に行う場合(例えば、発電機92の発電動作後に電圧変換部12の昇圧動作を停止させるような方法を採用する場合など)に、発電機92の電力を優先的に利用して蓄電部94Aを充電することができるため、外部電源Bpの電力消費を抑えやすくなる。
【0074】
電圧変換部12は、降圧動作又は昇圧動作を選択的に行う昇降圧回路部として構成されている。
【0075】
この車載用電源装置1は、降圧動作を行うべき正常時には第1導電路21に印加された電圧を降圧して第2導電路22に印加する降圧動作を行うことができ、外部端子P3に外部電源Bpを接続させて充電させるべき場合には外部端子P3に電力供給路Lpが接続されたことを条件として昇圧動作を行うことができる構成を、より簡易に実現することができる。
【0076】
<実施例2>
次に、実施例2について説明する。
図4は、実施例2の車載用電源装置201(以下電源装置201ともいう)を備えた車載用電源システム200を概念的に示すものである。車載用電源システム200は、電源装置1に代えて電源装置201を用いている点以外は実施例1の車載用電源システム100と同一である。即ち、図4の例において、電源装置201以外の部分の構成及び機能は実施例1と同様である。実施例2の電源装置201は、電圧変換部12に代えて電圧変換部212を設けた点、及び制御部10Aが昇圧回路部212Aの昇圧動作及び降圧回路部212Bの降圧動作を個別に制御する点以外は実施例1の電源装置1と同一である。
【0077】
電源装置201に設けられた電圧変換部212は、蓄電部94Aに電気的に接続される第1導電路21と第2導電路22との間において、これらの導電路に接続された形で設けられている。第1導電路21に印加された電圧を降圧して第2導電路22に印加する降圧動作を行う降圧回路部212Bと、降圧回路部212Bとは別の経路として構成され、第2導電路22に印加された電圧を昇圧して第1導電路21に印加する昇圧回路部212Aとを備え、降圧回路部212Bと昇圧回路部212Aとが第1導電路21と第2導電路22との間に並列に設けられている。
【0078】
昇圧回路部212Aは、例えば、半導体スイッチング素子及びインダクタなどを備えてなる公知の昇圧型DCDCコンバータとして構成されている。具体的には、昇圧回路部212Aは、例えば同期整流方式の非絶縁型DCDCコンバータとして構成され、昇圧動作を行う場合、第2導電路22に印加された入力電圧を同期整流方式で昇圧して第1導電路21に出力する。
【0079】
降圧回路部212Bは、例えば、半導体スイッチング素子及びインダクタなどを備えてなる公知の降圧型DCDCコンバータとして構成されている。具体的には、降圧回路部212Bは、例えば同期整流方式の非絶縁型DCDCコンバータとして構成され、降圧動作を行う場合、第1導電路21に印加された入力電圧を同期整流方式で降圧して第2導電路22に出力する。
【0080】
制御部10Aの制御は、昇圧モードの制御と降圧モードの制御とが実施例1と若干異なるだけであり、昇圧動作及び降圧動作を行わせる制御以外は実施例1と同一である。制御部10Aは、降圧モードの制御を行う場合、第1導電路21に印加された電圧を降圧して第2導電路22に出力電圧を印加し、出力電圧が上述した目標電圧値Va(例えば、12V)となるように降圧回路部212Bに対しPWM信号を制御信号としたフィードバック制御を行う。制御部10Aは、昇圧モードの制御を行う場合、第2導電路22に印加された電圧を昇圧して第1導電路21に出力電圧を印加し、出力電圧が上述した目標電圧値Vb(例えば、発電機92の出力電圧よりも少し低い値)となるように昇圧回路部212Aに対しPWM信号を制御信号としたフィードバック制御を行う。
【0081】
本構成でも、実施例1と同様の流れ(図3で示す流れ)で制御を行うことができる。但し、時間t4以降に昇圧動作を行う場合に昇圧回路部212Aを動作させ、時間t1前又は時間t6以降に降圧動作を行う場合に降圧回路部212Bを動作させる点のみが実施例1と異なる。
【0082】
本構成の車載用電源装置201は、蓄電部94Aから閾値電圧Vth1以上の電圧が出力される正常状態のときに、第1導電路21に印加された電圧を降圧して第2導電路22に印加するように降圧回路部212Bによって降圧動作を行うことができ、このときには第2導電路22を介して負荷98などに適正な電力を供給することができる。一方、蓄電部94Aの出力停止時などにおいて、作業者の作業により、外部端子P3に電力供給路Lpが接続されたとき(即ち、外部端子P3を介して外部電源Bpからの電力が供給されるとき)には、第2導電路22に印加された電圧を昇圧して第1導電路21に印加するように昇圧回路部212Aによって昇圧動作を行うことができる。しかも、降圧動作と昇圧動作とを別々の回路部で独立して行うことができるため、いずれか一方の動作が他方の動作の制約を受けにくくなる。
【0083】
なお、図3では、昇圧動作と降圧動作を別々の時期に行う例を示したが、この例に限定されない。例えば、制御部10Aは、外部端子P3と電力供給路Lpとの接続を検知部30が検知した場合に、昇圧回路部212Aに昇圧動作を行わせつつ降圧回路部212Bに降圧動作を行わせるように制御を行ってもよい。このようにすれば、蓄電部94Aを充電し得る昇圧動作時に降圧動作を並行して行うことができるため、充電時であっても第2導電路22に接続された機器に対して適正な電力を供給することができる。
【0084】
このように昇圧動作と降圧動作とを並行して行う例としては、例えば、図3で示すシーケンスにおいて、時間t4以降の制御を若干変更した例などが挙げられる。例えば、制御部10Aは、図3の時間t4以降に昇圧回路部212Aを制御して昇圧動作を行わせた場合、所定の降圧動作開始時(例えば、蓄電装置94のリレー94Bがオン状態になった時、或いは、蓄電部94Aの出力電圧(充電電圧)が一定値(上述した充電停止閾値よりも低い所定値)を超えた時など)以降は、昇圧回路部212Aに昇圧動作を行わせつつ降圧回路部212Bに降圧動作を行わせるように制御を行ってもよい。この場合、降圧動作の開始タイミングを図3で示す時間t6から上記降圧動作開始時まで早めることができる。なお、この場合、昇圧動作の終了タイミングは、実施例1と同様、図3で示す時間t5(発電機92の始動前の時期)としてもよく、発電機92の始動後としてもよい。
【0085】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施例や後述する実施例は矛盾しない範囲で組み合わせることが可能である。
【0086】
実施例1、2では、図1のように、半導体スイッチ44を主体として構成された給電回路部40を例示したが、実施例1、2又はこれらを変更したいずれの例においても、図5のような給電回路部340に変更してもよい。なお、図5で示す車載用電源装置301は、給電回路部40を給電回路部340に変更し、半導体スイッチ44のオンオフ制御を省略した点以外は、実施例1の車載用電源装置1と同様の構成である。図5で示す給電回路部340は、外部端子P3にアノードが電気的に接続され第2導電路22にカソードが電気的に接続されたダイオード342によって構成され、スイッチ部が存在しない構成となっている。図5の車載用電源装置301でも、第2導電路22が所定の正常出力状態である場合(電圧変換部12の降圧動作によって第2導電路22に所定値(例えば、12V)の出力電圧が印加され、外部端子P3と電力供給路Lpが接続されていない状態である場合)に第2導電路22から外部端子P3側に電流が流れることを遮断することができ、上記正常出力状態のときに外部端子P3の電位を第2導電路22の電位よりも十分低い値に保つことができる。そして、外部端子P3に電力供給路Lpが接続された場合には、外部電源Bpからの電力供給に基づいて外部端子P3側から第2導電路22側に電流を流すことができる。そして、このような機能を、より簡易な構成で実現できる。なお、図5の構成における制御装置10の制御は、図1における半導体スイッチ44のオンオフ制御が省略された点以外は実施例1と同様であり、制御部10Aが実施例1と同様な制御を行うことになる。
【0087】
実施例1、2では、発電機92とスタータ93が電源路81に電気的に接続された形で別々に設けられていたが、実施例1、2又はこれらを変更したいずれの例においても、発電機とスタータとが一体となった発電機兼スタータでもよい。
【0088】
実施例1、2では、判定回路として構成される検知部30を例示したが、施例1、2又はこれらを変更したいずれの例においても、検知部は、外部端子P3に外部電源Bpが電気的に接続されたことを検知することができ、検知時に制御装置10に対して検知信号を出力し得る構成であればよい。
【0089】
実施例1では、出力側となる第2導電路22にバッテリ(蓄電部94Aとは異なるバッテリ)が接続されていない構成を例示したが、実施例1、2又はこれらを変更したいずれの例においても、何らかの蓄電手段が第2導電路22に電気的に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1,201,301…車載用電源装置
10A…制御部
10B…切替部
12…電圧変換部(昇降圧回路部)
21…第1導電路
22…第2導電路
30…検知部
40,340…給電回路部
44…半導体スイッチ
92…発電機
212…電圧変換部
212A…昇圧回路部
212B…降圧回路部
342…ダイオード
Bp…外部電源
Lp…電力供給路
P3…外部端子
図1
図2
図3
図4
図5