(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光透過帯と遮光帯とが交互に繰り返して設けられているルーバー層と、前記ルーバー層の第一面に設けられた第一透明樹脂層と、前記ルーバー層の第二面に設けられた第二透明樹脂層と、を備え、
前記光透過帯、前記第一透明樹脂層、および前記第二透明樹脂層がシリコーンゴムによって形成されており、
前記第一透明樹脂層、および前記第二透明樹脂層のそれぞれが外面を構成し、
前記光透過帯の屈折率と前記第一透明樹脂層の屈折率の差が0.01未満、及び前記光透過帯の屈折率と前記第二透明樹脂層の屈折率の差が0.02未満であり、
前記第一透明樹脂層および前記第二透明樹脂層の外面には他の透明部材が設けられておらず、
前記ルーバー層の厚さが200μm〜500μmであり、前記第一透明樹脂層の厚さが10μm〜20μmであり、前記第二透明樹脂層の厚さが10μm〜20μmである、
光透過方向制御シート。
前記第一透明樹脂層および前記第二透明樹脂層のうち少なくとも一方の外面の算術平均粗さ(Ra)が、0μm〜3.0μmである、請求項1に記載の光透過方向制御シート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、本発明に係る光透過方向制御シート10は、光透過帯2と遮光帯3とが交互に繰り返して設けられているルーバー層1と、ルーバー層1の第一面に設けられた第一透明樹脂層4と、ルーバー層1の第二面に設けられた第二透明樹脂層5と、を備える。
各光透過帯2及び各遮光帯3はルーバー層1の厚さ方向に沿って形成されている。換言すると、光透過帯2と遮光帯3はルーバー層1の幅方向(厚さ方向い直交する方向)において交互に繰り返して設けられている。ルーバー層1において、遮光帯3に挟まれた光透過帯2を通して、ルーバー層1の厚さ方向、すなわち光透過方向制御シート10の厚さ方向に沿って、光が透過する。
【0010】
光透過方向制御シート10において、光透過帯2の屈折率と第一透明樹脂層4の屈折率の差、及び光透過帯2の屈折率と第二透明樹脂層5の屈折率の差は、それぞれ0.1未満である。ここで、各屈折率の差は絶対値である。
【0011】
本発明において、「屈折率」とは、真空に対する当該部材の屈折率であり、絶対屈折率を意味する。この屈折率は、JIS K 7142:2014(ISO489:1999)「プラスチック−屈折率の求め方」のA法に準拠して求められる。
【0012】
光透過帯2の屈折率と第一透明樹脂層4の屈折率の差が0.1未満、好ましくは0.01未満、より好ましくは実質的な差がゼロであることにより、ルーバー層1と第一透明樹脂層4の界面における界面反射が低減し、光透過率が向上する。同様に、光透過帯2の屈折率と第二透明樹脂層5の屈折率の差が0.1未満、好ましくは0.02未満、より好ましくは実質的な差がゼロであることにより、ルーバー層1と第二透明樹脂層5の界面における界面反射が低減し、光透過率が向上する。この結果、光透過方向制御シート10は優れた光透過性を有する。
【0013】
透明樹脂層が設けられずにルーバー層1の表面が露出した場合、その露出面で光の乱反射が生じるので、ルーバー層1を透かしてルーバー層1を構成する光透過帯2と遮光帯3が規則的に配列していることを目視で確認することが難しい。一方、第一透明樹脂層4および第二透明樹脂層5を設けることにより、光透過方向制御シート10を透かして見て、ルーバー層1を構成する光透過帯2と遮光帯3が規則的に配列していることを目視で確認することができる。これにより、品質管理を容易に行うことができる。
【0014】
第一透明樹脂層4の外面(外側に面する表面)4aおよび第二透明樹脂層5の外面5aのうち少なくとも一方の外面の算術平均粗さ(Ra)は、0μm〜3.0μmが好ましく、0.0μm〜0.5μmがより好ましく、0.0μm〜0.2μmがさらに好ましい。
上記範囲であると、当該外面が鏡面仕上げと同等の平滑性を有し、当該外面における光の散乱がより一層抑制される。これにより、第一透明樹脂層4および第二透明樹脂層5を透かして、ルーバー層1を構成する光透過帯2と遮光帯3が規則的に配列していることを目視で確認することがより一層容易になる。つまり、より一層容易に品質管理を行うことができる。さらに、光透過方向制御シート10の光透過性等の光学特性を向上させることができる。
なお、本明細書において、「下限値〜上限値」の数値範囲は、特に他の意味であることを明記しない限り、「下限値以上、上限値以下」の数値範囲を意味する。
【0015】
光透過方向制御シート10の透明性を向上させる観点から、第一透明樹脂層4の外面4aおよび第二透明樹脂層5の外面5aの両方の外面の算術平均粗さ(Ra)が上記の好適な範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明において、「算術平均粗さ(Ra)」は、JIS B 0601:2013(ISO4287:1997)「製品の幾何特性仕様」に準拠して求められる。
【0017】
[光透過帯の材料]
ルーバー層1を構成する光透過帯2の材料は、上記の屈折率の関係を満たすものであれば特に限定されず、例えば、透明性が高い樹脂が好適である。具体的には、ルーバー層1の光透過帯2のみに対して、ルーバー層1の厚さ方向に光を透過させたときの光透過率(光線透過率)が75%以上、好ましくは85%以上であるような、高い透明性を有する樹脂材料が好ましい。例えば、透明性が高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられ、具体例としては、セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。中でもシリコーン樹脂が好ましく、耐熱性の点でシリコーンゴムが特に好ましい。
【0018】
シリコーンゴムとしては、例えば、分子鎖末端がヒドロキシシリル基又はビニルシリル基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンと有機過酸化物とからなる、一般にミラブルゴムと呼ばれるシリコーンゴム組成物;分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサンに、分子中にケイ素原子に結合した水素原子(=SiH結合)を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒を配合した、いわゆる付加反応型のオルガノシリコーンゴム組成物等が挙げられる。
【0019】
[遮光帯の材料]
ルーバー層1を構成する遮光帯3の材料は特に限定されず、例えば、光透過帯2の材料として上記に挙げた樹脂を基材とし、これに顔料や染料等の着色剤を添加してなる着色樹脂が好適である。光透過帯2をなしている樹脂材料と、遮光帯3の基材としての樹脂材料とは同じであってもよく、異なっていてもよいが、光透過帯2と遮光帯3との接着性が良好となり易い観点から、両者の樹脂材料は同じであることが好ましい。
【0020】
遮光帯3の色調は、充分な遮光性が得られればよく、例えば黒、赤、黄、緑、青、水色等が挙げられる。遮光帯3の色調及び遮光性は、着色剤の種類及び添加量によって調整できる。具体的には、ルーバー層1の遮光帯3のみに対して、ルーバー層1の厚さ方向に光を照射したときの光透過率が20%以下、好ましくは5%以下となるような遮光性を有することが好ましい。また、遮光帯の色調は、ルーバー層1を見たときに認識される色調となるので装飾性も考慮して設計することが好ましい。
【0021】
着色剤の具体例としては、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、黄色酸化鉄、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー等の一般的な有機顔料あるいは無機顔料が挙げられる。着色剤は1種でもよく、2種以上を用いてもよい。また黒色顔料を用いない場合は、良好な遮光性を得るために白色顔料を併用することが好ましい。
【0022】
[光透過帯と遮光帯の幅]
光透過帯2と遮光帯3の幅(
図1の横方向の厚さ)は自由に設定される。ルーバー層1の光透過率は、光透過帯2の幅/遮光帯3の幅の比率によって調整することができる。視野角(可視角度)の範囲は、光透過帯2の幅及びルーバー層1の厚さによって調整することができる。
【0023】
覗き見防止と表示画面の良好な視認性とを両立させることを考慮すると、光透過帯2の幅は、100〜200μmが好ましく、120〜150μmがより好ましい。また、遮光帯3の幅は、10〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。上記の範囲に各幅を調整すると、例えば、光透過率80%以上、視野角90〜120°の光透過方向制御シート10が得られる。
【0024】
[透明樹脂層の材料]
第一透明樹脂層4および第二透明樹脂層5の材料は、上記の屈折率の関係を満たすものであれば特に限定されず、例えば、光透過帯2の材料として前述した樹脂が好適である。各透明樹脂層の厚さ方向の光透過率が75%以上である材料が好ましく、85%以上である材料がより好ましい。
【0025】
具体的には、例えば、セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に、シクロオレフィンポリマー)、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。好適なシリコーンゴムとしては前述の光透過帯で例示したものが挙げられる。
上記の中でも、ポリカーボネートやPET(屈折率=1.59〜1.60)等の熱可塑性樹脂よりも空気の屈折率(1.0003)に近く、界面反射による光透過率のロスが少ないシリコーン樹脂(屈折率=1.43)が好ましく、耐熱性の点でシリコーンゴム(屈折率=1.40〜1.43)がより好ましい。透明樹脂層4,5がシリコーンゴムであると、透明樹脂層の外面4a,5aの密着性が著しく向上する(タック感を付与できる)ので、表示画面の表面に透明樹脂層を密着させて、容易に光透過方向制御シート10を設置することができる。
【0026】
各透明樹脂層を構成する樹脂には、必要に応じて、耐候性向上、意匠性向上等の目的で、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤等の樹脂フィルム分野における公知の添加剤が含有されてもよい。
【0027】
第一透明樹脂層4の材料と第二透明樹脂層5の材料は同じであってもよく、異なっていてもよいが、上記の屈折率の関係を満たすことが容易である観点から、同じであることが好ましい。また、同じ観点から、第一透明樹脂層4および第二透明樹脂層5の材料と、ルーバー層1の光透過帯2の材料は同じであることがより好ましい。
【0028】
[各層の厚さ]
ルーバー層1の厚さは、100μm〜5000μmが好ましく、150μm〜1000μmがより好ましく、200μm〜500μmがさらに好ましい。ルーバー層1の厚さが上記範囲であると、視野角(可視角度)の制御が容易になる。
第一透明樹脂層4および第二透明樹脂層5の厚さは、それぞれ独立に、1μm〜100μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましく、10μm〜20μmがさらに好ましい。第一透明樹脂層4および第二透明樹脂層5の厚さがそれぞれ上記範囲であると、光透過方向制御シート10の剛性と薄型化のバランスを取ることができる。
【0029】
ルーバー層1、第一透明樹脂層4および第二透明樹脂5の合計の厚さは、100μm〜5000μmが好ましく、150μm〜1000μmがより好ましく、200μm〜500μmがさらに好ましい。
各層の厚さが上記範囲の下限値以上であると、光透過方向制御シート10の剛性が高まり、情報表示装置の表示画面の近傍に設置する際の操作性が向上するとともに、視野角(可視角度)の制御が容易になる。
各層の厚さが上記範囲の上限値以下であると、光透過方向制御シート10の薄型化が充分に達成され、情報表示装置の内部に組み込むことが容易になる。
【0030】
[任意の透明部材]
第一透明樹脂層4の外面4aおよび第二透明樹脂層5の外面5aの少なくとも一方には、任意の透明層、透明フィルム等の透明部材を設置してもよく、例えば、公知の粘着層、接着層、透明フィルム、保護シート等が挙げられる。
【0031】
前記粘着層の材料としては、例えば、エラストマー系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。前記エラストマー系粘着剤としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンゲル、ウレタンゴム、ウレタンゲル等を含む粘着剤が挙げられる。エラストマー系粘着剤を使用する場合は、その透明性を高めるために公知の鏡面加工を粘着層の表面に施すことが好ましい。
【0032】
光透過方向制御シート10の光学特性を優れたものとする観点から、上記の任意の透明層、透明フィルム等の透明部材の屈折率と、光透過帯2、第一透明樹脂層4、第二透明樹脂層5の各構成材料の屈折率との差は、0.1未満であることが好ましく、0.02未満であることがより好ましく、実質的にはゼロであることが好ましい。
また、光透過方向制御シート10の光学特性を優れたものとし、シート構造をシンプルにする観点から、第一透明樹脂層4および第二透明樹脂層5の外面には他の透明部材が設けられていないことが好ましい。
【0033】
[光透過方向制御シートの製造方法]
光透過方向制御シート10を構成するルーバー層1は、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、光透過帯2の構成材料からなる所望の厚さの第1のシートの複数枚と、遮光帯3の構成材料からなる所望の厚さの第2のシートの複数枚とを交互に積層し、加熱及び加圧して、これら複数のシートが一体化してなるブロック体を形成する。
【0034】
次いで、ブロック体をシート表面に垂直な切断面でスライスすることによりルーバー層1が得られる。スライスする際の厚さ(スライス幅)は、ルーバー層1の厚さに相当する。ブロック体をシート表面に対して傾いた面でスライスすることにより、ルーバー層1の表面と遮光帯3とのなす角度を調整することができる。
【0035】
ルーバー層1と各透明樹脂層4,5とを積層して、一体化させる方法は特に限定されず、公知の手法を適宜用いることができる。
一例として、ルーバー層1の第一面に第一透明樹脂層4を形成する材料を塗布し、硬化することにより、第一透明樹脂層4を形成する方法が挙げられる。同様の方法により、ルーバー層1の第二面に第二透明樹脂層5を形成することができる。
【0036】
ルーバー層1と各透明樹脂層4,5とを積層し、一体化した積層体を所望の形状に成形することにより、光透過方向制御シート10が得られる。光透過方向制御シート10の平面形状は特に限定されず、設置する表示画面の形状に合わせて、矩形、多角形、円形、楕円形等の形状を適宜採用すればよい。
【0037】
[光透過方向制御シートの使用]
情報表示装置の表示画面の近傍において、その表示画面を覆うように光透過方向制御シート10を設置することにより、いわゆる覗き見を防止することができる。設置方法としては、例えば矩形に成形された光透過方向制御シート10の第一透明樹脂層4の外面4a又は第二透明樹脂層5の外面5aを、情報表示装置の表示画面を構成する透明基板に密着させる設置方法が挙げられる。光透過方向制御シート10は、装置の外面に設置されて外部に露出した状態で設置されてもよいし、装置の内部に設置されて外部から認識され難い状態で設置されてもよい。光透過方向制御シート10が情報表示装置の内部に組み込まれている場合、例えば、第一透明樹脂層4の外面4aが装置内部の表示画面を構成する透明基板に密着して固定され、第二透明樹脂層5の外面5aが装置の外面(筐体の一部分)を構成する透明基板に密着して固定されることが好ましい。すなわち、情報表示装置が有する互いに離間して対向する2枚の透明基板の間に、密着して挟まれた状態で、光透過方向制御シート10が設置されることが好ましい。このように設置されると、情報表示装置の2枚の透明基板と、光透過方向制御シート10の透明樹脂層4,5との間に空気層が介在しないため、光透過率の低下を抑制することができる。
【0038】
設置された光透過方向制御シート10の光透過帯2(及び遮光帯3)の延設方向と表示画面枠の辺とは平行であってもよいし、非平行であってもよい。モアレ縞の発生を防ぐために、光透過帯2の延設方向を表示画面枠に対して傾けてもよい(バイアス角度を付けてもよい)。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
図1に示す光透過方向制御シート10を製造した。
まず、光透過帯2の材料として、屈折率が約1.43である透明シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名;KE−153−U)からなる厚さ125μmの第1のシートを用意した。
これとは別に、遮光帯3の材料として、透明シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名:KE−153−U)100質量部に対してカーボンブラックを15質量部添加した材料からなる厚さ10μmの第2のシートを用意した。
第1のシート複数枚と第2のシート複数枚とを交互に積層し、加熱、加硫及び加圧してこれら複数のシートが一体化してなるブロック体を形成した。
【0040】
ブロック体をシート表面に垂直な切断面で、厚さ310μmにスライスすることによりルーバー層1を作製した。
ルーバー層1の表面はスライス加工によって荒れているので、表面で光の乱反射が生じ、曇って見えた。このため、単独のルーバー層1を透かして見ることは難しく、光透過帯2および遮光帯3が規則正しく配列しているか否か、目視で確認することはできなかった。
【0041】
次いで、鏡面加工が施されたPETフィルムの表面に、屈折率が約1.43である液状シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、商品名:KE−1987)を、スクリーン印刷機を使用して約20μmの厚さに塗布し、この塗布面をルーバー層1の第一面に載置し、加熱加硫接着した。その後、PETフィルムを剥離することにより、シリコーンゴムからなる第一透明樹脂層4を形成した。同様の方法で、ルーバー層1の第二面にシリコーンゴムからなる第二透明樹脂層5を形成し、光透過方向制御シート10を得た。
【0042】
PETフィルムを剥離する前の光透過方向制御シート10を透かして目視で観察したところ、ルーバー層1を構成する光透過帯2および遮光帯3が規則正しく配列しており、欠陥の無い良品であることを容易に確認できた。
また、欠陥がある場合には、黒い点または白抜けが不規則に散在することを目視で容易に確認できた。
【0043】
上記PETフィルムを剥離して得た光透過方向制御シート10の各透明樹脂層4,5の外面の算術平均粗さ(Ra)を、表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所製、商品名:SE600)を使用して測定したところ、両面ともにRaは0.1μmであり、鏡面加工を施したPETフィルムの表面と同等の平滑な鏡面であった。
光透過方向制御シート10の光透過性を、ヘーズメーター(日本電飾工業株式会社製、商品名:NDH2000)を使用して測定したところ、全光線透過率は80%、ヘーズは3であった。ここで、ヘーズは、「ヘーズ(%)=Td/Tt×100」の式で求められる。式中、Tdは拡散透過率を表し、Ttは全光線透過率を表す。
光透過方向制御シート10の視野角は、ルーバー層1の光透過帯2及び遮光帯3が延設された長手方向に対して直交する平面において、約65°であった。
【0044】
[実施例2]
粗面加工したPETフィルムを使用した以外は、実施例1と同様に光透過方向制御シート10’を作製した。
【0045】
PETフィルムを剥離する前の光透過方向制御シート10’を透かして目視で観察したところ、ルーバー層1を構成する光透過帯2および遮光帯3が規則正しく配列しており、欠陥の無い良品であることを容易に確認できた。
また、欠陥がある場合には、黒い点または白抜けが不規則に散在することを目視で容易に確認することができた。
【0046】
上記PETフィルムを剥離して得た実施例2の光透過方向制御シート10’の各透明樹脂層4,5の外面の算術平均粗さ(Ra)、光透過性、ヘーズ、視野角を実施例1と同様に測定したところ、Ra=2.6μm、全光線透過率=73%、ヘーズ=41、視野角=約65°であった。実施例1と比べてヘーズ値が高くなっており、全光線透過率が低下していた。
【0047】
[実施例3]
鏡面加工が施されていないPETフィルムを使用した以外は、実施例1と同様に光透過方向制御シート10”を作製した。
【0048】
PETフィルムを剥離する前の光透過方向制御シート10”を透かして目視で観察したところ、ルーバー層1を構成する光透過帯2および遮光帯3が規則正しく配列しており、欠陥の無い良品であることを容易に確認できた。
また、欠陥がある場合には、黒い点または白抜けが不規則に散在することを目視で容易に確認することができた。
【0049】
上記PETフィルムを剥離して得た実施例3の光透過方向制御シート10”の各透明樹脂層4,5の外面の算術平均粗さ(Ra)、光透過性、ヘーズ、視野角を実施例1と同様に測定したところ、Ra=0.2μm、全光線透過率=78%、ヘーズ=6、視野角=約65°であった。
【0050】
[比較例1]
実施例1で作製したルーバー層1の両面に、それぞれ厚さ10μmのエポキシ系接着剤(屈折率:約1.55)を塗布し、各面の接着剤層を介して、外面に鏡面加工を施した厚さ30μmのポリカーボネートフィルム(屈折率:約1.58)をそれぞれ接着した。
以上の工程で、ルーバー層1の両面の各々に接着剤層及びポリカーボネートフィルムを備えた、比較例の光透過方向制御シートを得た。
【0051】
両面にポリカーボネートフィルムを備えた上記光透過方向制御シートを透かして目視で観察したところ、ルーバー層1を構成する光透過帯2および遮光帯3が規則正しく配列しており、欠陥の無い良品であることを容易に確認できた。
また、欠陥がある場合には、黒い点または白抜けが不規則に散在することを目視で容易に確認することができた。
ただし、以下の結果が示すように、実施例1の光透過方向制御シート10と比べると、光学特性が劣っていた。この原因として、ルーバー層1、接着剤層、ポリカーボネートフィルムの各界面において大きな界面反射が生じたことが考えられる。
【0052】
比較例1の光透過方向制御シートの各ポリカーボネートフィルムの外面の算術平均粗さ(Ra)、光透過性、ヘーズ、視野角を実施例1と同様に測定したところ、Ra=0.1μm、全光線透過率=77%、ヘーズ=6、視野角=約65°であった。
実施例1と比べてヘーズ値が高くなっており、全光線透過率が低下していた。
【0053】
[比較例2]
粗面加工したポリカーボネートフィルム(屈折率:約1.58)を使用した以外は、比較例1と同様に光透過方向制御シートを作製した。
【0054】
両面にポリカーボネートフィルムを備えた上記光透過方向制御シートを透かして目視で観察したところ、ルーバー層1を構成する光透過帯2および遮光帯3が規則正しく配列しており、欠陥の無い良品であることを容易に確認できた。
また、欠陥がある場合には、黒い点または白抜けが不規則に散在することを目視で容易に確認することができた。
ただし、表1の結果が示すように、実施例1の光透過方向制御シート10と比べると、光学特性が劣っていた。この原因として、ルーバー層1、接着剤層、ポリカーボネートフィルムの各界面において大きな界面反射が生じたことが考えられる。
【0055】
以下に、実施例1〜3及び比較例1〜2の結果を抜粋して示す。表1中、「屈折率の差」は、実施例においては、光透過帯の屈折率(1.43)と第一透明樹脂層の屈折率(1.43)の差を意味し、比較例においては、光透過帯の屈折率(1.43)とエポキシ系接着剤の屈折率(1.55)の差を意味する。また、「Ra」は、実施例においては、第一透明樹脂層の外面の算術平均粗さを意味し、比較例においては、ポリカーボネートフィルムの外面の算術平均粗さを意味する。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果から、光透過方向制御シートの外面の算術平均粗さRaが低いほど、光学特性が向上することが明らかである。さらに、Raが同じである実施例1と比較例1の結果から、屈折率の差が0.1未満であると、光学特性が向上することが明らかである。
【0058】
以上、具体的な実施例によって本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施例に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。