特許第6751606号(P6751606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6751606アンモニア分解用触媒およびこの触媒を用いた水素含有ガスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751606
(24)【登録日】2020年8月19日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】アンモニア分解用触媒およびこの触媒を用いた水素含有ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20200831BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B01J23/89 M
   C01B3/04 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-131922(P2016-131922)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-1095(P2018-1095A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(74)【代理人】
【識別番号】100149021
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 有佳理
(72)【発明者】
【氏名】堀内 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】進藤 久和
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−240646(JP,A)
【文献】 特開平05−330802(JP,A)
【文献】 特開2010−269965(JP,A)
【文献】 特開2014−181197(JP,A)
【文献】 特開2016−055289(JP,A)
【文献】 特開2010−269239(JP,A)
【文献】 特開2014−111517(JP,A)
【文献】 特開2014−208352(JP,A)
【文献】 特開平08−332490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
B01D 53/86− 53/90
B01D 53/94
B01D 53/96
B01J 21/00− 38/74
C01B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア含有ガス中のアンモニアを分解して水素含有ガスを製造する反応に用いられる触媒であって、
前記触媒は触媒活性成分と耐熱性酸化物を含有し、
前記触媒活性成分が、ルテニウムおよびロジウムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Aと、元素Bとしてコバルトを含み、
前記耐熱性酸化物が、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウムおよびチタンよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Cと希土類元素との複合酸化物を含み、
触媒中の前記触媒活性成分の含有量が、15質量%以上、60質量%以下(金属換算)であることを特徴とするアンモニア分解用触媒。
【請求項2】
触媒中の前記元素Aの含有量が、0.1質量%以上、20質量%以下(金属換算)である請求項1に記載のアンモニア分解用触媒。
【請求項3】
触媒中の前記元素Bの含有量が、10質量%以上、55質量%以下(金属換算)である請求項1または2記載のアンモニア分解用触媒。
【請求項4】
前記希土類元素がセリウムである請求項1〜3のいずれかに記載のアンモニア分解用触媒。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の触媒を用いて、アンモニア含有ガス中のアンモニアを分解し、水素含有ガスを製造することを特徴とする水素含有ガスの製造方法。
【請求項6】
前記アンモニア含有ガスが、さらに酸素を含有する請求項に記載の水素含有ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア含有ガス中のアンモニアを分解して水素含有ガスを製造するための触媒、およびこの触媒を用いた水素含有ガスを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンモニア含有ガス中のアンモニアを分解して、水素含有ガスを生成させ、当該水素含有ガスを燃料電池等の燃料ガスとして用いることが検討されている。これらのアンモニア分解に用いられる触媒としては、例えば、特許文献1には、セリアとアルミナとを含有する複合酸化物からなる担体に、長周期型周期表の8族〜10族に属する金属元素を有するアンモニア分解触媒が開示されている。また、特許文献2には、触媒活性金属が8族の金属、錫、銅、銀、マンガン、クロムおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属を酸化還元可能な金属酸化物からなる担体に担持されたアンモニア酸化・分解触媒が開示されている。
【0003】
本発明者らも、アンモニア含有ガス中のアンモニアを分解して、水素含有ガスを製造するアンモニア分解触媒として、セリアとジルコニアとを含有する複合酸化物と触媒活性成分としてコバルトを含む触媒を特許文献3に開示している。
【0004】
しかし、従来提案されてきた触媒ではアンモニア分解率が十分でなく、製造される水素含有ガスに含まれる残存アンモニア濃度が高いため、例えば、燃料電池の燃料ガスに使用する場合、燃料電池が被毒する等の問題があり、改善の余地があった。また、触媒の耐久性についても検討する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−207783号公報
【特許文献2】特開2010−269239号公報
【特許文献3】特開2012−11373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アンモニア含有ガス中のアンモニアを高転化率で分解して水素含有ガスを得ることができ、耐久性にも優れたアンモニア分解用触媒を提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明のアンモニア分解用触媒は、アンモニア含有ガス中のアンモニアを分解して水素含有ガスを製造する反応に用いられる触媒であって、前記触媒は触媒活性成分と耐熱性酸化物を含有し、前記触媒活性成分として、銅、パラジウム、銀、ルテニウム、ロジウムおよび白金よりなる群から選択される少なくとも1種の元素Aと、鉄、コバルトおよびニッケルよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Bを含み、前記耐熱性酸化物が、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウムおよびチタンよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Cと希土類元素との複合酸化物を含む触媒である。
【0008】
上記アンモニア分解用触媒において、前記元素Aの含有量は、0.1質量%以上、20質量%以下(金属換算)であることが好ましく、前記元素Bの含有量は、10質量%以上、70質量%以下(金属換算)であることが好ましい。
【0009】
また、本発明には、上記の本発明の触媒を用いて、アンモニア含有ガス中のアンモニアを分解し、水素含有ガスを製造する水素含有ガスの製造方法も含まれる。この場合において、前記アンモニア含有ガスが、さらに酸素を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アンモニア含有ガス中のアンモニアを高転化率で分解して水素含有ガスを得ることができ、長期耐久性にも優れたアンモニア分解用触媒を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のアンモニア分解用触媒は、触媒活性成分と耐熱性酸化物を有する。
触媒活性成分には、銅、パラジウム、銀、ルテニウム、ロジウムおよび白金よりなる群から選択される少なくとも1種の元素Aと、鉄、コバルトおよびニッケルよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Bが含まれる。元素Aと元素Bを併用することで、アンモニア分解率が高くなり、アンモニア含有ガス中のアンモニアを高転化率で分解することができる。前記元素Aの中でもルテニウムとロジウムが好ましく、特にロジウムが好ましい。また、前記元素Bの中では、特にコバルトが好ましい。
【0012】
触媒中の前記触媒活性成分の含有量の範囲は、10質量%以上、90質量%以下(金属換算)であることが好ましい。触媒活性成分が10質量%より少ないとアンモニア分解速度が不十分となり、効率的なアンモニア分解および水素含有ガスの製造ができなくなるおそれがある。ただし、触媒活性成分が90質量%を超える場合は、触媒の耐熱性が低くなり、アンモニア分解活性の耐久性が低くなるおそれがある。触媒活性成分の含有量は、15質量%以上、80質量%以下がより好ましく、30質量%以上、60質量%以下がさらに好ましい。
【0013】
本発明のアンモニア分解用触媒中の前記元素Aの含有量の範囲は、0.1質量%以上、20質量%以下(金属換算)であることが好ましい。元素Aの含有量が0.1質量%未満では、アンモニア分解速度が不十分となり、効率的なアンモニア分解および水素含有ガスの製造ができないおそれがある。元素Aの含有量が20質量%を超える場合は、触媒の耐熱性が低くなり、アンモニア分解活性の耐久性が低くなるおそれがある。さらに、前記元素Aは比較的高価な金属元素であるため、触媒のコストが高くなってしまうおそれがある。当該含有量の範囲は、より好ましくは0.2質量%以上、15質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上、5質量%以下である。
【0014】
本発明のアンモニア分解用触媒中の前記元素Bの含有量の範囲は、10質量%以上、70質量%以下(金属換算)であることが好ましい。当該含有量が10質量%未満ではアンモニア分解速度が不十分となり、効率的なアンモニア分解および水素含有ガスの製造ができないおそれがあり、さらに、触媒の耐熱性が低くなり、アンモニア分解活性の耐久性が低くなるおそれがある。当該含有量が70質量%を超える場合にも、触媒の耐熱性が低くなり、アンモニア分解活性の耐久性が低くなるおそれがある。当該含有量の範囲は、より好ましくは15質量%以上、60質量%以下、さらに好ましくは35質量%以上、55質量%以下である。
【0015】
本発明のアンモニア分解用触媒は、触媒活性成分として元素Aおよび元素B以外に、その他の元素を含んでもよく、例えば、クロム、マンガン等が挙げられる。当該その他の元素の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲であれば任意に設定できる。
【0016】
本発明のアンモニア分解用触媒は耐熱性酸化物を含有する。当該耐熱性酸化物は触媒活性成分の担体として働き、触媒活性成分の分散性向上や触媒の機械的強度の向上に寄与する。本発明における当該耐熱性酸化物は、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、チタンよりなる群から選択される少なくとも1種の元素Cと希土類元素との複合酸化物を含有する。前記複合酸化物における前記元素Cの中でも、アルミニウムとジルコニウムが好ましい。前記希土類元素としては、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。前記希土類元素の中でもイットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジムが好ましく、特にセリウムとプラセオジムがさらに好ましい。
【0017】
前記複合酸化物における前記元素Cと希土類元素の含有割合としては、モル比で元素C/希土類元素の範囲が、20/80以上、80/20以下であることが好ましい。元素C/希土類元素が20/80未満では、アンモニア分解用触媒の耐熱性が低くなり、アンモニア分解活性の耐久性が低くなるおそれがあり、元素C/希土類元素が80/20を超えると、アンモニア分解用触媒のアンモニア分解活性が低くなるおそれがある。元素C/希土類元素は、45/55以上、75/25以下であることがより好ましく、45/55以上、65/35以下であることがさらに好ましい。
【0018】
なお、本発明における複合酸化物としては、前記元素Cの酸化物と希土類元素の酸化物が固溶体を形成している場合、前記元素Cの酸化物と希土類元素の酸化物の粒子がナノメートルレベルで分散している場合のいずれかでよい。
【0019】
本発明のアンモニア分解用触媒中の耐熱性酸化物の含有量の範囲は、10質量%以上、89質量%以下であることが好ましい。当該含有量が10質量%未満では、アンモニア分解用触媒の耐熱性が低くなり、アンモニア分解活性の耐久性が低くなるおそれがあり、当該含有量が89質量%を超えると、アンモニア分解用触媒のアンモニア分解活性が低くなるおそれがある。当該含有量の範囲は、より好ましくは20質量%以上、85質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上、60質量%以下である。
【0020】
本発明のアンモニア分解用触媒は、触媒活性成分と耐熱性酸化物以外のその他の成分として、アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物を含んでもよく、例えば、水酸化セシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。当該その他の成分の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲であれば任意に設定できる。
【0021】
本発明に用いられる耐熱性酸化物としての複合酸化物は、例えば、以下の方法により製造することができる。元素Cの化合物および希土類元素の化合物が溶解した水溶液から、希土類元素酸化物の前駆体および元素Cの酸化物前駆体を沈殿物として析出させる方法、あるいは、希土類元素酸化物の前駆体と元素Cの酸化物前駆体を沈殿物として同時に析出させる方法等が挙げられる。
【0022】
元素Cの化合物および希土類元素の化合物としては、一般には硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩等の塩が用いられる。また、塩を溶解する溶媒としては、水やアルコール類が挙げられる。
【0023】
前記前駆体の沈殿物は、前記水溶液にアルカリ性溶液を添加して溶液のpHを調節することによって析出させることができる。前記アルカリ性溶液としては、アンモニア水や、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等が溶解した水溶液またはアルコール溶液が挙げられる。前記前駆体の沈殿物の析出反応を促進させるため、アルカリ性溶液のpHは9以上であることが好ましい。
【0024】
前記前駆体の沈殿物を、焼成することにより複合酸化物が得られる。当該沈殿物の焼成は空気雰囲気下で行うことができる。焼成温度としては300℃以上、800℃以下が好ましい。焼成温度が300℃未満では、得られる複合酸化物が担体としての安定性に欠けるおそれがあり、800℃を超えると複合酸化物の比表面積が低下するおそれがある。
【0025】
本発明のアンモニア分解用触媒は、触媒活性成分と耐熱性酸化物とを、顆粒状、ペレット状、ハニカム状等の形状に成形して製造することができる。必要により成形助剤として澱粉等の有機バインダー、シリカゾルやアルミナゾル等の無機バインダーやガラス繊維等のセラミック繊維を添加することができる。成形助剤は触媒組成物の15質量%以下、好ましくは10質量%以下で添加することが好ましい。
【0026】
また、本発明のアンモニア分解用触媒は、触媒活性成分を耐熱性酸化物に担持することにより製造することもできる。例えば、触媒活性成分の元素の化合物を所定の濃度で含有する溶液に前記耐熱性酸化物を含む担体を浸漬して、所定量の触媒活性成分の元素を含む溶液を前記担体に含浸させ、これを焼成することにより得られる。このとき、前記耐熱性酸化物を含む担体は粉末状でもよいし、顆粒状、ペレット状、ハニカム状等の形状に成形して使用してもよいし、予め、コーティング等により前記耐熱性酸化物を含む担体をコージェライトハニカム基材等の基材に固定化して使用してもよい。また、前記複合酸化物を製造する際に、元素Cの化合物および希土類元素の化合物が溶解した水溶液に、触媒活性成分の元素の化合物を溶解させて、希土類元素酸化物の前駆体および元素Cの酸化物前駆体の沈殿と同時に、触媒活性成分の元素の金属前駆体を沈殿物として析出させ、これを焼成することにより得ることもできる。
【0027】
前記担持方法における焼成は空気雰囲気下で実施することができ、焼成温度としては300℃以上、600℃以下が好ましい。焼成温度が300℃未満では、前記触媒活性成分の元素の化合物が十分に熱分解せず、アンモニア分解活性が低くなるおそれがあり、600℃を超えると担持させた金属元素が粒成長して、触媒のアンモニア分解活性が低下するおそれがある。
【0028】
本発明には、本発明の触媒を用いた水素含有ガスの製造方法も含まれる。原料として用いるアンモニア含有ガスは、アンモニア単独あるいは、アンモニアと他のガスとの混合ガスが挙げられる。前記他のガスとしては、酸素あるいは空気が好ましい。アンモニア分解反応は吸熱反応であるが、アンモニア含有ガス中に酸素が共存すると、アンモニアあるいは水素の燃焼反応が併発する。これらの燃焼反応が吸熱反応の熱エネルギーを補うことで、外部からのエネルギー供給が不要になったり、反応進行が安定したりするため、アンモニア含有ガスは酸素あるいは空気を含むことが好ましいのである。
【0029】
前記アンモニア含有ガス中のアンモニアと酸素の配合比としては、アンモニア1モルに対して酸素の配合範囲が0.05モル以上、0.35モル以下であることが好ましい。当該酸素の配合範囲が0.05モル未満では前記の熱エネルギー供給が不十分となるおそれがあり、0.35モルを超えると燃焼するアンモニアや水素が多くなるため、製造される水素含有ガス中の水素の濃度が低くなるおそれがある。酸素の配合範囲は好ましくは0.1モル以上、0.25モル以下である。また、アンモニア含有ガスには、アンモニアと酸素あるいは空気以外に、例えば窒素、希ガス、二酸化炭素など本発明に係る反応に不活性なガスを含むものでもよい。これらの不活性なガスの配合量は、本発明の効果を妨げない範囲であれば任意に設定できる。
【0030】
本発明においてアンモニア含有ガス中のアンモニアを分解して水素含有ガスを製造する反応の反応温度の範囲は400℃以上、900℃以下が好ましく、より好ましくは500℃以上、800℃以下である。なお、反応温度とはアンモニア含有ガスが流通する触媒層の温度である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
(触媒調製)
(実施例1)
純水564gに、硝酸コバルト六水和物27.6g、ジルコニアゾル(ZrO2換算25質量%濃度)10.6g、硝酸セリウム六水和物9.38gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水268gに水酸化カリウム23.3gを溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。得られた水酸化カリウム水溶液を撹拌しながら、上記金属硝酸塩水溶液を滴下し、懸濁液を得た。得られた懸濁液を吸引ろ過して、さらに水洗を行い、沈殿物を得た。得られた沈殿物を120℃の乾燥機で一晩乾燥させた後、空気雰囲気下、500℃で3時間焼成して、元素Bとしてコバルトがセリア・ジルコニア複合酸化物に担持された触媒aを得た。
【0033】
触媒a100g、純水100g、炭酸セシウム5.0gおよびコロイダルシリカゾル10gを混合し、ボールミル湿式粉砕して触媒スラリーを得た。1平方インチ当たり600セルを有する六角セルコージェライトハニカム基材に、得られた触媒スラリーをウォッシュコート法によってコートし120℃で乾燥させた。得られた乾燥後のハニカム成型体を500℃で1時間焼成し、触媒aがハニカム基材にコートされた触媒を得た。得られた触媒中の触媒aの担持量はハニカム基材1L当たり300gであった。
【0034】
次いで、前記の触媒aがハニカム基材にコートされた触媒に、さらに所定濃度の硝酸ロジウム水溶液を含浸させた後、500℃で3時間焼成して、元素Aとしてのロジウムがハニカム基材1L当たり金属換算で5.0g担持された本発明の触媒(1)を得た。
【0035】
(実施例2)
純水653gに、硝酸コバルト六水和物43.7g、硝酸アルミニウム九水和物0.675g、硝酸セリウム六水和物6.51gおよびジルコニアゾル(ZrO2換算25質量%濃度)7.39gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水183gに水酸化カリウム27.3gを溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。実施例1と同様にして、元素Bとしてのコバルトがアルミナ・セリア・ジルコニア複合酸化物に担持された触媒bを得た。さらに、実施例1と同様にして、触媒bがハニカム基材にコートされた触媒を得て、後は実施例1と同様にして、ロジウムが担持された触媒(2)を得た。
【0036】
(実施例3)
純水607gに、硝酸コバルト六水和物40.7g、硝酸アルミニウム九水和物4.67g、硝酸セリウム六水和物5.50gおよびジルコニアゾル(ZrO2換算25質量%濃度)5.90gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水181gに水酸化カリウム27.0gを溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。実施例1と同様にして、元素Bとしてのコバルトがアルミナ・セリア・ジルコニア複合酸化物に担持された触媒cを得た。さらに、実施例1と同様にして、触媒cがハニカム基材にコートされた触媒を得た。次いで、実施例1と同様にして、ロジウムが担持された触媒(3)を得た。
【0037】
(実施例4)
純水543gに、硝酸コバルト六水和物26.8g、硝酸アルミニウム九水和物4.56g、硝酸セリウム六水和物7.99gおよびジルコニアゾル(ZrO2換算25質量%濃度)9.07gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水270gに水酸化カリウム23.5gを溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。実施例1と同様にして、元素Bとしてのコバルトがアルミナ・セリア・ジルコニア複合酸化物に担持された触媒dを得た。さらに、実施例1と同様にして、触媒dがハニカム基材にコートされた触媒を得た。次いで、実施例1と同様にして、ロジウムが担持された触媒(4)を得た。
【0038】
(実施例5)
実施例2と同様にして、元素Bとしてコバルトがアルミナ・セリア・ジルコニア複合酸化物に担持された触媒bを得た。さらに、実施例1と同様にして、触媒bがハニカム基材にコートされた触媒を得た。次いで、前記の触媒bがハニカム基材にコートされた触媒に、さらに所定濃度の硝酸ルテニウム水溶液を含浸させた後、500℃で3時間焼成して、元素Aとしてのルテニウムがハニカム基材1L当たり金属換算で5.0g担持された触媒(5)を得た。
【0039】
(実施例6)
純水543gに、硝酸コバルト六水和物16.8g、硝酸アルミニウム九水和物4.56g、硝酸セリウム六水和物7.99gおよびジルコニアゾル(ZrO2換算25質量%濃度)9.07gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水270gに水酸化カリウム23.5gを溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。実施例1と同様にして、元素Bとしてのコバルトがアルミナ・セリア・ジルコニア複合酸化物に担持された触媒eを得た。さらに、実施例1と同様にして、触媒eがハニカム基材にコートされた触媒を得た。次いで、実施例1と同様にして、ロジウムが担持された触媒(6)を得た。
【0040】
(比較例1)
純水543gに、硝酸コバルト六水和物26.2g、硝酸セリウム六水和物9.53gおよびジルコニアゾル(ZrO2換算25質量%濃度)10.8gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水247gに水酸化カリウム21.4gを溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。実施例1と同様にして、元素Bとしてのコバルトがセリア・ジルコニア複合酸化物に担持された触媒fを得た。さらに、実施例1と同様にして、触媒fがハニカム基材にコートされた触媒(7)を得た。
【0041】
(比較例2)
純水462gに、硝酸コバルト六水和物23.3g、硝酸アルミニウム九水和物9.68gおよび硝酸セリウム六水和物11.2gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水244gに水酸化カリウム21.2gを溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。実施例1と同様にして、元素Bとしてのコバルトがアルミナ・セリア複合酸化物に担持された触媒gを得た。さらに、実施例1と同様にして、触媒gがハニカム基材にコートされた触媒(8)を得た。
【0042】
(比較例3)
純水462gに、硝酸コバルト六水和物23.3g、硝酸アルミニウム九水和物7.80g、硝酸セリウム六水和物7.95gおよびジルコニアゾル(ZrO2換算25質量%濃度)7.89gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水250gに水酸化カリウム21.8gを溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。実施例1と同様にして、元素Bとしてのコバルトがアルミナ・セリア・ジルコニア複合酸化物に担持された触媒hを得た。さらに、実施例1と同様にして、触媒hがハニカム基材にコートされた触媒(9)を得た。
【0043】
(比較例4)
純水462gに、硝酸コバルト六水和物23.3g、硝酸アルミニウム九水和物7.80gおよびジルコニアゾル(ZrO2換算25質量%濃度)7.89gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水250gに水酸化カリウム21.8gを溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。実施例1と同様にして、元素Bとしてのコバルトがアルミナ・ジルコニア複合酸化物に担持された触媒iを得た。さらに、実施例1と同様にして、触媒iがハニカム基材にコートされた触媒を得た後、さらに実施例1と同様にして、ロジウムがハニカム基材1L当たり金属換算で5.0g担持された触媒(10)を得た。
【0044】
(比較例5)
純水540gに、硝酸アルミニウム九水和物1.80g、硝酸セリウム六水和物25.35gおよびジルコニアゾル(ZrO2換算25質量%濃度)9.48gを溶解して、金属硝酸塩水溶液を調製した。別途、純水260gに水酸化カリウム22.6を溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製した。実施例1と同様にして、アルミナ・セリア・ジルコニア複合酸化物を得た。さらに、実施例1と同様にして、アルミナ・セリア・ジルコニア複合酸化物をハニカム基材にコートし、次いで、実施例1と同様にしてロジウムがハニカム基材1L当たり金属換算で5.0g担持された触媒(11)を調製した。
【0045】
(アンモニア含有ガスの分解反応)
実施例および比較例で得たハニカム基材コートした触媒を30mmφのSUS316製管型反応管に充填し、常圧下、アンモニアと空気を体積比率でアンモニア/空気が1/1.1となるように混合したガスを空間速度28,000h-1で反応管に導入した。電気炉で反応管を加熱し、出口ガス流量を測定および出口ガス成分を分析し、アンモニア転化率(%)を評価した。また、前記反応管へのガス導入を100時間継続して行い、100時間後のアンモニア転化率を評価した。なお、アンモニア転化率(%)は、出口ガス流量とアンモニア燃焼式、アンモニア分解式のマスバランスをもとに下記計算式により求めた。評価結果を表1に示した。
【0046】
アンモニア転化率(%)=100−(((アンモニア供給量−アンモニア燃焼量−アンモニア分解量)/アンモニア供給量)×100)
ここで、アンモニア燃焼量およびアンモニア分解量は下記式で求められる。
アンモニア燃焼量=4/3×(酸素供給量−(ガス流量×ガス中の酸素濃度))
アンモニア分解量=2/3×ガス流量×ガス中の水素濃度
【0047】
また、アンモニア燃焼式、アンモニア分解式は以下のとおりである。
【数1】
【0048】
【数2】
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜6では、触媒活性成分として元素Aと元素Bを含み、さらに耐熱性酸化物として元素Cと希土類元素との複合酸化物を含むことから、アンモニア分解活性が非常に高く、耐久性にも優れることが確認された。一方、比較例1〜3では触媒活性成分として元素Aを含まないために、アンモニア分解活性は比較的低くなること、比較例4では耐熱性酸化物として、元素Cと希土類元素との複合酸化物を含まないために、アンモニア分解活性は比較的低くなること、比較例5では触媒活性成分として元素Bを含まないために、耐久性が低くなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の触媒は、アンモニア含有ガス中のアンモニアを分解して水素含有ガスを効率的に製造することができる。