特許第6751618号(P6751618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751618
(24)【登録日】2020年8月19日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】キャブ用連結構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 24/02 20060101AFI20200831BHJP
   B62D 33/067 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B62D24/02 Z
   B62D33/067 V
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-154311(P2016-154311)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2018-20711(P2018-20711A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】巴 乃昭
(72)【発明者】
【氏名】梅原 努
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第19831329(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B62D 33/067,33/077,33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブとシャシとを連結するキャブ用連結構造であって、
前記シャシは、前記シャシを構成するサイドフレームに連結されて前記キャブを支持するリンク機構を有し、
前記リンク機構は、
前記サイドフレームに固定されて前記キャブに向かって延びるロアブラケットと、
前記ロアブラケットにおける前記キャブ側の端部に固定されるアッパーブラケットと、
前記ロアブラケットよりも前記キャブ側にて、前記アッパーブラケットに対して回転可能に連結されて車両の前後方向に延びるリンク部材と、を備え、
前記ロアブラケットは、前記キャブ側の端部に、前記ロアブラケットにおける他の部位よりも剛性が低い脆弱部を含み、前記車両の前方側から前記車両に加えられた衝撃力により前記脆弱部において前記車両の後方側へ屈曲するように構成されている
キャブ用連結構造。
【請求項2】
前記ロアブラケットは、中空の部材であり、前記車両の前後方向において対向する前壁および後壁と、前記車両の幅方向において対向する第1の側壁および第2の側壁を含み、
前記脆弱部は、前記ロアブラケット内の空間と前記ロアブラケットの後方側の空間とを繋ぐ開口部を含む
請求項1に記載のキャブ用連結構造。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記後壁の一部と前記第1の側壁の一部とが繋がらないように形成された第1の切欠、および、前記後壁の一部と前記第2の側壁の一部とが繋がらないように形成された第2の切欠の少なくとも一方を含む
請求項2に記載のキャブ用連結構造。
【請求項4】
前記後壁における前記キャブ側の端部は、前記第1の側壁および前記第2の側壁における前記キャブ側の端部よりも前記サイドフレーム側に位置し、
前記開口部は、前記第1の側壁、前記第2の側壁、および、前記後壁における前記キャブ側の端部で囲まれた部分であり、
前記脆弱部は、前記第1の切欠および前記第2の切欠を含み、
前記第1の切欠および前記第2の切欠は、前記開口部に連通している
請求項3に記載のキャブ用連結構造。
【請求項5】
前記後壁における前記キャブ側の端部から前記前壁に向かって延びる片をさらに含む
請求項4に記載のキャブ用連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブとシャシとを連結するキャブ用連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブを備えるトラック等の大型車両は、キャブとシャシとを連結するキャブ用連結構造を備える。その一例である特許文献1に記載のキャブ用連結構造は、キャブフレームとシャシとを連結するキャブマウントブラケットを備える。キャブマウントブラケットは、キャブフレームおよびシャシにボルトにより接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−120369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が車両よりも前方側の車両または障害物と衝突し、キャブに車両の前方側からの衝撃力が加えられた場合、キャブマウントブラケットがキャブフレームまたはシャシから外れて、キャブとシャシとが連結された状態が維持されないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、キャブに車両の前方側からの衝撃力が加えられた場合であっても、キャブとシャシとが連結された状態が維持されやすいキャブ用連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するキャブ用連結構造は、キャブとシャシとを連結するキャブ用連結構造であって、前記シャシは、前記シャシを構成するサイドフレームに連結されて前記キャブを支持するリンク機構を有し、前記リンク機構は、前記サイドフレームに固定されて前記キャブに向かって延びるロアブラケットと、前記ロアブラケットにおける前記キャブ側の端部に固定されるアッパーブラケットと、前記アッパーブラケットに対して回転可能に連結されて車両の前後方向に延びるリンク部材と、を備え、前記ロアブラケットは、前記ロアブラケットにおける他の部位よりも剛性が低い脆弱部を含み、前記車両の前方側から前記車両に加えられた衝撃力により前記脆弱部において前記車両の後方側へ屈曲するように構成されている。
【0007】
車両が車両よりも前方側の車両または障害物と衝突し、車両に車両の前方側からの衝撃力が加えられた場合、衝撃力がリンク部材およびアッパーブラケットを介してロアブラケットに伝達される。これによりロアブラケットには、該ロアブラケットを車両の後方側に屈曲させようとする荷重が作用し、脆弱部には、この荷重に基づく応力集中が生じる。そのため、ロアブラケットは、脆弱部において屈曲変形により衝撃力が吸収されることでリンク機構の他の部位に作用する衝撃力が低減される。以上のように、上記キャブ用連結構造によれば、キャブに車両の前方側からの衝撃力が加えられた場合であっても、キャブとシャシとが連結された状態が維持されやすい。
【0008】
上記キャブ用連結構造において、前記ロアブラケットは、中空の部材であり、前記車両の前後方向において対向する前壁および後壁と、前記車両の幅方向において対向する第1の側壁および第2の側壁を含み、前記脆弱部は、前記ロアブラケット内の空間と前記ロアブラケットの後方側の空間とを繋ぐ開口部を含むことが好ましい。
【0009】
上記キャブ用連結構造によれば、ロアブラケットのうちの後壁の剛性が低くなるため、ロアブラケットが脆弱部において屈曲変形しやすくなる。これにより、ロアブラケットの屈曲変形によって衝撃力がより一層吸収されやすい。
【0010】
上記キャブ用連結構造において、前記脆弱部は、前記後壁の一部と前記第1の側壁の一部とが繋がらないように形成された第1の切欠、および、前記後壁の一部と前記第2の側壁の一部とが繋がらないように形成された第2の切欠の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0011】
上記キャブ用連結構造によれば、脆弱部において後壁の一部が第1の側壁および第2の側壁の少なくとも一方から分離しているため、脆弱部の剛性がより低くなる。このため、ロアブラケットに衝撃力が作用したときに、ロアブラケットの屈曲変形が生じやすくなる。このため、衝撃力が一層吸収されやすい。
【0012】
上記キャブ用連結構造において、前記後壁における前記キャブ側の端部は、前記第1の側壁および前記第2の側壁における前記キャブ側の端部よりも前記サイドフレーム側に位置し、前記開口部は、前記第1の側壁、前記第2の側壁、および、前記後壁における前記キャブ側の端部で囲まれた部分であり、前記脆弱部は、前記第1の切欠および前記第2の切欠を含み、前記第1の切欠および前記第2の切欠は、前記開口部に連通していることが好ましい。
【0013】
上記キャブ用連結構造によれば、脆弱部においては、第1の切欠および第2の切欠の付近に応力集中が生じやすくなる。これにより、前記後壁における前記キャブ側の端部付近を起点としてロアブラケットを屈曲変形させることができる。
【0014】
上記キャブ用連結構造において、前記後壁における前記キャブ側の端部から前記前壁に向かって延びる片をさらに含むことが好ましい。
上記キャブ用連結構造によれば、例えば、ロアブラケットとアッパーブラケットとがロアブラケット内から挿通されるボルトによって締結される構成である場合、その締結作業中に作業者が誤ってボルトを落としたとしても、片にボルトが引っかかることがある。このため、中空形状のロアブラケット内にボルトが入りにくくなることから、ロアブラケットとアッパーブラケットとの締結作業中にボルトを紛失しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態のキャブ用連結構造を備える車両の左側の側面図。
図2】ロアブラケットおよびアッパーブラケットの分解斜視図。
図3】ロアブラケットおよびアッパーブラケットの斜視図。
図4】車両と物体とが衝突したときの車両の左側の側面図。
図5】衝撃力によりロアブラケットの第1の連結部が車両の後方側に変位した状態の車両の左側の側面図。
図6】第1の連結部が車両の後方側にさらに変位した状態の車両の左側の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、キャブ用連結構造1の構成について説明する。図1は、車両300の左側のキャブ用連結構造1を示す側面図である。車両300は、右側にもキャブ用連結構造1と同様の構成のキャブ用連結構造を備える。車両300の右側のキャブ用連結構造と、車両300の左側のキャブ用連結構造1とは、車両300に対する位置が相互に異なるものの、構成部材、および、構成部材間での接続の状態が相互に同じである。そのため、以下では、車両300の左側におけるキャブ用連結構造1を説明し、車両300の右側のキャブ用連結構造の説明を省略する。
【0017】
キャブ用連結構造1は、キャブオーバー型の車両300に用いられ、キャブ310とシャシ330とを連結する。シャシ330は、左右一対のサイドフレーム331と、各サイドフレーム331に取り付けられてキャブ310を支持するリンク機構20とを含む。キャブ310は、上記リンク機構20に連結される連結機構10を含む。キャブ用連結構造1は、これらリンク機構20と連結機構10とで構成される。
【0018】
連結機構10は、シャシ330のリンク機構20に連結される第1の連結部材11、および、第1の連結部材11とキャブ310とを連結する第2の連結部材12を備える。
第1の連結部材11は、例えば、鋳物である。第1の連結部材11は、リンク機構20のヒンジブラケット30と第2の連結部材12とに連結される基礎部11A、および、基礎部11Aと繋がり、キャブ310に対して車両300の前方側から入力された力により破断または変形する衝撃吸収部11Bを備える。
【0019】
基礎部11Aの前端部は、ボルト13によりリンク機構20のヒンジブラケット30と連結され、ボルト13は、中心軸が車両300の高さ方向ZBに沿うように設けられている。衝撃吸収部11Bは、ボルト14によりキャブ310のフロント部310Aと連結され、ボルト14は、中心軸が車両300の前後方向ZAに沿うように設けられている。
【0020】
第2の連結部材12は、例えば、板金である。第2の連結部材12は、ボルト15によりキャブ310のフロント部310Aと連結されている。ボルト15は、中心軸が車両300の前後方向ZAに沿うように設けられている。第2の連結部材12は、ボルト16により第1の連結部材11の基礎部11Aと連結され、ボルト16は、中心軸が車両300の高さ方向ZBに沿うように設けられている。
【0021】
また、第2の連結部材12は、ボルト17によりキャブフレーム320に連結され、ボルト17は、中心軸が車両300の幅方向ZC(図2参照)に沿うように設けられている。第2の連結部材12は、ボルト18により、第1の連結部材11の基礎部11Aの後端部と連結されている。ボルト18は、中心軸が車両300の幅方向ZC(図2参照)に沿うように設けられている。
【0022】
リンク機構20は、連結機構10の第1の連結部材11と連結されるヒンジブラケット30、および、サイドフレーム331に取り付けられるサブマウントブラケット40を備える。リンク機構20は、さらに、サイドフレーム331に取り付けられるメインマウントブラケット50、車両300の前後方向ZAに延びるリンク部材60、メインマウントブラケット50に連結されるロアブラケット70、および、リンク部材60とロアブラケット70とを相対回転できるように連結するアッパーブラケット80とを備える。リンク機構20は、さらに、アッパーブラケット80とロアブラケット70とを連結する第1の連結部100と、ロアブラケット70とメインマウントブラケット50とを連結する第2の連結部200とを備える。
【0023】
ヒンジブラケット30は、回転軸31Aに回転可能に連結されている。ヒンジブラケット30は、車両300の前後方向ZAにおいてロアブラケット70よりも車両300の後方に配置されているキャブチルト装置500によりキャブフレーム320が押し上げられたときに回転軸31A回りに回転する。車両300の高さ方向ZBにおいてヒンジブラケット30とサブマウントブラケット40との間には、緩衝装置400が配置されている。
【0024】
サブマウントブラケット40は、車両300の高さ方向ZBに延び、サイドフレーム331と緩衝装置400とを連結している。緩衝装置400は、サブマウントブラケット40に対して回転軸40A回り回転可能に連結されている。サブマウントブラケット40は、複数のボルト2によりサイドフレーム331に取り付けられている。メインマウントブラケット50は、複数のボルト3によりシャシ330に取り付けられている。
【0025】
リンク部材60は、長手方向の一方の前端部61がトーションバー60Aを介して、車両300の右側のキャブ用連結構造が有するリンク部材(図示略)と連結されている。リンク部材60の前端部61よりも車両300の前後方向ZAの後方の部分である中継部62は、回転軸31Aに回転可能に連結されている。リンク部材60の後端部63は、アッパーブラケット80の回転軸81に回転可能に連結されている。
【0026】
図2および図3を参照して、ロアブラケット70、アッパーブラケット80、第1の連結部100、および、第2の連結部200について説明する。
図2および図3に示されるように、ロアブラケット70は、例えば、車両300の高さ方向ZBに延びる中空の部材である。ロアブラケット70は、例えば、リップ溝型形状を有する鋼材で形成されたロアブラケット本体70Bと、ロアブラケット本体70Bに接合されるロア側連結部材111とで構成されている。ロアブラケット本体70Bは、車両300の前後方向ZAにおいて対向する前壁構成部71Fおよび後壁72と、車両300の幅方向ZCにおいて対向する第1の側壁73および第2の側壁74とを有する。ロア側連結部材111は、屈曲形状を有しており、ロアブラケット本体70Bの上部開口を上方から覆うロア側締結部111Aと、ロア側締結部111Aと繋がり、ロアブラケット70の前壁構成部71Fに対向する前壁接合部111Bを有する。ロアブラケット70の前壁71は、ロアブラケット本体70Bの前壁構成部71Fに対してロア側連結部材111の前壁接合部111Bが接合されることにより形成される。
【0027】
ロアブラケット70は、さらに、ロアブラケット70における他の部位よりも剛性が低い部位であって、車両300の前方側から車両300に加えられた衝撃力により応力集中が生じるように構成された脆弱部75を有する。
【0028】
脆弱部75は、ロアブラケット70内の空間とロアブラケット70の車両300の後方側の空間とを繋ぐ開口部75Aを有する。この開口部75Aは、後壁72の一部と第1の側壁73の一部とが繋がらないように形成された第1の切欠75Bと、後壁72の一部と第2の側壁74の一部とが繋がらないように形成された第2の切欠75Cとの間に位置する壁部(後壁72)の一部をロアブラケット本体70B内の空間側へ折り曲げることにより形成される。また、この折り曲げにより、ロアブラケット70には、後壁72から前壁71に向かって延びる片72Aが形成される。この片72Aのうちの車両300の前後方向ZAにおける前方側の端部は、車両300の前後方向ZAにおいて、後壁72よりも前壁71に近い位置に存在している。すなわち、開口部75Aは、第1の側壁73、第2の側壁74、後壁72におけるキャブ310側の端部(片72Aの基端部)、および、ロア側連結部材111のロア側締結部111Aに囲まれている部分である。
【0029】
また、第1の切欠75Bは、片72Aの基端部付近において後壁72の内側へと食い込むような形状を有して後壁72の幅を狭くする第1の拡張切欠75BEを有している。同様に、第2の切欠75Cは、片72Aの基端部付近において後壁72の内側へと食い込むような形状を有して後壁72の幅を狭くする第2の拡張切欠75CEを有している。各拡張切欠75BE,75CEは、開口部75Aに連通している。各切欠75B,75Cが拡張切欠75BE,75CEを有することにより、片72Aの折り曲げを容易に行うことができるとともに、ロアブラケット70を車両300の後方側へと変位させる荷重がロアブラケット70に作用したときに、この拡張切欠75BE,75CE周辺に応力集中が生じやすくなる。
【0030】
車両300の高さ方向ZBにおけるロアブラケット70のサイドフレーム331側の端部は、第2の連結部200によりメインマウントブラケット50と連結されている。第2の連結部200は、ボルト211とロアブラケット本体70Bの第1の側壁73のうちのボルト211が挿通される部分とを含む。また、第2の連結部200は、ボルト212とロアブラケット本体70Bの後壁72のうちのボルト212が挿通される部分とを含む。
【0031】
アッパーブラケット80は、リンク部材60の他方の後端部63を回転可能に支持する回転軸81と、回転軸81を支持する一対の支持板82と、これら一対の支持板82が接合されるアッパー側連結部材112とを有する。アッパー側連結部材112は、屈曲形状を有しており、ロア側連結部材111のロア側締結部111Aに対してキャブ310側から対向するアッパー側締結部112Aと、ロア側連結部材111の前壁接合部111Bに対して前方から対向する前側対向部112Bとを有している。一対の支持板82は、外縁82Aのうちのアッパー側連結部材112に面する部分が、アッパー側連結部材112の表面形状に対応して窪んでいる。アッパーブラケット80は、これら一対の支持板82がアッパー側連結部材112に接合されることにより形成される。
【0032】
リンク機構20は、例えば、サブマウントブラケット40に対して回転軸40A回りに回転可能に緩衝装置400を連結するとともに、メインマウントブラケット50に対してロアブラケット70を連結する。また、アッパーブラケット80に対して回転軸81で回転可能にリンク部材60の後端部63を連結する。そして、このリンク部材60の中継部62とヒンジブラケット30とを回転軸31Aで回転可能に緩衝装置400に連結し、アッパーブラケット80をロアブラケット70にボルト113で連結することにより組み立てられる。第1の連結部100は、ロア側連結部材111のロア側締結部111A、アッパー側連結部材112のアッパー側締結部112A、および、ボルト113で構成される。また、ロアブラケット70の脆弱部75は、ロアブラケット70のうちの第2の連結部200よりも第1の連結部100に近い部分に位置している。
【0033】
図4図6を参照して、キャブ用連結構造1の作用および効果について説明する。
図4に示されるように、リンク機構20において、緩衝装置400はサブマウントブラケット40に対して回転可能に連結され、また、リンク部材60は緩衝装置400およびアッパーブラケット80に対して回転可能に支持されている。そのため、車両300が車両300よりも前方側の物体600と衝突し、車両300に車両300の前方側からの衝撃力が加えられた場合、その衝撃力がリンク部材60およびアッパーブラケット80を介してロアブラケット70に伝達される。なお、物体600は、例えば、車両300の前方に存在する車両の車体の一部である。
【0034】
図5に示されるように、衝撃力がロアブラケット70に伝達されると、ロアブラケット70は、第2の連結部200によってサイドフレーム331側の端部がメインマウントブラケット50に固定されていることから、その衝撃力に抗して車両300の後方側に屈曲する。この際、ロアブラケット70には、脆弱部75、特に第1および第2の拡張切欠75BE,75CE付近に応力集中が生じる。そのため、ロアブラケット70は、第1および第2の拡張切欠75BE,75CE付近を起点として車両300の後方側に屈曲する。
【0035】
こうしたロアブラケット70の屈曲変形の過程において、リンク部材60は、後端部63を回転軸81回りに回転させながら、また、中継部62を回転軸31A回りに回転させながら車両300の後方側へと変位する。また、ボルト2が破断することによりサイドフレーム331に対するサブマウントブラケット40の固定が解除されるとともに、緩衝装置400は、車両300の後方側へと倒れるように回転軸40A回りに回転する。これにより、第1の連結部100が車両300の後方側へと変位する。このようにロアブラケット70に脆弱部75を形成し、該脆弱部75を起点としてロアブラケット70を積極的に変形させることによって衝撃力を吸収することができる。このため、ロアブラケット70の第2の連結部200に大きな衝撃力が伝達されにくくなり、ロアブラケット70とサイドフレーム331との連結、ひいてはリンク機構20とサイドフレーム331との連結が維持されやすくなる。以上のように、キャブ用連結構造1によれば、車両300に車両300の前方側からの衝撃力が加えられた場合であっても、キャブ310とシャシ330とが連結された状態が維持されやすくなる。
【0036】
キャブ用連結構造1によれば、さらに、以下の効果が得られる。
(1)脆弱部75は、開口部75Aを含むため、ロアブラケット70のうちの後壁72の剛性が低くなる。このため、ロアブラケット70が脆弱部75において車両300の後方側へ屈曲変形しやすくなる。これにより、ロアブラケット70の屈曲変形によって衝撃力が一層吸収されやすい。
【0037】
(2)後壁72の片72Aが第1の側壁73および第2の側壁74から分離しているため、脆弱部75の剛性がより低くなる。このため、ロアブラケット70に衝撃力が伝達されたときに、ロアブラケット70の第1の連結部100が車両300の前後方向ZAにおいて後方側により変位しやすい。このため、衝撃力が一層吸収されやすい。また、これら第1の切欠75Bが第1の拡張切欠75BEを有し、第2の切欠75Cが第2の拡張切欠75CEを有している。そのため、これら第1および第2の拡張切欠75BE,75CEがロアブラケット70が屈曲変形する際の起点となりやすい。これにより、ロアブラケット70の屈曲態様を制御しやすくなる。
【0038】
(3)第1の連結部100によりロアブラケット70とアッパーブラケット80とを連結するときに、作業者が誤ってボルト113を落としたとしても、ボルト113が片72Aに引っかかる。このため、ボルト113が中空形状のロアブラケット70内において、第2の連結部200まで落下することが抑制される。
【0039】
(4)脆弱部75は、サイドフレーム331から離れた位置に形成されるため、衝撃力が第2の連結部200から離れた位置で吸収される。このため、第2の連結部200に大きな衝撃力が伝達されにくくなり、ロアブラケット70とサイドフレーム331との連結がより維持されやすくなる。
【0040】
(5)片72Aのうちの車両300の前後方向ZAにおける前方側の端部は、車両300の前後方向ZAにおいて、後壁72よりも前壁71に近い位置に存在しているため、作業者がボルト113を落とした場合であっても、ボルト113が片72Aに一層引っかかりやすい。また、ロアブラケット70が屈曲変形する際に片72Aの先端部に前壁71が当接することにより、その当接部分を支点としてロアブラケット70の前壁71が屈曲変形しやすくなる。これにより、ロアブラケット70の屈曲態様を制御しやすくもなる。
【0041】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・第1の連結部100は、ロアブラケット70とアッパーブラケット80とを連結する部位であり、たとえば、ボルト113を用いることなく、ロアブラケット70とアッパーブラケット80とを直接的に接合した部分とすることもできる。
【0042】
・脆弱部75は、第1の側壁73、第2の側壁74、および、後壁72の少なくとも一部に形成された溝部で構成されてもよいし、後壁72に形成された貫通孔で構成されてもよい。すなわち、脆弱部75は、ロアブラケット70における他の部位よりも剛性が低い構成であればよい。
【0043】
・第1の切欠75Bおよび第2の切欠75Cの少なくとも一方を省略できる。
・脆弱部75は、ロアブラケット70のうちの第1の連結部100よりも第2の連結部200に近い部分に設けるようにしてもよい。
【0044】
・後壁72の片72Aを省略することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1…キャブ用連結構造、10…連結機構、11…第1の連結部材、11A…基礎部、11B…衝撃吸収部、12…第2の連結部材、20…リンク機構、30…ヒンジブラケット、31A…回転軸、40…サブマウントブラケット、50…メインマウントブラケット、60…リンク部材、60A…トーションバー、61…前端部、62…中継部、63…後端部、70…ロアブラケット、70B…ロアブラケット本体、71…前壁、71F…前壁構成部、72…後壁、72A…片、73…第1の側壁、74…第2の側壁、75…脆弱部、75A…開口部、75B…第1の切欠、75BE…第1の拡張切欠、75C…第2の切欠、75CE…第2の拡張切欠、80…アッパーブラケット、81…回転軸、82…支持板、82A…外縁、100…第1の連結部、111…ロア側連結部材、111A…ロア側締結部、111B…前壁接合部、112…アッパー側連結部材、112A…アッパー側締結部、112B…前側対向部、200…第2の連結部、300…車両、310…キャブ、310A…フロント部、320…キャブフレーム、330…シャシ、331…サイドフレーム、400…緩衝装置、500…キャブチルト装置、600…物体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6