特許第6751635号(P6751635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751635
(24)【登録日】2020年8月19日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ラミネート材の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/02 20060101AFI20200831BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20200831BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20200831BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20200831BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B29C63/02
   B29C65/48
   B32B37/12
   B32B15/08 A
   B32B7/12
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-189562(P2016-189562)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-51879(P2018-51879A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】永田 健祐
(72)【発明者】
【氏名】雁瀬 勉
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−205504(JP,A)
【文献】 特開平09−314736(JP,A)
【文献】 特開2002−210830(JP,A)
【文献】 特開2015−228365(JP,A)
【文献】 特開2002−072767(JP,A)
【文献】 特開2001−176460(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0124948(US,A1)
【文献】 実開平6−014966(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−63/48
B29C 65/00−65/82
B32B 1/00−43/00
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の少なくとも片面において、金属箔と樹脂層の合わせ面の一部を除く領域に接着剤を塗布し、接着剤が塗布されない接着剤未塗布部を形成した状態で金属箔と樹脂層とを貼り合わせてラミネート材を作製する貼り合わせ工程と、
前記接着剤未塗布部を合いマークとしてその位置を検知する検知工程と、
検知した合いマークの位置に基づいてラミネート材を加工する加工工程と
を行うことを特徴とするラミネート材の加工方法。
【請求項2】
前記貼り合わせ工程において、周面に凹凸部を有するロールを用いて接着剤を塗布し、凸部形状に対応する接着剤未塗布部分を形成する請求項1に記載のラミネート材の加工方法。
【請求項3】
前記貼り合わせ工程において、金属箔の一方の面に耐熱性樹脂層を貼り合わせるとともに他方の面に熱融着性樹脂層を貼り合わせ、少なくともどちらかの面に合いマークを形成する請求項1または2に記載のラミネート材の加工方法。
【請求項4】
前記検知工程において、合いマークの検知を画像解析によって行う請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【請求項5】
前記加工工程において、検知した合いマークの位置に基づいてその合いマーク上の樹脂層を切除する請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【請求項6】
前記貼り合わせ工程において、合いマーク用接着剤未塗布部とは別の接着剤未塗布部を形成し、
前記加工工程において、検知した合いマークの位置に基づいて前記別の接着剤未塗布部上の樹脂層を切除する請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【請求項7】
前記加工工程において、検知した合いマークの位置に基づいてラミネート材の耳部を切り落とす請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【請求項8】
前記加工工程において、合いマークの位置に基づいてラミネート材に絞り加工を施す請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池やコンデンサのケース、食品や医薬品の包装材に用いられるラミネート材の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品の包装容器、リチウムイオン二次電池やリチウムポリマー二次電池のケースとして、金属箔と樹脂フィルムを貼り合わせたラミネート材が用いられている。
【0003】
前記ラミネート材は、ロールに巻いた長尺の金属箔と樹脂フィルムを巻出しながら連続的に貼り合わせて、貼り合わせたラミネート材をロールに巻取って原反が作製される。貼り合わせたままのラミネート材は幅方向の両端の耳部の品質が乱れていることがあるので、耳部を切り落として所定幅に整えるスリット加工を行ってロールに巻き取られる。そして、ロールに巻かれたラミネート材は、巻出しながら、裁断や絞り加工を施して様々な形状のケースに成形される。
【0004】
また、本出願人は、ラミネート材の樹脂層の一部を除去して金属箔を露出させたラミネート材を電池や食品のケースを提案している(特許文献1参照)。このようなラミネート材では、ケースの作製工程に樹脂層の一部を除去する工程が加わる。
【0005】
ラミネート材の原反からケースを作製するには、スリット加工、裁断、絞り加工、樹脂層の一部除去といった様々な加工が必要であり、これらの加工はラミネート材の決められた位置で行われる。また、ラミネート材をロールから別のロールに巻き取る際にラミネート材が蛇行すると加工位置がずれて加工不良や巻き取り不良が発生するので、蛇行を修正する必要がある。
【0006】
ラミネート材の様々な加工を決められた位置で行うために、ラミネート材に合いマークを印刷し、加工時に合いマークを検出し、検出した合いマークの位置を基準にして加工を行うことがある。また、スリット加工の位置を決める方法としては、ラミネート材の耳部を検出するエッジ検出法や、ラミネート材の端部にラインマークを付与してラインマークを検出するライン検出法がある。また、ラミネート材の蛇行修正方法として、ラミネート材の走行方向に沿って絵柄を繰り返して印刷し、絵柄を認識して位置調整を行う方法がある(特許文献2参照)。この方法によれば、加工したい位置付近に絵柄を設けることで位置制御に優れ、さらに、連続するラインでなく、繰り返しのピッチであれば制御可能であるため、巻方向の位置制御も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−205504号公報
【特許文献2】特許第5851671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、合いマークや絵柄の印刷は工程の増加となる。また、印刷の位置精度が加工の位置精度を左右することになる。
【0009】
また、エッジ検出法やライン検出法では検出装置が端面部分やラインマーカー部から離れると精度が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、工程数を増やすことなくラミネート材に合いマークを形成して位置精度の高い加工を行う加工方法の提供を目的とする。
【0011】
即ち、本発明は下記の[1]〜[8]に記載の構成を有する。
【0012】
[1]金属箔の少なくとも片面において、金属箔と樹脂層の合わせ面の一部を除く領域に接着剤を塗布し、接着剤が塗布されない接着剤未塗布部を形成した状態で金属箔と樹脂層とを貼り合わせてラミネート材を作製する貼り合わせ工程と、
前記接着剤未塗布部を合いマークとしてその位置を検知する検知工程と、
検知した合いマークの位置に基づいてラミネート材を加工する加工工程と
を行うことを特徴とするラミネート材の加工方法。
【0013】
[2]前記貼り合わせ工程において、周面に凹凸部を有するロールを用いて接着剤を塗布し、凸部形状に対応する接着剤未塗布部分を形成する前項1に記載のラミネート材の加工方法。
【0014】
[3]前記貼り合わせ工程において、金属箔の一方の面に耐熱性樹脂層を貼り合わせるとともに他方の面に熱融着性樹脂層を貼り合わせ、少なくともどちらかの面に合いマークを形成する形成する前項1または2に記載のラミネート材の加工方法。
【0015】
[4]前記検知工程において、合いマークの検知を画像解析によって行う前項1〜3のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【0016】
[5]前記加工工程において、検知した合いマークの位置に基づいてその合いマーク上の樹脂層を切除する前項1〜4のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【0017】
[6]前記貼り合わせ工程において、合いマーク用接着剤未塗布部とは別の接着剤未塗布部を形成し、
前記加工工程において、検知した合いマークの位置に基づいて前記別の接着剤未塗布部上の樹脂層を切除する1〜4のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【0018】
[7]前記加工工程において、検知した合いマークの位置に基づいてラミネート材の耳部を切り落とす前項1〜6ののうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【0019】
[8]前記加工工程において、合いマークの位置に基づいてラミネート材に絞り加工を施す前項1〜6のうちのいずれか1項に記載のラミネート材の加工方法。
【発明の効果】
【0020】
上記[1]に記載のラミネート材の加工方法によれば、検知した合いマークの位置に基づいて加工の位置決めを行うので正確な位置で加工を行うことができる。また、前記合いマークである接着剤未塗布部は金属箔と樹脂層の貼り合わせ工程で形成するので、合いマークを形成する別の工程を追加する必要がない。
【0021】
上記[2]に記載のラミネート材の加工方法によれば、接着剤未塗布部である合いマークを容易に形成できる。
【0022】
上記[3]に記載のラミネート材の加工方法によれば、ヒートシールによって密封するケースに適したラミネート材の加工において[1][2]の効果を奏することができる。
【0023】
上記[4]に記載のラミネート材の加工方法によれば、高い精度で合いマークを検知することができる。
【0024】
上記[5]に記載のラミネート材の加工方法によれば、合いマーク上の樹脂層を切除することによって金属箔が露出する金属露出部を形成できる。また、金属露出部形成用の接着剤未塗布部を合いマーク用の接着剤未塗布部として利用するので、合いマーク専用の接着剤未塗布部を形成するスペースが不要となりラミネート材を無駄なく利用できる。
【0025】
上記[6]に記載のラミネート材の加工方法によれば、検知した合いマークの位置に基づいて別の接着剤未塗布部上の樹脂層を切除することによって金属箔が露出する金属露出部を形成できる。
【0026】
上記[7]に記載のラミネート材の加工方法によれば、検知した合いマークの位置に基づいてラミネート材の耳部を切断することができる。
【0027】
上記[8]に記載のラミネート材の加工方法によれば、検知した合いマークの位置に基づいてラミネート材に絞り加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本発明の加工方法を適用するラミネート材の平面図である。
図1B図1Aの1B−1B線断面図である。
図2】本発明の加工方法を適用する他のラミネート材の断面図である。
図3】検知工程および加工工程の一例を模式的に示す説明図である。
図4】検知工程および加工工程の他の例を模式的に示す説明図である。
図5】本発明の方法で加工した蓄電デバイスのケースの斜視図である。
図6】実施例のラミネート材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[ラミネート材]
図1A図2に、本発明の方法を適用する2種類のラミネート材1、2を示す。前記ラミネート材1、2はヒートシールによって密封するケース、例えばリチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスのケースの材料として用いられるものであり、加工位置を認識するための基準点として合いマークを有している。
【0030】
図1Aにおいて、図面の左右方向がラミネート材1の長さ方向を表し、ロールへの巻取りおよびロールからの巻出し時にラミネート材1が移動する方向を表している。図2において、図面の左右方向がラミネート材2の幅方向を表している。
【0031】
図1Aおよび図1Bに示すように、前記ラミネート材1は、金属箔11の一方の面に第1接着剤層12を介してケースの外側層となる耐熱性樹脂層13が積層されるとともに、前記金属箔層11の他方の面に第2接着剤層14を介してケースの内側層となる熱融着性樹脂層15が積層され、金属箔11両面に樹脂層13、15が積層されている。前記第1接着剤層12には、ラミネート材1の長さ方向において、接着剤が塗布されていない大小の接着剤未塗布部12a、12bが交互に形成されている。前記小さい接着剤未塗布部12aは合いマークとして用いられ、大きい接着剤未塗布部12bは後の工程で耐熱性樹脂層13が除去されて金属露出部23となる部分である。前記第2接着剤層14には、ラミネート材1の長さ方向において、接着剤が塗布されていない大小の接着剤未塗布部14a、14bが交互に形成されている。前記小さい接着剤未塗布部14aは合いマークとして用いられ、大きい接着剤未塗布部14bは後の工程で熱融着性樹脂層15が除去されて金属露出部24となる部分である。
【0032】
図2のラミネート材2は、前記ラミネート材1と同じく、金属箔11の一方の面に第1接着剤12および耐熱性樹脂層13が積層され、他方の面に第2接着剤層14および熱融着性樹脂層15が積層されているが、前記耐熱性樹脂層13側の第1接着剤層12にのみ接着剤未塗布部12aを有している。前記接着剤未塗布部12aはラミネート材2の幅方向の両端の近傍に長さ方向に沿って形成され、合いマークとして用いられる。前記ラミネート材2は金属露出部用の接着剤未塗布部を有さない。
【0033】
図示例のラミネート材1、2は金属箔11の両面に樹脂層が貼り合わされているが、本発明の方法は金属箔の片面のみに樹脂層を貼り合わせたラミネート材にも適用できる。また、ラミネート材2のように、合いマーク用の接着剤未塗布部12aのみを有し、金属露出部用の接着剤未塗布部を有さないラミネート材も本発明の適用対象である。
【0034】
以下の説明において、合いマークの符号として接着剤未塗布部12a、14aと同じ符号を用いる。
【0035】
前記合いマーク12a、14aは金属箔11上に第1接着剤層12または第2接着剤層14を介することなく耐熱性樹脂層13または熱融着性樹脂層15が積層されているので、周囲の第1接着剤層12または第2接着剤層14が存在する部分とは色調や光沢が異なっている。このため、例えばラミネート材1、2に光を照射してラミネート材1、2を撮影し、その画像を解析することによって高い精度で合いマーク12a、14aを検知することができる。また、画像解析においては、合いマーク12a、14aと周囲の接着剤塗布部分とのコントラストを強めることによってなお一層検知精度を高めることができる。
【0036】
前記合いマークの検知手段は画像解析に限定されず、光電式センサ等で検知することもできる。
【0037】
また、金属露出部用の接着剤未塗布部を有するラミネート材においては、金属露出部用の接着剤未塗布部自体を合いマークとして利用することもできる。金属露出部用の接着剤未塗布部を合いマークとして兼用すると、合いマーク専用の接着剤未塗布部を形成するスペースが不要となりラミネート材1、2を無駄なく利用できる。
【0038】
[貼り合わせ工程(ラミネート材の作製)]
図1Aおよび図1Bのラミネート材1は、例えば下記の方法で作製することができる。
【0039】
金属箔11と耐熱性樹脂層13の合わせ面の一方に、グラビアロール等のロールを用いて第1接着剤層12となる接着剤を塗布する。前記ロールの表面には凹凸が形成されており、凹部に付着させた接着剤を金属箔11または耐熱性樹脂層13に転写すると、凸部に対応する部分に接着剤未塗布部12a、12bが形成されて、接着剤未塗布部12a、12bを有する第1接着剤層12が形成される。そして、前記第1接着剤層12を介して金属箔11と耐熱性樹脂層13を貼り合わせる。金属箔11と熱融着性樹脂層15も同じ手法で貼り合わせて、接着剤未塗布部14a、14bを有する第2接着剤層14を形成する。
【0040】
また、図2のラミネート材2は上記と同じ手法で金属箔11と耐熱性樹脂層13を貼り合わせて第1接着剤層12に接着剤未塗布部12aを形成し、金属箔11と熱融着性樹脂層15をベタ塗りした第2接着接着剤層14によって貼り合わせる。
【0041】
ラミネート材の作製において、金属箔と樹脂層の貼り合わせは必須の工程であり、必須の工程で合いマークを形成できる。合いマークを形成するために印刷のような別の工程を追加する必要がない。また、接着剤塗布用ロールとして、表面に凹凸を有し、凸部を接着剤未塗布部に対応させることで容易に合いマークを形成できる。さらに、金属露出部用の接着剤未塗布部12b、14bを有するラミネート材1では、ロールの表面に合いマーク12a、14aに対応する凸部と金属露出部23、24用の接着剤未塗布部12b、14bに対応する凸部を形成することで、一つのロールの回転で合いマーク12a、14bと接着剤未塗布部12b、14bが形成される。このため、合いマーク12a、14bと接着剤未塗布部12b、14bの位置ずれが起こらず所期する位置で正確に加工できる。
【0042】
前記金属露出部23、24用の接着剤未塗布部12b、14bを有するラミネート材においては、金属露出部23、24用の接着剤未塗布部12b、14bを合いマークとして利用することもできる。合いマーク専用の接着剤未塗布部を形成しないラミネート材では合いマーク形成用のスペースが不要であるから、ラミネート材をケースに加工する際に切除する部分を減らすことができる。また、前記金属露出部23、24は耐熱性樹脂層13および熱融着性樹脂層15の存在する部分とは光沢や色調が異なるので、金属露出部23、24をその後の加工における合いマークに利用することもできる。
【0043】
また、前記合いマーク専用の接着剤未塗布部は必ずしも切除する必要はなく、ラミネート材を加工したケースの品質を低下させない合いマークは残してもよい。
【0044】
前記合いマークの形状や位置に規定はなく、ラミネート材に施す加工に応じた位置に加工に応じた形状の合いマークを形成する。
【0045】
[検知工程および加工工程]
(樹脂層の切除)
図3は、前記ラミネート材1の熱融着性樹脂層15側の面における、合いマーク14aの検知と、検知に基づいて行う接着剤未塗布部14b上の熱融着性樹脂層15の切断を模式的に示している。
【0046】
ラミネート材1は熱融着性樹脂層15を外側にして巻出しロール100に巻かれており、巻出しロール100から巻出して巻取りロール101に巻き取るまでの移動中に、合いマーク14aの検知と接着剤未塗布部14b上の熱融着性樹脂層15の切断を行う。
【0047】
前記熱融着性樹脂層15側の上方には、前記巻出しロール100側に合いマーク14aの検知装置102が配置され、検知装置102よりも巻取りロール101側に寄った位置にレーザー切断装置103が配置されている。前記耐熱性樹脂層13側には耐熱性樹脂層13に接触してラミネート材1の速度を検知するエンコーダ104が配置されている。また、合いマーク14aおよび接着剤未塗布部14bの寸法、およびこれらの位置関係等の情報はあらかじめ図外の制御装置に入力されている。
【0048】
巻出ロール100から巻出されてくるラミネート材1に対し、検知装置102が合いマーク14aを検知すると、エンコーダ104から得たラミネート材1の移動速度および入力された情報に基づいてレーザー切断装置103によるレーザー照射位置を設定し、接着剤未塗布部14bがレーザー切断装置103に到達すると、接着剤未塗布部14bの周縁に沿ってにレーザーを照射して接着剤未塗布部14b上の熱融着性樹脂層15を切断する。レーザー照射位置は合いマーク14aの位置に基づいて決定されるので正確な位置で熱融着性樹脂層15を切断できる。
【0049】
切断した熱融着性樹脂層15の断片を取り除くことにより金属箔11が露出して金属露出部24が形成される。熱融着性樹脂層15の切断片の除去は、レーザー切断装置103と巻取りロール101との間で切断に続いて行うことも、巻取りロール101に巻き取った後再び巻出しながら行うこともできる。断片の除去は、熱融着性樹脂層15に粘着性シートを貼り付け、断片とともに剥がす、といった簡単な方法で行える。
【0050】
前記ラミネート材1の耐熱性樹脂層13側の面における合いマーク12aの検知と接着剤未塗布部12b上の耐熱性樹脂層13の切断も同じ方法で行い、金属露出部23を形成する。各面の処理は、両面で同時に行うことも、片面ずつ順次行うこともできる。
【0051】
(スリット加工)
図4は、ラミネート材2の耳部のスリット加工を模式的に示している。
【0052】
ラミネート材2は耐熱性樹脂層13を外側にして巻出しロール100に巻かれており、巻出しロール100から巻出して巻取りロール101に巻き取るまでの移動中に、合いマーク12aの検知と両耳部のスリット加工とを連続して行う。
【0053】
前記耐熱性樹脂層13側の上方には、前記巻出しロール100側の左右に合いマーク12aの検知装置102が配置され、検知装置102よりも巻取りロール101側に寄った位置の左右に切断装置105が配置されている。2台の切断装置105の間隔は2つの合いマーク12aの間隔に対応して配置されている。前記熱融着性樹脂層15側には熱融着性樹脂層15に接触してラミネート材2の幅方向の位置を修正する蛇行制御装置106が配置されている。合いマーク12aの寸法および位置、切断装置の位置等の情報はあらかじめ図外の制御装置に入力されている。
【0054】
巻出ロール100から巻出されてくるラミネート材2に対し、検知装置102が左右の合いマーク12aを検知し、それらの位置情報に基づいてラミネート材2が左右方向にずれていると判定すると、蛇行制御装置106によりラミネート材2の幅方向の位置を修正し、設定された位置でスリット加工を行う。ラミネート材2にずれが無いと判定すると蛇行制御装置106により位置調整することなくラミネート材2は送られる。このように、ラミネート材2の蛇行が修正された上でスリット加工がなされるので、所定位置で切り揃えられたラミネート材2が巻きずれることなく巻取りロール101に巻き取られる。
【0055】
なお、図示例のスリット加工は合いマーク12aの位置で耳部を裁断しているが、両者を一致させる必要はない。合いマーク12aの外側で裁断して合いマーク12aを残しておけば、その後の加工工程で合いマーク12aを利用することができる。また、スリット加工用の合いマークは必ずしも連続したラインである必要はなく、ラミネート材の長さ方向に断続的に形成された合いマークであってもよい。
【0056】
前記接着剤未塗布部上の樹脂層の切断には、レーザーを照射するレーザー刃が好ましい。樹脂層の吸収波長に合わせたレーザー種を用い、出力を調節することで金属箔に影響を与えずに樹脂層のみを切断することができる。例えば、ポリオレフィンフィルムに対してはCOレーザーが適している。レーザーの照射位置は、レーザーヘッドの走査、ガルバノスキャナーによる走査等によって制御することができる。また、スリット加工はラミネート材の裁断であるから、レザー刃、シャー刃、ギャング刃などの物理刃を用いた切断装置、レーザーなどによる電子線照射による切断装置を用いることができる。
【0057】
図3および図4に示した例では合いマークの検出と加工とを同じ面側を行っているが、検出と加工を異なる面から行うこともできる。従って、ラミネート材の両面に加工する場合でも合いマークを一方の面のみ形成する場合がある。また、合いマーク12a、14aは加工後の製品の品質に悪影響を及ぼさない限り、残っていても支障はない。
【0058】
加工工程で行う加工の種類は限定されない。上記の接着剤未塗布部上の樹脂層の切除、スリット加工の他、絞り加工、長尺材からケースサイズの小片への裁断、2枚のラミネート材を合わせて行うヒートシール加工や製袋加工等を行う際の位置決めの基準点として合いマークを利用することができる。また、加工ごとに専用の合いマークを形成することも、一つの合いマークを複数の加工に適用することもできる。
【0059】
例えば、図5の蓄電デバイスのケース30は、平面視長方形の凹部41を有する本体40と、フラットシートの蓋体50とからなり、それぞれが図1Aおよび1Bのラミネート1の接着剤未塗工部12b、14b上の耐熱性樹脂層13および熱融着性樹脂層15を切除して金属露出部23、24を形成する加工が施されている。前記外装体ケース30は、本体40の凹部41に蓋体50を被せることにより閉鎖される空間が電池要素を収納する電池要素室となる。
【0060】
原反のラミネート材1から本体40を作製するには、接着剤未塗布部12b、14b上の耐熱性樹脂層13および熱融着性樹脂層15を切断する加工、切除した樹脂層の断片を除去して金属露出部23、24を形成する後処理、前記金属露出部24が凹部41の内側となるように成形する絞り加工、凹部41の開口縁の周りを所定寸法に裁断する加工を行う。これらの加工のうち、接着剤未塗布部12b、14b上の耐熱性樹脂層13および熱融着性樹脂層15を切断する加工、絞り加工および絞り加工後の裁断加工に、マーク12a、14aの位置情報を利用する本発明の加工方法を適用できる。また、原反のラミネート材1から蓋体50を作製するには、接着剤未塗布部12b、14b上の耐熱性樹脂層13および熱融着性樹脂層15を切断する加工および所定寸法に裁断する加工を行う。これらの加工に本発明の加工方法を適用する。
【0061】
前記ケース30を用いた蓄電デバイスでは、電池要素室内において本体40および蓋体50の金属露出部24のそれぞれに電池要素の正極と負極を導通させ、電池要素室の周囲をヒートシールをして電池要素を密封する。そして、電気の授受をケース30の外面に露出する本体30および蓋体40のそれぞれの金属露出部23を通じて行う。前記ケース30を用いた蓄電デバイスは電池要素の接続されたタブリードをケース外に引き出す必要がない。
【0062】
[ラミネート材の材料]
本発明はラミネート材を構成する各層の材料を限定するものではなく、ラミネート材の用途に応じて適宜選択する。以下は、電池ケースの好ましい材料の例である。
【0063】
金属箔11として、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔、銅箔、チタン箔、これらの金属のクラッド箔を例示でき、さらにはこれらの金属箔にめっきを施しためっき箔を例示できる。また、これらの金属箔に化成皮膜を形成することも好ましい。金属箔11の厚さは7μm〜150μmが好ましい。
【0064】
耐熱性樹脂層13を構成する耐熱性樹脂としては、ラミネート材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層15を構成する熱可塑性樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する熱可塑性樹脂を用いるのが好ましく、熱可塑性樹脂の融点より20℃以上高い融点を有する熱可塑性樹脂を用いるのが特に好ましい。例えば、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、成形性および強度の点で、二軸延伸ポリアミドフィルムまたは二軸延伸ポリエステルフィルム、あるいはこれらを含む複層フィルムが特に好ましく、さらに二軸延伸ポリアミドフィルムと二軸延伸ポリエステルフィルムとが貼り合わされた複層フィルムを用いることが好ましい。前記ポリアミドフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6−ポリアミドフィルム、6,6−ポリアミドフィルム、MXDポリアミドフィルム等が挙げられる。また、二軸延伸ポリエステルフィルムとしては、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が挙げられる。また、耐熱性樹脂層13は、単層で形成されていても良いし、あるいは、例えばPETフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層で形成されていても良い。また、厚さは9μm〜50μmの範囲が好ましい。
【0065】
熱融着性樹脂層15を構成する熱可塑性樹脂としては、耐薬品性および熱封止性の点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーで構成されるのが好ましい。また、オレフィン系共重合体として、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、EAA(エチレン・アクリル酸共重合体)、EMAA(エチレン・メタアクリル酸共重合体)を例示できる。また、ポリアミドフィルム(例えば12ナイロン)やポリイミドフィルムも使用できる。また、厚さは20μm〜80μmの範囲が好ましい。
【0066】
耐熱性樹脂層13側の第1接着剤12としては、例えば、主剤としてのポリエステル樹脂と硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステル−ウレタン系樹脂、あるいはポリエーテル−ウレタン系樹脂を含む接着剤を用いることが好ましい。一方、熱融着性樹脂層15側の第2接着剤14としては、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等により形成された接着剤が挙げられる。
【実施例】
【0067】
下記の材料を用いて図6に示すラミネート材3を作製した。
【0068】
金属箔層11:厚さ40μmの軟質アルミニウム箔(JIS H4160 A8079H)の片面に厚さ1μmの錫めっき皮膜を形成したもの
耐熱性樹脂層13:厚さ25μmの延伸ナイロンフィルム
熱融着性樹脂層15:厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム
第1接着剤層12:二液硬化型ポリエステル-ウレタン系接着剤
第2接着剤層14:二液硬化型酸変性ポリプロピレン系接着剤
【0069】
前記ラミネート材3は、金属箔11の一方の面に第1接着剤層12を介して耐熱性樹脂層13が貼り合わされ、他方の面に第2接着剤層を介して熱融着性樹脂層15が貼り合わされ、第2接着剤層14において、3種類の接着剤未塗布部14a−1、14a−2、14bが形成されている。前記接着剤未塗布部14bは50mm×50mmの正方形の金属露出部形成用であり、ラミネート材3の幅方向の中心に長さ方向に沿って繰り返し形成されている。前記接着剤未塗布部14a−1は幅3mmのスリット加工用のライン状合いマークであり、ラミネート材3の幅方向の中心線Lから左右に45mm離れた位置に中心線Lに平行してラミネート材3の長さ方向に全体に形成されている。前記接着剤未塗布部14a−2は前記接着剤未塗布部14b上の熱融着性樹脂層15を切断するための5mm×100mmの長方形の合いマークであり、接着剤未塗布部14bの端から30mm離れた位置に接着剤未塗布部14bと平行に形成されている。前記接着剤未塗布部14a−2は絞り加工の合いマークとしても利用される。
【0070】
(貼り合わせ)
前記接着剤未塗布部14a−1、14a−2、14bは、金属箔11と熱融着性樹脂層15との貼り合わせ工程において、接着剤を塗布するロールとしてこれらの形状と位置に対応する凸部を有するグラビアロールを用いて形成したものであり、金属箔11と熱融着性樹脂層15の貼り合わせと接着剤未塗布部14a−1、14a−2、14bの形成を同一工程で行った。一方、前記金属箔11と耐熱性樹脂層13は全面に接着剤を塗布し、第1接着剤層12によって前記金属箔11と耐熱性樹脂層13を貼り合わせた。貼り合わせ工程を終えたラミネート材3はロールに巻いた状態で養生した。
【0071】
(スリット加工)
前記ラミネート材3を、図4に参照される検知装置102、切断装置105、蛇行制御装置106を用いてロールに巻取りながら両耳部のスリット加工を行った。
【0072】
検知装置102は株式会社ニレコ製DPC(登録商標)であり、256諧調のうち、該当部分的のゲインを強調する設定とした。切断装置105はCOレーザー切断装置である。
【0073】
ラミネート材3は、2台の検知装置102で合いマーク(接着未塗布部)14a−1を検知し、検知した合いマーク14a−1の位置に基づいて蛇行修正装置106で幅方向の位置を修正し、2台の切断装置105で合いマーク14a−1の端部を切断し、ロールに巻き取った。
【0074】
(樹脂層の切断)
スリット加工を行ったラミネート材3を、図3に参照される検知装置102(株式会社ニレコ製DPC(登録商標))、エンコーダ104、レーザー切断装置103を用いて、ロールに巻取りながら、接着剤未塗布部14b上の熱融着性樹脂層15を切断した。
【0075】
ラミネート材3は、検知装置102で合いマーク(接着剤未塗布部)14a−2を検知し、エンコーダ104でラミネート材3の速度を検知してレーザー切断装置103によるレーザー照射位置を設定し、接着剤未塗布部14b上の熱融着性樹脂層15を切断した。切断した熱融着性樹脂層15の断片を除去して50mm×50mmの金属露出部を形成した。
【0076】
(絞り加工)
金属露出部を形成したラミネート材に対し、絞り加工により凹部を形成した。
【0077】
張り出し加工は、縦100mm×横100mm、コーナーR:2mmのポリテトラフルオロエチレン製パンチと、縦100.5mm×横100.5mm、コーナR:2.25mmのダイスとからなる成形高さフリーのストレート金型を用い、内側の熱融着性樹脂層15がパンチと接触させる態様で絞り加工を行い、側壁の高さ(成形深さ)が4mmの凹部を形成した。この成形において、合いマーク(接着剤未塗布部)14a−2を検知して前記パンチの中心が金属露出部の中心に一致するようにラミネート外装材の位置取りを行い、凹部の底壁の外面中央に金属露出部が形成されるようにした。張り出し成形後のラミネート材は、凹部の開口縁に幅10mmのフランジを残して切断した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、電池やコンデンサのケース等用いられるラミネート材の加工に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3…ラミネート材
11…金属箔
12…第1接着剤層
12a、14a、14a−1、14a−2…接着剤未塗布部(合いマーク)
12b、14b…接着剤未塗布部
13…耐熱性樹脂層
14…第2接着剤層
15…熱融着性樹脂層
100…巻出しロール
101…巻取りロール
102…検知装置
103…レーザー切断装置
104…エンコーダ
105…切断装置
106…蛇行制御装置
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6