特許第6751645号(P6751645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751645
(24)【登録日】2020年8月19日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】渦電流探傷システム及び渦電流探傷方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   G01N27/90
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-205786(P2016-205786)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-66671(P2018-66671A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成重 将史
(72)【発明者】
【氏名】三木 将裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 功
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−226884(JP,A)
【文献】 特開2009−019909(JP,A)
【文献】 特開平05−133940(JP,A)
【文献】 特開2000−235019(JP,A)
【文献】 特開平08−334498(JP,A)
【文献】 特開2013−242223(JP,A)
【文献】 特開2009−074943(JP,A)
【文献】 特開2013−156088(JP,A)
【文献】 特開2015−081815(JP,A)
【文献】 特開2015−194420(JP,A)
【文献】 特開2015−194419(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0177191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72 − G01N 27/90
G21C 17/00 − G21C 17/003
G21C 17/013
G21C 17/02
G21C 17/025
G21C 17/032 − G21C 17/10
G21C 17/108
G21C 17/12 − G21C 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1列に配列された複数の第1コイルと、前記第1列に対して平行な第2列に配列された複数の第2コイルとを有し、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルが千鳥配置され、隣り合う2つの第1コイルの中心のそれぞれとこれらに最も近い第2コイルの中心とを結ぶ2つの直線がなす挟角が60度未満となるように設定された探傷プローブと、
前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルのうちのいずれか2つを励磁コイルとして選択し且ついずれか1つを検出コイルとして選択して、前記2つの励磁コイル及び前記1つの検出コイルを制御する渦電流探傷装置と、を備えた渦電流探傷システムであって、
前記渦電流探傷装置は、
1つの第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある2つの第1コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを同相励磁する第1の探傷モードと、
前記第1の探傷モードと同じ第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある2つの第1コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを逆相励磁する第2の探傷モードと、
前記第1の探傷モードと同じ第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある1つの第1コイル及び1つの第2コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを同相励磁する第3の探傷モードと、
前記第1の探傷モードと同じ第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある1つの第1コイル及び1つの第2コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを逆相励磁する第4の探傷モードとを実行することを特徴とする渦電流探傷システム。
【請求項2】
請求項1に記載の渦電流探傷システムにおいて、
前記探傷プローブは、可撓性の基板を有し、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルが前記基板上に千鳥配置されたことを特徴とする渦電流探傷システム。
【請求項3】
請求項1に記載の渦電流探傷システムにおいて、
前記探傷プローブは、円筒形状の筐体を有し、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルが前記筐体の側面に千鳥配置されたことを特徴とする渦電流探傷システム。
【請求項4】
第1列に配列された複数の第1コイルと、前記第1列に対して平行な第2列に配列された複数の第2コイルとを有し、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルが千鳥配置され、隣り合う2つの第1コイルの中心のそれぞれとこれらに最も近い第2コイルの中心とを結ぶ2つの直線がなす挟角が60度未満となるように設定された探傷プローブを用い、
前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルのうちのいずれか2つを励磁コイルとして選択し且ついずれか1つを検出コイルとして選択して、前記2つの励磁コイル及び前記1つの検出コイルを制御する渦電流探傷方法であって、
1つの第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある2つの第1コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを同相励磁する第1の探傷モードと、
前記第1の探傷モードと同じ第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある2つの第1コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを逆相励磁する第2の探傷モードと、
前記第1の探傷モードと同じ第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある1つの第1コイル及び1つの第2コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを同相励磁する第3の探傷モードと、
前記第1の探傷モードと同じ第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある1つの第1コイル及び1つの第2コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを逆相励磁する第4の探傷モードと、を実行することを特徴とする渦電流探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコイルプローブを用いる渦電流探傷システム及び渦電流探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性の被検査体(詳細には、例えば鋼板や配管等)を探傷する渦電流探傷技術が知られている。渦電流探傷技術では、励磁コイル及び検出コイルを有する探傷プローブを、被検査体上で走査する。このとき、励磁コイルに励磁電流を流して磁場を発生させ、被検査体に渦電流を誘起する。被検査体に欠陥(詳細には、例えば割れ等)があれば渦電流が変化するので、この渦電流の変化による磁束変化を検出コイルで検出する。
【0003】
被検査体では、欠陥の方位(長さ方向)が定まらない場合がある。欠陥に対して渦電流を垂直に流せば、欠陥による渦電流の変化が大きくなるので、欠陥の検出感度が高くなる。一方、欠陥に対して渦電流を平行に流せば、欠陥による渦電流の変化が小さいので、欠陥の検出感度が低くなる。そのため、1つの励磁コイルと1つの検出コイルを有する探傷プローブを用いる場合は、方位が不定な欠陥の検出感度を担保するために、探傷プローブの向きを変えて複数回の走査を行う必要がある。そこで、方位が不定な欠陥を1回の走査で高感度に検出するためのマルチコイルプローブが提唱されている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0004】
特許文献1のマルチコイルプローブは、第1列に配列された複数の第1コイルと、第1列に対して平行な第2列に配列された複数の第2コイルとを有し、複数の第1コイル及び複数の第2コイルが千鳥配置されている。
【0005】
特許文献1の渦電流探傷装置は、第1の探傷モード、第2の探傷モード、及び第3の探傷モードを実行するようになっている。各探傷モードは、複数の第1コイルのうちのいずれか1つを、励磁コイルとして選択する。そして、第1の探傷モード(Y1スキャン)は、励磁コイルに隣り合う一方側の第2コイルを検出コイルとして選択する。第2の探傷モード(Y2スキャン)は、励磁コイルに隣り合う他方側の第2コイルを検出コイルとして選択する。第3の探傷モード(Xスキャン)は、隣り合う第1コイルと第2コイルの間の距離とほぼ同じ距離だけ励磁コイルから離れた第1コイルを検出コイルとして選択する。これら3つの探傷モードにより、検出コイルの位置における渦電流の方向を3つに切替えることができる。したがって、3方向の欠陥の検出感度を高めることができる。
【0006】
特許文献2のマルチコイルプローブは、第1方向に配列された複数の検出コイルと、第1方向で各検出コイルの両外側に位置するように(言い換えれば、検出コイルと交互になるように)配列された複数の第1励磁コイルと、第1方向に対して垂直な第2方向で各検出コイルの両外側に位置するように配列された複数の第2励磁コイルとを有している。
【0007】
特許文献2の渦電流探傷装置(制御部)は、第1の探傷モード及び第2の探傷モードを実行するようになっている。第1の探傷モードは、2つの第1励磁コイルとそれらの間に位置する1つの検出コイルを選択して、2つの第1励磁コイルの励磁電流を互いに逆向きに流す。第2の探傷モードは、2つの第2励磁コイルとそれらの間に位置する1つの検出コイルを選択して、2つの第2励磁コイルの励磁電流を互いに逆向きに流す。これら2つの探傷モードにより、検出コイルの位置にて渦電流を重畳して強めることができ、且つ、検出コイルの位置における重畳渦電流の方向を2つに切替えることができる。したがって、2方向の欠陥の検出感度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−19909号公報
【特許文献2】特開2006−226884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術には以下のような改善の余地があった。
【0010】
特許文献2では、2つの励磁コイルの間に検出コイルが配置されており、2つの励磁コイルの励磁電流を互いに逆向きに流すことにより、検出コイルの位置にて渦電流を重畳して強めることができる。すなわち、特許文献1と比べ、検出コイルの位置における渦電流を強めることができ、欠陥の検出感度を高めることができる。
【0011】
そして、検出コイルを中心として第1方向に配列された2つの第1励磁コイルを選択した場合に、第1方向の欠陥の検出感度を高めることができる。また、検出コイルを中心として第2方向に配列された2つの第2励磁コイルを選択した場合に、第2方向の欠陥の検出感度を高めることができる。しかし、第1方向と第2方向の中間にある第3方向又は第4方向の欠陥の検出感度を高めることができない。かといって、検出コイルを中心として第3方向又は第4方向に配列する励磁コイルを追加すれば、探傷プローブ(マルチコイルプローブ)の大型化を招く。
【0012】
本発明の目的は、探傷プローブの大型化を抑制しつつ、4方向の欠陥の検出感度を高めることができる渦電流探傷システム及び渦電流探傷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、第1列に配列された複数の第1コイルと、前記第1列に対して平行な第2列に配列された複数の第2コイルとを有し、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルが千鳥配置され、隣り合う2つの第1コイルの中心のそれぞれとこれらに最も近い第2コイルの中心とを結ぶ2つの直線がなす挟角が60度未満となるように設定された探傷プローブと、前記複数の第1コイル及び前記複数の第2コイルのうちのいずれか2つを励磁コイルとして選択し且ついずれか1つを検出コイルとして選択して、前記2つの励磁コイル及び前記1つの検出コイルを制御する渦電流探傷装置と、を備えた渦電流探傷システムであって、前記渦電流探傷装置は、1つの第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある2つの第1コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを同相励磁する第1の探傷モードと、前記第1の探傷モードと同じ第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある2つの第1コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを逆相励磁する第2の探傷モードと、前記第1の探傷モードと同じ第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある1つの第1コイル及び1つの第2コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを同相励磁する第3の探傷モードと、前記第1の探傷モードと同じ第2コイルを検出コイルとして選択し、前記検出コイルから等距離にある1つの第1コイル及び1つの第2コイルを励磁コイルとして選択して、前記2つの励磁コイルを逆相励磁する第4の探傷モードとを実行する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プローブの大型化を抑制しつつ、4方向の欠陥の検出感度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における渦電流探傷システムの構成を表す概略図である。
図2】本発明の一実施形態における第1の探傷モードを説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態における第2の探傷モードを説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態における第3の探傷モードを説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態における第4の探傷モードを説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態における渦電流探傷方法の手順を表すフローチャートである。
図7】本発明の第1の変形例における渦電流探傷方法の手順を表すフローチャートである。
図8】本発明の第2の変形例における探傷プローブの構造を表す概略図である。
図9】本発明の第3の変形例における探傷プローブの構造を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における渦電流探傷システムの構成を表す概略図である。図2(a)及び図2(b)は、本実施形態における第1の探傷モードを説明するための図である。図3(a)及び図3(b)は、本実施形態における第2の探傷モードを説明するための図である。図4(a)及び図4(b)は、本実施形態における第3の探傷モードを説明するための図である。図5(a)及び図5(b)は、本実施形態における第4の探傷モードを説明するための図である。なお、図2(a)、図3(a)、図4(a)、及び図5(a)は、各探傷モードにおける2つの励磁コイル(図中「T」又は「T’」で示す)と1つの検出コイル(図中「R」で示す)の組合せの具体例を表す図である。図2(b)、図3(b)、図4(b)、及び図5(b)は、検出コイルの位置における渦電流の方向を説明するための図であり、励磁コイル及び検出コイルを図示するものの、他のコイルを図示していない。
【0018】
図1で示すように、本実施形態の渦電流探傷システムは、探傷プローブ(マルチコイルプローブ)1と、探傷プローブ1に電気的に接続された渦電流探傷装置2と、渦電流探傷装置2に電気的に接続されたコンピュータ3と、コンピュータ3に電気的に接続された表示装置4とを備えている。
【0019】
探傷プローブ1は、可撓性の基板5と、基板5の長さ方向(図1中上下方向)に第1列として配列された複数(本実施形態では8つ)の第1コイル6a〜6hと、第1列に平行な第2列として配列された複数(本実施形態では7つ)の第2コイル7a〜7gとを有しており、第1コイル6a〜6h及び第2コイル7a〜7gが基板5上に千鳥配置されている。なお、第1コイル6a〜6h及び第2コイル7a〜7gは、それらの軸方向が基板5に対して垂直となっている。また、第1コイル6a〜6h及び第2コイル7a〜7gは、基板5のプリント配線に結線されている。
【0020】
隣り合う第1コイルの間隔と隣り合う第2コイルの間隔は一定であり、基板5の長さ方向において第1コイルの位置と第2コイルの位置がコイル間隔の半分だけずれている。そして、第2コイル7a〜7gのうちの第2コイル7aを例にとって説明すると、第2コイル7aと第1コイル6aの間の距離と第2コイル7aと第1コイル6bの間の距離が同じになるように設定されている。また、第2コイル7aと第1コイル6aの間の距離と第2コイル7aと第2コイル7cの間の距離が同じになるように設定されている。また、第2コイル7a及び第1コイル6aの中心を結ぶ直線と第2コイル7a及び第1コイル6bの中心を結ぶ直線との間の挟角が60度未満となるように設定されている。また、第2コイル7a及び第1コイル6aの中心を結ぶ直線と第2コイル7a及び第2コイル7cの中心を結ぶ直線との間の挟角が120度未満となるように設定されている。
【0021】
渦電流探傷装置2は、モード制御部8、切替部9a,9b,9c、励磁制御部10、及び検出制御部11を有している。モード制御部8は、第1の探傷モード、第2の探傷モード、第3の探傷モード、及び第4の探傷モードを順次実行するため、対応する指令を切替部9a,9b,9c、励磁制御部10、及び検出制御部11に順次出力するようになっている。
【0022】
各探傷モードは、複数の第2コイルのうちのいずれか1つを検出コイルとして選択する。第2コイル7aを検出コイルとして選択する場合を例にとって説明すると、第1の探傷モードは、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a,6bを励磁コイルとして選択して、第1コイル6a,6bを同相励磁するモードである。第2の探傷モードは、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a,6bを励磁コイルとして選択して、第1コイル6a,6bを逆相励磁するモードである。第3の探傷モードは、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a及び第2コイル7cを励磁コイルとして選択して、第1コイル6a及び第2コイル7cを同相励磁するモードである。第4の探傷モードは、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a及び第2コイル7cを励磁コイルとして選択して、第1コイル6a及び第2コイル7cを逆相励磁するモードである。
【0023】
切替部9a,9bは、モード制御部8からの指令に応じて第1コイル6a〜6h及び第2コイル7a〜7gのうちのいずれか2つを励磁コイルとして選択して、励磁制御部10に接続する。励磁制御部10は、図示しないが、一方の励磁コイルに励磁電圧(正弦波)を印加して励磁電流を流すための発信器及び増幅器と、他方の励磁コイルに励磁電圧(正弦波)を印加して励磁電流を流すための発信器及び増幅器とを有している。励磁制御部10は、モード制御部8からの指令に応じて、2つの励磁コイルを同相励磁又は逆相励磁するようになっている。
【0024】
ここで、同相励磁とは、一方の励磁コイルの励磁電圧の位相に対して他方の励磁コイルの励磁電圧の位相が同じであること意味する。このとき、一方の励磁コイルの励磁電流の向き(図2(b)及び図4(b)中矢印A1参照)に対して他方の励磁コイルの励磁電流の向き(図2(b)中矢印B1及び図4(b)中矢印F1参照)が同じになる。逆相励磁とは、一方の励磁コイルの励磁電圧の位相に対して他方の励磁コイルの励磁電圧の位相が半周期πだけシフトすることを意味する。このとき、一方の励磁コイルの励磁電流の向き(図3(b)及び図5(b)中矢印A1参照)に対して他方の励磁コイルの励磁電流の向き(図3(b)中矢印D1及び図5(b)中矢印H1参照)が反対になる。なお、一方の励磁コイルの励磁電圧の振幅と他方の励磁コイルの励磁電圧の振幅は、同じである。
【0025】
切替部9cは、モード制御部8からの指令に応じて第1コイル6a〜6h及び第2コイル7a〜7gのうちのいずれか1つを検出コイルとして選択して、検出制御部11に接続する。検出制御部11は、図示しないが、検出コイルからの信号を処理して探傷データを生成するための増幅器、位相検波器、及びA/D変換器を有している。なお、探傷データは、探傷モードの種類及び検出コイルの選択情報と関連付けられる。
【0026】
コンピュータ3は、渦電流探傷装置2の探傷条件(詳細には、励磁周波数、設定位相角、及び設定ゲイン等)を設定可能とし、表示装置4は、探傷条件を表示するようになっている。また、コンピュータ3は、渦電流探傷装置2で取得した探傷データに基づいて探傷画像(例えば波形チャート、リサージュ波形、又はCスコープ画像)を生成し、表示装置4は、探傷画像を表示するようになっている。
【0027】
本実施形態の渦電流探傷方法を、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態における渦電流探傷方法の手順を表すフローチャートである。
【0028】
まず、ステップS101にて、コンピュータ3は、渦電流探傷装置2の探傷条件を設定する。具体的には、検査者が、基準スリットを有する試験体を用いて位相角やゲインの校正を実施する。その後、検査者が、被検査体100(詳細には、例えば鋼板や配管等)の表面に探傷プローブ1を配置する。
【0029】
そして、ステップS102に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第1の探傷モードにおける2つの励磁コイルと1つの検出コイルの組合せとして第1のパターンを選択し、対応する指令を切替部9a,9b,9cに出力する。第1のパターン(図2(a)参照)では、第2コイル7aを検出コイルとして選択し、切替部9cが検出制御部11に接続する。また、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a,6bを励磁コイルとして選択し、切替部9a,9bが励磁制御部10に接続する。
【0030】
そして、ステップS103に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第1の探傷モードに対応する指令を励磁制御部10及び検出制御部11に出力する。これにより、励磁制御部10が第1コイル6a,6bを同相励磁し、検出制御部11が第2コイル7aからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0031】
そして、ステップS104に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第1の探傷モードに関し、第2コイル7a〜7gを検出コイルとしてそれぞれ選択する7つのパターンを全て実行したかどうかを判定する。最初のうちは、ステップS104の判定が満たされないため、ステップS102に戻って、上述の手順を繰り返す。すなわち、第2〜第7のパターンを順次選択して第1の探傷モードを実行する。
【0032】
第2のパターン(図2(a)参照)では、第2コイル7bを検出コイルとして選択し、第2コイル7bから等距離にある第1コイル6b,6cを励磁コイルとして選択して、第1コイル6b,6cを同相励磁し、第2コイル7bからの信号を処理して探傷データを取得する。…(省略)…。第7のパターン(図2(a)参照)では、第2コイル7gを検出コイルとして選択し、第2コイル7gから等距離にある第1コイル6g,6hを励磁コイルとして選択して、第1コイル6g,6hを同相励磁し、第2コイル7gからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0033】
ここで、第1の探傷モードの作用について、第1のパターンを例にとって説明する。一方の励磁コイル6aに図2(b)中矢印A1で示すように時計回りの励磁電流を流すと、被検査体100の表面には励磁コイル6aを中心とした反時計回りの渦電流が発生する。そのため、検出コイル7aの位置には図2(b)中矢印A2で示す方向の渦電流が発生する。また、他方の励磁コイル6bに図2(b)中矢印B1で示すように時計回りの励磁電流を流すと、被検査体100の表面には励磁コイル6bを中心とした反時計回りの渦電流が発生する。そのため、検出コイル7aの位置には図2(b)中矢印B2で示す方向の渦電流が発生する。そして、矢印A2方向の渦電流と矢印B2方向の渦電流が重ね合わされて、矢印C方向(すなわち、基板5の長さ方向)の渦電流が発生する。これにより、矢印C方向に対して垂直な方向(すなわち、基板5の幅方向)に延在する欠陥101aの検出感度を高めることができる。
【0034】
ステップS104の判定が満たされれば、ステップS105に移行する。すなわち、第2の探傷モードに移行する。ステップS105では、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第2の探傷モードにおける2つの励磁コイルと1つの検出コイルの組合せとして第1のパターンを選択し、対応する指令を切替部9a,9b,9cに出力する。これにより、第1のパターン(図3(a)参照)では、第2コイル7aを検出コイルとして選択し、切替部9cが検出制御部11に接続する。また、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a,6bを励磁コイルとして選択し、切替部9a,9bが励磁制御部10に接続する。
【0035】
そして、ステップS106に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第2の探傷モードに対応する指令を励磁制御部10及び検出制御部11に出力する。これにより、励磁制御部10が第1コイル6a,6bを逆相励磁し、検出制御部11が第2コイル7aからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0036】
そして、ステップS107に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第2の探傷モードに関し、第2コイル7a〜7gを検出コイルとしてそれぞれ選択する7つのパターンを全て実行したかどうかを判定する。最初のうちは、ステップS107の判定が満たされないため、ステップS105に戻って、上述の手順を繰り返す。すなわち、第2〜第7のパターンを順次選択して第2の探傷モードを実行する。
【0037】
第2のパターン(図3(a)参照)では、第2コイル7bを検出コイルとして選択し、第2コイル7bから等距離にある第1コイル6b,6cを励磁コイルとして選択して、第1コイル6b,6cを逆相励磁し、第2コイル7bからの信号を処理して探傷データを取得する。…(省略)…。第7のパターン(図3(a)参照)では、第2コイル7gを検出コイルとして選択し、第2コイル7gから等距離にある第1コイル6g,6hを励磁コイルとして選択して、第1コイル6g,6hを逆相励磁し、第2コイル7gからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0038】
ここで、第2の探傷モードの作用について、第1のパターンを例にとって説明する。一方の励磁コイル6aに図3(b)中矢印A1で示すように時計回りの励磁電流を流すと、被検査体100の表面には励磁コイル6aを中心とした反時計回りの渦電流が発生する。そのため、検出コイル7aの位置には図3(b)中矢印A2で示す方向の渦電流が発生する。また、他方の励磁コイル6bに図3(b)中矢印D1で示すように反時計回りの励磁電流を流すと、被検査体100の表面には励磁コイル6bを中心とした時計回りの渦電流が発生する。そのため、検出コイル7aの位置には図3(b)中矢印D2で示す方向の渦電流が発生する。そして、矢印A2方向の渦電流と矢印D2方向の渦電流が重ね合わされて、矢印E方向(すなわち、基板5の幅方向)の渦電流が発生する。これにより、矢印E方向に対して垂直な方向(すなわち、基板5の長さ方向)に延在する欠陥101bの検出感度を高めることができる。
【0039】
ステップS107の判定が満たされれば、ステップS108に移行する。すなわち、第3の探傷モードに移行する。ステップS108では、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第3の探傷モードにおける2つの励磁コイルと1つの検出コイルの組合せとして第8のパターンを選択し、対応する指令を切替部9a,9b,9cに出力する。第8のパターン(図4(a)参照)では、第2コイル7aを検出コイルとして選択し、切替部9cが検出制御部11に接続する。また、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a及び第2コイル7cを励磁コイルとして選択し、切替部9a,9bが励磁制御部10に接続する。
【0040】
そして、ステップS109に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第3の探傷モードに対応する指令を励磁制御部10及び検出制御部11に出力する。これにより、励磁制御部10が第1コイル6a及び第2コイル7cを同相励磁し、検出制御部11が第2コイル7aからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0041】
そして、ステップS110に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第3の探傷モードに関し、第2コイル7a〜7eを検出コイルとしてそれぞれ選択する5つのパターンを全て実行したかどうかを判定する。最初のうちは、ステップS110の判定が満たされないため、ステップS108に戻って、上述の手順を繰り返す。すなわち、第9〜第12のパターンを順次選択して第3の探傷モードを実行する。
【0042】
第9のパターン(図4(a)参照)では、第2コイル7bを検出コイルとして選択し、第2コイル7bから等距離にある第1コイル6b及び第2コイル7dを励磁コイルとして選択して、第1コイル6b及び第2コイル7dを同相励磁し、第2コイル7bからの信号を処理して探傷データを取得する。…(省略)…。第12のパターンでは、第2コイル7eを検出コイルとして選択し、第2コイル7eから等距離にある第1コイル6e及び第2コイル7gを励磁コイルとして選択して、第1コイル6e及び第2コイル7gを同相励磁し、第2コイル7eからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0043】
ここで、第3の探傷モードの作用について、第8のパターンを例にとって説明する。一方の励磁コイル6aに図4(b)中矢印A1で示すように時計回りの励磁電流を流すと、被検査体100の表面には励磁コイル6aを中心とした反時計回りの渦電流が発生する。そのため、検出コイル7aの位置には図4(b)中矢印A2で示す方向の渦電流が発生する。また、他方の励磁コイル7cに図4(b)中矢印F1で示すように時計回りの励磁電流を流すと、被検査体100の表面には励磁コイル7aを中心とした反時計回りの渦電流が発生する。そのため、検出コイル7aの位置には図4(b)中矢印F2で示す方向の渦電流が発生する。そして、矢印A2方向の渦電流と矢印F2方向の渦電流が重ね合わされて、矢印G方向(すなわち、基板5の斜め方向)の渦電流が発生する。これにより、矢印G方向に対して垂直な方向に延在する欠陥101cの検出感度を高めることができる。
【0044】
ステップS110の判定が満たされれば、ステップS111に移行する。すなわち、第4の探傷モードに移行する。ステップS111では、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第4の探傷モードにおける2つの励磁コイルと1つの検出コイルの組合せとして第8のパターンを選択し、対応する指令を切替部9a,9b,9cに出力する。第8のパターン(図5(a)参照)では、第2コイル7aを検出コイルとして選択し、切替部9cが検出制御部11に接続する。また、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a及び第2コイル7cを励磁コイルとして選択し、切替部9a,9bが励磁制御部10に接続する。
【0045】
そして、ステップS112に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第4の探傷モードに対応する指令を励磁制御部10及び検出制御部11に出力する。これにより、励磁制御部10が第1コイル6a及び第2コイル7cを逆相励磁し、検出制御部11が第2コイル7aからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0046】
そして、ステップS113に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第4の探傷モードに関し、第2コイル7a〜7eを検出コイルとしてそれぞれ選択する5つのパターンを全て実行したかどうかを判定する。最初のうちは、ステップS113の判定が満たされないため、ステップS111に戻って、上述の手順を繰り返す。すなわち、第9〜第12のパターンを順次選択して第4の探傷モードを実行する。
【0047】
第9のパターン(図5(a)参照)では、第2コイル7bを検出コイルとして選択し、第2コイル7bから等距離にある第1コイル6b及び第2コイル7dを励磁コイルとして選択して、第1コイル6b及び第2コイル7dを逆相励磁し、第2コイル7bからの信号を処理して探傷データを取得する。…(省略)…。第12のパターン(図5(a)参照)では、第2コイル7eを検出コイルとして選択し、第2コイル7eから等距離にある第1コイル6e及び第2コイル7gを励磁コイルとして選択して、第1コイル6e及び第2コイル7gを逆相励磁し、第2コイル7eからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0048】
ここで、第4の探傷モードの作用について、第8のパターンを例にとって説明する。一方の励磁コイル6aに図5(b)中矢印A1で示すように時計回りの励磁電流を流すと、被検査体100の表面には励磁コイル6aを中心とした反時計回りの渦電流が発生する。そのため、検出コイル7aの位置には図5(b)中矢印A2で示す方向の渦電流が発生する。また、他方の励磁コイル7cに図5(b)中矢印H1で示すように反時計回りの励磁電流を流すと、被検査体100の表面には励磁コイル7cを中心とした時計回りの渦電流が発生する。そのため、検出コイル7aの位置には図5(b)中矢印H2で示す方向の渦電流が発生する。そして、矢印A2方向の渦電流と矢印H2方向の渦電流が重ね合わされて、矢印I方向(すなわち、基板5の斜め方向)の渦電流が発生する。これにより、矢印I方向に対して垂直な方向に延在する欠陥101dの検出感度を高めることができる。
【0049】
ステップS113の判定が満たされれば、ステップS114に移行する。ステップS114では、探傷が完了したかどうかを判定する。例えば検査者の操作によって終了信号が入力されるか、若しくはエンコーダで測定された探傷プローブ1の移動距離が設定値に達した場合に、探傷が完了したと判定する。探傷が完了したと判定されない場合は、ステップS102に戻って、上述の手順を繰り返す。
【0050】
なお、コンピュータ3は、例えばステップS103、S106、S109、及びS112の終了毎に、渦電流探傷装置2で取得した探傷データに基づいて探傷画像を生成して、表示装置4に表示させる。あるいは、例えばステップS105、S108、S111、及びS114へ移行する際に(すなわち、探傷モードが移行する際に)若しくはステップS114の判定が満たされた際に(すなわち、探傷が完了した際に)、渦電流探傷装置2で取得した探傷データに基づいて探傷画像を生成して、表示装置4に表示させてもよい。
【0051】
以上のように本実施形態においては、特許文献2とは異なり、2つの励磁コイルの間に検出コイルが配置されていないため、2つの励磁コイルを同相励磁する場合も逆相励磁する場合も、検出コイルの位置にて渦電流を重ね合わせて強めることができる。すなわち、特許文献1と比べ、検出コイルの位置にて渦電流を強めることができ、欠陥の検出感度を高めることができる。また、4つの探傷モードにより、検出コイルの位置における渦電流の方向を4つに切替えることができる。したがって、4方向の欠陥の検出感度を高めることができる。
【0052】
また、本実施形態においては、励磁コイルの組合せの切替えと、同相励磁と逆相励磁の切替えによって、4つの探傷モードを実現している。これにより、例えば励磁コイルの組合せの切替えのみによって、4つの探傷モードを実現する場合と比べ、コイルの増加を抑制して、探傷プローブの大型化を抑制することができる。
【0053】
なお、上記一実施形態において、渦電流探傷装置2は、第1の探傷モード、第2の探傷モード、第3の探傷モード、第4の探傷モードの順序で実行する場合を例にとって説明したが、これに限られず、その順序を変更してもよい。また、上記一実施形態において、渦電流探傷装置2は、一つの探傷モードが完了してから、他の探傷モードに移行する場合を例にとって説明したが、これに限られない。このような変形例を、図7を用いて説明する。図7は、本変形例における渦電流探傷方法の手順を表すフローチャートである。
【0054】
まず、ステップS201にて、コンピュータ3は、渦電流探傷装置2の探傷条件を設定する。
【0055】
そして、ステップS202に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、2つの励磁コイルと1つの検出コイルの組合せとして第1のパターンを選択し、対応する指令を切替部9a,9b,9cに出力する。第1のパターンでは、第2コイル7aを検出コイルとして選択し、切替部9cが検出制御部11に接続する。また、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a,6bを励磁コイルとして選択し、切替部9a,9bが励磁制御部10に接続する。
【0056】
そして、ステップS203に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第1の探傷モードに対応する指令を励磁制御部10及び検出制御部11に出力する。これにより、励磁制御部10が第1コイル6a,6bを同相励磁し、検出制御部11が第2コイル7aからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0057】
そして、ステップS204に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第2の探傷モードに対応する指令を励磁制御部10及び検出制御部11に出力する。これにより、励磁制御部10が第1コイル6a,6bを逆相励磁し、検出制御部11が第2コイル7aからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0058】
そして、ステップS205に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第1及び第2の探傷モードに関し、第2コイル7a〜7gを検出コイルとしてそれぞれ選択する7つのパターンを全て実施したかどうかを判定する。最初のうちは、ステップS205の判定が満たされないため、ステップS202に戻って、上述の手順を繰り返す。すなわち、第2〜第7のパターンを順次選択して第1及び第2の探傷モードを実行する。
【0059】
ステップS205の判定が満たされれば、ステップS206に移行する。すなわち、第3及び第4の探傷モードに移行する。ステップS206では、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、2つの励磁コイルと1つの検出コイルの組合せとして第8のパターンを選択し、対応する指令を切替部9a,9b,9cに出力する。これにより、第8のパターンでは、第2コイル7aを検出コイルとして選択し、切替部9cが検出制御部11に接続する。また、第2コイル7aから等距離にある第1コイル6a及び第2コイル7cを励磁コイルとして選択し、切替部9a,9bが励磁制御部10に接続する。
【0060】
そして、ステップS207に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第3の探傷モードに対応する指令を励磁制御部10及び検出制御部11に出力する。これにより、励磁制御部10が第1コイル6a及び第2コイル7cを同相励磁し、検出制御部11が第2コイル7aからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0061】
そして、ステップS208に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第4の探傷モードに対応する指令を励磁制御部10及び検出制御部11に出力する。これにより、励磁制御部10が第1コイル6a及び第2コイル7cを逆相励磁し、検出制御部11が第2コイル7aからの信号を処理して探傷データを取得する。
【0062】
そして、ステップS209に進み、渦電流探傷装置2のモード制御部8は、第3及び第4の探傷モードに関し、第2コイル7a〜7eを検出コイルとしてそれぞれ選択する5つのパターンを全て実施したかどうかを判定する。最初のうちは、ステップS209の判定が満たされないため、ステップS206に戻って、上述の手順を繰り返す。すなわち、第8〜第12のパターンを順次選択して第3及び第4の探傷モードを実行する。
【0063】
ステップS209の判定が満たされれば、ステップS210に移行する。ステップS210では、探傷が完了したかどうかを判定する。探傷が完了したと判定されない場合は、ステップS202に戻って、上述の手順を繰り返す。
【0064】
以上のような変形例においても、上記一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、上記一実施形態において、探傷プローブ1は、可撓性の基板5を有し、第1コイル6a〜6h及び第2コイル7a〜7gが基板5上に千鳥配置された場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば図8で示す変形例のように、探傷プローブ1Aは、円筒形状の筐体12と、筐体12の側面の周方向に第1列として配列された複数(本変形例では8つ。図8では4つのみ示す)の第1コイル6と、第1列に平行な第2列として配列された複数(本変形例では8つ。図8では3つのみ示す)の第2コイル7とを有し、複数の第1コイル6及び複数の第2コイル7が筐体12の側面に千鳥配置されてもよい。また、筐体12の軸方向両外側にチューブ13を介してガイド14が設けられてもよい。さらに、第1コイル6及び第2コイル7にそれぞれ接続された配線がチューブ13内を通るように構成してもよい。このような変形例においても、上記一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、上記一実施形態の探傷プローブ1は、8つの第1コイル6a〜6h及び7つの第2コイル7a〜7gを有する場合を例にとり、上記変形例の探傷プローブ1Aは、8つの第1コイル6及び8つの第2コイル7を有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば図9で示す変形例のように、少なくとも2つの第1コイル6a,6b及び少なくとも2つの第2コイル7a,7cを有すればよい。このような変形例においても、上記一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1,1A 探傷プローブ
2 渦電流探傷装置
5 基板
6,6a〜6h 第1コイル
7,7a〜7g 第2コイル
12 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9