特許第6751694号(P6751694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6751694シース接続口成形用挿入具、シース接続口の成形方法及びコンクリートセグメントの設置方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751694
(24)【登録日】2020年8月19日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】シース接続口成形用挿入具、シース接続口の成形方法及びコンクリートセグメントの設置方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 7/00 20060101AFI20200831BHJP
   B28B 7/10 20060101ALI20200831BHJP
   B28B 23/00 20060101ALI20200831BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   B28B7/00 D
   B28B7/10 B
   B28B23/00
   E01D1/00 D
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-189688(P2017-189688)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-64054(P2019-64054A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 統央
(72)【発明者】
【氏名】山中 大明
(72)【発明者】
【氏名】阪井 光尚
(72)【発明者】
【氏名】石崎 忠之
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 義弘
(72)【発明者】
【氏名】柴部 修輝
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3784923(JP,B2)
【文献】 実開平07−034117(JP,U)
【文献】 特開平05−116126(JP,A)
【文献】 特開2005−001257(JP,A)
【文献】 特開平03−271466(JP,A)
【文献】 特開2014−148870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/00−7/46
E01D 21/00−21/10
E04B 1/41
B28B 21/00−23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメントの端面において、対向する位置に埋め込まれる一対のシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具であって、
上記一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該一対のシース接続管の開口端に弾性部材が巻き付けられた状態で挿入される芯材と、
上記芯材に連結され、上記一対のシース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、上記型枠に当接する拡径フランジとを備えている
ことを特徴とするシース接続口成形用挿入具。
【請求項2】
既成コンクリートセグメントの端面に突き合わされるコンクリートセグメントの端面において、上記既成コンクリートセグメントに埋め込まれた既成シース接続管の開口端と、該開口端に対向する位置に埋め込まれるシース接続管の開口端とを跨ぐように、該既成シース接続管の開口端及び該シース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具であって、
上記既成シース接続管の開口端及び上記シース接続管の開口端を跨ぐように挿入される、該開口端の内径よりも小さな外径を有する、弾性部材が巻き付けられた円筒状の芯材と、
上記芯材に連結され、上記シース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、上記既成コンクリートセグメントの端面の上記既成シース接続管の開口端の周縁に当接される拡径フランジとを備えている
ことを特徴とするシース接続口成形用挿入具。
【請求項3】
型枠を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメントの端面において、対向する位置に埋め込まれる一対のシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具であって、
上記一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該一対のシース接続管の開口端に弾性部材が巻き付けられた状態で挿入される芯材と、
上記芯材を上記型枠に固定する固定部材とを備えており、
上記芯材と上記弾性部材との間には、両者の摩擦抵抗を低減する摩擦低減手段が設けられている
ことを特徴とするシース接続口成形用挿入具。
【請求項4】
請求項3に記載のシース接続口成形用挿入具において、
上記芯材は、円筒部材であり、該円筒部材の端面にはフランジ部が形成されており、
上記フランジ部が上記型枠に当接されるように構成されている
ことを特徴とするシース接続口成形用挿入具。
【請求項5】
請求項3に記載のシース接続口成形用挿入具において、
上記芯材は、一対の有底の円筒部材であり、
上記一対の有底の円筒部材が上記型枠に対して締付可能に構成されている
ことを特徴とするシース接続口成形用挿入具。
【請求項6】
既成コンクリートセグメントの端面に突き合わされるコンクリートセグメントの端面において、上記既成コンクリートセグメントに埋め込まれた既成シース接続管の開口端と、該開口端に対向する位置に埋め込まれるシース接続管の開口端とを跨ぐように、該既成シース接続管の開口端及び該シース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具であって、
上記既成シース接続管の開口端及び該シース接続管の開口端を跨ぐように挿入される、該開口端の内径よりも小さな外径を有する、弾性部材が巻き付けられた円筒状の芯材と、
上記既成コンクリートセグメントの端面の上記既成シース接続管の開口端の周縁に当接されるフランジとを備えており、
上記芯材と上記弾性部材との間には、両者の摩擦抵抗を低減する摩擦低減手段が設けられている
ことを特徴とするシース接続口成形用挿入具。
【請求項7】
弾性部材が巻き付けられた状態で挿入される芯材と、該芯材に連結され、一対のシース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジとを備えたシース接続口成形用挿入具を用意する工程と、
シース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を上記型枠の上記シース接続口に対応する位置に固定する工程と、
上記型枠の両側のシース接続管の開口端に上記シース接続口成形用挿入具を挿入する工程と、
上記型枠の両側にコンクリートを打設して一対のコンクリートセグメントを成形する工程と、
上記型枠の両側から一対のコンクリートセグメントを取り外す工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を上記コンクリートセグメントから取り外す工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を取り外してできた一方の上記コンクリートセグメントにおける上記シース接続口に中子を挿入する工程と、
上記中子を他方のコンクリートセグメントのシース接続口に挿入するように、上記一対のコンクリートセグメントを突き合わせる工程とを含む
ことを特徴とするコンクリートセグメントの設置方法。
【請求項8】
弾性部材が巻き付けられた状態で挿入される芯材と、該芯材に連結され、シース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジとを備えたシース接続口成形用挿入具を用意する工程と、
既成コンクリートセグメントのシース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記既成コンクリートセグメントに埋設された既成シース接続管及び上記シース接続管の開口端を跨ぐように上記シース接続口成形用挿入具を挿入する工程と、
上記型枠にコンクリートを打設する工程と、
上記型枠からコンクリートセグメントを取り外す工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を上記コンクリートセグメントから取り外す工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を取り外してできた上記コンクリートセグメントにおける上記シース接続口に中子を挿入する工程と、
上記中子を上記既成コンクリートセグメントのシース接続口に挿入するように、該既成コンクリートセグメントに上記コンクリートセグメントを突き合わせる工程とを含む
ことを特徴とするコンクリートセグメントの設置方法。
【請求項9】
型枠の両側にコンクリートセグメントを成形する際のコンクリートセグメントにシース接続口を成形するシース接続口の成形方法であって、
弾性部材が芯材に巻き付けられたシース接続口成形用挿入具を用意する工程と、
上記シース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を上記型枠の上記シース接続口に対応する位置に固定する工程と、
上記型枠の両側のシース接続管の開口端に上記シース接続口成形用挿入具を挿入する工程と、
上記型枠にコンクリートを打設する工程と、
上記型枠から上記コンクリートセグメントを取り外す工程とを含み、
上記コンクリートセグメントを取り外す工程において、上記型枠に固定された芯材が該型枠と共に残り、上記弾性部材が上記芯材から外れる
ことを特徴とするシース接続口の成形方法。
【請求項10】
既成コンクリートセグメントの端面に対向する位置にコンクリートセグメントを成形する際のコンクリートセグメントにシース接続口を成形するシース接続口の成形方法であって、
弾性部材が芯材に巻き付けられたシース接続口成形用挿入具を用意する工程と、
上記シース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記既成コンクリートセグメントに埋設された既成シース接続管及びシース接続管の開口端を跨ぐように上記シース接続口成形用挿入具を挿入する工程と、
型枠にコンクリートを打設する工程と、
上記型枠から上記コンクリートセグメントを取り外す工程とを含み、
上記コンクリートセグメントを取り外す工程において、上記弾性部材が上記芯材から外れる
ことを特徴とするシース接続口の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シース接続口成形用挿入具、シース接続口の成形方法及びコンクリートセグメントの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレキャスト工法として、予め工場でコンクリートセグメントを製造し、これを現場で組み立て、接合するものが知られている。特に橋梁の場合、現場で組み立てた複数のコンクリートセグメントにPCケーブルを挿通し、引っ張ってストレスを与えた状態で接合される。
【0003】
このとき、各コンクリートセグメントには、PCケーブル挿通用のシースが埋設される。PCケーブルは、コンクリートセグメントを貫通するので、上記シースは開口端がコンクリートセグメントの端面に臨むように埋設される。そして、一対のコンクリートセグメントを、それぞれの端面のシース開口端が互いに連続するように配置し、連結されたシース内部にPCケーブルを挿通してグラウトを充填して一体化する。
【0004】
仕切板又は既成ブロックの端面等を仕切面として、この仕切面の両側又は片側の空間域にポストテンションブロック桁を成形する際における、ブロック桁接合面に設けられるシース接続口の成形方法が記載されている。
【0005】
従来の方法では、仕切面に開口する導通孔のブロック桁成形空間域に配管されるシース接続管の開口端に、円柱状の中実ゴム部材を挿入し、この状態でコンクリートを打設するようにしている。ブロック桁成形の設計上、シースを斜めに設置する必要があり、コンクリート硬化後にブロック桁を仕切面から分離する際には、各コンクリートセグメントの重量が重く水平方向に分離することになる。すると、型枠に対して傾いて固定された中実ゴム部材と、水平に動くコンクリートの導通孔周縁とが干渉し、導通孔周縁に無理な力が加わって剥がれ損傷が発生し、補修の手間が生じるという問題がある。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1のように、仕切面に開口する導通孔のブロック桁成形空間域に配管されるシース接続管の開口端に、接続シースを介して先端にシース外径よりも大きい広口部をもった接続管を接続し、この接続管の広口部内に内周面がリングにより補強された弾性体からなる環状圧着部材を挿着して、所定長さのガイドパイプを、一端が環状圧着部材の内側を通してシース内へ挿入されると共に、他端が仕切面における導通孔外側へ突出するように挿通配管し、接続管を仕切面方向へ移動して、環状圧着部材の開口端を仕切面に圧着保持させた状態で、仕切面の両側又は片側のブロック桁成形空間域にコンクリートを打設する方法が知られている。これにより、コンクリート硬化後にブロック桁を仕切面から分離する際に、仕切面と環状圧着部材開口端及びリングとの分離を円滑に行うことができ、ブロック桁端面に、従来のこの種の方法によるようなコンクリートの剥がれ損傷のない美麗なシース接続導通口を形成することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3784923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、管状圧着部材が仕切面に押し付けられているだけで十分に固定されておらず、コンクリート打設の際など、力がかかるとずれやすい。特にシースの内部にガイドパイプを通さない場合には、シースの経路が途切れ、コンクリート打設後に、一部がコンクリートで塞がり、そのままではPC鋼線を挿通できなくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成でずれることなく確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、コンクリートセグメントの端面に望むシース接続管の開口端に対して外れやすい工夫を加えたシース接続口成形用挿入具を挿入するようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明では、型枠を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメントの端面において、対向する位置に埋め込まれる一対のシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具を対象とし、
上記シース接続口成形用挿入具は、
上記一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該一対のシース接続管の開口端に弾性部材が巻き付けられた状態で挿入される芯材と、
上記芯材に連結され、上記一対のシース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、上記型枠に当接する拡径フランジとを備えている。
【0012】
上記の構成によると、シース接続口周縁の内径を拡げることができ、コンクリートの打設後にシース接続口成形用挿入具がシース接続口周縁に引っ掛からずに外れやすいので、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、シース接続口周縁の内径を拡げることで、コンクリートセグメントの突き合わせ時に中子を取り付けてシース接続管を接続しやすくなる。さらに、拡径フランジを斜め加工すれば、シース接続管側は斜め加工しなくて済むように構成可能である。
【0013】
第2の発明では、既成コンクリートセグメントの端面に突き合わされるコンクリートセグメントの端面において、上記既成コンクリートセグメントに埋め込まれた既成シース接続管の開口端と、該開口端に対向する位置に埋め込まれるシース接続管の開口端とを跨ぐように、該既成シース接続管の開口端及び該シース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具を対象とし、
上記シース接続口成形用挿入具は、
上記既成シース接続管の開口端及び該シース接続管の開口端を跨ぐように挿入される、該開口端の内径よりも小さな外径を有する、弾性部材が巻き付けられた円筒状の芯材と、
上記芯材に連結され、上記シース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、上記既成コンクリートセグメントの端面の上記既成シース接続管の開口端の周縁に当接される拡径フランジとを備えている。
【0014】
上記の構成によると、シース接続口周縁の内径を拡げることができ、コンクリートの打設後にシース接続口成形用挿入具がシース接続口周縁に引っ掛からずに外れやすいので、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、シース接続口周縁の内径を拡げることで、コンクリートセグメントの突き合わせ時に中子を取り付けてシース接続管を接続しやすくなる。さらに、拡径フランジを斜め加工すれば、シース接続管側は斜め加工しなくて済むように構成可能である。
【0015】
第3の発明では、型枠を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメントの端面において、対向する位置に埋め込まれる一対のシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具を対象とし
上記シース接続口成形用挿入具は、
上記一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該一対のシース接続管の開口端に弾性部材が巻き付けられた状態で挿入される芯材と、
上記芯材を上記型枠に固定する固定部材とを備えており、
上記芯材と上記弾性部材との間には、両者の摩擦抵抗を低減する摩擦低減手段が設けられている。
【0016】
上記の構成によると、コンクリートの打設後に型枠からコンクリートセグメントを外す際に芯材から弾性部材が外れやすいので、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、固定部材により、シース接続口成形用挿入具が型枠に固定されるので、型枠からずれない。
【0017】
第4の発明では、第3の発明において、
上記芯材は、円筒部材であり、該円筒部材の端面にはフランジ部が形成されており、
上記フランジ部が上記型枠に当接されるように構成されている。
【0018】
上記の構成によると、フランジ部を利用して型枠に固定することができるので、型枠との間の隙間を塞ぐことができ、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管により流れ込みにくくなる。
【0019】
第5の発明では、第3の発明において、
上記芯材は、一対の有底の円筒部材であり、
上記一対の有底の円筒部材が上記型枠に対して締付可能に構成されている。
【0020】
上記の構成によると、芯材をより堅固に型枠に固定できるので、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管にさらに流れ込みにくくなる。
【0021】
第6の発明では、既成コンクリートセグメントの端面に突き合わされるコンクリートセグメントの端面において、上記既成コンクリートセグメントに埋め込まれた既成シース接続管の開口端と、該開口端に対向する位置に埋め込まれるシース接続管の開口端とを跨ぐように、該既成シース接続管の開口端及び該シース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具を対象とし、
上記シース接続口成形用挿入具は、
上記既成シース接続管の開口端及び該シース接続管の開口端を跨ぐように挿入される、該開口端の内径よりも小さな外径を有する、弾性部材が巻き付けられた円筒状の芯材と、
上記既成コンクリートセグメントの端面の上記既成シース接続管の開口端の周縁に当接されるフランジとを備えており、
上記芯材と上記弾性部材との間には、両者の摩擦抵抗を低減する摩擦低減手段が設けられている。
【0022】
上記の構成によると、コンクリートの打設後に既成コンクリートセグメントからコンクリートセグメントを外す際に芯材から弾性部材が外れやすいので、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、芯材が既成シース接続管の開口端及びシース接続管の開口端を跨ぐように圧入状態で挿入されるので、シース接続口成形用挿入具が型枠からずれない。
【0023】
第7の発明では、弾性部材が巻き付けられた状態で挿入される芯材と、該芯材に連結され、一対のシース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジとを備えたシース接続口成形用挿入具を用意する工程と、
シース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を上記型枠の上記シース接続口に対応する位置に固定する工程と、
上記型枠の両側のシース接続管の開口端に上記シース接続口成形用挿入具を挿入する工程と、
上記型枠の両側にコンクリートを打設して一対のコンクリートセグメントを成形する工程と、
上記型枠の両側から一対のコンクリートセグメントを取り外す工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を上記コンクリートセグメントから取り外す工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を取り外してできた一方の上記コンクリートセグメントにおける上記シース接続口に中子を挿入する工程と、
上記中子を他方のコンクリートセグメントのシース接続口に挿入するように、上記一対のコンクリートセグメントを突き合わせる工程とを含む構成とする。
【0024】
上記の構成によると、シース接続口周縁の内径を拡げることができ、コンクリートの打設後にシース接続口成形用挿入具がシース接続口周縁に引っ掛からずに外れやすいので、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、シース接続口周縁の内径を拡げることで、コンクリートセグメントの突き合わせ時に中子を取り付けてシース接続管を接続しやすくなる。さらに、拡径フランジを斜め加工すれば、シース接続管側は斜め加工しなくて済むように構成可能である。なお、型枠の両側から一対のコンクリートセグメントを取り外したときに、同時にシース接続口成形用挿入具がコンクリートセグメントから外れてもよい。
【0025】
第8の発明では、弾性部材が巻き付けられた状態で挿入される芯材と、該芯材に連結され、シース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジとを備えたシース接続口成形用挿入具を用意する工程と、
既成コンクリートセグメントのシース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記既成コンクリートセグメントに埋設された既成シース接続管及び上記シース接続管の開口端を跨ぐように上記シース接続口成形用挿入具を挿入する工程と、
上記型枠にコンクリートを打設する工程と、
上記型枠からコンクリートセグメントを取り外す工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を上記コンクリートセグメントから取り外す工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を取り外してできた上記コンクリートセグメントにおける上記シース接続口に中子を挿入する工程と、
上記中子を上記既成コンクリートセグメントのシース接続口に挿入するように、該既成コンクリートセグメントに上記コンクリートセグメントを突き合わせる工程とを含む構成とする。
【0026】
上記の構成によると、拡径フランジを斜め加工すれば、シース接続管側は斜め加工しなくて済む。また、シース接続口周縁の内径を拡げることができ、コンクリートの打設後に型枠からコンクリートセグメントを外す際に芯材から弾性部材が外れやすいので、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、シース接続口周縁の内径を拡げることで、既成コンクリートセグメントにコンクリートセグメントを突き合わせる時に中子を取り付けてシース接続管を接続しやすくなる。なお、既成のコンクリートセグメントからコンクリートセグメントを取り外したときに、同時にシース接続口成形用挿入具がコンクリートセグメントから外れてもよい。
【0027】
第9の発明では、型枠の両側にコンクリートセグメントを成形する際のコンクリートセグメントにシース接続口を成形するシース接続口の成形方法を前提とする。
【0028】
上記シース接続口の成形方法は、
弾性部材が芯材に巻き付けられたシース接続口成形用挿入具を用意する工程と、
上記シース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を上記型枠の上記シース接続口に対応する位置に固定する工程と、
上記型枠の両側のシース接続管の開口端に上記シース接続口成形用挿入具を挿入する工程と、
上記型枠にコンクリートを打設する工程と、
上記型枠から上記コンクリートセグメントを取り外す工程とを含み、
上記コンクリートセグメントを取り外す工程において、上記弾性部材が上記芯材から外れる構成とする。
【0029】
上記の構成によると、コンクリートの打設後に型枠からコンクリートセグメントを外す際に芯材から弾性部材が外れるので、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、シース接続口成形用挿入具が型枠に固定されるので、型枠からずれない。
【0030】
第10の発明では、既成コンクリートセグメントの端面に対向する位置にコンクリートセグメントを成形する際の、コンクリートセグメントにシース接続口を成形するシース接続口の成形方法を前提とする。
【0031】
上記シース接続口の成形方法は、
弾性部材が芯材に巻き付けられたシース接続口成形用挿入具を用意する工程と、
上記シース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記既成コンクリートセグメントに埋設された既成シース接続管及び上記シース接続管の開口端を跨ぐように上記シース接続口成形用挿入具を挿入する工程と、
型枠にコンクリートを打設する工程と、
上記型枠から上記コンクリートセグメントを取り外す工程とを含み、
上記コンクリートセグメントを取り外す工程において、上記弾性部材が上記芯材から外れる構成とする。
【0032】
上記の構成によると、コンクリートの打設後に既成コンクリートセグメントからコンクリートセグメントを外す際に芯材から弾性部材が外れやすいので、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、芯材が既成シース接続管の開口端及びシース接続管の開口端を跨ぐように圧入状態で挿入されるので、シース接続口成形用挿入具が型枠からずれない。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、シース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有する拡径フランジを用いてシース接続口の内径を拡げるようにした。また、コンクリートセグメントを取り外すときにシース接続口成形用挿入具の弾性部材が芯材から外れるようにした。これらの発明により、簡単な構成でずれることなく確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】本発明の実施形態1に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図1B】本発明の実施形態1に係るシース接続口成形用挿入具が型枠に固定された状態の概略を示す斜視図である。
図2A】本発明の実施形態1の変形例に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図2B】本発明の実施形態1の変形例に係るシース接続口成形用挿入具が型枠に固定された状態の概略を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態2に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図4A】本発明の実施形態3に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図4B】本発明の実施形態3に係るシース接続口成形用挿入具が型枠に固定された状態の概略を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態4に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図6A】本発明の実施形態5に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図6B】一方のシース接続口に中子が挿入された状態で他方のコンクリートセグメントに引き寄せる状態を示す断面図である。
図6C】シース接続口に中子が挿入された状態で一対のコンクリートセグメントが突き合わせされた状態を示す断面図である。
図6D】本発明の実施形態5の変形例に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
(実施形態1)
−シース接続口成形用挿入具の構造−
図1Aは、本発明の実施形態1に係るシース接続口成形用挿入具10が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す。シース接続管3は、コンクリートセグメント2の端面2aに開口端3aが臨むように埋設される。すなわち、型枠1を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメント2の端面2aにおいて、一対のシース接続管3が型枠1の例えば円形の開口1aを挟んで対向する位置に埋め込まれる。このシース接続管3の端面2aと反対側には、同様にコンクリートセグメント2に埋設される長尺の被接続シース(図示せず)を差し込むための螺旋状の凹凸が形成された螺旋部3bが形成されている。このシース接続管3は、例えば、ポリ塩化ビニル等の樹脂成形品よりなるが、金属成形品等でもよい。図1Aに示すように、コンクリート打設前のシース接続管3は、長尺の被接続シースが鉄筋枠に必要に応じて勾配をもって固定されるので、コンクリートセグメント2の端面2aに対して垂直ではなく傾斜して埋め込まれることが多い。
【0037】
そして、コンクリートを打設する前に、一対のシース接続管3の開口端3aの内部にシース接続口成形用挿入具10が設けられる。
【0038】
図1Bにも示すように、このシース接続口成形用挿入具10は、一対のシース接続管3の開口端3aの内径よりも小さな外径を有する芯材11を備えている。この芯材11は、円筒部材、例えば板厚の薄い金属パイプで構成されている。この円筒部材の端面の開口端にはフランジ部11aが形成されている。フランジ部11aは、例えば外形が矩形板状のもので、溶接により芯材11の端面に固定されている。そして、このフランジ部11aが型枠1に当接した状態で固定部材としての木ねじ12により固定される。本実施形態では、固定部材は、木ねじ12で構成されているが、クギ、ボルト、接着剤等でもよく、フランジ部11aの形状は、リング状でもよい。
【0039】
このシース接続口成形用挿入具10は、一対のシース接続管3の開口端3aに弾性部材としてのゴムシート13が巻き付けられた状態で挿入される。ゴムシート13は、例えば、巻きやすい幅及び厚さを有するゴム部材よりなり、芯材11とゴムシート13との間には、両者の摩擦抵抗を低減する、洗剤、油、グリースなどの摩擦低減手段としての潤滑剤が塗布されているのが望ましい。なお、摩擦低減手段として、潤滑剤以外でゴムシート13が芯材11から抜けやすくする工夫を加えてもよい。例えば、接触面積の低減のためゴムシート13の直径を芯材11の直径に対し大きく設定してもよい。また、摩擦係数の低いゴムシート13又は芯材11を使用したり、ゴムシート13又は芯材11に摩擦を低減するコーティング等の表面修飾を行ったりしてもよい。ゴムシート13が巻かれた状態のシース接続口成形用挿入具10の外径は、シース接続管3の内径よりも若干小さいようにすると、シース接続管3に挿入しやすい。
【0040】
−シース接続口の成形方法−
次いで、型枠1の両側にコンクリートセグメント2を成形する際のコンクリートセグメント2にシース接続口20を成形する、シース接続口20の成形方法について説明する。
【0041】
まず、準備工程おいて、ゴムシート13が芯材11に巻き付けられたシース接続口成形用挿入具10を用意する。芯材11にゴムシート13を巻き付けるときには、フランジ部11aとの間に隙間ができないように巻くのが望ましい。なお、芯材11にゴムシート13を巻き付ける前に、芯材11とゴムシート13との間に両者の摩擦抵抗を低減する潤滑剤を塗布する。
【0042】
次に、詳しくは図示しないが、所定の間隔で鉄筋が配筋された型枠1の設置を行う。このとき、型枠1の開口1aの両側にシース接続口成形用挿入具10をそれぞれ固定する。例えば、木ねじ12やクギなどの固定部材で開口1aの周縁にシース接続口成形用挿入具10を固定する。
【0043】
次いで、シース接続口20に対応する位置にシースを配管する。
【0044】
次いで、シースの端部にシース接続管3を接続する。又は配管前にシースの端部にシース接続管3を接続しておく。
【0045】
次いで、シース接続管3の開口端3aを、対応するシース接続口成形用挿入具10に接続する。ゴムシート13は適度な弾性を有するので、シース接続口成形用挿入具10を開口端3aに圧入しやすい。
【0046】
次いで、シース内部にPC鋼線のスペースを確保するためのガイドパイプ4を挿入する。このガイドパイプ4は、例えば、架橋ポリエチレン管よりなり、その外径がシース接続管3の内径と近いときには、ゴムシート13の厚さをできるだけ薄くしてガイドパイプ4が通過しやすいようにするとよい。
【0047】
次いで、型枠1にコンクリートを打設する。
【0048】
そして、コンクリートが固まった後、型枠1からコンクリートセグメント2を取り外す。このコンクリートセグメント2を取り外す工程において、ゴムシート13が芯材11から外れる。
【0049】
このように、本実施形態では、コンクリートの打設後に型枠1からコンクリートセグメント2を外す際に潤滑剤の作用により芯材11からゴムシート13が外れやすいので、シース接続口20周縁のコンクリートが剥がれない。
【0050】
また本実施形態では、フランジ部11aを利用して型枠1に固定することができるので、型枠1との間を塞ぐことができ、シース接続口成形用挿入具10が型枠1に対してずれず、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管3により流れ込みにくくなる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、コンクリートセグメント2を取り外す工程において、シース接続口成形用挿入具10のゴムシート13が芯材11から外れるようにしたことにより、簡単な構成でずれることなく確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口20を形成することができる。
【0052】
−変形例−
図2A及び図2Bは本発明の実施形態の変形例に係るシース接続口成形用挿入具10’を示し、芯材11’の形状及び型枠1への固定方法が異なる点で上記実施形態と異なる。なお、以下の変形例及び各実施形態では、図1A及び図1Bと同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0053】
本変形例では、図2Aに示すように、型枠1にシース接続管3の内径と同程度の大きさの開口1aが設けられず、小さな第1ボルト挿通孔1a’のみが設けられている。
【0054】
そして、本変形例のシース接続口成形用挿入具10’は、フランジ部11a’が第1ボルト挿通孔1a’と同程度の第2ボルト挿通孔11b’のみが開口された板状となっている。すなわち、本実施形態では、フランジ部11a’は、フランジというよりも矩形板で構成されており、内部にガイドパイプ4を通さずにコンクリートの打設を行う場合に用いられる。本変形例においても、芯材11’とゴムシート13との間には、両者の摩擦抵抗を低減する潤滑剤が塗布されている。
【0055】
これら第1及び第2ボルト挿通孔1a’,11b’に固定用ボルト12’を挿通してナットで締め付けることで、一対の芯材11’が型枠1に堅固に固定される。
【0056】
本実施形態では、中央で固定用ボルト12’で堅固に固定を行っているので、この木ねじ12による固定は必要ない。
【0057】
コンクリート打設後の型抜き時には、型枠1にシース接続口成形用挿入具10’が残り、ゴムシート13が抜け落ちるので、コンクリートセグメント2が損傷することはない。
【0058】
このように、本変形例でも、ゴムシート13を芯材11からより外れやすくすることができるので、コンクリート打設後の型抜き時にゴムシート13が芯材11から確実に外れてシース接続口成形用挿入具10’が容易に外れる。
【0059】
(実施形態2)
図3は本発明の実施形態2に係るシース接続口成形用挿入具110を示し、芯材111の形状が異なる点で上記実施形態1と異なる。
【0060】
すなわち、本実施形態では、芯材111は、上記実施形態1よりも長さが長く開口1aを跨ぐ長さの円筒形であり、その外周に1つのフランジ部111aが設けられている。そして、この芯材111は、上記実施形態1のように2つのフランジ部111aで型枠1を挟み込む形にはなっていない。フランジ部111aは、木ねじ12等により、開口1aの周縁に固定される。本実施形態においても、芯材111とゴムシート13との間には、両者の摩擦抵抗を低減する潤滑剤が塗布されている。
【0061】
本実施形態に係るシース接続口成形用挿入具110では、フランジ部111aが1つしか設けられていないので、開口1aにシース接続口成形用挿入具110を取り付ける作業が容易である。
【0062】
したがって、本実施形態においても、コンクリートセグメント2を取り外す工程において、シース接続口成形用挿入具110のゴムシート13が芯材111から容易に外れるようにしたことにより、簡単な構成でずれることなく確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口20を形成することができる。
【0063】
(実施形態3)
図4A及び図4Bは本発明の実施形態3に係るシース接続口成形用挿入具210を示し、型枠ではなく、既成コンクリートセグメント2’の端面2a’を用いてコンクリート打設する点が異なる点で上記実施形態1と異なる。
【0064】
詳しくは図示しないが、既成コンクリートセグメント2’の対面側に鉄筋が配筋された型枠1の設置を行うが、本実施形態では、型枠1は、既成コンクリートセグメント2’との間に仕切板を有さない。既成コンクリートセグメント2’の端面2a’には、剥離しやすいように剥離剤を塗布しておく。本実施形態では、仕切板の開口1aの代わりに既成シース接続管3’の開口端3a’にシース接続口成形用挿入具210を圧入する。本実施形態では、既成コンクリートセグメント2’の端面2a’に突き合わされるコンクリートセグメント2を形成する。
【0065】
コンクリートセグメント2の端面2aとなる空間において、既成コンクリートセグメント2’に埋め込まれた既成シース接続管3’の開口端3a’に対向する位置にシース接続口成形用挿入具210が埋め込まれる。つまり、シース接続口成形用挿入具210は、既成シース接続管3’の開口端3a’及び作成するコンクリートセグメント2に埋め込まれるシース接続管3の開口端3aの内部に端面2a’を跨ぐように挿入される。
【0066】
シース接続口成形用挿入具210は、開口端3aの内径よりも小さな外径を有する、ゴムシート13が巻き付けられた円筒状の芯材211を有する。この芯材211には、既成コンクリートセグメント2’の端面2a’における既成シース接続管3’の開口端3aの周縁に当接されるフランジ部211aを備えている。本実施形態においても、芯材211とゴムシート13との間には、両者の摩擦抵抗を低減する潤滑剤が塗布されている。
【0067】
なお、既成シース接続管3’の開口端3a’側に埋め込まれるゴムシート13’としては、引き離し時に抜けやすくするためには打設圧に対抗する必要もないので、弾性力の高い、柔らかめのゴムシート13’を使用するのが望ましい。このとき、設置時の抜け落ちとコンクリート流入防止のために、ゴムシート13’を巻き付けた部分の外径を接続管3の外径よりも若干大きくするのが望ましい。
【0068】
他方のゴムシート13は、上記各実施形態と同様で、打設圧に対抗するために、ある程度の硬度を有するものが望ましい。この堅めのゴムシート13の場合、挿入しやすいように、ゴムシート13を含めたシース接続口成形用挿入具210のゴムシート13を巻き付けた部分の外径は、シース接続管3の内径よりも若干小さいのが望ましい。
【0069】
次に、既成コンクリートセグメント2’の端面に対向する位置にコンクリートセグメント2を成形する際の、コンクリートセグメント2にシース接続口20を成形するシース接続口20の成形方法について説明する。
【0070】
まず、準備工程おいて、ゴムシート13が芯材211に巻き付けられたシース接続口成形用挿入具210を型枠1の必要箇所分以上用意する。芯材211にゴムシート13を巻き付けるときには、フランジ部211aとの間に隙間ができないように巻くのが望ましい。本実施形態でも、芯材211にゴムシート13を巻き付ける前に、芯材211とゴムシート13との間に両者の摩擦抵抗を低減する潤滑剤を塗布する。
【0071】
次いで、既成コンクリートセグメント2’側の既成シース接続管3’の開口端3a’にシース接続口成形用挿入具210を挿入する。このとき、フランジ部211aを端面2a’に当接させるまで圧入するのが望ましい。
【0072】
次いで、型枠1のシース接続口20に対応する位置にシースを配管する。
【0073】
次いで、シースの端部にシース接続管3の螺旋部3bを接続する。又は配管前にシースの端部にシース接続管3を接続しておく。
【0074】
そして、シース接続管3の開口端3aをシース接続口成形用挿入具210に接続する。ゴムシート13は適度な弾性を有するので、シース接続口成形用挿入具210に開口端3aが圧入される。
【0075】
次いで、型枠1にコンクリートを打設する。
【0076】
そして、コンクリートが固まった後、既成コンクリートセグメント2’からコンクリートセグメント2を取り外す。このコンクリートセグメント2を取り外す工程において、ゴムシート13が芯材211から外れる。
【0077】
このように、本実施形態では、コンクリートの打設後に既成コンクリートセグメント2’からコンクリートセグメント2を外す際に芯材211からゴムシート13が外れやすいので、シース接続口20周縁のコンクリートが剥がれない。
【0078】
また本実施形態では、フランジ部211aを利用して端面2a’との間の隙間を塞ぐことができ、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管3又は既成シース接続管3’から流れ込みにくくなる。
【0079】
したがって、本実施形態においても、既成コンクリートセグメント2’からコンクリートセグメント2を取り外す工程において、シース接続口成形用挿入具210のゴムシート13が芯材211から容易に外れるようにしたことにより、簡単な構成でずれることなく確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口20を形成することができる。
【0080】
(実施形態4)
図5は本発明の実施形態4に係るシース接続口成形用挿入具310を示し、芯材311の形状等が異なる点で上記実施形態1の変形例と異なる。
【0081】
本実施形態において、型枠1の仕切板には、実施形態1の変形例と同様に第1ボルト挿通孔1a’が貫通形成されている。芯材311は、一対の有底の円筒部材であり、一対の有底の円筒部材が型枠1に対して締付可能に構成されている。具体的には、カップ状の芯材311底面の中心には、第2ボルト挿通孔311aが開口されている。本実施形態においても、芯材311とゴムシート13との間には、両者の摩擦抵抗を低減する潤滑剤が塗布されている。
【0082】
本実施形態では、第1ボルト挿通孔1a’及び第2ボルト挿通孔311aに固定部材312の固定用ボルト312aを挿通し、締付ナット312b,312cをテーパワッシャ312dを仕切板に当接させた状態で締結する。これにより、芯材311をより堅固に型枠1に固定できる。このため、コンクリート打設時に芯材311が型枠1に対してずれず、コンクリートがシース接続管3にさらに流れ込みにくくなる。
【0083】
したがって、本実施形態においても、コンクリートセグメント2を取り外す工程において、シース接続口成形用挿入具310のゴムシート13が芯材311から容易に外れるので、簡単な構成でずれることなく確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口20を形成することができる。
【0084】
(実施形態5)
図6Aは本発明の実施形態5のシース接続口成形用挿入具410を示し、主としてフランジ部周辺の形状が異なる点で上記実施形態1〜4と異なる。
【0085】
すなわち、本実施形態のシース接続口成形用挿入具410は、ポリ塩化ビニル等よりなる一対のシース接続管3の開口端3aの内径よりも小さな外径を有し、これら一対のシース接続管3の開口端3aに弾性部材が巻き付けられた状態で挿入される芯材411を有する。この芯材411は、樹脂成形品でも金属製でもよい。
【0086】
芯材411は、上記実施形態4と同様に第2ボルト挿通孔411bを有し、型枠1の第1ボルト挿通孔1a’に固定部材312の固定用ボルト312aを挿通して固定することで、型枠1に固定可能となっている。
【0087】
また、シース接続口成形用挿入具410は、芯材411に連結され、一対のシース接続管3の開口端3aの外径よりも大きな外径を有し、型枠1に当接する拡径フランジ411aを備えている。図6Aに示すように、この拡径フランジ411aを予め設定された角度に斜め加工すれば、シース接続管3側は斜め加工しなくて済むように構成できる。
【0088】
次いで、このシース接続口成形用挿入具410を用いてコンクリートセグメント2を成形した後、設置場所にて設置する方法について説明する。
【0089】
まず、上述したシース接続口成形用挿入具410を用意する。
【0090】
次いで、型枠1を設置して配筋した後、シース接続口に対応する位置にシースを配管する。
【0091】
次いで、シース接続口成形用挿入具410を型枠1のシース接続口に対応する位置に固定する。具体的には、上記実施形態4と同様に芯材411を固定部材312を用いて第1ボルト挿通孔1a’に固定する。
【0092】
次いで、型枠1の両側のシース接続管3の開口端3aにシース接続口成形用挿入具410を挿入する。
【0093】
次いで、図6Aに示すように、型枠1の両側にコンクリートを打設して一対のコンクリートセグメント2を成形する。
【0094】
次いで、型枠1の両側から一対のコンクリートセグメント2を取り外す。本実施形態では、型枠1に芯材411が固定されているので、そのときに、シース接続口成形用挿入具410がコンリートセグメント2から外れる。拡径フランジ411aの作用により、シース接続口周縁の内径がラッパ状に拡がっているため、シース接続口成形用挿入具410がシース接続口周縁に引っ掛からずに外れやすい。しかも、ゴムシート13が外れやすいので、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。
【0095】
次いで、シース接続口成形用挿入具410を取り外してできた一方のコンクリートセグメント2におけるシース接続口に中子414を挿入する。このとき、シース接続口周縁の内径が拡がっているので、中子414を挿入しやすい。
【0096】
次いで、図6Bに示すように、一対のコンクリートセグメント2の端面2aに接着剤415を塗る。接着剤415の種類は特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂系の接着剤、モルタル等である。
【0097】
次いで、図6Cに示すように、中子414を他方のコンクリートセグメント2のシース接続口に挿入するように、一対のコンクリートセグメント2を突き合わせる。このとき、拡径フランジ411a’によってシース接続口周縁が拡径されているので、中子414が引っ掛からず、コンクリートが損傷しない。なお、一対のコンクリートセグメント2が突き合わされる際のシース接続口周縁等の隙間は、この接着剤415で満たされる。
【0098】
−変形例1−
図6Dは、本実施形態の変形例1に係るシース接続口成形用挿入具410’を示し、コンクリートセグメント2内に埋め込まれる一対のシース接続管3が直線状に延びている点のみが上記実施形態5と異なる。
【0099】
すなわち、本変形例では、拡径フランジ411a’を傾斜させて形成する必要はない。この場合でも、シース接続口の拡径により、シース接続口成形用挿入具410’の取り外しが容易となり、中子414を嵌めたコンクリートセグメント2の突き合わせも容易となる。
【0100】
−変形例2−
図示しないが、本変形例は、上記実施形態3のように、既成コンクリートセグメント2’の端面2a’に突き合わされるコンクリートセグメント2の端面2aにおいて、既成コンクリートセグメント2’に埋め込まれた既成シース接続管3’の開口端3a’と、開口端3a’に対向する位置に埋め込まれるシース接続管3の開口端3aとを跨ぐように、既成シース接続管3’の開口端3a’及びシース接続管3の開口端3aの内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具であってもよい。
【0101】
具体的には図示しないが、上記実施形態5と同様にゴムシート13,13’が巻き付けられた円筒状の芯材411と、拡径フランジ411aとを備えるが、固定部材312は有さないため、既成コンクリートセグメント2’に対しては、拡径フランジ411aを用いてクギ等により固定すればよい。
【0102】
具体的には、まず、既成コンクリートセグメント2’のシース接続口に対応する位置にシースを配管する。
【0103】
次いで、既成コンクリートセグメント2’に埋設された既成シース接続管3’及びシース接続管3の開口端3a,3a’を跨ぐようにシース接続口成形用挿入具410を挿入する。
【0104】
次いで、型枠1にコンクリートを打設する。
【0105】
次いで、型枠1からコンクリートセグメント2を取り外す。
【0106】
次いで、又はこのコンクリートセグメント2の取り外し時にシース接続口成形用挿入具410がコンクリートセグメント2から取り外される。
【0107】
次いで、シース接続口成形用挿入具410を取り外してできたコンクリートセグメント2におけるシース接続口に中子414を挿入する。
【0108】
次いで、一対のコンクリートセグメント2,2’の端面2a,2a’に接着剤415を塗る。
【0109】
次いで、中子414を既成コンクリートセグメント2’のシース接続口に挿入するように、既成コンクリートセグメント2’にコンクリートセグメント2を突き合わせる。
【0110】
このようにして本変形例においても、シース接続口の拡径により、シース接続口成形用挿入具410の取り外しが容易となり、中子414を嵌めたコンクリートセグメント2の突き合わせも容易となる。
【0111】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0112】
すなわち、上記実施形態では、シース接続管3,3’の開口端3aの内径を他の部位に対して大きくしていないが、例えば、ラッパ形状に外径を徐々に大きくするようにしてもよい。そうすれば、コンクリートセグメント2の引き離し時に、よりシース接続口成形用挿入具が抜きやすくなる。また、コンクリートセグメント2を工事現場で設置する場合にも、シース接続管に内挿する接続具が嵌めやすくなって施工が容易となる。
【0113】
上記実施形態5では、固定部材312を用いて芯材411を型枠1に固定するようにしているが、実施形態1のようにガイドパイプ4を挿通する実施形態にも応用可能である。その場合には、固定部材312とは異なる別の方法、例えばビス、クギ等で拡径フランジ411a’を型枠1に固定すればよい。
【0114】
さらに、詳細は図示しないが、全ての実施形態において、ゴム等の弾性部材からなるシートを型枠とフランジ部や拡径フランジとの間に挟むことで、コンクリートセグメントの引き離し時にクッションとなり、剥がれ損傷がより生じにくくなる。
【0115】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0116】
1 型枠
1a 開口
1a’ 第1ボルト挿通孔
2 コンクリートセグメント
2’ 既成コンクリートセグメント
2a,2a’ 端面
2b 凹部
3 シース接続管
3’ 既成シース接続管
3a,3a’ 開口端
3b 螺旋部
4 ガイドパイプ
10,10’,110,210,310,410,410’ シース接続口成形用挿入具
11,11’,111,211,311,411 芯材
11a,11a’,111a,211a,311a フランジ部
11b’ 第2ボルト挿通孔
12 木ねじ(固定部材)
12’ 固定用ボルト(固定部材)
13,13’ ゴムシート(弾性部材)
20 シース接続口
312 固定部材
312a 固定用ボルト
312b,312c 締付ナット
312d テーパワッシャ
411a,411a’ 拡径フランジ
414 中子
415 接着剤
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D