【実施例】
【0028】
図1に示す本発明の建築物の軒先構造の参考例は、横葺き外装材である外装材9Aと、この外装材9Aを保持する保持部材(吊子)9bと、前記外装材9Aの裏面側に添装された裏貼り材9cとにより構成される横葺き外装構造9の水下端の更に水下側に延設されるものであって、前記外装構造の屋根下地面に対して異勾配に構成される軒先外装材1を配設してなる。
【0029】
前記軒先外装材1は、前述のように外装構造9の屋根下地面に対して異勾配に構成されるものである。
この参考例における軒先外装材1は、異なる複数勾配を有するものであって、軒先外装材1自体に屋根下地面に沿う部分111とそれと異なる傾斜角度に配される部分11とを備える態様に相当し、
図1(b)に拡大して示すように面板部11の水上付近111が異なる角度に折れ曲がった形状に成形されている。即ち屋根下地面とほぼ同様の傾斜角度に配設される水上付近111と面板部11とは、異なる勾配に配設される。また、この軒先外装材1の水上端12には折り上げ係合部が形成され、その水下端13には折り返し係合部が形成されている。
【0030】
この参考例の軒先下地構造は、その上面に前記軒先外装材1を支持する上部支持部材2Aと、前記横葺き外装構造9の裏面側に配設される下部支持部材2Bと、これらを連結する連絡支持部材2Cとを一体的に連結してなる構成である。
前記上部支持部材2Aは、複数の横葺き外装材9Aより形成される横葺き外装構造の支持部材をも兼ねる構成であり、流れ方向に長尺な断面略ハット状の長尺材であって、最も水下側の外装材9Zの水下側にて異なる傾斜角度(17°から8°へ)にコシ折れしている。
また、前記下部支持部材2Bは、前記横葺き外装構造9の裏面側に略水平状に配設される構成である。
さらに、連絡支持部材2Cは、それら(2A,2B)を連結する短尺状の板状材であり合計3つの締着部材2dにて一体的に連結されている。
なお、前記上部支持部材2Aは躯体6eや駆体6g等に裏面を支持される状態で一体的に固定され、前記連絡支持部材2Cは躯体6gにビス止めされて一体的に固定されているため、これらの支持部材2A,2B,2Cからなる軒先下地構造は、前記軒先外装材1の裏面側に容易に且つ強固に一体化された構造である。
【0031】
また、前記横葺き外装構造9の屋根下地は、鋼材等にて形成される縦母屋6aの上端に屋根裏面側へ延在する横母屋6b、及び軒先側へ延在する軒先母屋6cが一体的に固定され、前記横母屋6b及び軒先母屋6cにはL字材6dを介してC形鋼からなる躯体6eが桁行き方向に延在するように固定され、該躯体6e上には前記上部支持部材2Aが配設されている。そして、前記縦母屋6aの外側には、鋼材6fが取り付けられ、前記軒先母屋6cの裏面側に、前記縦母屋6aの外側から略水平状に延在するように下部支持部材2Bが配設され、この下部支持部材2Bの下面に軒天部材(軒先天井材)3B等が吊設状に配設されている。
【0032】
なお、前記上部支持部材2Aの水下端には、取付補助材2fが嵌合状に取り付けられ、該取付補助材2fにはL字状に折り下げられた形状の係合部が設けられている。この係合部には、前記軒先外装材1の水下端に設けられた折り返し係合部13が係合する。
また、この上部支持部材2Aと前記下部支持部材1Bは、前述のように締着部材2dにて連結されるが、前記上部支持部材2Aの軒端が前記下部支持部材2Bの先端から突出するように組み付けられて連結されている。
さらに、前記連絡支持材2Cは、前述のように両支持部材2A,2Bを接続(連絡)するものであって、詳しくは両支持部材2A,2Bの長さの途中部分を締着部材2d,2dにて連結するものであり、傾斜状に配されるように組み付けられている。
【0033】
前記軒天部材3は、前記下部支持部材1Bの裏面及び軒先裏面を被覆する略平坦状の化粧面部を有する部材であって、前記下部支持部材1Bの裏面側に吊設され、建築物側の端部は前記下部支持部材1Bの裏面にビス止めされ、軒先側の端部は前記軒先外装材1の水下端13と重合すると共に取付補助材2fの係合部に係合している。
この参考例の軒天部材3は、前記取付補助材2fへの取付部を有する第1部材3aと、その建築物側に4枚が連続的に配設される第2部材3bと、更にその建築物側に3枚が連続的に配設される第3部材3cとからなる。
なお、第2部材3bと第3部材3cとは、何れも中央面板部31,31'に厚肉の断熱材3d,3d'を載置する構成であって、第2部材3bの面板部31方が第3部材3cの面板部31'よりも僅かに長い。断熱材3d,3d'は、その裏面側に部分的に薄肉部分を備えている。また、これらの部材3b,3cは、
図1(c)に拡大して示す(図示したのは部材3dのみ)ように、面板部31,31'の一方の側端32に下面側が開放する略溝状の収容部321と、他方の側端33を側方から挿入状に係合可能な係合溝322と,前記収容部321の端縁を外方へ沿在させた323とを有する構成であり、ボルト等の固定具3eにて左右方向に隣り合う第2部材3b,3b同士や第3部材3c,3c同士、或いは隣り合う第2部材3bと第3部材3cとを接続可能である。なお、前記収容部321には前記固定具3eの頭部が収容され、該頭部を含めて収容部321の開放部分は、前記係合溝322に他方の側端33を係合したことで覆われ、裏面側から見上げても露出することがない。
【0034】
なお、
図1(a)には詳細には図示していないが、前記収納部321に一点鎖線にて示した部分に、前記固定具3eを下方からビス等の固定具3eを打ち込むことにより、これらの軒天部材3を前記下部支持部材1Bの裏面側に一体的に取り付けることができる。
【0035】
このような部材により構築されている本発明の建築物の軒先構造は、傾斜勾配を有する外装構造9の水下端の更に水下側に延設されると共に、前記外装構造の屋根下地面に対して異勾配に構成される軒先外装材1を配設してなるものであるから、通常の外装構造のように雨仕舞い等を考慮する必要が無い部分において、均一な傾斜勾配を有する屋根面からの変化を楽しむことができる。そして、通常の一般屋根に比べて先端がシャープな先鋭な印象を受ける屋根を施工し易く、該軒先により所定領域の雨避けや日光避けの庇(ひさし)として有効利用する空間を形成することも可能である。
【0036】
また、この参考例における軒先下地構造では、上部支持部材2Aと下部支持部材2Bと連絡支持部材2Cとを合計3つの締着部材1dにて一体的に連結したものであり、3つ支持部材1A,1B,1Cのうちの二つが躯体6gなどに取り付けられているため、極めて安定性及び強度が高い構造であり、前記軒先外装材1を強力に支持することができ、例えば雨水等が貯まることがあっても、支障を生ずることがない。
【0037】
図2(a)に示す第1実施例の軒先構造では、軒先外装材1
2自体は単一勾配を有するものであり、屋根下地面に対して異なる傾斜勾配に配される態様に相当する。
この第1実施例における軒先外装材1
2は、図
2(b)に拡大して示すように略平坦状の面板部11’が設けられる点のみが相違するだけであり、その水上端12に折り上げ係合部が形成され、その水下端13に折り返し係合部が形成される構成は前記参考例と全く同様である。
【0038】
この第1実施例における軒先下地構造は、その上面に前記軒先外装材1
2を支持する上部支持部材2AIIと、軒先に向かって上り傾斜する下部支持部材2BIIと、駆体6gに一体的に固定されると共に前記支持部材2AII,2BIIを連結する連絡支持部材2CIIとからなり、合計3つの締着部材2dにて一体的に連結した構成である。
前記上部支持部材2AIIは、複数の横葺き外装材9Dより形成される横葺き外装構造9IIの屋根下地(支持部材9G)とは異勾配になるように連結される断面略ハット型の定尺材である。また、下部支持部材2BIIは、前記横葺き外装構造9IIの裏面側に配設される略水平状の軒天支持部材2Gの軒先端に連結される断面略ハット型の定尺材である。さらに、連絡支持部材2CIIは、それらを連結する短尺状の板状材であって、躯体6gに固定され、その先端は前記支持部材9Gとも連結されている。そして、これらの支持部材2AII,2BII,2CIIは、前記参考例と同様に合計3つの締着部材2dにて一体的に連結され、駆体6gにも固定されているので、振動や正荷重等に高い耐性を有する。
また、例えば前記上部支持部材2AIIと支持部材9Gとは、連絡支持部材2CIIを介しれ接続されているが、共に断面略ハット型(上部支持部材2AIIは定尺材、支持部材9Gは長尺材)であるから、固定具等を用いて容易に直接的に連結するようにしてもよい。
なお、この第1実施例における軒天部材3IIは、前記下部支持部材2BIIや軒天支持部材2Gの裏面側に配設されるものであるが、詳細な記載については省略した。
【0039】
なお、この第1実施例における外装構造9IIは、横葺き外装材である外装材9Dの形状が前記外装材9Aとは相違し、裏面側にバックアップ材9e及び裏貼り材9fを備え、保持部材(吊子)については省略しているが、基本構成は、前記参考例における横葺き外装構造9とほとんど同様である。
また、この第1実施例でも前記上部支持部材2AIIの軒端に取付補助材2fを取り付ける構成は同様であり、該取付補助材2fに設けた係合部に、前記軒先外装材12の折り返し係合部13や前記軒天部材3IIを一体的に固定する。
【0040】
図3(a)に示す第2実施例は、前記第1実施例と略同様の軒先構造を異なる軒先下地構造の上に取り付けた例であり、軒先外装材1
3についてもほぼ同様で単一勾配を有する部材であり、屋根下地面に対して異なる傾斜勾配に形成された軒先下地構造の上に配される態様に相当する。
なお、
図3(b)は比較のために示した前記第1実施例の軒先のみを拡大したものである。
【0041】
この第2実施例における軒先下地構造は、その上面に前記軒先外装材1
3を支持する上部支持部材2AIII,2AIII’と、軒先に向かって上り傾斜する下部支持部材2BIIIと、駆体6hに一体的に固定される連絡支持部材2CIIIとからなる。
この第2実施例では、複数部材にて構成される上部支持部材2AIII,2AIII’が、異なる傾斜勾配を有するように組み合わされた例である。水上側に配される上部支持部材2AIII’は、横葺き外装構造9IIの屋根下地となる支持部材に他ならず、断面略ハット型の長尺材である。水下側に配される上部支持部材2AIIIは、上面に前記軒先外装材1
3が沿設されるものであって、断面略ハット型の定尺材である。そして、これらの上部支持部材2AIII,2AIII’は、二箇所の固定具2eにて異勾配となるように連結されている。
なお、下部支持部材2BIIIも連絡支持部材2CIIIも、前記第1実施例における各部材とほぼ同様である。
【0042】
前記下部支持部材2BIIIの裏面に吊設状に配設される軒天部材3IIIは、前記下部支持部材2BIIIの裏面及び軒先裏面を被覆する化粧面部を有する部材であって、軒先側の端部は前記軒先外装材1
3の水下端と重合すると共に取付補助材2fの係合部に係合している。
【0043】
図4(a)に示す
第2参考例の軒先構造では、軒先外装材1
4が上方へ延出する部分11bを有する例であり、起立部14を有する例でもある。
この
第2参考例における軒先外装材1
4は、
図4(b)に拡大して示すように、面板部が水上側から順に下り傾斜部分11a、上り傾斜部分11b、略平坦状部分11cの3つの異なる勾配を有するものである。また、その軒先端には起立部14が設けられているため、図示するように降雨の際に雨樋の役割を果たす箇所を容易に形成することができる。
【0044】
この
第2参考例における軒先下地構造は、前記軒先外装材1
4の一部がその上面に沿設される上部支持部材2AIVと、その下面に軒天部材3Vを支持すると共にその上面に前記軒先外装材1
4の一部を支持する下部支持部材2BIVと、それらを連結する連絡支持部材2CIVとからなる。
前記上部支持部材2AIVは、複数の横葺き外装材9Dより形成される横葺き外装構造の支持部材を兼ねるので、図示する躯体6pやそれ以外の躯体等に固定され、屋根勾配に略平行状に水下側へ延出している。
また、前記下部支持部材2BIVは、大きく反り返るように湾曲している部材であり、その先端には取付補助材2f’が取り付けられている。
さらに、前記連絡支持部材2CIVは、略鉛直状に配設されている。
そして、前記連絡支持部材2CIVは、前記上部支持部材2AIV及び前記下部支持部材2BIVのそれぞれの長さの中程を締着部材2dにて連結しており、前記上部支持部材2AIVと前記下部支持部材2BIVとは、前者(2AIV)の先端と後者(2BIV)の軒先付近とを締着部材2dにて連結し、後者、即ち下部支持部材2BIVの軒先端が突出状に配設されるように組み付けられている。
【0045】
この
第2参考例における軒天部材3IVは、前記参考例に用いた軒天部材3(3b,3c)を大きく反り返るように湾曲させた化粧面を形成する複数の第1部材3IVaと、その軒先側に配設される第2部材3IVbと、それらを連絡する第3部材3IVcとからなり、図中、3IVfは、前記第1部材3IVaを前記下部支持部材2BIVの裏面側に固定する固着具であり、3Vd及び3Veは、前記第1部材3IVaと第2部材3IVb、第2部材3IVbと第3部材3IVcを連結(接続)する連絡具である。
【0046】
なお、前記取付補助材2f'は、水上側が開放する略コ状の取付部分が形成され、前記下部支持部材2BIVの軒先端に固定され、その上面に前記軒先外装材1
4の起立部14と共に固定される先端化粧材4aが固定され、その下面に前記軒天部材3IVの第2部材3IVb及び第3部材3IVcが固定されている。
【0047】
この
第2参考例では、前述のように浅いV字状の排水溝が形成され、符号Wで示す雨水を貯留、排水することができる。
この雨水Wのように上方から正荷重が作用するような軒先構造であっても、堅牢で強固な軒先構造を維持できる。
【0048】
図5(a)に示す
第3参考例の軒先構造では、軒先外装材1
5が軒端に起立部15を有する例である。
この
第3参考例における軒先外装材1
5は、
図5(b)に拡大して示すように、面板部が水上側から順に下り傾斜部分11d、平坦状部分11eの2つの異なる勾配を有するものである。その軒先端には起立部15が設けられているため、降雨の際に雨樋の役割を果たす箇所を容易に形成することができる。
【0049】
この
第3参考例における軒先下地構造は、その上面に前記軒先外装材1
5の一部を支持する上部支持部材2AVが、複数の横葺き外装材9Dより形成される横葺き外装構造の支持部材を兼ね、屋根勾配に略平行状に水下側へ延出している。また、その下面に軒天部材3Vを支持する下部支持部材2BVは、略水平状に配設される部材であり、その先端には略W字状の取付補助材2f”が取り付けられている。さらに、それらを繋ぐ連絡支持部材2CV,2CV’は、複数配設されている。
そして、前述のように前記上部支持部材2AVは横葺き外装構造の支持部材を兼ねているので、図示する躯体6qやそれ以外の躯体等に固定され、前記二つの連絡支持部材2CV,2CV’も躯体6qに固定されている。
また、前記連絡支持部材2CV,2CV’は、前記上部支持部材2AV及び前記下部支持部材2BVのそれぞれの長さの中程を締着部材2dにて連結しており、前記上部支持部材2AVと前記下部支持部材2BVとは、前記上部支持部材2AVの先端と前記下部支持部材2BVの軒先付近とを締着部材2dにて連結し、前記下部支持部材2BVの軒先端が突出状に配設されるように組み付けられている。
【0050】
この
第3参考例における軒先外装材1
5は、前記上部支持部材2AVの上面に沿う水上部分11dと前記下部支持部材2BVの上面に沿う水下部分11eと更に水下端を立ち上げた起立部15とを有し、これらの水上部分と水下部分とで上方が開放する浅い溝状部が形成されている。
この
第3参考例における軒天部材3VIは、前記参考例に用いた軒天部材3(3b,3c)とほぼ同様の化粧面を形成する複数の第1部材3Vaと、その軒先側に配設される第2部材3Vbとからなる。
【0051】
なお、前記取付補助材2f"は、前述のように略W字状に成形され、前記下部支持部材2BVの軒先端に配設され、その上面に前記軒先外装材1
5の第1部材が固定され、その下面に前記軒天部材3Vの第2部材3Vbが配設され、それぞれ固定されている。
【0052】
この
第3参考例では、前述のように浅い溝状部が形成され、雨水を貯留、排水することができる。
この雨水のように上方から正荷重が作用するような軒先構造であっても、堅牢で強固な軒先構造を維持できる。