特許第6751750号(P6751750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751750
(24)【登録日】2020年8月19日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ボールベアリングのボール保持器
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/38 20060101AFI20200831BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20200831BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   F16C33/38
   F16C33/66 Z
   F16C19/06
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-234308(P2018-234308)
(22)【出願日】2018年12月14日
(65)【公開番号】特開2020-94660(P2020-94660A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】596016557
【氏名又は名称】上銀科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】張哲綱
(72)【発明者】
【氏名】▲頼▼▲イク▼霖
(72)【発明者】
【氏名】王政隆
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−151345(JP,A)
【文献】 特開2016−118294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/30−33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一環状部、第二環状部、複数の第一リブおよび複数の第二リブを備え、
前記第二環状部は、前記第一環状部と同軸上に対応し、外径が前記第一環状部の外径より小さく、
複数の前記第一リブは、前記第一環状部から前記第二環状部の外周面に向かって突出し、かつ前記第一環状部に沿って一定間隔を置いて配列され、二つずつの隣り合う前記第一リブの間に第一円弧凹状溝を形成し、
複数の前記第一リブは、それぞれ第一自由端および前記第一自由端の先端に形成された第一誘導溝を有し、
複数の前記第二リブは、前記第二環状部から前記第一環状部の内周面に向かって突出し、かつ前記第二環状部に沿って一定間隔を置いて配列され、二つずつの隣り合う前記第二リブの間に第二円弧凹状溝を形成し、
複数の前記第二リブは、それぞれ第二自由端および前記第二自由端の先端に形成された第二誘導溝を有し、
複数の前記第二リブの前記第二自由端は一つずつ前記第一リブの前記第一自由端に重なり、複数の前記第一円弧凹状溝および複数の前記第二円弧凹状溝は一つずつ相互に対応してボール格納溝を形成し、
前記第一誘導溝および第二誘導溝はボールベアリングの周方向に延び、かつボールベアリングの軸方向に深さを有する断面が窪んだ円弧形を呈し、
[関係式1] 0.5D1<D2<D1
前記第一環状部の外周縁部と前記第二環状部の内周縁部との間の径方向距離はD1と定義され、前記第一リブの前記第一自由端の先端と前記第二リブの先端との間の軸方向距離はD2と定義され、前記D1と前記D2の関係は前記関係式1を満たすことを特徴とする、
ボールベアリングのボール保持器。
【請求項2】
複数の前記第一リブはそれぞれ第一当接面と、前記第一当接面に背を向けた第一誘導斜面とを有し、複数の前記第二リブはそれぞれ第二当接面と、前記第二当接面に背を向けた第二誘導斜面とを有し、複数の前記第一リブの前記第一当接面は一つずつ前記第二リブの前記第二当接面に当接し、複数の前記第一リブの前記第一誘導斜面はそれぞれ前記第二リブの前記第二誘導斜面に平行であることを特徴とする請求項1に記載のボールベアリングのボール保持器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールベアリングに関し、詳しくはボールベアリングのボール保持器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボールベアリングの潤滑方式は油潤滑およびグリース潤滑の二種類に分けられる。ボールに適宜な潤滑効果を与えるためには、前記二種類の潤滑媒質によってボールベアリングのボール保持器を選択し、搭載する。
【0003】
油潤滑方式に対応するボール保持器の場合、オイルを保存するためにボールの周りに配置されたストッパーがボールの表面にオイルを確実に付着させることができるだけでなく、高速回転中のオイルがベアリングの外部に飛ばされることを防止できる。これに対し、グリース潤滑に対応するボール保持器はオイルを保存する構造が配置されない。オイルを保存する構造は高速回転したうえでグリースの流入を妨害し、即ちガスバリア現象を生じさせるため、グリースは遮断され、ボールを潤すことができない。つまり、油潤滑方式に対応するボール保持器が搭載してあるボールベアリングに潤滑作業を進める際、潤滑媒質はオイルであり、逆にグリースを潤滑媒質として使用すれば、潤滑が不十分になるという問題が発生する。言い換えれば、二つの潤滑媒質が異なるボール保持器は入れ替えることができない。しかしながら、ボールベアリングは見た目から内部のボール保持器のタイプを判断することが難しいため、ボール保持器が入れ替わって使用され、使用寿命が縮減されることがよくある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はオイルまたはグリースで潤うボールベアリングに対応し、使用上の利便性を高めることができるボールベアリングのボール保持器を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するためのボールベアリングのボール保持器は第一環状部、第二環状部、複数の第一リブおよび複数の第二リブを備える。第二環状部は第一環状部と同軸上に対応し、外径が第一環状部の外径より小さい。複数の第一リブは第一環状部と一体になり、第一環状部から第二環状部の一つの側面に向かって突出し、かつ第一環状部の中心に向かって一定間隔を置いて配列され、二つずつの隣り合う第一リブの間に第一円弧凹状溝を形成する。複数の第一リブはそれぞれ第一自由端および第一自由端の先端に形成された第一誘導溝を有する。複数の第二リブは第二環状部と一体になり、第二環状部から第一環状部の一つの側面に向かって突出し、かつ第二環状部の中心に向かって一定間隔を置いて配列され、二つずつの隣り合う第二リブの間に第二円弧凹状溝を形成する。複数の第二リブはそれぞれ第二自由端および第二自由端の先端に形成された第二誘導溝を有する。複数の第二リブの第二自由端は一つずつ第一リブの第一自由端に重なる。複数の第一円弧凹状溝および複数の第二円弧凹状溝は一つずつ相互に対応してボール格納溝を形成する。ボールはボール格納溝に配置される。
【0006】
上述した構造的特徴により、本発明によるボール保持器はオイルまたはグリースで潤うボールベアリングに適用できる。
本発明によるボール保持器がオイルで潤うボールベアリングに対応する際、第一リブおよび第二リブによって複数のボールにオイルを均質に塗布することができる。本発明によるボール保持器がグリースで潤うボールベアリングに対応する際、第一リブの第一自由端および第二リブの第二自由端からなる構造によって高速回転の際に生じたガスバリア現象を解決し、グリースを順調に流動させることができる。
【0007】
[関係式1]
0.5D1<D2<D1
【0008】
比較的好ましい場合、第一環状部の外周縁部と第二環状部の内周縁部との間の径方向距離をD1、第一リブの第一自由端の先端と第二リブの先端との間の軸方向距離をD2と定義すると、両者の関係は関係式1を満たす。つまり前記関係式1によって最良の効果を達成することができる。
【0009】
比較的好ましい場合、複数の第一リブはそれぞれ第一当接面と、第一当接面に背を向けた第一誘導斜面とを有する。複数の第二リブはそれぞれ第二当接面と、第二当接面に背を向けた第二誘導斜面とを有する。複数の第一リブの第一当接面は一つずつ第二リブの第二当接面に接続される。複数の第一リブの第一誘導斜面はそれぞれ第二リブの第二誘導斜面に平行であるため、第一誘導斜面および第二誘導斜面によってグリースの流動効果を高めることができる。
【0010】
比較的好ましい場合、それぞれの第一誘導溝および第二誘導溝は断面が円弧形または非円弧形である。
【0011】
本発明によるボール保持器の詳細な構造、特徴、組み立てまたは使用方法について、以下の実施形態の詳細な説明を通して明確にする。また、以下の詳細な説明および本発明により提示された実施形態は本発明を説明するための一例に過ぎず、本発明の請求範囲を限定できないことは、本発明にかかる領域において常識がある者ならば理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるボール保持器を使用したボールベアリングを示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態によるボール保持器を示す斜視図である。
図3図2中の3−3線に沿った断面図である。
図4図3の拡大図の一部分である。
図5】本発明の一実施形態によるボール保持器を示す背面図である。
図6a図4中の第一誘導溝および第二誘導溝が非円弧状を呈する模式図である。
図6b図4中の第一誘導溝および第二誘導溝が非円弧状を呈する模式図である。
図6c図4中の第一誘導溝および第二誘導溝が非円弧状を呈する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるボールベアリングのボール保持器を図面に基づいて説明する。図中の同じ符号は同じ部品または類似した部品の構造特徴を示す。
【0014】
(一実施形態)
図1および図2に示すように、ボールベアリング10は内輪12、外輪14および複数のボール16を備える。複数のボール16は内輪12と外輪14との間に配置される。
図2に示すように、本発明の一実施形態によるボール保持器18は内輪12と外輪14との間に配置され、第一環状部20、第二環状部30、複数の第一リブ40および複数の第二リブ50を備える。ボール保持器18の材料は特に限定されず、金属、高分子重合体またはフェノール樹脂から製作されてもよい。
【0015】
図2および図3に示すように、第二環状部30は第一環状部20と同軸上に対応し、外径が第一環状部20の外径より小さい。複数の第一リブ40は第一環状部20と一体になり、第一環状部20から第二環状部30の一つの側面に向かって突出し、かつ第一環状部20に沿って一定間隔を置いて配列され、二つずつの隣り合う第一リブ40の間に第一円弧凹状溝22を形成する。
複数の第二リブ50は第二環状部30と一体になり、第二環状部30から第一環状部20の一つの側面に向かって突出し、かつ第二環状部30に沿って一定間隔を置いて配列され、二つずつの隣り合う第二リブの間50の間に第二円弧凹状溝32を形成する。
【0016】
図4に示すように、複数の第一リブ40はそれぞれ内向きの第一自由端42および第一自由端42の先端に形成された第一誘導溝44を有する。複数の第二リブ50はそれぞれ内向きの第二自由端52および第二自由端52の先端に形成された第二誘導溝54を有する。本実施形態において、第一誘導溝44および第二誘導溝54は断面が円弧状である。複数の第一リブ40はそれぞれ第一当接面46と、第一当接面46に背を向けた第一誘導斜面48とを有する。
複数の第二リブ50はそれぞれ第二当接面56と、第二当接面56に背を向けた第二誘導斜面58とを有する。複数の第二リブ50の第二自由端52は一つずつ第一リブ40の第一自由端42に重なる。複数の第二リブ50の第二当接面56は一つずつ第一リブ40の第一当接面46に部分的に接続される。複数の第二リブ50の第二誘導斜面58はそれぞれ第一リブ40の第一誘導斜面48に平行である。上述した構造特徴により、複数の第一円弧凹状溝22および複数の第二円弧凹状溝32は一つずつ相互に対応してボール格納溝60を形成する。ボール16はボール格納溝60に配置される。
【0017】
[関係式1]
0.5D1<D2<D1
【0018】
上述した構造特徴により、本発明によるボール保持器18がオイルで潤うボールベアリングに対応する場合、第一リブ40および第二リブ50はオイルをボール格納溝60内に保存し、複数のボール16の表面にオイルを均質に塗布することができる。
本発明によるボール保持器18がグリースで潤うボールベアリングに対応する場合、第一リブ40の第一自由端42および第二リブ50の第二自由端52からなる構造は高速回転の際に生じたガスバリア現象を解決するため、グリースは複数のボール16を順調に潤すことができる。第一誘導溝44、第二誘導溝54、第一誘導斜面48および第二誘導斜面58はグリースの流動効果を高めることができる。
図4に示すように、ボール保持器18の構造強度を維持し、オイルまたはグリースによって最良の潤滑効果を発揮するためには、第一環状部20の外周縁部と第二環状部30の内周縁部との間の径方向距離をD1、第一リブ40の第一自由端42の先端と第二リブ50の先端との間の軸方向距離をD2と定義して、両者の関係が関係式1を満たせばよい。
逆にD2が0.5D1より小さく、即ち第一リブ40と第二リブ50との連結部位が小さ過ぎる場合にはボール保持器18の強度が足りない。D2がD1より大きく、即ち第一リブ40と第二リブ50との連結部位が大き過ぎる場合にはガスバリア現象が起こりやすいため、グリースが遮断され、ボールを潤すことができなくなる。言い換えれば、本発明によるボール保持器18が関係式1を満たせば、オイルまたはグリースで潤うボールベアリングに対応し、使用上の利便性を高めることができる
【0019】
【表1】
【0020】
表1は本発明の構造を採用する二種類のボール保持器の規格を表示するものである。表1において、BDはボール16の直径である。ODはボール保持器18の外径(図5参照)である。idはボール保持器18の内径(図5参照)である。Dはボール格納溝60の直径である。
【0021】
【表2】
【0022】
表2は最高回転速度下での規格の異なる二種類の前記ボール保持器に対するボール16の接触力を表示するものである。
【0023】
【表3】
【0024】
表3において、D2とD1の比(D2/D1)は横軸である。ボール保持器の許容応力(ボール保持器の破損直前まで耐えられる最大外力)は縦軸である。
【0025】
ボール保持器1の最大接触力は220Nである。ボール保持器2の最大接触力は450Nである。十分な構造強度を維持するためには、D2/D1が0.5以上でなければならない。
【0026】
一方、第一誘導溝44および第二誘導溝54は断面が円弧形に限定されず、非円弧形になってもよい。
図6aから図6cに示すように、第一誘導溝44および第二誘導溝54の断面が非円弧状を呈する場合、第一誘導溝44は壁面に第一連結面45を有する。第一連結面45は第一誘導斜面48に連結される。第一連結面45と第二当接面56との間の第一夾角αは30度以上90度未満である。第二誘導溝54は壁面に第二連結面55を有する。第二連結面55は第二誘導斜面58に連結される。第二連結面55と第一当接面46との間の第二夾角βは30度以上90度未満である。
図6aから図6cにおいて、第一夾角αは第二夾角βに等しい。第一夾角αおよび第二夾角βが30度以下である場合、第一環状部20および第二環状部30を断裂させる可能性がある。第一夾角αおよび第二夾角βが90度以上である場合、第一誘導溝44および第二誘導溝54を成型できない。言い換えれば、第一夾角αおよび第二夾角βを30度以上90度未満に維持すれば、第一誘導溝44および第二誘導溝54はグリースの流動効果を高めることができる。


【符号の説明】
【0027】
10 ボールベアリング
12 内輪
14 外輪
16 ボール
18 ボール保持器
20 第一環状部
22 第一円弧凹状溝
30 第二環状部
32 第二円弧凹状溝
40 第一リブ
42 第一自由端
44 第一誘導溝
45 第一連結面
46 第一当接面
48 第一誘導斜面
50 第二リブ
52 第二自由端
54 第二誘導溝
55 第二連結面
56 第二当接面
58 第二誘導斜面
60 ボール格納溝
α 第一夾角
β 第二夾角
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c