【実施例】
【0034】
(試験1)
・試験試料(機能性部材)の調製
ビタミンCを担持した機能性部材を作成した。機能性部材はセラミックス(コージェライト)からなる基材(多孔質、ハニカム形状)のに機能性材料としてのビタミンC〔アスコルビン酸〕を含浸乾燥させることで作成した。ビタミンCの量は基材の質量を基準として5%となるように調節した。得られたビタミンC担持機能性部材を比較例1の試験試料とした。
【0035】
体積平均粒子径5nm程度の白金ナノコロイド分散液(アプト社製、白金含有量20μg/0.1g:白金微粒子の体積平均粒径5μm、コロイド化剤:クエン酸)を白金濃度が10ppmになるように水で希釈した希釈液を調整した。比較例1の試験試料を調製した希釈液中に浸漬した後、110℃で12時間乾燥し、水素雰囲気中で900℃で1時間焼成したものを実施例の試験試料とした。また、ビタミンCを含浸させていない基材に対して上述の白金ナノコロイド分散液を含浸して乾燥したものを比較例2の試験試料とした。
【0036】
・試験(ビタミンC及びカテキンの放出量の経時変化)
実施例及び比較例1の試験試料について、それぞれ空気を1.0m
3/分(25℃、相対湿度40%、55%、70%の3条件)で流通させたときのビタミンC放出量を経時的に測定した。測定は試験開始から1月毎に6時間だけ試験試料を通過した空気を水100mLにてバブリングし溶解したビタミンCの量を定量することで行った。ビタミンCの定量はDPPHを用いた抗酸化能の強さの測定にて行った。結果を表1及び
図1〜3に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表及び図より明らかなように、いずれの相対湿度においても実施例の方が比較例よりも長期間にわたって高いビタミンC放出量を示した。ビタミンCの放出量は相対湿度が高い方が、より多いことが分かった。
【0039】
この結果からフィルタに担持させたビタミンCは白金等の粒子材料を併せて配設することにより長期間にわたり放出できることが分かった。これは白金等の粒子材料の存在によってビタミンCの酸化による劣化が抑制されたためであると考えられる。なお、カテキンついても同様の試験により放出量低減を抑制する効果が認められた。
【0040】
・試験(肌への影響)
実施例、比較例1及び2の機能性部材を3台の市販の加湿器(送風機を備えるもの)の送風口の流路に配設した。それぞれの加湿器を室温25℃,6畳空間で、湿度60%になるように継続的に運転した状態で1時間経過させて雰囲気を安定化させた。更に機能性部材を配設せずに加湿器だけを運転させた雰囲気を参照試験とした。
【0041】
その雰囲気中にて被験者に1時間静かに座った状態で過ごしてもらった後、皮膚状態を調べた。皮膚状態の計測は、左手甲中心部の皮膚角質層の水分量および皮膚弾力をコルネオメ-タ(Courage+Khazaka社製)を用いて測定した。
【0042】
測定結果としては実施例の機能性部材を配設した加湿器にて加湿した室内で過ごすことにより比較例1及び2の機能性部材を配設した加湿器にて加湿した室内で過ごしたときよりも肌年齢として使われる皮膚角質層の水分量と皮膚弾力との双方について向上していることが明らかになった。実施例、比較例1及び2の結果と、参照試験との結果を比較したところ、参照試験に対する比較例1及び2の向上の程度を足しても実施例にて発揮された向上の程度には到達できず、粒子材料が奏する効果とビタミンCやカテキンが奏する効果とは相加的なものではなく、相乗的なものであることが分かった。
【0043】
従って、ビタミンCやカテキンが白金等の粒子材料と共に空気中に放出されることによりそれぞれの効果が増強されることが分かった。
【0044】
・試験(洗濯物への影響)
実施例、比較例1及び2の機能性部材を3台の市販の除湿器(送風機を備えるもの)の送風口の流路に配設した。また、それらの機能性部材を配設しない除湿もそのまま用いた。
【0045】
洗濯物としては一般細菌に汚染させた30%牛乳水を少し温めて、乾いた綿タオルに十分に浸漬させたものを用いた。その洗濯物を脱水機で水分が出てくる程度に絞り、そのまま、干した。
【0046】
その後、実施例の除湿器、比較例1及び2の除湿器、市販の除湿器そのまま。除湿器を用いない場合のそれぞれについて検討を行った。検討は干してから、1時間後、3時間後、5時間後に臭気を評価することで行った。臭気の評価は臭気の強さを0(=無臭)から5(=強烈な臭い)までの5段階で評価して数値化することで行った。
【0047】
試験の結果、実施例の機能性部材を配設した除湿器にて乾燥した場合は比較例1及び2の機能性部材を配設した除湿器にて乾燥した場合よりも臭気の程度が低いことが分かった。実施例、比較例1及び2の結果と、参照試験との臭気の評価結果を比較したところ、参照試験に対する比較例1及び2の効果向上を足しても実施例にて発揮された効果向上の大きさには到達できず、本試験においても白金等の粒子材料が奏する効果とビタミンCやカテキンが奏する効果とは相加的なものではなく、相乗的なものであることが分かった。なお、当然に除湿器を用いない場合と比べて除湿器を用いた場合は臭気が低下することが分かった。
【0048】
従って、洗濯物の乾燥についてもビタミンCやカテキンが粒子材料と共に空気中に放出されることによりそれぞれの効果が増強されることが分かった。
【0049】
更に、上述の試験を同じ綿タオルに対して行った結果、実施例の除湿器を用いると、それ以外の除湿器を用いた場合や、除湿器を用いない場合と比べて綿タオルが白く保たれることが分かった。比較例1及び2の除湿器、市販の除湿器、除湿器を使用しない場合のそれぞれについて外観を検討したところ、実施例の除湿器にて乾燥させていた綿タオルより黄ばんでいることが観察できた。このことから実施例の除湿器では白金を担持させることにより、顕著な効果が発揮できることが分かった。これは試験3にて後述するように白金等の粒子材料が放出されているため、粒子材料が直接綿タオルに作用したものと推察できる。
【0050】
(試験2)
・試験試料(機能性部材)の調製
担持するPtの量を変えたこと以外は上述の実施例の試験試料と同様の方法にて試験試料を作成した。担持するPtの量は、Ptを100ppmの濃度で含有する白金ナノコロイド溶液を、含有するアスコルビン酸(ビタミンC)の質量を基準として、0%(試験試料1)、0.01%(試験試料2)、0.10%(試験試料3)、1.00%(試験試料4)とした。
【0051】
・抗酸価値の測定
試験試料1〜4についてそれぞれ100mLの水中にアスコルビン酸の濃度が5ppmになるように分散させた分散液を調製し、その液中にエアレーションポンプを用いて空気を流入させた。その後、24時間毎に液をサンプリングして抗酸価値を測定した。抗酸価値の測定は上述の試験と同様の方法にてビーカー内のアスコルビン酸濃度をDPPH試薬を用いて行った。
【0052】
各試験試料とも5回測定を行い、最大値および最小値を除く3つの値の平均を各試験試料の測定結果とした。結果を表2及び
図4に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2及び
図4より明らかなように、Ptの含有量を大きくすることで長期間にわたり抗酸価値を保持することができることが分かった。このことより、Ptの存在は抗酸価値の維持に有益であることが分かった。Ptの他、金、銀、ダイヤモンド、パラジウムについてもPtと同様に酸化還元反応への触媒効果があるため、同様の効果が期待できる。
【0055】
(試験3)
実施例の除湿器と比較例1の除湿器とを用いて試験を行った。それぞれの除湿器を内容積1立方米の試験ボックス中にて稼働させてそれぞれの除湿器から排出される空気で試験ボックス内を充満させた状態で、試験ボックス内から空気を吸引し純水中を通過させることで機能性部材から放出される成分を捕集した。成分の捕集は1回3時間を1日3回を10日間行った(計90時間)。放出した成分を捕集した液を実施例及び比較例1の試験液とした。なお、試験ボックスは完全に密閉されてはおらず、また、同じ部屋にて試験を行っていることから、互いの空気は幾らか混ざり合っているものと推測される。
【0056】
それぞれのの試験液を超純水で希釈して、測定試料とした。測定機器・条件を以下に示す。
【0057】
・ビタミンCの分析(LC-MS/MS)
質量分析:AB Sciex 3200QTRAP
HPLC:島津製作所 Prominence
HPLC条件:移動相A:0.1%ギ酸 移動相B:メタノール
イソクラティック分析 A/B=50/50
流速0.4mL/分
カラムオーブン40℃
分析時間10分
カラム:資生堂カプセルパックMG (C18 5u 4.6mmI.D.x150mm)
MS測定モード:ESIネガティブ
MRMチャンネル:ビタミンC 175/115
【0058】
・Ptの分析(ICP-MS)
測定項目を白金(Pt)とし、島津製作所製、Agilent 7500ceにて測定を行った。
【0059】
・結果
ビタミンCは実施例の試験液が342μg/mL、比較例1の試験液209μg/mLであった。
【0060】
Ptは実施例の試験液が131ng/mL、比較例1の試験液13.5ng/mLであった。
【0061】
この結果から、白金を担持させたハニカムを用いた除湿器から放出されるビタミンCの方が多いこと、更には白金自体も放出されていることが分かった。従って、担持された白金の粒子及びビタミンCは露出しており、使用に伴って放出されていることが推測された。
【0062】
このように、実施例の機能性部材からはビタミンCと共に白金も放出されていることが分かった。更に、抗酸化作用が長期間にわたって増加していることからビタミンCの効果とプラチナの効果とが相乗的に作用して抗酸化作用が発揮されているものと考えられるため、ビタミンCとプラチナからなる粒子材料とは近接して存在していること(クラスター状になっていること)が推測される。
【0063】
なお、ビタミンCに変えてカテキンを用いても同様に放出されることは確認しており、また、白金以外の粒子材料についても同様の方法で担持させているので、同様に放出されることが期待できる。