特許第6751878号(P6751878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6751878
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/00 20200101AFI20200831BHJP
   F04D 25/08 20060101ALI20200831BHJP
   A61L 9/01 20060101ALN20200831BHJP
   C09K 15/06 20060101ALN20200831BHJP
   C09K 15/08 20060101ALN20200831BHJP
   C09K 15/32 20060101ALN20200831BHJP
【FI】
   D06F58/00 Z
   F04D25/08 307E
   !A61L9/01 H
   !A61L9/01 M
   !C09K15/06
   !C09K15/08
   !C09K15/32 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-147939(P2015-147939)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2016-202864(P2016-202864A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-85226(P2015-85226)
(32)【優先日】2015年4月17日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596087812
【氏名又は名称】株式会社エルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐野 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】宮松 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴美
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/111172(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/125847(WO,A1)
【文献】 特開2014−129217(JP,A)
【文献】 特開2002−003326(JP,A)
【文献】 特開2006−045491(JP,A)
【文献】 特開2011−037982(JP,A)
【文献】 特開2006−145079(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3179884(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
C09K 15/00−15/34
D06F 39/00−39/10
D06F 58/00−60/00
F04D 1/00−13/16,
17/00−19/02,
21/00−25/16,
29/00−35/00
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に表面に少なくとも一部が露出するように配設される、ビタミンCからなる機能性材料と、体積平均粒径が1〜300nmの白金から構成され、前記機能性材料の表面に少なくとも配設される粒子材料と、を有する機能性部材と、
前記機能性部材が空気の流路に配設された送風機構と、
をもつ衣類乾燥機用又は布団乾燥装置用であって、ビタミンCが放出可能な送風機。
【請求項2】
前記基材は体積平均粒径が10μm以下の粒子を一体化したものである請求項1に記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中にビタミンCやカテキンからなる抗酸化物を長期間にわたって放出可能な機能性部材やその機能性部材を備え、効果的に抗酸化物を放出可能な送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PM2.5、花粉症、ハウスダストなど空気中に含まれる物質による身体への影響が問題になっており、それらの物質を避けるために洗濯物や布団の部屋干しが行われている。また、防犯上の理由からも部屋干しが選択されている。
【0003】
太陽光や風による乾燥が期待できる室外に比べて室内では乾燥速度が低下しがちであるため洗濯物や布団を乾燥させるための乾燥機が従来から提供されている。
【0004】
ところで、太陽光による殺菌効果が期待できる室外に比べて室内では菌の繁殖が生じやすい。また、室内で洗濯物や布団を乾燥させると洗濯物や布団がもつ臭いを室内に放出するおそれもある。そのため、乾燥機にはそれらの菌の繁殖を抑制したり、臭いを抑制したりできる機能があると好ましい。例えば、ビタミンCやカテキンなどの抗酸化性や抗菌性が期待できる物質を風に乗せて空気中に放出するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−316909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビタミンCやカテキンは抗酸化作用が強力であるため、そのままの状態では経時的に抗酸化作用が低減することが問題であることが本発明者らの研究により明らかになっている。
【0007】
本発明者らは、白金、金、銀、ダイヤモンド、又はパラジウムなどからなるナノメートルオーダーの粒径をもつ粒子材料を併用することで、ビタミンCやカテキンの抗酸化作用の低下を抑制することができることを発見した。この効果は白金などの粒子材料が基材上でビタミンCやカテキンの劣化を抑制するばかりでなく、白金等の粒子材料がビタミンCやカテキンと共に放出されることによる効果も期待できる。白金等の粒子材料が放出されることにより、ビタミンCやカテキンを単独で放出する場合と比較して、耐久性と顕著な抗酸化作用が発現できることを見出している。詳しくは実施例にて説明する。
【0008】
そしてビタミンCやカテキンと、粒子材料とを併用することによる人体に対する新規な効果(肌への好ましい効果)を発見した。
【0009】
本発明は上記知見に鑑み完成されたものであり、ビタミンCやカテキンを長期間安定的に保持可能な機能性部材やその機能性部材を応用する装置としての送風機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決する機能性部材の特徴は、基材と、
前記基材に表面に少なくとも一部が露出するように配設される、ビタミンC及び/又はカテキンからなる機能性材料と、
体積平均粒径が1〜300nmの、白金、金、銀、ダイヤモンド、又はパラジウムから構成され、前記機能性材料の表面に少なくとも配設される粒子材料と、
を有することである。
【0011】
ビタミンCやカテキンからなる機能性材料は、表面に露出させることで接触する空気中に継続的に放出されることができる。機能性材料は白金などからなる粒子材料の近傍に配設されているため粒子材料の作用によって酸化劣化が抑制される。粒子材料は機能性材料と共に空気中に放出されることも想定され、放出された場合には粒子材料が直接接触することによる効果(粒子材料単独での効果に加え機能性材料との相乗効果も)も期待できる。
【0012】
(2)上記(1)の機能性部材における前記基材は体積平均粒径が10μm以下の粒子を一体化したものであることが好ましい。粒径が小さい粒子は比表面積が大きくなり空気に接触する面積が増えることから高い効果を発揮することができる。
【0013】
(3)上述した(1)又は(2)の機能性部材を空気の流路に配設することにより機能性材料と粒子材料とを併せて長期間にわたって放出することができる送風機を提供することができる。送風機としては、乾燥機(衣類乾燥機、布団乾燥機、ランドリーなども含む)、加湿器(加湿した空気を顔に噴射する美顔器を含む)、除湿器、エアコン、空気清浄器などのように送風を行う機構をもつ装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の機能性部材はビタミンCやカテキンからなる機能性材料を空気中に放出するまでは安定的に保持することができ、放出後は速やかに抗酸化作用を発現することが可能である。
【0015】
ビタミンCやカテキンは白金等の粒子材料と共に放出されることで 抗菌性や抗酸化性、肌への好影響(肌水分向上など)が実現できるものと推測できる。また、ビタミンCやカテキンの経時的な劣化などを抑制できるために長期間にわたりビタミンCやカテキンを放出することが可能になる。また、白金等の粒子材料の効果により同時に放出されたビタミンCやカテキンが空気中にて長期間安定的に存在することが予測される。白金などの粒子材料はビタミンCやカテキンなどと共に空気中に放出されるときにクラスター状となっていることが推測される。例えば、ビタミンC及び/又はカテキンと粒子材料とが混合したものが集合体になっていたり、ビタミンC及び/又はカテキンと粒子材料とがそれぞれ別個に集合体になったものが近接していたりすることが推測される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例における試験試料から放出されるビタミンCの経時変化(相対湿度70%)を示すグラフである。
図2】実施例における試験試料から放出されるビタミンCの経時変化(相対湿度55%)を示すグラフである。
図3】実施例における試験試料から放出されるビタミンCの経時変化(相対湿度40%)を示すグラフである。
図4】実施例における試験試料から放出されるビタミンCの経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の機能性部材及び送風機について以下、実施形態に基づき説明する。本実施形態の機能性部材は乾燥機などの送風機に取り付けて用いられる部材であり、空気が流通できるように、空気が導入される一端部と、空気が導出される他端部との間を連通する連通孔を有することが望ましい。連通孔を有する場合には連通孔の孔径を制御することにより、その孔径以上の径をもつ物質を捕集することも可能である。送風機としては、乾燥機(衣類乾燥機、布団乾燥機なども含む)、加湿器(美顔器を含む)、除湿器、エアコン、空気清浄器などのように送風を行う機構をもつ装置である。機能性部材としては送風機と共に使用する以外の方法で用いても良い。例えば、そのまま室内や収納庫(衣類用のクローゼット、冷蔵庫、冷凍庫、靴収納庫などを含む)などに載置することにより周辺にビタミンCやカテキンを白金と共に放出することが可能になる。そのため、単純な酸化防止剤、消臭剤、鮮度保持剤などとして用いることもできる。特に冷蔵庫内に冷気を供給する部分に配設することで冷蔵庫内に効率的にビタミンC、カテキン、粒子材料を供給できる。
【0018】
送風機としては特に温風が通過する流路中に機能性部材を配設する形態を採用することが好ましい。温風に接触することで機能性部材からビタミンCやカテキンが放出しやすくなるため機能性部材は高温雰囲気下で使用することが望ましいが、温度が高くなるとビタミンCやカテキンの劣化が進行しやすくなるために昇温の限界が低かったところ、昇温によるビタミンCやカテキンの劣化が含有させているプラチナなどの粒子材料により抑制できることから、劣化を抑制しながら機能性部材を高温に曝すことが可能になり、効果的にビタミンCやカテキンを放出できるからである。
【0019】
送風機としては更に加湿器に適用することが好ましい。加湿器としては室内の湿度を向上するために用いる装置の他、人体(例えば顔)に送風する装置(美顔器など)に組み込んで人体に対してビタミンCやカテキンと粒子材料とを含む空気を送風する装置がある。その結果、肌に対して好ましい効果(皮膚の角質層の水分量保持、肌弾力性の保持)を発揮することができる。同様の効果は室内や車内などのような閉空間で用いる他の送風機(エアコン、除湿器、サーキュレータ、扇風機、ファンヒータなど)においても発現することが期待できる。
【0020】
・機能性部材
本発明の機能性部材は基材と粒子材料と接着層とをもつ。接着層は基材と粒子材料とを接着する部材である。
【0021】
基材は特に限定しない。基材を構成する材料としてはセラミックスのような無機材料、高分子のような有機物が例示できる。基材の形態としては粒子状(例えば粒径5μm以下)、粒子状のものを一体化したもの(何らかのマトリックス材料を浸漬したり、焼結したりして一体化できる)、多孔質体、繊維(布、不織布、糸)、板状部材(パンチングメタルなども含む概念である)を組み合わせて形成するハニカム状等が例示できる。基材は比表面積が大きい形状を採用することが好ましい。
【0022】
無機材料としてはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素などを単体で用いることができる他、これらの複合材料(コージェライト、セピオライト、ゼオライトなどの複合酸化物など)として用いることができる。更にハニカムでは一般的な金属材料を用いることもできる。
【0023】
機能性材料はビタミンC及び/又はカテキンを含む。機能性材料は基材を形成するときに基材中に練り込んだり、機能性材料を適正な溶媒に溶解させた状態で基材を浸漬し乾燥することで基材の表面に機能性材料を固定したりできる。基材の形態を比表面積が大きい形態とすることで浸漬したときにより多くの機能性材料を表面に固定することができる。ビタミンCは純粋なアスコルビン酸の状態の他、何らかの塩として採用することも出来る。カテキンは純物質である狭義のカテキン(C15H14O6)の他、広義のカテキンである茶カテキン(エピカテキン、エピガロカテキンなどの混合物。茶から分離されたものでその他の夾雑物を含んでいても良い)であっても良い。
【0024】
粒子材料は白金、金、銀、ダイヤモンド、及びパラジウムからなる群から選択される1種以上の材料から形成される。粒子材料の体積平均粒径は1nm〜300nm程度である。粒子材料の量は特に限定されず、必要に応じて適正な量だけ混合される。
【0025】
粒子材料は少なくとも一部が機能性材料の表面に配設(機能性材料に接するように配設)する。粒子材料は、機能性材料の表面以外に配設されている残部があれば基材の表面や、基材の内部、機能性材料の内部に配設することができる。粒子材料と機能性材料とを基材の表面に配設する順序はどちらが先であっても良く、更には両者を基材の表面に配設する前に混合物にすること(つまり混合物の状態で基材の表面に配設すること)もできる。
【0026】
粒子材料は適正な分散媒中に分散させた状態で基材表面に噴霧したり、基材をその分散液中に浸漬したりすることで基材の表面に固定できる。基材の表面への固定は機能性材料よりも前であっても良いし、機能性材料の後であっても良い。また、粒子材料を予め何らかの材料(粉末状であることが好ましい)の表面に担持した状態で基材に固定することができる。基材として耐熱性があるもの(セラミックスなど)を採用する場合には基材表面に固定した後に加熱することで、より強固な結合を形成可能である。加熱時にはコロイダルシリカを混合して行うことでコロイダルシリカを介して粒子材料と基材との間を強固に接着することができる。
【0027】
・粒子材料を予めセラミックスからなる粉末に結合させる方法
粒子材料をセラミックス粉末や基材に結合させる方法(コロイダルシリカにより接着する方法)は、付着工程と、加熱工程と、必要に応じて噴霧乾燥工程、その他の工程を有する方法が例示できる。
【0028】
付着工程は、粒子材料コロイド含有分散液に無機材料からなる基材やセラミックス粉末(以下、「基材」、「基材等」と称する)を接触させて基材等の表面に粒子材料コロイドを付着させる工程である。粒子材料コロイドは粒子材料とその粒子材料をコロイド化するコロイド化剤とコロイダルシリカとを有し、何らかの分散媒中に分散された分散液である。分散媒としては水、アルコール(エタノールなど)などが例示できる。コロイド化剤としては特に限定されないが、いわゆる増粘剤、界面活性剤、カルボキシ基を化学構造中に含むカルボキシ基含有化合物が例示できる。コロイド化剤としては、ポリアクリル酸(塩を含む、例えばNa塩、K塩)、ポリメタクリル酸(塩を含む、例えばNa塩、K塩)、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン(特に、ポリ−1−ビニル−2−ピロリドン)、ポリビニルアルコール、アミノペクチン、ペクチン、メチルセルロース、メチルスロース、グルタチオン、シクロデキストリン、ポリシクロデキストリン、ドデカンチオール、有機酸(クエン酸などのヒドロキシカルボン酸)、グリセリン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、カチオン性ミセル−臭化セチルトリメチルアンモニウム、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性)、アルキル硫酸エステルのアルカリ金属塩、それらの混合物が例示できる。コロイド化剤がカルボキシ基含有化合物である場合は粒子材料に対して、カルボキシ基のモル数が白金のモル数を基準として80〜180程度になるように含有させることが望ましい。コロイダルシリカの含有量としては固形分の質量が全体を基準として10質量%以上50質量%以下にすることが望ましく、10質量%以上30質量%以下にすることがより望ましい。コロイダルシリカは粒径が1nm〜1μm程度のものをいう。
【0029】
粒子材料コロイド含有分散液は貴金属塩(粒子材料を構成する貴金属の塩)と保護剤(例えば有機酸)とを水及びアルコールの混合液に溶解させた溶液を還流することにより粒子材料を析出させることで粒子材料コロイド含有分散液が調製できる。その後、分散媒をアルコール(エタノールなど)に置換することもできる。置換方法としては置換前の分散媒の一部を蒸発させた後に、置換後の分散媒(アルコールなど)を添加する操作を繰り返す方法が例示できる。ダイヤモンドを採用する場合にはダイヤモンドのコロイド溶液を採用できる。ダイヤモンドは大きさをナノメートルオーダーにすることで表面にSP2炭素からなる層が形成され更にはカルボキシル基、アミノ基、エステル基などの官能基も存在することができることで酸化還元反応に影響を及ぼすことができる。
【0030】
粒子材料コロイド含有分散液を基材に接触させることにより、基材の表面に粒子材料コロイドを付着させた後、何らかの方法(例えば乾燥など)にて分散媒を除去することにより付着物が得られる。
【0031】
その後、付着物に対して加熱工程を行う。加熱工程は加熱することによりコロイド化剤を除去する工程である。加熱工程は酸化雰囲気(酸素など)、還元雰囲気(水素など)、非反応性雰囲気にておこなうことができる。酸化雰囲気を採用すると、表面の有機物を酸化除去して粒子材料を効果的に露出できる。還元雰囲気を採用すると、ビタミンC、カテキンが失活したものを再生できると共に、粒子材料を基材等に強固に結合出来る。酸化雰囲気の後に還元雰囲気、還元雰囲気の後に酸化雰囲気といったように、雰囲気を変化させながら加熱することもできる。このときに特にコロイダルシリカが熔融乃至軟化して粒子材料と基剤との間を接着することが望ましい。加熱工程を行う場合の付着物の形態は特に限定されず、粉末状、塊状(例えば板状など)の状態にて行うことができる。最終的に必要な形状に成形した後に、本加熱工程を行うことにより、複合セラミックス材料を必要な形状にて成形可能である。また、得られた複合セラミックス材料を粉砕するなどの操作を加えることにより、粉末にすることもできる。加熱温度は800℃〜1100℃程度にすることが望ましく、900℃〜1000℃にすることが更に望ましい。加熱時間はコロイダルシリカにより結合状態やコロイド化剤が除去されるために必要な時間に応じて適正に設定可能であり、例えば、1時間〜3時間程度にすることができる。なお、コロイド化剤の除去は必ずしも完全に行うことは必須では無い。
【0032】
付着物の形態を粉末状にするための望ましい方法としては噴霧乾燥工程を採用することが挙げられる。噴霧乾燥工程は基材として粉末状の形態を採用し、その基材を粒子材料コロイド含有分散液中に分散させた状態で噴霧乾燥を行う方法である。噴霧乾燥を行う条件は特に限定しないが、分散媒が速やかに除去できる温度にすることが望ましい。例えば、分散媒として水を採用する場合には噴霧乾燥を行う温度として、180℃〜250℃程度を採用すると速やかに分散媒を蒸発除去することができる。
【0033】
噴霧乾燥工程を採用する場合には粒子材料コロイド含有分散液中に機能性材料を含有させることができる。
【実施例】
【0034】
(試験1)
・試験試料(機能性部材)の調製
ビタミンCを担持した機能性部材を作成した。機能性部材はセラミックス(コージェライト)からなる基材(多孔質、ハニカム形状)のに機能性材料としてのビタミンC〔アスコルビン酸〕を含浸乾燥させることで作成した。ビタミンCの量は基材の質量を基準として5%となるように調節した。得られたビタミンC担持機能性部材を比較例1の試験試料とした。
【0035】
体積平均粒子径5nm程度の白金ナノコロイド分散液(アプト社製、白金含有量20μg/0.1g:白金微粒子の体積平均粒径5μm、コロイド化剤:クエン酸)を白金濃度が10ppmになるように水で希釈した希釈液を調整した。比較例1の試験試料を調製した希釈液中に浸漬した後、110℃で12時間乾燥し、水素雰囲気中で900℃で1時間焼成したものを実施例の試験試料とした。また、ビタミンCを含浸させていない基材に対して上述の白金ナノコロイド分散液を含浸して乾燥したものを比較例2の試験試料とした。
【0036】
・試験(ビタミンC及びカテキンの放出量の経時変化)
実施例及び比較例1の試験試料について、それぞれ空気を1.0m/分(25℃、相対湿度40%、55%、70%の3条件)で流通させたときのビタミンC放出量を経時的に測定した。測定は試験開始から1月毎に6時間だけ試験試料を通過した空気を水100mLにてバブリングし溶解したビタミンCの量を定量することで行った。ビタミンCの定量はDPPHを用いた抗酸化能の強さの測定にて行った。結果を表1及び図1〜3に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表及び図より明らかなように、いずれの相対湿度においても実施例の方が比較例よりも長期間にわたって高いビタミンC放出量を示した。ビタミンCの放出量は相対湿度が高い方が、より多いことが分かった。
【0039】
この結果からフィルタに担持させたビタミンCは白金等の粒子材料を併せて配設することにより長期間にわたり放出できることが分かった。これは白金等の粒子材料の存在によってビタミンCの酸化による劣化が抑制されたためであると考えられる。なお、カテキンついても同様の試験により放出量低減を抑制する効果が認められた。
【0040】
・試験(肌への影響)
実施例、比較例1及び2の機能性部材を3台の市販の加湿器(送風機を備えるもの)の送風口の流路に配設した。それぞれの加湿器を室温25℃,6畳空間で、湿度60%になるように継続的に運転した状態で1時間経過させて雰囲気を安定化させた。更に機能性部材を配設せずに加湿器だけを運転させた雰囲気を参照試験とした。
【0041】
その雰囲気中にて被験者に1時間静かに座った状態で過ごしてもらった後、皮膚状態を調べた。皮膚状態の計測は、左手甲中心部の皮膚角質層の水分量および皮膚弾力をコルネオメ-タ(Courage+Khazaka社製)を用いて測定した。
【0042】
測定結果としては実施例の機能性部材を配設した加湿器にて加湿した室内で過ごすことにより比較例1及び2の機能性部材を配設した加湿器にて加湿した室内で過ごしたときよりも肌年齢として使われる皮膚角質層の水分量と皮膚弾力との双方について向上していることが明らかになった。実施例、比較例1及び2の結果と、参照試験との結果を比較したところ、参照試験に対する比較例1及び2の向上の程度を足しても実施例にて発揮された向上の程度には到達できず、粒子材料が奏する効果とビタミンCやカテキンが奏する効果とは相加的なものではなく、相乗的なものであることが分かった。
【0043】
従って、ビタミンCやカテキンが白金等の粒子材料と共に空気中に放出されることによりそれぞれの効果が増強されることが分かった。
【0044】
・試験(洗濯物への影響)
実施例、比較例1及び2の機能性部材を3台の市販の除湿器(送風機を備えるもの)の送風口の流路に配設した。また、それらの機能性部材を配設しない除湿もそのまま用いた。
【0045】
洗濯物としては一般細菌に汚染させた30%牛乳水を少し温めて、乾いた綿タオルに十分に浸漬させたものを用いた。その洗濯物を脱水機で水分が出てくる程度に絞り、そのまま、干した。
【0046】
その後、実施例の除湿器、比較例1及び2の除湿器、市販の除湿器そのまま。除湿器を用いない場合のそれぞれについて検討を行った。検討は干してから、1時間後、3時間後、5時間後に臭気を評価することで行った。臭気の評価は臭気の強さを0(=無臭)から5(=強烈な臭い)までの5段階で評価して数値化することで行った。
【0047】
試験の結果、実施例の機能性部材を配設した除湿器にて乾燥した場合は比較例1及び2の機能性部材を配設した除湿器にて乾燥した場合よりも臭気の程度が低いことが分かった。実施例、比較例1及び2の結果と、参照試験との臭気の評価結果を比較したところ、参照試験に対する比較例1及び2の効果向上を足しても実施例にて発揮された効果向上の大きさには到達できず、本試験においても白金等の粒子材料が奏する効果とビタミンCやカテキンが奏する効果とは相加的なものではなく、相乗的なものであることが分かった。なお、当然に除湿器を用いない場合と比べて除湿器を用いた場合は臭気が低下することが分かった。
【0048】
従って、洗濯物の乾燥についてもビタミンCやカテキンが粒子材料と共に空気中に放出されることによりそれぞれの効果が増強されることが分かった。
【0049】
更に、上述の試験を同じ綿タオルに対して行った結果、実施例の除湿器を用いると、それ以外の除湿器を用いた場合や、除湿器を用いない場合と比べて綿タオルが白く保たれることが分かった。比較例1及び2の除湿器、市販の除湿器、除湿器を使用しない場合のそれぞれについて外観を検討したところ、実施例の除湿器にて乾燥させていた綿タオルより黄ばんでいることが観察できた。このことから実施例の除湿器では白金を担持させることにより、顕著な効果が発揮できることが分かった。これは試験3にて後述するように白金等の粒子材料が放出されているため、粒子材料が直接綿タオルに作用したものと推察できる。
【0050】
(試験2)
・試験試料(機能性部材)の調製
担持するPtの量を変えたこと以外は上述の実施例の試験試料と同様の方法にて試験試料を作成した。担持するPtの量は、Ptを100ppmの濃度で含有する白金ナノコロイド溶液を、含有するアスコルビン酸(ビタミンC)の質量を基準として、0%(試験試料1)、0.01%(試験試料2)、0.10%(試験試料3)、1.00%(試験試料4)とした。
【0051】
・抗酸価値の測定
試験試料1〜4についてそれぞれ100mLの水中にアスコルビン酸の濃度が5ppmになるように分散させた分散液を調製し、その液中にエアレーションポンプを用いて空気を流入させた。その後、24時間毎に液をサンプリングして抗酸価値を測定した。抗酸価値の測定は上述の試験と同様の方法にてビーカー内のアスコルビン酸濃度をDPPH試薬を用いて行った。
【0052】
各試験試料とも5回測定を行い、最大値および最小値を除く3つの値の平均を各試験試料の測定結果とした。結果を表2及び図4に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2及び図4より明らかなように、Ptの含有量を大きくすることで長期間にわたり抗酸価値を保持することができることが分かった。このことより、Ptの存在は抗酸価値の維持に有益であることが分かった。Ptの他、金、銀、ダイヤモンド、パラジウムについてもPtと同様に酸化還元反応への触媒効果があるため、同様の効果が期待できる。
【0055】
(試験3)
実施例の除湿器と比較例1の除湿器とを用いて試験を行った。それぞれの除湿器を内容積1立方米の試験ボックス中にて稼働させてそれぞれの除湿器から排出される空気で試験ボックス内を充満させた状態で、試験ボックス内から空気を吸引し純水中を通過させることで機能性部材から放出される成分を捕集した。成分の捕集は1回3時間を1日3回を10日間行った(計90時間)。放出した成分を捕集した液を実施例及び比較例1の試験液とした。なお、試験ボックスは完全に密閉されてはおらず、また、同じ部屋にて試験を行っていることから、互いの空気は幾らか混ざり合っているものと推測される。
【0056】
それぞれのの試験液を超純水で希釈して、測定試料とした。測定機器・条件を以下に示す。
【0057】
・ビタミンCの分析(LC-MS/MS)
質量分析:AB Sciex 3200QTRAP
HPLC:島津製作所 Prominence
HPLC条件:移動相A:0.1%ギ酸 移動相B:メタノール
イソクラティック分析 A/B=50/50
流速0.4mL/分
カラムオーブン40℃
分析時間10分
カラム:資生堂カプセルパックMG (C18 5u 4.6mmI.D.x150mm)
MS測定モード:ESIネガティブ
MRMチャンネル:ビタミンC 175/115
【0058】
・Ptの分析(ICP-MS)
測定項目を白金(Pt)とし、島津製作所製、Agilent 7500ceにて測定を行った。
【0059】
・結果
ビタミンCは実施例の試験液が342μg/mL、比較例1の試験液209μg/mLであった。
【0060】
Ptは実施例の試験液が131ng/mL、比較例1の試験液13.5ng/mLであった。
【0061】
この結果から、白金を担持させたハニカムを用いた除湿器から放出されるビタミンCの方が多いこと、更には白金自体も放出されていることが分かった。従って、担持された白金の粒子及びビタミンCは露出しており、使用に伴って放出されていることが推測された。
【0062】
このように、実施例の機能性部材からはビタミンCと共に白金も放出されていることが分かった。更に、抗酸化作用が長期間にわたって増加していることからビタミンCの効果とプラチナの効果とが相乗的に作用して抗酸化作用が発揮されているものと考えられるため、ビタミンCとプラチナからなる粒子材料とは近接して存在していること(クラスター状になっていること)が推測される。
【0063】
なお、ビタミンCに変えてカテキンを用いても同様に放出されることは確認しており、また、白金以外の粒子材料についても同様の方法で担持させているので、同様に放出されることが期待できる。
図1
図2
図3
図4