(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0018】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係る操作器の要部を示す断面斜視図である。
図1に示される実施の形態1に係る操作器100は、プラント等において、流量のプロセス制御に用いられる調節弁を操作する装置であり、外部に設けられたポジショナから供給された操作信号に応じて調節弁の弁軸を操作することにより、調節弁の弁開度を制御する。例えば、操作器100は、バタフライ弁等のロータリ式の調節弁を操作する電動式のアクチュエータである。
【0019】
実施の形態1に係る操作器100は、調節弁の弁軸を操作する動力伝達機構として、不思議遊星歯車機構を有しており、電動モータに対する電源供給がない場合であっても弁軸が動作しないセルフロック機能を備えている。また、操作器100は、電動モータに対する電源供給がない場合であっても、手動により弁軸を操作し、任意の弁開度において弁軸を固定することができる機能を備えている。
【0020】
更に、操作器100は、調節弁(弁軸)側から加えられた力を吸収して不思議遊星歯車機構の各歯車の破損を防ぐための構造を有している。
【0021】
以下、操作器100における上記の機能を実現するための具体的な構造について、詳細に説明する。
【0022】
図2は、実施の形態1に係る操作器の要部を示す平面図である。
図3は、実施の形態1に係る操作器の要部を示す断面図である。
図2には、
図1におけるP方向から見たときの操作器100の要部の平面構造が図示され、
図3には、
図2における操作器100のA−A断面が図示されている。なお、
図2,3では、操作器100の動力伝達機構を構成する各歯車の位置関係を明確にするために、操作器100の構成要素の一部を省略して図示している。
【0023】
図1〜3に示されるように、操作器100は、筐体1、駆動モータ2、太陽歯車3、遊星歯車4_1〜4_3、固定内歯車5、可動内歯車6、出力軸7、ダイヤル8、および手動操作用歯車9を有している。
【0024】
なお、操作器100は、ポジショナから供給された操作信号に基づいて駆動モータ2の回転を制御する電子回路部や電源ユニット等も有しているが、
図1〜3では、それらの図示を省略している。
【0025】
筐体1は、操作器100の構成部品を収容するための容器であり、例えば金属材料から構成されている。なお、
図1では、図示の都合上、筐体1の上部(
図1のP側)を覆う蓋を取り除いた場合が図示されているが、最終的な製品形態では筐体1の上部を覆う蓋が設置される。
【0026】
駆動モータ2は、上述した電子回路部(図示せず)によって制御される電動モータである。
【0027】
太陽歯車3は、駆動モータ2の回転軸に連結され、その回転軸の回転力を受けて回転(自転)する歯車である。
【0028】
固定内歯車5は、太陽歯車3を囲む形態で固定配置され、その内周面に歯を有する歯車である。具体的に、固定内歯車5は、駆動モータ2を支持するとともに遊星歯車4をP方向から回転可能に保持するプレート5aと、第1歯車部41の周囲と噛合う歯車部5bとから構成されている。
【0029】
ここで、プレート5aと歯車部5bとは別個の部品で構成しても良いが、一体形成することにより、部品点数を削減することができる。
【0030】
遊星歯車4_1〜4_3(総称する場合は、「遊星歯車4」と表記する。)は、太陽歯車3と固定内歯車5との間に配置され、太陽歯車3と固定内歯車5と噛合って太陽歯車3の周囲を公転しながら自転する歯車である。
【0031】
遊星歯車4は、回転方向に一定以上のトルクが加わった場合に、太陽歯車3と可動内歯車6との間の動力伝達を制限するトルクリミット構造を有している。具体的には、各遊星歯車4_1〜4_3は、第1歯車部41と、第1歯車部41と同一軸上に配置された第2歯車部42とを含み、第1歯車部41と第2歯車部42とが互いに連結された構造を有している。
【0032】
第1歯車部41は、太陽歯車3および固定内歯車5と噛合う歯車である。第2歯車部42は、第1歯車部41と同軸上に連結され、手動操作用歯車9および固定内歯車6と噛合う歯車である。ここで、第1歯車部41と第2歯車部とは、同一の径および歯数を有している。
【0033】
第1歯車部41および第2歯車部42は、第1歯車部41および第2歯車部42の何れか一方に所定の値を超える捻りモーメントが加わったとき、一方が他方に対して空転するように連結されている。なお、第1歯車部41および第2歯車部42の詳細については後述する。
【0034】
可動内歯車6は、固定内歯車5と同軸に配置され、その内周面に遊星歯車4(第2歯車部42)と噛合う歯を有し、回転可能に設けられた歯車である。具体的に、可動内歯車6は、第2歯車部42と噛合う歯車部6aと、遊星歯車4(第2歯車部42)を回転可能に支持する底部6bとから構成されている。底部6bは、可動内歯車6の回転軸の方向に形成された貫通孔6cを有している。
【0035】
出力軸7は、可動内歯車6に連結され、調節弁の弁軸を回転させるための部品である。
図1,3に示されるように、出力軸7は、可動内歯車6と同一の回転軸を有し、可動内歯車6と一体に形成されている。
【0036】
ダイヤル8は、外部から加えられた力を太陽歯車3または遊星歯車4に対して回転力として加える手動操作手段としての部品である。手動操作用歯車9は、ダイヤル8と連結され、ダイヤル8を介して加えられた力を遊星歯車4に伝達するための歯車である。なお、手動操作用歯車9およびダイヤル8の詳細については後述する。
【0037】
ここで、太陽歯車3、遊星歯車4、固定内歯車5、および可動内歯車6は、例えば、プラスチック等の樹脂材料や金属材料によって構成されている。また、太陽歯車3、遊星歯車4、固定内歯車5、および可動内歯車6は一つの不思議遊星歯車機構を構成している。以下、この不思議遊星歯車機構について詳細に説明する。
【0038】
図4は、太陽歯車3、遊星歯車4、固定内歯車5、および可動内歯車6から成る不思議遊星歯車機構の構造を示す斜視図である。
図4に示されるように、不思議遊星歯車機構の中心部分に配置された太陽歯車3と噛合って遊星歯車4_1〜4_3が配置される。更に、遊星歯車4_1〜4_3の周囲には、遊星歯車4の一部の領域と噛合い、遊星歯車4_1〜4_3の回転をガイドする固定内歯車5が固定されて配置されるとともに、遊星歯車4のその他の領域と噛合い、回転可能にされた可動内歯車6が配置されている。
【0039】
上記の不思議遊星歯車機構において、駆動モータ2の回転軸から回転力を受けて太陽歯車3が回転し、その回転力により遊星歯車4_1〜4_3が自転しながら固定内歯車5に沿って回転(公転)する。そして、遊星歯車4_1〜4_3の回転力を受けて、可動内歯車6が回転する。この可動内歯車6に出力軸7(弁軸)を連結することにより、駆動モータ2の回転力を大きく減速させた回転力によって出力軸7を回転させることができる。
【0040】
上記不思議遊星歯車機構によれば、セルフロック機能を有しているので、可動内歯車6に連結された出力軸7(弁軸)に外部から力を加えたとしても、出力軸7は回転させることはできないか、または回転させるために非常に大きな力が必要となる。したがって、停電等が原因で駆動モータ2への電力供給が遮断された場合であっても、調節弁の弁開度を実質的に固定することができ、調節弁のセルフロック機能を実現することができる。
【0041】
上述したように、操作器100は、太陽歯車3、遊星歯車4、固定内歯車5、および可動内歯車6から成る不思議遊星歯車機構により、調節弁のセルフロック機能を実現することができる。
その一方で、上記不思議遊星歯車機構は、駆動モータ2によらず、手動により可動内歯車6を回転させる構造を有している。以下、この構造について詳細に説明する。
【0042】
図1,3に示されるように、手動操作用歯車9は、歯車部9aと支持部9bとから構成されている。
歯車部9aは、例えば太陽歯車3と同一の径および歯数を有し、遊星歯車4_1〜4_3の第2歯車部42の夫々と噛合うように、太陽歯車3と同一軸上に配置されている。
【0043】
支持部9bは、歯車部9aを支持し、可動内歯車6の貫通孔6c内に挿入されている。支持部9bは、例えば歯車9aと一体形成されている。具体的に、支持部9bは、可動内歯車6の貫通孔6cに収容され、一部が可動内歯車6とともに筐体1の外部に突出している。また、支持部9bは一端が開口し、他端が有底の筒状に形成されている。具体的には、支持部9bの筐体1から突出した側の端部には、歯車部9aの回転軸の方向に開けられた孔9cが形成されている。
【0044】
孔9cにはダイヤル8の突起部8aが挿入され、ダイヤル8の突起部8aが孔9cに嵌合している。これにより、手動操作用歯車9とダイヤル8とが連結される。
【0045】
ここで、孔9cとダイヤル8の突起部8aとは、例えば、平面視多角形状(例えば六角形状)に形成されている。
【0046】
上記のように手動操作用歯車9とダイヤル8とが連結されているので、例えば手動によりダイヤル8を回転させることにより、駆動モータ2および太陽歯車3によらず、遊星歯車に対して直接回転力を加えることができる。これによれば、駆動モータ2が停止している状態であっても、ダイヤル8を手動で操作して手動操作用歯車9を回転させることにより、遊星歯車4を介して可動内歯車6を回転させることができるので、弁軸を所望の弁開度となる位置まで回転させることができる。一方で、上述のように、操作器100の動力伝達機構として不思議遊星歯車機構を採用しているので、ダイヤル8によって弁軸を所望の位置まで回転させた後は、不思議遊星歯車機構のセルフロック機能により、弁軸を上記の位置で固定することができる。
【0047】
次に、ダイヤル8が形成される位置について説明する。
図5は、実施の形態1に係る操作器100におけるダイヤル8の周辺部分を拡大した斜視図である。
図6は、実施の形態1に係る操作器100を弁軸側から見たときの平面図である。
【0048】
図5,6に示されるように、出力軸7は、棒状(例えば円柱状)に形成され、出力軸7の外周部の一部をその回転軸の方向に切り取った切欠き部7bと、出力軸7の中心部分に、その回転軸の方向に形成された溝部7aとを有する。
【0049】
ダイヤル8は、出力軸7の溝部7aに配置される。具体的には、
図5に示されるようにダイヤル8は、平面視においてダイヤル8の中心が溝部7aの中心と一致し、且つ平面視において、ダイヤル8の外周部8bの一部が溝部7aから切欠き部7bに向かって突出して配置される。
【0050】
上記のように出力軸7を形成し、ダイヤル8を配置することにより、
図1〜6に示すようにダイヤル8を太陽歯車3と同軸に配置した場合であっても、出力軸7がダイヤル8の操作の邪魔にならないので、弁軸の手動操作が容易となる。
【0051】
次に、遊星歯車4の構造について、
図7〜11を用いて詳細に説明する。
【0052】
図7には、遊星歯車4の第1歯車部41周辺の断面構造が示され、
図8には、
図7におけるB方向から見たときの第1歯車部41周辺の平面構造が示されている。また、
図9には、遊星歯車4の第2歯車部42周辺の断面構造が示され、
図10には、
図9におけるC方向から見たときの第2歯車部42周辺の平面構造が示されている。
なお、
図7〜10では、遊星歯車4の周辺部分のみが図示されており、操作器100におけるその他の部分については図示を省略している。
【0053】
上述したように、各遊星歯車4_1〜4_3は、第1歯車部41と第2歯車部42とが同一軸上に連結されたトルクリミット構造を有している。
具体的には、
図7,8に示されるように、第1歯車部41は、第2歯車部42と接触する面41Aに遊星歯車4の回転軸の方向に形成された凹部41Bを有する。また、
図9,10に示されるように、第2歯車部42は、第1歯車部41と接触する面41Aに遊星歯車4の回転軸の方向に形成された凸部42B(例えば円柱状の突起)を有する。凸部42Bが、凹部41Bに嵌挿されることにより、第1歯車部41と第2歯車部42とが連結される。これにより、トルクリミット機能を有する遊星歯車4を実現することができる。
【0054】
ここで、上記トルクリミット構造の遮断トルクは、第1歯車部41と第2歯車部42との接触面における摩擦力によって規定されている。例えば、
図11に示されるように、凸部42Bの側面と凹部41Bの側面の接触面Yの摩擦力によって遮断トルクを規定することができる。または、第1歯車部41および第2歯車部42を操作器100の上下方向(S方向およびP方向)から押し付ける構造とすれば、第1歯車部41の面41Aと第2歯車部42の面42Aの接触面Xの摩擦力によって遮断トルクを規定することができる。
【0055】
上述した第1歯車部41と第2歯車部42との接触面における摩擦力の大きさは、第1歯車部41および第2歯車部42の接触面に凹凸を設ける等の公知の技術によって調整することができる。
【0056】
上記のように第1歯車部41と第2歯車部42を連結することにより、第1歯車部41および第2歯車部42の何れか一方に所定の値を超える捻りモーメントが加わったとき、一方が他方に対して空転するトルクリミット構造を実現することができる。
【0057】
例えば、調節弁に接続された配管内の流体の脈動などによる不規則な流れに起因して振動等が発生した場合を考える。この場合、上記振動により、調節弁の弁体(バルブプラグ)が急激に動かされ、弁軸に対して衝撃力が加わる。これにより、操作器100の固定内歯車5、可動内歯車6、および遊星歯車4には、不思議遊星歯車機構によるセルフロック機能の故に、弁軸から出力軸7を介して衝撃力が加わってしまう。このとき、
図11に示すように、遊星歯車4における可動内歯車6と噛み合っている第2歯車部42と固定内歯車5と噛み合っている第1歯車部41には、互いに逆方向の力が加わる。すなわち、遊星歯車4には、ねじるような力(捻りモーメント)が加わる。
【0058】
この捻りモーメントが第1歯車部41と第2歯車部42の接触面での摩擦力によって規定される遮断トルクを超えたとき、第2歯車部42が第1歯車部41に対して空転し、第1歯車部41、第2歯車部42、固定内歯車5、および太陽歯車3に対する衝撃力の伝達を遮断することができる。これにより、操作器100内の動力伝達機構を構成する各歯車への衝撃力を緩和することができ、各歯車の歯の破損を防ぐことが可能となる。
【0059】
また、例えば、調節弁の駆動中に調節弁への異物の噛み込み等により過大なトルク上昇が急激に発生した場合であっても、上記と同様に、操作器100内の動力伝達機構を構成する各歯車への衝撃力を緩和することができ、各歯車の歯の破損を防ぐことが可能となる。
【0060】
なお、
図1〜11では、第2歯車部42に凸部42Bを形成し、第1歯車部41に凹部41Bを形成する場合を例示したが、第2歯車部42に凹部を形成し、第2歯車部42に凸部を形成しても、上記と同様の作用および効果が得られる。
【0061】
以上、実施の形態1に係る操作器100によれば、動力伝達機構として不思議遊星歯車機構を採用し、且つ外部から加えられた力を不思議遊星歯車機構の太陽歯車3に対して回転力として加える手動操作手段を備えているので、例えば停電等の理由により駆動モータ2が停止している状態であっても、ダイヤル8を手動で操作して可動内歯車6を回転させることができる。また、上述の従来技術のように不思議遊星歯車機構のセルフロック機能を解除する構造ではないので、ダイヤル8を操作した後で弁軸を固定することができる。すなわち、実施の形態1に係る操作器100によれば、調節弁のセルフロック機能を実現しつつ、弁軸の手動操作を可能にすることができる。
【0062】
また、実施の形態1に係る操作器100によれば、遊星歯車4のトルクリミット構造によって不思議遊星歯車機構を構成する各歯車に加わる衝撃力を緩和することができるので、各歯車の破損を防ぐことが可能となる。
【0063】
具体的には、遊星歯車4を、固定内歯車5と噛合う第1歯車部41と、第1歯車部41と同一軸上で連結され可動内歯車6と噛合う第2歯車部42とから構成することにより、第1歯車部41と第2歯車部42との接触面における摩擦力によって規定される遮断トルクを超える捻りモーメントが第1歯車部41および第2歯車部42の何れか一方に加わった場合に、一方を他方に対して空転させることができるので、第1歯車部41、第2歯車部42、固定内歯車5、および太陽歯車3に対する衝撃力の伝達を遮断することができる。これにより、不思議遊星歯車機構を構成する各歯車に加わる衝撃力が緩和されるので、各歯車の破損を防ぐことが可能となる。
【0064】
また、実施の形態1に係る操作器100によれば、上述した特許文献2に開示された技術のように弾性体を用いて衝撃力を吸収する構造ではないので、操作器100の入出力特性がトルクに依存して変動するおそれがなく、従来技術と比べて調節弁全体のシステム構成の複雑化を防止することができる。
【0065】
すなわち、実施の形態1に係る操作器100によれば、調節弁全体のシステム構成の複雑化を抑えつつ、歯車が破損し難い操作器を実現することができる。
【0066】
また、実施の形態1に係る操作器100によれば、出力軸7または可動内歯車6にトルクリミット機能を持たせる場合に比べて遮断トルクを小さくすることができるので、操作器100の小型化が可能となる。
【0067】
また、実施の形態1に係る操作器100によれば、第1歯車部41および第2歯車部42の何れか一方に形成された凸部に、他方に形成された凹部を嵌合させ、第1歯車部41と第2歯車部42の接触面における摩擦力によって遮断トルクを規定する単純なトルクリミット構造を採用しているので、遊星歯車4の製造が容易となり、操作器100の製造コストの増大を抑えることができる。更に、上述したように、固定内歯車5としてプレート5aと歯車部5bを一体形成すれば、製造コストの更なる削減が可能となる。
【0068】
≪実施の形態2≫
図12は、実施の形態2に係る操作器の要部を示す断面図である。
実施の形態2に係る操作器101は、第1歯車部41と第2歯車部42との間に摩擦部材43を備える点において実施の形態1に係る操作器100と相違し、その他の点においては実施の形態1に係る操作器100と同様である。なお、実施の形態2に係る操作器100の構成要素のうち実施の形態1に係る操作器100と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0069】
図12に示されるように、遊星歯車14は、第1歯車部41と第2歯車部42とを連結し、第1歯車部41および第2歯車部42との接触面において摩擦力を発生させる摩擦部材43を更に有する。以下、遊星歯車14の具体的な構造について
図13〜16を用いて更に詳述する。
【0070】
図13には、遊星歯車4の第1歯車部41周辺の断面構造が示され、
図14には、
図13におけるB方向から見たときの第1歯車部41周辺の平面構造が示されている。また、
図15には、遊星歯車4の第2歯車部42周辺の断面構造が示され、
図16には、
図15におけるC方向から見たときの第2歯車部42周辺の平面構造が示されている。
なお、
図13〜16では、遊星歯車4の周辺部分のみが図示されており、操作器101におけるその他の部分については図示を省略している。
【0071】
図13,14に示されるように、第1歯車部41は、第2歯車部42と接触する面41Aに遊星歯車14の回転軸の方向に形成された凹部41Bを有する。また、
図15、16に示されるように、第2歯車部42は、第1歯車部41と接触する面42Aに遊星歯車4の回転軸の方向に形成された凸部42Bを有する。
【0072】
更に、
図13、14に示されるように、第2歯車部42における面42Aの周縁部、すなわち面42Aにおける凸部42B以外の領域に、平面視リング状に形成された摩擦部材43が載置されている。
【0073】
上記のように、第1歯車部41と第2歯車部42とを摩擦部材43を介して連結することにより、トルクリミット機能を有する遊星歯車14を実現することができる。
【0074】
ここで、遊星歯車14の遮断トルクは、第1歯車部41および第2歯車部42と摩擦部材43と接触面における摩擦力によって規定される。例えば、第1歯車部41および第2歯車部42を操作器101の上下方向(S方向およびP方向)から押し付ける構造とすれば、第1歯車部41の面41Aと摩擦部材43の接触面の摩擦力と、第2歯車部42の面42Aと摩擦部材43の接触面の摩擦力とによって遮断トルクを規定することができる。
【0075】
以上、実施の形態2に係る操作器によれば、実施の形態1に係る操作器と同様に、遊星歯車14にトルクリミット機能を持たせることができるので、操作器101の各歯車に加わる衝撃力を緩和することができ、各歯車の歯の破損を防ぐことが可能となる。
【0076】
また、実施の形態2に係る操作器によれば、摩擦部材43による摩擦力によって遮断トルクが規定されるので、第1歯車部41および第2歯車部42の接触面の摩擦力によって遮断トルクを規定する場合に比べて、遮断トルクを所望の値に調整することが容易となる。
【0077】
≪実施の形態3≫
図17は、実施の形態3に係る操作器の要部を示す断面斜視図である。
図17に示される実施の形態3に係る操作器102は、遊星歯車4の遮断リミットを摩擦力ではなく磁力によって実現する点において実施の形態1に係る操作器100と相違し、その他の点においては実施の形態1に係る操作器100と同様である。
【0078】
なお、実施の形態3に係る操作器101の構成要素のうち、実施の形態1に係る操作器100と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0079】
図18は、実施の形態3に係る操作器の要部を示す平面図である。
図19は、実施の形態3に係る操作器の要部を示す断面図である。
【0080】
図18には、
図17におけるP方向から見たときの操作器102の要部の平面構造が図示され、
図19には、
図18における操作器102のA−A断面が図示されている。
なお、
図18、19では、操作器102の動力伝達機構を構成する各歯車の位置関係を明確にするために、操作器102の構成要素の一部の図示を省略している。
【0081】
図17〜19に示されるように、操作器102の遊星歯車24は、第1歯車部41、第2歯車部42、第1磁界発生部としての磁石44、および第2磁界発生部としての磁石45から構成されている。以下、遊星歯車24の具体的な構造について
図20〜23を用いて更に詳述する。
【0082】
図20には、遊星歯車24の第1歯車部41周辺の断面構造が示され、
図21には、
図20におけるB方向から見たときの第1歯車部41周辺の平面構造が示されている。また、
図22には、遊星歯車24の第2歯車部42周辺の断面構造が示され、
図23には、
図22におけるC方向から見たときの第2歯車部42周辺の平面構造が示されている。
なお、
図20〜23では、遊星歯車24の周辺部分のみが図示されており、操作器102におけるその他の部分については図示を省略している。
【0083】
図19,20に示されるように、第1歯車部41は、第2歯車部42と接触する面41Aに遊星歯車24の回転軸の方向に形成された凹部41Bを有する。凹部41Bには、磁石44が固定されている。磁石44は、例えば、磁石44を凹部41Bに設置したときに第1歯車部41の面41Aと磁石44の面とが同一の平面となるように、その高さ(Pと同一方向の厚さ)が調整されている。
【0084】
一方、
図21、22に示されるように、第2歯車部42は、第1歯車部41と接触する面42Aに遊星歯車4の回転軸の方向に形成された凹部42Cを有する。凹部42Cには、磁石45が固定されている。磁石45は、例えば、磁石45を凹部42Cに設置したときに第2歯車部42の面42Aと磁石45の面とが同一の平面となるように、その高さ(Pと同一方向の厚さ)が調整されている。ここで、
図18〜22に示されるように、磁石44と磁石45とは、互いに対向する面の極性(S/N)が逆向きとなるように配置される。
【0085】
上記のように構成された第1歯車部41および第2歯車部42を同一軸方向に接触させることにより、第1歯車部41および第2歯車部42の何れか一方に所定の値を超える捻りモーメントが加わったとき、一方が他方に対して空転するトルクリミット機能を有する遊星歯車24を実現することができる。遊星歯車24の遮断トルクは、磁石44と磁石45との間の磁力によって規定される。
【0086】
以上、実施の形態3に係る操作器102によれば、実施の形態1に係る操作器と同様に、遊星歯車24にトルクリミット機能を持たせることができるので、操作器102の各歯車に加わる衝撃力を緩和することができ、各歯車の歯の破損を防ぐことが可能となる。
【0087】
≪実施の形態4≫
図24は、実施の形態4に係る操作器の要部を示す断面図である。
図24に示される実施の形態4に係る操作器103は、遊星歯車4のトルクリミット機能を複数の磁石によって実現する点において、実施の形態3に係る操作器102と相違し、その他の点においては、実施の形態3に係る操作器102と同様である。
【0088】
なお、実施の形態4に係る操作器103の構成要素のうち、実施の形態3に係る操作器102と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0089】
図24に示されるように、操作器103の遊星歯車34は、第1歯車部41、第2歯車部42、第1磁界発生部としての複数の磁石46_1〜46_n(nは2以上の整数)、および第2磁界発生部としての複数の磁石47_1〜46_nから構成されている。以下、遊星歯車34の具体的な構造について
図25〜28を用いて更に詳述する。
【0090】
図25には、遊星歯車34の第1歯車部41周辺の断面構造が示され、
図26には、
図25におけるB方向から見たときの第1歯車部41周辺の平面構造が示されている。また、
図27には、遊星歯車34の第2歯車部42周辺の断面構造が示され、
図28には、
図27におけるC方向から見たときの第2歯車部42周辺の平面構造が示されている。
なお、
図25〜28では、遊星歯車34の周辺部分のみが図示されており、操作器102におけるその他の部分については図示を省略している。
【0091】
図25,26に示されるように、複数の磁石46_1〜46_n(総称する場合には、「磁石46」と表記する。)は、第1歯車部41の第2歯車部42と接触する面41Aに形成された凹部41Bに固定されている。具体的には、
図26に示されるように、磁石46_1〜46_nは、平面視において第1歯車部41の周方向に極性が交互に相違して配置される。また、磁石46は、例えば、磁石46を凹部41Bに設置したときに第1歯車部41の面41Aと磁石46の面とが同一の平面となるように、その高さ(Pと同一方向の長さ)が調整されている。
【0092】
一方、
図27,28に示されるように、複数の磁石47_1〜47_n(総称する場合には、「磁石47」と表記する。)は、第2歯車部42の第1歯車部41と接触する面42Aに形成された凹部42Cに固定されている。具体的には、
図28に示されるように、磁石47_1〜47_nは、平面視において第2歯車部42の周方向に極性が交互に相違して配置される。磁石47は、例えば、磁石47を凹部42Cに設置したときに第2歯車部42の面42Aと磁石47の面とが同一の平面となるように、その高さ(Pと同一方向の長さ)が調整されている。
【0093】
上記のように構成された第1歯車部41および第2歯車部42を同一軸方向に接触させることにより、第1歯車部41および第2歯車部42の何れか一方に所定の値を超える捻りモーメントが加わったとき、一方が他方に対して空転するトルクリミット機能を有する遊星歯車34を実現することができる。遊星歯車34の遮断トルクは、磁石46と磁石47との間の磁力によって規定される。
【0094】
以上、実施の形態4に係る操作器103によれば、実施の形態1に係る操作器と同様に、遊星歯車34にトルクリミット機能を持たせることができるので、操作器103の各歯車に加わる衝撃力を緩和することができ、各歯車の歯の破損を防ぐことが可能となる。
【0095】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0096】
例えば、実施の形態2において、第2歯車部42の面42Aの周縁部にリング状の摩擦部材43を設ける場合を例示したが、上記摩擦部材43の代わりに、または上記摩擦部材43に加えて、第2歯車部42の凸部42Bの側面と第1歯車部41の凹部41Bの側面との間に摩擦部材を設けてもよい。これによれば、実施の形態2に係る操作器101と同様の作用および効果が得られる。
【0097】
また、上記実施の形態において、手動操作手段の一つであるダイヤル8を、手動操作用歯車9と別個の部品によって連結する場合を例示したが、これに限られず、例えばダイヤル8を手動操作用歯車9と一体形成してもよい。
【0098】
また、上記実施の形態おいて、可動内歯車6と出力軸7とが一体形成されている場合を例示したが、これに限られず、夫々を別個の部品によって形成し、それらを同一の回転軸となるように連結させてもよい。