(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
〔ポリカーボネートジオール〕
本実施形態のポリカーボネートジオールは、下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とからなるポリカーボネートジオールであって、式(A)で表される繰り返し単位の5〜100モル%は下記式(B)で表される繰り返し単位であり、1級末端OH比率が95〜99.8%である。
【化4】
(但し、式中のRは、炭素数2〜12の二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【化5】
【0013】
ポリカーボネートジオールを塗料の構成成分として用いる場合、イソシアネートのような、水酸基と反応する官能基を有する化合物と反応して使用される。これら化合物とポリカーボネートジオールとの反応性は、非常に重要である。特に、ポリカーボネートジオールの1級末端OH比率が高すぎると反応性が高くなり、微小なゲル状物質が生成して塗膜の透明性が低下する場合がある。一方、ポリカーボネートジオールの1級末端OH比率が低すぎると架橋が進みにくく、塗膜の耐摩耗性が低下する場合がある。本実施形態では、ポリカーボネートジオールにおける1級末端OH比率の最適値を見いだし、上記の問題を殆ど起こすことなく塗膜を得る事が出来るようになった。
【0014】
なお、本実施形態において、1級末端OH比率は、以下のように定義される。70g〜100gのポリカーボネートジオールを、0.4kPa以下の圧力下、160℃〜200℃の温度に加熱、攪拌して、該ポリカーボネートジオールの約1〜2重量%に相当する留分、即ち約1g(0.7〜2g)の初期留分を得る。得られた留分を約100g(95〜105g)のエタノールに溶解させて溶液として回収する。回収した溶液をガスクロマトグラフィー分析(以下「GC分析」とも称す。)して、得られるクロマトグラフのピーク面積の値から、下記式(1)により計算した末端OH比率を言う。なお、GC分析は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィー6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行う。カラムの昇温プロファイルは、60℃から10℃/minで250℃まで昇温した後、その温度で15分間保持するプロファイルとする。GC分析における各ピークの同定は、下記GC−MS装置を用いて行う。GC装置は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)を付けた6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用いた。GC装置において、初期温度40℃から昇温速度10℃/minで220℃まで昇温した。MS装置は、Auto−massSUN(日本JEOL製)を用いた。MS装置において、イオン化電圧70eV、スキャン範囲m/z=10〜500、フォトマルゲイン450Vで測定を行う。
【0015】
1級末端OH比率(%)=B÷A×100 (1)
A:ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)のピーク面積の総和
B:ジオールのピーク面積の総和
【0016】
1級末端OH比率は、ポリカーボネートジオールの全末端基に占める1級OH基の比率である。即ち、上記に示すように、ポリカーボネートジオールを0.4kPa以下の圧力下、160℃〜200℃の温度に加熱すると、ポリカーボネートジオールの末端部分がアルコール類として外れて蒸発し、留分として得られる。(下記式(a)を参照)。
【化6】
(式中、Rは炭化水素を表す。)
この留分中の全アルコール類における両末端が1級OH基であるジオールの比率が、1級末端OH比率である。
【0017】
本実施形態のポリカーボネートジオールにおける1級末端OH比率が95%以上の場合、耐摩耗性を有する塗膜を得ることができる。また、当該1級末端OH比率が99.8%以下であれば、微細なゲル状物の生成は殆どなく、透明な塗膜を得ることができる。当該1級末端OH比率が96.5〜99.5%である場合、塗料組成や乾燥条件に依らず、耐摩耗性を有する透明な塗膜を得るこができるので好ましく、当該1級末端OH比率が97.0〜99.5%である場合、さらに好ましい。
【0018】
ポリカーボネートジオールにおける繰り返し単位の組成は、該ポリカーボネートジオールを用いて得られる塗膜の耐汗性や耐摩耗性、ポリウレタンの耐油性に大きく影響する。本実施形態のポリカーボネートジオールは、式(B)で表される繰り返し単位を含む。式(B)で表される繰り返し単位は、カーボネート結合間のメチレン鎖の数が3と短いため、ポリカーボネートジオール分子中のカーボネート結合の密度が高くなるとともに、側鎖を有しないため、ポリカーボネートジオール分子間の相互作用が強くなり、塗料組成物として用いた場合、塗膜の防湿性が低下することなく耐汗性や耐摩耗性が向上する。また、奇数のメチレン鎖であるため分子の規則性が低くなり、ポリカーボネートジオール分子の結晶性が低くなる。よって、透明性な塗膜を得ることができる。本実施形態のポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位において、式(B)で表される繰り返し単位の量(以降、Bの割合とも略す。)が5モル%以上であれば、上記の効果が発現する。Bの割合が30モル%以上であれば、塗料の組成に依らず、高い耐汗性と耐摩耗性とが得られるので好ましく、45モル%以上であればさらに好ましい。Bの割合が100%の場合、上記の効果は最も高くなるので好ましい。通常、1種類の側鎖を有しない繰り返し単位からなるポリカーボネートジオールは、結晶性を有することが多く、塗料組成物として用いた場合、塗膜の透明性が問題となる場合がある。しかし、Bの割合が100%のポリカーボネートジオールの場合、ポリカーボネートジオールの結晶性は低く、常温で液状のポリカーボネートジオールとなる。よって、塗料組成物として用いた場合も、透明な塗膜が得られ好ましい。しかし、その場合、ポリカーボネートジオールの粘度が高くなるため、用いることができる溶剤量が少ない場合、塗料組成物の粘度が高くなり、塗布できない場合がある。その場合は、Bの割合を95%以下にすることが好ましく、80%以下とすればさらに好ましい。
【化7】
(但し、式中のRは、炭素数2〜12の二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【化8】
【0019】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、式(B)で表される繰り返し単位に加え、式(C)で表される繰り返し単位を含むことができる。式(C)で表される繰り返し単位は、脂環構造や側鎖を有しないため、耐摩耗性などの性能を低下させることなくポリカーボネートジオールの粘度を調整できる。式(C)におけるnが4〜9である場合、高い耐汗性や耐摩耗性が得られるので好ましく、式(C)におけるnが4〜6の場合さらに好ましい。
【化9】
(但し、式中のnは、3を除く2〜12の整数を表す。)
【0020】
式(B)及び式(C)で表される繰り返し単位の和に対する式(B)で表される繰り返し単位の割合(以降、B/C比率とも略す。)は、10〜100モル%である。B/C比率が30〜100モル%であれば、塗料の組成に依らず、高い耐汗性と耐摩耗性とが得られるので好ましく、45〜100モル%であればさらに好ましい。
【0021】
なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオールにおける繰り返し単位の組成は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0022】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造方法は、特に限定されない。例えば、Schnell著、ポリマー・レビューズ第9巻、p9〜20(1994年)に記載される種々の方法で製造することが出来る。
【0023】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、ジオールとして、1,3−プロパンジオールを用いる。さらに、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ナノジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの側鎖を持たないジオール、2−メチル−1、8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチルー1、5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどの側鎖を持ったジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパンなどの環状ジオールから、1種類又は2種類以上のジオールを原料として用いてもよい。使用量は、本実施形態の繰り返し単位となれば、特に限定しない。
【0024】
さらに、本実施形態のポリカーボネートジオールの性能を損なわない範囲で、1分子に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどをポリカーボネートジオールの原料として用いることもできる。この1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物をポリカーボネートジオールの原料としてあまり多く用いると、ポリカーボネートの重合反応中に架橋してゲル化が起きてしまうおそれがある。したがって、1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物をポリカーボネートジオールの原料として用いる場合であっても、当該化合物は、ポリカーボネートジオールの原料として用いるジオールのモル数に対し、0.1〜5モル%にするのが好ましい。この割合は0.1〜1モル%であることが、より好ましい。
【0025】
本実施形態のポリカーボネートジオールの原料となるカーボネートの例として、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート;エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートなどが挙げられる。これらの内から1種又は2種以上のカーボネートをポリカーボネートジオールの原料として用いることができる。入手のしやすさや重合反応の条件設定のしやすさの観点より、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネートを用いることが好ましい。
【0026】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造では、触媒を添加することができる。該触媒としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属のアルコラート、水素化物、オキシド、アミド、炭酸塩、水酸化物、窒素含有ホウ酸塩、さらに有機酸の塩基性アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。また、前記触媒として、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、タングステン、レニウム、オスミニウム、イリジウム、白金、金、タリウム、鉛、ビスマス、イッテルビウム、の金属、塩、アルコキシド、有機化合物が挙げられる。それらから1つ又は複数の触媒を選択し使用することができる。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カリウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、イッテルビウムの金属、塩、アルコキシド、有機化合物から1つ又は複数の触媒を用いた場合、ポリカーボネートジオールの重合が良好に行われ、得られるポリカーボネートジオールを用いたウレタン反応に対する影響も少ないので好ましい。前記触媒として、チタン、イットリビウム、スズ、ジルコニウムを用いた場合、さらに好ましい。
【0027】
本実施形態のポリカーボネートジオールには、上記触媒を含んでいてもよい。本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、該触媒の含有量は、ICPを用い測定した金属元素の量として、0.0001〜0.05重量%であることが好ましい。該触媒の含有量が前記範囲であれば、ポリカーボネートジオールの重合が良好に行われ、得られたポリカーボネートジオールを用いたウレタン反応に対する影響も少ない。該触媒の含有量は、ICPを用い測定した金属元素の量として、0.0005〜0.02重量%であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、例えば、ポリウレタンの原料として用いる場合、ポリカーボネートジオールの製造で用いた触媒を、リン化合物で処理することが好ましい。リン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジル・ジフェニルホスフェートなどのリン酸トリエステル;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−エチルへキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、アチレングルコールアシッドホスフェート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどの酸性リン酸エステル;トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニル(モノデシル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスルトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどの亜リン酸エステル類;さらに、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸などが挙げられる。
【0029】
本実施形態のポリカーボネートジオールには、リン化合物を含んでいてもよい。本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、リン化合物の含有量は、ICPを用い測定したリン元素(P)の含有量として、0.0001〜0.05重量%であることが好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、リン化合物の含有量が前記範囲であれば、例えば、ポリウレタンの原料として用いた場合、該ポリウレタンの製造反応において、ポリカーボネートジオール製造で用いた触媒の影響を殆どなくすることが可能であり、さらに、リン化合物が塗膜の物性に影響することも少ない。本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、ICPにより測定した際のリン元素(P)の含有量は、0.0005〜0.02重量%であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造方法の具体例を以下に示す。本実施形態のポリカーボネートジオールの製造は、特に限定されないが、例えば、2段階に分けて行うことができる。ジオールとカーボネートとをモル比(ジオール:カーボネート)で、例えば、20:1〜1:10の割合で混和し、常圧又は減圧下、100〜250℃で1段目の反応を行う。カーボネートとしてジメチルカーボネートを用いる場合、生成するメタノールをジメチルカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。カーボネートとしてジエチルカーボネートを用いる場合、生成するエタノールをジエチルカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。また、カーボネートとしてエチレンカーボネートを用いる場合、生成するエチレングリコールをエチレンカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。次いで、2段目の反応は、前記1段目の反応生成物を、減圧下、160〜250℃で加熱して、未反応のジオールとカーボネートとを除去するとともに、低分子量ポリカーボネートジオールを縮合させて、所定の分子量のポリカーボネートジオールを得る反応である。
【0031】
本実施形態のポリカーボネートジオールの末端OH比率は、原料中の不純物、温度や時間などの製造条件、さらに、原料であるカーボネートとしてジアルキルカーボネート及び/又はジアリールカーボネートを用いる場合は、原料中のジオールとカーボネートとの仕込み比などの条件より、1つの方法を選択して、又は適宜組み合わせることにより調整できる。原料であるカーボネートとして、ジアルキルカーボネート及び/又はジアリールカーボネートを用いた場合、目的とするポリカーボネートジオールの分子量に対応させて、原料であるジオールとカーボネートとを化学量論量又はそれに近い割合で仕込んで反応させると、ポリカーボネートジオールの末端にカーボネートに由来するアルキル基やアリール基が残存することが多い。そこで、原料中のカーボネートに対するジオールの量を、例えば、化学量論量の1.01〜10倍とすることで、ポリカーボネートジオールは、末端アルキル基や末端アリール基が減り、末端ヒドロキシル基を多くすることができる。さらに、副反応により、ポリカーボネートジオールの末端がビニル基になったり、例えばカーボネートとしてジメチルカーボネートを用いた場合、メチルエステルやメチルエーテルになったりする。一般的に、副反応は、反応温度が高いほど、反応時間が長いほど起きやすくなる。
【0032】
本実施形態において、2級末端OH比率は、1級末端OH比率と同じ方法で分析を行い、得られるクロマトグラフのピーク面積の値をから、下記式(2)により計算したものを言う。
【0033】
2級末端OH比率(%)=C÷A×100 (2)
A:ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)のピーク面積の総和
C:少なくとも1つの2級水酸基を持つジオールのピーク面積の総和
ポリマー末端が2級の水酸基である場合、少なくとも片方の水酸基が2級であるジオールがポリマー末端より外れる。(下記式(b)参照)。
【化10】
(式中、 R、R
1、R
2は炭化水素を表す。)
この留分中の全アルコール類における少なくとの1つのヒドロキシル基が2級であるジオールの比率が、2級末端OH比率である。
【0034】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、1級末端OH比率と2級末端OH比率との和が98.5%〜100%であることが好ましい。1級末端OH比率と2級末端OH比率の和が98.5%以上である場合、耐摩耗性や耐汗性を有する塗膜が得られるので好ましい。1級末端OH比率と2級末端OH比率との和が99.0%以上である場合、塗料組成や乾燥条件などによらず、高い耐摩耗性が得られるので好ましく、99.5%以上である場合さらに好ましい。
【0035】
1級末端OH比率及び/又は2級末端OH比率を調整するため、必要に応じて、2級水酸基を持つジオールを添加しても構わない。2級水酸基を持つジオールは、原料中に添加したり、ポリカーボネートジオール製造の途中で添加したり、所定の分子量になった後に添加することが出来る。得られたポリカーボネートジオールに2級水酸基を有するジオールを添加して加熱処理する方法では、加熱処理温度は、120℃〜190℃、好ましくは130℃〜180℃である。加熱温度が120℃より低いと反応が遅く処理時間がかかり経済的に問題があり、190℃を超えると着色などの問題が発生する可能性が高くなる。加熱処理時間は、反応温度や処理方法により異なるが、通常は、15分〜10時間である。2級水酸基を持つジオールとしては、特に限定されないが、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−エチルー1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオールなどの1級水酸基と2級水酸基を持つもの、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,5−ヘプタンジオールなどの2つの2級水酸基を持つもの、2−メチル−2,4−ペンタンジオールなど1つの2級水酸基と1つの3級水酸基を持つものが挙げられる。これらのジオールを単独で又は2種類以上混合して使用される。
【0036】
本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、分子量は、数平均分子量で300〜5000であることが好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、数平均分子量が300以上であれば得られる塗膜の柔軟性が得られるので好ましく、5000以下であれば塗料組成物の粘度が高くなり塗布でいないという問題が起きにくいので好ましい。実施形態のポリカーボネートジオールは、数平均分子量でが450〜3000の範囲であれば、より好ましい。
【0037】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、1,3−ジオキサン−2−オンを含んでもよい。ポリカーボネートジオールに対する1,3−ジオキサン−2−オンの量は、0.01.1〜5重量%であることが好ましい。ポリカーボネートジオールに対する1,3−ジオキサン−2−オンの量が0.01重量%以上であれば、平滑な塗膜が得られるので好ましく、ポリカーボネートジオールに対する1,3−ジオキサン−2−オンの量が5重量%以下であれば塗膜の耐汗性が低下することがないので好ましい。0.05〜3重量%であればさらに好ましい。
【0038】
本実施形態のポリカーボネートジオールにおける1,3−ジオキサン−2−オンの量を調整する方法は特に限定しない。ポリカーボネートプレポリマーの末端に結合した1,3−プロパンジオールの一部が、環状のカーボネートである1,3−ジオキサン−2−オンとして脱離する。この反応は、温度が高い方が生成しやすく、反応での真空度が低い方がポリカーボネートジオールに残りやすい。よって、適宜反応の温度や真空度を調整することで、ポリカーボネートジオール中の1,3−ジオキサン−2−オンの量を決めることができる。さらには、目的の量となるように、1,3−ジオキサン−2−オンをポリカーボネートジオールに添加することもできる。
【0039】
ポリカーボネートジオール中の1,3−ジオキサン−2−オンの量を決定する方法としては、ポリカーボネートジオールをアセトニトリルに溶解し1%の溶液とし、LC/MSを用いて分析し、得られた面積値を元に、予め作成した検量線を用いて定量する方法がある。LC装置は、カラムとしてWaters Symmetory C8(Waters社製)をつけたWaters2690(Waters社製)を用い、流量を0.5ml/minとし、アセトニトリル:水=30:70からアセトニトリル:水=100:0まで15分かけてグラジエントをかけて測定した。MS装置は、Waters ZMD(Waters社製)を用い、イオン化:APCl+、フォトマル電圧650Vである。
【0040】
<用途>
本実施形態のポリカーボネートジオールは、塗料や接着剤の構成材料として、またポリウレタンや熱可塑性エラストマーの原料として、さらにはポリエステルやポリイミドの改質剤などの用途に用いることができる。特に、本実施形態のポリカーボネートジオールは、塗料の構成成分として用いる場合、耐摩耗性と耐汗性とに優れた透明な塗料が得られる。
【0041】
〔熱可塑性ポリウレタン〕
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンは、上述のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを用いて得ることができる。
【0042】
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンを製造する方法としては、特に限定されず、ポリウレタン業界で公知のポリウレタン化反応の技術が用いられる。例えば、上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを大気圧下に常温から200℃で反応させることにより、熱可塑性ポリウレタンを製造することができる。鎖延長剤を用いる場合は、反応の最初から加えておいてもよいし、反応の途中から加えてもよい。本実施形態の熱可塑性ポリウレタンの製造方法については、例えば、米国特許第5,070,173号を参照できる。
【0043】
ポリウレタン化反応においては、公知の重合触媒や溶媒を用いてもよい。用いられる重合触媒は、特に限定されないが、例えばジブチルスズジラウレートが挙げられる。
【0044】
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンには、熱安定剤(例えば酸化防止剤)や光安定剤などの安定剤を添加することが好ましい。また、可塑剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0045】
〔コーティング組成物〕
本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを含む。当該ポリイソシアネートは、有機ポリイソシアネートであることが好ましい。
【0046】
本実施形態のコーティング組成物において、上述のポリイソシアネートの配合量は、上述のポリカーボネートジオールの水酸基などのイソシアネートと反応する官能基の合計に対して、好ましくは70〜200%当量、より好ましくは80〜180%当量である。ポリイソシアネートの配合量が70%当量以上であれば、塗膜を形成することが可能であり、200%当量以下であれば、過剰のイソシアネート基が残存することがなく、貯蔵中にゲルが生成するなどの問題が発生することもない。
【0047】
また、本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含むことが好ましい。該ウレタンプレポリマーは末端イソシアネート基を持つことが好ましい。
【0048】
さらに、本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含むことがより好ましく、水、上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む、水系コーティング組成物であることがさらに好ましい。
【0049】
使用される有機ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート等の公知の芳香族ジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等の公知の脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート類のイソシアヌレート化変性品、カルボジイミド化変性品、ビウレット化変性品等が挙げられる。これらの有機ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても構わない。またこれらの有機ポリイソシアネートは、ブロック剤でイソシアネート基をマスクして用いてもよい。
【0050】
また、ポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとの反応において、所望により共重合成分として鎖伸長剤を用いることができる。鎖伸長剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン業界における常用の鎖伸長剤、すなわち、水、低分子ポリオール、ポリアミン等が使用できる。鎖伸長剤の例として、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカンジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン等の低分子ポリオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン等のポリアミンが挙げられる。これらの鎖伸長剤は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても構わない。
【0051】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)を製造する方法としては、業界で公知の製造方法が用いられる。例えば、上述のポリカーボネートジオールから得られる塗料主剤と有機ポリイソシアネートからなる硬化剤とを塗工直前に混合する2液型溶剤系コーティング組成物;上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート末端基を持つウレタンプレポリマーからなる1液型溶剤系コーティング組成物;上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂からなる1液型溶剤系コーティング組成物;あるいは1液型水系コーティング組成物を製造することができる。
【0052】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)には、例えば、各種用途に応じて硬化促進剤(触媒)、充填剤、分散剤、難燃剤、染料、有機又は無機顔料、離型剤、流動性調整剤、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、溶剤等を添加することができる。
【0053】
顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、黄鉛、クレー、タルク、カーボンブラックなどの無機顔料、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾル系、フタロシアニン系、イソインドリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサン系、ジケトピロロピロール系などの有機顔料が挙げられる。
【0054】
硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクチテート、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリシレート系、蓚酸アニリド系を挙げることができる。紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物を挙げることができる。
【0056】
塗料の溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、水などを挙げることができる。これらの溶剤は1種類又は複数種を混合して使用することができる。
【実施例】
【0057】
次に、実施例及び比較例によって、本実施形態を説明する。
【0058】
以下の実施例は、本実施形態を例示するために記載するものであって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0059】
以下の実施例及び比較例において示す物性値は、下記の方法で測定した。
【0060】
1.ポリカーボネートジオールの1級末端OH比率の決定
ポリカーボネートジオールにおける1級末端OH比率を以下のとおり決定した。まず、70g〜100gのポリカーボネートジオールを300mlのナスフラスコに測り取った。留分回収用のトラップ球を接続したロータリーエバポレーターを用いて、前記ナスフラスコ中のポリカーボネートジオールを、0.4kPa以下の圧力下、約180℃の加熱浴で加熱し、攪拌して、トラップ球に該ポリカーボネートジオールの約1〜2重量%に相当する留分、即ち約1g(0.7〜2g)の初期留分を得た。得られた留分を約100g(95〜105g)のエタノールに溶解させ溶液として回収した。回収した溶液をガスクロマトグラフィー分析(以下「GC分析」とも称す。)して、得られたクロマトグラフのピーク面積の値をから、下記式(1)によりポリカーボネートジオールにおける末端OH比率を計算した。なお、GC分析は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィー6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。カラムの昇温プロファイルは、60℃から10℃/minで250℃まで昇温した後、その温度で15分間保持するプロファイルとした。GC分析における各ピークの同定は、下記GC−MS装置を用いて行った。GC装置は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)を付けた6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用いた。GC装置において、初期温度40℃から昇温速度10℃/minで220℃まで昇温した。MS装置は、Auto−massSUN(日本JEOL製)を用いた。MS装置において、イオン化電圧70eV、スキャン範囲m/z=10〜500、フォトマルゲイン450Vで測定を行った。
【0061】
1級末端OH比率(%)=B÷A×100 (1)
A:ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)のピーク面積の総和
B:両末端が1級OH基であるジオールのピーク面積の総和
【0062】
2.ポリカーボネートジオールの2級末端OH比率の決定
1級末端OH比率と同じ方法でGC分析を行い、得られるクロマトグラフのピーク面積の値をから、下記式(2)により計算した。
【0063】
2級末端OH比率(%)=C÷A×100 (2)
A:ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)のピーク面積の総和
C:少なくとも1つの2級水酸基を持つジオールのピーク面積の総和
【0064】
3.ポリカーボネートジオールの組成の決定
ポリカーボネートジオールの組成を以下のとおり決定した。まず、100mlのナスフラスコに、サンプルを1g測り取り、エタノール30g、水酸化カリウム4gを入れて、混合物を得た。得られた混合物を100℃のオイルバスで1時間加熱した。前記混合物を室温まで冷却後、指示薬としてフェノールフタレインを前記混合物に1〜2滴添加し、塩酸で中和した。その後、前記混合物を冷蔵庫で3時間冷却し、沈殿した塩を濾過で除去した後、濾液をガスクロマトグラフィー(GC)分析した。なお、GC分析は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィーGC14B(島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内部標準として用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温するプロファイルとした。GC分析により得られたジオールの面積値を元に、ポリカーボネートジオールの組成を決定した。
【0065】
Bの割合(モル%)=D÷F×100 (3)
B/C比率(モル%)=D÷E×100 (4)
D:GC分析で得られた1,3−プロパンジオールのモル数
E:GC分析で得られた下記式(D)で表されるジオールのモル数
F:GC分析で得られたジオールを含むアルコールのモル数の総和
【化11】
(但し、式中のnは、2〜12の整数を表す。)
【0066】
4.ポリカーボネートジオールの数平均分子量の決定
ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、無水酢酸とピリジンとを用い、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定する「中和滴定法(JIS K0070−1992)」によって水酸基価(OH価)を決定し、下記式(5)を用いて計算した。
【0067】
数平均分子量=2/(OH価×10
-3/56.1) (5)
【0068】
5.塗膜の評価
(1)耐汗性
ポリカーボネートジオールを用いて得られた塗膜に、0.1gのオレイン酸を付着させ、20℃で4時間放置し、試験体の外観を目視で評価した。JISK5600−8−1に準じて欠陥の程度及び量を等級0〜5で表し、耐汗性とした。
【0069】
(2)耐磨耗性
JIS K5600−5−8の方法に準じ、テーバー型磨耗試験機を用い測定した。磨耗試験前の重量と磨耗試験(500回転)後の塗膜板の重量変化を測定し表記した。
【0070】
(3)透明性
ポリカーボネートジオールから得られた塗膜を、90℃の蒸留水に1週間浸漬した。その後、塗膜から水分を拭き取り、23℃、50%RHの恒温室で塗膜を3日間養生した。JIS K 7105の方法に準じて、浸漬前後の塗膜の全光線透過率を求め、下記式(6)から塗膜の透明性を求めた。
【0071】
透明性(%)=(浸漬後の塗膜の全光線透過率)÷浸漬前の塗膜の全光線透過率×100
(6)
【0072】
(4)透湿性
ポリカーボネートジオールを用いて得られた塗膜を用い、JIS Z0208の方法に準じて透湿度(g/m
2・24hr)を求めた。
【0073】
6.熱可塑性ポリウレタンの評価
(1)数平均分子量と重量平均分子量
標準ポリスチレンについて得た較正曲線を用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により行なった。
【0074】
(2)耐薬品性
厚さ0.07〜0.10mmのポリウレタンフィルムを形成し、該フィルムを45℃のオレイン酸(試薬1級)に1週間浸漬し、膨潤度を測定して、耐薬品性の指標とした。膨潤率は、下記式(7)により計算した。
【0075】
膨潤率(%)=(試験後の重量−試験前の重量)/試験前の重量×100 (7)
【0076】
7.原料ジオールの純度分析
ジオール原料として用いた1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール及び1,6−ヘキサンジオールをガスクロマトグラフィーで分析した。条件は、カラムとしてDB−WAX(J&W製)をつけたガスクロマトグラフィーGC−14B(島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内標として、検出器をFIDとして行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温した。
【0077】
1,3−プロパンジオールの純度は99.2重量%であり、0.8重量%は複数の不明ピークであった。1,4−ブタンジオールの純度は、99.8%であり、0.2重量%は複数の不明ピークであった。1,5−ペンタンジオールの純度は、98.0重量%であり、1,5−ヘキサンジオールが1.7重量%であり、0.3重量%は複数の不明ピークであった。1,6−ヘキサンジオールは、純度が99.1重量%で、1,4−シクロヘキサンジオールを0.7重量%含んでいた。残りの0.2重量%は、複数の不明物であった。
【0078】
[実施例1]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコにジメチルカーボネートを765g(8.5mol)、1,3−プロパンジオールを350g(4.6mol)、1,6−ヘキサンジオールを530g(4.5mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.12gを加え、常圧で撹拌し、90〜160℃まで温度を上げながら、生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去して20時間反応を行った。その後、17kPaまで減圧し、メタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、160℃でさらに12時間反応した。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0079】
[実施例2]
実施例1に示す装置を用いて重合を行った。エチレンカーボネートを820g(9.3mol)、1,3−プロパンジオールを455g(6.0mol)、1,4−ブタンジオールを310g(3.4mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.12gを加え、常圧で攪拌・加熱した。反応温度を160℃まで徐々に上げ、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら20時間反応を行った。その後、15kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、160℃でさらに12時間反応した。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0080】
[実施例3]
実施例1に示す装置を用いて重合を行った。ジメチルカーボネートを835g(9.3mol)、1,3−プロパンジオールを350g(4.6.0mol)、1,6−ヘキサンジオールを530g(4.5mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.13gを加え、常圧で撹拌し、90〜190℃まで温度を上げながら、生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去して15時間反応を行った。その後、17kPaまで減圧し、メタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、190℃でさらに10時間反応した。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0081】
[実施例4]
ジメチルカーボネートの量を860g(9.6mol)とした以外は、実施例3に示す方法で重合を行った。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0082】
[実施例5]
実施例1に示す装置を用いて重合を行った。ジエチルカーボネートを880g(7.5mol)、1,3−プロパンジオールを300g(4.0mol)、1,6−ヘキサンジオールを450g(3.8mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.12gを加え、常圧で撹拌し、90〜160℃まで温度を上げながら、生成するエタノールとジエチルカーボネートとの混合物を留去して20時間反応を行った。その後、17kPaまで減圧し、エタノールとジエチルカーボネートとの混合物を留去しながら、160℃でさらに12時間反応した。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0083】
[実施例6]
実施例1に示す装置を用いて重合を行った。エチレンカーボネートを700g(8.0mol)、1,3−プロパンジオールを600g(7.9mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.11gを加え、常圧で撹拌し、90〜160℃まで温度を上げながら、生成するエタノールとジエチルカーボネートとの混合物を留去して20時間反応を行った。その後、17kPaまで減圧し、エチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、160℃でさらに12時間反応した。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0084】
[実施例7]
エチレンカーボネートの量を820g(9.3mol)、1,3−プロパンジオールの量を200g(2.6mol)、1,4−ブタンジオールの量を600g(6.7mol)、チタンテトラブトキシドの量を0.12gとした以外は、実施例2の方法で重合を行った。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0085】
[実施例8]
エチレンカーボネートの量を820g(9.3mol)、1,3−プロパンジオールの量を300g(4.0mol)、1,4−ブタンジオールの量を480g(5.3mol)、チタンテトラブトキシドの量を0.12gとした以外は、実施例2の方法で重合を行った。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0086】
[実施例9]
実施例1に示す装置を用いて重合を行った。ジメチルカーボネートを800g(8.9mol)、1,3−プロパンジオールを350g(4.6mol)、1,5−ペンタンジオールを500g(4.8mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.12gを加え、常圧で撹拌し、90〜160℃まで温度を上げながら、生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去して20時間反応を行った。その後、17kPaまで減圧し、メタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、160℃でさらに12時間反応した。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0087】
[実施例10]
1,6−ヘキサンジオール530g(4.5mol)を3−メチル−1,5−ペンタンジオール530g(4.5mol)とした以外は、実施例1に示す方法で重合を行った。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0088】
[比較例1]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコを用い、1,3−プロパンジオールを精製した。純度は99.8重量%であり、0.2重量%は複数の不明ピークであった。
【0089】
実施例1に示す装置を用いて重合を行った。エチレンカーボネートを820g(9.3mol)、精製した1,3−プロパンジオールを455g(6.0mol)、1,4−ブタンジオールを310g(3.4mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.12gを加え、常圧で攪拌・加熱した。反応温度を150℃まで徐々に上げ、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら25時間反応を行った。その後、15kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、150℃でさらに15時間反応した。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0090】
[比較例2]
実施例1に示す装置を用いて重合を行った。ジメチルカーボネートを850g(9.4mol)、1,3−プロパンジオールを35g(4.5mol)、1,6−ヘキサンジオールを530g(4.5mol)、1,4−シクロヘキサンジオールを5g(0.04mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.13gを加え、常圧で撹拌し、90〜190℃まで温度を上げながら、生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去して15時間反応を行った。その後、17kPaまで減圧し、メタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、200℃でさらに8時間反応した。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0091】
[比較例3]
エチレンカーボネートを800g(9.1mol)、1,3−プロパンジオールを30g(0.4mol)、1,4−ブタンジオールを780g(8.7mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.12gを加え、実施例2に示す方法で重合を行った。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1にまとめる。
【0092】
【表1】
【0093】
[応用例1]
ポリカーボネートジオールPC−1を40g、レベリング剤としてBYK−331(BYKケミカル製)を0.75g、顔料としてCR−50(石原産業製、平均粒径0.25μm)を5g、シンナー(キシレン/酢酸ブチル=70/30(重量比))に2重量%となるように溶解したジブチルスズジラウレート溶液を1.25g、並びにシンナーを40g混ぜて撹拌し、塗料主剤を得た。得られた塗料主剤に、硬化剤として有機ポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ製、イソシアネート(NCO)含量:23.1%)を7.5g加えて、塗布液を調製した。該塗布液を、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂板上に塗布し、室温で2時間シンナーを飛ばした後、80℃で2時間加熱硬化させて塗膜を得た。塗膜を評価し、その結果を表2に示した。
【0094】
[応用例2〜10]
ポリカーボネートジオールとして、PC−2〜10を用いた以外は、応用例1と同様にして塗布液を調製した。該塗布液を用いた以外は、応用例1と同様にして塗膜を得た。塗膜を評価し、その結果を表2に示した。
【0095】
[比較応用例1〜3]
ポリカーボネートジオールとして、PC−21〜23を用いた以外は、応用例1と同様にして塗布液を調製した。該塗布液を用いた以外は、応用例1と同様にして塗膜を得た。塗膜の評価結果を表2に示した。
【0096】
【表2】
【0097】
[応用例11]
ポリカーボネートジオール(PC−1)を200g、ヘキサメチレンジイソシアネート64.2gを攪拌装置、温度計、冷却管の付いた反応器に仕込み、100℃で5時間反応させて末端NCOのプレポリマーを得た。該プレポリマーに鎖延長剤として1,4−ブタンジオール27.0g、触媒としてジブチルスズジラウリレート0.01gを加えてニーダー内蔵のラボ用万能押出機(日本国(株)笠松化工研究所製のLABO用万能押出機KR−35型)を用い150℃で60分反応を行った後、押出し機にてペレットとした。得られた熱可塑性ポリウレタンのポリスチレン換算数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び耐油性の評価結果を表3に示した。
【0098】
[応用例12〜14]
ポリカーボネートジオールとして、PC−2〜4を用いた以外は、応用例11に示す方法で熱可塑性ポリウレタンを得た。得られた熱可塑性ポリウレタンのポリスチレン換算数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び耐油性の評価結果を表3に示した。
【0099】
[比較応用例4〜5]
ポリカーボネートジオールとして、PC−21〜22を用いた以外は、応用例11に示す方法で熱可塑性ポリウレタンを得た。得られた熱可塑性ポリウレタンについて、ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び物性の評価結果を表3に示した。
【0100】
【表3】