(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752023
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】螺旋状伝熱管を持ったボイラ
(51)【国際特許分類】
F22B 37/20 20060101AFI20200831BHJP
F22B 21/26 20060101ALI20200831BHJP
F24H 1/43 20060101ALI20200831BHJP
F24H 1/16 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
F22B37/20 Z
F22B21/26
F24H1/43 Z
F24H1/16 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-23099(P2016-23099)
(22)【出願日】2016年2月9日
(65)【公開番号】特開2017-142012(P2017-142012A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】高畠 重俊
(72)【発明者】
【氏名】柴田 慎太郎
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−029642(JP,U)
【文献】
実開昭61−053686(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/20
F22B 21/26
F24H 1/16
F24H 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管を螺旋状に巻回した二重の円筒形状伝熱管壁である内コイルと外コイルを持ち、二重のコイルで囲まれた缶体中心部分を燃焼室とし、燃焼室で発生した燃焼ガスは、内コイルと外コイルの間に設けている燃焼ガス通路を通すことで、伝熱管内を流れる熱媒体を加熱するボイラにおいて、前記燃焼ガス通路内に、燃焼ガス通路内での燃焼ガス流動方向である縦方向に長くして、前記内コイルと外コイルで挟まれている燃焼ガス通路の始点となる内コイル端部の伝熱管と、燃焼ガス通路の終点となる外コイル端部の伝熱管の両方に達する長さを持った棒状の部材であるスペーサ第1部材と、スペーサ第1部材よりも燃焼ガス通路内での燃焼ガス流動方向である縦方向長さの短い板状の部材であるスペーサ第2部材からなるスペーサを設置するものであり、スペーサ第1部材とスペーサ第2部材はそれぞれ燃焼ガス通路の幅より薄いものであって、スペーサ第1部材とスペーサ第2部材を重ね合わせることで燃焼ガス通路の幅となるものであり、スペーサ第1部材とスペーサ第2部材を重ね合わせることで内コイルと外コイルの間に所定の間隔を確保するようにしていることを特徴とする螺旋状伝熱管を持ったボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状伝熱管を持ったボイラに関するものであり、より詳しくは伝熱管を螺旋状に巻回した円筒形状の伝熱管壁であるコイルを二重とすることで、内コイルと外コイルの間を円環状の燃焼ガス通路とし、前記燃焼ガス通路に燃焼ガスを流すことで内コイルと外コイルの加熱を行うようにしている螺旋状伝熱管を持ったボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
実開昭52−29642号公報に記載があるように、伝熱管を螺旋状に巻回した円筒形状の伝熱管壁によって缶体を構成するボイラが知られている。このボイラは、円筒形状の伝熱管であるコイルを二重とし、内コイルと外コイルの間は間隔を開けて設置することで、内コイルと外コイルの間に円環状の燃焼ガス通路を設ける。このコイルで囲まれた缶体中心部分を燃焼室とし、燃焼室の上部に設けた燃焼装置によって燃焼室内で燃焼を行い、燃焼によって発生した熱で伝熱管内の熱媒体を加熱する。内コイルの下部は燃焼室底部との間に間隔を開けて設置し、外コイルの上部はボイラ内上部と間に間隔を開けて設置することで、内外コイル間の燃焼ガス通路は底部で中心側の燃焼室と接続し、上部ではボイラ外へつながる排気筒へと接続する。燃焼室で発生した燃焼ガスは、燃焼室底部から燃焼ガス通路内へ入り、燃焼ガス通路内を上向きに流れる際に燃焼ガス通路に面している伝熱管を加熱して燃焼ガス通路の上部からボイラ外へ排出される。
【0003】
実開昭52−29642号公報に記載のボイラでは、前記燃焼ガス通路に通路と同じ幅のスペーサを設置している。2重に設置した内コイルと外コイル間を燃焼ガス通路としているボイラでは、内コイルと外コイルが偏心して組み立てられ、燃焼ガス通路の幅が場所によって異なることになると、燃焼ガスの流動が偏り、伝熱管の熱吸収量が著しく低下する。スペーサを設置し、内コイルと外コイルの間隔はスペーサの幅分に統一すると、内コイルと外コイルの間隔は一定とすることができ、燃焼ガス通路での燃焼ガス流の偏流がなくなるため、燃焼ガス通路に面している伝熱管を効率よく加熱することができる。
【0004】
このボイラを組み立てる場合、通常はパイプベンダで伝熱管の曲げ加工を行って内コイルと外コイルを作っておき、内コイルと外コイルを組み合わせることで缶体を形作る。内外コイルの間にスペーサを取り付ける場合は、内コイルの外側にスペーサを固定した後に外コイルを被せるようにするか、内コイルと外コイルを組み立てた後でスペーサを差し込むことになるが、スペーサの幅を燃焼ガス通路の幅と同じにしていた場合、組立の作業性が悪くなる問題があった。かといってスペーサの幅を燃焼ガス通路の幅より狭くしたのでは、スペーサとしての効果が低下し、内外のコイルが偏心した場合には伝熱効率が低下することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭52−29642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、内外コイルの偏心防止と組立時の作業性向上を両立させることのできる螺旋状伝熱管を持ったボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
伝熱管を螺旋状に巻回した二重の円筒形状伝熱管壁である内コイルと外コイルを持ち、二重のコイルで囲まれた缶体中心部分を燃焼室とし、燃焼室で発生した燃焼ガスは、内コイルと外コイルの間に設けている燃焼ガス通路を通すことで、伝熱管内を流れる熱媒体を加熱するボイラにおいて、前記燃焼ガス通路内に、燃焼ガス通路内での燃焼ガス流動方向である縦方向に長くして
、前記内コイルと外コイルで挟まれている燃焼ガス通路の始点となる内コイル端部の伝熱管と、燃焼ガス通路の終点となる外コイル端部の伝熱管の両方に達する長さを持った棒状の部材であるスペーサ第1部材と、スペーサ第1部材よりも燃焼ガス通路内での燃焼ガス流動方向である縦方向長さの短い板状の部材であるスペーサ第2部材からなるスペーサを設置するものであり、スペーサ第1部材とスペーサ第2部材はそれぞれ燃焼ガス通路の幅より薄いものであって、スペーサ第1部材とスペーサ第2部材を重ね合わせることで燃焼ガス通路の幅となるものであり、スペーサ第1部材とスペーサ第2部材を重ね合わせることで内コイルと外コイルの間に所定の間隔を確保するようにしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明を実施することで、螺旋状伝熱管を持ったボイラにおいて、内外コイル組立時の偏心を防止でき、組立時の作業性も向上するため、偏心防止と作業性向上を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を実施しているボイラの缶体部分の縦断面図
【
図2】本発明を実施しているボイラの缶体部分の平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施しているボイラの缶体部分の縦断面図、
図2は
図1の平面図、
図3は本発明のスペーサを抜き出した斜視図である。ボイラ1は伝熱管を螺旋状に巻回した伝熱管壁で缶体を構成している。伝熱管壁は2重のコイルとしており、内側のコイルを内コイル3、外側のコイルを外コイル4とする。内コイル3と外コイル4は間隔を開けて設置しており、内コイル3と外コイル4の間に円環状の燃焼ガス通路7を設ける。内コイル3で囲まれた缶体中心部分を燃焼室8とし、燃焼室8の上部に燃焼装置2を設ける。燃焼装置2は下向きに火炎を発生するものであり、燃焼装置2で燃焼を行うことによって燃焼室8内で熱を発生し、伝熱管を加熱する。
【0011】
内コイル3は燃焼室8底部との間に間隔を開けて設置し、外コイル4はボイラ内上部と間に間隔を開けて設置することで、内外コイル間の燃焼ガス通路7は底部で燃焼室8と接続し、上部ではボイラ外へつながる排気筒9へと接続する。燃焼室8で発生した燃焼ガスは、燃焼室8底部から燃焼ガス通路7内へ入り、燃焼ガス通路7内を上向きに流れる際に燃焼ガス通路7に面している伝熱管を加熱する。伝熱管内には熱媒体を流すようにしており、伝熱管を加熱することで伝熱管内の熱媒体を加熱する。
【0012】
内コイル3と外コイル4の間は一定の間隔を開けるようにしており、内コイル3と外コイル4の間にはスペーサを設置する。スペーサは縦に長い丸棒部材であるスペーサ第1部材5と、スペーサ第1部材5に比べて縦方向は短い板状部材であるスペーサ第2部材6からなる。
【0013】
スペーサ第1部材5の太さは、燃焼ガス通路7の幅より僅かに細いものとしておくことで、内コイル3と外コイル4を組み立てた後にもスペーサ第1部材5を燃焼ガス通路7内へ容易に差し込むことができるものとしておく。スペーサ第1部材5の長さは、燃焼ガス通路7の内コイル3と外コイル4で挟まれる部分をほぼ占めるものであり、燃焼ガス通路7にスペーサ第1部材5を差し込んで固定する場合、スペーサ第1部材5の下端は内コイル3の下端部付近、スペーサ第1部材5の上端は外コイル4の上端高さよりも高い位置となるようにしている。スペーサ第1部材5は、燃焼ガス通路7に面している内コイル3の外側に溶接によって固定する。
【0014】
スペーサ第1部材5の太さを、燃焼ガス通路7の幅よりも小さなものとした場合、缶体組立の作業性は高くすることができるが、スペーサ第1部材5だけでは内コイル3と外コイル4の偏心は完全には防止できない。そのため、缶体組立の最後でスペーサ第2部材6をスペーサ第1部材5と外コイル4の間に差し込む。スペーサ第2部材6の厚さは、スペーサ第1部材5と足し合わせることで燃焼ガス通路7の幅となるものとする。また、製造上の誤差を吸収するため、スペーサ第2部材6として複数の厚さのものを準備しておき、適切な厚さのものを選択して使用するようにしてもよい。
【0015】
スペーサ第2部材6は縦には短いものであるため、スペーサ第1部材5と外コイル4の間にスペーサ第2部材6を差し込むことはあまり手間を掛けることなく行える。スペーサ第1部材5とスペーサ第2部材6は、それぞれでは燃焼ガス通路7の幅よりも薄ものとしておき、スペーサ第1部材5とスペーサ第2部材6を重ね合わせることで燃焼ガス通路7の幅になるようにしておくことで、内外コイル組立時の偏心を防止でき、偏心防止と作業性向上を両立させることができる。また、スペーサの設置位置は、
図2に記載しているように燃焼ガス通路7を三等分した位置に設置すると、燃焼ガス通路7の全周で内コイル3と外コイル4の間隔を揃えることができる。
【0016】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0017】
1 ボイラ
2 燃焼装置
3 内コイル
4 外コイル
5 スペーサ第1部材
6 スペーサ第2部材
7 燃焼ガス通路
8 燃焼室
9 排気筒
10 断熱材