特許第6752040号(P6752040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752040
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/012 20060101AFI20200831BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20200831BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   H01B13/012 Z
   H01B13/012 D
   B23P19/00 301
   B23P21/00 307P
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-75462(P2016-75462)
(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公開番号】特開2017-188276(P2017-188276A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平島 玲二
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−344215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
B23P 19/00
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線及び一又は複数の付属部材を有するワイヤハーネスの製造装置であって、
前記電線に前記付属部材を取り付ける作業を行う作業台と、前記作業台に隣接すると共に前記作業台に前記付属部材を供給する供給装置と、を備え、
前記作業台は、
前記作業に必要な前記付属部材を前記付属部材の種別ごとに分けて保管可能な数の保管容器を有し、
前記供給装置は、
前記複数の保管容器と一対一に対応した数の収容室を有する収容箱と、前記複数の収容室の各々に対応する複数種類の前記付属部材を製造すると共に製造した前記複数種類の付属部材を対応する前記収容室にそれぞれ収容する製造部と、前記複数の収容室と前記複数の保管容器との対応関係に従って前記複数の収容室に収容された前記複数種類の付属部材を前記複数の保管容器に一度に受け渡す受け渡し機構と、を有する、
ワイヤハーネスの製造装置。
【請求項2】
電線及び一又は複数の付属部材を有するワイヤハーネスの製造装置であって、
前記電線に前記付属部材を取り付ける作業を行う作業台と、前記作業台に隣接すると共に前記作業台に前記付属部材を供給する供給装置と、を備え、
前記作業台は、
前記作業に必要な前記付属部材を前記付属部材の種別ごとに分けて保管可能な一又は複数の保管容器を有し、
前記供給装置は、
前記保管容器と一対一に対応した一又は複数の収容室を有する収容箱と、前記収容室の各々に対応する種別の前記付属部材を製造すると共に製造した前記付属部材を対応する前記収容室に収容する製造部と、前記収容室と前記保管容器との対応関係に従って前記収容室に収容された前記付属部材を前記保管容器に受け渡す受け渡し機構と、を有し、
複数の前記作業台が、
所定の製造ラインに沿って連なるように移動可能であるように構成され、
前記供給装置が、
前記収容箱及び前記受け渡し機構を前記製造ラインに沿った所定の可動範囲内において往復移動可能である、ように構成されると共に、
複数の前記作業台のうちの一の作業台が前記可動範囲を通過する前に、前記収容箱に前記付属部材を収容し、前記一の作業台が前記可動範囲内を通過する期間中に、前記収容箱及び前記受け渡し機構を前記一の作業台に同調移動させながら前記収容箱から前記保管容器に前記付属部材を受け渡し、その後に前記一の作業台に続く他の作業台に前記付属部材を供給するために前記同調移動の前の位置に戻る、ことを繰り返す、
ワイヤハーネスの製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の製造装置において、
前記作業台が、
環状の前記製造ラインを一回周回する間に同一種の前記ワイヤハーネスを所定の複数回だけ繰り返し製造するように用いられ、
前記供給装置が、
前記ワイヤハーネスを前記複数回だけ製造するために必要な数の前記付属部材を前記収容箱の前記収容室の各々に一纏めに収容し、前記作業台が前記可動範囲内を通過する期間中に、前記収容箱から前記保管容器に前記付属部材を一度に受け渡す、
ワイヤハーネスの製造装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の製造装置において、
前記付属部材が、
コルゲートチューブであり、
前記供給装置が、
前記製造部として、長尺の前記コルゲートチューブが巻回されたリールと、前記リールから前記作業に必要な長さの前記コルゲートチューブを引き出す引出部と、引き出された前記コルゲートチューブを切断する切断部と、切断した前記コルゲートチューブを前記収容室に向けて排出する排出部と、を有する、
ワイヤハーネスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線及び一又は複数の付属部材を有するワイヤハーネスの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等に用いられるワイヤハーネスを製造するにあたり、電線に付属部材(例えば、コルゲートチューブ、ビニルテープ及びクランプ等)を取り付ける作業を行う作業台(いわゆる治具板)を備えた製造装置が提案されている。この種の作業台は、電線を保持するための複数の治具を有しており、電線を治具によって保持した状態にて電線に付属部材を取り付ける作業(組み付け作業)を行うことが可能となっている。
【0003】
例えば、従来のワイヤハーネスの製造装置の一つ(以下「従来装置」という。)は、組受け作業に必要な付属部材を保管(ストック)するための保管容器を作業台上に有しており、組み付け作業の際、この保管容器から作業者が必要な付属部材を取り出すことが可能となっている。これにより、従来装置は、付属部材が作業者の背面の棚などに保管されている場合に比べ、作業者の動作量を減らし、作業者の負担を軽減すると共にワイヤハーネスの製造効率を高めるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−235228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来装置では、保管容器に保管された付属部材の残量が少なくなると、付属部材を補充する必要がある。例えば、付属部材としてコルゲートチューブが用いられる場合、組み付け作業に必要な長さにあらかじめ切り揃えられたコルゲートチューブを準備(例えば、購入)しておき、所定のタイミングにて、そのコルゲートチューブを保管容器に投入(補充)することが考えられる。
【0006】
しかし、このような補充を効率良く行うためには、組み付け作業に必要な付属部材をあらかじめ多量に準備しておく必要がある。付属部材の残量が少なくなってから準備(例えば、購入)を始めたのでは、適切なタイミングでの補充が困難となる可能性があるためである。一方、多量の付属部材を事前に準備すると、実際の使用までに長時間を要する(過剰な在庫となる)付属部材が生じる可能性がある。更に、そのように付属部材を準備する工程(例えば、専門の事業者などに製造を依頼して購入する工程)にも、準備した付属部材を管理する工程(例えば、専門の事業者などから納入された付属部材を保管して在庫を常時確認する工程)にも、コストが生じる。
【0007】
このように、従来装置は、ワイヤハーネスの製造効率を高められるものの、付属部材の準備に要するコスト等に起因してワイヤハーネスの製造コストを低減させ難い、と考えられる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスの製造効率を高めることと、ワイヤハーネスの製造コストを出来る限り低減することと、を両立可能なワイヤハーネスの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスの製造装置は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1)
電線及び一又は複数の付属部材を有するワイヤハーネスの製造装置であって、
前記電線に前記付属部材を取り付ける作業を行う作業台と、前記作業台に隣接すると共に前記作業台に前記付属部材を供給する供給装置と、を備え、
前記作業台は、
前記作業に必要な前記付属部材を前記付属部材の種別ごとに分けて保管可能な数の保管容器を有し、
前記供給装置は、
前記複数の保管容器と一対一に対応した数の収容室を有する収容箱と、前記複数の収容室の各々に対応する複数種類の前記付属部材を製造すると共に製造した前記複数種類の付属部材を対応する前記収容室にそれぞれ収容する製造部と、前記複数の収容室と前記複数の保管容器との対応関係に従って前記複数の収容室に収容された前記複数種類の付属部材を前記複数の保管容器に一度に受け渡す受け渡し機構と、を有する、
ワイヤハーネスの製造装置であること。
(2)
電線及び一又は複数の付属部材を有するワイヤハーネスの製造装置であって、
前記電線に前記付属部材を取り付ける作業を行う作業台と、前記作業台に隣接すると共に前記作業台に前記付属部材を供給する供給装置と、を備え、
前記作業台は、
前記作業に必要な前記付属部材を前記付属部材の種別ごとに分けて保管可能な一又は複数の保管容器を有し、
前記供給装置は、
前記保管容器と一対一に対応した一又は複数の収容室を有する収容箱と、前記収容室の各々に対応する種別の前記付属部材を製造すると共に製造した前記付属部材を対応する前記収容室に収容する製造部と、前記収容室と前記保管容器との対応関係に従って前記収容室に収容された前記付属部材を前記保管容器に受け渡す受け渡し機構と、を有し、
複数の前記作業台が、
所定の製造ラインに沿って連なるように移動可能であるように構成され、
前記供給装置が、
前記収容箱及び前記受け渡し機構を前記製造ラインに沿った所定の可動範囲内において往復移動可能である、ように構成されると共に、
複数の前記作業台のうちの一の作業台が前記可動範囲を通過する前に、前記収容箱に前記付属部材を収容し、前記一の作業台が前記可動範囲内を通過する期間中に、前記収容箱及び前記受け渡し機構を前記一の作業台に同調移動させながら前記収容箱から前記保管容器に前記付属部材を受け渡し、その後に前記一の作業台に続く他の作業台に前記付属部材を供給するために前記同調移動の前の位置に戻る、ことを繰り返す、
ワイヤハーネスの製造装置であること。
(3)
上記(2)に記載の製造装置において、
前記作業台が、
環状の前記製造ラインを一回周回する間に同一種の前記ワイヤハーネスを所定の複数回だけ繰り返し製造するように用いられ、
前記供給装置が、
前記ワイヤハーネスを前記複数回だけ製造するために必要な数の前記付属部材を前記収容箱の前記収容室の各々に一纏めに収容し、前記作業台が前記可動範囲内を通過する期間中に、前記収容箱から前記保管容器に前記付属部材を一度に受け渡す、
ワイヤハーネスの製造装置であること。
(4)
上記(1)〜上記(3)の何れか一つに記載の製造装置において、
前記付属部材が、
コルゲートチューブであり、
前記供給装置が、
前記製造部として、長尺の前記コルゲートチューブが巻回されたリールと、前記リールから前記作業に必要な長さの前記コルゲートチューブを引き出す引出部と、引き出された前記コルゲートチューブを切断する切断部と、切断した前記コルゲートチューブを前記収容室に向けて排出する排出部と、を有する、
ワイヤハーネスの製造装置であること。
【0010】
上記(1)の構成のワイヤハーネスの製造装置によれば、作業台に隣接する供給装置からその場その場で必要な付属部材が供給されることになる。そのため、従来装置のように付属部材を事前に多量に準備する(例えば、専門の事業者などから購入する)必要がない。更に、供給装置は、組み付け作業に必要な付属部材を付属部材の種別ごとに分けて製造すると共に、製造した付属部材を種別ごとに作業台上の保管容器に受け渡すようになっている。そのため、従来装置とは異なり、付属部材を所定のタイミング毎に保管容器に補充する作業を不要にできる。加えて、準備した付属部材を在庫として管理する必要もない。
【0011】
したがって、上記構成のワイヤハーネスの製造装置は、ワイヤハーネスの製造効率を高めることと、ワイヤハーネスの製造コストを出来る限り低減することと、を両立できる。
【0012】
上記(2)の構成のワイヤハーネスの製造装置によれば、供給装置(収容箱および受け渡し機構)が所定範囲を往復移動しながら、製造ライン上の複数の作業台に次々と付属部材を供給することになる。これにより、作業台と供給装置とが一対一に対応している場合に比べ、製造ラインに対して設ける必要がある供給装置の数を低減できる。具体的には、少なくとも1つの供給装置を製造ラインに設ければよいことになる。よって、本構成のワイヤハーネスの製造装置は、作業台と供給装置とが一対一に対応している場合に比べ、製造装置そのものを作るコストを低減でき、ひいてはワイヤハーネスの製造コストを低減できる。
【0013】
上記(3)の構成のワイヤハーネスの製造装置よれば、一つの製造ラインにおいて同一種のワイヤハーネスを複数回(複数本)製造する場合(例えば、作業台が製造ラインを一回周回する間に2つのワイヤハーネスを製造する場合)、その製造に必要な複数の付属部材(例えば、ワイヤハーネス2つ分の付属部材)が、供給装置から作業台上の保管容器に一度に受け渡されることになる。そのため、ワイヤハーネスの製造回数(例えば、2回)と同じ数の供給装置(例えば、2台)を、製造ライン上に設ける必要がない。よって、本構成のワイヤハーネスの製造装置は、ワイヤハーネスの製造回数と同じ数だけ供給装置を設ける場合に比べ、製造装置そのものを作るコストを低減でき、ひいてはワイヤハーネスの製造コストを低減できる。
【0014】
上記(4)の構成のワイヤハーネスの製造装置よれば、ワイヤハーネスの製造に一般に用いられるコルゲートチューブを、作業台上の保管容器に自動的に供給できる。ワイヤハーネスには、一般に、長さが異なる複数種のコルゲートチューブが数多く用いられる。また、従来から、このように長さが異なる複数種のコルゲートチューブの準備は、専門の事業者に依頼する(購入する)傾向が強い。そのため、コルゲートチューブを付属部材として本発明の製造装置を用いれば、本発明の製造装置を作るためのコストを考慮しても、ワイヤハーネスの製造コストを確実に低減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ワイヤハーネスの製造効率を高めることと、ワイヤハーネスの製造コストを出来る限り低減することと、を両立可能なワイヤハーネスの製造装置、を提供できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置の全体構成を示す概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置の一部の概略構成図である。
図3図3は、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置の一部のブロック図である。
図4図4は、供給装置の構成を説明する概略構成図である。
図5図5は、供給装置における付属部材の製造および収容箱への収容動作を説明する図であって、図5(a)〜図5(c)は、それぞれ作業開始位置における概略構成図である。
図6図6は、供給装置における付属部材の保管容器への受け渡し動作を説明する図であって、図6(a)〜図6(c)は、それぞれ作業開始位置における概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置(以下「製造装置10」という。)について説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置10は、複数の作業台11を備えている。作業台11は、搬送コンベア12に支持されて長尺の環状に配置された環状の製造ライン13を構成している。環状の製造ライン13は、作業台11が横一列に配置された第1製造ライン13A、及び、作業台11が横一列に配置された第2製造ライン13Bを含んでいる。後述するように、第1製造ライン13Aにおいて1つのワイヤハーネスが製造され、第2製造ライン13Bにおいて同一種のワイヤハーネスがもう1つ製造されることになる。即ち、環状の製造ライン13を作業台11が一回周回する間にワイヤハーネスが2回製造されることになる。
【0020】
製造装置10は、第1製造ライン13A及び第2製造ライン13Bの手前側のスペースが作業エリアSAとされており、作業エリアSAにおいて、第1製造ライン13A及び第2製造ライン13B上の作業台11に対してワイヤハーネスの製造作業(付属部材の組み付け作業)が、作業者によって行われる。
【0021】
作業台11は、搬送コンベア12によって、第1製造ライン13A及び第2製造ライン13Bに沿って一方向(図1における矢印A1,A2方向)へ移動可能とされている。これにより、各作業台11は、環状の製造ライン13を周回する。具体的には、まず、第1製造ライン13Aの一端側(図中の右方)において、第2製造ライン13Bから第1製造ライン13A(図1における矢印B1方向)へ、作業台11が折り返されて送り込まれる。その後、作業台11は、第1製造ライン13Aに沿って他端側(図中の左方)へ移動し、第1製造ライン13Aの他端側において、第2製造ライン13Bへ折り返されて送り出される。同様に、第2製造ライン13Bでは、一端側(図中の左方)において、第1製造ライン13Aから第2製造ライン13B(図1における矢印B2方向)へ作業台11が折り返されて送り込まれる。その後、作業台11は、第2製造ライン13Bに沿って他端側(図中の右方)へ移動し、第2製造ライン13Bの他端側(図中の右方)において、第1製造ライン13Aへ折り返されて送り出される。
【0022】
第1製造ライン13A及び第2製造ライン13Bは、作業台11が送り込まれる一端側が、ワイヤハーネスに対する作業が開始される作業開始位置Ssとされ、作業台11が送り出される他端が、ワイヤハーネスに対する作業が終了される作業終了位置Sfとされている。作業開始位置Ssでは、作業台11に電線が保持され、作業終了位置Sfでは、製造されたワイヤハーネスが次の工程(例えば、各種の検査工程)に向けて搬出される。
【0023】
製造ライン13は、その一端側に、一つの供給装置40を備えている。供給装置40は、ワイヤハーネスに組み付けられる付属部材を作業台11に供給可能であり、製造ライン13の内側(搬送コンベア12が形成する環の内側)に配置され、作業台11に隣接して設けられている。
【0024】
図2に示すように、第1製造ライン13Aの手前の作業エリアSAでは、第1製造ライン13Aに沿って並んだ複数の作業者Sが作業台11に対してワイヤハーネスWの製造作業(例えば、付属部材の組み付け作業)を行う。同様に、第2製造ライン13Bの手前の作業エリアSAでは、第2製造ライン13Bに沿って並んだ複数の作業者Sが作業台11に対してワイヤハーネスWの製造作業を行う。第1製造ライン13A及び第2製造ライン13Bでは、移動される作業台11において、作業開始位置Ssから作業終了位置Sfに至るまでの間に、複数の作業者Sによって、電線Dの結束および電線Dへの付属部材の組み付け等を含むワイヤハーネスWの製造作業が行われる。付属部材は、電線Dに保護等のために電線Dに装着される部材(例えば、コルゲートチューブ、ビニルテープ及びクランプ等)である。これにより、製造装置10では、作業台11が環状の製造ライン13を一回周回する間に、同一種のワイヤハーネスWが2回(第1製造ライン13Aにて1回、及び、第2製造ライン13Bにて1回)繰り返し製造されることになる。
【0025】
作業台11は、平面視矩形状の治具板20を有している。治具板20は、その表面に、クランプ等の保持具(図示省略)を備えており、この保持具によって、ワイヤハーネスWを構成する電線Dが保持される。治具板20は、搬送コンベア12によって搬送される台座(図示省略)上に支持されており、台座とともに移動される。更に、治具板20には、移動方向前方側における上端近傍位置に、製造するワイヤハーネスWを特定するための一次元コード及び二次元コード等のコードCoが記載されたカード等が取り付けられている。
【0026】
作業台11は、治具板20の上端部に、保管箱22を備えている。保管箱22は、長さ及び大きさなどが異なる付属部材を種別ごとに分けて保管可能とされている。本例では、保管箱22に収容される付属部材は、電線Dの周囲を覆う筒状のコルゲートチューブCである。保管箱22は、治具板20の上縁に沿って複数の保管容器23a〜23eを有しており、これらの保管容器23a〜23eの各々には、長さの異なるコルゲートチューブCが収容されて保管される。作業者Sは、保管箱22の各保管容器23a〜23eに収容されているコルゲートチューブCを取り出し、治具板20の電線Dに組み付けてワイヤハーネスWを製造する。
【0027】
図3に示すように、製造装置10は、供給装置40を制御する制御部30を備えている。製造ライン13の第1製造ライン13Aの作業開始位置Ssには、コードリーダ等の読取部31が設けられている。読取部31は、制御部30に接続されており、移動する作業台11の治具板20に付されたコードCoから、その作業台11における作業に関する情報(例えば、ワイヤハーネスWの種別、及び、その種別のワイヤハーネスWに組み付けるべき付属部材についての情報)を読み取り、制御部30へ送信する。制御部30は、読取部31から送信された情報に基づいて、供給装置40を制御する。
【0028】
次いで、製造ライン13に設けられた供給装置40について説明する。図4に示すように、供給装置40は、製造部50と、収容箱60と、受け渡し機構70とを備える。
【0029】
製造部50は、長尺のコルゲートチューブCが巻回されたリール51と、引出部52と、切断部53と、排出部54と、を有する。リール51から引き出されたコルゲートチューブCは、引出部52に繋がるように延びている。引出部52は、コルゲートチューブCの端部を把持するチャックであり、コルゲートチューブCの端部を把持した状態のまま第1製造ライン13Aに沿って往復移動可能に構成されている。切断部53は、コルゲートチューブCを切断するカッタである。排出部54は、引出部52及び切断部53を覆うケース55の下方側に形成された開口部である。
【0030】
製造部50では、引出部52がコルゲートチューブCの端部を把持した状態で作業台11の移動方向A1へ向かって移動することで、コルゲートチューブCがリール51から引き出される。この状態で、切断部53が作動することで、コルゲートチューブCが切断される。そして、切断されたコルゲートチューブCは、引出部52による把持が解除されると、排出部54に案内されて収容箱60に向けて落下し、後述する収容室61a〜61eに向けて排出される。
【0031】
収容箱60は、複数の収容室61a〜61eを有している。収容室61a〜61eは、保管箱22の保管容器23a〜23eと一対一に対応している。収容室61a〜61eの各々は、上方側(製造部50に対面する側)が開口しており、その長手方向の長さは、対応する保管容器23a〜23eの長手方向の長さに合わせられている。収容箱60の各収容室61a〜61eには、製造部50にて切断されて製造されたコルゲートチューブCが排出部54を通じて投入される。これにより、各収容室61a〜61eは、各々に対応する種別のコルゲートチューブCを収容する。収容箱60は、移動される作業台11の保管箱22の経路の上方側に配置されている。
【0032】
受け渡し機構70は、収容箱60に設けられている。受け渡し機構70は、スライド部71と、回動部72と、を有している。スライド部71は、レール73上を走行することにより、収容箱60を第1製造ライン13Aに沿った所定の可動範囲内にて往復移動させる。更に、収容箱60は、回動部72によって、長手方向に沿う軸線を中心として回動される。回動部72によって収容箱60が回動されると、収容箱60の各収容室61a〜61eの上方側の開口部が下方に向けられる。具体的には、収容箱60の下方に作業台11の保管箱22が配置された状態にて収容箱60が回動部72によって回動され、収容室61a〜61eの開口部が下方へ向けられる。その結果、収容箱60の各収容室61a〜61eに収容されたコルゲートチューブCが、下方の保管箱22の各保管容器23a〜23eに受け渡される。
【0033】
上述したコルゲートチューブCの受け渡しについて、以下にて、より詳細に説明する。
【0034】
図5(a)に示すように、第2製造ライン13Bから折り返されて第1製造ライン13Aに送り込まれた治具板20に電線Dが保持された作業台11が作業開始位置Ssに搬送されると、作業台11の治具板20のコードCoが読取部31によって読み取られる。読取部31で読み取られたコードCoの情報は制御部30へ送信され、制御部30は、この情報に基づいて供給装置40による作業台11へのコルゲートチューブCの供給動作を開始する。
【0035】
図5(b)に示すように、制御部30によってコルゲートチューブCの供給動作が開始されると、製造部50では、引出部52がコルゲートチューブCを引き出し、この引き出したコルゲートチューブCを切断部53が切断する。このとき、排出部54の下方には、収容箱60の収容室61aが待機した状態とされており、製造部50では、この収容室61aに対応した所定長さにコルゲートチューブCを切断する。そして、製造部50で所定長さに切り出されたコルゲートチューブCは、排出部54から落下し、下方に待機している収容箱60の収容室61aに投入されて収容される。収容室61aへのコルゲートチューブCの収容が完了すると、受け渡し機構70のスライド部71によって収容箱60が移動され、収容室61aに隣接した収容室61bが排出部54の下方に配置される。その後、製造部50では、収容室61bに対応した所定長さにコルゲートチューブCを切断し、この所定長さのコルゲートチューブCを収容室61bに投入して収容させる。
【0036】
このように、供給装置40では、製造部50、収容箱60及び受け渡し機構70によって、コルゲートチューブCの切断及び収容動作が繰り返されることにより、収容室61a〜61eの各々に対応する種別の所定長さのコルゲートチューブCが製造され、この所定長さのコルゲートチューブCが収容箱60の各収容室61a〜61eに順に投入されて収容される。
【0037】
製造部50でのコルゲートチューブCの製造及び収容箱60の各収容室61a〜61eへのコルゲートチューブCの収容は、作業台11が、受け渡し機構70のスライド部71によって移動される収容箱60の可動範囲を通過する前に行われる。
【0038】
このとき、供給装置40は、ワイヤハーネスWを第1製造ライン13A及び第2製造ライン13Bでそれぞれ一回ずつの合計二回だけ製造するために必要な数のコルゲートチューブCを収容箱60の各収容室61a〜61eに一纏めに収容する。つまり、供給装置40は、収容箱60の各収容室61a〜61eに、コルゲートチューブCを二つずつ収容させる。
【0039】
図5(c)に示すように、収容箱60の全ての収容室61a〜61eに所定数のコルゲートチューブCを収容させた後、供給装置40は、収容箱60に対して、作業台11の保管箱22が第1製造ライン13Aに沿う方向で一致する位置に到達するまで待機する。
【0040】
そして、図6(a)に示すように、作業台11の保管箱22が第1製造ライン13Aに沿う方向で収容箱60に一致する位置に到達すると、図6(b)に示すように、供給装置40の受け渡し機構70のスライド部71によって収容箱60が作業台11の移動速度と同一速度で移動される(図中の矢印を参照)。即ち、収容箱60が、移動する作業台11の保管箱22に対して同調移動を始める。
【0041】
図6(c)に示すように、作業台11の保管箱22に対して収容箱60を同調移動させた状態において、受け渡し機構70の回動部72によって収容箱60が回動され、各収容室61a〜61eの上方側の開口部が下方に向けられる。これにより、収容室61a〜61eに収容されていたコルゲートチューブCが、下方の保管箱22の各保管容器23a〜23eに一度に一纏めに受け渡される。このコルゲートチューブCの受け渡しは、作業台11が、スライド部71による収容箱60の可動範囲内を通過する期間中に行われる。
【0042】
コルゲートチューブCの受け渡しが完了すると、受け渡し機構70のスライド部71によって収容箱60が作業台11の移動方向A1と逆方向へ移動され(図中の破線矢印を参照)、収容室61aが製造部50の排出部54の下方に配置された初期位置(図5(a)参照)に戻される。
【0043】
その後、第1製造ライン13Aでは、作業開始位置Ssにおいて作業台11の治具板20に保持された電線Dに対して、作業台11の保管箱22の各保管容器23a〜23eに二つずつ収容されているコルゲートチューブCを、それぞれ一つずつ取り出して組み付けてワイヤハーネスWを製造し、作業終了位置Sfで完成したワイヤハーネスWを治具板20から取り外す。
【0044】
第2製造ライン13Bでは、作業開始位置Ssにおいて第1製造ライン13Aから送り込まれた作業台11の治具板20に電線Dを保持させた後、作業台11とともに移動する電線Dに対して、保管箱22の各保管容器23a〜23eに一つずつ収容されているコルゲートチューブCを取り出して電線Dに組み付けてワイヤハーネスWを製造し、作業終了位置Sfで完成したワイヤハーネスWを治具板20から取り外す。
【0045】
このように、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置10によれば、作業台11に隣接する供給装置40から、その場その場で必要なコルゲートチューブCが供給される。そのため、従来装置のようにコルゲートチューブCを事前に多量に準備する(例えば、専門の事業者などから購入する)必要がない。更に、供給装置40は、組み付け作業に必要なコルゲートチューブCをその種別ごとに分けて製造すると共に、製造したコルゲートチューブCを種別ごとに作業台11上の保管容器23a〜23eに受け渡すようになっている。そのため、従来装置とは異なり、コルゲートチューブCを所定のタイミング毎に保管容器に補充する作業を不要にできる。加えて、準備したコルゲートチューブCを在庫として管理する必要もない。
【0046】
よって、ワイヤハーネスWの製造効率を高めることと、ワイヤハーネスWの製造コストを出来る限り低減することと、を両立できる。
【0047】
更に、製造装置10においては、供給装置40が所定範囲を往復移動しながら、製造ライン13上の複数の作業台11に次々とコルゲートチューブCを供給することになる。これにより、作業台11と供給装置40とが一対一に対応している場合に比べ、製造ライン13に対して設ける必要がある供給装置40の数を低減できる。具体的には、少なくとも1つの供給装置40を製造ライン13に設ければよいことになる。よって、製造装置10は、作業台11と供給装置40とが一対一に対応している場合に比べ、製造装置10そのものを作るコストを低減でき、ひいてはワイヤハーネスWの製造コストを低減できる。
【0048】
更に、製造装置10においては、一つの製造ライン13において同一種のワイヤハーネスWを複数回(2回)製造するにあたり、その製造に必要な複数のコルゲートチューブC(ワイヤハーネス2つ分のコルゲートチューブC)が、供給装置40から作業台11上の保管容器23a〜23eに一度に受け渡されることになる。そのため、ワイヤハーネスWの製造回数と同じ数の供給装置40を、製造ライン13上に設ける必要がない。よって、製造装置10は、ワイヤハーネスWの製造回数と同じ数だけ供給装置40を設ける場合に比べ、製造装置10そのものを作るコストを低減でき、ひいてはワイヤハーネスWの製造コストを低減できる。
【0049】
更に、製造装置10においては、コルゲートチューブCを、作業台11上の保管容器23a〜23eに自動的に供給できる。ワイヤハーネスWには、一般に、長さが異なる複数種のコルゲートチューブCが数多く用いられる。また、従来から、このように長さが異なる複数種のコルゲートチューブCの準備は、専門の事業者に依頼する(購入する)傾向が強い。製造装置10によれば、製造装置10を作るためのコストを考慮しても、ワイヤハーネスWの製造コストを確実に低減できる。
【0050】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0051】
例えば、上記実施形態では、電線Dに組み付ける付属部品がコルゲートチューブCである場合を例示して説明したが、本発明は、付属部品がビニルテープやクランプ等である場合にも適用可能である。
【0052】
ここで、上述した本発明に係るワイヤハーネスの製造装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(4)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
電線(D)及び一又は複数の付属部材(C)を有するワイヤハーネス(W)の製造装置であって、
前記電線(D)に前記付属部材(C)を取り付ける作業を行う作業台(11)と、前記作業台(11)に隣接すると共に前記作業台(11)に前記付属部材(C)を供給する供給装置(40)と、を備え、
前記作業台(11)は、
前記作業に必要な前記付属部材(C)を前記付属部材(C)の種別ごとに分けて保管可能な一又は複数の保管容器(23a−23e)を有し、
前記供給装置(40)は、
前記保管容器(23a−23e)と一対一に対応した一又は複数の収容室(61a−61e)を有する収容箱(60)と、前記収容室(61a−61e)の各々に対応する種別の前記付属部材(C)を製造すると共に製造した前記付属部材(C)を対応する前記収容室(61a−61e)に収容する製造部(50)と、前記収容室(61a−61e)と前記保管容器(23a−23e)との対応関係に従って前記収容室(61a−61e)に収容された前記付属部材(C)を前記保管容器(23a−23e)に受け渡す受け渡し機構(70)と、を有する、
ワイヤハーネス(W)の製造装置。
(2)
上記(1)に記載の製造装置において、
複数の前記作業台(11)が、
所定の製造ライン(13)に沿って連なるように移動可能であるように構成され、
前記供給装置(40)が、
前記収容箱(60)及び前記受け渡し機構(70)を前記製造ライン(13)に沿った所定の可動範囲内において往復移動可能である、ように構成されると共に、
複数の前記作業台(11)のうちの一の作業台(11)が前記可動範囲を通過する前に、前記収容箱(60)に前記付属部材(C)を収容し、前記一の作業台(11)が前記可動範囲内を通過する期間中に、前記収容箱(60)及び前記受け渡し機構(70)を前記一の作業台(11)に同調移動させながら前記収容箱(60)から前記保管容器(23a−23e)に前記付属部材(C)を受け渡し、その後に前記一の作業台(11)に続く他の作業台(11)に前記付属部材(C)を供給するために前記同調移動の前の位置に戻る、ことを繰り返す、
ワイヤハーネス(W)の製造装置。
(3)
上記(2)に記載の製造装置において、
前記作業台(11)が、
環状の前記製造ライン(13)を一回周回する間に同一種の前記ワイヤハーネス(W)を所定の複数回だけ繰り返し製造するように用いられ、
前記供給装置(40)が、
前記ワイヤハーネス(W)を前記複数回だけ製造するために必要な数の前記付属部材(C)を前記収容箱(60)の前記収容室(61a−61e)の各々に一纏めに収容し、前記作業台(11)が前記可動範囲内を通過する期間中に、前記収容箱(60)から前記保管容器(23a−23e)に前記付属部材を一度に受け渡す、
ワイヤハーネス(W)の製造装置。
(4)
上記(1)〜上記(3)の何れか一つに記載の製造装置において、
前記付属部材(C)が、
コルゲートチューブであり、
前記供給装置(40)が、
前記製造部(50)として、長尺の前記コルゲートチューブが巻回されたリール(51)と、前記リールから前記作業に必要な長さの前記コルゲートチューブを引き出す引出部(52)と、引き出された前記コルゲートチューブを切断する切断部(53)と、切断した前記コルゲートチューブを前記収容室(61a−61e)に向けて排出する排出部(54)と、を有する、
ワイヤハーネス(W)の製造装置。
【符号の説明】
【0053】
10 製造装置
11 作業台
13 製造ライン
13A 第1製造ライン
13B 第2製造ライン
23a〜23e 保管容器
40 供給装置
50 製造部
51 リール
52 引出部
53 切断部
54 排出部
60 収容箱
61a〜61e 収容室
70 受け渡し機構
C コルゲートチューブ(付属部材)
D 電線
W ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6