特許第6752079号(P6752079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752079
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】トルクコントロールレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/145 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   B25B23/145 G
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-157199(P2016-157199)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-24053(P2018-24053A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2018年4月26日
【審判番号】不服2019-15333(P2019-15333/J1)
【審判請求日】2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591045323
【氏名又は名称】瓜生製作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】龍野 光司
【合議体】
【審判長】 刈間 宏信
【審判官】 田々井 正吾
【審判官】 栗田 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−262872(JP,A)
【文献】 特開2002−066946(JP,A)
【文献】 特開昭59−107866(JP,A)
【文献】 特公昭42−020280(JP,B1)
【文献】 特公昭39−017386(JP,B1)
【文献】 実開平03−040076(JP,U)
【文献】 特開平11−165274(JP,A)
【文献】 実開昭57−003573(JP,U)
【文献】 特開平06−039739(JP,A)
【文献】 特開2011−016204(JP,A)
【文献】 特開昭59−001173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B23/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコントロールレンチの締付力が設定値に達したことを油圧式打撃トルク発生装置の作動油の圧力により開放されるリリーフバルブにより検知し、リリーフバルブを通過する作動油の圧力を、リリーフバルブの下流側からライナー上蓋に形成した作動油の通路を介して取り出して、該作動油の圧力によってモータのON・OFF機構を作動させるようにしたトルクコントロールレンチにおいて、前記ライナー上蓋に形成した作動油の通路が開口するシリンダ内に、該通路の開口と連通し、通路から流出する作動油を、中心に形成した貫通孔に導く構造とした通路部材を配設し、該通路部材の貫通孔の開口する一方の位置に、貫通孔の中心と一致させて、作動油の流通を遮断するダイヤフラム部材及び該ダイヤフラム部材の背面にボールを、他方の位置に、チェックバルブを、それぞれ配設し、ダイヤフラム部材を介して、作動油の圧力を取り出すことで、該作動油の圧力を、ダイヤフラム部材のフランジ部の内周面に形成した溝部に、中心に貫通孔を有する嵌着部材を装着することでシリンダ内に配設したダイヤフラム部材からボールに作用させて、モータのON・OFF機構を作動させるようにするとともに、チェックバルブを介して、作動油を油圧式打撃トルク発生装置側に戻すようにしたことを特徴とするトルクコントロールレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコントロールレンチの締付力が設定値に達したことを油圧式打撃トルク発生装置の作動油の圧力により開放されるリリーフバルブにより検知し、リリーフバルブを通過する作動油の圧力を、リリーフバルブの下流側からライナー上蓋に形成した作動油の通路を介して取り出して、該作動油の圧力によってモータのON・OFF機構を作動させるようにしたトルクコントロールレンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トルクコントロールレンチにおいて、トルクコントロールレンチの締付力が設定値に達したことを検知し、エアーモータへの高圧空気の供給を遮断するシャットオフバルブを作動させるようにしたトルクコントロールレンチのシャットオフバルブ機構が採用されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。
【0003】
シャットオフバルブ機構の一例を、図6図7に示すトルクコントロールレンチ1に基づいて説明する。
このトルクコントロールレンチ1は、高圧空気の供給、停止を行うメインバルブ2と正逆回転の打撃トルクを選択的に発生させるための正逆回転切換バルブ3を有し、このバルブ2、3から送気される高圧空気により回転トルクを発生するエアーモータ4を駆動する。
そして、エアーモータ4の回転トルクを打撃トルクに変換する油圧式打撃トルク発生装置5をフロントケース6内に設けるようしている。
この油圧式打撃トルク発生装置5は、ライナーケース56内にライナー本体51、ライナー上蓋52及びライナー下蓋53からなるライナー50を配設し、このライナー50内に作動油を充填密閉し、ライナー50内に同軸に嵌挿した主軸7に1個又は複数個(本例においては2個)の羽根挿入溝を設けるようにする。そして、この羽根挿入溝内に羽根54を嵌挿し、この羽根54をばね55にてライナー本体51の内周面に摺接するように付勢するとともに、主軸7の外周面に、1個又は複数個のシール面を形成する。
また、ライナー本体51の内周面に、複数個(本例においては4個)のシール面を形成するとともに、打撃トルクの大きさを調整する出力調整機構8を設ける。
そして、エアーモータ4によりライナー50を回転させることにより、ライナー50のライナー本体51の内周面に形成した複数個のシール面と主軸7の外周面に形成したシール面及び羽根54、54とが合致したとき、主軸7に打撃トルクを発生させるものである。
【0004】
そして、このトルクコントロールレンチ1は、その締付力が設定値に達した場合、シャットオフバルブ機構9により、エアーモータ4への高圧空気の供給を遮断するようにしている。
このシャットオフバルブ機構9は、トルクコントロールレンチ1の締付力が設定値に達したことを、油圧式打撃トルク発生装置5の作動油の圧力により開放される出力調整機構8のリリーフバルブ83により検知し、リリーフバルブ83を通過する作動油の圧力をライナー上蓋52に配設したピストン91に作用させ、ピストン91の背部にエアーモータ4を貫通して配設したロッド92を介して、パイロットバルブ93を操作し、エアーモータへの高圧空気の供給を遮断するシャットオフバルブ95を作動させるようにしている。
【0005】
このシャットオフバルブ機構9は、図7に詳示するように、シャットオフバルブ95の一端側にエアーモータ4に供給される高圧空気が導入されるエアーポート11aを、他端側に連通孔95aを介して高圧空気が導入されるエアーポート11cをそれぞれ形成し、シャットオフバルブ95を開放する方向に付勢するばね96を配設するようにするとともに、シャットオフバルブ95の他端側に形成したエアーポート11cとパイロットバルブ93の前面側(ロッド92側)のエアーポート11dを連通孔13により連通し、高圧空気の圧力がパイロットバルブ93の前面にかかるようにし、一方、パイロットバルブ93の背面側(ロッド92の反対側)のエアーポート11eを連通孔13により外部と連通し、さらに、エアーポート11e内にパイロットバルブ93をエアーポート11dの方向、すなわち、パイロットバルブ93を閉鎖する方向に付勢するばね94を配設するようにしている。
【0006】
これにより、トルクコントロールレンチ1の締付力が設定値に達すると、油圧式打撃トルク発生装置5の作動油の圧力により出力調整機構8のリリーフバルブ83が開放され、リリーフバルブ83を通過する作動油の圧力がライナー上蓋52に配設したピストン91に作用し、ピストン91の背部にエアーモータ4を貫通して配設したロッド92を介して、パイロットバルブ93が操作され、開放される。
パイロットバルブ93が開放されると、エアーポート11c内の高圧空気が、連通孔13、エアーポート11d、エアーポート11e及び連通孔13を介して外部に放出され、エアーポート11c内の圧力が低下することとなり、これにより、シャットオフバルブ95が、図6図7に示す右側の位置から左側の位置に移動し、高圧空気が導入されるエアーポート11aとエアーモータ4に連通するエアーポート11bとを遮断して、エアーモータ4への高圧空気の供給が停止され、ボルト等を予め設定した所定の締付力で締め付けることができるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平3−40076号公報
【特許文献2】特開平11−165274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このシャットオフバルブ機構9においては、作動油の圧力を、ピストン91に作用させ、ピストン91及びロッド92を介してパイロットバルブ93を操作し、シャットオフバルブ95を作動させるが、この際、図6に示すように、作動油がピストン91に直接作用するようにされていた。
【0009】
そして、作動油がロッド92側に流入しないように、ライナー上蓋52に形成したシリンダ52b内に配設したピストン91の外周部にOリング91aを設けて、作動油のシールを行うようにしていた。
【0010】
しかしながら、ピストン91の外周部に設けたOリング91aは耐久性に乏しく、作動油がロッド92側に漏れ出て、トルクコントロールレンチの故障の原因になるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記従来の作動油の圧力によってモータのON・OFF機構としてのシャットオフバルブを作動させるようにしたトルクコントロールレンチの問題点に鑑み、トルクコントロールレンチの故障の原因になる作動油の漏出がなく、耐久性に優れたトルクコントロールレンチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のトルクコントロールレンチは、トルクコントロールレンチの締付力が設定値に達したことを油圧式打撃トルク発生装置の作動油の圧力により開放されるリリーフバルブにより検知し、リリーフバルブを通過する作動油の圧力を、リリーフバルブの下流側からライナー上蓋に形成した作動油の通路を介して取り出して、該作動油の圧力によってモータのON・OFF機構を作動させるようにしたトルクコントロールレンチにおいて、前記ライナー上蓋に形成した作動油の通路が開口するシリンダ内に、該通路の開口と連通し、通路から流出する作動油を、中心に形成した貫通孔に導く構造とした通路部材を配設し、該通路部材の貫通孔の開口する一方の位置に、貫通孔の中心と一致させて、作動油の流通を遮断するダイヤフラム部材及び該ダイヤフラム部材の背面にボールを、他方の位置に、チェックバルブを、それぞれ配設し、ダイヤフラム部材のフランジ部の内周面に形成した溝部に、中心に貫通孔を有する嵌着部材を装着することでシリンダ内に配設したダイヤフラム部材を介して、作動油の圧力を取り出すことで、該作動油の圧力を、ダイヤフラム部材からボールに作用させて、モータのON・OFF機構を作動させるようにするとともに、チェックバルブを介して、作動油を油圧式打撃トルク発生装置側に戻すようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このトルクコントロールレンチは、ライナー上蓋に形成した作動油の通路が開口する位置に、作動油の流通を遮断するダイヤフラム部材を配設し、ダイヤフラム部材を介して、作動油の圧力を取り出すようにすることにより、ダイヤフラム部材によって作動油のシールを行うことで、トルクコントロールレンチの故障の原因になる作動油の漏出をなくすことができるとともに、併せて、耐久性に乏しいピストンの外周部に設けたOリングを省略して、耐久性に優れたトルクコントロールレンチを提供することができる。
【0015】
また、前記ダイヤフラム部材の背面に、ボールを配設し、作動油の圧力を、ダイヤフラム部材からボールに作用させて、モータのON・OFF機構を作動させるようにすることにより、作動油の圧力を円滑にモータのON・OFF機構まで伝達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のトルクコントロールレンチの第1実施例を示し、(a)は正面縦断面図、(b)は要部の正面縦断面図、(c)はダイヤフラム部材の説明図である。
図2】同油圧式打撃トルク発生装置を示す断面図である。
図3】出力調整機構を示し、(a)は全体のリリーフバルブ軸の正面縦断面図、(b)はリリーフバルブ軸の正面縦断面図、(c)は(b)のC−C線断面図である。
図4】検出機構を付設したシャットオフバルブ機構を示し、(a)は正面縦断面図、(b)は軸直交断面図である。
図5】本発明のトルクコントロールレンチの第2実施例を示し、(a)は正面縦断面図、(b)は要部の正面縦断面図、(c)はダイヤフラム部材の説明図である。
図6】従来のトルクコントロールレンチを示し、(a)は正面縦断面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)はピストンの説明図である。
図7】同シャットオフバルブ機構の要部を示す正面縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のトルクコントロールレンチの実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1図4に、本発明のトルクコントロールレンチの第1実施例を示す。
このトルクコントロールレンチ1は、高圧空気の供給、停止を行うメインバルブ2と正逆回転の打撃トルクを選択的に発生させるための正逆回転切換バルブ3を有し、このバルブ2、3から送気される高圧空気により回転トルクを発生するエアーモータ4を駆動する。
そして、エアーモータ4の回転トルクを打撃トルクに変換する油圧式打撃トルク発生装置5をフロントケース6内に設けるようしている。
【0019】
この油圧式打撃トルク発生装置5は、ライナーケース56内にライナー本体51、ライナー上蓋52及びライナー下蓋53からなるライナー50を配設し、このライナー50内に作動油を充填密閉し、ライナー50内に同軸に嵌挿した主軸7に1個又は複数個(本例においては2個)の羽根挿入溝を設けるようにする。
この羽根挿入溝内に羽根54を嵌挿し、この羽根54をばね55にてライナー本体51の内周面に摺接するように付勢するとともに、主軸7の外周面に、1個又は複数個(本例においては2個)のシール面7a、7aを形成する。また、ライナー本体51の内周面に、複数個(本例においては4個)のシール面5a、5a、5b、5bを形成するとともに、打撃トルクの大きさを調整する出力調整機構8を設ける。
そして、エアーモータ4によりライナー50を回転させることにより、ライナー50の内周面に形成した複数個のシール面5a、5a、5b、5bと主軸7の外周面に形成したシール面7a、7a及び羽根54、54とが合致したとき、主軸7に打撃トルクを発生させるものである。
【0020】
ここで、油圧式打撃トルク発生装置5の主軸7の外周面に形成したシール面7a、7aを、シール面7a、7aを結ぶ直線が、主軸7の中心を通らないように、偏心して形成するようにしている。
これにより、メインバルブ2及び切換バルブ3を操作して高圧空気をエアーモータ4に供給してエアーモータ4を回転することにより、油圧式打撃トルク発生装置5のライナー50を回転し、ライナー50の1回転につき、ライナー50のライナー本体51の内周面に形成したシール面5a、5a、5b、5bと主軸7の外周面に形成したシール面7a、7a及び羽根54、54とを1回合致させ、このとき、ライナー50の内部に形成された空洞が、2つの高圧室Hと2つの低圧室Lに区分されて羽根54、54が低圧室L側に押されることにより、ライナー50の1回転につき1回の間欠的な打撃トルクを主軸7に発生させるようにしている。
【0021】
ところで、ライナー50のライナー本体51には、打撃トルクの大きさを調整する出力調整機構8を配設する。
この出力調整機構8は、ライナー本体51の軸心と平行に形成した出力調整機構挿入孔51aと、シール面5bを挟んで主軸7のシール面7aにより分割される2室間と出力調整機構挿入孔51aとを連通するポートP1、P2と、出力調整機構挿入孔51a内に挿入されるリリーフバルブ軸81、調整軸82、リリーフバルブ83及びリリーフバルブ83を閉鎖する方向に付勢するばね84とで構成するようにしている。
リリーフバルブ軸81は、リリーフバルブ軸81と螺合した調整軸82を回動操作することにより、出力調整機構挿入孔51a内で摺動するようにされるとともに、リリーフバルブ軸81の外周面にポートP1とポートP2とを連通する凹溝からなる通路81qを形成し、さらに、リリーフバルブ軸81を軸と直角方向に貫通する通路81p及びこの通路81pの中間に連通し、リリーフバルブ軸81を軸方向に貫通して、出力調整機構挿入孔51aのリリーフバルブ83側に作動油を供給する通路81rを形成する。
【0022】
この出力調整機構8は、油圧式打撃トルク発生装置5のライナー50を回転すると、高圧室Hより、ポートP1、通路81q、ポートP2を経て低圧室L側へ所定量の作動油が流れる。このとき、トルクコントロールレンチ1の締付力が設定値に達する(高圧室Hの作動油の圧力が設定圧力に達する)までは、リリーフバルブ83は、ばね84の付勢力により、リリーフバルブ軸81の端面に開口した作動油の通路81rを閉鎖した状態を維持する。
そして、トルクコントロールレンチ1の締付力が設定値に達する(高圧室Hの作動油の圧力が設定圧力に達する)と、リリーフバルブ83が開放され、作動油の一部が、ポートP1より、通路81q及び通路81rを介して、リリーフバルブ83を通過し、ライナー上蓋52に形成した通路52aを通って流出することによって、作動油の圧力が、ライナー上蓋52に形成したシリンダ52b内に配設したピストン91に作用するように構成されている。
【0023】
具体的には、図1(b)に示すように、ライナー上蓋52に形成した作動油の通路52aが開口するシリンダ52b内に、通路部材10及びダイヤフラム部材11を配設するようにしている。
【0024】
通路部材10は、作動油の通路52aの開口と連通し、通路52aから流出する作動油を、通路部材10の中心に形成した貫通孔に導く構造とし、その両側に、ダイヤフラム部材11とチェックバルブ15とをそれぞれ配設するようにしている。
すなわち、通路部材10は、トルクコントロールレンチ1の中心軸上に配設し、通路部材10には、エアーモータ4側と油圧式打撃トルク発生装置5側とにそれぞれ開口する、貫通孔からなる作動油の通路を形成し、作動油の圧力が、ダイヤフラム部材11のフランジ部11gの内周面に形成した溝部11hに、中心に貫通孔を有する嵌着部材11iを装着することでシリンダ52b内に配設したダイヤフラム部材11を介して、ライナー上蓋52に形成したシリンダ52b内に配設したピストン91に作用するようにするとともに、ライナー上蓋52と主軸7の後部との間の隙間を通じて、ライナー50内に連通するように形成されている。
【0025】
そして、この通路部材10の油圧式打撃トルク発生装置5側の作動油の通路の出口に、チェックバルブ15が配設されるとともに、通路部材10を閉鎖する方向にチェックバルブ15を付勢するばね16を、主軸7の後部71に穿設された孔72に配設するようにしている。
このように、通路部材10の油圧式打撃トルク発生装置側の出口にチェックバルブ15を配設することにより、通常の打撃トルク発生時において、リリーフバルブ83から漏れ出てくる微量の作動油が、ライナー上蓋52と主軸7の後部との間の隙間を通じて流出すること、すなわち、リリーフバルブ83からの作動油の漏れを防止することができ、これにより、締付作業の作業効率を向上するとともに、安定した締付力を得ることができるものとなる。
また、シャットオフ後は、ピストン91が復帰するのと合わせてチェックバルブ15をばね16の付勢力に抗して開放して、シリンダ52b内の作動油を、ライナー上蓋52と主軸7の後部との間の隙間を通じて、油圧式打撃トルク発生装置側に戻すことができる。
このため、チェックバルブ15を付勢するばね16の付勢力よりも、後述のパイロットバルブ93を付勢するばね94の付勢力とピストン91を付勢するばね97の付勢力を合計した付勢力が大きくなるように、ばね16、ばね94及びばね97の付勢力を設定するようにする。
なお、リリーフバルブ83が開放されて作動油の圧力がピストン91に作用するシャットオフ時にも、ばね16の付勢力に抗してチェックバルブ15が開放されるが、ライナー上蓋52と主軸7の後部との間の隙間が狭いことから、ダイヤフラム部材11を介して行われるピストン91の移動に支障が出ることはない。
【0026】
一方、打撃トルクの大きさの調整は、調整軸82を回動操作することにより、出力調整機構挿入孔51a内でリリーフバルブ軸81を摺動させ、ばね84にて付勢されるリリーフバルブ83の付勢力を調整するとともに、ポートP1とポートP2を連通する通路81qの開口量を調整することにより行うようにする。
この場合、リリーフバルブ軸81が回動すると、通路81pの開口の方向が変動し、打撃トルクの大きさの正確な調整が困難になるため、図3に示すように、リリーフバルブ軸81の軸方向に長孔81hを穿設し、この長孔81hにライナー50のライナー本体51に設けたノックピン57を嵌挿して、回り止めをするようにする。
【0027】
なお、リリーフバルブ軸81は、油圧式打撃トルク発生装置5のライナー上蓋52内に設けることもできる。
リリーフバルブ軸81をライナー上蓋52内に設けることにより、油圧式打撃トルク発生装置5の外径を小さくでき、かつ、ライナー50を構成するライナー本体51、ライナー上蓋52及びライナー下蓋53並びにノックピン57の精度の許容度を大きくできるとともに、ライナー本体51とライナー上蓋52間のシール性が出力調整機構挿入孔51aに影響されないものとなる。
【0028】
また、ポートP1とポートP2を連通する通路81pの開口量を小さく設定することにより、検知圧力を低圧にし、ばね84によるリリーフバルブ83の付勢力の調整を容易にするとともに、ポートP1とポートP2を連通する通路81qの開口量の調整による打撃トルクの大きさの調整をより有効に機能させることができるが、通路81pの開口量をあまり小さく設定すると、低出力の機種や小型の機種においては、後述のシャットオフバルブ機構9を作動させるための検知圧力が低くなりすぎたり、通路81pから通路81rに流入する作動油の量が不足し、逆に打撃トルクの調整を正確に行うことができなくなる場合がある。
これを改善するため、図3に示すように、通路81pを通し孔ではなく、片方の口径を大きく、他方の口径を小としたオリフィス形状に形成し、正回転時に、高圧室H側となるポートP1側の口径が、低圧室L側となるポートP2側の口径よりも大になるように、リリーフバルブ軸81を配設するようにする。
これによって、ポートP1とポートP2を連通する通路81qの開口量の調整による打撃トルクの大きさの調整をより有効に機能させながら、通路81pから通路81rに流入する油の量を確保することができ、打撃トルクの大きさの調整を正確に行うことができる。
【0029】
また、ポートP1とポートP2を連通する通路81qの開口量を調整する際に、ポートP1とポートP2を連通する通路81pにかかる作動油の圧力の変動を防止するため、通路81pと通路81qをリリーフバルブ軸81に分離壁81sを形成することが望ましい。
【0030】
そして、上記のとおり、トルクコントロールレンチ1の締付力が設定値に達する(高圧室Hの作動油の圧力が設定圧力に達する)と、リリーフバルブ83が開放され、作動油の一部が、リリーフバルブ83を通過し、ライナー上蓋52に形成した通路52aを通って流出することになるが、この作動油は、通路部材10の中心に形成した貫通孔に導かれ、ダイヤフラム部材11に至ることになる。
【0031】
ダイヤフラム部材11は、半球面状のダイヤフラム部を備えた、ニトリルゴム(NBR)等の耐油性のある柔軟な材料からなるもので、半球面状のダイヤフラム部の突出した側が作動油の圧力を受けるようにシリンダ52b内に固定され、シリンダ52b内のダイヤフラム部材11の位置で、作動油の流通を遮断するとともに、作動油の圧力を背面側に伝達するようにしている。
【0032】
具体的には、図1(b)に示すように、ダイヤフラム部材11の背面に、ダイヤフラム部材11の半球面状のダイヤフラム部に嵌まり込む形状のボール12を介して、ピストン91を配設し、作動油の圧力が作用したときに、半球面状のダイヤフラム部が変形、具体的には、反対方向に突出するように変形して、作動油の圧力を、ダイヤフラム部材11からボール12を介して、ピストン91に作用させるようにしている。
これにより、トルクコントロールレンチ1の故障の原因になる作動油の漏出をなくすことができるとともに、併せて、耐久性に乏しいピストン91の外周部に設けたOリング91aを省略して(さらに、ピストン91を省略して、ボール12によって、ロッド92を直接操作するようにすることもできる。)、トルクコントロールレンチ1の耐久性を向上することができる。
特に、ダイヤフラム部材11の背面に、ボール12を配設し、作動油の圧力を、ダイヤフラム部材11からボール12に作用させることにより、作動油の圧力を円滑に伝達させることができる。
【0033】
このようにして、作動油の圧力が、ライナー上蓋52に形成したシリンダ52b内に配設したピストン91に作用することになるが、ピストン91の背部には、エアーモータ4を貫通して配設したロッド92を介して、パイロットバルブ93が配設されているため、作動油の圧力を受けたピストン91が、図1において右方に移動すると、ロッド92を介して、パイロットバルブ93を操作し、エアーモータ4への高圧空気の供給を遮断するシャットオフバルブ17を作動させるようにして、エアーモータ4のON・OFF機構としてのシャットオフバルブ機構9を構成するようにしている。
【0034】
シャットオフバルブ機構9は、図1及び図4に示すように、断面T字状のシャットオフバルブ17の両側に、それぞれ高圧空気が導入されるエアーポート18a、18bを形成し、このうち、一方のエアーポート18aを、通路18cを介してエアーモータ4に連通するように形成している。
そして、このエアーポート18aとパイロットバルブ93を介して連通するロッド挿通部には、外部と連通した連通孔19が形成されている。
パイロットバルブ93とシャットオフバルブ17とは、ばね94を介して相互に弾支されており、ばね94は、パイロットバルブ93を閉鎖する方向に付勢するとともに、シャットオフバルブ17を開放する方向に付勢している。
【0035】
このシャットオフバルブ機構9では、トルクコントロールレンチ1の締付力が設定値に達する(高圧室Hの作動油の圧力が設定圧力に達する)と、油圧式打撃トルク発生装置5の作動油の圧力により出力調整機構8のリリーフバルブ83が開放され、リリーフバルブ83を通過する作動油の圧力がライナー上蓋52に配設したピストン91に作用し、ピストン91の背部にエアーモータ4を貫通して配設したロッド92を介して、パイロットバルブ93がばね94に抗して操作され、開放される。
パイロットバルブ93が開放されると、エアーモータ4と連通する側のエアーポート18aが連通孔19を介して外部と連通して圧力が低下することから、シャットオフバルブ17が反対側のエアーポート18bの高圧空気に押されて、図1及び図4(a)において左方に移動し、エアーモータ4に通じる通路18cを遮断する。
これにより、エアーモータ4への高圧空気の供給が停止され、ボルト等を予め設定した所定の締付力で締め付けることができる。
【0036】
また、図4に示すように、シャットオフバルブ17の背面のエアーポート18bに、このエアーポート18bの圧力変化を検出することによってシャットオフバルブ17の作動回数を検出し、ボルト等の締付回数をカウントする検出機構20(この検出機構20は、エアーポート18bに連通する検出孔20aに制御装置に接続される管路20cを接続するようにしたもので、検出孔20aには、ばね20dにより付勢されたボール弁20bが、高圧空気をシールするために配設されている。)を接続し、締付作業を自動管理することができるようにしてもよい。
【実施例2】
【0037】
図5に、本発明のトルクコントロールレンチの第2実施例を示す。
このトルクコントロールレンチ21は、電力の供給、停止を行うメインスイッチ22と正逆回転の打撃トルクを選択的に発生させるための正逆回転切換スイッチ23を有し、このスイッチ22、23から送られる電力により回転トルクを発生する電気モータ24を駆動する。
そして、電気モータ24の回転トルクを打撃トルクに変換する油圧式打撃トルク発生装置5をフロントケース6内に設けるようしている。
【0038】
このトルクコントロールレンチ21は、その他の基本的な構成は、図1図4に記載した第1実施例のトルクコントロールレンチ1と同様であるが、電気モータ24のON・OFF機構として、第1実施例のトルクコントロールレンチ1のシャットオフバルブ機構9に代えて、リミットスイッチからなる電気スイッチ25を用い、ロッド92を介して、電気スイッチ25を操作し、電気モータ24への電力の供給を遮断するようにして、電気モータ24のON・OFFを行うようにしている。
【0039】
なお、本実施例のトルクコントロールレンチ21の作用は、電気モータ24によって油圧式打撃トルク発生装置5を駆動する点を除いて、図1図4に記載した第1実施例のトルクコントロールレンチ1と同様である。
【0040】
以上、本発明のトルクコントロールレンチについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のトルクコントロールレンチは、トルクコントロールレンチの故障の原因になる作動油の漏出がなく、耐久性を向上することができるものであることから、トルクコントロールレンチの締付力が設定値に達したことを油圧式打撃トルク発生装置の作動油の圧力により開放されるリリーフバルブにより検知し、リリーフバルブを通過する作動油の圧力を、リリーフバルブの下流側からライナー上蓋に形成した作動油の通路を介して取り出して、該作動油の圧力によってモータのON・OFF機構を作動させるようにしたトルクコントロールレンチに広く使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 トルクコントロールレンチ
2 メインバルブ
3 正逆回転切換バルブ
4 エアーモータ
5 油圧式打撃トルク発生装置
50 ライナー
54 羽根
6 フロントケース
7 主軸
71 主軸後部
72 孔
8 出力調整機構
81 リリーフバルブ軸
82 調整軸
83 リリーフバルブ
84 ばね
9 シャットオフバルブ機構(モータのON・OFF機構)
91 ピストン
92 ロッド
93 パイロットバルブ
94 ばね
10 通路部材
11 ダイヤフラム部材
12 ボール
15 チェックバルブ
16 ばね
17 シャットオフバルブ
18a、18b エアーポート
18c 通路
19 連通孔
21 トルクコントロールレンチ
22 メインスイッチ
23 正逆回転切換スイッチ
24 電気モータ
25 電気スイッチ(モータのON・OFF機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7