特許第6752098号(P6752098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752098
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】スライドレール
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/40 20170101AFI20200831BHJP
   A47B 88/453 20170101ALI20200831BHJP
【FI】
   A47B88/04 E
   A47B88/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-195554(P2016-195554)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2018-57485(P2018-57485A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 正彦
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−239850(JP,A)
【文献】 特表2000−501303(JP,A)
【文献】 米国特許第06027193(US,A)
【文献】 特開2007−195754(JP,A)
【文献】 特開2011−224289(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3139097(JP,U)
【文献】 米国特許第05020868(US,A)
【文献】 特開2007−330418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/40
A47B 88/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動側レールの後端部に、固定側レールの折曲縁に弾性的に圧接する圧接子を有する引込み部材を設け、圧接子が圧接する固定側レール折曲縁の後端部所定位置から移動側レールを引き込む方向に固定側レールの折曲縁と一体に引き込み案内路を形成した引き込み機能を有するスライドレールにおいて、引き込み部材は、移動側レールに取り付けられ、少なくとも一部が移動側レールの収納側端部の外側に突出する連結用支持材と、一端が結用支持材の突出側の端部に回動自在に枢止され、他端に圧接子が回動自在に設けられた回動腕と、回動腕に回動力を付与するバネより構成され、圧接子が固定側レールの折曲縁に弾性的に圧接しながら回動腕が、ほぼ水平姿勢からほぼ垂直姿勢に回動可能とし、回動腕が垂直姿勢になる手前で、常に突出状態に付勢されたピストンシャフトの先端部が、移動側レールに形成された減速用突起に当接する位置に減速用ダンパーが、固定側レールに設けられていることを特徴とするスライドレール。
【請求項2】
引き込み案内路は、圧接子が圧接し、移動側レールを引き込む方向の円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライドレール。
【請求項3】
減速用ダンパーがダンパー保持枠と固定側レールの固定側基板によって着脱自在に保持されていることを特徴とする請求項2に記載のスライドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドレールに連結された家具等の引出し部、陳列棚等のスライド棚等の移動側部材を、引出し状態(スライド全開状態)から収納位置(最終収納位置)まで完全に移動させなくても、所定位置まで移動されると、後は自動的に家具本体等の固定側部材に引き込まれ、移動側部材を固定側部材に勢いよく移動させた時に生じる移動側部材の跳ね返りの防止、あるいは、運搬時、地震時等、固定側部材からの移動側部材の不用意な飛び出しを防止し、さらに、引き込み終了位置の手前から引き込み速度を減速させる引き込み機能を有するスライドレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家具本体等の固定側部材に引出し部等の移動側部材を収納する時、移動側部材を勢い良く収納すると、収納時の跳ね返りによって、移動側部材が完全に収納されなかったり、移動側部材が最初から完全に収納されていなかったりする場合があり、家具の運搬時、地震時に、引出し等が固定側部材から飛び出した勢いで、家具等を運搬中に落下させたり、あるいは転倒することで数々の不都合が生じる原因となっていた。
この問題を解決するため、移動側部材が所定位置まで収納されると、後は自動的に家具本体等の固定側部材に引込む、引込み機能を有するスライドレールが幾種類か提供されている。
【0003】
その一つとして、固定側部材あるいは移動側部材のいずれか一方側に引込み部材を設け、引込み部材に対応して他方側に引込み力受動部材を設け、引込み部材は、移動側部材が固定側部材に対して最終所定位置に近づいたとき、引込み力受動部材に一部が弾性的に圧接する圧接機構を有し、引込み力受動部材は、圧接機構の圧接力を、移動側部材を固定側部材に対し最終所定位置となす方向への引込み力に変化させる案内傾斜面を構成するものである。(特許文献1参照)
【0004】
この場合、引込み力受動部材を固定側部材、あるいは移動側部材のいずれかに取り付けなければならず、コストアップにつながる要因となっていた。
さらに、固定側部材あるいは移動側部材と引込み力受動部材は一体ではないので、その連結部分には微妙な段差が生じ、この段差を引込み部材が通過する際、摺動途中に不連続な違和感が発生する原因にもなっていた。
【0005】
一方、安価に提供できる引込み機能を有するスライドレールとしては、移動側レールの一方のボール摺動溝の端部やや内側内面から他方のボール摺動溝の端部側内面に向かって傾斜する脚体を有する線バネからなる引込み部材を移動側レールに着脱自在に設けることにより、移動側のレールの摺動途中は、固定側レールのボール摺動溝に弾性脚体が接触し、移動側レールが一定位置に達した状態で、固定側レールの摺動方向側の端部に脚体が当接して、移動側レールを自動的に収納位置まで移動させるものが提供されている。(特許文献2参照)
この場合、固定側レールのボール摺動溝の端部の角部に線バネが当接するので、摩擦抵抗が大きく、円滑な摺動操作が損なわれるだけでなく、固定側レールあるいは線バネの何れか硬度の低い方が磨耗するなど、耐久性に問題があった。
【0006】
又、他の例としては、少なくとも第一スライド部材と第二スライド部材とを備え、第二スライド部材に取り付けられる引込み機構であって、前記引込み機構は、アクチュエータ(係合体)を案内するスロットをもっているハウジングを具備し、アクチュエータ(係合体)は、バネにより生み出される力に応じて移動可能であるようにハウジングに取り付けられ、スロットに沿って第一位置と第二位置との間を滑動することができ、バネにエネルギを蓄積して第一位置に係合されて残ることができる。
【0007】
そして、引き出された第一スライド部材が引込まれる時には、第一スライド部材が閉止位置に近づいたとき、第一スライド部材はアクチュエータに係合し、閉止位置の方へ引き続き移動するので、アクチュエータ(係合体)を第一位置から離脱させ、それによりエネルギを蓄積したバネが、アクチュエータ(係合体)、及び係合した第一スライド部材をスロットに沿ってスライドが閉じられる第二位置に滑動させる。
一方、第一スライド部材が、第二スライド部材に対して引き出されるとき、第一スライド部材がアクチュエータ(係合体)を第二位置から第一位置の方へ移動させ、アクチュエータ(係合体)はバネにエネルギを蓄積させ、第一位置で係合される。そして、第一スライド部材はアクチュエータから離脱される構成のものも提供されている。(特許文献3参照)
【0008】
この場合、バネの引張り力で第一スライド部材を第二スライド部材に引き込む構成であるから、第一スライド部材がバネの引張り力に抗して(バネに引張りエネルギを蓄積させながら)引き出され、アクチュエータ(係合体)が第一位置で係合されると、第一スライド部材はアクチュエータから離脱するので、急激に引き出し力が軽くなり、引き出しスピードが速くなって、収納物、展示物等を転倒、落下させる危険があった。
さらに、第一スライド部材が引き出された状態の時、アクチュエータ(係合体)の第一位置での係合状態が不測に外れ、アクチュエータ(係合体)が第二位置移動した状態では、引込み機能が働かない。この状態を、復帰させるためには、手動によって大きな力を負荷し、第一スライドを押し込み、強制的にアクチュエータ(係合体)に第一スライド部材を係合させなければならなかった。
【0009】
又、簡単な構造でコンパクトに構成でき、耐久性に優れ、円滑な摺動力で、安価に製作でき、故障等の発生も皆無で、操作も容易な引込み機能を有するスライドレールとして、移動側レールの後端部に、固定側レールの折曲縁に形成されたボール摺動溝に弾性的に圧接する圧接子を有する引込み部材を設け、圧接子が圧接する固定側レールのボール摺動溝の後端部所定位置から、移動側レールを引き込む方向に固定側レールの折曲縁を順次傾斜させて、固定側レールのボール摺動溝と同形で、ボール摺動溝に連続する引込み案内路を折曲縁と一体に形成され、引込み部材は移動側レールに先端部が回動自在に枢止され、後端部に設けられた圧接子が固定側レールのボール摺動溝に弾性的に圧接するよう回動力が付与された回動腕と、回動腕に回動力を付与するバネよりなるものが提供されている。(特許文献4参照)
【0010】
この場合、回動腕は移動側レールに直接枢止されているので、回動腕の回動可能角度は、後端部に設けられた圧接子が固定側レールに圧接できる上下方向の移動範囲に限定される。すなわち、圧接子の上下方向の移動距離が小さい(回動腕の回動可能角度が少ないので、圧接子のスライド方向の移動距離も小さい)ので、引込みストローク(引込み始めから引込み完了までの距離)を大きくするには、引込み案内路を長く構成する必要がある。つまり、引き込み案内路を長く構成すると、引込み力が弱まるだけでなく、引込みストロークを除いたスライドストロークが短くなる。スライドストロークを維持するにはスライドレール全体の長さを長く構成しなければならない。従って、スライドレール全体の長さが長くなると、所定場所に取り付けることができず、引込み機能を断念する結果となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−195754号公報
【特許文献2】特開2008−194381号公報
【特許文献3】特許第4394327号公報
【特許文献4】特開2011−224289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題に鑑み、簡単な構成で、スライドレールの長さに影響を与えず、引込みストロークを長く構成でき、引込み力も低下させることがなく、引き込み最終位置の手前では、引き込みスピードを減速させる引き込み機能を有するスライドレールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、移動側レールの後端部に、固定側レールの折曲縁に弾性的に圧接する圧接子を有する引込み部材を設け、圧接子が圧接する固定側レール折曲縁の後端部所定位置から移動側レールを引き込む方向に固定側レールの折曲縁と一体に引き込み案内路を形成した引き込み機能を有するスライドレールにおいて、引き込み部材は、移動側レールに取り付けられ、少なくとも一部が移動側レールの収納側端部の外側に突出する連結用支持材と、一端が結用支持材の突出側の端部に回動自在に枢止され、他端に圧接子が回動自在に設けられた回動腕と、回動腕に回動力を付与するバネより構成され、圧接子が固定側レールの折曲縁に弾性的に圧接しながら回動腕が、ほぼ水平姿勢からほぼ垂直姿勢に回動可能とし、回動腕が垂直姿勢になる手前で、常に突出状態に付勢されたピストンシャフトの先端部が、移動側レールに形成された減速用突起に当接する位置に減速用ダンパーが、固定側レールに設けられているものである。
【0014】
上記課題を解決する為、本発明が第2の手段として構成したところは、上記第1の手段としての構成に加え、引き込み案内路は、圧接子が圧接し、移動側レールを引き込む方向の円弧状に形成されたものである。
【0015】
上記課題を解決する為、本発明が第3の手段として構成したところは、上記第2の手段としての構成に加え、減速用ダンパーがダンパー保持枠と固定側レールの固定側基板によって着脱自在に保持されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の手段として構成したところによると、一端に圧接子が回動自在に設けられた回動腕の他端が、連結用支持材の移動側レールから上下方向のいずれかに突出する突出側の端部に回動自在に枢止されているので、回動腕を、ほぼ水平姿勢からほぼ垂直姿勢の範囲で回動可能に配設することができるので、圧接子は、上下方向からスライド方向に順次移動できるから、引き込み案内路がスライド方向に短くても、引き込みストロークを長く構成することができるので、スライドレール全体の長さを大きくしなくても、必要なスライドストロークを得ることができる。
さらに、回動腕が垂直姿勢になる手前で、ピストン軸の先端部と減速用突起が当接する位置に減速用ダンパーを配設しているので、引き込みスピードが最も速くなる手前で減速されながら引き込まれるので、引き込み感覚が非常に優れている。
【0017】
本発明の第2の手段として構成したところによると、第1の手段として構成したところの効果に加え、引き込み案内路が、圧接子が圧接し、移動側レールが引き込まれる方向の円弧状に形成されているので、簡単な構造で引き込み力を円滑に強くすることができる。
【0018】
本発明の第3の手段として構成したところによると、第2の手段として構成したところの効果に加え、減速用ダンパーを、ダンパー保持枠と固定側レールの固定側基板によって着脱自在に保持するようにしたので、減速機能のあるなしのスライドレールの選択が容易に出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明のスライドレールの最短収縮状態の斜視図である。
図2図2は本発明のスライドレールの伸長途中の斜視図である。
図3図3は最短収縮状態のスライドレールの後端部拡大斜視図である。
図4図4は伸長途中のスライドレールの後端部拡大斜視図である。
図5図5は本発明の要部分解斜視図である。
図6図6は減速用ダンパーの取付状態を示す要部分解斜視図である。
図7図7はスライドレールの分解斜視図である。
図8図8はスライドレールの伸長途中の要部断面図である。
図9図9はスライドレールの断面図である。
図10図10はスライドレールの最短収縮状態での後端部の側面図である。
図11図11はスライドレールの最短収縮状態での後端部側からの拡大正面図である。
図12図12図10のA−A線拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
移動側レールの後端部に、固定側レールの折曲縁に弾性的に圧接する圧接子を有する引込み部材を設け、圧接子が圧接する固定側レール折曲縁の後端部所定位置から移動側レールを引き込む方向に固定側レールの折曲縁と一体に引き込み案内路を形成した引き込み機能を有するスライドレールにおいて、引き込み部材は、移動側レールに取り付けられ、少なくとも一部が移動側レールの収納側端部の外側に突出する連結用支持材と、一端が結用支持材の突出側の端部に回動自在に枢止され、他端に圧接子が回動自在に設けられた回動腕と、回動腕に回動力を付与するバネより構成され、圧接子が固定側レールの折曲縁に弾性的に圧接しながら回動腕が、ほぼ水平姿勢からほぼ垂直姿勢に回動可能とし、回動腕が垂直姿勢になる手前で、常に突出状態に付勢されたピストンシャフトの先端部が、移動側レールに形成された減速用突起に当接する位置に減速用ダンパーが、固定側レールに設けられ、引き込み案内路は、圧接子が圧接し、移動側レールを引き込む方向の円弧状に形成されたものである。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を図に基づいて説明する。
符号100は本発明のスライドレールを示し、スライドレール100は、移動側レール1と、ボール30・・・を回転自在に保持するボールリテーナー3を介して移動側レ−ル1と互いに摺動自在となした固定側レール2と、移動側レール1の後端部に取り付けられた引込み部材5と、引込み部材5に対応して、固定側レール2に設けられた引込み案内路7と、固定側レール2に配設された減速用ダンパーより構成されている。
以下、図1において左側斜め上方向を引き出し側(先端側)、右側斜め下方向を収納側(後端側)として説明する。
【0022】
移動側レール1は、金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げた内面長手方向にボール摺動溝10、10を有する上下両折曲縁11、11と、引出し等と連結される移動側レール基板12より断面略C字形に形成されている。
そして、移動側レール基板12の引き出し側端部を固定側レール2方向に折り曲げて移動側収納時ストッパー13が形成され、移動側レール基板12の後部側に固定側レール2方向に一部が突出する移動側引出し時ストッパー14が形成されている。(後記する減速用突起140を兼用している。)
そして、移動側レール1の後端部には引込み部材5(詳細は後記)が取り付けられている。
【0023】
固定側レール2は、金属製の細長条板の短手両端部を外向き円弧状に折り曲げて形成された外面長手方向にボール摺動溝20、20を有する上下両折曲縁21、21と、固定側レール基板22より、断面略C字形に形成されている。
そして、固定側レール基板22の引き出し側前部の一部を移動側レール1方向に突出させて移動側レール1が引き出された状態で、ボールリテーナー3の収納側端部が当接するリテーナー後端部ストッパー23が形成されている。
そして、引込み部材5に対応して固定側レール2の上折曲縁21の収納側端部を下方に円弧状に折り曲げて、上折曲縁21と一体に連続する引込み案内路7が形成されている。
【0024】
ボールリテーナー3は、帯条金属板にて移動側レール1、固定側レール2間に挿入可能な大きさで、かつ、固定側レール2の略3分の1程度の長さで、コ字形の基板31と、移動側レール1と固定側レール2の上下の折曲縁11、11、21、21間に突出する基板31の上下端部に連設された上下の折曲片32、32からなり、上下の両折曲片32、32の摺動方向の数箇所に複数個のボール30・・・を回転自在に保持している。
そして、基板31の収納側端部の一部を固定側レール基板22側に突出せしめ、移動側レール1が最も引き出された時、前記固定側レール2のリテーナー後端部ストッパー23の後端に当接して停止するリテーナー引き出し時後ストッパー33が形成され、基板31の引き出し側の一部を移動側レール基板12側に突出せしめ、移動側レール1が最も引き出された時、前記移動側レール1の移動側引出し時ストッパー14が後端に当接して停止するリテーナー引き出し時前ストッパー34が形成されている。
【0025】
すなわち、スライドレール100は、移動側レール1が最も引き出された状態(最大伸長状態)で、移動側レール1の移動側引出し時ストッパー14がリテーナー3のリテーナー引き出し時前ストッパー34に当接し、リテーナー引き出し時後ストッパー33が、固定側レール2のリテーナー後端部ストッパー23に当接した状態となって停止し、一方、スライドレール100の最短収縮状態では、移動側レール1の移動側収納時ストッパー13が固定側レール2の上下折り曲げ縁21、21の前端面に当接して停止している。
【0026】
引込み案内路7は、固定側レール2の上折曲縁21の後端側所定位置から、移動側レール1を引き込む方向に固定側レール基板22から後方に突出する上折曲縁21を順次下向き円弧状に変形させた形状で、固定側レール2の上折曲縁21と断面同形で、上折曲縁21に連続して上折曲縁21と一体に形成されている。
【0027】
すなわち、固定側レール2の上折曲縁21を残して、固定側レール基板22と下折曲縁21の後端部を、前後方向に所定寸法切り落して加工用切り落とし部71が形成された後、残った固定側レール2の上折曲縁21を下向きの4分の1円弧状に変形されて形成されたものである。
【0028】
尚、実施例では、引き込み案内路7は、固定側レール2の高さ寸の法(固定側レール基板22の高さを半径とした4分の1円弧状に形成されているが、半径(曲率半径)を大きくとれば、弧長は長くなるので、引き込みストロークも長くなる反面、後記する引き込み部材5のバネ53の付勢力が一定であれば引込みスピードは緩やかとなる。(引き込み力は弱くなる。)
一方、半径(曲率半径)が小さい円弧状とすれば、弧長は短くなるので、引き込みストロークも短くなる反面、後記する引き込み部材5のバネ53の付勢力が一定であれば引込みスピードは速くなる。(引き込み力は強くなる。)
【0029】
引き込み部材5は、移動側レール基板12の外面に取り付けられ、収納側端部が移動側レール1の収納側端部から上方で外側に突出する連結用支持材51と、一端が連結用支持材51の突出側の上方端部に回動自在に枢止され、他端に圧接子523が回動自在に設けられた回動腕52と、回動腕52に回動力を付与するバネ53より構成されている。
【0030】
連結用支持材51は、移動側レール基板22の収納側端部外面に連結される連結用基板511と、連結用基板511の収納側端部から、固定側レール基板22の反対方向に一旦突出し、収納側端部が移動側レール1の外側に位置し、上端が移動側レール2の上折曲縁21の上方に位置する、横断面横向きL字形の回動腕支持突部512より形成され、回動腕支持突部512の上端には枢軸510の取り付け孔513が形成され、収納側端部の上下方向中間には、バネ53の一端を保持するバネ保持突起514が設けられている。
符号515は、移動側レール1に形成された連結孔120に対応して形成された連結孔を示している。
そして、移動側レール1に形成された嵌合用突起121、121に対応して、連結孔515の後端側に嵌合用孔(図示せず。)が形成されている。
【0031】
回動腕52は、一端が前記回動腕支持突部512の取り付け孔513に連結用枢軸510、連結用枢軸510に外嵌し、バネ53に内嵌する内筒500、及び、バネ53を介して、回動自在に一端が連結され、他端に圧接子523が回転自在に設けられた、移動側レール1の上下折曲縁11、11間よりやや長い長さに形成され、回動腕52のやや下端部には、バネ保持突起514に対応して、バネ53の他端を保持するバネ端部保持突起521が形成されている。
【0032】
バネ53は巻きバネが採用されており、バネ係止突起514に一端が係止され、他端がバネ端部係止突起521に係止され、移動側レール1が引き込まれた状態で、それぞれの端部が開く方向に付勢されている。すなわち、回動腕52は、図4では後端部が下方に回動する方向(図3では、時計まわりの方向)に付勢された状態となっている。
【0033】
圧接子523は、実施例では、固定側レール2の上折曲縁21(引込み案内路7)の外形に一致する外形を有する回転ローラーで形成され、回動取付軸524、連結孔520にて、回動腕52に回転自在に連結されている。
すなわち、バネ53の付勢力が一定であれば、枢軸510(回動中心点)から圧接子523(回転ローラーの中心)までの長さが長い程、圧接子523が引込み案内路7に圧接する力が弱くなり、引込みスピードは緩やかとなる。
【0034】
自己復帰型の減速用ダンパー8は、内部に高粘度のオイルあるいはグリスが充填され、自己復帰用のバネが設けられた円筒形のシリンダー本体81と、シリンダー本体81に出入自在に保持されたピストンシャフト82と、ピストンシャフト82の先端に設けられた緩衝部材83よりなり、常にピストンシャフト82がシリンダー本体81より突出した状態を維持するよう付勢され、ダンパー保持枠9に着脱自在に保持された状態で、ダンパー固定側逃がし孔80、ダンパー保持枠嵌合孔802を介して、固定側レール基板22の後端部に着脱自在に取り付けられている。
緩衝部材83は、弾性を有する材料より、ピストンシャフト82の先端に差し込まれる連結部831と、実施例では前記移動側引出し時ストッパー14と兼用する減速用突起140が当接し、消音機能と緩衝機能を有する当接部832より構成されている。
【0035】
ダンパー固定側逃がし孔80は、シリンダー本体81の長手寸法よりやや長めの寸法からなる長手部と、円筒形の直径より小さい寸法からなる短手部より長方形形状に形成され、ダンパー保持枠嵌合孔802は、ダンパー固定側逃がし孔80のやや後方に円形状に形成されている。
【0036】
ダンパー保持枠9は、高さ寸法が固定側レール2の上下両折曲縁21、21間に嵌入する大きさで、長さ寸法がダンパー固定側逃がし孔80とダンパー保持枠嵌合孔802の位置よりやや長めで、厚み寸法が固定側レール2の厚みよりやや小さい厚みの略直方体形状で、中央部にシリンダー本体81を保持するシリンダー本体保持孔90が形成されている。
【0037】
そして、シリンダー本体保持孔90の上下に位置する上下壁91、91の固定側レール基板22側の端部に、上下方向に突出し、固定側レール基板22と上下両折曲縁21、21の角部内面に嵌合する上下嵌合突条911、911が形成され、シリンダー本体保持孔90の後側に位置する後壁92の固定側レール基板22側の面には、ダンパー保持枠嵌合孔802に嵌合する嵌合突起921が形成され、シリンダー本体保持孔90の前側に位置する前壁93の固定側レール基板22側の面には、減速用ダンパー8のピストンシャフト82を保持するシャフト保持凹部931が形成されている。
【0038】
シリンダー本体保持孔90は、上下嵌合突条911、911側の固定レール側開口901はシリンダー本体81よりやや大きく、その反対側の移動レール側開口902は、ダンパー固定側逃がし孔80にほぼ一致する大きさ(短手部が円筒形の直径より小さい寸法)に形成されている。
すなわち、減速用ダンパー8は、ダンパー保持枠9の固定レール側開口901からシリンダー本体保持孔90に嵌入された状態では、固定レール側開口901から出入自在な状態で保持されているが、上下嵌合突条911、911が固定側レール基板22と上下両折曲縁21、21の角部内面に係合し、ダンパー保持枠嵌合孔802に嵌合突起921が嵌合した状態で、ダンパー固定側逃がし孔80にシリンダー本体81の一部が嵌入し、シリンダー本体保持孔90の移動レール側開口902にシリンダー本体81の一部が嵌入した状態(図12に示す。)で、ダンパー保持枠9と固定側レール基板22によってシリンダー本体81は保持され、ピストンシャフト82は引き出し方向に突出する。
【0039】
そして、減速用ダンパー8を固定側レール2から取り外すときは、固定側レール基板22の裏面側から、ダンパー固定側逃がし孔80に臨むシリンダー本体81を、固定側レール基板22から離脱する方向に押しやり、上下嵌合突条911、911と固定側レール基板22と上下両折曲縁21、21の角部内面の係合状態を解除し、ダンパー保持枠9と共に取り外す。
【0040】
本発明は上記のごとく構成され、スライドレール100の最短収縮状態(図1図3図10図11)では、圧接子523は、バネ53によって引込み案内路7の下端部に弾性的に圧接し、常に移動側レール2を収納側方向に移動するよう付勢しているので、移動側レール2は不用意に前方に引き出されることがなく、スライドレール100の最短収縮状態を確実に維持することが出来る。
【0041】
そして、この状態から、移動側レール1が引き出されると、バネ53の付勢力に抗して回動腕52は、図10で時計廻りに回動しながら、移動側レール1と共に前方に移動し、圧接子523は案内路7から固定側レール1の上折曲縁21の外面後端部に位置する。(図8に示す状態。)この時、圧接子523の圧接方向が引込み案内路7の形状変化によって、初期抵抗よりは小さな抵抗で移動側レール1は前方に移動し、次に、圧接子523は固定側レール2の上折曲縁21に位置し、バネ53の付勢力による抵抗がほとんどなくなった状態で移動側レール1は最大伸長状態まで引き出される。
【0042】
すなわち、移動側部材の引き出し始めは、使用者が強めの感覚で引き出す傾向があるのを利用し、引込み案内路7を円弧状とすることで、円滑な摺動感覚を得ることが出来るだけでなく、案内路7、固定側レール2の上折曲縁21が同形で連続して一体に形成されているので、微妙な段差もなく、圧接子523が、引込み案内路7から上折曲縁21にそれぞれ移動する段階(逆の段階でも同じ。)においても何ら違和感を生じることがない。
又、スライドレール100の最短収縮状態で、圧接子523は円弧状の下向き方向の端部に圧接しているので、スライドレール100の最短収縮状態を確実に維持する事が出来る。
【0043】
そして、スライドレール100の最大伸長状態から、移動側レール1を押し込んでいくと(移動側レール1と連結された移動側部材を収納していくと)、圧接子523は、固定側レール2の上折曲縁21の後端から引込み案内路7に位置し、バネ53の付勢力によって、移動側レール1は自動的に引込まれていく。
そして、バネの両端部が順次開くことでバネ53の付勢力が弱まるが、引込み案内路7の収納側端部は下向きに突出した形状となっているから、圧接子523の圧接方向がスライドレール100の摺動方向に近づき、バネ63の付勢力の弱まりを補い、強く引き込まれようとする(引き込み速度が速くなろうとする)時、減速用突起140(移動側引き出し時ストッパー14)が、ピストンシャフト82の緩衝部材83に形成された当接部832に衝突し、ピストンシャフト82をシリンダー本体81に押し込むよう作用することで移動側レール1の引き込み速度は急激に減速され、その後緩やかに引き込まれ、やがて回動腕52は略垂直姿勢となり、スライドレール100の最短縮小状態となり、確実に最短縮小状態を維持する。
【0044】
さらに、回動腕52を、ほぼ水平姿勢からほぼ垂直姿勢の範囲で回動可能に配設しているので、圧接子523は、上下方向からスライド方向に順次移動できるから、引き込み案内路7がスライド方向に短くても、引き込みストロークを長く構成することができるので、スライドレール全体の長さを大きくしなくても、必要なスライドストロークを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上詳述したように、本発明は、家具等の本体と引出し間、あるいは陳列棚本体と棚板間、さらには、複写機本体と給紙トレー間や、調理機器のグリルなどの引き出し部に取り付けて使用することができ、広範囲で利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 移動側レール
11、11 上下折曲縁
100 スライドレール
2 固定側レール
21、21 上下折曲縁
5 引込み部材
51 連結用支持材
52 回動腕
523 圧接子(回転ローラー)
53 バネ(巻きバネ)
7 引込み案内路
8 減速用ダンパー
81 シリンダー本体
82 ピストンシャフト
9 ダンパー保持枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12