(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0015] 以下の詳細な説明では、その一部を形成する添付図面を参照する。添付図面では、本発明を実施することができる具体的な実例となる実施形態を一例として示す。しかしながら、他の実施形態が利用されてもよいこと、そして論理的、機械的、および電気的変更が行われてもよいことは理解されてしかるべきである。更に、図面および明細書において紹介される方法は、個々のステップを実行することができる順序を限定するように解釈してはならない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で捕らえてはならない。
【0008】
[0016] 冷原子時計は、連続的に信号を出力するクオーツ・クリスタル発振器(「局部発振器」または「LO」)を採用することができる。クオーツ・クリスタル発振器の周波数は、ドリフトまたは精度低下を補償するために周期的に調節される。このLOの周波数の周期的な調節は、LO出力の周波数の、超高真空(UHV)セル内部に取り込まれた冷原子雲内に取り込まれた原子の内部状態間におけるエネルギ分裂との比較に基づく。冷原子雲内に取り込まれ原子の内部状態間のエネルギ分裂は、時間ドメイン・ラムジー分光分析(Ramsey spectroscopy)によって判定され、原子遷移は、LOから合成されたマイクロ波によって励起される。例えば、取り込まれた原子の分光分析測定値は、LOがコンポーネントとなっているタイミング・システムにおいて基準周波数として使用することができる。本明細書において説明するシステムおよび方法の実施形態は、一般に、冷原子センサに適用される。
【0009】
[0017] 冷原子時計は、微小マイクロ波共振器を採用することができ、微小マイクロ波共振器は、冷原子雲によって占められる空間領域(volume)内にマイクロ波磁場を生成するために、マイクロ波フィードラインによって駆動することができる。一実施形態では、マイクロ波共振器はループ・ギャップ共振器である。冷原子時計は、冷原子雲から情報を得る(interrogate)ために使用される非常に均一なマイクロ波磁場のために、サイズが小さく、高精度が可能である。マイクロ波エネルギは、マイクロ波ソースからマイクロ波共振器に、複数の送信線ケーブル(ここではマイクロ波フィードラインまたはフィードラインと呼ぶ)を通じて送られる。送信線ケーブルは、マイクロ波ソースから出て、共振器において終端する。これらのケーブルは、容量性または誘導性結合構造によって、共振器を励起するために使用される。
【0010】
[0018] 原子時計(例えば、冷原子時計)の最適な性能に要求される高い共振器(マイクロ波)磁場均一性を達成するためには、ケーブルによって共振器に伝達されるマイクロ波エネルギの位相およびパワーの正確なバランスを達成しなければならない。大きな温度の移り変わりの下では、駆動回路、同軸ライン、結合構造、および共振器の電気的および機械的プロパティが変化するおそれがあり、位相およびパワーのバランスの劣化を生じ、性能が失われる結果となる。具体的には、マイクロ波フィードの位相およびパワーのバランスが崩れると、フィードによって生成されるマイクロ波磁場はもはや均一ではなくなり、時計は、不均一位相のメカニズムによって精度を失う。当業者には知られているように、不均一位相は分散位相(distributed-phase)または時計周波数ずれとも呼ばれている。
【0011】
[0019] 本明細書では、変化する温度の下で非常に均一なマイクロ波磁場を維持する方法およびシステムについて説明するが、この方法およびシステムは、ケーブル(フィード)によって共振器に伝達されるマイクロ波エネルギの位相およびパワー双方を較正するために、補助測定を使用する。補助測定は、時計を原子遷移の周波数にロックする時計測定とは全く異なる。各補助測定は、一連のステップを含む。これらのステップを組み合わせて、ここでは、補助測定シーケンスと呼ぶ。共振器に伝達されるマイクロ波エネルギの位相およびパワーの総合的較正は、通例、複数の補助測定シーケンスを含み、各シーケンスがシステムにおけるケーブルの部分集合を有効化する(activate)。各補助測定シーケンスは、有効化されたケーブルの部分集合間における位相およびパワーのバランスについての情報を提供するので、補助測定シーケンスの間に得られるデータを、ここでは、完全な較正における複数のデータ集合におけるデータ集合と呼ぶ。各補助測定シーケンスにおいて得られたデータ集合は、位相およびパワーのバランス(phase and power balance)が、関連するケーブルの部分集合にとってアンバランスになっているか否か判定するために使用される。補助測定シーケンスにおけるデータが、位相およびパワーのバランスがアンバランスになっていることを示す場合、システムにおけるプロセッサは、ケーブルまたは出力の位相およびパワーを調節する。これは、全体的なマイクロ波パワー・レベルがずれているか否か判定するが、原子を励起するマイクロ波磁場の位相均一性を判定および補正(最適化)しない先行技術のシステムとは異なる。
【0012】
[0020] 本明細書において定義するように、原子測定サイクルとは、1つの原子雲の形成(creation)、励起、および破壊である。これはデータの最も小さい「粒子」を与える。本明細書において定義するように、時計測定サイクルとは、LOを操作する(steer)ためにデータを得る一種の原子測定サイクルである。本明細書において定義するように、補助測定サイクルとは、ケーブルの現在の部分集合のフィードラインの位相およびパワーのバランスを推論するためにデータを得る一種の原子測定サイクルである。本明細書において定義するように、補助測定シーケンスとは、フィードラインの1つの部分集合を完全に特徴付けるために必要なP回で1組の補助測定サイクルである。i番目のサイクルは、(i+1)番目のサイクロとは異なる位相および/またはパワーの設定を有し、シーケンス全体を構築するために、これらは段階的に最後まで通して行われる(step through)。
【0013】
[0021] 有利なこととして、補助測定サイクルを時計測定サイクルと交互に行うことができるので、マイクロ波フィードの位相およびパワーは、LOに対する連続補正の時計機能を停止することなく、較正される。例えば、時計測定サイクルが、N回の原子雲測定サイクルに合わせて得られるとする。Nは正の整数である。(N+1)番目の原子雲測定サイクルが時計測定サイクルqであった時点において(qは1以上(q≧))、補助測定シーケンスが代わりに実行される。次いで、次のN回のサイクルの間に、原子雲測定が再度時計測定サイクルを与える。次いで、N回の追加の時計測定サイクルの後、別のq回の補助測定シーケンスが実行される。このように、m個のデータ点(mは正の整数)を必要とする完全な補助測定シーケンスは、(m×N)/q回の原子雲測定毎に完了する。全てのフィードラインの相対的位相およびパワーの完全な較正が、P回の補助測定サイクル(Pは正の整数)からのデータを必要とする場合、マイクロ波の位相およびパワーの完全な較正は、P×m×N/q回の原子雲測定サイクル毎に得られる。一実施形態では、原子雲測定サイクルは、20ミリ秒未満しか要さないことも可能である。原子雲測定サイクルの速度を考慮すると、この手順は、連続的に行われる較正を可能とし、LOの安定化と干渉しない。この実施形態の他の実施態様では、qは1よりも大きくPまでであるので、時計測定サイクルに戻る前に、クラスタにおいてP回の補助測定サイクルが実行される。
【0014】
[0022] 本明細書では、温度可変環境のために時計本体の温度が変化しつつある間に非常に均一なマイクロ波磁場を維持する方法およびシステムについて説明する。本明細書において説明する方法およびシステムは、冷原子時計のための内部較正ルーチンを提供する。これは、温度のずれまたは他の環境変化による、原子を励起するマイクロ波磁場のあらゆる位相またはパワーのずれを補正する。この較正プロセスの間、マイクロプロセッサの制御の下で、複数のマイクロ波フィードラインの内の部分集合に順次給電し、それらの位相およびパワーを調節する。給電されたフィードラインは、通常の時計測定サイクルにおいて使用される原子状態間で遷移を生ずる。しかしながら、本明細書において説明する較正ルーチンの一部を形成する補助サイクルでは、新しい情報をLO操作回路に提供するためではなく、位相およびパワーにおけるアンバランスを検出するために、原子遷移情報を使用する。原子に基づくパワーおよび位相のバランスの兆候(signature)が、マイクロ波フィードラインの複数の位相およびパワーに対する各部分集合の動作の間に検出される。少なくとも1つのプロセッサが、マイクロ波フィードラインの部分集合の順次給電によって、マイクロ波フィードラインの種々の部分集合を巡回する(cycle)アルゴリズムを実行する。この実施形態の一実施態様では、部分集合は1対のマイクロ波フィードラインである。この実施形態の他の実施態様では、部分集合は、例えば、共振器外形の対称点、対称軸、または対称面による反射によって関係付けられる、共振器の対向する両側に繋がる(feed)1対のマイクロ波フィードラインである。少なくとも1つのプロセッサは、巡回の間原子に基づく兆候を分析し、これらのフィードラインを駆動する位相およびパワーが共振器において最も均一な磁場を生成するのに適していることを確保するために必要とされるマイクロ波フィードラインの位相およびパワーに必要なあらゆる補正を計算し、フィードラインを駆動する信号に補正を適用させる。
【0015】
[0023] この技法は、いずれの先行技術の電気的測定(例えば、ピックアップ・アンテナを採用することによる)よりも遙かに好ましい。何故なら、共振器の中心において、そこのマイクロ波磁場を乱すことなく、マイクロ波位相およびパワーを形成する(establish)電気的方法がないからである。更に、時計本体の温度変動により、いずれの電気プローブもそれ自体が精度低下を受けるのに対して、真空セルにおける原子は時計本体と干渉せず、したがって、共振器において形成されたマイクロ波磁場の絶対位相およびパワーの変化を精度高く判定するための基準として役割を果たすことができる。
【0016】
[0024]
図1は、本願にしたがって非常に均一なマイクロ波磁場126を維持することによって、高精度の原子時計(即ち、冷原子時計10)を動作させるシステム11の実施形態の模式図である。システム11は、冷原子時計10が安定した周波数基準を供給する間に、冷原子時計10の継続的(ongoing)較正を行うことによって、非常に均一なマイクロ波磁場126を維持するように構成されている。継続的較正を実行することによって、冷原子時計は大きな温度の揺れにわたって精度を維持する。システム11は、冷原子時計10、局部発振器操作回路(steering circuit)27における局部発振器26、メモリ35、少なくとも1つのプロセッサ20、および記憶媒体30における少なくとも1つのアルゴリズム40を含む。随意に、システム11は少なくとも1つの温度センサ45と温度コントローラ46を含む。
【0017】
[0025] この実施形態の一実施態様では、メモリ35はプロセッサ20の内部にある。プロセッサ20は、冷原子時計10および少なくとも1つのアルゴリズム40と通信可能に結合されている。プロセッサ20は、本明細書において説明するように冷原子時計10を較正するために少なくとも1つのアルゴリズム40を実行する。局部発振器操作回路27は、冷原子時計10に通信可能に結合されている。この実施形態の一実施態様では、少なくとも1つの温度センサ45は、冷原子時計10の温度を検知するように構成されている。温度コントローラ46は、少なくとも1つの温度センサ45からのデータを入力するように通信可能に結合されている。温度コントローラ46は、冷原子時計0の温度変化を示す情報をプロセッサ20に提供するために、プロセッサ20に通信可能に結合されている。
【0018】
[0026] 冷原子時計10は、共振器100、4つの例証的なマイクロ波フィードライン101、102、103、および104、ならびにそれぞれのマイクロ波フィードライン101、102、103、および104と関連付けられた4つの位相および振幅調節モジュール151、152、153、および154を含む。共振器100は、原子雲125によって占められる空間領域内にマイクロ波磁場を生成するために、マイクロ波フィードライン101、102、103、および104によって駆動される。マイクロ波フィードラインにおいて位相または振幅に対する調節が必要と判断されたとき(以下で説明するように)、このマイクロ波フィードラインに関連付けられた位相および振幅調節モジュールに信号が送られ、この信号に応答して、位相または振幅が調節される。
【0019】
[0027] 冷原子時計10のある種の実施形態では、真空セル126がマイクロ波共振器100内に取り付けられる。真空セル126は、真空セル16内部の特定の位置において原子を冷却/捕獲するレーザ・ビーム127を受け入れる。少なくとも1つの実施態様では、真空セル126上のファセット・ウィンドウ(faceted window)が、マイクロ波共振器内に嵌め込まれた(fit)真空セル126内へのレーザ・ビームの導入を可能にする。更に、マイクロ波共振器100は真空セル126を包囲し、冷原子雲125によって占められる真空セル126の内部空間領域内にマイクロ波磁場を生成する。
【0020】
[0028] この実施形態の一実施態様では、冷原子時計は、冷原子センサとして実装されるために、物理パッケージ内に収容される。この実施形態の他の実施態様では、共振器は、共振器の軸に沿った均一な直線偏波と、共振器および真空セル126内部の空間領域x全域に空間的に均一な位相とを有するマイクロ波磁場を生成する。少なくとも1つの実施態様では、真空セル126内部の原子がルビディウム原子である場合、共振器は、真空セル126内部に6.835GHzの周波数を有するマイクロ波磁場を生成し、生成される周波数は、マイクロ波時計における時計遷移として一般に使用される原子の基底状態の超微細遷移の共振周波数である。
【0021】
[0029] プロセッサ20は、較正プロセスの一部として、複数の補助測定サイクルを、それぞれの複数のマイクロ波フィードラインの部分集合において実行するように構成されている。少なくとも1つのアルゴリズム40は、プロセッサ10によって、較正中に、冷原子時計10における少なくとも2本のマイクロ波フィードラインの位相およびパワーに対して最適な(改善された)動作パラメータに収束するために実行される。
【0022】
[0030] 冷原子時計10は、概略的に、ボックスとして表され、現在入手可能なまたは今後開発される種々のタイプの冷原子時計の内任意の1つとすることができる。例えば、冷原子時計10は、2015年7月14日に発行されSYSTEMS AND METHODS FOR A COLD ATOM FREQUENCY STANDARD(冷原子周波数標準のためのシステムおよび方法)と題する米国特許第9,083,363号に記載されている冷原子時計の実施形態とすることができる。米国特許第9,083,363号をここで引用したことにより、その全内容が本願にも含まれるものとし、本明細書では’363特許と呼ぶことにする。冷原子時計10は、通信可能にプロセッサ20に結合され、プロセッサ20は記憶媒体30内にあるアルゴリズム40を実行する。この実施形態の一実施態様では、本明細書において説明する冷原子時計は、微小、バッテリ給電型マイクロ波親時計(primary clock)である。
【0023】
[0031] マイクロ波フィードライン101、102、103、および104は、それぞれ、A、B、C、およびDの記号が付せられた矢印として示されている。この文書では、マイクロ波フィードライン101を「A」または「Aケーブル」と呼び、マイクロ波フィードライン102を「B」または「Bケーブル」と呼び、マイクロ波フィードライン103を「C」または「Cケーブル」と呼び、マイクロ波フィードライン104を「D」または「Dケーブル」と呼ぶ。
【0024】
[0032] 共振器100には、フィードラインの矢印が指し示す点においてギャップが示されている。この実施形態では、フィードライン101〜104は、ループ・ギャップ共振器100に容量的に結合され、これらの導体およびシールドは、これらが指し示すギャップの異なる側に電気的に接続されている。一実施形態では、フィードライン101〜104を共振器100に結合するために、バラン変圧器が使用される。
図1に示すように、マイクロ波フィードライン101はマイクロ波フィードライン102と対抗し、マイクロ波フィードライン103および104と直交する。つまり、マイクロ波フィードライン103および104も互いに直交する。
【0025】
[0033]
図2Aは、本願にしたがって、マイクロ波信号を供給する共振器200、ならびに4本のマイクロ波フィードライン201、202、203、および204の実施形態を示す。共振器200は、軸方向に沿って2つの異なる位置にフィードラインを有し、2つの位置は、「上位」レベルおよび「下位」レベルと呼ぶこともできる。
図1に示したように、マイクロ波フィードライン201はマイクロ波フィードライン202に対向し、これらは双方共共振器200の上位レベルに繋がる。マイクロ波フィードライン203はマイクロ波フィードライン204に対向し、これらは双方共共振器200の下位レベルに繋がる。マイクロ波フィードライン201はマイクロ波フィードライン203の上にある。マイクロ波フィードライン202はマイクロ波フィードライン204の上にある。共振器200は、ループ・ギャップ共振器200であり、円筒状シールドの内部に金属製のスロット付きループを含む。このループは、ギャップによってループに沿って分離された電極によって形成され、このループは、’363特許において記載されているように、電極をシールドに接続する支持体によって支持されている。共振器200の形状は、共振するマイクロ波磁場の周波数を決定する。例えば、ギャップのサイズ、支持体の長さ、シールドの円周、および電極のサイズが、共振マイクロ波磁場の周波数を決定する。
【0026】
[0034]
図2Biは、本発明にしたがって、8本のフィードライン101、102、103、104、105、106、107、および108によって誘導的に繋げられるループ・ギャップ共振器201の実施形態を示す。
図2Biiは、
図2Biのループ・ギャップ共振器201の分解図を示す。
図2Biiにおいて、フィードライン101および105は、関連する円領域221からずれて示され、フィードライン102および106は関連する円領域222からずれて示され、フィードライン103および107は関連する円領域223からずれて示され、フィードライン104および108は関連する円領域224からずれて示されている。フィードライン101、102、103、104、105、106、107、および108は、関連する円領域221、222、223、および224の上下にあるループ内で終端し、各駆動ライン上で正しい位相および振幅で駆動磁場によって付勢されると、中央領域220内にマイクロ波磁場を形成する(create)。
【0027】
[0035]
図3は、本願にしたがって原子雲125を生成するための8本の同軸マイクロ波フィードライン301〜308および共振器300の実施形態の模式図である。マイクロ波フィードライン301〜308は、それぞれ、A〜Hの記号が付せられた矢印として示されている。共振器300は、ループ・ギャップ共振器300であり、容量性結合の実施形態では、フィードラインの矢印101〜108が結合される点にギャップがあることが示されている。
図3に示すように、8本のマイクロ波フィードライン301〜308は全て、他を基準として、45度の整数倍の角度(即ち、L×45°、ここでLは正の整数である)をなす。マイクロ波フィードライン301はマイクロ波フィードライン305と対向し、マイクロ波フィードライン303および307と直交する。マイクロ波フィードライン302は、マイクロ波フィードライン306と対向し、マイクロ波フィードライン304および308と直交する。この実施形態の他の実施態様では、共振器には3本のマイクロ波フィードラインがフィードされ、3本のマイクロ波フィードライン間の角度は、120度の整数倍となる。注記すべきこととして、フィードラインが共振器の周囲に対称的に配置されるのは通常のことであるが、本明細書において説明する較正方法の動作にとっては必ずしもそうではない。
【0028】
[0036]
図1、
図2A、
図2Bi、および
図3は、種々の共振器およびマイクロ波フィードラインの構成を示す。本明細書において説明する技法を実現するためには、他の共振器およびマイクロ波フィードラインの構成も使用することができる。本明細書において説明する技法に対する必須事項は、少なくとも2本のフィードラインが少なくとも2つのそれぞれのマイクロ波磁場を生成し、少なくとも2つのそれぞれのマイクロ波磁場の少なくとも一部が逆伝搬成分を含むことである。本明細書において説明するアルゴリズム40は、マイクロ波フィードラインの位相およびパワーに対する最適な動作パラメータに収束する。しかしながら、共振器において生成されるマイクロ波磁場の均一性の最終的な品質は、マイクロ波フィードラインに使用される特定の外形(geometry)に応じて、良くなることも悪くなることもあり得る。
【0029】
[0037]
図4は、本願にしたがって、マイクロ波フィードラインのパワーおよび位相の較正において、冷原子時計内に非常に均一なマイクロ波磁場を維持する方法の実施形態の流れ図である。方法400について、
図1および
図3を参照しながら説明するが、この方法は冷原子時計システムの他の実施形態にも適用可能である。較正は、冷原子時計10が安定した周波数基準として機能する間に連続的に進められる。
【0030】
[0038] 較正プロセスの間、プロセッサ20は少なくとも2回の補助測定サイクルを、マイクロ波フィードラインの少なくとも2つのそれぞれの部分集合において実行する。マイクロ波フィードラインの部分集合(ここでは「部分集合」とも呼ぶ)は、各々階層またはラウンド・ロビン比較動作網(comparison network)において駆動される。この実施形態の一実施態様では、メモリ35が階層またはラウンド・ロビン比較動作網のフローを部分集合のために格納する。例えば、メモリ35は、マイクロ波フィードラインの部分集合(例えば、ケーブルAおよびBの第1部分集合、ならびにケーブルCおよびDの第2部分集合)と、これらの部分集合の各々を駆動するためのシーケンス(例えば、ケーブルAおよびBの部分集合では、最初にケーブルA、次いでケーブルB)のリストとを格納することができる。この場合、所与の部分集合に対する補助測定サイクルが完了したとき、プロセッサ20は次の部分集合(例えば、ケーブルCおよびDを含む部分集合)をメモリ35から引き出し、次いで、この部分集合に対する階層またはラウンド・ロビン比較動作網においてこの部分集合が駆動される(例えば、ケーブルCおよびDの部分集合では、最初にケーブルC、次いでケーブルD)。
【0031】
[0039] 階層またはラウンド・ロビン比較動作網の1つにおいて実行される補助測定サイクルについて、ブロック402〜410のプロセスに沿って説明する。
[0040] ブロック402において、マイクロ波フィードラインの部分集合における少なくとも1本のマイクロ波フィードラインのパワーおよび位相を一定に保持し、この部分集合における少なくとも1つの他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を変化させつつ、共振器においてマイクロ波磁場を励起するためにこの部分集合を駆動する。
【0032】
[0041] ブロック404において、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動しながら、共振器においてマイクロ波磁場によって励起される原子遷移の強度を測定する。補助測定サイクルのi番目の測定の間に、少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定サイクルのi番目のオフセット値に設定しつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定する。補助測定サイクルのi番目のオフセット値は、1)補助測定サイクルのi番目の測定中に変化させられている、部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーおよび/または位相と、2)時計測定値を得るために冷原子時計が動作させられているときの少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相との間の差である。
【0033】
[0042] 所与の補助測定サイクルの間、部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を、複数のオフセット値を経て段階的に変化させつつ、数回の測定を行う。具体的には、補助測定サイクルの第1の測定を行うとき、少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を、補助測定サイクルの第1オフセット値に設定し、次いで補助測定サイクルの第2の測定を行うとき、少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定サイクルの第2オフセット値に設定する等、補助測定サイクルの間の全てのデータ点が収集されるまで続ける。
【0034】
[0043] 所与の補助測定サイクルのための例証的な部分集合がAおよびBケーブル(
図1)を含む場合、信号をAおよびBケーブルに印加することによって共振器100においてマイクロ波磁場を励起する。
図1に示すように、AおよびBケーブルは共振器100の対向側に結合する。補助測定サイクルの測定がこの部分集合に対して行われる毎に、Bによって供給されているマイクロ波のパワーおよび/または位相を(一定に保持されているAに対して)変化させる(段階的に変化させる)。所与のケーブル(または複数のケーブル)によって供給されているマイクロ波の位相を360度にわたって段階的に変化させ、所与のケーブル(または複数のケーブル)によって供給されるマイクロ波のパワーを、所望のパワー範囲にわたって段階的に変化させる。位相の刻み幅、パワーの刻み幅、およびパワー範囲はメモリ35に格納されている。次いで、Aによって供給されているマイクロ波のパワーおよび/または位相を(一定に保持されているBに対して)変化させる(または段階的に変化させる)。このように、ケーブルAおよびBは、階層またはラウンド・ロビン比較動作網において補助測定サイクルが行われる対象である部分集合である。他の例証的な部分集合では、AおよびBで構成された部分集合(「AB」)を、これらの相対的なパワーおよび位相を固定して、駆動することができ、CおよびDで構成された部分集合(「CD」)を、これらの相対的なパワーおよび位相を固定して、駆動することができ、「CD」に対する「AB」の相対的なパワーおよび/または位相を変化させる(段階的に変化させる)ことができる。同様に、複数のフィードラインのあらゆるまたは全ての組み合わせを階層またはラウンド・ロビン動作網において駆動することができるように、AおよびCの部分集合、ならびにBおよびDの部分集合を形成し、同様に使用することもできる。集合A、B、C、およびD全体は、それ自体の部分集合と見なすこともできる。
【0035】
[0044] 更に他の例では、所与の補助測定サイクルに対する部分集合は、C、G、B、およびFケーブル(
図3)を含み、信号をC、G、B、およびFケーブルに印加することによって、マイクロ波磁場を共振器100内に励起する。
【0036】
[0045]
図3に示すように、CおよびGケーブルは共振器100の対向側に結合し、ケーブルBおよびFは共振器100の対向側に結合する。C、G、B、およびFケーブルの例証的な部分集合では、補助測定サイクルの測定がこの部分集合に対して行われる毎に、Cによって供給されているマイクロ波のパワーおよび位相を(一定に保持されているG、B、およびFに対して)変化させる(段階的に変化させる)。次いで、他の補助測定サイクルでは、補助測定サイクルの測定がこの部分集合に対して行われる毎に、Gによって供給されているマイクロ波のパワーおよび/または位相を(一定に保持されているC、B、およびFに対して)変化させる(段階的に変化させる)。次に、補助測定サイクルの測定がこの部分集合に対して行われる毎に、Bによって供給されているマイクロ波のパワーおよび位相を(一定に保持されているF、C、およびGに対して)変化させる(段階的に変化させる)。次いで、補助測定サイクルの測定がこの部分集合に対して行われる毎に、Fによって供給されているマイクロ波のパワーおよび位相を(一定に保持されているB、C、およびGに対して)変化させる(段階的に変化させる)。このように、このC、G、B、およびFケーブルの部分集合に対する補助測定サイクルにおける階層またはラウンド・ロビン比較動作網においてC、G、B、およびFケーブルを駆動する。当業者には理解されるように、C、G、B、およびFケーブルには他の階層またはラウンド・ロビン比較動作網も可能である。
【0037】
[0046] C、G、B、およびFケーブルの部分集合の例証的な場合では、冷原子時計10が時計サイクル位相で動作するときに使用されるパワーおよび/または位相から少なくとも1本のマイクロ波フィードラインのパワーおよび/または位相を変化させつつ、共振器におけるマイクロ波磁場によって駆動される原子遷移の強度を、C、G、B、およびFフィードラインの部分集合に対して測定する。
【0038】
[0047] ブロック404の測定を行った後、フローはブロック406に進む。ブロック406において、冷原子時計10を時計測定サイクルに戻す前に、他の測定が必要か否か判断する。この実施形態の一実施態様では、プロセッサ20は、N回の時計サイクルの間に2つ以上のi番目の測定値を収集するように構成されている。この場合、フローはブロック406からブロック402に進み、(i+1)番目のオフセット値に対して(i+1)番目の測定が行われる。一実施形態では、時計測定サイクルに戻る前に、所与の部分集合に対する補助測定シーケンスの全ての補助測定サイクルが同時に行われる。他の実施形態では、全ての部分集合に対する全ての補助測定シーケンスの全ての補助測定サイクルが、時計測定サイクルに戻る前に同時に行われる。この後者の場合、マイクロ波フィードラインのパワーおよび位相の完全な較正が一度に行われる。先に注記したように、全てのフィードラインの相対的な位相およびパワーの完全な較正には、P回の補助測定シーケンスからのデータが必要となる。例えば、温度センサ45が冷原子時計10の極端な温度変化を示す場合、プロセス20は非常に均一なマイクロ波磁場を維持するために較正を開始することができる。
【0039】
[0048] この実施形態の他の実施態様では、プロセッサ20は、N回の時計サイクルの間1回の補助測定サイクル(auxiliary-measurement cycle)を収集する(collect)ように構成される。この場合、フローは、ブロック402に戻ることなく、ブロック406からブロック408に進む。
【0040】
[0049] フローがブロック408に進むと、冷原子時計10は、補助測定サイクルから時計測定サイクルに切り替わる。時計測定サイクルの間、全てのケーブルの位相およびパワーは、冷原子時計10を動作させるために現在最適化されているレベルにあり、オフセット値になっていない。ブロック408において、N個の時計測定値が冷原子時計10から出力されたか否か判定を行う。冷原子時計10から出力された時計測定値がN個未満である場合、方法400のフローは、N個の時計測定値が出力され終えるまで、ブロック408に戻る。N個の時計測定値が冷原子時計10から出力されたと判定されたとき、方法400のフローはブロック408からブロック410に進む。この実施形態の一実施態様では、プロセッサ20は時計測定サイクルの数を数える。
【0041】
[0050] ブロック410において、プロセッサ20は、マイクロ波フィードラインの部分集合に対する全ての補助測定サイクルが収集されたか否か判定する。実行中の補助測定シーケンスに追加のデータ点が必要とされる場合、フローはブロック402に戻る。所与の部分集合に対する1回の補助測定シーケンスは、ブロック402、404、406、408、および410を経て402に戻り、所与の補助測定シーケンスの間において全てのデータ点が収集されるまで、巡回することによって完了する。プロセッサ20が、マイクロ波フィードラインの部分集合に対する補助測定シーケンスの全ての測定値が収集されたと判定した場合、フローはブロック412に進む。
【0042】
[0051] ブロック412において、補助測定シーケンスのために測定されたマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を処理することによって、マイクロ波フィードラインの部分集合間の相対的パワーおよび相対的位相を抽出する。
【0043】
[0052] C、G、B、およびFケーブルの部分集合の例証的な場合では、プロセッサ20は、ブロック404を参照して説明した補助測定値に対する原子遷移の測定強度を処理する。次いで、プロセッサ20は、原子遷移の測定強度に対してアルゴリズム40の1つ以上を実行して、マイクロ波フィード・ラインA、B、C、D、E、F、G、およびHの内部分集合C、G、B、およびFの間の相対的パワーおよび相対的位相を抽出する。
【0044】
[0053] ブロック414において、プロセッサ20は、フィードラインの駆動によって共振器内に発生したマイクロ波磁場の位相および振幅の均一性を改善するためには部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上に調節が必要か否か判断するために、少なくとも1つのアルゴリズム40を実行する。C、G、B、およびFケーブルの部分集合の例証的な場合では、プロセッサ20は、共振器に伝達されたマイクロ波エネルギの位相またはパワーの内1つをバランスさせるためには、マイクロ波フィード・ラインA、B、C、D、E、F、G、およびHの内部分集合C、G、B、およびFにおいて、マイクロ波フィード・ラインC、G、B、およびFの1本以上に調節が必要か否か判断するために、少なくとも1つのアルゴリズム40を実行する。
【0045】
[0054] ブロック408において調節が必要であると判断された場合、ブロック416において、冷原子時計の共振器においてマイクロ波磁場を励起するための複数のマイクロ波フィード・ラインA、B、C、D、E、F、G、およびHの内部分集合C、G、B、およびFにおけるマイクロ波フィード・ラインC、G、B、およびFの1本以上を調節する。プロセッサ20は、信号(
図1において位相および振幅調節モジュール151、152、153、および154を指し示す矢印によって概略的に表される)を位相および振幅調節モジュール151、152、153、および154の内1つ以上に送る。この信号に応答して、位相および振幅調節モジュール151、152、153、および/または154は、それぞれのマイクロ波フィードライン101、102、103、および/または104の位相および/またはパワーを調節する。
【0046】
[0055] フィードラインによって時計に伝達されたマイクロ波エネルギの位相およびパワーがバランスされると、冷原子時計10は非常に均一なマイクロ波磁場を維持し、冷原子時計10は高精度となる。このように、プロセッサ20によって実行可能な少なくとも1つのアルゴリズム40は、複数のマイクロ波フィードラインの位相およびパワーに対して改善された(最適な)動作パラメータに収束する。
【0047】
[0056] つまり、ブロック402および404において、マイクロ波を短期間パルス状で供給し、レーザによって原子を測定し、信号を得る。ケーブルの1本以上の部分集合によって供給されるマイクロ波のパワーおよび/または位相を段階的に変化させることによって(1つ以上の部分集合における1つ以上の変化させないケーブルに対して)、補助測定サイクルについての新たなデータを、メモリ35内に既に格納されているデータに追加する。プロセッサ20は、メモリ35からのアルゴリズム40を使用して、マイクロ波フィードライン101〜104間の相対的な位相およびパワーを計算することができる。プロセッサ20は、アルゴリズム40を使用して、冷原子時計10の動作を最適化するために、マイクロ波フィードライン101〜104の内任意のもののパワーおよび/または位相に対して必要なあらゆる調節を計算する。
【0048】
[0057] ブロック418において、プロセッサ20は、複数のマイクロ波フィードラインから他の部分集合を選択し、フローはブロック402に戻り、他の補助測定シーケンスの間におけるデータを収集する。他の補助測定シーケンスは、ブロック416において選択した、複数のマイクロ波フィードラインからの部分集合において実行する。このように、マイクロ波フィードラインのパワーおよび位相の連続較正には、時計信号が差し挟まれ(interleave with)、一方プロセッサ20によって実行されるアルゴリズム40は、複数のマイクロ波フィードラインの部分集合に対して補助測定シーケンスを繰り返した後、マイクロ波フィードラインの位相およびパワーの最適な動作パラメータに収束する。
【0049】
[0058] 例えば、マイクロ波フィードラインの次の部分集合は、E、A、C、およびGケーブルの1組(
図3)とすることができる。この実施形態の他の実施態様では、プロセッサ20はマイクロ波フィードラインの次の部分集合を示す情報をメモリ35から引き出す。
【0050】
[0059] マイクロ波フィード・ラインA、B、C、D、E、F、G、およびHの例証的な場合では、プロセッサ20は、C、G、B、およびFの第1例証的部分集合、D、H、E、Aの第2例証的部分集合、D、H、F、およびBの第3例証的部分集合、C、G、A、およびEの第4例証的部分集合を処理した後、マイクロ波フィード・ラインA、B、C、D、E、F、G、およびHの位相およびパワーに対する最適な動作パラメータに収束する。勿論、他の部分集合を使用することができ、もっと多いまたは少ない部分集合を使用することもできる。
【0051】
[0060] このように、各ケーブルによって伝達されるマイクロ波のパワーおよび位相を最適化することができる。これは、このようなマイクロ波共振器100に基づいて、冷原子時計10の性能を改善する。
【0052】
[0061] これより、ブロック402および404において実施されたプロセスの物理的過程(physics)について、
図1におけるケーブルの例証的な補助較正サイクルについて説明する。この例証的な補助較正サイクルでは、マイクロ波フィードライン101を付勢する間、他のマイクロ波フィードライン102〜104は付勢されない。この例証的な補助較正サイクルでは、マイクロ波パルスの期間を補助測定サイクルのオフセット値に変化させる(段階的に変化させる)。マイクロ波磁場の励起強度は、時計遷移において駆動される原子の数に反映され、この測定値が、プロセッサによって設定されたデータに追加され、メモリに保持される。1つ以上の補助較正サイクルの後、固定値の位相およびパワーで付勢されたフィードラインの現在の部分集合によって駆動された原子の「ラビ・フロッピング期間」を、プロセッサが計算するのに十分なデータ集合がメモリに保持される。
図5Aは、2本の逆伝搬フィードライン(例えば、マイクロ波フィードライン101および102)間の位相差の関数とした、正規化ラビ・フロッピング期間のプロットである。
図5Aにおける各データ点は、プロセッサによって実行された計算の出力であり、ラビ・フロッピング期間は、1組の1つ以上の測定値の数値処理によって抽出される。1組の1つ以上の測定値は、占拠数移動(population transfer)対パルス期間の変調パターンを形成する。占拠数は、原子に適用されるマイクロ波パルスの種々の期間にマイクロ波磁場によって時計遷移において駆動される原子の数である。
図5Bは、強度を駆動するマイクロ波磁場の正規化強度に対する位相のプロットであり、正規化ラビ・フロッピング期間の逆数に関係することから、位相は
図5Aにおけると同じデータから導き出される。これらの曲線は、フィードラインの相対的な位相およびパワーがデータ点から推論される数値処理の結果である。
【0053】
[0062]
図5Aにおいてブロック50によって包囲されたエリアは、例えば、実線、短い破線、および長い破線を比較して、バランスされた位相およびパワーが最も速いラビ・フロッピング信号と、データ点対位相のピーク対バリーに最大のコントラストとを生成する最適動作条件のエリアである。当業者には分かるように、ラビ・フロッピング期間は、2つのエネルギ・レベル間のエネルギ分割によって共振またはその近くの駆動磁場によって結合された2つのエネルギ・レベル間で、原子波関数に遷移を行わせる速度(rate)である。その測定値は、マイクロ波磁場と原子遷移との間の結合の強度を伝える。共振マイクロ波磁場で照明された2レベル・システムのレベル間におけるラビ・フロッピングは、ラビ・フロッピング期間の期間で生じる。ラビ周波数は、ラビ・フロッピング期間にわたって、2πに等しい。
【0054】
[0063] 原子遷移が2つのレベル間における磁気双極遷移である場合、共振ラビ周波数(on-resonance Rabi frequency)b
i,jは、
【0058】
は、i→j遷移に対する磁気遷移双極モーメントであり、
【0060】
は、分極(polarization)を含むベクトル磁場振幅である。
[0064] マイクロ波フィードライン101および102に対してパワーの粗いバランスを行うために、マイクロ波フィードライン101のパワーおよび位相を固定にして、1つ以上の補助測定サイクルからのデータで構成される占拠数移動の変調パターンを、プロセッサ20によって分析する。次に、マイクロ波フィードライン102を付勢するが、他のマイクロ波フィードライン101および103〜104を付勢せず、1つ以上の補助測定サイクルからのデータで構成される占拠数移動の新たな変調パターンをプロセッサ20によって分析する。最後に、ラビ・フロッピング期間を、マイクロ波フィードライン101によって生成されたそれに等しくなるように、マイクロ波フィードライン102へのパワーを調節する。このプロセスは、マイクロ波フィードライン101および102に対してパワーの粗いバランスを行う。
【0061】
[0065] 次いで、直前のステップからのマイクロ波フィードライン101およびマイクロ波フィードライン102に対するパワー設定値を保持しながら、マイクロ波フィードライン101およびマイクロ波フィードライン102の双方を付勢する。次に、マイクロ波フィードライン102の位相を、マイクロ波フィードライン101に対してスキャンする。マイクロ波フィードライン101および102に同時に伝達された印加マイクロ波パルスの様々な周期に対する1つ以上の補助測定サイクルからのデータで構成された占拠数移動の変調バターンの分析によって、ラビ・フロッピング期間を測定する。プロセッサ20は、ラビ・フロッピング期間を最小化する位相を判定する。このプロセスは、マイクロ波フィードライン101および102に対して位相の粗い調節を行う。
【0062】
[0066] 一旦位相およびパワーのバランスに対する粗い調節を完了したなら、次に、マイクロ波フィードライン101および102の位相およびパワーの微調整を以下のように完了する。ラビ・フロッピング時間対位相曲線のピークまたはその付近にあるマイクロ波フィードライン102の位相を選択する。注記すべきこととして、これは、通常の時計動作中にマイクロ波磁場の均一性を最大化する位相値に関して、ほぼ180度「ずれる」(wrong)。ラビ・フロッピング時間がその最大値になる(即ち、原子遷移に対するマイクロ波磁場の結合強度がその最小の最も弱い値を取る)まで、マイクロ波フィードライン102のパワーに対する調節を行う。これは、フィードライン101および102間においてパワー・バランスの細かい設定を構成する。次いで、プロセッサ20は、マイクロ波フィードライン101および102間におけるラビ・フロッピング期間対相対位相のモデルを計算する。このモデルは、最小ラビ・フロッピング期間に対応する位相、つまり、原子遷移に対するマイクロ波磁場の結合強度がその最大の最も大きな値を取るときの位相を識別するために使用される。これは、冷原子時計10にとってライン101および102間の相対位相の望ましい動作点であり、マイクロ波フィードライン102の位相をこの点において取り込む。これは、フィードライン101および102間における相対位相の細かい設定を構成する。このように、マイクロ波フィードライン101および102の位相およびパワーは、時計モードにあるときの時計の性能を最適化するやり方で、細かくバランスされる。
【0063】
[0067] 次いで、このプロセスは、ブロック402〜410において次の補助測定サイクルの間複数のマイクロ波フィードライン101〜104におけるマイクロ波フィードラインの他の部分集合(例えば、マイクロ波フィードライン103および104)のために繰り返される。例えば、このプロセスは、4本のマイクロ波フィードライン101〜104(
図1)の内2本のマイクロ波フィードライン101および102を付勢するが、4本のマイクロ波フィードラインの内他の2本のマイクロ波フィードライン103および104を付勢せずに、繰り返される。本文書を読んで理解したことに基づいて理解できるように、CD対およびAB対間における共通振幅および共通位相に対して調節を行う。これは、マイクロ波フィードライン101〜104(例えば、A〜D)の全ての位相およびパワーのバランスを取る。
【0064】
[0068] 複数マイクロ波フィードライン、例えば、A〜Dに奇数のマイクロ波フィードラインがあるとき、Aのみを付勢し、次いでBのみを付勢し、次いでCのみを付勢することによって、A、B、およびCの粗調整を行う。これは、これらのラインのパワー・バランスの粗調整を構成する。次いで、3本のライン全てを付勢しながら、ラビ期間を最小化するようにBの位相を調節する。次いで、ラビ期間を更に最小化するようにCの位相を調節し、次いで更にラビ時間を最小化するようにAの位相を調節する。これは、包括的な最小化ラビ時間が得られるまで、繰り返し行われ、駆動ラインの位相の粗調整を構成する。次いで、A、B、およびCのパワーの微調整を以下のように決定する(determine)。Aの位相を維持し、ラビ期間に対するそれらの位相の二次元マップを掃引するためにBおよびCの位相を繰り返し調節する。このマップには最大ラビ期間のピークが存在する。しかるべき二次元最大化アルゴリズムを実行することによって、このピークを識別する。BおよびCの位相をこのピークまたはその付近に設定する。次いで、BおよびCのパワーを調節する。他のしかるべき二次元最大化アルゴリズムを実行することによって、ピークをできるだけ大きくするように、即ち、マイクロ波磁場の原子遷移に対する結合を最小化するように、BおよびCのパワーを調節する。これは、フィードA、B、およびC間におけるパワー・バランスの細かい設定を構成する。最終的な2−Dマップを処理して、ラビ時間対Aに対するBの位相、およびラビ時間対Aに対するCの位相のモデルを得る。このモデルは、最小ラビ期間の点を識別するために使用される。BおよびCの位相はこの点に設定される。このように、A、B、およびCの位相は、時計モードにあるときに時計の性能を最適化するやり方で、細かくバランスされる。
【0065】
[0069] この較正プロセスは、先行技術の冷原子時計であれば性能劣化が生ずる大きな温度の揺れを冷原子時計10が受けても、冷原子時計10の性能の劣化を防止する。
[0070] プロセッサ20は、本明細書において説明した冷原子時計において使用される種々の方法、プロセス・タスク、計算、および制御機能を実行するためのソフトウェア・プログラム、ファームウェア、またはその他のコンピュータ読み取り可能命令によって機能する。一実施態様では、プロセッサ20は、特定用途集積回路(ASIC)またはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のような、プロセッサ・サポート・チップおよび/またはシステム・サポート・チップを含む。
【0066】
[0071] これらの命令は、通例、コンピュータ読み取り可能命令またはデータ構造の格納に使用される任意のしかるべきコンピュータ読み取り可能媒体上に格納される。コンピュータ読み取り可能媒体は、汎用または特殊目的コンピュータあるいはプロセッサによってアクセスすることができる任意の入手可能な媒体として、あるいは任意のプログラマブル論理デバイスとして実現することができる。適したプロセッサ読み取り可能媒体には、磁気または光媒体のような、記憶媒体またはメモリ媒体を含むことができる。例えば、記憶媒体またはメモリ媒体は、従来のハード・ディスク、コンパクト・ディスク−リード・オンリ・メモリ(CD−ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)(同期ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(SDRAM)、データ倍速(DDR)RAM、RAMBUSダイナミックRAM(RDRAM)、スタティックRAM(SRAM)等を含むがこれらに限定されるのではない)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、およびフラッシュ・メモリ等のような揮発性または不揮発性媒体を含むことができる。また、適したプロセッサ読み取り可能媒体は、ネットワークおよび/またはワイヤレス・リンクのような通信媒体を通じて伝送される電気信号、電磁信号、またはディジタル信号というような送信媒体も含むことができる。
【0067】
[0072]
実施形態例
[0073] 例1は、非常に均一なマイクロ波磁場を維持する冷原子時計の動作方法であって、この方法は、部分集合における少なくとも1本のマイクロ波フィードラインのパワーおよび位相を一定に保持し、部分集合における少なくとも1つの他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を変化させつつ、共振器においてマイクロ波磁場を励起するためにマイクロ波フィードラインの部分集合を駆動するステップと、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動しつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起される原子遷移の強度を測定するステップと、少なくとも1つの補助測定サイクルにおいて測定されたマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を処理することによって、マイクロ波フィードラインの部分集合間の相対パワーおよび相対位相を抽出するステップと、抽出に基づいて、マイクロ波磁場の位相および振幅の均一性を改善するために、マイクロ波フィードラインの部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上に対して調節が必要か否か判断するステップとを含む。
【0068】
[0074] 例2は、例1の方法を含み、更に、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動する間に共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定することに応答して、N個の時計測定値を得るステップを含み、Nが正の整数である。
【0069】
[0075] 例3は、例1〜2のいずれかの方法を含み、更に、調節が必要であると判断した場合、マイクロ波フィードラインの部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上のパワーおよび/または位相を調節するステップを含む。
【0070】
[0076] 例4は、例1〜3のいずれかの方法を含み、部分集合における少なくとも1本のマイクロ波フィードラインのパワーおよび位相を一定に保持し、部分集合における少なくとも1つの他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を変化させつつ、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動するステップが、部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第1オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場を励起するためにマイクロ波フィードラインの部分集合を駆動するステップと、部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第2オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場を励起するためにマイクロ波フィードラインの部分集合を駆動するステップとを含む。
【0071】
[0077] 例5は、例4の方法を含み、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動しつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起される原子遷移の強度を測定するステップが、補助測定シーケンスの第1測定値を得るために、部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第1オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定するステップと、補助測定シーケンスの第2測定値を得るために、部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第2オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定するステップとを含む。
【0072】
[0078] 例6は、例5の方法を含み、更に、補助測定シーケンスの第1測定値を得たことに応答して、N個の時計測定値を得るステップであって、Nが正の整数である、ステップと、補助測定シーケンスの第2測定値を得たことに応答して、N個の時計測定値を得るステップとを含む。
【0073】
[0079] 例7は、例1〜6のいずれかを含み、更に、マイクロ波フィードラインの他の部分集合を選択するステップを含む。
[0080] 例8は、例1〜7のいずれかの方法を含み、部分集合における少なくとも1本のマイクロ波フィードラインのパワーおよび位相を一定に保持し、部分集合における少なくとも1つの他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を変化させつつ、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動するステップと、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動しつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起される原子遷移の強度を測定するステップが、マイクロ波フィードラインの第1部分集合を駆動しつつ、第1部分集合における少なくとも1つの他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第1オフセット値にするステップと、第1部分集合に対して補助測定シーケンスの第1測定値を得るために、第1部分集合における少なくとも1つの他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第1オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定するステップとを含む。この方法は、更に、補助測定サイクルの第1測定値を得たことに応答して、N個の時計測定値を得るステップであって、Nが正の整数である、ステップを含む。部分集合における少なくとも1本のマイクロ波フィードラインのパワーおよび位相を一定に保持し、部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を変化させつつ、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動するステップ、およびマイクロ波フィードラインの部分集合を駆動しつつ共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定するステップは、更に、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第2オフセット値にしつつ、マイクロ波フィードラインの第1部分集合を駆動するステップと、第1部分集合に対して補助測定シーケンスの第2測定値を得るために、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定サイクルの第2オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定するステップとを含む。
【0074】
[0081] 例9は、例8の方法を含み、更に、第1部分集合に対して補助測定シーケンスの第2測定値を得たことに応答して、N個の時計測定値を得るステップを含む。
[0082] 例10は、例9の方法を含み、更に、マイクロ波フィードラインの第1部分集合に対する補助測定シーケンスの間において全ての測定値が収集されたか否か判定するステップを含み、補助測定シーケンスの間に測定されたマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を処理することによって、マイクロ波フィードラインの部分集合間における相対パワーおよび相対位相を抽出するステップが、マイクロ波フィードラインの第1部分集合に対する補助測定シーケンスの間において全ての測定値が収集されたと判定したことに応答して、第1部分集合に対する補助測定シーケンスにおける全ての測定の間に測定されたマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を処理することによって、マイクロ波フィードラインの第1部分集合間における相対パワーおよび想定位相を抽出するステップを含む。
【0075】
[0083] 例11は、例10の方法を含み、マイクロ波磁場の位相および振幅の均一性を改善するために、マイクロ波フィードラインの部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上に対して調節が必要か否か判断するステップが、マイクロ波磁場の位相および振幅の均一性を改善するために、マイクロ波フィードラインの第1部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上に対して調節が必要か否か判断するステップを含み、この方法は、更に、調節が必要であると判断された場合、マイクロ波フィードラインの第1部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上を調節するステップを含む。
【0076】
[0084] 例12は、 高精度原子時計を動作させるシステムを含み、このシステムは、複数のマイクロ波フィードラインと、複数のマイクロ波フィードラインに関連付けられたそれぞれの複数の位相および振幅調節モジュールとを含む冷原子時計と、冷原子時計に通信可能に結合されたプロセッサであって、複数のマイクロ波フィードラインの部分集合に対して補助測定シーケンスを実行するように構成される、プロセッサと、複数のマイクロ波フィードラインの位相およびパワーに対して改善された動作パラメータに収束するように、プロセッサによって実行可能な少なくとも1つのアルゴリズムとを含む。
【0077】
[0085] 例13は、例12のシステムを含み、プロセッサが、共振器においてマイクロ波磁場を励起するために、複数のマイクロ波フィードラインの部分集合における少なくとも1本のマイクロ波フィードラインのパワーおよび位相を一定に保持し、この部分集合における少なくとも1つの他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を変化させつつ、 この部分集合を駆動し、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動しつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起される原子遷移の強度を測定し、補助測定サイクルの間に測定されたマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を処理することによって、マイクロ波フィードラインの部分集合間の相対パワーおよび相対位相を抽出し、抽出に基づいて、マイクロ波磁場の位相および振幅の均一性を改善するために、マイクロ波フィードラインの部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上に対して調節が必要か否か判断するように構成される。
【0078】
[0086] 例14は、例13のシステムを含み、プロセッサが、更に、調節が必要であると判断した場合、マイクロ波フィードラインの部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上を調節するように構成される。
【0079】
[0087] 例15は、例13〜14のいずれかのシステムを含み、プロセッサが、複数のマイクロ波フィードラインに関連付けられた複数の位相および振幅調節モジュールに通信可能に結合されており、マイクロ波フィードラインの第1部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上において調節が必要であると判断された場合、プロセッサは、調節すべきマイクロ波フィードラインの内1本以上と関連付けられた位相および振幅調節モジュールの内1つ以上に信号を送り、信号を入力したことに応答して、1つ以上の位相および振幅調節モジュールが、マイクロ波フィードラインの内1本以上の位相および振幅の内1つを調節する。
【0080】
[0088] 例16は、例13〜15のいずれかのシステムを含み、プロセッサが、更に、マイクロ波フィードラインの部分集合を駆動しつつ共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定したことに応答して、N個の時計測定値を得るように構成され、Nが正の整数である。
【0081】
[0089] 例17は、例12〜16のいずれかのシステムを含み、更に、冷原子時計の温度を検知するように構成された少なくとも1つの温度センサと、少なくとも1つの温度センサからデータを入力するために通信可能に結合され、温度変化を示す情報をプロセッサに提供するために通信可能にプロセッサに結合された温度コントローラとを含む。
【0082】
[0090] 例18は、例12〜17のいずれかのシステムを含み、プロセッサが、更に、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第1オフセット値にしつつ、複数のマイクロ波フィードラインの第1部分集合を駆動し、第1部分集合に対して補助測定シーケンスの第1測定値を得るために、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第1オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定し、補助測定シーケンスの第1測定値を得たことに応答して、N個の時計測定値を得て、Nが正の整数であり、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第2オフセット値にしつつ、マイクロ波フィードラインの第1部分集合を駆動し、第1部分集合に対して補助測定シーケンスの第2測定値を得るために、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第2オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定し、第1部分集合に対して補助測定シーケンスの第2測定値を得たことに応答してN個の時計測定値を得て、マイクロ波フィードラインの第1部分集合に対する補助測定シーケンスの間において全ての測定値が収集されたか否か判定し、マイクロ波フィードラインの第1部分集合に対する補助測定シーケンスの間において全ての測定値が収集されたと判定したことに応答して、第1部分集合に対する補助測定シーケンスにおける全ての測定において測定されたマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を処理することによって、マイクロ波フィードラインの第1部分集合間における相対パワーおよび相対位相を抽出するように構成される。
【0083】
[0091] 例19は、冷原子時計において非常に均一なマイクロ波磁場を維持する方法を含む。この方法は、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第1オフセット値にしつつ、マイクロ波フィードラインの第1部分集合を駆動するステップと、第1部分集合に対して補助測定シーケンスの第1測定値を得るために、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第1オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定するステップと、補助測定サイクルの第1測定値を得たことに応答して、N個の時計測定値を得るステップであって、Nが正の整数であるステップと、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第2オフセット値にしつつ、マイクロ波フィードラインの第1部分集合を駆動するステップと、第1部分集合に対して補助測定シーケンスの第2測定値を得るために、第1部分集合における少なくとも1本の他のマイクロ波フィードラインのパワーまたは位相を補助測定シーケンスの第2オフセット値にしつつ、共振器においてマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を測定するステップと、第1部分集合に対して補助測定サイクルの第2測定値を得たことに応答して、N個の時計測定値を得るステップと、マイクロ波フィードラインの第1部分集合に対する補助測定シーケンスの間において全ての測定値が収集されたか否か判定するステップと、マイクロ波フィードラインの第1部分集合に対する補助測定シーケンスに対して全ての測定値が収集されたと判定したことに応答して、この方法は更に、第1部分集合に対する補助測定シーケンスにおける全ての測定の間に測定されたマイクロ波磁場によって励起された原子遷移の強度を処理することによって、マイクロ波フィードラインの第1部分集合間における相対パワーおよび相対位相を抽出するステップと、マイクロ波磁場の位相および振幅の均一性を改善するために、マイクロ波フィードラインの第1部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上に対して調節が必要か否か判断するステップとを含む。
【0084】
[0092] 例20は、例19の方法を含み、更に、調節が必要であると判断された場合、マイクロ波フィードラインの第1部分集合におけるマイクロ波フィードラインの内1本以上を調節するステップを含む。
【0085】
[0093] 本明細書では、具体的な実施形態について例示し説明したが、同じ目的を達成すると考えられる任意の構成と、以上で示した具体的な実施形態を置換してもよいことは、当業者には認められよう。したがって、本発明は、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを意図しているのは明白である。