(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752155
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】心臓ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 1/10 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
A61M1/10 115
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-572278(P2016-572278)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公表番号】特表2017-517333(P2017-517333A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】GB2015051677
(87)【国際公開番号】WO2015189590
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年5月23日
(31)【優先権主張番号】1410272.7
(32)【優先日】2014年6月10日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515339170
【氏名又は名称】カロン カーディオ−テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】フォスター,グラハム
【審査官】
細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−123239(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0163019(US,A1)
【文献】
特表2009−523488(JP,A)
【文献】
特表2007−506027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓ポンプであって、
該心臓ポンプの入口に面するように配置される、第1滑り軸受部と第2滑り軸受部とから成る滑り軸受組立体を1つのみ備え、
前記第1滑り軸受部は、心臓ポンプロータに連結され、
前記第2滑り軸受部は、心臓ポンプハウジングに連結され、
前記滑り軸受組立体は、前記心臓ポンプハウジング内において前記心臓ポンプロータを少なくとも該心臓ポンプロータの軸方向に回転自在に支持するように構成されており、
第1磁気軸受部と第2磁気軸受部とから成る磁気軸受組立体を備え、
前記第1磁気軸受部は、前記心臓ポンプロータに連結され、
前記第2磁気軸受部は、前記心臓ポンプハウジングに連結され、
前記磁気軸受組立体は、前記心臓ポンプハウジング内において前記心臓ポンプロータを該心臓ポンプロータの径方向に回転自在に支持し、且つ前記磁気軸受組立体が前記滑り軸受組立体に前負荷力(preload force)を付与して前記第1及び第2滑り軸受部の回転接触状態を保ち、前記心臓ポンプロータを軸方向に偏倚(bias)させるように構成されたことを特徴とする心臓ポンプ。
【請求項2】
前記心臓ポンプハウジングおよび前記心臓ポンプロータが組立てられた構成において、前記第1磁気軸受部及び/または前記第2磁気軸受部の位置が前記心臓ポンプロータ及び/または前記心臓ポンプハウジングに対して調節可能であり、前記第1磁気軸受部及び/または前記第2磁気軸受部の位置に応じて前記前負荷力の大きさが決定されることを特徴とする請求項1記載の心臓ポンプ。
【請求項3】
前記心臓ポンプが作動可能な構成において、前記第2磁気軸受部の位置が前記心臓ポンプロータ及び/または前記心臓ポンプハウジングに対して調節可能であり、前記第2磁気軸受部の位置に応じて前記前負荷力の大きさが決定されることを特徴とする請求項2記載の心臓ポンプ。
【請求項4】
前記第1及び/または前記第2磁気軸受部がねじ方式により調節可能であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の心臓ポンプ。
【請求項5】
前記第1及び/または前記第2磁気軸受部の位置が軸方向及び/または径方向に調節可能であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の心臓ポンプ。
【請求項6】
前記第1及び/または前記第2滑り軸受部の位置が前記心臓ポンプロータ及び/または前記心臓ポンプハウジングに対して調節可能であり、前記心臓ポンプハウジングおよび前記心臓ポンプロータが組立てられた構成において、前記第1及び/または前記第2滑り軸受部の位置に応じて前記前負荷力の大きさが決定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の心臓ポンプ。
【請求項7】
前記第1及び/または前記第2磁気軸受部の位置を調節する構成である、磁気軸受組立体調節装置を更に備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の心臓ポンプ。
【請求項8】
前記心臓ポンプが別の(further)磁気軸受組立体を備えており、該磁気軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体とが少なくとも軸方向に互いに離間していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の心臓ポンプ。
【請求項9】
前記別の磁気軸受組立体は、前記心臓ポンプハウジング内で少なくとも前記心臓ポンプロータを前記軸方向及び/または径方向に支持するように構成されていることを特徴とする請求項8記載の心臓ポンプ。
【請求項10】
前記別の磁気軸受組立体は、前記心臓ポンプロータを軸方向及び/または径方向に偏倚させる構成であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の心臓ポンプ。
【請求項11】
前記心臓ポンプロータが磁力駆動型カップリングの第1の部分を有し、前記心臓ポンプハウジングが磁力駆動型カップリングの第2の部分を有し、前記磁力駆動型カップリングの第1の部分と第2の部分とが,前記磁気軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体との間に少なくとも部分的に配設されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項記載の心臓ポンプ。
【請求項12】
前記心臓ポンプロータがインペラ部を備え、該インペラ部は、前記磁気軸受部と前記別の磁気軸受組立体との間に少なくとも部分的に配設されていることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項記載の心臓ポンプ。
【請求項13】
前記滑り軸受組立体が、前記心臓ポンプロータを径方向に支持するように構成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の心臓ポンプ。
【請求項14】
前記心臓ポンプは、別の滑り軸受組立体を備え、前記滑り軸受組立体および前記別の滑り軸受組立体は少なくとも軸方向に離間していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項記載の心臓ポンプ。
【請求項15】
前記別の滑り軸受組立体は、心臓ポンプハウジング内での前負荷力の方向に反対の方向の動きの範囲を制限するように構成されていることを特徴とする請求項14記載の心臓ポンプ。
【請求項16】
前記滑り軸受組立体の前記第1及び第2滑り軸受部は、作動中は回転摺動し、前記別の滑り軸受組立体の第1及び第2滑り軸受部が互いの間に作動間隙を有することを特徴とする請求項14または請求項15記載の心臓ポンプ。
【請求項17】
前記心臓ポンプは、心臓ポンプ入口と心臓ポンプ出口とを流体的に連結する一次流路と、1以上の二次流路とを更に備え、該二次流路は前記一次流路の2またはそれ以上の区域を連結するように構成されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項記載の心臓ポンプ。
【請求項18】
前記滑り軸受組立体は、少なくとも部分的に前記一次流路内に配設されていることを特徴とする請求項17記載の心臓ポンプ。
【請求項19】
前記別の滑り軸受組立体は、少なくとも部分的に前記二次流路内に配設されていることを特徴とする請求項14に従属する場合の、請求項17または請求項18記載の心臓ポンプ。
【請求項20】
前記心臓ポンプは、作動中、前記別の第1及び第2滑り軸受部間の作動空隙が少なくとも部分的に前記二次流路内に配設されることを特徴とする請求項16に従属する場合の、請求項19記載の心臓ポンプ。
【請求項21】
心臓ポンプの滑り軸受組立体に前負荷力を付与する方法であって、
前記心臓ポンプは、
該心臓ポンプの入口に面するように配置される、第1滑り軸受部と第2滑り軸受部とから成る滑り軸受組立体を1つのみ備え、
前記第1滑り軸受部は、心臓ポンプロータに連結され、
前記第2滑り軸受部は、心臓ポンプハウジングに連結され、
前記滑り軸受組立体は、前記心臓ポンプハウジング内において前記心臓ポンプロータを少なくともその軸方向に回転自在に支持するように構成されており、
第1磁気軸受部と第2磁気軸受部とから成る磁気軸受組立体を備え、
前記第1磁気軸受部は、前記心臓ポンプロータに連結され、
前記第2磁気軸受部は、前記心臓ポンプハウジングに連結され、
前記磁気軸受組立体は、前記心臓ポンプハウジング内において前記心臓ポンプロータを径方向に回転自在に支持し、前記心臓ポンプハウジングと前記心臓ポンプロータとが組み付けられた構成において、前記磁気軸受組立体が前記滑り軸受組立体に前負荷力(preload force)を付与して前記第1及び第2滑り軸受部の回転接触状態を保ち、前記心臓ポンプロータを軸方向に偏倚(bias)させるように構成したものにおいて、
前記滑り軸受組立体に対して前負荷力を付与することを特徴とする方法。
【請求項22】
前記第1及び/または前記第2磁気軸受部の位置に応じて前記前負荷力の大きさが決定される、請求項21記載の方法であって、
前記第1及び/または前記第2磁気軸受部の位置を前記心臓ポンプロータ及び/または前記心臓ポンプハウジングに対して調節することを特徴とする請求項21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、滑り軸受(plain bearing)組立体と磁気軸受組立体とを備えた心臓ポンプに関し、限定されることはないものの、特に、心臓ポンプロータを支持する構成を有する滑り軸受組立体と、心臓ポンプロータを支持し且つ前記滑り軸受組立体に前負荷力(preload force)を付与する磁気軸受組立体とを含む心臓ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
病状の進んだ心機能不全は、何千人もの人を毎年死亡させ、この疾患に罹患した人は粗末な生活の質に我慢する世界的に大きな健康問題である。進行した心機能不全の治療方法、例えば薬物療法や心臓再同期(ペースメーカ)は、概して成功せず、患者に残された選択肢は心臓移植である。残念ながら、利用可能なドナー心臓の数は、需要のごく一部を満たすのみであって、多くの人が手術を受けられないままである。
【0003】
補助人工心臓(VAD)が、過去十年間心臓移植に代わる治療法として受け容れられてきた。VADの利用は、殆どの場合、一旦移植すると、病気の進行が止まり、心機能不全の兆候が軽減され、患者は良好な生活の質を取り戻す。
【0004】
VADは、心機能不全治療対する実行可能な代替手段とみなされて、ドナー心臓が利用できないでいる何千人もの心機能不全患者に希望を与えている。
【0005】
一般的に、ヒトの心臓の心室への移植に適したVAD等の心臓ポンプを提供することは知られている。これら最も一般的なタイプの移植可能なポンプは、小型であることと機械的に簡単で信頼性が高いという理由から、小型ロータリーポンプである。これら公知の装置は、二つの主要部品を有する。その部品とは、即ち、心臓ポンプ入口と心臓ポンプ出口とを規定する心臓ポンプハウジングと、該心臓ポンプハウジング内に収納され流体に対してエネルギーを付与する構成の心臓ポンプロータである。
【0006】
従って、心臓ポンプに必要なものは、心臓ポンプハウジング内で回転可能に心臓ポンプロータを支持する軸受システムである。心臓ポンプ用の軸受システムおよび一般的なポンプやモータ等回転機械は全て、あらゆる自由度の中で十分な拘束を提供しながら、ロータの回転を許容するという基本的な機能を果たす。すなわち、軸受システムは、軸方向、径方向、ピッチ/ヨー方向に、ロータの回転を支持しなければならない。
【0007】
軸受システムの望ましい機能には、低い摩耗率と低い騒音並びに低い振動が含まれ、血液ポンプの場合には、血栓、ずれ応力または血液中の熱を排除する特徴が含まれる。
【0008】
公知の装置では、心臓ポンプロータは、数多くの異なるタイプの軸受システムの一つを使ってハウジング内で回転可能に支持される。一般的に、心臓ポンプに利用される軸受システムは3種類ある。
【0009】
心臓ポンプの中には血液浸漬接触軸受、例えば、ロータをハウジング内に強固に支持するために、一対の滑り軸受を使用したものもある。しかしながら、このような滑り軸受の場合、接触軸受内に完全に閉じ込められているかを確認することが困難である。更に、従来技術の血液浸漬接触軸受は、軸受や接触軸受周辺の支持構造に対するたんぱく質やその他生物学的な堆積の影響を受けやすい。
【0010】
その他の心臓ポンプは、ロータが薄い血液の膜で支持される非接触型の流体力学的軸受けシステムを使用している。要求される程度の流体力学的浮揚を行うために、流体力学的軸受システムは、小さな走行間隙が要求される。その結果、これら小さな走行間隙を通過する血液は、高いレベルのずれ応力を受ける。このずれ応力は、血液の血球成分に対して、例えば、更に血栓症の原因へと連なる溶血や血小板活性化等の悪影響がある。
【0011】
心臓ポンプは、非接触磁気軸受システムを採用することもできる。この非接触磁気軸受システムでは、ロータとハウジング間の走行間隙は、軸受に大きな間隙が存在することにより、軸受におけるずれに関連する、血液に対する損傷が減少可能なように設計することができる。しかしながら、アーンショーの定理(Earnshaw‘s theorem)に基づく制限により、受動的磁気軸受は、少なくとも1自由度における他の支持法、例えば、能動的磁気制御が必要である。この能動的磁気制御は、設計及び/または流体力学的支持の寸法や複雑さを増大し、このことは製作公差に関する要求または血液の損傷を増大する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の開示の一形態によれば、以下の心臓ポンプが提供される。その心臓ポンプとは、第1滑り軸受部と第2滑り軸受部とから成る滑り軸受組立体を備える。前記第1滑り軸受部は、心臓ポンプロータに連結され、前記第2滑り軸受部は、心臓ポンプハウジングに連結されている。前記滑り軸受組立体は、前記心臓ポンプハウジング内において前記心臓ポンプロータを少なくとも該心臓ポンプロータの軸方向に、例えば回転自在に支持するように構成されている。前記心臓ポンプは、第1磁気軸受部と第2磁気軸受部とから成る磁気軸受組立体を備える。前記第1磁気軸受部は、前記心臓ポンプロータに、例えば、移動自在に連結され、前記第2磁気軸受部は、前記心臓ポンプハウジングに、例えば、移動自在に連結されている。前記磁気軸受組立体は、前記心臓ポンプハウジング内において前記心臓ポンプロータを該心臓ポンプロータの径方向に回転自在に支持する。
【0013】
前記滑り軸受組立体と前記磁気軸受組立体とが協働して、ロータを軸方向と径方向と、ピッチ/ヨー方向に、ロータの回転を許容しながら、回転機械用の軸受システムの基本的な要件を達成する軸受システムを造り出す。
【0014】
前記心臓ポンプロータを軸方向に偏倚(bias)させるように前記磁気軸受組立体を構成する。該磁気軸受組立体は、前記滑り軸受組立体に前負荷力を付与するような構成になっている。前記滑り軸受組立体は、前記心臓ポンプロータを径方向に支持するように構成する。前記滑り軸受組立体が前記ロータを軸方向に支持し、前記心臓ポンプロータの径方向への自由な移動を許容するように構成する。
【0015】
前記心臓ポンプが組立てられた構成において、前記第1磁気軸受部が心臓ポンプロータに対して移動可能に、例えば滑動及び/または回転可能に連結される。前記心臓ポンプが組立てられた構成において、前記第2磁気軸受部が前記心臓ポンプハウジングに対して移動可能に、例えば滑動及び/または回転可能に連結される。本開示内容の文脈において、「組立てられた構成」という用語は、心臓ポンプに適用した場合、心臓ポンプロータが少なくとも心臓ポンプハウジングの少なくとも一部に組み込まれた構成であると解釈することができる。それに加えて、あるいはそれに替えて、前記第2磁気軸受部は、心臓ポンプが作動可能な構成である時に、心臓ポンプハウジングに対して移動可能に連結される。本開示内容の文脈において、「作動可能な構成」という用語は、心臓ポンプに適用した場合、心臓ポンプが十分に組立てられ、いつでもスイッチを入れられる状態、即ち、流体を吐出するかあるいは作動する状態を指す。
【0016】
前記第1磁気軸受部及び/または前記第2磁気軸受部の位置が前記心臓ポンプロータ及び/または前記心臓ポンプハウジングに対して調節可能である。例えば、前記心臓ポンプが組立てられた構成において、前記第1磁気軸受部及び/または前記第2磁気軸受部の位置が調整可能である。前記心臓ポンプハウジングと前記心臓ポンプロータとが組立てられた構成において、前記前負荷力の大きさは、前記第1磁気軸受部及び/または前記第2磁気軸受部の位置によって決定可能である。前記心臓ポンプが組立てられた構成において、前記第1及び/または第2磁気軸受部の位置に応じて前記前負荷力の大きさが所定のレベルに調節可能である。前記心臓ポンプが作動可能な構成において、前記第2磁気軸受部の位置が例えば所定の位置に調節可能である。このように、前記前負荷力の大きさは、前記心臓ポンプが作動中に所定のレベルに調節可能である。
【0017】
前記心臓ポンプは、例えば孔、開口、凹部または突起であって前記第1磁気軸受部を受け入れるような構成である磁気軸受係合部を備えることもできる。心臓ポンプロータの前記磁気軸受係合部は、前記第1磁気軸受部がある範囲内で調節可能である。位置の範囲は、心臓ポンプロータの前記第1磁気軸受部が移動可能な程度(範囲内、範囲外、概略の位置)によって規定する。例えば、前記第1磁気軸受部が前記範囲の一端方向に移動する場合、前記前負荷力の大きさを減少し、前記第1磁気軸受部が前記範囲の他端方向に移動する場合、前記前負荷力の大きさを増加する。
【0018】
前記心臓ポンプハウジングは、例えば、孔、開口、凹部、突起であって、前記第2係合部を受けるような構成になされた磁気軸受係合部を有する。前記心臓ポンプの磁気軸受係合部は、前記第2磁気軸受部がある範囲内で調節可能である。位置の範囲は、前記第1磁気軸受部が移動可能な程度(範囲内、範囲外、概略の位置)によって規定する。例えば、前記第2磁気軸受部が前記範囲の一端方向に移動する場合、前記前負荷力の大きさを減少し、前記第2磁気軸受部が前記範囲の他端方向に移動する場合、前記前負荷力の大きさを増加する。
【0019】
前記第1及び/または前記第2磁気軸受部はねじ方式により調節可能である。前記第1及び/または前記第2磁気軸受部の位置が前記心臓ポンプロータの軸方向及び/または径方向に調節可能である。
【0020】
前記第1及び/または前記第2滑り軸受部の位置が前記心臓ポンプロータ及び/または前記心臓ポンプハウジングに対して調節可能であり、前記心臓ポンプハウジングおよび前記心臓ポンプロータが組立てられた構成において、前記第1及び/または前記第2滑り軸受部の位置に応じて前記前負荷力の大きさが決定される。前記第1及び/または前記第2磁気軸受部の軸方向及び/または径方向の位置を調節する構成である、磁気軸受組立体の調節装置を更に有する。
【0021】
前記心臓ポンプは、前記第1及び/または前記第2磁気軸受部の位置を調節する構成を有する磁気軸受組立体調整装置を備えることもできる。この磁気軸受組立体調整装置は、第1磁気軸受部を、例えば摺動可能及び/または回転可能に心臓ポンプロータに連結する構成を有する。磁気軸受組立体調整装置は、第2磁気軸受部を、例えば摺動可能に及び/または回転可能に心臓ポンプハウジングに連結する構成を備えることもできる。
【0022】
前記心臓ポンプは別の(further)磁気軸受組立体を備えている。該別の磁気軸受組立体は、前記第1の別の磁気軸受部と前記第2の別の磁気軸受部とを有す。前記磁気軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体は、少なくとも軸方向に互いに離間している。前記磁気軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体は、少なくとも径方向に互いに離間している。前記磁気軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体が、少なくとも軸方向及び/または径方向に離間している。前記別の磁気軸受組立体は、心臓ポンプロータをポンプハウジング内で軸方向に及び/または径方向に少なくとも部分的に支持する構成になっている。前記磁気軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体は互いに軸方向に離間しており、磁気軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体がピッチ及び/またはヨー方向に心臓ポンプロータを支持する。
【0023】
前記心臓ポンプは、磁力駆動型カップリングを有する。前記心臓ポンプロータは、前記磁力駆動型カップリングの第1の部分を有する。心臓ポンプハウジングは、前記磁力駆動型カップリングの第2の部分を有する。前記磁力駆動型カップリングの第1及び第2の部分が、前記磁気軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体との間、例えば、軸方向及び/または径方向の間に配設されている。
【0024】
前記心臓ポンプロータがインペラ(羽根車)部を有する。該インペラ部は、前記磁気軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体との間、例えば、軸方向及び/または径方向の間に、少なくとも部分的に配設する。
【0025】
前記心臓ポンプは、別の滑り軸受組立体を備えている。前記別の滑り軸受組立体は別の第1滑り軸受部と別の第2滑り軸受部とを有する。前記滑り軸受組立体と前記別の磁気軸受組立体とは、少なくとも軸方向に離間されている。前記滑り軸受組立体と前記別の滑り軸受組立体とは、径方向に離間されている。前記別の磁気軸受組立体は、前記心臓ポンプロータの心臓ポンプハウジング内での前負荷力の反対方向への移動範囲を制限する構成にすることができる。
【0026】
前記滑り軸受組立体の前記第1及び第2滑り軸受部は、作動中に回転摺動する構成にすることができる。前記別の滑り軸受組立体の第1及び第2滑り軸受部の両者が作動中に滑り回転する構成にすることができる。前記滑り軸受組立体の前記第1及び第2滑り軸受部は、両者の間に作動間隙を有する構成にすることができる。
【0027】
前記心臓ポンプは、心臓ポンプ入口と心臓ポンプ出口とを流体的に連結する一次流路を有する。前記心臓ポンプは、前記一次流路の2以上の区域を少なくとも部分的に連結するようにした1以上の二次流路を更に備える構成にすることができる。
【0028】
前記滑り軸受組立体は、前記一次流路内に少なくとも部分的に配設される構成にすることができる。前記別の滑り軸受組立体は、前記一次流路内に少なくとも部分的に配設される。前記滑り軸受組立体は、前記二次流路内に少なくとも部分的に配設される。前記別の滑り軸受組立体は、前記二次流路内に少なくとも部分的に配設される。前記滑り軸受組立体の前記第1及び第2滑り軸受部間の作動間隙は、前記一次流路内に少なくとも部分的に配設される。前記別の滑り軸受組立体は、前記一次流路内に少なくとも部分的に配設される。前記別の滑り軸受組立体の前記第1及び第2滑り軸受部間の作動間隙は、前記一次流路内に少なくとも部分的に配設される。前記別の滑り軸受組立体の前記第1及び第2滑り軸受部間の作動間隙は、前記二次流路内に少なくとも部分的に配設される。
【0029】
本開示の第二の側面によれば、心臓ポンプの滑り軸受組立体に前負荷力を付与する方法が提供される。心臓ポンプは、滑り軸受組立体と磁気軸受組立体とを有する。前記滑り軸受組立体は、第1滑り軸受部と第2滑り軸受部とから成る。前記第1滑り軸受部は、心臓ポンプロータに連結されている。前記第2滑り軸受部は、心臓ポンプハウジングに連結されている。前記滑り軸受組立体は、前記心臓ポンプハウジング内において前記心臓ポンプロータを少なくとも該心臓ポンプロータの軸方向に、例えば、回転自在に支持するように構成されている。前記磁気軸受組立体は、第1磁気軸受部と第2磁気軸受部とから成る。前記第1磁気軸受部は、前記心臓ポンプロータに例えば移動可能に連結されており、前記第2磁気軸受部は、前記心臓ポンプハウジングに例えば移動可能に連結されている。前記磁気軸受組立体は、前記心臓ポンプハウジングおよび前記心臓ポンプロータが組立てられた構成において、前記滑り軸受組立体に前負荷力(preload force)を付与する構成にされている。本方法は、前記磁気軸受組立体から提供される磁気力によって、前記滑り軸受組立体に前負荷力を付与することを含む。
【0030】
前記前負荷力の大きさは、前記心臓ポンプハウジングおよび前記心臓ポンプロータが組立てられた構成における、前記心臓ポンプロータ及び/または前記心臓ポンプハウジングに対する前記第1及び/または前記第2磁気軸受部の位置によって決まる。本方法は、前記心臓ポンプハウジングおよび前記心臓ポンプロータが組立てられた構成において、前記第1及び/または前記第2磁気軸受部の位置を前記心臓ポンプロータ及び/または前記心臓ポンプハウジングに対して調節することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本開示内容をより良く理解するために、また、本発明をどのように実施するのかをより明瞭に示すために、例示的に、添付の図面を参照する。
【
図1】心臓ポンプが左心室に移植された心臓の一部切取図である。
【
図2a】本開示内容に基づく1実施例の心臓ポンプを組立てた構成の等角図である。
【
図2b】本開示内容に基づく1実施例の心臓ポンプを組立てた構成の断面図である。
【
図3】本開示内容に基づく別の実施例の心臓ポンプを組立てた構成の断面図である。
【
図4】本開示内容に基づく更に別の実施例の心臓ポンプを組立てた構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、心臓5の左心室3内に移植された形態の心臓疾患処置のための心臓ポンプ1、例えば補助人工心臓(VAD)を示している。心臓ポンプ1は、血液入口9と血液出口11とを有する心臓ポンプハウジング7を備えている。心臓ポンプ1は、少なくとも部分的に心臓ポンプハウジング7内に配置された心臓ポンプロータを備えている。心臓ポンプロータは、以下に説明するように、例えば回転可能に、1以上の軸受組立体によって支持されている。
【0033】
心臓ポンプ1は、少なくとも左心室3内に部分的に位置する流入カニューレ14と、心臓5の外部に位置するポンプ室15と、を備えている。流入カニューレ14は、ポンプ室15から左心室3の壁を通り、左心室3の室内へと延びている。従って、入口9は、完全に左心室3内に位置している。ポンプ室15は、左心室3の頂部に位置していて、出口11は流出カニューレ17に接続されている。
図1の例では、流出カニューレ17が、下行大動脈19に吻合されているが、別の例では、流出カニューレ17は、上行大動脈21に吻合してもよい。
【0034】
本開示内容は、血液の細胞成分を損傷する危険性を低減し、心臓ポンプ1の製作と組立てを簡素化する心臓ポンプ1に関する。例えば、本願の開示に基づく心臓ポンプ1は、該心臓ポンプ1内でのタンパク質の堆積及び/または血栓の形成のリスクを低減し、特に、軸受組立体の近接領域における血栓形成のリスクを低減する。以下に記載する例では、心臓ポンプ1は、滑り軸受組立体と磁気軸受組立体とを有する。しかしながら、心臓ポンプ1は、1以上の滑り軸受組立体と1以上の磁気軸受組立体とを備えていてもよい。
【0035】
滑り軸受組立体は、心臓ポンプ1の作動中に滑り軸受組立体の軸受面同士が接触するように構成されているタイプの接触型軸受(contact bearing)組立体である。例えば、滑り軸受組立体は、中間の転がり要素を有しておらず、すなわち、滑り軸受組立体のそれぞれの部分の2以上の接触面の間で運動が直接的に伝達される。
【0036】
磁気軸受組立体は、軸受組立体の各部の磁界同士の相互作用によって心臓ポンプロータが支持される、非接触型の軸受である。例えば、磁気軸受組立体は、該磁気軸受組立体各部の吸引力及び/または反発力によって心臓ポンプロータを心臓ポンプハウジング内で支持するように構成された永久磁石の組み合わせから成る。しかしながら、代替例では、磁気軸受組立体は、心臓ポンプロータを支持するように構成された永久磁石及び/または電磁石との組合せでもよい。
【0037】
図2aは、心臓ポンプ101の一例を示し、
図2bは、長手方向軸線A−Aに沿った心臓ポンプ断面図を示す。心臓ポンプ101は、一次流路115を有し、この一次流路は、心臓ポンプ101の入口109と出口111との間の血液の流れであると規定される。心臓ポンプ101は、更に二次流路117を有し、この二次流路は、一次流路115の一部を形成しない心臓ポンプ1内の再循環流路と規定される。二次流路117は、少なくとも部分的に一次流路115の2以上の領域を流体接続するように構成されている。
【0038】
心臓ポンプ101は、心臓ポンプハウジング107と心臓ポンプロータ108とを有する。心臓ポンプロータ108は、血液を吐出するように構成されたインペラ部113に回転可能に連結され、このインペラ部は心臓ポンプロータ108の一端、あるいは一端方向に設けられる。
図2bに示す例では、心臓ポンプロータ108は、例えば実質的に5自由度で拘束され、心臓ポンプロータ108が長手方向軸線A−Aを中心に回転可能なように、心臓ポンプロータ108は、滑り軸受組立体126、磁気軸受組立体136、及び別の(further)磁気軸受組立体156によって支持されている。心臓ポンプ101の軸受システムは、心臓ポンプロータ108の回転を許容し、この回転は、軸受システムの基本的な機能であり、心臓ポンプロータ108に対してその他の自由度すべてにおいて十分な拘束を行う。このように、この軸受システムは、心臓ポンプロータ108の軸方向、径方向、並びにピッチ/ヨー方向の回転を支援する。
【0039】
図2bに示す例では、滑り軸受組立体126と前記別の磁気軸受組立体156が心臓ポンプ101の入口109方向に位置し、磁気軸受組立体136が心臓ポンプ101の出口端111方向に位置する。しかしながら、心臓ポンプ101の軸受組立体は、心臓ポンプ101の運転要件に基づいて、いずれも心臓ポンプ101の適切な部分に位置させることができる。
【0040】
滑り軸受組立体126は、第1滑り軸受部126aを有する。心臓ポンプ101の運転中、第1滑り軸受部126aが心臓ポンプロータ108と共に回転するように、第1滑り軸受部126aは、心臓ポンプロータ108に連結されている。
図2bに示す例では、第1滑り軸受部126aは、心臓ポンプロータ108と一体である。代替例では、第1滑り軸受部126aは、心臓ポンプロータ108に強固に固定された別部材でもよい。他の例では、第1滑り軸受部126aは、心臓ポンプロータ108に対して、移動可能に例えばねじ込み式に連結され、第1滑り軸受部126aの位置が心臓ポンプロータ108に対して調節可能にされる。第1滑り軸受部126aは、例えばセラミック等心臓ポンプロータ108とは異なる材質で製作することもできる。あるいは、第1滑り軸受部126aは、例えばチタン合金等心臓ポンプロータ108と類似の材質で製作することもできる。第1滑り軸受部126aは、表面コーティングを有するか、及び/または表面処理を施して、耐摩耗性を改善することもできる。
【0041】
滑り軸受組立体126は、第2滑り軸受部126bを有する。心臓ポンプ101の運転中、第2滑り軸受部126bが心臓ポンプロータ108と一緒に回転しないように、第2滑り軸受部126bは心臓ポンプハウジング107へ連結される。
図2bに示す例では、第2滑り軸受部126bは、心臓ポンプハウジング107と一体であるが、代替例では、滑り軸受組立体126は心臓ポンプハウジング107へ固着された別部材でもよい。その他の例では、第2滑り軸受部126bは、例えばねじ込式で心臓ポンプハウジング107に移動可能に取り付けられ、第2滑り軸受部126bの位置が心臓ポンプハウジング107に対して調節可能になるようにする。第2滑り軸受部126bは、セラミック等心臓ポンプハウジング107とは異なる材質で製作することができる。
【0042】
あるいは、第2滑り軸受部126bは、チタン合金等心臓ポンプハウジング107に類似した材質で製作することができる。第2滑り軸受部126bは、表面コーティングを有するか、及び/または表面処理を施して、滑り軸受組立体102の耐摩耗性を改善する。第1及び第2滑り軸受部126a、126bは、互いに異なる材質で製作することができる。例えば、第1及び第2滑り軸受部126a、126bは互いに異なるセラミック材料で製作する。
【0043】
第1及び第2滑り軸受部126a、126bは、心臓ポンプロータ108と心臓ポンプハウジング107とが組み立てられた構成の時、滑り軸受組立体126が心臓ポンプロータ108を心臓ポンプハウジング107内で回転可能に支持すべく互いに係合するように構成されている。
図2bに示す例では、第1及び第2滑り軸受部126a、126bは、それぞれ長手方向軸線A−Aに直交する実質的に平板状関節支持表面(planar articular bearing surface)を有する。このように、第1及び第2滑り軸受部126a、126bは、心臓ポンプロータ108を心臓ポンプハウジング107内で心臓ポンプロータ108の軸方向に支持する構成になっている。
【0044】
第1滑り軸受部126aは、円錐形の区分、すなわち、円錐形キャップまたは円錐台(truncated spherical cap or spherical frustum)を備えている。第2滑り軸受部126bは、実質的に平板状でよい。しかしながら、滑り軸受組立体126が心臓ポンプロータ108を少なくとも軸方向に支持できればよいということがわかる。例えば、第1及び/または第2滑り軸受部126a、126bは円錐台部を備えていてもよい。
【0045】
代替例では、第1及び第2滑り軸受部126a、126bは、滑り軸受組立体126が心臓ポンプハウジング107内で心臓ポンプロータ108を少なくともその径方向に支持するような形状に構成されている。従って、第1及び第2滑り軸受部126a、126bの軸支面は、適切な構成にする。一例では、滑り軸受組立体126は、心臓ポンプロータ108を軸方向及び径方向に支持する構成にする。例えば、第1及び第2滑り軸受部126a、126bを1以上の曲面を有する構成、例えば、回転接触するようにした部分的に球形、または円錐形の軸受面を有する構成にする。例えば、滑り軸受組立体126を、一般的に第1及び第2滑り軸受部126a、126bが実質的に共形(conformal)である、部分的な球面軸受で構成することもできる。滑り軸受組立体126が心臓ポンプロータ108を、第1及び第2滑り軸受部126a、126b間の点、線、あるいは面接触いずれの組合わせによってでも、最大5自由度で実質的に拘束されるような構成にできる。
【0046】
第1及び第2滑り軸受部126a、126b間の接触領域は、滑り軸受組立体126の熱の発生及び摩耗特性に関して最適化する。例えば、接触領域は、実質的に円形接触領域で、心臓ポンプ101の運転特性、及び第1及び/または第2滑り軸受部126a、126bの製作材質に基づいて選択可能な適切な直径の接触領域である。一つの例では、実質的に円形の接触領域は、10μm乃至3mmの範囲内である。あるいは、特に、300μm乃至1mmの範囲内である。しかしながら、接触領域の構成は、適切な構成及び/または寸法にすればよい。
【0047】
その他の例では、滑り軸受組立体126は、複数の接触領域を有しており、それら個々のものが所定のレベルの熱の発生及び摩耗特性を提供するように適正化すればよい。
【0048】
心臓ポンプ101は、磁気軸受組立体136を有する。該磁気軸受組立体136は、第1磁気軸受部136aと第2磁気軸受部136bとを有する。心臓ポンプ101の作動中、前記第1磁気軸受部136aが心臓ポンプロータ108と共に回転するように、前記第1磁気軸受部136aが前記心臓ポンプロータ108に連結されている。心臓ポンプ101の作動中、第2磁気軸受部136bが回転しないように、第2磁気軸受部136bは心臓ポンプハウジング107に連結されている。第1磁気軸受部136a及び/または第2磁気軸受部136bは、堅固に心臓ポンプロータ108と心臓ポンプハウジング107とにそれぞれ固定するものの、代替例では、第1磁気軸受部及び/または第2磁気軸受部136a、136bは、移動可能に、例えば、滑動及び/または回転可能なように心臓ポンプロータ108及び心臓ポンプハウジング107にそれぞれ連結可能である。第1磁気軸受部及び/または第2磁気軸受部136a、136bの例えば軸方向及び/または径方向の位置は、例えば、ねじ込み方式で心臓ポンプハウジング107及び心臓ポンプロータ108に対してそれぞれ調節可能にすることもできる。従って、心臓ポンプハウジング107及び心臓ポンプロータ108が組立て済の構成で、第1磁気軸受部136aと第2磁気軸受部136bの位置が互いに相手方に対して調節可能である。このように、第1及び第2磁気軸受部136a、136b間の間隔は、調節可能である。
【0049】
心臓ポンプ101は、別の磁気軸受組立体156を備えている。該別の磁気軸受組立体156は、第1磁気軸受部156aと第2磁気軸受部156bとを有する。心臓ポンプ101の作動中に第1磁気軸受部156aが心臓ポンプロータ108と一緒に回転するように、第1磁気軸受部156aは心臓ポンプロータ108に連結される。心臓ポンプ101の作動中に第2磁気軸受部156bが回転しないように、第2磁気軸受部156bは心臓ポンプハウジング107に連結される。第1磁気軸受部156a及び/または第2磁気軸受部156bは、堅固に心臓ポンプロータ108と心臓ポンプハウジング107とにそれぞれ固定する。但し、代替例では、第1磁気軸受部及び/または第2磁気軸受部156a、156bは、移動可能に、例えば、滑動及び/または回転可能なように心臓ポンプロータ108及び心臓ポンプハウジング107にそれぞれ連結することもできる。第1及び/または第2磁気軸受部156a、156bの例えば軸方向及び/または径方向の位置は、例えば、ねじ込み方式で心臓ポンプロータ108及び心臓ポンプハウジング107に対してそれぞれ調節可能にすることもできる。従って、心臓ポンプハウジング107及び心臓ポンプロータ108が組立てられた構成において、第1及び/または第2磁気軸受部156a、156bの位置が互いに相手方に対して調節可能である。このように、第1及び/または第2磁気軸受部156a、156b間の間隔が、例えば、軸方向の間隔が調節可能である。
【0050】
第1及び/または第2磁気軸受部136a、136b、156a、156bは、1以上の永久磁石を備えており、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との磁界間の相互作用が、心臓ポンプロータ108を心臓ポンプハウジング107内に支持するに十分なようになされている。例えば、磁気軸受組立体136及び/または別の磁気軸受組立体156が1以上の同軸型及び/または同心型リング磁石及び/または個別の(discrete)磁石、例えば、ディスク及び周囲に配設した円弧状のセグメントを有する。
図2bに示す例では、第1の磁気軸受部136a、156aは、各第2磁気軸受部136b、156bに対してそれぞれ径方向内方に位置する。しかしながら、他の例では、第1の磁気軸受部136a、156aが、第2磁気軸受部136b、156bに対してそれぞれ径方向外方に位置してもよい。
【0051】
磁気軸受組立体136の第1及び第2磁気軸受部136a、136bと別の磁気軸受組立体156の第1及び第2磁気軸受部156a、156bとの間の引き付け力と反発力は、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156の各部間の間隔によって変化する。
図2bの例では、磁気軸受組立体136の第1磁気軸受部136aと第2磁気軸受部136bが、別の磁気軸受組立体156の第1磁気軸受部156aと第2磁気軸受部156bよりも径方向外方に存在する。磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156の磁力、例えば、磁束密度は、各磁気軸受部136a、136b、156a、156bの径方向の位置によって決まる。従って、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156は、心臓ポンプ101の構成に基づいて適切な径方向の位置に配設すればよい。例えば、磁気軸受組立体136は、第一の作動可能半径で、別の磁気軸受組立体156は、第二の作動可能半径に設ければよい。第一及び第二の作動可能半径は、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156それぞれの作動要件に基づいて選択する。
【0052】
図2bの例では、磁気軸受組立体136の第1磁気軸受部136aと別の磁気軸受組立体156の第1と第2磁気軸受部156a、156bは、その位置が強固に固定されていて、例えば、調節不可能である。しかしながら、磁気軸受組立体136の第2磁気軸受部136bは、心臓ポンプロータ108と心臓ポンプハウジングとが取り付けられた構成において、第1磁気軸受部136aに対して軸方向へ移動可能である。
【0053】
磁気軸受組立体136は、心臓ポンプハウジング107内で心臓ポンプロータ108を回転可能にその径方向に支持する構成になっている。また、磁気軸受組立体136は、第1及び/または第2磁気軸受部136a、136b間での軸方向オフセット(offset)により、心臓ポンプロータ108を心臓ポンプハウジング107内で軸方向に偏倚(bias)させる構成になっている。
図2bの例では、第2磁気軸受部136bが軸方向に、例えばわずかな間隔だけ第1磁気軸受部136aから離間する軸方向へオフセットされる。従って、磁気軸受組立体136は、磁気軸受組立体136各部間の軸方向オフセットによって与えられる磁力により、滑り軸受組立体126に軸方向の前負荷力を付与する構成になっている。
【0054】
前記別の磁気軸受組立体156は、心臓ポンプハウジング107内で心臓ポンプロータ108の回転を軸方向で軸支するようになされている。すなわち、この別の磁気軸受組立体が滑り軸受組立体126に対して余分な前負荷力を付与しないように、第1及び/または別の第2磁気軸受部156a、156bが実質的に軸方向に芯合わせされている。しかしながら、この別の磁気軸受組立体156が軸方向及び/または径方向の前負荷力を付与される構成にしてもよい。
【0055】
図2bの例では、第2磁気軸受部136bの位置は、心臓ポンプハウジング107に対して、第2磁気軸受部136bと心臓ポンプハウジング107とをねじによる係合を行うことにより、軸方向に調節可能である。このように、第2磁気軸受部136bの軸方向の位置は、調節可能な状態で第1磁気軸受部136aに対してオフセットされる。第2磁気軸受部136bが滑り軸受組立体126に対して付与する前負荷力の大きさは、心臓ポンプハウジング107と心臓ポンプロータ108とが組み合わされた構成において、第2磁気軸受部136bの軸方向の位置を調節することによって、所望のレベルに設定する。
【0056】
心臓ポンプ101は、磁気軸受組立体136の第1及び/または第2磁気軸受部136a、136b及び/または別の磁気軸受組立体156の第1及び/または第2磁気軸受部156a、156bの位置を調整するように構成された磁気軸受調節装置(magnet bearing assembly adjuster)176を有する。
図2bの例では、磁気軸受調節装置176は、磁気軸受組立体136の第2磁気軸受部136bの軸方向の位置を調節する構成のねじ方式調節装置を含む。心臓ポンプハウジング107は、内側と外側の径方向の面を有する孔を備えている。この孔の内側または外側の面は、ねじ切りが成されている。磁気軸受調節装置176は、磁気軸受組立体136の第2磁気軸受部136bを収納するように成された磁石キャリア(magnet carrier)178を有する。磁石キャリア178は、心臓ポンプハウジング107の対応するねじ切り孔の面に係合するためにねじ切りされた径方向の面を有する。第2磁気軸受部136bが、例えば、ねじ方式により軸方向に移動可能なようにすれば、磁石キャリア178は、ねじ切り孔内にねじ込むかあるいはねじ方式により同孔から取り出すことによって、磁石キャリアを軸方向に位置決めするように、第2磁気軸受部136bが軸方向に例えばねじ方式により移動可能なように心臓ポンプハウジング107に取付けられる。更に、及び/またはその代わりに、磁気軸受調節装置176は、1以上の滑り式及び/または回転式のカップリング、例えば、カム機構であって、第1及び/または第2磁気軸受部136a、136b、156a、156bの軸方向及び/または径方向の位置を調節するように成された機構を備えることもできる。
【0057】
磁石キャリア178は、調節器具に係合する1以上の部分を有する。例えば、磁石キャリア178は、調節機構に係合する1以上の凹部及び/または凸部180を有する。一例では、磁石キャリア178の回転位置及び/または軸方向の位置は、磁性カップリングによって調節する。このような例では、磁気軸受調節装置176上にカバー182を載置しても磁石キャリア178の調節はできる。
【0058】
心臓ポンプ101は、例えば、磁気軸受調節装置176の位置を示すために、目盛付の表示を有する。この表示は、心臓ポンプハウジング107に対する磁石キャリアの位置、すなわち、第1磁気軸受部136aに対する第2磁気軸受部136bの位置を示す。目盛付の表示は、前負荷力の値を示すために較正を行う。
【0059】
磁気軸受調節装置176は、例えば、心臓ポンプハウジング107の孔内の固定磁石キャリア位置を固定する第2の(seconded)ねじ付部材から成る固定機構を有する。更に、及び/またはその代わりに、磁気軸受調節装置176は、心臓ポンプハウジング107へ磁石キャリアを粘着及び/または溶接によってその位置を固定する。
【0060】
磁気軸受組立体136の磁界構造次第で、第2磁気軸受部136bが第1磁気軸受部136aから軸方向及び/または径方向にオフセットするように、第2磁気軸受部136bの位置は調節可能である。
図2bの例では、第2磁気軸受部136bよりも第1磁気軸受部136aの方が心臓ポンプロータ108のインペラ部113に近くなるように、第2磁気軸受部136bを第1磁気軸受部136aから軸方向にオフセットさせている。このように、磁気軸受組立体136は、心臓ポンプロータ108を滑り軸受組立体126方向にオフセットさせる構成にする。
図2bの例では、第2磁気軸受部136bの軸方向の位置は調節し、第2磁気軸受部136bが滑り軸受組立体126から離間する方向に第1磁気軸受部136aから軸方向にオフセットさせる。その結果、磁気軸受組立体136は、滑り軸受組立体126に対して前負荷力を働かせる。代替例では、第2磁気軸受部136bが第1磁気軸受部136aから滑り軸受組立体126に向かう方向に軸方向のオフセットをするように、第2磁気軸受部136bの軸方向位置を調節する。しかしながら、他の例では、第1磁気軸受部136aが第2磁気軸受部136bよりもインペラ部113から離間する方向に、第2磁気軸受部136bが第1磁気軸受部136aから軸方向にオフセットする。
【0061】
心臓ポンプ101が通常の作動状況にある場合、第1及び第2滑り軸受部126a、126bが接触回転可能な状態になるように前負荷力の大きさを設定する。通常の作動状況で、心臓ポンプロータ108に作用する液圧力は、左心室の心拡張期と心収縮期とでは異なり、心臓ポンプ101の所望の作動圧力−流れ特性の結果によって、異なる。また、心臓ポンプ101の作動速度は、心臓血管系(systemic cardio vascular system)内であるレベルの疑似拍動(pseudo−pulsitility)を発生させるために、周期的に増減され、これが心臓ポンプロータ108に作用する液圧負荷を変化させる。従って、このような液圧負荷の変化が第1及び第2滑り軸受部126a、126b間の作動間隙を生じないように前負荷力の大きさを設定し、心臓ポンプ101の通常作動状態では、第1及び第2滑り軸受部126a、126bが回転接触状態を確実に保つようにすることが望ましい。前負荷力の大きさは、通常の作動状態で経験する液圧負荷範囲の極値においても第1及び第2滑り軸受部126a、126bが回転接触状態を保つように設定すればよい。
【0062】
しかしながら、心臓ポンプ101は、例えば、患者がつまずいて転倒する等、衝撃負荷を経験することもある。衝撃負荷状態では、心臓ポンプロータ108は、少なくとも前負荷力の方向とは逆の方向の成分で作用する衝撃負荷力を受ける。この衝撃負荷力は、一般的に、通常の作動中に心臓ポンプロータ108が経験する液圧力よりも大きいので、衝撃負荷力は、心臓ポンプハウジング107に対して、例えば軸方向及び/または径方向に心臓ポンプが動く原因となり、第1及び第2滑り軸受部126a、126b間に間隙が存在することになる。心臓ポンプロータ108の動く範囲は、心臓ポンプロータ108と心臓ポンプハウジング107の作動中の間隙によって制限される。従って、前負荷力が心臓ポンプロータ108に対して、衝撃負荷発生後に、あるいは、心臓ポンプロータ108を心臓ポンプハウジング107に対して心臓ポンプロータ108の最大移動範囲において第1及び第2滑り軸受部126a、126bを再度係合すべく作用するように、第2磁気軸受部136bの位置を設定することが望ましい。
【0063】
図2bの例では、心臓ポンプロータ108は、心臓ポンプ101の滑り軸受組立体126の反対側に円錐状の面114を有する。心臓ポンプロータ108の最大移動範囲が円錐状の頂点の面と心臓ポンプハウジング107の壁との間の間隔で規定されるように、この円錐状の頂点が心臓ポンプハウジング107に接するよう構成されている。このように、心臓ポンプロータ108と心臓ポンプハウジング107との間の接触面積は、心臓ポンプロータ108の移動の結果、最小限になる。しかしながら、心臓ポンプロータ108及び/または心臓ポンプハウジング107は、心臓ポンプロータ108と心臓ポンプハウジング107間の接触面積を最小にするためにはいかなる幾何学的特徴を含んでいてもよい。
【0064】
心臓ポンプ101は、滑り軸受組立体126から少なくとも軸方向に間隔を維持して更に別の任意の滑り軸受組立体(図示せず)を備えていてもよい。当該更に別の滑り軸受組立体は、心臓ポンプロータ108の滑り軸受組立体126の反対側の端に設ける。滑り軸受組立体126と同じように、当該更に別の滑り軸受組立体は、心臓ポンプロータ108に連結した第1滑り軸受部と、心臓ポンプハウジング107に連結した第2滑り軸受部とを有する。
【0065】
前記別の滑り軸受組立体は、心臓ポンプロータ108の移動範囲を心臓ポンプハウジング107内に限定したもの、例えば、前負荷力の方向とは逆の方向に限定する。心臓ポンプは、作動中、滑り軸受組立体126の第1及び第2滑り軸受部126a、126bが回転接触し、前記別の滑り軸受組立体の第1及び第2滑り軸受部は両者間に作動間隙を有する。この作動間隙は、心臓ポンプハウジング107と心臓ポンプロータ108との間の最小駆動間隙よりも小さい可能性もある。このように、心臓ポンプロータ108が心臓ポンプハウジング107内を例えば軸方向及び/または径方向に移動する状況下では、心臓ポンプロータ108のいかなる部分が心臓ポンプハウジング107に接触する前に、前記別の滑り軸受組立体の第1及び第2滑り軸受部が接触する。一つの例では、前記別の滑り軸受組立体は、滑り軸受組立体126の第1及び第2滑り軸受部126a、126bと形状が類似した構成の第1及び第2滑り軸受部を有する。例えば、前記別の滑り軸受組立体の第1滑り軸受部は、球状区分、すなわち、接頭円錐または円錐台で構成し、前記別の滑り軸受組立体の第2滑り軸受部126bは、実質的に円盤状でよい。しかしながら、滑り軸受組立体126の第1及び第2滑り軸受部126a、126bは、適切な構成であればどのようなものでもよく、滑り軸受組立体126の第1及び第2滑り軸受部126a、126bは、それぞれ心臓ポンプロータ108が心臓ポンプハウジング107のそれぞれどこの位置に、例えば、心臓ポンプ101の滑り軸受組立体126の反対側に設けてもよい。前記別の滑り軸受組立体は、滑り軸受組立体126の上記した任意選択可能な特徴も備える。
【0066】
図2bの例に示すように、心臓ポンプ101は、磁力駆動型カップリング140、例えばブラシュレスDCモータを有する。心臓ポンプロータ108は、第1磁力駆動型カップリング部140a、例えば1以上の永久磁石を有する。心臓ポンプハウジング107は、第2磁性駆動カップリング部140b、例えば1以上の巻線を有する。
図2bの例では、磁力駆動型カップリング140は径方向の磁力駆動型カップリング、例えば径方向磁束ギャップ電動モータを有する。この磁力駆動型カップリング140の構成は、適切な構成ならばどのようなものでもよい。
【0067】
第1及び第2磁力駆動型カップリング部140a、140bは、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間に少なくとも部分的に配設される。
図2bの例では、第1及び第2磁力駆動型カップリング部140a、140bは、軸方向に磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間に配設される。第1及び第2磁力駆動型カップリング部140a、140bの磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間に軸方向に配設されている。第1及び第2磁力駆動型カップリング部140a、140bは、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間のどの位置に配置してもよい。例えば、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間の径方向及び/または軸方向のどの位置に配置してもよい。
【0068】
心臓ポンプロータ108は、インペラ部113に連結されている。このインペラ部は、心臓ポンプロータ108の端に設ける。
図2bの例では、インペラ部113は、半径流インペラ(radial−flow impeller)を有する。なお、代替例としては、インペラ部は、軸流インペラあるいは混合流インペラ(mixed−flow impeller)を備えていてもよい。インペラ部113は、少なくとも部分的に磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156の間に配設する。
図2bの例では、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156の間に軸方向に配設されている。但し、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間のどの位置に配設してもよい。例えば、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間に径方向及び/または軸方向に配設する。
図2bの例では、インペラ部113は、磁気軸受組立体136と磁力駆動型カップリング140との間に設けられている。但し、代替案では、インペラ部113は、別の磁気軸受組立体156と磁力駆動型カップリング140との間に設けてもよい。
【0069】
図2bの例では、心臓ポンプ101は、心臓ポンプロータ108の一端を径方向に支持する磁気軸受組立体136と、心臓ポンプロータ108の他端を径方向に支持する別の磁気軸受組立体156とを備えている。磁力駆動型カップリング140とインペラ部113とは、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間に配設されている。
図2bの例では、インペラ部113は、軸方向に見て磁気軸受組立体136と磁力駆動型カップリング140との間に設けられている。磁力駆動型カップリング140は、インペラ部113と別の磁気軸受組立体156との間に軸方向に設けられている。このように、心臓ポンプロータ108の質量の中心は磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間に位置し、磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156のいずれかから張り出す心臓ポンプロータ108の質量は、最小化される。また、心臓ポンプロータ108に作用する力が、例えば、磁力駆動型カップリング140の電磁力による軸方向及び/または径方向の荷重及び/またはインペラ部113に作用する液圧力が、心臓ポンプロータ108の磁気軸受組立体136と別の磁気軸受組立体156との間の部分に作用する。これにより心臓ポンプ101作動中の心臓ポンプロータ108の安定性が改善される。
【0070】
図2bに示す例では、磁気軸受組立体136の第1磁気軸受部136aは、インペラ部113から軸方向に延長する心臓ポンプロータ108の軸部157に設けられている。このように、磁気軸受組立体136は、インペラ部113からオフセット間隔D1だけオフセットしている。
図2bでは、オフセット間隔D1は、インペラシュラウド119と第1磁気軸受部136aのインペラシュラウド119に最も近い端との間の間隔として図示されている。しかしながら、オフセット間隔D1は、インペラ部113と第1磁気軸受部136aのそれぞれの適切な部分間で測定してもよい。
【0071】
心臓ポンプ101の作動中、インペラ部113に作用する液圧力は、心臓ポンプロータ108を回転軸からずれる方向に傾動する液圧モーメントが心臓ポンプロータ108に加えられる原因となる。磁気軸受組立体136の位置、例えば磁気軸受組立体136とインペラ部113との間のオフセット間隔D1は、液圧力の大きさ、従って、心臓ポンプロータ108に作用する液圧モーメントの大きさに従って選択する。例えば、磁気軸受組立体136は、心臓ポンプロータ108が回転軸からずれる時、心臓ポンプロータ108にかかる磁力による液圧モーメントに対する反作用を与える構成にすることができる。オフセット間隔D1によって、液圧モーメントに対向する磁力モーメントの大きさが決まる。
【0072】
同じように、別の磁気軸受組立体156の位置、例えば別の磁気軸受組立体156とインペラ部113とのオフセット間隔D2は、インペラ部113に作用する液圧力の大きさによって選択する。
【0073】
更に、あるいは、その代わりに、オフセット間隔D1、D2は、磁力駆動型カップリング140作動の結果、心臓ポンプロータ108に作用する電磁力に起因する、回転軸から外れて傾動させるように作用する電磁モーメントの大きさによって選択する。オフセット間隔は、心臓ポンプ101の作動中の心臓ポンプロータ108の回転安定性を最適化するように選択する。
【0074】
本願の開示内容は、
図2bに示したレイアウトに限定されるものではない。
図3は、代替案の心臓ポンプ201を示す。この代替案では、磁力駆動型カップリング240は磁気軸受組立体236と別の磁気軸受組立体256との間に配設されている。インペラ部213は、心臓ポンプロータ208の端であって、磁気軸受組立体236及び別の磁気軸受組立体256の外側に、例えば、インペラ部213が磁気軸受組立体236と別の磁気軸受組立体256との間に位置しないように配設する。
【0075】
図4は、
図2に示す心臓ポンプ101の変形例を示す。
図3及び
図4に示す例では、心臓ポンプロータ208、108は、心臓ポンプロータ208、108内に延在する1本またはそれ以上の流路280、380を有する。これら流路280、380は、一次流路215、115の2つ以上の部分を互いに連結及び/または二次流路217、117の一領域を一次流路215、115の一領域へ流体的に(fluidically)接続する構成にする。
図3に示す例では、流路280は心臓ポンプロータ208のインペラ部213を通過して延長している。
図4に示す例では、流路380は心臓ポンプロータ108の軸部157及びインペラ部113を通過する。このように、血液は、インペラ部213、113外径の高圧領域からインペラ部213、113内径の低圧領域へ流れ、二次流路217、117を規定する。このように、インペラ部213、113のインペラシュラウド219、119と心臓ポンプケーシング207、107との間に存在する可能性のある血行静止領域を破壊させる作用を有する。従って、この開示内容は、蛋白質の堆積及び/または血栓の形成と関連する血流静止領域の傾向(predilection)を緩和することに貢献する。結果的に、軸受の作動不良及び/または移植心臓の故障による不利な出来事の合計数を減少させる。
図2b、
図2a、
図3または
図4には図示していないが、滑り軸受組立体126、226及び/または別の滑り軸受組立体は、二次流路217、117内に位置させることもできる。
【0076】
本開示内容では、磁気軸受組立体136、236から滑り軸受組立体126、226に前負荷力を供給する方法を提供する。更に、本開示内容では、第1及び/または第2磁気軸受部136a、136b、236a、236bの位置を、組立てた状態の心臓ポンプロータ108、208及び/または心臓ポンプハウジング107、207に対して調節することにより、前負荷力を設定する方法を提供する。更に、磁気軸受組立体136、236が調節可能に、例えば、第1及び/または第2磁気軸受部136a、136b、236a、236bの位置が調節可能であるので、大きな製作誤差が許容される。
【0077】
滑り軸受組立体126、226および磁気軸受組立体136、236の記載例は、関連する心臓ポンプ101、201の例に関連して使用することに限定されることはない。事実、本発明に基づく滑り軸受組立体126、226および磁気軸受組立体136、236は、それぞれ記載された事例またはその他適切な心臓ポンプに取付け可能である。