特許第6752160号(P6752160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752160
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】移動作業車
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   E01D21/00 A
   E01D21/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-4337(P2017-4337)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-112027(P2018-112027A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】山中 大明
(72)【発明者】
【氏名】大村 惠治
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5409178(JP,B2)
【文献】 特開平08−068198(JP,A)
【文献】 米国特許第05029670(US,A)
【文献】 国際公開第2015/041535(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0312481(US,A1)
【文献】 特開2015−055131(JP,A)
【文献】 実開昭62−182341(JP,U)
【文献】 特開平11−256521(JP,A)
【文献】 特開昭56−131705(JP,A)
【文献】 特開平09−195228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の既設部分の端部から張出方向に張出施工を行う移動作業車であって、
前記既設部分の上面に配置されて前記張出方向に延びるレールと、
前記レール上を移動可能なワーゲンフレームと、
前記端部よりも前記張出方向の側に配置され、前記ワーゲンフレームによって吊り下げられ、コンクリートの打設のために組立てられる型枠を支持する型枠支持部と、
前記型枠支持部よりも前記張出方向の側に配置され、前記ワーゲンフレームによって吊り下げられ、鉄筋を支持する鉄筋先組部と、
前記ワーゲンフレームによって吊り下げられ、前記鉄筋先組部での前記鉄筋の組立のための足場となる足場ユニットと、
前記足場ユニットを水平方向に移動可能なように吊り下げる足場移動機構と、
前記足場ユニットを任意の位置で水平方向に移動しないように固定する足場固定機構と、
を備え、
前記ワーゲンフレームは、
前記張出方向に直交する方向に配列された複数のメインフレームと、
複数の前記メインフレームのそれぞれの上に架設された上梁と、
を有し、
前記メインフレームと前記上梁とは、前記メインフレームを前記上梁に対して前記張出方向に直交する方向に摺動させるスライド機構を介して接合されている、移動作業車。
【請求項2】
前記足場移動機構は、前記足場ユニットを前記張出方向に直交する方向に移動可能なように吊り下げる、請求項1に記載の移動作業車。
【請求項3】
前記足場移動機構は、
水平方向であって前記張出方向に直交する方向に延在するトロリーレールと、
前記トロリーレールに沿って摺動可能であり、前記足場ユニットを吊り下げるトロリーと、
を有する請求項2に記載の移動作業車。
【請求項4】
構造物の既設部分の端部から張出方向に張出施工を行う移動作業車であって、
前記既設部分の上面に配置されて前記張出方向に延びるレールと、
前記レール上を移動可能なワーゲンフレームと、
前記端部よりも前記張出方向の側に配置され、前記ワーゲンフレームによって吊り下げられ、コンクリートの打設のために組立てられる型枠を支持する型枠支持部と、
前記型枠支持部よりも前記張出方向の側に配置され、前記ワーゲンフレームによって吊り下げられ、鉄筋を支持する鉄筋先組部と、
前記ワーゲンフレームによって吊り下げられ、前記鉄筋先組部での前記鉄筋の組立のための足場となる足場ユニットと、
前記足場ユニットを水平方向に移動可能なように吊り下げる足場移動機構と、
前記足場ユニットを任意の位置で水平方向に移動しないように固定する足場固定機構と、
を備え、
前記足場移動機構は、前記足場ユニットを前記張出方向に直交する方向に移動可能なように吊り下げ、
前記足場移動機構は、
水平方向であって前記張出方向に直交する方向に延在するトロリーレールと、
前記トロリーレールに沿って摺動可能であり、前記足場ユニットを吊り下げるトロリーと、
を有し、
前記足場固定機構は、
前記トロリーレールに取付けられた上部受金具と、
前記足場ユニットに取付けられた下部受金具と、
前記上部受金具と前記下部受金具とを着脱自在に連結するワイヤと、
前記トロリーレールと前記足場ユニットとの間に配置され、前記トロリーレールと前記足場ユニットとが離れる方向の反力を加えるジャッキと、
を有し、
前記ワイヤにより前記上部受金具と前記下部受金具とが連結された状態で、前記ジャッキが前記トロリーレールと前記足場ユニットとが離れる方向の反力を加えることにより、前記足場ユニットが移動しないように固定される移動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の構造物の既設部分の端部から張出方向に張出施工を行う方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載されるように、既設部分のコンクリートの打設及び養生を行っている間に次の打設部分の鉄筋を組み立てておく鉄筋先組工法が知られている。鉄筋先組工法では、移動作業車のワーゲンフレームの張り出した部分に対し、鉄筋組立用の作業台が吊り下げられる。この作業台上で鉄筋が組み立てられる。鉄筋先組工法によれば、コンクリートの打設及び養生に並行して鉄筋の組立が行われるため、工期の短縮が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5409178号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、橋梁の上部工において、橋軸方向に垂直な断面が拡幅または縮幅する構造が増加している。このような拡幅断面または縮幅断面を含む橋梁では、張出施工が進む過程において、張出方向に直交する水平方向におけるブロックの幅が拡がったり狭まったりする。ブロックの拡幅及び縮幅に伴い、コンクリートの打設及び養生に並行して組み立てられる鉄筋の幅も拡がったり狭まったりする。一方、鉄筋の組立の際には、鉄筋の組立のための足場が設置される。しかし、上記のような技術では、鉄筋の拡幅及び縮幅のたびに足場を組み直して足場の位置を変更する必要がある。
【0005】
そこで本発明は、鉄筋先組工法における構造物の拡幅及び縮幅への対応を向上させた移動作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、構造物の既設部分の端部から張出方向に張出施工を行う移動作業車であって、既設部分の上面に配置されて張出方向に延びるレールと、レール上を移動可能なワーゲンフレームと、端部よりも張出方向の側に配置され、ワーゲンフレームによって吊り下げられ、コンクリートの打設のために組立てられる型枠を支持する型枠支持部と、型枠支持部よりも張出方向の側に配置され、ワーゲンフレームによって吊り下げられ、鉄筋を支持する鉄筋先組部と、ワーゲンフレームによって吊り下げられ、鉄筋先組部での鉄筋の組立のための足場となる足場ユニットと、足場ユニットを水平方向に移動可能なように吊り下げる足場移動機構と、足場ユニットを任意の位置で水平方向に移動しないように固定する足場固定機構とを備えた移動作業車である。
【0007】
この構成によれば、構造物の既設部分の端部から張出方向に張出施工を行う移動作業車において、既設部分の上面に配置されて張出方向に延びるレールと、レール上を移動可能なワーゲンフレームと、端部よりも張出方向の側に配置され、ワーゲンフレームによって吊り下げられ、コンクリートの打設のために組立てられる型枠を支持する型枠支持部と、型枠支持部よりも張出方向の側に配置され、ワーゲンフレームによって吊り下げられ、鉄筋を支持する鉄筋先組部と、ワーゲンフレームによって吊り下げられ、鉄筋先組部での鉄筋の組立のための足場となる足場ユニットとを備え、足場移動機構により足場ユニットが水平方向に移動可能なように吊り下げられ、足場固定機構により足場ユニットが任意の位置で水平方向に移動しないように固定されるため、鉄筋の拡幅及び縮幅に対応して足場の水平方向の位置を任意の位置に変更してから、足場の位置を固定することができるため、鉄筋先組工法における構造物の拡幅及び縮幅への対応を向上させることができる。
【0008】
この場合、足場移動機構は、足場ユニットを張出方向に直交する方向に移動可能なように吊り下げることが好適である。
【0009】
この構成によれば、足場移動機構により足場ユニットは張出方向に直交する方向に移動可能なように吊り下げられるため、鉄筋先組工法における構造物の拡幅及び縮幅により対応し易くなる。
【0010】
この場合、足場移動機構は、水平方向であって張出方向に直交する方向に延在するトロリーレールと、トロリーレールに沿って摺動可能であり、足場ユニットを吊り下げるトロリーとを有することが好適である。
【0011】
この構成によれば、足場移動機構は、水平方向であって張出方向に直交する方向に延在するトロリーレールと、トロリーレールに沿って摺動可能であり、足場ユニットを吊り下げるトロリーとを有するため、簡易な構成により、足場ユニットを水平方向に移動可能なように吊り下げることができる。
【0012】
この場合、足場固定機構は、トロリーレールに取付けられた上部受金具と、足場ユニットに取付けられた下部受金具と、上部受金具と下部受金具とを着脱自在に連結するワイヤと、トロリーレールと足場ユニットとの間に配置され、トロリーレールと足場ユニットとが離れる方向の反力を加えるジャッキとを有し、ワイヤにより上部受金具と下部受金具とが連結された状態で、ジャッキがトロリーレールと足場ユニットとが離れる方向の反力を加えることにより、足場ユニットが移動しないように固定されることが好適である。
【0013】
この構成によれば、足場固定機構は、トロリーレールに取付けられた上部受金具と、足場ユニットに取付けられた下部受金具と、上部受金具と下部受金具とを着脱自在に連結するワイヤと、トロリーレールと足場ユニットとの間に配置され、トロリーレールと足場ユニットとが離れる方向の反力を加えるジャッキとを有し、ワイヤにより上部受金具と下部受金具とが連結された状態で、ジャッキがトロリーレールと足場ユニットとが離れる方向の反力を加えることにより、足場ユニットが移動しないように固定されるため、簡易な構成により、足場ユニットを任意の位置で水平方向に移動しないように固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の移動作業車によれば、鉄筋先組工法における構造物の拡幅及び縮幅への対応を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は、本実施形態の移動作業車が適用される橋梁の側面図であり、(b)は、その平面図である。
図2】本実施形態の移動作業車を示す側面図である。
図3図2のIII線による断面図である。
図4】本実施形態の移動作業車の要部を示す平面図である。
図5】(a)、(b)、(c)及び(d)は、本実施形態の移動作業車による張出施工の手順を順に示す側面図である。
図6】(a)は本実施形態の移動作業車の足場ユニットの固定された状態を示す側面図であり、(b)は(a)の正面図である。
図7図6(b)の足場ユニットの水平方向に移動可能とされた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る移動作業車の実施形態について詳細に説明する。まず、図1図5を参照しながら、本実施形態の移動作業車が適用される橋梁100の張出架設工法の張出施工について説明する。図1(a)及び図1(b)に示すように、橋梁100は、コンクリート製の構造物であり、例えば連続ラーメン箱桁橋である。橋梁100は、地盤から鉛直方向に立ち上がる複数の橋脚101と、橋脚101のそれぞれの上部に設けられた柱頭部103と、柱頭部103のそれぞれの間に架け渡される橋桁104を備える。橋桁104は、略平行に延びる2本の箱桁105と、箱桁105上に設けられる床版107とを有する。
【0017】
以下、図中において、橋軸方向X、橋軸直角方向Y及び垂直方向Zが示される。橋軸方向Xの矢印の向きは張出施工が進行する方向(前方向)を示し、橋軸直角方向Yの矢印の向きは前方向に向かって左方向を示し、垂直方向Zの矢印の向きは垂直上方を示す。
【0018】
図3に示すように、箱桁105は、略水平に延在する底版105aと当該底版105aの両端から略鉛直上方に立ち上がる2つのウェブ105bとを有し、箱桁105の橋軸方向Xに直交する平面による断面形状は、略長方形状をなしている。完成後の箱桁105は、水平方向に延びる場合もあるが、水平方向に対して傾斜する方向に延びる場合もある。また、完成後の箱桁105は、平面視において真っ直ぐに延びる場合もあるが、湾曲して延びる場合もある。本実施形態においては、図1(a),(b)に示されるように、完成後の箱桁105が水平方向に真っ直ぐに延びる場合を例として説明する。また、図1(b)に示されるように、箱桁105は、本実施形態において張出架設工法を開始する柱頭部103(図中の左側の柱頭部103)から離れるに従って橋軸直角方向Yに拡幅しているものとする。
【0019】
図1(a)に示すように、箱桁105は、柱頭部103から張出架設工法により1ブロックずつ張出施工され、隣接する他の柱頭部103に向けて1ブロック分ずつ段階的に橋軸方向Xに伸長していく。実際には1つの柱頭部103から互いに橋軸方向Xと橋軸方向Xの反対方向との二方向の張出施工を実行するが、本実施形態では、一方向の張出施工についてのみ説明する。以下では、張出架設工法により箱桁105が伸長していく方向を「前方」、その反対方向を「後方」として、前・後及び前方・後方といったような文言を用いるものとする。
【0020】
また、箱桁105の施工単位である1ブロック分の部分を「箱桁ブロックP」と呼ぶものとする。また、各々の箱桁ブロックPを区別する場合には、柱頭部103から数えて1ブロック目、2ブロック目、…、nブロック目の箱桁ブロックPを、それぞれ箱桁ブロックP1、箱桁ブロックP2、…、箱桁ブロックPnといったように呼ぶものとする。
【0021】
図1(a)に示すように、橋桁104の既設部分(以下「橋桁既設部分104a」と呼ぶ)における床版107の上面には複数のレール123が敷設され、レール123は橋桁既設部分104aの前端部まで延びている。レール123上には、張出架設工法に用いられる移動作業車121が設置され、移動作業車121は、レール123上を橋軸方向に移動可能に構成されている。
【0022】
移動作業車121は、レール123上の前端部に固定されて、橋桁既設部分104aの前端部から箱桁ブロックPnの張出施工を行う。その後、完成した箱桁ブロックPn上に床版107が施工され、当該床版107上にレール123が延長される。そして、レール123の先端部に移動作業車121を前進させ、箱桁ブロックP(n+1)の張出施工が行われる。以上を繰り返すことにより、橋桁既設部分104aが段階的に伸びていく。
【0023】
(移動作業車)
続いて、図2図4を参照しながら移動作業車121について説明する。図2図3及び図4に示されるように、移動作業車121は、レール123上を橋軸方向に移動可能なワーゲンフレーム130と、ワーゲンフレーム130上に配置された上梁137とを備える。ワーゲンフレーム130および上梁137は、たとえば、複数のH形鋼が接合されることで形成される。本明細書において、ワーゲンフレーム130は、「トラベラー」と呼ばれるものを含む概念である。
【0024】
図3及び図4に示すように、ワーゲンフレーム130は、橋軸直角方向に略平行に配列された4つのメインフレーム131を備えている。図2に示すように、メインフレーム131のそれぞれは、平行四辺形状のトラス構面からなり、そのトラス構面が鉛直面に沿うように配置されている。本明細書において、メインフレーム131は、「メイントラス」と呼ばれるものを含む概念である。メインフレーム131の後方の底部はアンカージャッキ133によってレール123に固定され、メインフレーム131の前方の底部はメインジャッキ135によってレール123上で支持される。
【0025】
図2図3及び図4に示すように、上梁137は、これらの4つのメインフレーム131上に架設されている。上梁137は、橋軸直角方向Yに延在する2本の横架材137a,139bと、橋軸方向Xに延在し横架材137aと横架材137bとを連結する3本の連結梁137cとを有し、井桁状に形成されている。図2に示すように、横架材137aはメインジャッキ135の略鉛直上方に配置される。横架材137bは橋桁既設部分104aの前端よりも前方に配置される。図2及び図4に示すように、メインフレーム131の上部の前端部には、更に前方に張出す延長梁132が設けられている。図4に示すように、4つのメインフレーム131の内の内側の2つについては、延長梁132の前端同士を接続するように橋軸直角方向に延在する横架材134が架け渡されている。
【0026】
図2に示すように、張出施工時においては、メインフレーム131のうちメインジャッキ135よりも前方の部分が、橋桁既設部分104aの前端よりも前方に張出すように配置される。また、図3及び4に示すように、橋桁既設部分104aによる支持強度に鑑み、各メインフレーム131は、箱桁105のウェブ105bそれぞれの鉛直上方の位置に配置される。
【0027】
図2に示すように、移動作業車121は、ワーゲンフレーム130によって吊り下げられる型枠支持部139と、上梁137及び横架材134によって吊り下げられる鉄筋先組部141とを備える。型枠支持部139は、橋桁既設部分104aの前端よりも前方(張出方向の側)に配置され、鉄筋先組部141は、型枠支持部139よりも更に前方(張出方向の側)に配置される。
【0028】
(型枠支持部)
図2及び図3に示すように、型枠支持部139は、上梁137から複数の吊材142を介して吊り下げられた型枠受梁143を有している。型枠支持部139の後方作業床144は、既設の橋桁104の前方で組立てられるコンクリート型枠(図示せず)を支持する。このコンクリート型枠にコンクリートが打設されることで、橋桁既設部分104aの前方に1ブロック分の箱桁ブロックPnが構築される。なお、施工される2本の箱桁105のそれぞれに対応して、型枠支持部139の後方作業床144は、橋軸直角方向Yに配列され設けられる2つの型枠を支持する。
【0029】
(鉄筋先組部)
図2に示すように、鉄筋先組部141は、上梁137及び横架材134から複数の吊材145を介して吊り下げられた前方作業床147を有している。本実施形態では、前方作業床147は、図3及び図4に示す上梁137の3本の連結梁137cの各前端部と、図2及び図4に示す横架材134の橋軸直角方向における両端部と中央部との合計6カ所で吊材145を介して吊下げ支持されている。前方作業床147上では、次回の箱桁ブロックP(n+1)に使用するための鉄筋籠である鉄筋150が組立てられる。図2に示すように、前方作業床147には、鉄筋150を組立てるための作業台となる鉄筋組立台170が設置される。鉄筋組立台170には、例えば、鉄筋を等ピッチで配列するためのガイドとして鉄筋定規が設置される。なお、施工される2本の箱桁105のそれぞれに対応して、鉄筋先組部141では、橋軸直角方向Yに配列される2つの鉄筋籠である鉄筋150が組立てられる。
【0030】
(トロリー装置)
型枠支持部139及び鉄筋先組部141は、前方作業床147上で組立てられた鉄筋150を吊下げて移動するためのトロリー装置151を有している。トロリー装置151は、延長梁132の下方に配置されている。また、トロリー装置151と前方作業床147との間には鉄筋150の組立て及び吊下げ用のスペースが十分に確保される。トロリー装置151は、4本の延長梁132のそれぞれから吊材159により吊下げられ、橋軸方向Xに延びるトロリーレール153と、トロリーレール153に案内されて移動すると共に鉄筋150を吊下げ可能なトロリー155とを有している。このような鉄筋先組部141を備えることで、箱桁ブロックPnの型枠組立やコンクリート打設及び養生の作業に並行して、箱桁ブロックP(n+1)用の鉄筋150の組立作業を行うといった運用が可能になる。
【0031】
なお、図2及び図4に示すように、4本のトロリーレール153の内の外側の2つと内側の2つとの間には、その上面に、水平方向であって橋軸直角方向Y(張出方向に直交する方向)に延在する一対のトロリーレール162が架け渡されている。トロリーレール162により、鉄筋先組部141での鉄筋150の組立のための足場となる足場ユニット161が吊り下げられている。足場ユニット161の詳細については、後述する。
【0032】
(拡幅追従機構)
前述の通り、4つのメインフレーム131は、それぞれが常に箱桁105のウェブ105bの上に配置される必要がある。本実施形態の箱桁105は張出架設工法が進行するに従って徐々に拡幅して行くので、2つの箱桁105のウェブ105b同士の間隔も徐々に広がっていくことになる。そこで、4つのメインフレーム131の内で少なくとも外側の2つのメインフレーム131は、橋軸直角方向Yに平行移動可能とされている。具体的には、外側の2つのメインフレーム131と横架材137a,137bとはスライド機構157を介して接合されている。そして、当該スライド機構157によって、外側の2つのメインフレーム131を横架材137a,137bに対して橋軸直角方向Yに摺動させることができる。このような機構によれば、張出架設の進行に従って2つの箱桁105が拡幅していく場合にも、メインフレーム131の橋軸直角方向Yの位置を追従させることができる。
【0033】
なお、外側の2つのメインフレーム131の平行移動に伴い、外側の2つの延長梁132と、外側の2つの延長梁132の直下に吊材159により吊下げられた外側の2つのトロリーレール153とも平行移動する。そのため、外側の2つのトロリーレール153と、足場ユニット161を吊り下げるトロリーレール162とも、スライド機構157と同様の機構により、外側の2つのトロリーレール153をトロリーレール162に対して橋軸直角方向Yに摺動させることができる。
【0034】
(張出架設工法)
このような移動作業車121によって実行される張出架設工法の手順は次の通りである。図5(a)に示されるように、橋桁既設部分104aの既設の箱桁ブロックP(n−1)の上方に移動作業車121が設置されて、箱桁ブロックPn用の鉄筋150が型枠支持部139の後方作業床144に設置され、鉄筋150を囲むように型枠が組立てられ、当該型枠に箱桁ブロックPnのコンクリートが打設され養生される。この作業に並行して、鉄筋先組部141では、足場ユニット161を用いて、前方作業床147上で箱桁ブロックP(n+1)用の鉄筋150が組立てられる。
【0035】
その後、図5(b)に示されるように、箱桁ブロックPnが完成し、箱桁ブロックPn上に床版107が設置され、その床版107上にレール123が延長される。その後、移動作業車121が前進させられ、箱桁ブロックPnの上方に設置される。次に、図5(c)に示されるように、トロリー装置151で前方作業床147上の鉄筋150が吊り上げられ、トロリー装置151により鉄筋150が後方に移動され、鉄筋150が型枠支持部139の後方作業床144に設置される。なお、足場ユニット161は、鉄筋先組部141に残される。
【0036】
その後、図5(d)に示されるように、鉄筋150を囲むように型枠が組立てられ、当該型枠に箱桁ブロックP(n+1)のコンクリートが打設され養生される。この作業に並行して、鉄筋先組部141では、前方作業床147上で箱桁ブロックP(n+2)用の鉄筋150が組立てられる。以上の手順を繰り返すことで、箱桁ブロックPは段階的に形成されていく。
【0037】
(足場ユニット)
以下、本実施形態の足場ユニット161について説明する。まず、最初に足場ユニット161を用いて組立てられる鉄筋150について説明する。鉄筋150が埋設される箱桁ブロックPは、前述の通り、略水平面に沿って広がる底版105aと、底版105aの両端縁から略鉛直上方に立ち上がる一対の平行なウェブ105b(側壁)と、を有する鉄筋コンクリート構造物であり、略長方形の断面形状をなす。この箱桁ブロックPの形状に対応して、図6(b)に示すように、鉄筋150も同様の長方形の上辺を除去した断面形状を有する。
【0038】
鉄筋150は、次に説明するような縦横に延在する鉄筋同士が、交差点において結束線で結束されることにより、籠状に形成される。鉄筋150は、底版105aの上面に沿って埋設され橋軸直角方向Yに延在する底版上筋15と、底版105aの下面に沿って埋設され橋軸直角方向Yに延在する底版下筋17とを有している。底版上筋15及び底版下筋17は、橋軸方向Xに平行に多数配列されている。
【0039】
さらに鉄筋150は、底版上筋15の直下で橋軸方向Xに延在し、交差する底版上筋15のそれぞれと各交差点で結束される複数の橋軸方向鉄筋16を有している。また、鉄筋150は、底版下筋17の直上で橋軸方向Xに延在し、交差する底版下筋17のそれぞれと各交差点で結束される複数の橋軸方向鉄筋18を有している。底版下筋17の両端部は、後述するウェブ鉄筋19の形状に沿って上方に屈曲されている。
【0040】
鉄筋150は、ウェブ105bの内側面と外側面に沿うように略鉛直面内でU字状に形成されたウェブ鉄筋19を備えている。ウェブ鉄筋19は、橋軸方向Xに平行に多数配列されている。鉄筋150は、ウェブ鉄筋19のウェブ105bの外側面の側で橋軸方向Xに延在し、交差するウェブ鉄筋19と各交差点で結束される複数の橋軸方向鉄筋20を有している。更に、鉄筋150は、ウェブ鉄筋19のウェブ105bの内側面の側で橋軸方向Xに延在し、交差するウェブ鉄筋19と各交差点で結束される複数の橋軸方向鉄筋22を有している。
【0041】
図6(a)及び図6(b)に示すように、本実施形態の移動作業車121は、上述したように、トロリーレール162を介してワーゲンフレーム130によって吊り下げられ、鉄筋先組部141での鉄筋150の組立のための足場となる足場ユニット161を備える。足場ユニット161は、例えば、鋼管を連結することにより形成された枠組に金属板のステージ161sを配置することにより形成されている。本実施形態では、足場ユニット161は、4段階の高さのステージ161sを有する。足場ユニット161は、1つの鉄筋150ごとに2つずつ備えられ、2つのウェブ鉄筋19のそれぞれのウェブ105bの内側面に近接するように固定される。
【0042】
移動作業車121は、足場ユニット161を水平方向に移動可能なように吊り下げる足場移動機構164と、足場ユニット161を任意の位置で水平方向に移動しないように固定する足場固定機構169とを備える。足場移動機構164は、足場ユニット161を橋軸直角方向Y(張出方向に直交する方向)に移動可能なように吊り下げる。足場移動機構164は、橋軸直角方向Y(水平方向であって張出方向に直交する方向)に延在するトロリーレール162と、トロリーレール162に沿って摺動可能であり、足場ユニット161を吊り下げるトロリー163とを有する。図6(b)の例では、足場ユニット161が足場固定機構169により固定された状態であるため、トロリー163と足場ユニット161の玉掛金具163fとは連結されていない。また、説明の便宜のため、図6(a)からトロリー163の記載は省略した。
【0043】
足場固定機構169は、トロリーレール162に取付けられた上部受金具165と、足場ユニットに取付けられた下部受金具166と、上部受金具165と下部受金具166とを着脱自在に連結するワイヤ167と、トロリーレール162と足場ユニット161との間に配置され、トロリーレール162と足場ユニット161とが離れる方向の反力を加えるジャッキ168とを有する。
【0044】
上部受金具165は、トロリーレール162の上面に着脱自在に取付けられた半円形状の金属部材である。下部受金具166は、上部受金具165の上を通されたワイヤ167の両端を固定するために、足場ユニット161の枠組を形成する鋼管の外側に突出した金具である。ジャッキ168は、一般的な大引受ジャッキを適用することができ、その基部が足場ユニット161の枠組を形成する鋼管に取付けられ、その受部がトロリーレール162を支持している。上部受金具165と下部受金具166とにより、ワイヤ167は、ジャッキ168のハンドルを回す障害にならないように、足場ユニット161の枠組を形成する鋼管の外側に位置させられる。
【0045】
ワイヤ167により上部受金具165と下部受金具166とが連結された状態で、ジャッキ168がトロリーレール162と足場ユニット161とが離れる方向の反力を加えることにより、足場ユニット161が移動しないように固定される。一方、図7に示すように、箱桁105の拡幅に伴い、足場ユニット161を移動させる必要が生じた場合には、トロリー163と玉掛金具163fとがワイヤ163wにより連結される。ジャッキ168の反力が緩められ、ワイヤ167が撤去される。これにより、足場ユニット161は、トロリー163により吊下げられた状態となり、橋軸直角方向Yに移動自在となる。
【0046】
足場ユニット161を任意の位置で移動しないように固定する場合には、上部受金具165を任意の位置に取付けた後に、ワイヤ167により上部受金具165と下部受金具166とが連結された状態で、ジャッキ168がトロリーレール162と足場ユニット161とが離れる方向の反力を加え、トロリー163及び玉掛金具163fからワイヤ163wを撤去することにより、再度、足場ユニット161を固定することができる。
【0047】
本実施形態では、構造物の既設部分の端部から張出方向に張出施工を行う移動作業車121において、既設部分の上面に配置されて張出方向に延びるレール123と、レール123上を移動可能なワーゲンフレーム130と、端部よりも張出方向の側に配置され、ワーゲンフレーム130によって吊り下げられ、コンクリートの打設のために組立てられる型枠を支持する型枠支持部139と、型枠支持部139よりも張出方向の側に配置され、ワーゲンフレーム130によって吊り下げられ、鉄筋150を支持する鉄筋先組部141と、ワーゲンフレーム130によって吊り下げられ、鉄筋先組部141での鉄筋150の組立のための足場となる足場ユニット161とを備え、足場移動機構164により足場ユニット161が水平方向に移動可能なように吊り下げられ、足場固定機構169により足場ユニット161が任意の位置で水平方向に移動しないように固定されるため、鉄筋150の拡幅及び縮幅に対応して足場の水平方向の位置を任意の位置に変更してから、足場の位置を固定することができ、鉄筋先組工法における構造物の拡幅及び縮幅への対応を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、足場移動機構164により足場ユニット161は張出方向に直交する方向に移動可能なように吊り下げられるため、鉄筋先組工法における構造物の拡幅及び縮幅により対応し易くなる。
【0049】
また、本実施形態によれば、足場移動機構164は、水平方向であって張出方向に直交する方向に延在するトロリーレール162と、トロリーレール162に沿って摺動可能であり、足場ユニット161を吊り下げるトロリー163とを有するため、簡易な構成により、足場ユニット161を水平方向に移動可能なように吊り下げることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、足場固定機構169は、トロリーレール162に取付けられた上部受金具165と、足場ユニット161に取付けられた下部受金具166と、上部受金具165と下部受金具166とを着脱自在に連結するワイヤ167と、トロリーレール162と足場ユニット161との間に配置され、トロリーレール162と足場ユニット161とが離れる方向の反力を加えるジャッキ168とを有し、ワイヤ167により上部受金具165と下部受金具166とが連結された状態で、ジャッキ168がトロリーレール162と足場ユニット161とが離れる方向の反力を加えることにより、足場ユニット161が移動しないように固定されるため、簡易な構成により、足場ユニット161を任意の位置で水平方向に移動しないように固定することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、本実施形態では、施工される構造物の幅が拡幅していく場合について中心に説明したが、本発明は施工される構造物の幅が縮幅する場合にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
15…底版上筋、16…橋軸方向鉄筋、17…底版下筋、18…橋軸方向鉄筋、19…ウェブ鉄筋、20…橋軸方向鉄筋、22…橋軸方向鉄筋、100…橋梁、101…橋脚、103…柱頭部、104…橋桁、104a…橋桁既設部分、105…箱桁、105a…底版、105b…ウェブ、107…床版、121…移動作業車、123…レール、130…ワーゲンフレーム、131…メインフレーム、132…延長梁、133…アンカージャッキ、134…横架材、135…メインジャッキ、137…上梁、137a,137b…横架材、137c…連結梁、139…型枠支持部、141…鉄筋先組部、142…吊材、143…型枠受梁、144…後方作業床、145…吊材、147…前方作業床、150…鉄筋、151…トロリー装置、153…トロリーレール、155…トロリー、157…スライド機構、159…吊材、161…足場ユニット、161s…ステージ、162…トロリーレール、163…トロリー、163f…玉掛金具、163w…ワイヤ、164…足場移動機構、165…上部受金具、166…下部受金具、167…ワイヤ、168…ジャッキ、169…足場固定機構、170…鉄筋組立台、X…橋軸方向、Y…橋軸直角方向、Z…垂直方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7