特許第6752170号(P6752170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752170
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】火災感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/107 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   G08B17/107 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-57032(P2017-57032)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-160103(P2018-160103A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智広
【審査官】 田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−197275(JP,A)
【文献】 特開2017−107534(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/033499(WO,A1)
【文献】 特開2015−069484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00−17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筐体と、
少なくともその一部が該開口部の内方に配置され設けられる煙導入部と、
火災時に点灯する確認灯と、を備え、
該煙導入部は、防虫網を有し、
該確認灯は、リング状の導光部材と、発光素子と、を有しており、
該導光部材は、該筐体と該煙導入部との間であって、該防虫網の外周側且つ下端側に設けられていることを特徴とする火災感知器。
【請求項2】
前記導光部材の上面には、前記発光素子からの光を反射する複数の反射面が形成されており、該反射面の密度は、該光の光路方向に沿って、該光の入射部から離れるに従って濃くなっていくことを特徴とする請求項1に記載の火災感知器。
【請求項3】
前記導光部材は、対向する位置に形成された複数の膨出部と、発光素子収容部と、を有しており、
前記反射面は、該膨出部の上面のみに形成され
前記発光素子は、該発光素子収容部に収容されていることを特徴とする請求項2に記載の火災感知器。
【請求項4】
前記発光素子は、前記導光部材の側面より光を入射するものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の火災感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器に関し、より詳細には確認灯を備えた火災感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災によって発生する煙を検知し、周囲に火災の発生を知らせるための火災感知器(以下、煙感知器ともいう)がある(特許文献1を参照)。この様な煙感知器は、開口部を有する筐体と、筐体内に設けられた電子基板及び煙導入部とを備えている。煙導入部は、外光を遮光すると共に煙を煙導入部内に煙を取り入れるためのラビリンスと、この煙を検知するための発光素子及び受光素子を備える検煙部とを有している。煙導入部は、発光素子及び受光素子が電子基板に実装される関係上、電子基板上に取り付けられている。
【0003】
煙導入部は、火災で発生した煙を取り込むために、少なくともラビリンスが設けられた部分が、筐体の開口部内方に配置される様にして筐体内に取付けられる。そのため、煙導入部には、虫や塵埃等の煙以外のものが煙導入部内に侵入することを防止する防虫網を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−8083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
煙感知器の防塵性という観点から、筐体の開口部の内径は、煙導入部、特にラビリンス、の外径と一致していることが好ましいが、実際には、部品公差や組立公差があるために、開口部の内径は、煙導入部の外径に対して、僅かに余裕が生じる様に設計されている。
【0006】
そのため、製品によっては、筐体と煙導入部との間に不可避な隙間が生じてしまうこととなる。煙導入部は、電子基板に取付けられているため、電子基板は、この隙間及び筐体の開口部を介して、外部と通じてしまう。従って、この隙間を介して開口部から塵埃が筐体の内部、特に、電子基板のある部分、に入り込む可能性があり、煙感知器の防塵性を低下させる要因になっていた。
【0007】
そこで、本発明は、より防塵性を向上させた火災感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、開口部を有する筐体と、少なくともその一部が該開口部の内方に配置され設けられる煙導入部と、火災時に点灯する確認灯と、を備え、該煙導入部は、防虫網を有し、該確認灯は、リング状の導光部材と、発光素子と、を有しており、該導光部材は、該筐体と該煙導入部との間であって、該防虫網の外周側且つ下端側に設けられていることを特徴とする火災感知器である。
【0009】
又、本発明は、前記導光部材の上面に、前記発光素子からの光を反射する複数の反射面を形成し、該反射面の密度を、該光の光路に沿って、該光の入射部から離れるに従って濃くなっていく様にすることも可能である。又、本発明は、前記導光部材を、対向する位置に形成された複数の膨出部と、発光素子収容部と、を有するものとし、前記反射面を、該膨出部の上面のみに形成され、前記発光素子が該発光素子収容部に収容されている様にすることも可能である。又、本発明は、前記発光素子を、前記導光部材の側面より光を入射するものとすることが可能である。
【0010】
尚、本発明において、火災感知器の上下方向は、火災感知器を天井や壁等に取付ける際の取付面を下にして定めるものとする。又、本発明において、リング状には、Cリングや分割リング等の部分的に欠けているリングや不連続なリングも含むものとし、また円環状だけでなく四角形等の多角形状も含むものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、リング状の導光部材を、筐体と煙導入部との間であって、防虫網の外周側且つ下端側に設けることによって、筐体と煙導入部との間に隙間があったとしても、該隙間を導光部材によって塞ぐことが可能であるので、筐体の開口部から塵埃が筐体の内部、特に、電子基板のある部分に入り込むことを防止することができる。従って、本発明は、より防塵性を向上させた火災感知器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態を示す正面図である。
図3】本発明の第1実施形態を示す分解図である。
図4図2のIV−IV断面図である。
図5図2のV−V断面図である。
図6】本発明の第1実施形態おける導光部材を示す図であり、(A)が平面図であり、(B)が正面図である。
図7】本発明の第2実施形態を示す図であり、図1のVI−VI断面図に相当する図である。
図8】本発明の第2実施形態おける導光部材を示す図であり、(A)が平面図であり、(B)が正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の図1乃至図6に基づき説明する。火災感知器1は、筐体2、煙導入部3、確認灯4及び電子基板5を備えている。筐体2は、外装20及び取付板21を有している。外装20は、外装本体22と開口部23とを有している。尚、確認灯4は、火災時に、火災感知器1が火災信号を出力したとき、または図示しない火災受信機から火災信号を受信したときに点灯/点滅するものである。
【0014】
本実施形態において、外装本体22は、その中央部に穴22aの開いた略円盤状に形成されており、天板23a及び穴22aの周囲に略等間隔に配置された複数の柱23bを有する開口部23が外装本体22から突出する様に設けられている。尚、開口部23の位置や柱23bの本数及び間隔等は、煙を煙導入部3に流入させる際に支障の生じない位置であれば、適宜変更可能である。
【0015】
外装本体22には、対向する位置に設けられた1対の膨出部収容部22bを有しており、膨出部収容部22bは、穴22aと連続している。取付板21の下面21aは、天井や壁等に火災感知器1を取り付けるための取付面となっており、取付金具24が取付けられている。
【0016】
煙導入部3は、その周縁に配置されたラビリンス30及びラビリンス30の内方に設けられた検煙部31を有しており、後述する様に、検煙部発光素子31a及び受光素子31bが、電子基板5上に実装されている関係で、電子基板5の上面5aに取付けられる。尚、検煙部31は、ラビリンス30の内方の同一平面上に設けるのではなく、ラビリンス30の下方に設けるいわゆる二段式とすることも可能である。
【0017】
又、煙導入部3は、少なくともその一部、特に、ラビリンス30が設けられた部分が開口部23の内方に配置される様に筐体2内に取付けられている。開口部23及び穴22aの内径は、部品公差や組立公差によって生じる寸法差を吸収するために、設計上、煙導入部3(ラビリンス30)の外径に対して僅かに余裕を持たせている。それにより、煙導入部3と開口部23及び穴22aとの間には、隙間6が生じる場合がある。
【0018】
ラビリンス30は、複数の壁体30aにより構成されており、外光を遮光し、煙導入部3内を暗箱とするために設けられている。壁体30aの間は、煙を検煙部31内に流入させるための流路30bとなっている。ラビリンス30の外周には、虫や塵埃等の煙以外の異物が煙導入部3内に入ることを防止するための防虫網32が取付けられている。
【0019】
検煙部31は、発光素子31a(以下、発光素子41と区別するために検煙部発光素子31aという)、受光素子31b及び遮光柱31cを有している。検煙部31は、ラビリンス30の壁体30a間に形成された流路30bを通って、検煙部31内に流入した煙によって散乱した検煙部発光素子31aの光を受光素子31bによって受光することで煙を検知するものであり、検煙部発光素子31aの光が直接、受光素子31bに入射しない様に遮光柱31cが設けられている。検煙部発光素子31a及び受光素子31bは、電子基板5に実装されている。
【0020】
確認灯4は、リング状の導光部材としての略円環状の導光部材401及び発光素子41(以下、発光素子31aと区別するために確認灯発光素子41という)を有している。導光部材401は、全周に亘って透光性部材からできており、対向する位置に設けられた1対の膨出部40a(以下、膨出部40aの内、一方を膨出部40a1と、他方を膨出部40a2と表記する)が形成されていると共に発光素子収容部40bが形成されている。
【0021】
又、導光部材401は、防虫網32の外周32a側且つ下端32b側に位置する様に煙導入部3に嵌められており、外装20と煙導入部3との間に位置している。導光部材401の煙導入部3への固定方法は、例えば圧入や嵌合等があるが、固定できればどのような手段でも良い。
【0022】
発光素子収容部40bは、導光部材401の一部を略角柱状に切り欠く形で設けられている。膨出部40aは、導光部材401の形状に沿ってカーブする略角錐台に形成されており、膨出部収容部22bに収容される。又、膨出部40aの上面40cには、複数の反射面40dが設けられている。反射面40dは、確認灯発光素子41からの光を反射して発光する面である。
【0023】
反射面40dは、確認灯発光素子41からの光の光路方向Aに沿って、その密度が濃くなる様に設けられることが好適である。即ち、本実施形態においては、膨出部40a1の上面40cよりも膨出部40a2の上面40cの方がより密度が濃い反射面40dが形成されていることとなる。この様にすることで、光の減衰による膨出部40a1と膨出部40a2との輝度の差を低減することが可能となる。尚、反射面40dは、例えば、シルク印刷によって上面40cに印刷されることで形成される。
【0024】
確認灯発光素子41は、例えばサイドビュータイプのLEDからなり、電子基板5に実装されると共に発光素子収容部40b内に収容され、検煙部31が煙を感知した際に、発光素子収容部40bの部分に形成された側面40eより導光部材401内に入射する様になっている。なお、確認灯発光素子41は砲弾型LEDでも良く、その場合、砲弾型LEDは側面40eの方向に向けて配置すれば良い。
【0025】
又、図6に示す光路方向Aが示すように、側面40eより導光部材401内に入射した光は、膨出部40a1を通り膨出部40a1の上面40cを光らせ、続いて膨出部40a2を通り膨出部40a2の上面40cを光らせるものであり、導光部材401内に入射した光は、側面40eから離れるほど弱まっていく。そのため、発光素子収容部40bは、1対の膨出部40aのうち一方(本実施の形態では膨出部40a1)の近くに配置され、他方(本実施の形態では膨出部40a2)からは離れて配置される。
【0026】
これにより、発光素子収容部40bの近くに発光させたい膨出部40aの一つ(本実施の形態では膨出部40a1)が位置するので、導光部材401内に入射した光は弱まる前に膨出部40aを発光させることができる。又、膨張部40a2では、膨張部40a1より光が弱まっているが、膨張部40a1の反射面40dが膨張部40a2の反射面40dより粗に形成されているので膨張部40a1と膨張部40a2が同等の輝度で光っているように見える。
【0027】
ここで、導光部材401は、電子基板5と隙間6との間を塞ぐように筐体2内に配置されていることとなる。この導光部材401によって、隙間6が存在していたとしても筐体2内に、少なくとも1.0mm以上の塵埃等の異物が侵入することを防止することができ、火災感知器1は、電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)のIP4Xに相当する防塵性を備えることが可能となる。
【0028】
そして、膨出部40aの上面40cに反射面40dがあることによって、光が、膨出部40aで拡散し、強く膨出部40aを光らせることが可能となり、膨出部40aは、対向する位置に1対として設けられているので、略360°の視認性をより向上することが可能となる。
【0029】
以上、本発明を上記実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0030】
(1)図7及び図8に示す本発明の第2実施形態(導光部材の発光素子収容部40bの形状以外は基本的に第1実施形態と同様である)の様にリング状の導光部材として略C状の導光部材402を採用することが可能である。この場合、略C状の開口部に当たる部分に発光素子収容部40bが設けられる。導光部材402は、略C状であるため撓みやすく、第1実施形態の導光部材401と比較して組立性に優れている。又、複数の確認灯発光素子41を設けることが可能な場合は、リング状の導光部材を複数に分割することも可能である。
【0031】
リング状の導光部材として、略C状の導光部材402や分割リング状の導光部材(図示せず)等の部分的に欠けているものを採用する場合は、当該欠けた部分が開口部23の柱23bの裏側に位置する様に導光部材は取り付けられる。この様に取り付けることで、導光部材に当該欠けた部分があることで火災感知器1の防塵性が低下することを防止することができる。
【0032】
(2)膨出部40aは、輝度が高い確認灯発光素子41を用いた場合には、より側面40eから遠い場所に膨張部40aを設けても同等の輝度を得ることが可能となり、そうすることで3箇所以上の膨出部40aを設けることが可能となる。又、略360°の視認性の確保が必要でない場合は、1箇所のみに設けてもよい。
【0033】
(3)導光部材401,402を、特に膨出部40a等の特定の部分の輝度を上げる必要がない場合は、反射面40dを導光部材401,402の上面40cの略全周に亘って設けることも可能である。この様にすることで、導光部材401,402を全周に亘って光らすことが可能となる。特に反射面40dの密度を入射部から離れるに従って濃くしていくことで、導光部材401,402を全周に亘って略均一の輝度で光らすことができる。
【0034】
又、導光部材401,402に膨出部40aを形成せずにその上面40cを平坦なものとすることも可能である。この場合、導光部材401,402は、検煙部31が煙を感知した際に、リング状に光ることとなるため、確認灯発光素子41を少なくとも1個設ければ、略360°の視認性を確保することが可能となる。
【0035】
(4)導光部材401,402は、全周に亘って透光性部材で形成されている必要はなく、光らせる必要ない部分を不透光部材で形成することも可能である。
【0036】
(5)反射面40dは、シルク印刷でなく、他の手法を用いて膨出部40aの上面40cに形成してもよい。例えば、粗面加工によって形成することができる。又、その形状や密度等は適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 火災感知器 2 筐体 20 外装
21 取付板 21a 下面 22 外装本体
22a 穴 22b 膨出部収容部 23 開口部
23a 天板 23b 柱 24 取付金具
3 煙導入部 30 ラビリンス 30a 壁体
30b 流路 31 検煙部 31a 検煙部発光素子
31b 受光素子 31c 遮光柱 32 防虫網
32a 外周 32b 下端 4 確認灯
401 導光部材 402 導光部材 40a 膨出部
40b 発光素子収容部 40c 上面 40d 反射面
40e 側面 41 確認灯発光素子 5 電子基板
5a 上面 6 隙間 A 光路方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8