特許第6752182号(P6752182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752182
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】リッドの付勢構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   B60K15/05 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-161817(P2017-161817)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-38369(P2019-38369A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077241
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 稔
(72)【発明者】
【氏名】平馬 拓
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−121985(JP,A)
【文献】 特開2004−9809(JP,A)
【文献】 特開2006−264513(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0806317(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/05
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に備えられてエネルギー補給口を形成する補給口形成体に対して回動可能に組み合わされて閉じ位置において前記補給口を塞ぐリッドの付勢構造であって、
バネ一端を前記補給口形成体に連係させ、バネ他端を前記リッドに連係させると共に、前記リッドの前記閉じ位置と最大開放位置との間の中間位置において最も弾性変形されるように備えられて前記リッドを付勢するバネ体を有しており、
前記バネ体は前記バネ他端とリッドの回動中心との間の距離を可変するように前記リッドに連係されており、
前記距離が前記リッドが前記閉じ位置と前記中間位置とにあるときは一定で、前記中間位置から前記最大開放位置に向かう過程で増加して前記最大開放位置にあるときに最大になるようにしてなる、リッドの付勢構造。
【請求項2】
前記リッドに形成した長穴に前記バネ体の前記バネ他端を納めて前記バネ体と前記リッドとを連係させてなる、請求項1に記載のリッドの付勢構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のエネルギー補給口を開放可能に塞ぐリッドの付勢構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の給油口を形成するアダプタに開閉自在に枢支されたフュエルフィラーリッドを、弾発部材により、開位置及び閉位置間の中立位置を挟んで開方向及び閉方向に付勢するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
かかる構造においては、開位置においては、リッドに何らかの予期しない外力が作用されただけで、リッドが閉じ位置に簡単に移動してしまわないように、リッドに対してできるだけ大きな開き方向に向けたトルクを作用させることが望まれる。前記弾発部材の付勢力を大きくすれば開位置におけるリッドの保持状態を強固なものにできるが、単純にこのようにした場合、リッドの閉じ操作が行い難くなると共に、中立位置を超えた後はリッドを急閉させてしまう。これが生じると衝撃音が生じるなど、自動車の高級感などを損なうことともなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3959074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のリッドに対するトルクを、最大開放位置において大きく確保しながら、リッドの閉じ操作時にはこのトルクを低減させてリッドを急閉させてしまう事態をできるだけ生じさせないようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、リッドの付勢構造を、自動車に備えられてエネルギー補給口を形成する補給口形成体に対して回動可能に組み合わされて閉じ位置において前記補給口を塞ぐリッドの付勢構造であって、
バネ一端を前記補給口形成体に連係させ、バネ他端を前記リッドに連係させると共に、前記リッドの前記閉じ位置と最大開放位置との間の中間位置において最も弾性変形されるように備えられて前記リッドを付勢するバネ体を有しており、
前記バネ体は前記バネ他端とリッドの回動中心との間の距離を可変するように前記リッドに連係されており、
前記距離が前記リッドが前記閉じ位置と前記中間位置とにあるときは一定で、前記中間位置から前記最大開放位置に向かう過程で増加して前記最大開放位置にあるときに最大になるようにしてなる、ものとした。
【0007】
かかる構成によれば、前記距離を最大開放位置で最大とさせることから、最大開放位置においてリッドに作用されるトルクを最大化させて、最大開放位置においては、リッドに何らかの予期しない外力が作用されただけで、リッドが閉じ位置に簡単に移動してしまわないようにすることができる。
【0008】
一方、最大開放位置にあるリッドを閉じ操作することにより前記距離を減少させることができ、これによって、前記中間位置から閉じ位置までの間でのバネ体のトルクを低減させることができることから、リッドの閉じ操作時には、リッドを急閉が生じないようにすることができる。
【0009】
前記リッドに形成した長穴に前記バネ体の前記バネ他端を納めて前記バネ体と前記リッドとを連係させることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、この種のリッドに対するトルクを、最大開放位置において大きく確保しながら、リッドの閉じ操作時にはこのトルクを低減させてリッドを急閉させてしまう事態をできるだけ生じさせないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明の一実施の形態の利用状態を示した斜視図であり、リッドは閉じ位置にある。
図2図2は、この発明の一実施の形態の利用状態を示した斜視図であり、リッドは最大開放位置にある。
図3図3は、この発明の一実施の形態の斜視図であり、リッドは最大開放位置にある。
図4図4は、この発明の一実施の形態の要部破断側面図であり、リッドは最大開放位置にある。
図5図5は、この発明の一実施の形態の要部破断側面図であり、リッドは閉じ位置にある。
図6図6は、図4の状態の要部拡大構成図である。
図7図7は、図5の状態の要部拡大構成図である。
図8図8は、この発明の一実施の形態の要部斜視図である。
図9図9は、バネ体の斜視図である。
図10図10は、リッドが最大開放位置にあるときの要部側面構成図である。
図11図11は、リッドが中間位置にあるときの要部側面構成図である。
図12図12は、リッドが閉じ位置にあるときの要部側面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図12に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態に係るリッドの付勢構造は、自動車に備えられてエネルギー補給口1を形成する補給口形成体4に対して回動可能に組み合わされて閉じ位置において前記エネルギー補給口1を塞ぐリッド5に対するトルクを、最大開放位置において大きく確保しながら、リッド5の閉じ操作時にはこのトルクを低減させてリッド5を急閉させてしまう事態をできるだけ生じさせないようにするものである。
【0013】
最大開放位置においては、リッド5に何らかの予期しない外力が作用されただけで、リッド5が閉じ位置に簡単に移動してしまわないように、リッド5に対してできるだけ大きな開き方向に向けたトルクを作用させることが望まれる(第一の要請)。その反面、リッド5の閉じ操作時には、リッド5の急閉は好ましくなく(第二の要請)、これが生じると衝撃音が生じるなど、自動車の高級感などを損なうことともなる。この実施の形態に係るリッド5の付勢構造は、単一のバネ体16をもって、リッド5を閉じ位置においては閉じ方向に、最大開放位置においては開き方向に、それぞれ、付勢するようにしながら、最大開放位置においてはリッド5に対するトルクをできるだけ大きく確保すると共に、リッド5の閉じ操作時はトルクが低減されるようにして、前記第一及び第二の要請を共に充足させるようにするものである。
【0014】
前記リッド5は、自動車のエネルギー補給口1(自動車の給油口、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッドカー)の給電口、FCV(燃料電池車)の水素充填口)を塞ぐものである。
【0015】
前記補給口形成体4は、自動車のボディに取り付けられて、前記エネルギー補給口1を形成するものである。
【0016】
図示の例では、前記補給口形成体4は、底部4aと、これを囲む四つの側壁4bとを持ち、底部4aにフューエルチューブの上端部への給油ガンのノズルの導入口(図示は省略する。)を位置させ、この底部4aと反対の側を開放させ、開放口縁部を実質的に四角形とした開放部4cをボディパネル2の開口部2aに連通させるようにして自動車のボディに取り付けられるようになっている。図2中、符号3で示すのは、前記導入口を塞ぐキャップである。
【0017】
前記リッド5は、閉じ位置において、前記開放部4cを塞ぎ、そのリッド主体6の外面6aを前記ボディパネル2の外面と連続させるようになっている(図1)。
【0018】
図示の例では、前記リッド5は、前記開放部4cの開放口縁部に倣った外郭形状を備えた四角形の板状をなすリッド主体6と、このリッド主体6と前記補給口形成体4とを連係させるアーム7とを備えている。
【0019】
アーム7は、リッド主体6の二カ所の縦向きの辺部の一方の側方にアーム一端7aを位置させると共に、アーム他端7bを前記二カ所の縦向きの辺部の一方側においてリッド主体6の内面に一体化させ、前記アーム一端7aと前記アーム他端7bとの間の中間部7cを閉じ位置にリッド5がある状態(図5)において補給口形成体4の底部4a側を湾曲外側とするように湾曲させた形態となっている。アーム7のアーム一端7a及びアーム他端7bは、リッド5が閉じ位置にある状態において、共に補給口形成体4の開放部4c側に位置されるようになっている(図5)。
【0020】
前記補給口形成体4における二カ所の縦向きの側壁4bの一方の内側に、前記アーム7のアーム一端7aの支持部8が形成されている。
【0021】
支持部8は、前記二カ所の縦向きの側壁4bの一方に対する固定部9と、閉じ位置にリッド5がある状態(図5)において、リッド主体6の二カ所の縦向きの辺部の一方の近傍に位置される先端部10と、この先端部10側に形成された軸受け部11と、前記固定部9側に形成されたバネ受け部12とを備えている。
【0022】
軸受け部11は、軸中心線を縦向きに配した軸体15によって前記アーム7のアーム一端7aを支持部8、つまり、補給口形成体4に対し、回動可能に組み合わせるようになっている。
【0023】
バネ受け部12は、支持部8における軸受け部11と固定部9との間に形成された、補給口形成体4の底部4aに向いた第一の壁12aと、この第一の壁12aに対して前記底部4a側に位置して補給口形成体4の開放部4cに向いた第二の壁12bとによって形成されている。
【0024】
第一の壁12aと第二の壁12bとは、両者間の距離を、軸受け部11側から固定部9側に近づくにつれて漸減させるように形成されており、第一の壁12aと第二の壁12bとは、固定部9側において平面視V字状をなすように交わっている。この第一の壁12aと第二の壁12bの交点箇所により前記バネ受け部12が形成されている。
【0025】
図示の例では、支持部8の内部は、横方向に沿って形成された二カ所の隔壁13、13により上下方向に三つに区分されている。支持部8の内部における二カ所の隔壁13、13間の中間室14の上下寸法が、アーム7の上下寸法と実質的に等しく、アーム7のアーム一端7aは中間室14内に納められて支持部8に前記軸体15によって回動可能に組み合わされている。この中間室14内に前記第一の壁12a、第二の壁12b、バネ受け部12が形成され、さらに、前記バネ体16が納められている。
【0026】
前記バネ体16は、バネ一端16aを前記補給口形成体4に連係させ、バネ他端16bを前記リッド5に連係させると共に、前記リッド5の前記閉じ位置と最大開放位置との間の中間位置において最も弾性変形されるように備えられて前記リッド5を付勢するようになっている。
【0027】
図示の例では、バネ体16は、線材をS字状に成形させてなる(図9)。バネ体16は、バネ一端16a及びバネ他端16bを共に前記軸体15の軸中心線と実質的に平行をなすようにした状態で、アーム7のアーム一端7aと支持部8との間に介装されている(図8)。
【0028】
図示の例では、バネ体16のバネ一端16aは、前記バネ受け部12に、前記軸受け部11側から押し当てられるようにして納まりこのバネ受け部12に位置づけられている。
【0029】
また、バネ体16のバネ他端16bは、アーム一端7aに形成された前記軸体15の挿通穴15aの側方に形成された長穴7dに納められている。図示の例では、これにより、前記バネ体16と前記リッド5とを連係させている。
【0030】
図示の例では、アーム一端7aにおける長穴7dの形成箇所は、上下に分割されており、上側部分7eと下側部分7fとにそれぞれ長穴7dが形成されている。バネ体16のバネ他端16bは、上側部分7eの長穴7dを通じて下側部分7fの長穴7dに入り込んだ態様となっている(図8)。
【0031】
また、前記バネ体16は、前記バネ他端16bとリッド5の回動中心、つまり、前記軸体15との間の距離を可変するように前記リッド5に連係されている。
【0032】
図示の例では、前記長穴7dの幅はバネ体16のバネ他端16bの太さと実質的に等しいが、長穴7dの長さはバネ他端16bの太さより大きくなっている。また、長穴7dの一端7d’は前記挿通穴15aを中心とした仮想の第一円r1の円弧上に位置するが、長穴7dの他端7d”は前記挿通穴15aを中心とした前記仮想の第一円r1よりも直径を大きくする仮想の第二円r2の円弧上に位置するようになっている(図12)。
【0033】
そして、前記距離が前記リッド5が前記閉じ位置と前記中間位置とにあるときは一定で、前記中間位置から前記最大開放位置に向かう過程で増加して前記最大開放位置にあるときに最大になるようにしている。
【0034】
リッド5が中間位置にあるとき、挿通穴15aと、長穴7dの一端7d’と、バネ受け部12とは挿通穴15aとバネ受け部12との間に長穴7dの一端7d’を位置させるようにして、挿通穴15aとバネ受け部12とを結ぶ仮想の直線x上に位置し、バネ体16とのバネ一端16aとバネ他端16bとの間の距離yが最も小さくなるようになっている(図11)。したがって、最も弾性変形されているバネ体16はバネ他端16bを長穴7dの一端7d’に押しつけている。
【0035】
リッド5が閉じ位置にあるとき、前記仮想の直線xを挟んだ図12における右側に長穴7dは位置するが、このときは長穴7dの一端7d’とバネ受け部12の距離は長穴7dの他端7d”とバネ受け部12の距離よりも大きくなるようにしてある(図12)。したがって、このときもバネ体16はバネ他端16bを長穴7dの一端7d’に押しつけている。閉じ位置にあるリッド5が中間位置に移動されるに従って長穴7dの一端7d’とバネ受け部12との距離は狭まるようになっていることから、リッド5が閉じ位置にあるときはバネ体16によって図12に符号f1で示す閉じる向きの力がリッド5に作用されることとなる。
【0036】
リッド5が最大開放位置にあるとき、前記仮想の直線を挟んだ図10における左側に長穴7dは位置するが、このときは長穴7dの一端7d’と他端とは共にバネ受け部12を中心とした仮想の円r3の円弧上に実質的に位置されるようにしてある(図10)。最大開放位置にあるリッド5が中間位置に移動されるに従って長穴7dとバネ受け部12との距離は狭まるようになっていることから、リッド5が閉じ最大開放位置にあるときはバネ体16によって図10に符号f2で示す開く向きの力がリッド5に作用されることとなる。したがって、中間位置を超えて最大開放位置に向けてリッド5を開き操作すると、前記開く向きの力によりバネ体16のバネ他端16bは長穴7dの一端7d’から他端側に移動し、最大開放位置においては前記開く向きの力によりバネ体16はバネ他端16bを長穴7dの他端7d”に押しつけるようになっている。
【0037】
長穴7dの他端7d”と挿通穴15aとの距離は、長穴7dの一端7d’と挿通穴15aとの距離より大きい。したがって、最大開放位置においてはリッド5に作用されるトルクは最大化され、前記第一の要請が満足される。
【0038】
最大開放位置にあるリッド5を閉じ操作すると長穴7dは長穴7dの他端7d”とバネ受け部12の距離を漸減させるように向きを変え、リッド5が中間位置に至ると、長穴7dの一端7d’とバネ受け部12との距離が長穴7dの他端7d”とバネ受け部12との距離よりも大きくなるようになっている。これにより、リッド5が中間位置に至るとバネ体16のバネ他端16bは長穴7dの一端7d’に戻り、バネ他端16bと挿通穴15aとの距離は小さくなる。したがって、中間位置から閉じ位置までの間ではバネ体16のトルクは低減され前記第二の要請が満たされる。
【0039】
なお、図示の例では、リッド5が閉じ位置にある状態において、図示しないロック手段によってリッド5がロックされるようになっている。このロック手段のロックを解くと、図4において符号17で示される追加バネ体の付勢力により、リッド5はその自由端側をやや浮かせるようになっている。閉じ位置にあるリッド5の開き操作は前記のようにやや浮き上がったリッド5の自由端に指をかけるなどして行われることとなる。
【符号の説明】
【0040】
4 補給口形成体
5 リッド
16 バネ体
16a バネ一端
16b バネ他端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12