【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの側面図である。
図1に示すように、油圧ショベル100は、走行体1と、この走行体1上に旋回装置8を介して旋回可能に搭載された旋回体2と、この旋回体2の前側に上下方向に回動可能に連結されたフロント作業機110とを備えている。
【0016】
旋回体2は、基礎下部構造をなす旋回フレーム2aを有する。旋回フレーム2aの前側には、フロント作業機110が上下方向に回動可能に連結されている。旋回フレーム2aの後側には、フロント作業機110との重量バランスを取るためのカウンタウェイト3が取り付けられている。旋回フレーム2aの左側前部には、運転室4が設けられている。運転室4内には、フロント作業機110および旋回体2を操作するための操作装置としての左右の操作レバー装置15L,15R(
図2に示す)等が配置されている。旋回フレーム2a上には、原動機としてのエンジン(図示せず)、エンジンによって駆動される1つまたは複数の油圧ポンプからなるポンプ装置9、走行体1に対して旋回体2(旋回フレーム2a)を旋回駆動する旋回モータ8a、ポンプ装置9から旋回モータ8aおよび後述するブームシリンダ5a、アームシリンダ6a、バケットシリンダ7aを含む複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する複数の方向制御弁からなるコントロールバルブユニット10等が搭載されている。
【0017】
フロント作業機110は、基端部が旋回フレーム2aの右側前部に上下方向に回動可能に連結されたブーム5と、このブーム5の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結され、ブーム5によって昇降されるアーム6と、このアーム6の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結され、ブーム5またはアーム6によって昇降される作業具としてのバケット7と、ブーム5を駆動するブームシリンダ5aと、アーム6を駆動するアームシリンダ6aと、バケット7を駆動するバケットシリンダ7aとを備えている。バケット7には、バケット位置測定システム11が備えられている。なお、
図1では、バケット位置測定システム11を直接バケット爪先位置を測るようなものとして図示しているが、旋回体2、ブーム5、アーム6およびバケット7のそれぞれの位置関係からバケット位置を演算するようなものでもよい。
【0018】
図2は、油圧ショベル100に搭載される油圧制御システムの概略構成図である。
図2に示すように、油圧制御システム200は、制御装置20と、予め設定された設計面情報を制御装置20に入力するための設計面入力装置21と、制御装置20から出力される情報を表示するための表示装置22と、油圧ショベル100の動作を制御装置20に指示する左右の操作レバー装置15L,15Rと、バケット位置測定システム11と、圧力センサ24と、油圧装置23とを備えている。
【0019】
左右の操作レバー装置15L,15Rは、操縦者によるレバー操作に応じた操作信号を出力する。圧力センサ24は、ブームシリンダ5aの負荷圧、すなわち、ポンプ装置9(
図1に示す)からブームシリンダ5aのボトム側油室またはロッド側油室に供給される作動油の圧力(ブーム圧力)を圧力信号に変換して出力する。
【0020】
制御装置20は、左右の操作レバー装置15L,15Rからの操作信号と、設計面入力装置21からの設計面情報と、バケット位置測定システム11からのバケット爪先位置情報と、圧力センサ24からの圧力信号(ブーム圧力情報)とに応じて、油圧装置23に動作指令を出力する。
【0021】
油圧装置23は、制御装置20からの動作指令に応じて、ブームシリンダ5a、アームシリンダ6a、バケットシリンダ7a等に圧油を供給し、ブーム5、アーム6、バケット7等を駆動する。
【0022】
図3は、制御装置20の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御装置20は、操縦者指令部30と、半自動制御部31と、転圧制御部32とを備えている。
【0023】
操縦者指令部30は、左右の操作レバー装置15L,15Rからの操作信号(左右のレバー操作量)に基づいてアクチュエータの目標動作速度を決定し、その目標動作速度に応じた動作指令を出力する。半自動制御部31は、バケット7による掘り過ぎを防止するため、設計面とバケット爪先位置との偏差が小さいほどアクチュエータの目標動作速度が制限されるように、操縦者指令部30から出力された動作指令を補正する。転圧制御部32は、設計面情報とバケット爪先位置情報とブーム圧力情報とに基づいて、半自動制御部31から出力された動作指令を補正する。このように構成された制御装置20は、設計面通りに地面を掘削する作業で操縦者の操作を補助する半自動制御を実行すると共に、設計面通りに地面を押し固める転圧作業で操縦者の操作を補助する転圧制御を実行することができる。
【0024】
図4は、転圧制御部32の機能ブロック図である。
図4に示すように、転圧制御部32は、加減演算器50と、転圧距離判定部51と、転圧判定部52と、転圧状態判定部53と、アクチュエータ制御補正部54と、制御補正保持判定部55と、ブーム動作指令補正部56とを備えている。
【0025】
加減演算器50は、設計面とバケット爪先位置との偏差を算出し、転圧距離判定部51に出力する。
【0026】
転圧距離判定部51は、加減演算器50からの偏差に基づいて転圧距離を判定し、その判定結果を距離情報として転圧状態判定部53に出力する。具体的には、加減演算器50から入力された偏差が所定の高さ閾値よりも小さい場合は距離情報として1を出力し、そうでなければ距離情報として0を出力する。
【0027】
転圧判定部52は、ブーム圧力Pbmとブーム動作指令Spbmとに基づいて、バケット底面が地面に押し付けられているか否かの判定(バケット押付判定)を行い、その判定結果を転圧情報として転圧状態判定部53に出力する。具体的には、ブーム動作指令Spbmが正(ブーム上げ動作)の場合でブーム圧力Pbmが圧力閾値Pbmset1よりも低いとき(バケット7を介して作用する地面の反力によってブーム上げ負荷が掘削時よりも低下したとき)は、バケット底面が地面に押し付けられていると判定し、転圧情報として1を出力する。一方、ブーム動作指令Spbmが正(ブーム上げ動作)の場合でブーム圧力Pbmが圧力閾値Pbmset1よりも高いときは、バケット底面が地面に押し付けられていないと判定し、転圧情報として0を出力する。また、ブーム動作指令が負(ブーム下げ動作)の場合でブーム圧力Pbmが圧力閾値Pbmset2より高いとき(バケット7を介して作用する地面の反力によってブーム下げ負荷が掘削時よりも上昇したとき)は、バケット底面が地面に押し付けられていると判定し、転圧情報として1を出力する。一方、ブーム動作指令Spbmが負(ブーム下げ動作)の場合でブーム圧力Pbmが圧力閾値Pbmset2よりも低いときは、バケット底面が地面に押し付けられていないと判定し、転圧情報として0を出力する。ブーム動作指令Spbmの正負によって圧力閾値と判定の仕方を分けているのは、ブーム動作方向によってブームシリンダ5aの大径側(ボトム側油室)と小径側(ロッド側油室)のどちらに作動油が供給されるかが変わり、ブーム圧力Pbmにおける地面の反力の影響の現れ方が異なるためである。なお、本実施例に係る転圧判定部52は、バケット7が地面に押し付けられているか否かをブーム圧力Pbmのみに基づいて判定しているが、アーム圧力やバケット圧力を加味して判定してもよい。
【0028】
転圧状態判定部53は、転圧距離判定部51からの距離情報と転圧判定部52からの転圧情報とに基づいて転圧状態を判定し、その判定結果をアクチュエータ制御補正部54にする。具体的には、転圧情報が1でかつ距離情報が1の場合(バケット爪先位置が設計面に近い状態でバケット底面が地面に押し付けられている場合)は転圧できている(“a.転圧成功”)と判定し、転圧情報が1でかつ距離情報が0の場合(バケット爪先位置が設計面から離れており、かつ、バケット底面が地面に押し付けられている場合)は土砂が多いために設計面付近で転圧できない(“b.土砂多い”)と判定し、転圧情報が0でかつ距離情報が1の場合(バケット爪先位置が設計面に近く、かつ、バケットが地面に押し付けられていない場合)は土砂が不足しているために設計面付近で転圧できない(“c.土砂不足”)と判定し、転圧情報が0でかつ距離情報が0の場合(バケット爪先位置が設計面から離れており、かつ、バケット底面が地面に押し付けられていない場合)は単純にバケット7が浮き上がっている(“d.浮き上がり”)と判定する。
【0029】
アクチュエータ制御補正部54は、転圧状態判定部53からの転圧状態に基づいて制御補正内容を決定し、制御補正保持判定部55に出力する。具体的には、転圧状態が“a.転圧成功”の場合は、設計面付近で転圧できているものの地面の反力によってバケット7が押し上げられるため、バケット7を確実に地面に押し付けるためにブーム5の上昇度合いを少し弱めるまたは下降度合いを少し強める補正を行うのが望ましい。そのため、ブーム動作指令をブーム下げ側に小さく補正すること(ブーム下げ側補正小)を制御補正内容として出力する。転圧状態が“b.土砂多い”の場合は、バケット爪先位置が設計面から離れた状態でバケット底面が地面に押し付けられているため、バケット7をより強く地面に押し付けるためにブーム5の上昇度合いを弱めるまたは下降度合いを強める補正を行うのが望ましい。そのため、ブーム動作指令をブーム下げ側に大きく補正すること(ブーム下げ側補正大)を制御補正内容として出力する。転圧状態が“c.土砂不足”の場合は、地面に土砂が不足しているために転圧できないため、制御補正は行わず、半自動制御部31による掘り過ぎ防止制御を優先させる。転圧状態が“d.浮き上がり”の場合も、制御補正は行わず、半自動制御部31による掘り過ぎ防止制御を優先させる。
【0030】
制御補正保持判定部55は、アーム動作指令Spamに応じて、アクチュエータ制御補正部54からの制御補正内容を保持または更新し、ブーム動作指令補正部56に出力する。具体的には、アーム動作指令Spamが0の場合(アーム6が動作せずバケット7が地面に接触する位置が変わらないと予想される場合)は、アクチュエータ制御補正部54からの制御補正内容を保持したまま出力する。一方、アーム動作指令Spamが0でない場合(アーム6が動作してバケット7が地面に接触する位置が変わると予想される場合)は、アクチュエータ制御補正部54からの制御補正内容を更新しながら出力する。そうすることで、同じ個所をバケット7で叩いて転圧を行う土羽打ち作業において、バケット7が地面から離れたときもブーム下げ側補正が有効に保たれるため、2回目以降の土羽打ち作業が容易になる。また、ブーム5とアーム6でバケット7の位置を調整しバケット7を地面に押し付けながら移動させる床付け作業では、制御補正内容が転圧状態に応じて逐次更新されるため、地面の状況に応じた制御が可能となり転圧作業が容易になる。
【0031】
ブーム動作指令補正部56は、
図5に拡大して示すブーム動作指令変換テーブル56aを参照し、制御補正保持判定部55からの制御補正内容に応じて、半自動制御部31からのブーム動作指令を補正する。具体的には、制御補正なしの場合は、
図5中実線で示すように、ブーム動作指令と補正後ブーム動作指令とを1対1の比率で対応させる。ブーム下げ側補正小の場合は、
図5中点線で示すように、ブーム上げ側のブーム動作指令に対する補正後ブーム動作指令の比率が1よりも僅かに小さくなるように、また、ブーム下げ側のブーム動作指令に対する補正後ブーム動作指令の比率が1よりも僅かに大きくなるようにブーム動作指令を補正する。ブーム下げ側補正大の場合は、
図5中一点鎖線で示すように、ブーム上げ側のブーム動作指令に対する補正後ブーム動作指令の比率が1よりも小さくなるように、また、ブーム下げ側のブーム動作指令に対する補正後ブーム動作指令の比率が1よりも大きくなるようにブーム動作指令を補正する。そうすることで、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作をベースとしつつ、転圧状態に応じてバケット7を地面に押し付けることが可能となる。なお、半自動制御部31から入力されたアーム動作指令Spamは、転圧制御部32によって補正されることなく、そのまま油圧装置23(
図2に示す)に出力される。
【0032】
図6は、本実施例に係る転圧作業時のフロント作業機110の動作を示す図である。
【0033】
図6(1)に示すように、バケット爪先位置と設計面との偏差が高さ閾値よりも小さく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられた状態でアーム引き動作が行われているときは、転圧状態が“a.転圧成功”と判定され、ブーム動作指令がブーム下げ側に小さく補正されるため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作をベースとしつつ、アーム引き動作による床付け作業においてバケット底面を地面に押し付ける力が小さく増加する。
【0034】
図6(2)に示すように、バケット爪先位置と設計面との偏差が高さ閾値よりも大きく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられた状態でアーム引き動作が行われているときは、転圧状態が“b.土砂多い”と判定され、ブーム動作指令がブーム下げ側に大きく補正されるため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作をベースとしつつ、バケット底面を地面に押し付ける力が大きく増加する。
【0035】
図6(3)に示すように、バケット爪先位置と設計面との偏差が高さ閾値よりも小さく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられていないときは、転圧状態が“c.土砂不足”と判定され、ブーム動作指令はブーム下げ側に補正されないため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作が優先される。
【0036】
図6(4)に示すように、バケット爪先位置と設計面との偏差が高さ閾値よりも大きく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられていないときは、転圧状態が“d.浮き上がり”と判定され、ブーム動作指令はブーム下げ側に補正されないため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作が優先される。
【0037】
図6(5)に示すように、バケット爪先位置と設計面との偏差が高さ閾値よりも小さく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられた状態でアーム押し動作が行われているときは、転圧状態が“a.転圧成功”と判定され、ブーム動作指令がブーム下げ側に小さく補正されるため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作をベースとしつつ、バケット底面を地面に押し付ける力が小さく増加する。
【0038】
図6(6)に示すように、バケット爪先と地面との偏差が高さ閾値よりも大きく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられた状態でアーム押し動作が行われているときは、転圧状態が“b.土砂多い”と判定され、ブーム動作指令がブーム下げ側に大きく補正されるため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作をベースとしつつ、バケット底面を地面に押し付ける力が大きく増加する。
【0039】
以上のように構成した本実施例に係る油圧ショベル100によれば、バケット底面が地面に押し付けられていないときは、半自動制御部31によってバケット7が設計面よりも下方に侵入しないようにレバー操作量が補正される。一方、バケット先端が設計面に近い状態でバケット底面が地面に押し付けられているときは、地面に押し付ける力が小さく増加するように、半自動制御部31によって補正されたブーム動作指令がブーム下げ側に小さく補正される。また、バケット先端が設計面から離れている状態でバケット底面が地面に押し付けられているときは、地面に押し付ける力が大きく増加するように、半自動制御部31によって補正されたブーム動作指令がブーム下げ側に大きく補正される。これにより、設計面通りに地面を掘削する作業で操縦者の操作を補助すると共に、設計面通りに地面を押し固める転圧作業で操縦者の操作を補助することが可能となる。
【0040】
また、アーム6が動作せずバケット7の地面と接触する位置が変わらないと予想される場合は、バケット7が地面から離れても転圧状態に基づく制御補正内容が保持されるため、同じ個所をバケット7で叩いて転圧を行う土羽打ち作業において操縦者の操作を効率的に補助することができる。
【実施例2】
【0041】
本発明の第2の実施例に係る油圧ショベルについて、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0042】
図7は、本実施例に係る転圧制御部の機能ブロック図である。本実施例に係る転圧制御部32Aは、第1の実施例に係る転圧判定部52(
図4に示す)に代えて転圧判定部60を備え、第1の実施例に係る転圧状態判定部53(
図4に示す)に代えて転圧状態判定部61を備え、第1の実施例に係るアクチュエータ制御補正部54(
図4に示す)に代えてアクチュエータ制御補正部62を備え、かつ、バケット動作指令補正部63を更に備えている。
【0043】
転圧判定部60は、まず、第1の実施例に係る転圧判定部52(
図4に示す)と同様に、ブーム圧力Pbmとブーム動作指令Spbmの正負とアーム動作指令Spamとに基づいてバケット押付判定を行う。続いて、アーム動作指令Spamに応じてバケット押付判定の結果を変更し、その結果を転圧情報として転圧状態判定部61に出力する。具体的には、アーム動作指令Spamが0の場合はバケット押付判定の結果をそのまま転圧情報として出力し、アーム動作指令Spamが0でなくかつバケット押付判定の結果が1の場合は転圧情報として2を出力し、アーム動作指令Spamが0でなくかつバケット押付判定の結果が0の場合は転圧情報として0を出力する。
【0044】
転圧状態判定部61は、転圧距離判定部51からの距離情報と転圧判定部60からの転圧情報とに基づいて転圧状態を判定し、アクチュエータ制御補正部62に出力する。具体的には、転圧情報が1または2でかつ距離情報が1の場合(バケット爪先位置が設計面に近い状態でバケット底面が地面に押し付けられている場合)は“a.転圧成功”と判定し、転圧情報が1でかつ距離情報が0の場合(バケット爪先位置が設計面から離れている状態でバケット底面が地面に押し付けられ、かつ、アーム6の動作が予想されない場合)は土砂が多いために土羽打ちによる転圧ができていない(“b1.土砂多い”)と判定し、転圧情報が0でかつ距離情報が1の場合(バケット爪先位置が設計面に近い状態でバケット底面が地面に押し付けられていない場合)は“c.土砂不足”と判定し、転圧情報が0でかつ距離情報が0の場合(バケット爪先位置が設計面から離れている状態でバケット底面が地面に押し付けられていない場合)は“d.浮き上がり”と判定し、転圧情報が2でかつ距離情報が0の場合(バケット爪先位置が設計面から離れた状態でバケット底面が地面に押し付けられ、かつ、アーム動作が予想される場合)は“b2.土砂多い”と判定する。
【0045】
アクチュエータ制御補正部62は、転圧状態判定部61からの転圧状態に基づいて制御補正内容を決定し、制御補正保持判定部55に出力する。ここで、転圧状態が“a.転圧成功”、“c.土砂不足”または“d.浮き上がり”の場合の処理は、第1の実施例に係るアクチュエータ制御補正部54(
図4に示す)と同じであるため、説明を省略する。転圧状態が“b1.土砂多い”の場合は、バケット底面が地面に押し付けられているもののバケット7が設計面から離れているため、バケット7を大きく下げるためにブーム5の上昇度合いを弱めるまたは下降度合いを強める補正を行うのが望ましい。そのため、ブーム動作指令をブーム下げ側に大きく補正すること(ブーム下げ補正大)を制御補正内容として出力する。転圧状態が“b2.土砂多い”の場合は、バケット底面が地面に押し付けられているもののバケット7が設計面から離れているため、バケット7をより強く地面に押し付けるためにブーム5の上昇度合いを弱めるまたは下降度合いを強める補正を行うのが望ましい。さらに、アーム6を動かしながら転圧を行っているため、バケット7を開側に動かして過剰な土砂を掘削することも設計面通りに地面を仕上げるために有効である。そのため、ブーム動作指令をブーム下げ側に大きく補正し、かつ、バケットを開側に補正すること(バケット開側補正)を制御補正内容として出力する。
【0046】
バケット動作指令補正部63は、
図8に拡大して示すバケット動作指令変換テーブル63aを参照し、制御補正保持判定部55からの制御補正内容に応じて、半自動制御部31からのバケット動作指令を補正する。具体的には、バケット開側補正なしの場合は、
図8中実線で示すように、バケット動作指令と補正後バケット動作指令とを1対1の比率で対応させる。バケット開側補正ありの場合は、
図8中点線で示すように、補正後バケット動作指令がバケット動作指令よりも小さくなるように補正する。そうすることで、バケット7を開側に動かして土砂を掘削することができる。また、バケット動作指令の補正はアーム動作指令Spamが0でない場合のみ実行されるため、バケット7で法面等を均す転圧作業を行っていなければ、バケット7が開側に動かされることはない。
【0047】
図9は、本実施例に係る転圧作業時のフロント作業機110の動作を示す図である。
【0048】
図9(1)に示すように、バケット爪先位置と設計面との偏差が高さ閾値よりも小さく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられた状態でアーム引き動作が行われているときは、第1の実施例(
図6(1)に示す)と同様に、転圧状態が“a.転圧成功”と判定され、ブーム動作指令がブーム下げ側に小さく補正されるため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作をベースとしつつ、バケット底面を地面に押し付ける力が小さく増加する。
【0049】
図9(2)に示すように、バケット爪先位置と設計面との偏差が高さ閾値よりも大きく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられた状態でアーム動作が行われていないときは、転圧状態が“b1.土砂多い”と判定され、ブーム動作指令がブーム下げ側に大きく補正されるため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作をベースとしつつ、バケット底面を地面に押し付ける力が大きく増加する。
【0050】
図9(3)に示すように、バケット爪先位置と設計面との偏差が高さ閾値よりも小さく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられた状態でアーム引き動作が行われているときは、転圧状態が“b2.土砂多い”と判定され、ブーム動作指令がブーム下げ側に大きく補正されると共にバケット動作指令がバケット開側に補正されるため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作をベースとしつつ、バケット底面を地面に押し付ける力が大きく増加すると共に地面が掘削される。
【0051】
図9(4)に示すように、バケット爪先位置と設計面との偏差が高さ閾値よりも小さく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられていないときは、第1の実施例(
図6(3)に示す)と同様に、転圧状態が“c.土砂不足”と判定され、ブーム動作指令はブーム下げ側に補正されないため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作が優先される。
【0052】
図9(5)に示すように、バケット爪先と地面との偏差が高さ閾値よりも大きく、かつ、バケット底面が地面に押し当てられていないときは、第1の実施例(
図6(4)に示す)と同様に、転圧状態が“d.浮き上がり”と判定され、ブーム動作指令はブーム下げ側に補正されないため、半自動制御部31による掘り過ぎ防止動作が優先される。
【0053】
以上のように構成した本実施例に係る油圧ショベル100においても、第1の実施例と同様の効果が得られる。
【0054】
また、土砂が多いために設計面付近で転圧できない場合でアーム6が動作しているときに、ブーム動作指令をブーム下げ側に大きく補正すると共にバケット動作指令をバケット開側に補正することにより、バケット7を地面に押し付けつつ過剰な土砂を掘削することができるため、床付け作業をより効率的に行うことが可能となる。
【実施例4】
【0060】
本発明の第4の実施例に係る油圧ショベルについて、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0061】
図11は、本実施例に係る転圧制御部の機能ブロック図である。本実施例に係る転圧制御部32Cは、第1の実施例に係る転圧距離判定部51(
図4に示す)を省略し、第1の実施例に係る転圧状態判定部53に代えて転圧状態判定部80を備え、第1の実施例に係るアクチュエータ制御補正部54(
図4に示す)に代えてアクチュエータ制御補正部81を備えている。
【0062】
転圧状態判定部80は、転圧判定部52からの転圧情報のみに基づいて転圧状態を判定する。具体的には、転圧情報が1の場合(バケット底面が地面に押し付けられている場合)は転圧できている(“a.転圧成功”)と判定し、転圧情報が0の場合(バケット底面が地面に押し付けられていない場合)は転圧できていない(“d.浮き上がり”)と判定する。
【0063】
アクチュエータ制御補正部81は、転圧状態判定部80からの転圧状態に基づいて制御補正内容を決定する。具体的には、転圧状態が“a.転圧成功”の場合は、バケット7を確実に地面に押し付けるため、ブーム5の上昇度合いを弱めるまたは下降度合いを強める補正を行うのが望ましい。そのため、ブーム動作指令をブーム下げ側に補正すること(ブーム下げ補正)を制御補正内容として出力する。転圧状態が“d.浮き上がり”の場合は、制御補正は行わず、半自動制御部31による掘り過ぎ防止制御を優先させる。
【0064】
以上のように構成した本実施例に係る油圧ショベル100によれば、バケット底面が地面に押し付けられていないときは、半自動制御部31によってバケット7が設計面よりも下方に侵入しないようにレバー操作量が補正される。一方、バケット底面が地面に押し付けられているときは、地面に押し付ける力が増加するように、半自動制御部31によって補正されたブーム動作指令がブーム下げ側に補正される。これにより、設計面通りに地面を掘削する作業で操縦者の操作を補助すると共に、設計面通りに地面を押し固める転圧作業で操縦者の操作を補助することが可能となる。
【0065】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。