(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの半田付け位置を有するベース領域と、前記ベース領域内の前記少なくとも1つの半田付け位置の配置パターンと共通の配置パターンを含み、且つ、前記ベース領域とは異なる位置に存在する複数の複製領域と、を有する複数の半田付け領域を含む電子基板の表面に半田付けをする半田ごてと、
前記半田ごてを移動させる駆動部と、
前記複数の半田付け領域をどの順番で半田付けするのかをそれぞれ表す複数の半田付けルートを表示可能に構成された表示ウィンドウと、
前記ベース領域と前記複数の複製領域との間の位置関係を表す位置関係データ、前記ベース領域内の前記少なくとも1つの半田付け位置の前記配置パターンを表すベースパターンデータ及び前記表示ウィンドウに表示された前記複数の半田付けルートから選択された半田付けルートの入力を受け付ける入力部と、
半田付け作業において、前記ベースパターンデータと前記位置関係データとに基づき、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
(i)前記ベースパターンデータに基づき、前記ベース領域内の前記少なくとも1つの半田付け位置へ前記半田ごてを移動させるための移動パターンを決定し、
(ii)前記半田ごてが前記ベース領域において前記決定された移動パターンで移動するように、前記駆動部を制御し、
(iii)前記入力された半田付けルートに基づいて、前記半田ごてが前記複数の複製領域を順に移動するように、前記駆動部を制御し、
(iv)前記位置関係データ及び前記決定された移動パターンに基づき、前記半田ごての移動が前記複数の複製領域で行われるように、前記駆動部を制御する
半田付け装置。
前記入力部は、前記ベース領域内の前記少なくとも1つの半田付け位置に半田付けした後の前記半田ごてが前記電子基板の前記表面から上方に移動するときにおける前記半田ごての移動量を表す移動量データの入力を受け付け、
前記パターン決定部は、前記移動量データを参照し、半田付けごとに前記半田ごてが上方へ移動する前記移動パターンを決定し、
前記信号生成部によって生成された前記複製駆動信号は、前記決定された移動パターンに従って前記複数の複製領域において移動するように前記駆動部を動作させ、前記複数の複製領域において前記半田ごてを半田付けごとに上方へ移動させる
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の半田付け装置。
前記ベースパターンデータが、前記少なくとも1つの半田付け位置を表す座標値として、第1半田付け位置及び前記第1半田付け位置とは異なる位置に存在する第2半田付け位置をそれぞれ表す複数の座標値を含むとき、前記入力部は、前記移動量データとして、前記第1半田付け位置と前記第2半田付け位置とに対して互いに異なる複数の値の入力を受け付ける
請求項6に記載の半田付け装置。
前記ベースパターンデータが、前記少なくとも1つの半田付け位置を表す座標値として、第1半田付け位置及び前記第1半田付け位置とは異なる位置に存在する第2半田付け位置をそれぞれ表す複数の座標値を含むとき、前記入力部は、前記移動量データとして、前記第1半田付け位置と前記第2半田付け位置とに対して共通の値の入力を一括で受け付ける
請求項6に記載の半田付け装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半田付けされた大きな電子基板が、複数の小さな電子基板に切り分けられることがある。これらの小さな電子基板は、複数の電気機器に組み込まれる。この場合、複数の小さな電子基板に形成された複数の半田付け位置の配置パターンは共通している。電気機器に組み込まれる電子基板に設定された半田付け位置の数と大きな電子基板の分割数との積に相当する多数の半田付け位置が大きな電子基板に存在する。
【0005】
操作者は、上述の半田付け位置の設定技術の下では、大きな電子基板上に多数の半田付け位置の全てを半田付け装置に憶えさせる必要がある。したがって、上述の半田付け位置の設定技術は、半田付け装置に半田付け位置を憶えさせるティーチング作業を行う操作者に多大な労力を要求する。
【0006】
本発明は、操作者が半田付け位置を簡便に設定することを可能にする半田付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る半田付け装置は、少なくとも1つの半田付け位置を有するベース領域と、前記ベース領域内の前記少なくとも1つの半田付け位置の配置パターンと共通の配置パターンを含み、且つ、前記ベース領域とは異なる位置に存在する
複数の複製領域と、を有する複数の半田付け領域を含む電子基板の表面に半田付けをする半田ごてと、前記半田ごてを移動させる駆動部と、
前記複数の半田付け領域をどの順番で半田付けするのかをそれぞれ表す複数の半田付けルートを表示可能に構成された表示ウィンドウと、前記ベース領域と前記
複数の複製領域との間の位置関係を表す位置関係データ
、前記ベース領域内の前記少なくとも1つの半田付け位置の前記配置パターンを表すベースパターンデータ
及び前記複数の半田付けルートから選択された半田付けルートの入力を受け付ける入力部と、半田付け作業において、前記ベースパターンデータと前記位置関係データとに基づき、前記駆動部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、(i)前記ベースパターンデータに基づき、前記ベース領域内の前記少なくとも1つの半田付け位置へ前記半田ごてを移動させるための移動パターンを決定し、(ii)前記半田ごてが前記ベース領域において前記決定された移動パターンで移動するように、前記駆動部を制御し、
(iii)前記入力された半田付けルートに基づいて、前記半田ごてが前記複数の複製領域
を順に移動するように、前記駆動部を制御し、(i
v)前記位置関係データ及び前記決定された移動パターンに基づき、前記半田ごての移動が前記
複数の複製領域で行われるように、前記駆動部を制御する。
【0008】
上記の構成によれば、ベース領域は、少なくとも1つの半田付け位置を記憶させるための領域として用いられるので、操作者はベース領域内の少なくとも1つの半田付け位置の配置パターンを表すベースパターンデータを入力部に入力する。この結果、制御部は、ベース領域内での半田付け位置を把握することができる。したがって、制御部は、ベースパターンデータに基づき、半田ごてをベース領域内の少なくとも1つの半田付け位置に移動させるための移動パターンを決定することができる。制御部は、半田ごてが決定された移動パターンでベース領域において移動するように、駆動部を制御するので、半田ごては、半田付け作業において、決定された移動パターンで移動し、ベース領域内の少なくとも1つの半田付け位置で半田付けをすることができる。
【0009】
入力部に入力された位置関係データは、ベース領域とベース領域とは異なる位置に存在する
複数の複製領域との間の位置関係を表すので、位置関係データを参照した制御部は、ベース領域に対する
複数の複製領域の相対的な位置を把握することができる。したがって、制御部は、ベース領域と
複数の複製領域との間の位置関係を表す位置関係データに基づき、ベース領域に対して決定された移動パターンに従う半田ごての移動が
複数の複製領域で行われるように、駆動部を制御することができる。この結果、半田ごては、ティーチング作業の後の半田付け作業において、ベース領域に対して決定された移動パターンで移動し、
複数の複製領域に半田付けをすることができる。複製領域は、ベース領域内の少なくとも1つの半田付け位置の配置パターンと共通の配置パターンを含むので、ベース領域に対して決定された移動パターンに従って移動する半田ごては、複製領域内の半田付け位置のパターンに対応して半田付けをすることができる。
【0010】
上述の如く、
複数の複製領域に対応する半田付け位置が入力部に入力されなくても、半田付け装置は、
複数の複製領域内の半田付け位置で半田付けを行うことができる。したがって、半田付け装置は、半田付け位置を入力する操作者の労力を効果的に軽減することができる。
【0011】
上記の構成に関して、前記制御部は、(i)前記ベースパターンデータに基づき、前記ベース領域内での前記移動パターンを決定するパターン決定部と、(ii)前記半田ごてが前記決定された移動パターンに従って前記ベース領域において移動するように前記駆動部を動作させるためのベース駆動信号と、前記位置関係データと前記決定された移動パターンとに基づき、前記半田ごてが前記
複数の複製領域に移動し、且つ、前記決定された移動パターンに従って前記
複数の複製領域において移動するように前記駆動部を動作させる複製駆動信号と、を生成する信号生成部と、を含んでもよい。前記駆動部は、前記ベース駆動信号及び前記複製駆動信号に応じて前記半田ごてを移動させてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、上述の如く、操作者は、ベースパターンデータを入力部に入力するので、制御部のパターン決定部は、ベース領域内での半田付け位置を把握することができる。したがって、パターン決定部は、ベースパターンデータに基づき、半田ごてをベース領域内の少なくとも1つの半田付け位置へ移動させるための移動パターンを決定することができる。信号生成部は、半田ごてが決定された移動パターンに従って移動するようにベース駆動信号を生成するので、駆動部は、ベース駆動信号に応じて半田ごてを移動させることができる。この結果、半田ごては、ベース領域内の少なくとも1つの半田付け位置において半田付けをすることができる。
【0013】
入力部に入力された位置関係データは、ベース領域とベース領域とは異なる位置において仮想的に複製された
複数の複製領域との間の位置関係を表すので、位置関係データを参照した制御部の信号生成部は、ベース領域に対する
複数の複製領域の相対的な位置を把握することができる。したがって、信号生成部は、半田ごてが
複数の複製領域に移動するように複製駆動信号を生成し、駆動部を制御することができる。半田ごてが、
複数の複製領域においても、ベース領域に対して決定された移動パターンで動作するように、信号生成部は複製駆動信号を生成するので、複製駆動信号に応じて動作する駆動部は、
複数の複製領域に対しても、半田ごてにベース領域における移動動作と同様の移動動作をさせることができる。したがって、ベース領域においてなされた半田付け動作と同様の半田付け動作が、
複数の複製領域に対しても実行されることができる。
【0014】
上記の構成に関して、前記位置関係データは、前記ベース領域と前記ベース領域から所定の軸に沿って整列する前記
複数の複製領域とを含む複数の領域の数を表す領域数データと、前記複数の領域の中で隣り合う2つの領域間のずれ量を表すオフセットデータと、を含んでもよい。前記信号生成部は、前記領域数データと前記オフセットデータとを参照し、前記半田ごてが前記決定された移動パターンに従って前記複数の領域それぞれにおいて移動するように、前記ベース駆動信号と前記複製駆動信号とを生成してもよい。
【0015】
上記の構成によれば、位置関係データの領域数データは、ベース領域とベース領域から所定の軸に沿って整列する
複数の複製領域とを含む複数の第1領域の数を表すので、位置関係データを参照した信号生成部は、複製駆動信号を何回生成すればよいかを把握することができる。オフセットデータは、複数の領域の中で隣り合う2つの領域間のずれ量を表すので、位置関係データを参照した信号生成部は、所定の軸に沿って整列する複数の領域それぞれの位置を把握することができる。したがって、信号生成部は、領域数データとオフセットデータとを参照し、ベース領域に対して決定された移動パターンが複数の領域それぞれに適用されるように複製駆動信号を生成することができる。この結果、ベース領域において実行された半田付け動作と同様の半田付け動作が、ベース領域に対して所定の軸に沿って整列した
複数の複製領域においても実行されることができる。所定の軸に沿って整列した複数の領域全てについてティーチング作業が行われなくても、共通の半田付け動作が所定の軸に沿って整列する複数の領域に対して実行されるので、上述の半田付け装置は、ティーチング作業を行う操作者の労力を効果的に軽減することができる。
【0016】
上記の構成に関して、前記位置関係データは、前記ベース領域と前記ベース領域から所定の第1軸に沿って整列する前記
複数の複製領域とを含む複数の第1領域の数を表す第1領域数データと、前記複数の第1領域の中で隣り合う2つの領域間のずれ量を表す第1オフセットデータと、を含んでもよい。前記信号生成部は、前記第1領域数データと前記第1オフセットデータとを参照し、前記半田ごてが前記決定された移動パターンに従って前記複数の第1領域それぞれにおいて移動するように、前記ベース駆動信号と前記複製駆動信号とを生成してもよい。
【0017】
上記の構成によれば、位置関係データの第1領域数データは、ベース領域とベース領域から所定の第1軸に沿って整列する
複数の複製領域とを含む複数の第1領域の数を表すので、位置関係データを参照した信号生成部は、複製駆動信号を何回生成すればよいかを把握することができる。第1オフセットデータは、複数の第1領域の中で隣り合う2つの領域間のずれ量を表すので、位置関係データを参照した信号生成部は、第1軸に沿って整列する複数の第1領域それぞれの位置を把握することができる。したがって、信号生成部は、第1領域数データと第1オフセットデータとを参照し、ベース領域に対して決定された移動パターンが複数の第1領域それぞれに適用されるように複製駆動信号を生成することができる。この結果、ベース領域において実行された半田付け動作と同様の半田付け動作が、ベース領域に対して第1軸に沿って整列した
複数の複製領域においても実行されることができる。第1軸に沿って整列した複数の第1領域全てについてティーチング作業が行われなくても、共通の半田付け動作が第1軸に沿って整列する複数の第1領域に対して実行されるので、上述の半田付け装置は、ティーチング作業を行う操作者の労力を効果的に軽減することができる。
【0018】
上記の構成に関して、前記位置関係データは、前記ベース領域と前記ベース領域から前記第1軸に直交する第2軸に沿って整列する前記
複数の複製領域とを含む複数の第2領域の数を表す第2領域数データと、前記複数の第2領域の中で隣り合う2つの領域間のずれ量を表す第2オフセットデータと、を含んでもよい。前記信号生成部は、前記第2領域数データと前記第2オフセットデータとを参照し、前記半田ごてが前記決定された移動パターンに従って前記複数の第2領域それぞれにおいて移動するように、前記ベース駆動信号と前記複製駆動信号とを生成してもよい。
【0019】
上記の構成によれば、位置関係データの第2領域数データは、ベース領域とベース領域から第1軸に直交する第2軸に沿って整列する
複数の複製領域とを含む複数の第2領域の数を表すので、位置関係データを参照した信号生成部は、複製駆動信号を何回生成すればよいかを把握することができる。第2オフセットデータは、複数の第2領域の中で隣り合う2つの領域間のずれ量を表すので、位置関係データを参照した信号生成部は、第2軸に沿って整列する複数の第2領域それぞれの位置を把握することができる。したがって、信号生成部は、第2領域数データと第2オフセットデータとを参照し、ベース領域に対して決定された移動パターンが複数の第2領域それぞれに適用されるように複製駆動信号を生成することができる。この結果、ベース領域において実行された半田付け動作と同様の半田付け動作が、ベース領域に対して第2軸に沿って整列した
複数の複製領域においても実行されることができる。第2軸に沿って整列する複数の第2領域全てについてティーチング作業が行われなくても、共通の半田付け動作が第2軸に沿って整列する複数の第2領域に対して実行されるので、上述の半田付け装置は、ティーチング作業を行う操作者の労力を効果的に軽減することができる。
【0020】
上記の構成に関して、前記入力部は、前記ベース領域内の前記少なくとも1つの半田付け位置に半田付けした後の前記半田ごてが前記電子基板の前記表面から上方に移動するときにおける前記半田ごての移動量を表す移動量データの入力を受け付けてもよい。前記パターン決定部は、前記移動量データを参照し、半田付けごとに前記半田ごてが上方へ移動する前記移動パターンを決定してもよい。前記信号生成部によって生成された前記複製駆動信号は、前記決定された移動パターンに従って前記
複数の複製領域において移動するように前記駆動部を動作させ、前記
複数の複製領域において前記半田ごてを半田付けごとに上方へ移動させてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、移動量データは、半田付け後の半田ごてが電子基板の表面から上方に移動するときの移動量を表すので、移動量データを参照したパターン決定部は、半田付けの後の半田ごてが電子基板の表面から上方へ離れるように駆動部の駆動パターンを決定することができる。半田ごては、ベース領域内の半田付け位置に向けて上下動し、点状の半田を電子基板の表面上に付着させることができる。
【0022】
信号生成部によって生成された複製駆動信号は、決定された移動パターンに従って
複数の複製領域において移動するように駆動部を動作させるので、半田ごては、
複数の複製領域においても半田付けごとに上方へ移動することができる。半田ごては、複製領域内の半田付け位置に向けて上下動し、点状の半田を電子基板の表面上に付着させることができる。
【0023】
上記の構成に関して、前記ベースパターンデータが、前記少なくとも1つの半田付け位置を表す座標値として、第1半田付け位置及び前記第1半田付け位置とは異なる位置に存在する第2半田付け位置をそれぞれ表す複数の座標値を含むとき、前記入力部は、前記移動量データとして、前記第1半田付け位置と前記第2半田付け位置とに対して互いに異なる複数の値の入力を受け付けてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、入力部は、移動量データとして、第1半田付け位置と第2半田付け位置との間で互いに異なる複数の値の入力を受け付けるので、操作者は、第1半田付け位置において必要とされる移動量と第2半田付け位置において必要とされる移動量とを個別に入力することができる。半田ごては不必要に大きく上方に移動しないので、半田ごての移動のための期間は短縮化され、半田付け作業は効率化される。
【0025】
上記の構成に関して、前記ベースパターンデータが、前記少なくとも1つの半田付け位置を表す座標値として、第1半田付け位置及び前記第1半田付け位置とは異なる位置に存在する第2半田付け位置をそれぞれ表す複数の座標値を含むとき、前記入力部は、前記移動量データとして、前記第1半田付け位置と前記第2半田付け位置とに対して共通の値の入力を一括で受け付けてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、入力部は、移動量データとして、第1半田付け位置と第2半田付け位置とに共通した値の入力を一括で受け付けるので、操作者は、半田ごての移動量を、第1半田付け位置と第2半田付け位置とに個別に設定しなくてもよい。したがって、操作者は、半田ごての移動量を短時間で設定することができる。
【発明の効果】
【0029】
上述の半田付け装置は、操作者が半田付け位置を簡便に設定することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<本発明者等が開発した半田付け装置>
図7は、本発明者等が開発した半田付け装置100の概略的な斜視図である。
図7を参照して、半田付け装置100の概略的な構造が説明される。
【0032】
図7は、x軸、y軸及びz軸によって定義された直交座標を示す。以下の説明に関して、x軸の正の方向は、「右」として定義される。x軸の負の方向は、「左」として定義される。y軸の正の方向は、「前」として定義される。y軸の負の方向は、「後」として定義される。z軸の正の方向は、「上」として定義される。z軸の負の方向は、「下」として定義される。「時計回り」及び「反時計回り」との用語は、z軸に平行な回転軸周りの回転を表す。方向を表すこれらの用語は、説明の明瞭化のみを目的として用いられる。したがって、本実施形態の原理は、方向を表すこれらの用語に何ら限定されない。
【0033】
半田付け装置100は、半田付け機構110と、支持体120と、操作ユニット130と、加熱制御部140と、入力インターフェース150と、駆動部(図示せず)と、を備える。半田付け機構110は、電子基板(図示せず)に半田付けを行う。加熱制御部140は、半田付け機構110に対する温度制御に用いられる。支持体120は、半田付け機構110、操作ユニット130及び駆動部を支持する。駆動部として用いられる複数のモータは、支持体120及び半田付け機構110に取り付けられている。操作部130は、半田付け装置100に電子基板上の半田付け位置の座標値を記憶させるためのティーチング作業に好適に利用されることができる。ティーチング作業を行う操作者が、操作ユニット130を操作すると、駆動部は、半田付け機構110を、操作ユニット130に対する操作によって定められる方向に移動又は回転させる。入力インターフェース150は、半田付け装置100の様々な動作パラメータの入力のために用いられる。
【0034】
支持体120は、基台121と、2つの支柱122,123と、支持橋124と、設置台125と、を含む。基台121は、略矩形状の板状部位である。支柱122は、基台121の左縁から上方に立設される。支柱123は、基台121の右縁から上方に立設される。支柱122,123は、x軸方向に整列される。支持橋124は、左側の支柱122から右側の支柱123へ架け渡される。したがって、支持橋124は、x軸方向に延びる。半田付け機構110は、支持橋124に取り付けられる。操作者が、操作ユニット130を操作すると、駆動部として用いられる複数のモータのうち1つは、半田付け機構110を支持橋124に沿って移動させることができる。
【0035】
設置台125は、基台121の上面に据え付けられる略矩形状の板状部位である。操作者は、電子基板を設置台125上に固定することができる。操作者は、操作ユニット130を操作し、半田付け機構110を設置台125上で、x軸方向及びz軸方向に移動させたり、z軸に平行な回転軸周りに回転移動させたりすることができる。
図7に示されるように、y軸方向に延びるスロット126が、基台121の上面に形成されている。操作者が、操作ユニット130を操作すると、駆動部として用いられる複数のモータのうち1つは、設置台125をスロット126に沿って移動させることができる。設置台125上の電子基板と半田付け機構110との間の相対的な位置関係は、x軸方向及びz軸方向において、半田付け機構110の移動によって調整される。設置台125上の電子基板と半田付け機構110との間の相対的な位置関係は、設置台125のy軸方向の移動によって調整される。
【0036】
半田付け機構110は、水平可動柱111と、鉛直可動柱112と、糸半田113と、半田送出部114と、半田ごて115と、保持部116と、を含む。水平可動柱111は、鉛直可動柱112、糸半田113、半田送出部114、半田ごて115及び保持部116を保持し、駆動部の作動下でx軸方向に移動する。鉛直可動柱112は、糸半田113、半田送出部114、半田ごて115及び保持部116を保持し、駆動部の作動下でz軸方向に移動する。保持部116は、半田送出部114及び半田ごて115を保持し、鉛直可動柱112の鉛直中心軸に略一致する回転軸周りにこれらを周回移動させる。半田送出部114は、糸半田113を、半田ごて115の先端を形成するこて先に送出する。半田ごて115は、加熱制御部140の温度制御下で、半田送出部114から送り出された糸半田113を溶融する。
【0037】
水平可動柱111は、z軸方向に長い柱状の部材である。駆動部を形成する複数のモータのうち1つが作動すると、水平可動柱111が支持橋124に沿って略水平に移動するように、水平可動柱111、支持橋124及び駆動部は設計される。既知の半田付け装置の構造は、水平可動柱111、支持橋124及び駆動部の設計に適用されてもよい。したがって、本実施形態の原理は、水平可動柱111、支持橋124及び駆動部の間の特定の連結構造に限定されない。
【0038】
水平可動柱111と同様に、鉛直可動柱112は、z軸方向に長い柱状の部材である。駆動部を形成する複数のモータのうち1つが作動すると、鉛直可動柱112が水平可動柱111に沿って略鉛直に移動するように、鉛直可動柱112、水平可動柱111及び駆動部は設計される。既知の半田付け装置の構造は、鉛直可動柱112、水平可動柱111及び駆動部の設計に適用されてもよい。したがって、本実施形態の原理は、鉛直可動柱112、水平可動柱111及び駆動部の間の特定の連結構造に限定されない。
【0039】
保持部116は、半田送出部114及び半田ごて115を保持するために用いられる。保持部116は、鉛直可動柱112の下端に連結される。したがって、保持部116、半田送出部114及び半田ごて115は、鉛直可動柱112とともに、上方、下方、左方及び右方に移動することができる。駆動部を形成する複数のモータのうち1つが作動すると、保持部116が、鉛直可動柱112の鉛直中心軸に略一致する回転軸周りに回転するように、保持部116、鉛直可動柱112及び駆動部は設計される。操作者は、操作ユニット130を操作し、保持部116を回転させることにより、半田ごて115が電子基板上の電子部品に接触することを回避することができる。半田送出部114及び半田ごて115はともに、保持部116に取り付けられているので、これらの間の相対的な位置関係は、保持部116の回転の間変化しない。既知の半田付け装置の構造は、保持部116、鉛直可動柱112及び駆動部の設計に適用されてもよい。したがって、本実施形態の原理は、保持部116、鉛直可動柱112及び駆動部の間の特定の連結構造に限定されない。
【0040】
保持部116は、半田ごて115が取り付けられる弧状板117を含む。弧状のスロット118が、弧状板117に形成される。操作者は、半田ごて115の取付位置をスロット118に沿って変更し、設置台125上の電子基板の上面に対する半田ごて115の傾斜角度を調整することができる。目盛(図示せず)が、スロット118に沿って付されてもよい。この場合、操作者は、半田ごて115の傾斜角度を数値的に把握することができる。
【0041】
加熱制御部140は、半田ごて115のこて先の温度を制御するために用いられる。既知の半田付け装置に用いられるフィードバック制御技術は、加熱制御部140と半田ごて115との間で実行される温度制御に適用されることができる。したがって、本実施形態の原理は、加熱制御部140と半田ごて115との間で行われる特定の温度制御技術に限定されない。
【0042】
糸半田113が巻き付けられた半田ボビン119は、鉛直可動柱112の上端に取り付けられる。糸半田113は、半田ボビン119から半田送出部114へ延びる。半田付けが行われるとき、半田送出部114は、操作者によって設定された量だけ、半田を半田ごて115のこて先(又はこて先の近傍)に供給する。この結果、半田は、半田ごて115のこて先(又はこて先の近傍)で溶融される。既知の半田付け装置が有する半田送出機構の構造が、半田送出部114に適用されることができる。したがって、本実施形態の原理は、半田送出部114の特定の構造に限定されない。
【0043】
操作ユニット130は、筐体131と、左レバー132と、右レバー133と、座標入力部134と、を含む。操作者は、筐体131の上面から突出した左レバー132及び右レバー133を傾け、半田ごて115及び設置台125を移動させることができる。座標入力部134は、半田ごて115のこて先の座標を半田付け装置100に記憶させるために用いられる。半田ごて115のこて先が、設置台125上で固定された電子基板上の所定の半田付け位置に到達すると、操作者は、座標入力部134を操作し、半田付け装置100が実行する演算処理用に設定された座標空間内でのこて先の位置の座標値を半田付け位置として半田付け装置100に記憶させることができる。左レバー132及び右レバー133の傾斜量や座標入力部134に対する操作がなされたことを表す電気信号を生成する様々な電子部品は、筐体131内に配置されている。
【0044】
操作者は、筐体131の上面から突出した左レバー132及び右レバー133を傾斜し、設置台125上の電子基板と半田ごて115のこて先との間の相対位置の変更方向の指定することができる。左レバー132は、z軸方向における半田ごて115のこて先の移動(すなわち、上方及び下方へのこて先の移動)及び保持部116の回転(すなわち、保持部116の回転軸周りの半田ごて115のこて先の周回移動)に用いられる。右レバー133は、x軸方向における半田ごて115のこて先の移動(すなわち、左方及び右方へのこて先の移動)及びy軸方向における設置台125の移動(すなわち、設置台125上の電子基板に対する前方及び後方へのこて先の相対的移動)に用いられる。以下の表は、左レバー132及び右レバー133の操作に対する半田付け装置100の動作の例示的な対応関係を示す。
【0046】
こて先が、ティーチング作業の間、設置台125上の電子基板上で定められた半田付け位置に到達すると、操作者は、x軸方向に整列した左レバー132及び右レバー133の間に配置された座標入力部134を操作し、半田付け装置100が実行する演算処理用に設定された座標空間内でのこて先の座標位置を入力することができる。この結果、半田付け装置100は、入力された座標位置を半田付け位置として憶えることができる。その後の半田付け作業の間、半田付け装置100は、記憶された半田付け位置の座標位置を参照し、自動的に半田付けを行うことができる。本実施形態に関して、座標入力部134は、一般的な押圧ボタンとして設計されている。したがって、操作者は、押圧ボタンから受ける反力を指先で知覚し、押圧ボタンが操作されたか否かを判断することができる。
【0047】
入力インターフェース150は、半田付け装置100の動作に関する他の動作パラメータ(たとえば、上述の糸半田113の供給量)の入力に用いられる。タッチパネルが、入力インターフェース150として用いられてもよい。この場合、入力インターフェース150は、上述のティーチング作業の間に入力された座標値(すなわち、半田付け位置)を表示することができる。したがって、操作者は、ティーチング作業の結果を数値的に把握することができる。
【0048】
半田付け位置に関する共通の配置パターン(以下、「共通パターン」と称される)が1つの電子基板の異なる位置に形成されている結果、電子基板が、多数の半田付け位置を有することもある。本発明者等は、複数の共通パターンを有する電子基板に対するティーチング作業の負荷の低減に取り組んだ。
【0049】
図8は、例示的な電子基板900の概略的な平面図である。
図7及び
図8を参照し、複数の共通パターンを有する電子基板900に対するティーチング作業の多大な負荷が説明される。
【0050】
図8に示される点線DLxは、x軸に平行に延びる仮想線である。
図8に示される点線DLyは、y軸に平行に延びる仮想線である。電子基板900は、点線DLx、DLyによって4つの領域に等分される。電子基板900は、半田付け作業の後、点線DLx、DLyに沿って切断され、4つの小基板が形成される。
【0051】
16個の半田付け位置P01〜P16が電子基板900上に存在している。4つの半田付け位置P01〜P04の組、4個の半田付け位置P05〜P08の組、4個の半田付け位置P09〜P12の組及び4個の半田付け位置P13〜P16の組は、4個の領域にそれぞれ対応している。4個の半田付け位置P01〜P04の組、4個の半田付け位置P05〜P08の組、4個の半田付け位置P09〜P12の組及び4個の半田付け位置P13〜P16の組は、共通の配置パターンを有している(すなわち、これらの組は、共通パターンである)。したがって、点線DLx、DLyによって仮想的に分割された4つの領域それぞれは、半田ごて115を用いた半田付け作業が行われる半田付け領域となる。
【0052】
本発明者等は、4個の領域のうち1つに対してティーチング作業を行い、残りの3つの領域に対するティーチング作業を不要にするパレタイジング機能を半田付け装置100に組み込んだ。パレタイジング機能は、1つの領域に対して行われたティーチング作業の結果得られた半田ごて115の動作パターンを他の領域にも適用し、他の領域に対してもティーチング作業が行われた領域と同一の半田付けを行うことを可能にする。パレタイジング機能の結果、電子基板900に対するティーチング作業は、4個の領域のうち1つに対してのみ行われることになる。他の領域上の半田付け位置に対する半田付けは、これらの領域に対するティーチング作業なくして、4個の領域のうち1つに対して行われたティーチング作業の結果に基づき実行される。一方、パレタイジング機能がないならば、操作者は、電子基板900上の16個の半田付け位置全てに対してティーチング作業を行う必要がある。したがって、パレタイジング機能は、ティーチング作業の大幅な効率化に寄与することができる。
【0053】
<パレタイジング機能を有する半田付け装置>
図1は、半田付け装置100の概略的なブロック図である。
図1、
図7及び
図8を参照して、半田付け装置100が説明される。
【0054】
図1は、
図7を参照して説明された操作ユニット130及び入力インターフェース150を入力部190として示す。入力部190は、パレタイジング機能に必要とされるデータの入力に用いられる。
【0055】
半田付け装置100は、記憶部160と制御部170とを備える。これらは、パレタイジング機能のために半田付け装置100に組み込まれている。記憶部160は、入力部190からの入力データを記憶する。制御部170は、入力部190内に格納されたデータを参照し、駆動部180を制御する。
【0056】
操作者は、
図8を参照して説明された4つの領域のうち1つを、半田付け装置100に半田付け位置P01〜P04を記憶させるためのティーチング作業が行われるベース領域911として設定することができる。本実施形態に関して、操作者は、左前の領域を、ベース領域911として設定している。ベース領域911の選択は、操作者に専ら依存する。したがって、本実施形態の原理は、どの領域がベース領域911として設定されるかによっては何ら限定されない。
【0057】
図8を参照して説明された4つの領域のうち残りの領域は、3つの複製領域912,913,914として設定される。ティーチング作業は、これらの複製領域912,913,914に対しては実行されなくてもよい。代わりに、これらの複製領域912,913,914内の半田付け位置P05〜P16に対する半田付けは、パレタイジング機能によって実行される。複製領域912は、ベース領域911の右に位置する。複製領域913は、ベース領域911の後に位置する。複製領域914は、ベース領域911に対して矩形状の電子基板900の対角線上に整列する。これらの複製領域912,913,914は、制御部170のパレタイジング処理において、ベース領域911の複製として取り扱われる。すなわち、ベース領域911に対して設定された半田ごて115の移動軌跡は、パレタイジング機能によって、複製領域912,913,914に複製され、半田付け作業の間、複製領域912,913,914上で半田付けを行う半田ごては、複製された移動軌跡に沿って移動することになる。
【0058】
ティーチング作業を行う操作者は、操作ユニット130を操作し、ベース領域911内の半田付け位置の座標値を入力する。本実施形態に関して、電子基板900の左前の角隅部が、座標原点として設定されている。座標値は、座標原点を基準に設定されている。以下の表は、ベース領域911内の半田付け位置P01〜P04の座標値を表す。入力された座標値は、ベース領域911内の半田付け位置P01〜P04の配置パターンを表すベースパターンデータとして記憶部160に記憶される。本実施形態に関して、第1半田付け位置は、半田付け位置P01〜P04のうち1つである。第2半田付け位置は、半田付け位置P01〜P04のうち他のもう1つである。
【0060】
図8に示されるように、複製領域912上の半田付け位置P05〜P08は、ベース領域911上の半田付け位置P01〜P04からx軸において正の方向に「xa」だけずれた位置に存在している。複製領域913上の半田付け位置P09〜P12は、ベース領域911上の半田付け位置P01〜P04からy軸において負の方向に「ya」だけずれた位置に存在している。複製領域914上の半田付け位置P13〜P16は、ベース領域911上の半田付け位置P01〜P04から、x軸において正の方向に「xa」且つy軸において負の方向に「ya」だけずれた位置に存在している。したがって、複製領域912,913,914上の半田付け位置P05〜P16は、以下の表に表される座標値を有することができる。
【0062】
「表3」に示されるように、複製領域912,913,914の半田付け位置は、ベース領域911の半田付け位置の座標値を用いて表現されることができる。ベース領域911と複製領域912,913,914との間の位置関係(すなわち、ベース領域911からの複製領域912,913,914それぞれのずれ量)は、オフセット量「xa」,「ya」によって表されることができる。操作者は、オフセット量「xa」,「ya」を、入力インターフェース150を入力することができる。入力されたオフセット量「xa」,「ya」は、ベース領域911と複製領域912,913,914との間の位置関係を表す位置関係データとして記憶部160に記憶される。
【0063】
操作者は、ベース領域911内での半田ごて115のこて先の上下動時の移動量を表す移動量データを入力インターフェース150に入力することができる。移動量データは、半田ごて115のこて先が電子基板900に搭載された電子部品と接触することを防止するため或いは電子基板900の上面に点状の半田を付着させる点半田動作が行われるこて先の上方及び/又は下方への移動量を決定するために設定される。半田付けが行われる直前において、半田ごて115のこて先は、半田付け位置の上方で、電子基板900の上面から、移動量データの値だけ離れた位置に配置される。その後、半田ごて115のこて先は、移動量データの値だけ下降され、半田付け位置において半田付けを行う。半田付けの後、半田ごて115のこて先は、移動量データの値だけ上昇される。半田ごて115のこて先は、電子基板900の上面から移動量データの値だけ上方に離れているので、半田ごて115のこて先がその後水平に移動しても、電子基板900に搭載された電子部品に接触しない。半田ごて115のこて先の移動量は、半田付け位置それぞれについて個別に設定されてもよい。この場合、半田ごて115のこて先がz軸方向に不必要な距離を移動しないように、操作者は移動量を設定することができる。たとえば、半田ごて115のこて先の移動軌跡に重なる位置において、背の低い電子部品が存在しているならば、操作者は、小さな値を移動量として設定することができる。一方、背の高い電子部品が存在しているならば、操作者は、大きな値を移動量として設定することができる。半田ごて115は、z軸方向に不必要に長い距離を移動しないので、電子基板900に対する半田付けは短時間で完了されることができる。代替的に、半田ごて115のこて先の移動量は、半田付け位置全てについて共通の値であってもよい。たとえば、操作者は、電子基板900上の電子部品の中で最も背の高い電子部品にこて先が当たらないように、電子部品の高さよりも大きな値を移動量として設定することができる。この場合、移動量の入力作業は、簡素化される。本実施形態に関して、x軸及びy軸のうち一方は、第1軸として用いられている。x軸及びy軸のうち他方は、第2軸として用いられている。
【0064】
制御部170は、パターン決定部171と、信号生成部172と、を含む。パターン決定部171は、ベースパターンデータ及び移動量データを参照し、ベース領域911内で半田ごて115のこて先をどのように移動させるか(すなわち、駆動部180をどのように駆動させるか)を決定する。駆動部180が、ベース領域911内で半田ごて115のこて先を移動させるときに、信号生成部172は、半田ごて115を決定された移動パターンに従って移動させるためのベース駆動信号を生成する。駆動部180が、複製領域912,913,914内で半田ごて115のこて先を移動させるときに、信号生成部172は、記憶部160内の位置関係データを参照する。信号生成部172は、位置関係データとベース領域911に対して決定された移動パターンとに基づいて、ベース領域911上でのこて先の移動パターンが複製領域912,913,914へ複製されるように複製駆動信号を生成する。ベース駆動信号及び複製駆動信号は、信号生成部172から駆動部180へ出力される。駆動部180は、ベース駆動信号及び複製駆動信号に応じて、半田ごて115及び設置台125を移動させ、ベース領域911及び複製領域912,913,914上の半田付け位置P01〜P16に半田ごて115のこて先を到達させる。
【0065】
図2は、パターン決定部171が決定する例示的な移動パターンのフロー図である。
図1、
図2、
図7及び
図8を参照して、パターン決定部171が説明される。
【0066】
図2に示される一連の動作は、ティーチング作業の後の半田付け作業における半田ごて115の移動パターンを表す。半田ごて115は、ベース領域911上で
図2に示される一連の動作に従って移動される。パターン決定部171は、ティーチング作業の結果得られた半田付け位置の座標値が与えられると、座標値に半田ごて115のこて先を移動させるように設計された所定のアルゴリズムを用いて、
図2に示される一連の動作を決定することができる。
【0067】
図7を参照して説明された半田付け装置100に関して、x軸方向及びz軸方向の半田ごて115の移動及び保持部116の回転軸周りの半田ごて115の周回の間、半田ごて115は実際に移動する。一方、半田ごて115は、y軸方向には実際には移動せず、代わりに、設置台125が、y軸方向に移動する。設置台125が、y軸方向に移動している間、半田ごて115は、電子基板900に対してy軸方向に相対的に変位することができる。以下の説明において、「移動パターン」との用語は、半田ごて115の実際の移動だけでなく、電子基板900の表面に対する半田ごて115の相対的な移動をも意味する。
【0068】
図2に示される「動作1」乃至「動作4」は、半田付け位置P01用の移動パターンを表す。「動作5」乃至「動作8」は、半田付け位置P02用の移動パターンを表す。「動作9」乃至「動作12」は、半田付け位置P03用の移動パターンを表す。「動作13」乃至「動作16」は、半田付け位置P04用の移動パターンを表す。「動作1」乃至「動作16」は、駆動部180によって順次実行される。
図2に示される座標値(x01,y01,z01,θ01)乃至座標値(x04,y04,z04,θ04)は、操作ユニット130を用いたティーチング作業の結果得られている。
【0069】
「動作1」、「動作5」、「動作9」及び「動作13」に関して、パターン決定部171は、半田ごて115のこて先を半田付け位置P01〜P04の上方に位置させる駆動部180の動作を指定する。「動作2」、「動作6」、「動作10」及び「動作14」に関して、パターン決定部171は、半田ごて115のこて先を半田付け位置P01〜P04に下降させる駆動部180の動作を指定する。「動作3」、「動作7」、「動作11」及び「動作15」に関して、パターン決定部171は、半田付け位置P01〜P04での半田付けが完了するまで駆動部180が停止する動作を指定する。「動作4」、「動作8」、「動作12」及び「動作16」に関して、パターン決定部171は、半田ごて115のこて先を半田付け位置P01〜P04の上方に位置させる駆動部180の動作を指定する。
【0070】
図1に示されるように、信号生成部172は、第1生成部271と、第2生成部272と、第3生成部273と、第4生成部274と、パターン解析部275と、オフセット指令部276と、を含む。第1生成部271は、半田ごて115のこて先を反時計回り又は時計回りに周回移動させるための駆動信号を生成する。第2生成部272は、半田ごて115のこて先を下降又は上昇させるための駆動信号を生成する。第3生成部273は、半田ごて115のこて先を左方又は右方へ移動させるための駆動信号を生成する。第4生成部274は、設置台125を前方又は後方へ移動させるための駆動信号を生成する。パターン解析部275は、
図2に示される移動パターンを解析し、第1生成部271乃至第4生成部274のいずれに駆動信号の生成指示を与えるかを決定する。パターン解析部275は、選択された生成部(すなわち、第1生成部271乃至第4生成部274のうちいずれか)に駆動信号の生成指示及び駆動信号の生成に必要とされる情報(たとえば、目標位置の座標値)を与える。第1生成部271乃至第4生成部274は、生成指示に応じて、上述の駆動信号を生成する。オフセット指令部276は、記憶部160内に格納された位置関係データを参照し、複製領域912,913,914の位置をパターン解析部275に通知する。パターン解析部275は、
図2に示される移動パターン(すなわち、ベース領域911用の移動パターン)を、オフセット指令部276から受け取った位置関係情報(すなわち、オフセット量「xa」,「ya」)を用いて変更する。パターン解析部275は、変更された移動パターン(すなわち、複製領域912,913,914用の移動パターン)に基づいて、駆動信号の生成指示の対象(すなわち、第1生成部271乃至第4生成部274のうちいずれか)を決定する。
【0071】
図2に示される「動作1」、「動作5」、「動作9」及び「動作13」に関して、パターン解析部275は、第3生成部273及び/又は第4生成部274を生成指令の出力先として定める。このとき、保持部116の回転軸周りの半田ごて115のこて先の角度の変更が必要とされるならば、パターン解析部275は、第1生成部271も生成指令の出力先に含める。「動作2」、「動作4」、「動作6」、「動作8」、「動作10」、「動作12」、「動作14」及び「動作16」に関して、パターン解析部275は、第2生成部272を生成指令の出力先に定める。
【0072】
図2に示される移動パターンに関して、ベース領域911内での半田付けは、半田付け位置P01,P02,P03,P04の順に行われる。しかしながら、半田付けの順序は、操作者によって決定されてもよい。たとえば、半田付けの順序は、ティーチング作業の順序にしたがって決定されてもよい。代替的に、操作者が、ティーチング作業の後に、ティーチング作業から得られた座標値に順位付けをしてもよい。したがって、本実施形態の原理は、ベース領域911内での半田付けの特定の順序に限定されない。
【0073】
図3A乃至
図3Cは、パターン解析部275がオフセット量「xa」,「ya」を用いて変更した移動パターンを示すフロー図である。
図1乃至
図3C、
図7及び
図8を参照して、移動パターンの変更処理が説明される。
【0074】
図2を参照して説明された移動パターンは、ベース領域911に対して適用されるのに対し、
図3A乃至
図3Cに示される半田ごて115の移動パターンは、複製領域912,913,914にそれぞれ適用される。すなわち、半田ごて115は、ティーチング作業の後の半田付け作業において、複製領域912,913,914上で
図3A乃至
図3Cに示される一連の動作に従って移動される。
【0075】
図3Aに示される「動作17」乃至「動作32」は、
図2を参照して説明された「動作1」乃至「動作16」に対応する。「動作17」乃至「動作32」の座標値のうちx座標値のみが、「動作1」乃至「動作16」の座標値から変更されている。すなわち、「動作17」乃至「動作32」の座標値のうちx座標値は、「動作1」乃至「動作16」の座標値からx軸の正の方向にオフセット量「xa」だけずらされている。複製領域912は、ベース領域911からx軸の正の方向にオフセット量「xa」だけずらされているので、駆動部180が、
図3Aに示される移動パターンに従って動作すると、こて先は、ベース領域911上でこて先が描いた移動軌跡と同一のパターンの移動軌跡を辿って複製領域912上で移動することができる。
【0076】
図3Bに示される「動作33」乃至「動作48」は、
図2を参照して説明された「動作1」乃至「動作16」に対応する。「動作33」乃至「動作48」の座標値のうちy座標値のみが、「動作1」乃至「動作16」の座標値から変更されている。すなわち、「動作33」乃至「動作48」の座標値のうちy座標値は、「動作1」乃至「動作16」の座標値からy軸の負の方向にオフセット量「ya」だけずらされている。複製領域913は、ベース領域911からy軸の負の方向にオフセット量「ya」だけずらされているので、駆動部180が、
図3Bに示される移動パターンに従って動作すると、こて先は、ベース領域911上でこて先が描いた移動軌跡と同一のパターンの移動軌跡を辿って複製領域913上で移動することができる。
【0077】
図3Cに示される「動作49」乃至「動作64」は、
図2を参照して説明された「動作1」乃至「動作16」に対応する。「動作49」乃至「動作64」の座標値のうちx座標値及びy座標値のみが、「動作1」乃至「動作16」の座標値から変更されている。すなわち、「動作49」乃至「動作64」の座標値のうちx座標値及びy座標値は、「動作1」乃至「動作16」の座標値からx軸の正の方向にオフセット量「xa」だけずらされ、且つ、y軸の負の方向にオフセット量「ya」だけずらされている。複製領域914は、ベース領域911からx軸の正の方向にオフセット量「xa」及びy軸の負の方向にオフセット量「ya」だけずらされているので、駆動部180が、
図3Cに示される移動パターンに従って動作すると、こて先は、ベース領域911上でこて先が描いた移動軌跡と同一のパターンの移動軌跡を辿って複製領域914上で移動することができる。
【0078】
駆動部180は、第1モータ181と、第2モータ182と、第3モータ183と、第4モータ184と、第1エンコーダ185と、第2エンコーダ186と、第3エンコーダ187と、第4エンコーダ188と、を含む。第1モータ181乃至第4モータ184は、駆動信号を、第1生成部271乃至第4生成部274からそれぞれ受け取る。第1モータ181は、第1生成部271からの駆動信号に応じて、半田ごて115のこて先が反時計回り又は時計回りに周回移動するように、保持部116を回転させる。第2モータ182は、第2生成部272からの駆動信号に応じて、鉛直可動柱112を下降又は上昇させる。この結果、鉛直可動柱112に保持部116を介して取り付けられた半田ごて115のこて先も下降又は上昇する。第3モータ183は、第3生成部273からの駆動信号に応じて、水平可動柱111を左方又は右方に移動させる。半田ごて115は、保持部116及び鉛直可動柱112を介して水平可動柱111に取り付けられているので、半田ごて115のこて先も、水平可動柱111とともに左方又は右方に移動することができる。第4モータ184は、第4生成部274からの駆動信号に応じて、設置台125を前方又は後方に移動させる。この結果、設置台125上の電子基板900に対する半田ごて115のこて先の相対的な位置は、前方又は後方に変化する。
【0079】
第1エンコーダ185乃至第4エンコーダ188は、第1モータ181乃至第4モータ184に取り付けられ、これらの回転量をそれぞれ検出する。検出された回転量を表す電気信号は、第1エンコーダ185乃至第4エンコーダ188から第1生成部271乃至第4生成部274へ出力される。第1生成部271乃至第4生成部274は、第1エンコーダ185乃至第4エンコーダ188からの電気信号を参照し、第1モータ181乃至第4モータ184に対するフィードバック制御を行う。
【0080】
上述の実施形態に関して、半田ごて115のこて先は、移動量データにしたがってz軸に沿って移動している。しかしながら、移動量データは、電子基板900の表面に点状の半田を付着させるための点半田動作の始点及び終点を表してもよい。すなわち、電子基板900の表面上の半田付け位置(すなわち、終点)に対応して、当該半田付け位置の上方の始点を表す座標が移動量データにおいて指定されるならば、半田ごては、指定された始点から終点、その後、終点から始点へ往復移動することができる。
【0081】
図4は、制御部170の例示的な動作を表す概略的なフローチャートである。
図1乃至
図4、
図7及び
図8を参照して、制御部170の動作が説明される。
【0082】
(ステップS105)
ステップS105は、ベース領域911に対するティーチング作業の終了の後に行われる。したがって、ベースパターンデータ、移動量データ及び位置関係データは、記憶部160に記憶されている。半田付け作業が開始されると、パターン決定部171は、ベースパターンデータ及び移動量データを記憶部160から読み出す。その後、ステップS110が実行される。
【0083】
(ステップS110)
パターン決定部171は、ベースパターンデータ及び移動量データを参照し、ベース領域911用の移動パターン(
図2を参照)を決定する。決定された移動パターンは、パターン決定部171からパターン解析部275へ出力される。その後、ステップS115が実行される。
【0084】
(ステップS115)
パターン解析部275は、決定された移動パターンを解析し、生成指令の出力先を決定する。
図2に示される移動パターンの「動作1」に関して、半田ごて115のこて先の角度位置の変更が必要とされるならば、パターン解析部275は、第1生成部271を生成指令の出力先に決定する。半田ごて115のこて先の移動量(すなわち、電子基板900の上面とこて先との間の距離)の調整が必要とされるならば、パターン解析部275は、第2生成部272を生成指令の出力先に決定する。半田ごて115のこて先がx軸方向に移動される必要があるならば、パターン解析部275は、第3生成部273を生成指令の出力先に決定する。設置台125がy軸方向に移動される必要があるならば、パターン解析部275は、第4生成部274を生成指令の出力先に決定する。生成指令は、目標の座標値とともに、パターン解析部275から決定された出力先(第1生成部271乃至第4生成部274のうち少なくとも1つ)へ出力される。その後、ステップS120が実行される。
【0085】
(ステップS120)
第1生成部271が、生成指令を受け取っているならば、半田ごて115のこて先が角度位置の目標値(
図2の「動作1」に関して、角度座標値「θ01」)に対応する角度位置に到達するように、ベース駆動信号を生成する。第2生成部272が、生成指令を受け取っているならば、半田ごて115のこて先がz座標の目標値(
図2の「動作1」に関して、角度座標値「z01+za」)に対応する位置に到達するように、ベース駆動信号を生成する。第3生成部273が、生成指令を受け取っているならば、半田ごて115のこて先がx座標の目標値(
図2の「動作1」に関して、角度座標値「x01」)に対応する位置に到達するように、ベース駆動信号を生成する。第4生成部274が、生成指令を受け取っているならば、半田ごて115のこて先がy座標の目標値(
図2の「動作1」に関して、角度座標値「y01」)に対応する位置に到達するように、ベース駆動信号を生成する。これらのベース駆動信号は、第1モータ181乃至第4モータ184へそれぞれ出力される。第1モータ181乃至第4モータ184は、これらのベース駆動信号に応じて動作する。
図2の「動作1」に関して、半田ごて115のこて先は、ベース駆動信号に応じた第1モータ181乃至第4モータ184の動作の結果、目標の座標値(x01,y01,z01+za,θ01)に対応する位置に到達する。パターン解析部275は、第1生成部271乃至第4生成部274の信号生成処理をモニタし、第1生成部271乃至第4生成部274が半田ごて115のこて先を目標の座標値に対応する位置に到達させるための動作を完了したか否かを判定することができる。半田ごて115のこて先が目標の座標値に到達したとパターン解析部275が判断すると、ステップS125が実行される。
【0086】
(ステップS125)
パターン解析部275は、対象の半田付け位置に対して定められた一連の動作(
図8に示される半田付け位置P01に関して、「動作1」乃至「動作4」)が完了したか否かを判定する。対象の半田付け位置に対して定められた一連の動作が完了しているならば、ステップS130が実行される。他の場合には、ステップS115が実行される。
【0087】
図8に示される半田付け位置P01に関して、ステップS115乃至ステップS125からなる処理ループは、「動作4」が完了するまで繰り返される。すなわち、上述の「動作1」に対する処理(上述のステップS115及びステップS120を参照)の後、「動作2」、「動作3」及び「動作4」に対する処理が順次実行される。
【0088】
「動作2」に関して、パターン解析部275は、第2生成部272を生成指令の出力先に決定し、半田ごて115のこて先をz座標値「z01+za」に対応する位置からz座標値「z01」に対応する位置へ下降させることを指示する生成指令を作り出す。生成指令は、パターン解析部275から第2生成部272へ出力される。第2生成部272は、パターン解析部275からの生成指令に応じて、z座標値「z01+za」に対応する位置からz座標値「z01」に対応する位置へこて先を下降させるベース駆動信号を生成する。第2モータ182は、第2生成部272からのベース駆動信号に応じて、半田ごて115のこて先をz座標値「z01」に対応する位置へ下降させる。
【0089】
「動作3」に関して、パターン解析部275は、生成指令の出力を所定期間停止し、半田付け位置P01での半田付けの完了を待つ。パターン解析部275は、半田送出部114からの信号を参照し、半田付けの完了を判断してもよいし、タイマー素子からの信号に基づいて、生成指令の出力を所定期間停止してもよい。
【0090】
「動作4」に関して、パターン解析部275は、第2生成部272を生成指令の出力先に決定し、半田ごて115のこて先をz座標値「z01」に対応する位置からz座標値「z01+za」に対応する位置へ上昇させることを指示する生成指令を作り出す。生成指令は、パターン解析部275から第2生成部272へ出力される。第2生成部272は、パターン解析部275からの生成指令に応じて、z座標値「z01」に対応する位置からz座標値「z01+za」に対応する位置へこて先を上昇させるベース駆動信号を生成する。第2モータ182は、第2生成部272からのベース駆動信号に応じて、半田ごて115のこて先をz座標値「z01+za」に対応する位置へ上昇させる。
【0091】
(ステップS130)
パターン解析部275は、ベース領域の全ての半田付け位置(
図8に示されるベース領域911上の半田付け位置P01〜P04)に対する半田付けが完了しているか否かを判定する。ステップS110において決定されている移動パターンの実行が完了しているならば、ステップS135が実行される。他の場合には、ステップS115が実行される。
【0092】
図8に示されるベース領域911に関して、ステップS115乃至ステップS130からなる処理ループは、半田付け位置P04に対する半田付けが完了するまで繰り返される。半田付けが、半田付け位置P01から半田付け位置P02へ変更されるとき(すなわち、「動作4」から「動作5」への遷移時)、パターン解析部275は、「動作4」に対して設定されたz座標値「z01+za」及び角度座標値「θ01」が、「動作5」に対して設定されたz座標値「z02+zb」及び角度座標値「θ02」にそれぞれ等しいか否かを確認する。これらのz座標値が一致しないならば、パターン解析部275は、生成指令の出力先を第2生成部272に決定する。その後、第2モータ182は、第2生成部272が生成したベース駆動信号に応じて、半田ごて115のこて先をz軸方向に変位させる。角度座標値「θ01」が角度座標値「θ02」に等しくないならば、パターン解析部275は、生成指令の出力先を第1生成部271に決定する。第1モータ181は、第1生成部271が生成したベース駆動信号に応じて、半田ごて115のこて先を保持部116の回転軸周りに周回させる。
【0093】
「動作4」に対して設定されたz座標値「z01+za」及び角度座標値「θ01」が、「動作5」に対して設定されたz座標値「z02+zb」及び角度座標値「θ02」にそれぞれ等しいならば、半田ごて115のこて先のz軸に沿う変位及び保持部116の回転軸周りの周回移動を生じさせることなく、半田ごて115のこて先を水平移動させる処理が行われる。このとき、パターン解析部275は、第3生成部273及び第4生成部274を生成指令の出力先に指定する。第3生成部273は、生成指令に応じて、x軸において正の方向に半田ごて115のこて先を移動させるベース駆動信号を生成及び出力する。この結果、第3モータ183は、半田ごて115のこて先を右方に移動させ、こて先はx座標値「x02」に対応する位置に到達する。第4生成部274は、設置台125をy軸の正の方向に設置台125を移動させるベース駆動信号を生成及び出力する。第4モータ184は、第4生成部274が生成したベース駆動信号に応じて、設置台125を前方に移動させるので、半田ごて115のこて先は、設置台125上の電子基板900に対して相対的に後方(すなわち、y軸の負の方向)に移動する。この結果、こて先は、y座標値「y02」に対応する位置に到達する。
【0094】
同様の処理は、半田付けが、半田付け位置P02から半田付け位置P03へ変更されるとき(すなわち、「動作8」から「動作9」への遷移時)、及び、半田付けが、半田付け位置P03から半田付け位置P04へ変更されるとき(すなわち、「動作12」から「動作13」への遷移時)にも行われる。これらの半田付け位置の変更処理の後、ステップS115乃至ステップS125からなる処理ループに関連して説明された「こて先の下降」、「こて先の一時停止」及び「こて先の上昇」のための処理が実行される。
【0095】
(ステップS135)
パターン解析部275は、オフセット指令部276にベース領域911に対する半田付けが完了したことを通知する。オフセット指令部276及びパターン解析部275は、パターン解析部275からの通知に応じて、処理された複製領域(
図8に示される複製領域912,913,914)をカウントするための処理に用いられるカウント値「n」を「1」に設定する。その後、ステップS140が実行される。
【0096】
(ステップS140)
オフセット指令部276は、位置データを記憶部160から読み出す。その後、ステップS145が実行される。
【0097】
(ステップS145)
オフセット指令部276は、n番目の複製領域用のオフセット量を演算する。
図8を参照して説明された電子基板900に関して、半田付けは、複製領域912,913,914の順に行われる。したがって、カウント値「n」が「1」であるとき、半田付けは、複製領域912に対して行われる。カウント値「n」が「2」であるとき、半田付けは、複製領域913に対して行われる。カウント値「n」が「3」であるとき、半田付けは、複製領域914に対して行われる。
【0098】
図8に示されるように、ベース領域911からの複製領域912のずれは、x軸方向において、「xa」であるのに対し、y軸方向において、「0」である。したがって、カウント値「n」が「1」であるとき(すなわち、半田付けが複製領域912において実行されるとき)、オフセット指令部276は、x軸方向のオフセット量が「xa」であり、且つ、y軸方向のオフセット量が「0」であることを通知する。ベース領域911からの複製領域913のずれは、x軸方向において、「0」であるのに対し、y軸方向において、「ya」である。したがって、カウント値「n」が「2」であるとき(すなわち、半田付けが複製領域913において実行されるとき)、オフセット指令部276は、x軸方向のオフセット量が「0」であり、且つ、y軸方向のオフセット量が「ya」であることを通知する。ベース領域911からの複製領域914のずれは、x軸方向及びy軸方向において、「xa」及び「ya」である。したがって、カウント値「n」が「3」であるとき(すなわち、半田付けが複製領域913において実行されるとき)、オフセット指令部276は、x軸方向及びy軸方向のオフセット量が「xa」及び「ya」であることを通知する。処理対象の複製領域(すなわち、n番目の複製領域)に対するオフセット量が、オフセット指令部276からパターン解析部275へ出力されると、ステップS150が実行される。
【0099】
(ステップS150)
パターン解析部275は、ステップS110において決定された移動パターンを、オフセット指令部276から通知されたオフセット量に基づき変更する。この結果、カウント値「n」が「1」であるとき、
図3Aを参照して説明された移動パターンが得られる。カウント値「n」が「2」であるとき、
図3Bを参照して説明された移動パターンが得られる。カウント値「n」が「3」であるとき、
図3Cを参照して説明された移動パターンが得られる。移動パターンの変更の後、ステップS155乃至ステップS170からなる処理ループが実行される。
【0100】
(ステップS155乃至ステップS170からなる処理ループ)
ステップS155乃至ステップS170からなる処理ループは、ステップS115乃至ステップS130に対する処理ループと同様である。したがって、半田ごて115のこて先は、ステップS145において得られたオフセット量だけずれた位置において、ベース領域911において半田ごて115のこて先が描いた移動軌跡と同一のパターンの移動軌跡を辿って移動することができる。ベース領域911に対して行われたティーチング作業から得られた座標データ(すなわち、ベースパターンデータ)が、複製領域912,913,914に対する半田ごて115のこて先の移動軌跡の設定に対して用いられるので、複製領域912,913,914に対するティーチング作業は必要とされない。したがって、半田付け装置100は、全ての半田付け位置に対してティーチング作業を必要とする従来の半田付け装置よりもティーチング作業の負荷を大幅に軽減することができる。ステップS155乃至ステップS170からなる処理ループの終了後(すなわち、n番目の複製領域の全ての半田付け位置において半田付けが完了した後)、ステップS175が実行される。
【0101】
(ステップS175)
パターン解析部275は、カウント値「n」が、複製領域の総数「N」(
図2に示される電子基板900に関して、N=3)に等しいか否かを確認する。カウント値「n」が、総数「N」に等しいならば、半田付け処理は完了する(すなわち、電子基板900上の全ての半田付け位置において半田付けが実行されている)。他の場合には、ステップS180が実行される。
【0102】
(ステップS180)
パターン解析部275及びオフセット指令部276は、カウント値「n」を「1」だけ増分する。その後、ステップS145が実行される。この結果、次の複製領域に対する半田付けが開始されることになる。
【0103】
<他の特徴>
設計者は、上述の半田付け装置100に様々な特徴を与えることができる。以下に説明される特徴は、半田付け装置100の設計原理を何ら限定しない。
【0104】
(電子基板の様々な分割パターン)
図8を参照して説明された電子基板900は、2行2列の分割領域に分割されている。しかしながら、上述の実施形態の原理は、電子基板900の様々な分割パターンに適用可能である。
【0105】
図5は、電子基板900の概略的な平面図である。
図1、
図4、
図5、
図7及び
図8を参照して、電子基板900に対する他の分割パターンが説明される。
【0106】
図5に示される電子基板900は、Ny行Nx列の分割パターンによって分割されている。すなわち、電子基板900は、(Nx×Ny)個の分割領域を含んでいる。これらの分割領域のうち1つは、ベース領域として設定されている。
図8と同様に、
図5に示されるベース領域は、電子基板900の左前の角隅部を形成する矩形領域である。操作者は、半田付け作業の前に位置関係データとして以下の表に示される項目を入力することができる。
【0108】
オフセット指令部276は、「表4」に示される「列の総数」及び「行の総数」を表すデータに基づいて、ベース領域に対する複数の複製領域それぞれのオフセット量を算出するための係数行列を決定する。以下の数式は、係数行列を示す。
【0110】
オフセット指令部276は、x軸方向においてベース領域に最も近い列に属する複製領域の係数「Cx」を「1」に設定する(すなわち、nx=1)。オフセット指令部276は、x軸方向においてベース領域に2番目に近い列に属する複製領域の係数「Cx」を「2」に設定する(すなわち、nx=2)。同様に、オフセット指令部276は、x軸方向においてベース領域に(Nx−1)番目に近い列に属する複製領域の係数「Cx」を「Nx−1」に設定する(すなわち、nx=Nx−1)。オフセット指令部276は、y軸方向においてベース領域に最も近い列に属する複製領域の係数「Cy」を「1」に設定する(すなわち、ny=1)。オフセット指令部276は、y軸方向においてベース領域に2番目に近い列に属する複製領域の係数「Cy」を「2」に設定する(すなわち、ny=2)。同様に、オフセット指令部276は、y軸方向においてベース領域に(Ny−1)番目に近い列に属する複製領域の係数「Cy」を「Ny−1」に設定する(すなわち、ny=Ny−1)。本実施形態に関して、第1領域数データは、「表4」の「列の総数」及び「行の総数」のうち一方である。第2領域数データは、「表4」の「列の総数」及び「行の総数」のうち他方である。第1オフセットデータは、「表4」のオフセット量「xa」,「ya」のうち一方である。第2オフセットデータは、「表4」のオフセット量「xa」,「ya」のうち他方である。
【0111】
オフセット指令部276は、オフセット量「xa」,「ya」と係数行列とを用いて、パターン解析部275へ出力されるオフセット量「xb」,「yb」を算出する。以下の行列は、ベース領域からのオフセット量「xb」,「yb」の算出式である。
【0113】
「数2」の「nx」及び「ny」は行列状に分割された複数の複製領域の位置を特定するための自然数であるので、ベース領域からのオフセット量「xb」,「yb」の組は、複数の複製領域それぞれにおいて異なる。
【0114】
図4に示されるステップS140において、オフセット指令部276は、記憶部160から位置関係データ(「表4」を参照)を読み出す。オフセット指令部276は、位置関係データの「列の総数」及び「行の総数」から電子基板900の分割パターン及び半田付け順序を把握することができる(
図5を参照)。
【0115】
図4を参照して説明されたカウント値「n」は、半田付けの順序に相当する。したがって、
図4を参照して説明されたステップS145において、オフセット指令部276は、カウント値「n」と位置関係データの「半田付け順序」を参照し、処理対象の複製領域を見出すことができる。すなわち、
図5に示される分割領域に関して、カウント値「n」が「1」であるならば、オフセット指令部276は、第0列及び第1行に属する複製領域を対象の複製領域として認識することができる。カウント値「n」が「(Nx−3)×Ny」であるならば、第(Nx−3)列及び第(Ny−1)行に属する複製領域を対象の複製領域として認識することができる。オフセット指令部276は、処理対象の複製領域が属する列及び行に基づいて、(nx,ny)の組を決定することができる。処理対象の複製領域に対応する(nx,ny)の組の決定の後、オフセット指令部276は、「数2」の行列に基づいて、(xb,yb)の組を算出する。(xb,yb)の組は、オフセット指令部276からパターン解析部275へ出力される。
【0116】
図4に示されるステップS150において、パターン解析部275は、ベース領域において設定された半田ごて115のこて先の移動軌跡を、x軸方向において「xb」だけ、且つ、y軸方向において「yb」だけ平行移動することによって描かれる移動軌跡に沿うこて先の移動を実現する移動パターンを決定する。ステップS155乃至ステップS170からなる処理ループにおいて、決定された移動パターン用の複製駆動信号が生成される。駆動部180は、複製駆動信号に応じて、半田ごて115及び設置台125を移動させる。この結果、半田ごて115のこて先は、ベース領域上で設定された移動軌跡を平行移動させた移動軌跡に沿って移動することができる。
図4に示されるステップS140乃至ステップS180からなる処理ループの実行の結果、電子基板900上に設定された複数の複製領域に対する半田付けが操作者によって設定された半田付け順序に従って順次完了する。ステップS175において、カウント値「n」が、「Nx×Ny−1」に等しくなると、電子基板900上に設定された全ての複製領域に対する半田付けは完了し、制御部170の処理は完了する。
【0117】
図6は、「表4」に示される入力項目の入力のために入力インターフェース150が表示する例示的な画像である。
図1、
図5及び
図6を参照して、入力インターフェース150が表示する入力画像が説明される。
【0118】
図6は、4つの入力ウィンドウ151,152,153,154と、1つの表示ウィンドウ155と、を示す。操作者は、「表4」に示される「列の総数」を入力ウィンドウ151に入力することができる。操作者は、「表4」に示される「行の総数」を入力ウィンドウ152に入力することができる。操作者は、「表4」に示されるオフセット量「xa」の値を入力ウィンドウ153に入力することができる。操作者は、「表4」に示されるオフセット量「ya」の値を入力ウィンドウ154に入力することができる。
【0119】
表示ウィンドウ155は、半田付けルートを表し、「表4」に示される半田付け順序に対応付けられる。
図6に示される半田付けルートによれば、半田付けは、まず、第「0」行に整列する複数の分割領域(
図5を参照)に対して行われる。その後、半田付けは、第「1」行に整列する複数の分割領域に対して行われる。半田付けは、行ごとに実行され、半田付け対象の行は後方に向けて変更される。最後に、半田付けは、第(Ny−1)行に整列する複数の分割領域に対して行われる。
【0120】
オフセット指令部276は、半田付けの順序を、半田付けルートに基づいて自動的に決定するので、操作者は、複数の分割領域に対して個別に半田付け順序を設定する必要はない。したがって、半田付けの順序設定は、過度に煩雑にならない。
【0121】
操作者は、入力インターフェース150を操作し、表示ウィンドウ155に表示される半田付けルートのパターンを変更することができる。すなわち、互いに異なる複数のパターンが、半田付けルートとして予め用意されている。操作者は、半田付け作業に最も適したパターンを半田付けルートとして選択することができるので、適切な半田付けがなされることとなる。たとえば、操作者は、電子部品の取付順序に適した半田付け順序が設定されることができるパターンを、半田付けルートとして選択することができる。
【0122】
上述の実施形態に関して、ベース領域911には、4つの半田付け位置P01〜P04が存在している。しかしながら、ベース領域911には、1つの半田付け位置が存在していてもよい。したがって、上述の実施形態の原理は、いくつの半田付け位置がベース領域911に存在しているかによっては何ら限定されない。
【0123】
上述の実施形態に関して、半田付け位置P01〜P16それぞれについて、電子基板900上に点状の半田を付着させる点半田作業が行われる。しかしながら、上述のパレタイジング機能は、電子基板900に線状の半田を付着させる線半田作業にも適用可能である。したがって、上述の実施形態の原理は、電子基板900に対する特定の半田付け作業に限定されない。
【0124】
上述の実施形態に関して、半田付け装置100は、操作ユニット130を備えている。操作者は、操作ユニット130から受け取る触覚に基づいて、操作ユニットをどのように操作しているかを把握することができるので、半田ごて115のこて先を見ながら、半田ごて115を移動させることができる。半田付け装置100は、操作者がこて先の位置の確認と半田ごて115の操作とを同時に実行することを可能にするので、操作者は、ティーチング作業を効率的に行うことができる。しかしながら、上述のパレタイジング機能は、操作ユニット130を有さない一般的な半田付け装置に組み込まれることができる。したがって、上述の実施形態の原理は、半田付け装置100の特定の構造に限定されない。
【0125】
上述の実施形態に関して、電子基板900は、マトリクス状に分割されている。しかしながら、パレタイジング機能は、他の分割パターンの下でも利用可能である。すなわち、ティーチング作業の対象となる半田付け位置の配置パターン、及び、この配置パターンと同一の配置パターンが、電子基板900上の異なる位置に存在しているならば、操作者は、上述のパレタイジング機能を用いて、従来のティーチング作業よりも少ない数の半田付け位置に対するティーチング作業を行うことができる。したがって、上述の実施形態の原理は、電子基板900上で仮想的に設定される特定の分割パターンに限定されない。