特許第6752196号(P6752196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752196
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】ビスイミドジカルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/48 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   C07D209/48
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-511026(P2017-511026)
(86)(22)【出願日】2016年4月6日
(86)【国際出願番号】JP2016061291
(87)【国際公開番号】WO2016163412
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-78792(P2015-78792)
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】福林 夢人
(72)【発明者】
【氏名】中井 誠
(72)【発明者】
【氏名】繁田 朗
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗紀
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−059614(JP,A)
【文献】 特開2001−122858(JP,A)
【文献】 特開2007−119395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D209/48
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(i)、(ii)を含む、トリカルボン酸無水物とジアミンからビスイミドジカルボン酸を製造する方法:
工程(i):トリカルボン酸無水物またはジアミンのうち、融点が高い成分を高融点成分、融点が低い成分を低融点成分としたときに、高融点成分を高融点成分の融点未満、低融点成分の融点以上で加熱し、高融点成分が、その固体状態を保つように、高融点成分に低融点成分を添加し、混合物を得る工程;および
工程(ii):工程(i)で得られた混合物を、その固体状態を保つように加熱し、ビスイミドジカルボン酸を得る工程
前記トリカルボン酸無水物は、芳香族トリカルボン酸無水物または脂環式トリカルボン酸無水物から選ばれ、且つ
前記ジアミンは、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンまたは芳香族ジアミンから選ばれ、該ジアミンは、−O−、−S−が含まれてもよいし、水素原子の1つ以上がハロゲンに置換されていてもよいし、側鎖を有していてもよい
【請求項2】
その固体状態が粒状である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
低融点成分を、液体状態で添加する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
低融点成分を、粉末または粒状の状態で添加する、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスイミドジカルボン酸の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリカルボン酸無水物とジアミンからなるビスイミドジカルボン酸は、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーのジカルボン酸原料として工業的に有用である。
【0003】
ビスイミドジカルボン酸類の製造方法としては、トリカルボン酸無水物とジアミンとを溶媒(脂肪族カルボン酸類、N,N−ジアルキルカルボキシルアミド類、アルコール類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類等)中で反応させる方法が知られている。しかしながら、前記方法は溶媒中で反応をおこなうため、得られるビスイミドジカルボン酸をポリマー原料として用いるためには、反応終了後、反応液からビスイミドジカルボン酸を分離精製することが必要である。そのため、多くの時間とエネルギーを必要とする。
【0004】
また、特許文献1には、芳香族トリカルボン酸無水物とジアミンとを混合し反応させる方法が開示されている。しかしながら、特許文献1の方法は、反応終了後分離精製する必要はないものの、押出機やニーダー等で混合するため、得られるビスイミドジカルボン酸は、塊状化したもので得られ、ポリマー原料として用いるためには、粉砕や分級等により粒状化することが必要である。そのため、多くの時間とエネルギーを必要とする
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−59614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、実質的に溶媒を用いることなく、反応終了後に粒状化する必要もない、工業的に有利なビスイミドジカルボン酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討の結果、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)下記の工程(i)、(ii)を含む、トリカルボン酸無水物とジアミンからビスイミドジカルボン酸を製造する方法:
工程(i):トリカルボン酸無水物またはジアミンのうち、融点が高い成分を高融点成分、融点が低い成分を低融点成分としたときに、高融点成分を高融点成分の融点未満、低融点成分の融点以上で加熱し、高融点成分が、その固体状態を保つように、高融点成分に低融点成分を添加し、混合物を得る工程;および
工程(ii):工程(i)で得られた混合物を、その固体状態を保つように加熱し、ビスイミドジカルボン酸を得る工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実質的に溶媒を用いることなく、反応終了後に粒状化する必要もない、工業的に有利なビスイミドジカルボン酸の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、ビスイミドジカルボン酸の純度が非常に高い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いるトリカルボン酸無水物は、芳香族トリカルボン酸無水物または脂環式トリカルボン酸無水物である。トリカルボン酸の環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタリン環、アンタラセン環、ビフェニル環、シクロヘキサン環、好ましくは、ベンゼン環、ナフタリン環、ビフェニル環、シクロヘキサン環、より好ましくはベンゼン環、またはシクロヘキサン環、さらに好ましくはベンゼン環が挙げられる。
【0011】
トリカルボン酸には、環に結合した水素原子が他の原子または原子団に置換されたものも含まれる。
【0012】
トリカルボン酸無水物の具体例としては、トリメリット酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−アントラセントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物等、好ましくは、トリメリット酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物、より好ましくはトリメリット酸無水物、または1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物、さらにより好ましくは、トリメリット酸無水物が挙げられる。
【0013】
トリカルボン酸無水物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
本発明で用いるジアミンは、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンまたは芳香族ジアミンである。好ましくは、脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンである。前記ジアミンには、−O−、−S−が含まれてもよいし、水素原子の1つ以上がハロゲンに置換されていてもよいし、側鎖を有していてもよい。
【0015】
ジアミンの具体例としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0016】
好ましくは、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、より好ましくは、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、さらにより好ましくは、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンから選ばれる脂肪族ジアミン、またはp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから選ばれる芳香族ジアミンである。
【0017】
上記ジアミンは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
本発明の製造方法は、下記の工程(i)、工程(ii)から構成される。
工程(i):トリカルボン酸無水物またはジアミンのうち融点が高い成分を高融点成分、融点が低い成分を低融点成分としたときに、高融点成分を高融点成分の融点未満、低融点成分の融点以上で加熱し、高融点成分が、その固体状態を保つように、高融点成分に低融点成分を添加し、混合物を得る工程。
工程(ii):工程(i)で得られた混合物を、その固体状態を保つように加熱し、ビスイミドジカルボン酸を得る工程。
【0019】
工程(i)は、トリカルボン酸無水物およびジアミンを混合または反応させ、混合物を得る工程である。前記混合物には、未反応のトリカルボン酸やトリカルボン酸無水物、未反応のジアミン、トリカルボン酸無水物とジアミンが1:1(モル比) または、2:1(モル比)で反応することにより生成したアミック酸、さらには前記アミック酸の一部またはすべてがイミド化したもの等が含まれる。
【0020】
工程(i)において、工程中、「高融点成分が、その固体状態を保つように」するには、固体状の高融点成分に、液体状の低融点成分を反応させることにより達成することができ、具体的には、高融点成分を高融点成分の融点未満、低融点成分の融点以上で加熱し、低融点成分を適当な速度で添加することにより、達成することができる。
【0021】
加熱温度は、好ましくは、高融点成分の融点より5〜10℃以上低い温度領域、また、融解による吸熱や、サイズや形状による熱伝導率の違い等により生じる融解速度の差にできる限り影響を与えないようにする理由から、低融点成分の融点より5〜10度以上高い温度領域で加熱する。具体的な加熱温度は、左記基準に基づき、高融点成分、低融点成分の組合せにおいて適宜選定される。なお、工程(i)における「融点」は、「融解点」ともいい、固体が融解する温度という一般的意味で使用している。融点は、キャピラリーに試料を詰めて加熱し、目視で融点を観察したり、示差走査熱量測定(DSC)等の測定装置により求めることができる。
【0022】
工程(i)において、高融点成分の融点以上の温度で反応させた場合、高融点成分が融解し、内容物が融液状またはスラリー状となり、工程(ii)の反応終了後、ビスイミドジカルボン酸が塊状で得られるので好ましくない。一方、低融点成分の融点未満の温度で反応させた場合、高融点成分と低融点成分が反応しないので好ましくない。また、前記混合物を工程(ii)において加熱した場合、低融点成分全量が同時に融解してしまい、内容物が融液状またはスラリー状となり、反応終了後、ビスイミドジカルボン酸が塊状で得られるので好ましくない。
【0023】
高融点成分がその固体状態を保つようにするには、溶媒や分散媒を実質的に用いないことが好ましく、全く用いないことがより好ましい。
【0024】
低融点成分は、反応時に、固体状の高融点成分に対して液状になっていれば特に限定されず、添加する際は、液体状態、固体状態(粉体、粒状)いずれであってもよい。
【0025】
高融点成分の加熱は、低融点成分を添加する後におこなってもよいし、低融点成分を添加する前におこなってもよいが、添加する前におこなうことが好ましい。
【0026】
工程(i)は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で行われることが好ましい。
【0027】
工程(i)における低融点成分の添加速度としては、高融点成分がその固体状態を安定して維持する観点から、0.005〜2.00質量%/分であることが好ましく、0.01〜1.00質量%/分であることがより好ましい。なお、ここで、「質量%/分」とは、最終的に添加される低融点成分全量に対する、1分間に添加される低融点成分の割合である。
【0028】
工程(ii)は、工程(i)で得られた混合物を反応させ、ビスイミドジカルボン酸を得る工程である。工程(ii)において、工程中、前記混合物を、その固体状態に保つようにするには、加熱温度を工程(i)の温度条件に加えて、製造目的物であるビスイミドジカルボン酸の融点未満、好ましくは、該融点より5〜10℃以上低い温度とすればよい。
【0029】
工程(ii)も窒素雰囲気等の不活性雰囲気下でおこなうことが好ましい。
【0030】
工程(i)に用いる装置としては、低融点成分の融点以上で混合できるものであれば特に限定されず、公知の重合装置を用いることができる。低融点成分が常温において液体である場合は、加熱機能を備えていない装置でもよい。
【0031】
工程(ii)に用いる装置としては、トリカルボン酸の無水化反応以上の温度で混合できるものであれば特に限定されず、公知の重合装置を用いることができる。中でも、反応生成物の水を留去できるベント付きの加熱撹拌装置がより好ましい。
【0032】
本発明の製造方法で得られたビスイミドジカルボン酸は、ポリアミドイミドやポリエステルイミドの原料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0034】
(1)ビスイミドジカルボン酸の純度および質量測定
高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)により、以下の条件で測定し、純度を求めた。
試料:ビスイミドジカルボン酸/DMSO溶液(200μg/mL)
装置:ブルカー・ダルトニクス製microTOF2-kp
カラム:Cadenza CD-C18 3μm 2mm×150mm
移動相:(移動相A)0.1% ギ酸水溶液、(移動相B)メタノール
グラジエント(B Conc.):0min(50%)-5,7min(60%)-14.2min(60%)-17min(100%)-21.6min(100%)-27.2min(50%)-34min(50%)
イオン化法:ESI
検出条件:Negativeモード
【0035】
純度は、得られた試料中に含まれる全成分のうちのイミドジカルボン酸が占める割合を意味し、質量分析により得られる質量スペクトル中に検出された全成分のイオン強度比のうち、イミドジカルボン酸成分が占める割合により求めた。
【0036】
(2)ビスイミドジカルボン酸の同定
核磁気共鳴法(NMR)および赤外分光法(IR)により、以下の条件で測定し、同定をおこなった。
【0037】
核磁気共鳴法(NMR)
装置:日本電子製JNM−ECA500
測定核種:プロトン
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
温度:25℃
積算回数:128回
【0038】
赤外分光法(IR)
装置:Perkin Elmer製 System 2000 赤外分光装置
方法:KBr法
積算回数:64スキャン(分解能4cm-1
【0039】
実施例1
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)738質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。そこに無水トリメリット酸が形状を維持していることを確認しながら、80℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)262質量部を、送液装置を用いて、0.66質量部/分(0.252質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は粒状であって、純度は98.2%であった。
【0040】
【化1】
【0041】
IR測定により1778cm−1付近および1714cm−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、1H−NMRスペクトル中の8.34ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:2)、8.20ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:1)、7.95ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:3)、7.27ppm(トリプレット、シングレット)(帰属ピーク構造:4)、7.20ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:5)、4.75ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:6)付近に主成分に由来するピークが検出された。さらに、質量分析の結果から主成分の分子量は、484(m/z)であると推定された。
【0042】
実施例2
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)738質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。そこに無水トリメリット酸が形状を維持していることを確認しながら、固体のp−キシリレンジアミン(融点:60〜63℃)262質量部を、ダブルダンパー機構を備えた送粉装置を用いて、1.32質量部/分(0.504質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は粒状であって、純度は98.8%であった。
【0043】
【化2】
【0044】
IR測定により1778cm−1付近および1714cm−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、1H−NMRスペクトル中の8.34ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:2)、8.20ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:1)、7.97ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:3)、7.27ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:4)、4.74ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:5)付近に主成分に由来するピークが検出された。さらに、質量分析の結果から主成分の分子量は、484(m/z)であると推定された。
【0045】
実施例3
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)780質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で150℃に加熱した。そこに無水トリメリット酸が形状を維持していることを確認しながら、固体のp−フェニレンジアミン(融点:139℃)220質量部を、ダブルダンパー機構を備えた送粉装置を用いて、1.32質量部/分の速度(0.600質量%/分)で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は粒状であって、純度は98.6%であった。
【0046】
【化3】
【0047】
IR測定により1778cm−1付近および1714cm−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、1H−NMRスペクトル中の8.43ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:2)、8.33ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:1)、8.10ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:3)、7.63ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:4)付近に主成分に由来するピークが検出された。さらに、質量分析の結果から主成分の分子量は、456(m/z)であると推定された。
【0048】
実施例4
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(融点:188〜192℃)343質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で175℃に加熱した。そこに4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが形状を維持していることを確認しながら、固体の無水トリメリット酸(融点:168℃)657質量部を、ダブルダンパー機構を備えた送粉装置を用いて、2.64質量部/分(0.402質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は、粒状であって、純度は98.0%であった。
【0049】
【化4】
【0050】
IR測定により1778cm−1付近および1714cm−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、1H−NMRスペクトル中の8.41ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:2)、8.30ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:1)、8.08ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:3)、7.51ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:4)、7.24ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:5)付近に主成分に由来するピークが検出された。さらに、質量分析の結果から主成分の分子量は、548(m/z)であると推定された。
【0051】
実施例5
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状のシクロヘキサン−1,2,4,−トリカルボン酸−1,2−無水物(融点:155℃)744質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。そこにシクロヘキサン−1,2,4,−トリカルボン酸−1,2−無水物が形状を維持していることを確認しながら、80℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)256質量部を、送液装置を用いて、0.66質量部/分(0.252質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は粒状であって、純度は98.6%であった。
【0052】
【化5】
【0053】
IR測定により1778cm−1付近および1714cm−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、ピークが複雑に重複し、帰属は困難であった。ただし、質量分析においては主成分が定量的に分離でき、その結果から主成分の分子量は、496(m/z)であると推定された。
【0054】
比較例1
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)638質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で200℃に加熱した。無水トリメリット酸が融解したところに、80℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)262質量部を、送液装置を用いて、0.66質量部/分(0.252質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中に、内容物は融液状またはスラリー状に変化した。
その後、前記混合物を300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られたビスイミドジカルボン酸は塊状であり、純度は80.2%であった。
【0055】
比較例2
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)638質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で25℃に加熱した。そこに無水トリメリット酸が形状を維持していることを確認しながら、80℃に加熱したp−キシリレンジアミン(融点:60〜63℃)262質量部を、送液装置を用いて、1.32質量部/分(0.504質量%/分)の速度で添加し、無水トリメリット酸とp−キシリレンジアミンの混合物を得た。添加中に、内容物は塊状に変化した。
その後、前記混合物を300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られたビスイミドジカルボン酸は塊状であり、純度は78.8%であった。
【0056】
実施例1〜4は、いずれも、実質的に溶媒を用いることなく、反応終了後に粒状化する必要もない、工業的に有利な製造方法であった。また、いずれも純度が非常に高かった。