【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0034】
(1)ビスイミドジカルボン酸の純度および質量測定
高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)により、以下の条件で測定し、純度を求めた。
試料:ビスイミドジカルボン酸/DMSO溶液(200μg/mL)
装置:ブルカー・ダルトニクス製microTOF2-kp
カラム:Cadenza CD-C18 3μm 2mm×150mm
移動相:(移動相A)0.1% ギ酸水溶液、(移動相B)メタノール
グラジエント(B Conc.):0min(50%)-5,7min(60%)-14.2min(60%)-17min(100%)-21.6min(100%)-27.2min(50%)-34min(50%)
イオン化法:ESI
検出条件:Negativeモード
【0035】
純度は、得られた試料中に含まれる全成分のうちのイミドジカルボン酸が占める割合を意味し、質量分析により得られる質量スペクトル中に検出された全成分のイオン強度比のうち、イミドジカルボン酸成分が占める割合により求めた。
【0036】
(2)ビスイミドジカルボン酸の同定
核磁気共鳴法(NMR)および赤外分光法(IR)により、以下の条件で測定し、同定をおこなった。
【0037】
核磁気共鳴法(NMR)
装置:日本電子製JNM−ECA500
測定核種:プロトン
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
温度:25℃
積算回数:128回
【0038】
赤外分光法(IR)
装置:Perkin Elmer製 System 2000 赤外分光装置
方法:KBr法
積算回数:64スキャン(分解能4cm
-1)
【0039】
実施例1
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)738質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。そこに無水トリメリット酸が形状を維持していることを確認しながら、80℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)262質量部を、送液装置を用いて、0.66質量部/分(0.252質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は粒状であって、純度は98.2%であった。
【0040】
【化1】
【0041】
IR測定により1778cm
−1付近および1714cm
−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、1H−NMRスペクトル中の8.34ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:2)、8.20ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:1)、7.95ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:3)、7.27ppm(トリプレット、シングレット)(帰属ピーク構造:4)、7.20ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:5)、4.75ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:6)付近に主成分に由来するピークが検出された。さらに、質量分析の結果から主成分の分子量は、484(m/z)であると推定された。
【0042】
実施例2
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)738質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。そこに無水トリメリット酸が形状を維持していることを確認しながら、固体のp−キシリレンジアミン(融点:60〜63℃)262質量部を、ダブルダンパー機構を備えた送粉装置を用いて、1.32質量部/分(0.504質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は粒状であって、純度は98.8%であった。
【0043】
【化2】
【0044】
IR測定により1778cm
−1付近および1714cm
−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、1H−NMRスペクトル中の8.34ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:2)、8.20ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:1)、7.97ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:3)、7.27ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:4)、4.74ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:5)付近に主成分に由来するピークが検出された。さらに、質量分析の結果から主成分の分子量は、484(m/z)であると推定された。
【0045】
実施例3
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)780質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で150℃に加熱した。そこに無水トリメリット酸が形状を維持していることを確認しながら、固体のp−フェニレンジアミン(融点:139℃)220質量部を、ダブルダンパー機構を備えた送粉装置を用いて、1.32質量部/分の速度(0.600質量%/分)で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は粒状であって、純度は98.6%であった。
【0046】
【化3】
【0047】
IR測定により1778cm
−1付近および1714cm
−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、1H−NMRスペクトル中の8.43ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:2)、8.33ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:1)、8.10ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:3)、7.63ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:4)付近に主成分に由来するピークが検出された。さらに、質量分析の結果から主成分の分子量は、456(m/z)であると推定された。
【0048】
実施例4
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(融点:188〜192℃)343質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で175℃に加熱した。そこに4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが形状を維持していることを確認しながら、固体の無水トリメリット酸(融点:168℃)657質量部を、ダブルダンパー機構を備えた送粉装置を用いて、2.64質量部/分(0.402質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は、粒状であって、純度は98.0%であった。
【0049】
【化4】
【0050】
IR測定により1778cm
−1付近および1714cm
−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、1H−NMRスペクトル中の8.41ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:2)、8.30ppm(シングレット)(帰属ピーク構造:1)、8.08ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:3)、7.51ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:4)、7.24ppm(ダブレット)(帰属ピーク構造:5)付近に主成分に由来するピークが検出された。さらに、質量分析の結果から主成分の分子量は、548(m/z)であると推定された。
【0051】
実施例5
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状のシクロヘキサン−1,2,4,−トリカルボン酸−1,2−無水物(融点:155℃)744質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。そこにシクロヘキサン−1,2,4,−トリカルボン酸−1,2−無水物が形状を維持していることを確認しながら、80℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)256質量部を、送液装置を用いて、0.66質量部/分(0.252質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中および添加後において、内容物は粒状であった。
その後、前記混合物を撹拌しながら300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られた主成分ビスイミドジカルボン酸(下記構造)は粒状であって、純度は98.6%であった。
【0052】
【化5】
【0053】
IR測定により1778cm
−1付近および1714cm
−1付近に吸収が確認できることからイミド結合の生成を確認した。また、NMR測定では、ピークが複雑に重複し、帰属は困難であった。ただし、質量分析においては主成分が定量的に分離でき、その結果から主成分の分子量は、496(m/z)であると推定された。
【0054】
比較例1
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)638質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で200℃に加熱した。無水トリメリット酸が融解したところに、80℃に加熱したm−キシリレンジアミン(融点:14℃)262質量部を、送液装置を用いて、0.66質量部/分(0.252質量%/分)の速度で添加し、混合物を得た。添加中に、内容物は融液状またはスラリー状に変化した。
その後、前記混合物を300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られたビスイミドジカルボン酸は塊状であり、純度は80.2%であった。
【0055】
比較例2
ダブルヘリカル型の撹拌翼を備えた混合槽に、粒状の無水トリメリット酸(融点:168℃)638質量部を添加し、撹拌をおこないながら、窒素雰囲気下で25℃に加熱した。そこに無水トリメリット酸が形状を維持していることを確認しながら、80℃に加熱したp−キシリレンジアミン(融点:60〜63℃)262質量部を、送液装置を用いて、1.32質量部/分(0.504質量%/分)の速度で添加し、無水トリメリット酸とp−キシリレンジアミンの混合物を得た。添加中に、内容物は塊状に変化した。
その後、前記混合物を300℃まで昇温し、300℃で2時間加熱をおこなった。
得られたビスイミドジカルボン酸は塊状であり、純度は78.8%であった。
【0056】
実施例1〜4は、いずれも、実質的に溶媒を用いることなく、反応終了後に粒状化する必要もない、工業的に有利な製造方法であった。また、いずれも純度が非常に高かった。