特許第6752256号(P6752256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752256
(24)【登録日】2020年8月20日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】インナー付きグロメット
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/58 20060101AFI20200831BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20200831BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20200831BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   H01B17/58 C
   H01R13/52 B
   B60R16/02 622
   H02G3/22
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-161970(P2018-161970)
(22)【出願日】2018年8月30日
(65)【公開番号】特開2020-35679(P2020-35679A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 光利
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−038899(JP,A)
【文献】 特開2013−258842(JP,A)
【文献】 特開2017−123288(JP,A)
【文献】 特開2007−189839(JP,A)
【文献】 特開平09−265845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/58
B60R 16/02
H01R 13/52
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの取付孔に嵌入される本体部と、前記本体部に形成されて前記取付孔の開口縁に係合するパネル係合部とを有するインナー部材と、
前記取付孔の開口縁部にシール部が密着する環状のパネル密着部と、前記パネル密着部に連設されて前記取付孔の中心軸に対して電線が屈曲されるように前記電線を覆う筒状の電線収容部とを有し、前記インナー部材の後端側に取付けられるグロメットと、
前記本体部の後端側に突出して設けられ、前記電線収容部の天井内面に沿って延びる押圧支持部を有する突出部材と、
を備えたことを特徴とするインナー付きグロメット。
【請求項2】
前記本体部の後端側における外周に突出するフランジ部と、
前記パネル密着部の内周に形成されて前記フランジ部が差し込まれるフランジ嵌合溝と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のインナー付きグロメット。
【請求項3】
長円形状の開口を有する前記取付孔に嵌入される長円筒状に形成された前記本体部における前記突出部材は、前記本体部の長円開口に対して短手方向に架け渡されるように対向壁の後端側から突出したアーチ状に形成され、且つ前記本体部の長円開口における長手方向の略中央位置に少なくとも配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインナー付きグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナー付きグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両における車体とドアとの間に配索される電線束(電線)は、可撓性を有するグロメットに通されることで保護されるとともに防水性が確保される(特許文献1〜3を参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたグロメット付きコネクタは、コネクタ(インナー部材)と、コネクタの後部に装着されるグロメットとを備えて構成される。コネクタは、車両のパネルに形成された取付孔の開口縁に係合するパネル係合部と、取付孔の開口縁部に対向する環状のフランジ部とがそれぞれ外側に形成される。グロメットは、電線束を覆うような筒状の電線収容部と、フランジ部を覆うように嵌合し且つ開口縁部に対し密着するパネル密着部とを有する。
このようなグロメット付きコネクタは、コネクタのパネル係合部を取付孔の開口縁に係止させることで、パネル密着部に形成されたシール部がパネルの表面(取付孔の開口縁部)に密着してシールした状態で車両のパネルに組付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−15274号公報
【特許文献2】特開2007−189839号公報
【特許文献3】特開2017−123288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の取付け箇所のパネル形状によっては、取付スペースが狭く作業者の手が入るスペースがグロメット付きコネクタの周囲に無い場合がある。上記グロメット付きコネクタのパネル組付け時、パネル係合部を取付孔の開口縁に係止させるためには押し面となるグロメットのパネル密着部を指で押す必要があるが、グロメット付きコネクタの周囲にスペースが無いとパネル密着部を指で押すことができず、グロメット取付け作業が困難となる場合があった。即ち、グロメットはゴム等の弾性材料で構成されているので、電線収容部の天井を押してもグロメットが弾性変形してしまう。その為、電線収容部の天井を押してもパネル密着部に押圧力が十分に伝わらず、コネクタのパネル係合部を取付孔の開口縁に確実に係止させることができないためである。
【0006】
そして、コネクタのパネル係合部が取付孔の開口縁に確実に係止されていないと、グロメットのパネル密着部に形成されたシール部がパネルの表面に密着せず、シール性能が低下するおそれがある。また、コネクタのパネル係合部が取付孔の開口縁に確実に係止されていないグロメット付きコネクタは、車両走行時の振動等によってパネルの取付孔から脱落する可能性もある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、取付け箇所のパネル形状に係わらずパネルへの取付作業を容易に行うことができるインナー付きグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) パネルの取付孔に嵌入される本体部と、前記本体部に形成されて前記取付孔の開口縁に係合するパネル係合部とを有するインナー部材と、前記取付孔の開口縁部にシール部が密着する環状のパネル密着部と、前記パネル密着部に連設されて前記取付孔の中心軸に対して電線が屈曲されるように前記電線を覆う筒状の電線収容部とを有し、前記インナー部材の後端側に取付けられるグロメットと、前記本体部の後端側に突出して設けられ、前記電線収容部の天井内面に沿って延びる押圧支持部を有する突出部材と、を備えたことを特徴とするインナー付きグロメット。
【0009】
上記(1)の構成のインナー付グロメットによれば、インナー部材における本体部の後端側に突出して設けられた突出部材の押圧支持部が、グロメットにおける電線収容部の天井内面に沿って配設されている。そこで、パネル組付け時には、電線収容部の天井を上方から指で押すことで、弾性変形した電線収容部の天井内面が突出部材の押圧支持部に当接し、押圧力が突出部材に伝わる。即ち、作業者によるインナー付グロメットに対する押圧力は、突出部材を介して本体部のパネル係合部に確実に伝わる。従って、電線収容部の天井を指で押すことで、パネル係合部は取付孔の開口縁に確実に係合することができ、取付け箇所のパネル形状に係わらずパネルへの取付作業を容易に行うことができる。
【0010】
(2) 前記本体部の後端側における外周に突出するフランジ部と、前記パネル密着部の内周に形成されて前記フランジ部が差し込まれるフランジ嵌合溝と、を備えたことを特徴とする上記(1)に記載のインナー付きグロメット。
【0011】
上記(2)の構成のインナー付グロメットによれば、インナー部材における本体部のフランジ部が、グロメットにおけるパネル密着部のフランジ嵌合溝に挿し込まれている。そこで、パネル組付け時には、グロメットのパネル密着部を指で押すことで、押圧力が本体部のフランジ部に伝わる。即ち、作業者によるインナー付グロメットに対する押圧力は、フランジ部を介して本体部のパネル係合部に確実に伝わる。従って、グロメットにおけるパネル密着部又は電線収容部の少なくとも何れか一方を指で押すことで、パネル係合部は取付孔の開口縁に確実に係合することができ、パネルへの取付作業性が更に向上する。
【0012】
(3) 長円形状の開口を有する前記取付孔に嵌入される長円筒状に形成された前記本体部における前記突出部材は、前記本体部の長円開口に対して短手方向に架け渡されるように対向壁の後端側から突出したアーチ状に形成され、且つ前記本体部の長円開口における長手方向の略中央位置に少なくとも配置されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のインナー付きグロメット。
【0013】
上記(3)の構成のインナー付グロメットによれば、長円形状の開口を有する取付孔に嵌入される本体部は、長円開口を有する長円筒状に形成される。そして、長円筒状に形成された本体部における突出部材は、長円開口に対して短手方向に架け渡されるように対向壁の後端側から突出したアーチ状に形成され、且つ本体部の長円開口における長手方向の略中央位置に少なくとも配置される。
そこで、パネル組付け時に略中央位置の突出部材に伝わった押圧力は、長尺状のインナー部材の本体部全体に均等に伝わり易くなり、本体部に形成された複数のパネル係合部を取付孔の開口縁に確実に係合させることできる。
また、本体部の長円開口における長手方向の略中央位置で対向壁の間に架け渡されるようにアーチ状に形成された突出部材は、長円開口を有する長円筒状に形成されたことにより剛性が低下した本体部の略中央位置の剛性を上げ、対向壁の変形を抑えることができる。そこで、パネルの取付孔に嵌入された本体部の対向壁が内側に変形し、パネル係合部が取付孔の開口縁に係合できなくなってしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、取付け箇所のパネル形状に係わらずパネルへの取付作業を容易に行うことができるインナー付きグロメットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るインナー付きグロメットの分解斜視図である。
図2図1に示したインナー部材の組立途中を示す斜視図である。
図3図2に示したインナー部材と突出部材の分解斜視図である。
図4図3に示したインナー部材と突出部材を組み立てた状態の要部断面図である。
図5】本第1実施形態に係るインナー付きグロメットをパネルへ装着する際の装着作業を説明する図であって、(a)は装着前の斜視図、(b)は装着後の斜視図である。
図6】参考例に係るインナー付きグロメットの分解斜視図である。
図7図6に示したインナー付きグロメットをパネルへ装着する前の斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るインナー付きグロメットにおけるインナー部材の組立途中を示す斜視図である。
図9図8に示したインナー部材を組み立てた状態の斜視図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るインナー付きグロメットにおけるインナー部材の組立途中を示す斜視図である。
図11図10に示したインナー部材を組み立てた状態の斜視図である。
図12図11のXII−XII線に沿った断面矢視図である。
図13】本発明の第4実施形態に係るインナー付きグロメットにおけるインナー部材の組立途中を示す斜視図である。
図14図13に示したインナー部材を組み立てた状態の斜視図である。
図15図14のXV−XV線に沿った断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るインナー付きグロメット10の分解斜視図である。図2は、図1に示したインナー部材1の組立途中を示す斜視図である。図3は、図2に示したインナー部材1と突出部材4の分解斜視図である。図4は、図3に示したインナー部材1と突出部材4を組み立てた状態の要部断面図である。図5は、本第1実施形態に係るインナー付きグロメット10をパネル100へ装着する際の装着作業を説明する図であって、(a)は装着前の斜視図、(b)は装着後の斜視図である。
【0017】
本第1実施形態に係るインナー付きグロメット10は、図1及び図5に示すように、インナー部材1と、突出部材4と、グロメット5とを備えている。インナー付きグロメット10は、バックドア側のパネル100に形成された取付孔105に嵌め込まれて組付けられる。このインナー付きグロメット10は、自動車等の車両において、例えば、車体とバックドアとの間に配索されるワイヤハーネス(電線)33に組付けられ、ワイヤハーネス33を保護及び防水するものである。
【0018】
グロメット5は、図1に示すように、ゴム又はエラストマー等の弾性材料から一体成形されたもので、取付孔105の開口縁部107にシール部57が密着する環状のパネル密着部51と、パネル密着部51に連設されて取付孔105の中心軸Xに対してワイヤハーネス33が屈曲されるようにワイヤハーネス33を覆う筒状の電線収容部53と、を有する。
【0019】
パネル密着部51は、取付孔105の開口縁部107に押し付けられて密着するシール部57と、このシール部57の土台部分になる基部58と、筒状の電線収容部53の内部空間に連通する長円形状の開口部56とを有する細長形状に形成されている。
【0020】
シール部57は、押し付け力が加わると容易に撓むように形成されたリップ部59を有する(図15参照)。リップ部59は、取付孔105の開口縁部107に対し水密になるように形成されている。
【0021】
基部58は、長い長円形状の開口部56の周囲に形成される。そのため基部58は、パネル密着部51において略枠状の部分に形成される。開口縁部107に対向する基部58の対向面には、リップ部59が一体形成される。また、基部58の内周面(パネル密着部51の内側)には、フランジ嵌合溝52が形成される。
【0022】
フランジ嵌合溝52は、後述するインナー部材1のフランジ部15に対する嵌合部分として形成される。フランジ嵌合溝52は、フランジ部15の全周を差し込むことができるような溝形状に形成される。即ち、基部58の内周面を外周面に向けて凹ませ、この凹みが一周続くような溝形状に形成される。フランジ嵌合溝52は、フランジ部15の前面及び後面に接するような間隔で形成される。そこで、このようなフランジ嵌合溝52を有する基部58は、断面U字形状に形成される。
【0023】
電線収容部53は、ワイヤハーネス33を屈曲させて引出し方向を変更する方向変更筒部54と、曲げが自在になる部分としての蛇腹形状筒部55とを有している。方向変更筒部54は、パネル密着部51の後端に一体形成されている。方向変更筒部54は、ワイヤハーネス33をインナー部材1に固定されたコネクタ31から引き出した後、直交する向きに変更することができるように天井54aが形成されている。
【0024】
インナー部材1は、図1図4に示すように、絶縁性を有し、且つ硬質な合成樹脂で構成されている。ここで、硬質な合成樹脂とは、殆ど弾性変形しない又はグロメット5を構成する弾性材料と比較してはるかに弾性変形する量が小さい材料である。
インナー部材1は、図2に示すように、長い長円形状の開口を有する偏平な筒体を嵌入方向(取付孔105の中心軸X方向)に沿って長手方向に二分割された第1半割部11と第2半割部21とで構成される。
【0025】
第1半割部11及び第2半割部21は、図2及び図3に示すように、半長円形状に形成された本体部13の直線状の部分と半長円形状に形成された本体部23の直線状の部分とが相対した状態に配置されると共に、薄肉ヒンジ14によって互いの一端部が連結されている。第1半割部11及び第2半割部21は、弾性変形自在な薄肉ヒンジ14によって、互いに一端部同士が回動自在に連結されているため、第1半割部11及び第2半割部21の他端部は、互いに接離する。
【0026】
第2半割部21の他端部には、第1半割部11の他端部に向かって突出したアーム状に形成された係止突部18が形成されている。第1半割部11の他端部には、第2半割部21の係止突部18が侵入して係止自在な凹状の溝からなる係止凹部19が形成されている。
【0027】
係止突部18と係止凹部19とが係止された状態の第1半割部11及び第2半割部21は、対向壁として合わされた本体部13と本体部23とが、パネル100の取付孔105の開口形状に合わせた長円筒状に構成される。本体部13及び本体部23の先端側における外周には、取付孔105の開口縁106に係合するパネル係合部25が形成される。このパネル係合部25は、弾性を有する片持ちアーム形状に形成される。パネル係合部25は、この先端に外向きの突起が形成される。本第1実施形態においては、本体部13と本体部23とにそれぞれ2つずつパネル係合部25が形成されている。
【0028】
本体部13及び本体部23の後端側における外周には、図3及び図4に示すように、外方へ突出するフランジ部15がそれぞれ形成されている。フランジ部15は、取付孔105の開口縁部107に対し平行に対向するように形成される。
更に、本体部13及び本体部23の長手方向における略中央位置における外周には、後述する突出部材4の係止片44が係止されるロック部27が形成されている。本第1実施形態においては、本体部13と本体部23とにそれぞれ一対のロック部27が形成されている。
【0029】
第1半割部11における本体部13には、図2に示すように、ワイヤハーネス33の電線端末に接続されたコネクタ31を固定するための複数の固定部17が形成されている。固定部17は、コネクタ嵌合方向に突設された係止突起であり、コネクタ31のロック部を係止してコネクタ31をインナー部材1に固定する。
なお、これらのコネクタ31は、図5に示すように、バックドア側のパネル100に設けられた相手側コネクタ35に嵌合されて、バックドア側のワイヤハーネス33に電気的に接続される。
【0030】
突出部材4は、図3及び図4に示すように、絶縁性を有し、且つ硬質な合成樹脂で構成されている。突出部材4は、対向壁として合わされた本体部13及び本体部23の後端側に突出して設けられる。突出部材4は、互いに平行な対向壁部41,43と、対向壁部41,43の一端を連結する円弧状壁45とで構成された略U字形状に形成されている。
【0031】
対向壁部41,43の他端には、一対の係止片44と1つのパネル係合部46とがそれぞれ形成されている。突出部材4は、係止片44が本体部13及び本体部23のロック部27にそれぞれ係止されることで、インナー部材1に固定される。そこで、突出部材4は、対向壁として合わされた本体部13及び本体部23により画成された長円開口20に対して短手方向に架け渡されるよう後端側から突出したアーチ状に形成されている。
そして、図5に示すように、グロメット5がインナー部材1の後端側に取付けられると、突出部材4の円弧状壁45は、電線収容部53の方向変更筒部54における天井54aの天井内面に沿って延びる押圧支持部を構成する。
【0032】
次に、インナー部材1にグロメット5を装着するインナー付きグロメット10の組付作業について説明する。
先ず、図2に示すように、第1半割部11及び第2半割部21の他端部同士が離れた状態における本体部13の固定部17には、グロメット5に先通しされたワイヤハーネス33の端末に接続されたコネクタ31が固定される。
【0033】
そして、図3に示すように、第1半割部11及び第2半割部21の一端部同士が近づけられ、係止突部18が係止凹部19に係止されることで、ワイヤハーネス33がインナー部材1の長円開口20に挿通された状態となる。即ち、インナー部材1は、二分割された第1半割部11と第2半割部21とで構成されることにより、ワイヤハーネス33を長円開口20に先通しする必要がなくなり、組立性が向上する。
【0034】
次に、突出部材4の対向壁部41,43の間にワイヤハーネス33を収容しながら、本体部13及び本体部23のロック部27に突出部材4の係止片44を係止し、突出部材4をインナー部材1の後端に固定する(図1及び図4参照)。
【0035】
そして、図1に示したように、突出部材4が一体に固定されたインナー部材1の後端側に、グロメット5のパネル密着部51が近づけられる。次に、インナー部材1のフランジ部15がパネル密着部51のフランジ嵌合溝52に挿し込まれ、フランジ部15が全周にわたりフランジ嵌合溝52によって覆われた状態とされる。これにより、インナー部材1に対するグロメット5の装着が完了し、インナー付きグロメット10の組付が完了する。
【0036】
次に、本第1実施形態に係るインナー付きグロメット10をパネル100へ装着する際の装着作業について説明する。
図5の(a)に示すように、パネル100には、長い長円形の取付孔105が形成される。ここで、取付孔105が形成された取付パネル101には、取付孔105に近接して垂直パネル103が設けられている。
【0037】
先ず、取付孔105に対しインナー付きグロメット10のインナー部材1における本体部13及び本体部23を差し込んで、パネル係合部25及びパネル係合部46を取付孔105の開口縁106に係合させると共に、パネル密着部51のシール部57を取付孔105の開口縁部107に押し付けて密着させる。
【0038】
この際、上記のように取付孔105に近接して垂直パネル103が設けられているため、作業者の手が入る充分なスペースがインナー付きグロメット10の垂直パネル103側に無く、垂直パネル103側のパネル密着部51を指で押すことができない。
しかしながら、本第1実施形態に係るインナー付きグロメット10によれば、インナー部材1における本体部13及び本体部23の後端側に突出して設けられた突出部材4の円弧状壁(押圧支持部)45が、グロメット5における電線収容部53の天井54aの天井内面に沿って配設されている。
【0039】
そこで、パネル組付け時には、電線収容部53の天井54aを上方から指で押すことで、弾性変形した電線収容部53の天井54aの天井内面が突出部材4の円弧状壁45に当接し、押圧力が突出部材4に伝わる。即ち、作業者によるインナー付きグロメット10に対する押圧力は、突出部材を4介して本体部13及び本体部23のパネル係合部25と突出部材4のパネル係合部46とに確実に伝わる。
【0040】
従って、電線収容部53の天井54aを指で押すことで、パネル係合部25,46は取付孔105の開口縁106に確実に係合することができ、取付け箇所のパネル形状に係わらずパネル100への取付作業を容易に行うことができる。
【0041】
図6は、参考例に係るインナー付きグロメット510の分解斜視図である。図7は、図6に示したインナー付きグロメット510をパネル100へ装着する前の斜視図である。なお、参考例に係るインナー付きグロメット510における上記第1実施形態のインナー付きグロメット10と同様の構成については、同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
本参考例に係るインナー付きグロメット510は、図6に示すように、インナー部材501と、グロメット5とを備えている。
インナー部材501は、長い長円形状の開口を有する偏平な筒体を嵌入方向(取付孔105の中心軸X方向)に沿って長手方向に二分割された第1半割部511と第2半割部521とで構成される。
【0043】
本参考例においては、本体部13と本体部23とにそれぞれ3つずつパネル係合部25が形成されている。
インナー部材501にグロメット5を装着するインナー付きグロメット510の組付作業は、上記第1実施形態のインナー付きグロメット10の組付作業と同様である。
【0044】
次に、本参考例に係るインナー付きグロメット510をパネル100へ装着する際の装着作業について説明する。
先ず、取付孔105に対しインナー付きグロメット510のインナー部材501における本体部13及び本体部23を差し込んで、パネル係合部25を取付孔105の開口縁106に係合させると共に、パネル密着部51のシール部57を取付孔105の開口縁部107に押し付けて密着させる。
【0045】
この際、グロメット5における方向変更筒部54を挟んだ両側のパネル密着部51を指で押すことで、パネル係合部25を取付孔105の開口縁106に係合させる必要がある。ところが、上記のように取付孔105に近接して垂直パネル103が設けられているため、作業者の手が入る充分なスペースがインナー付きグロメット510の垂直パネル103側に無く、垂直パネル103側のパネル密着部51を指で押すことができない。
【0046】
また、グロメット5は弾性材料で構成されているので、電線収容部53の天井54aを押してもグロメット5が弾性変形してしまう。その為、電線収容部53の天井54aを押してもパネル密着部51に押圧力が十分に伝わらず、パネル係合部25を取付孔105の開口縁106に確実に係止させることができない。
【0047】
これに対し、上記第1実施形態のインナー付きグロメット10は、上述したように電線収容部53の天井54aを指で押すことで、インナー部材1に設けた突出部材4を介してパネル係合部25,46を取付孔105の開口縁106に確実に係合させることができる。そこで、上記第1実施形態のインナー付きグロメット10は、取付け箇所のパネル形状に係わらずパネル100への取付作業を容易に行うことができる。
【0048】
また、本第1実施形態に係るインナー付きグロメット10によれば、インナー部材1における本体部13及び本体部23のフランジ部15が、グロメット5におけるパネル密着部51のフランジ嵌合溝52に挿し込まれている。
そこで、パネル組付け時には、グロメット5のパネル密着部51を指で押すことで、押圧力が本体部13及び本体部23のフランジ部15に伝わる。即ち、作業者によるインナー付きグロメット10に対する押圧力は、フランジ部15を介して本体部13及び本体部23のパネル係合部25に確実に伝わる。従って、グロメット5におけるパネル密着部51又は電線収容部53の少なくとも何れか一方を指で押すことで、パネル係合部25は取付孔105の開口縁106に確実に係合することができ、パネル100への取付作業性が更に向上する。
【0049】
また、本第1実施形態に係るインナー付きグロメット10によれば、長円形状の開口を有する取付孔105に嵌入される本体部13及び本体部23は、長円開口20を有する長円筒状に形成されている。そして、長円筒状に形成された本体部13及び本体部23における突出部材4は、長円開口20に対して短手方向に架け渡されるように対向壁として合わされた本体部13と本体部23との後端側から突出したアーチ状に形成され、且つ本体部13及び本体部23の長円開口20における長手方向の略中央位置に配置されている。
【0050】
そこで、パネル組付け時に略中央位置の突出部材4に伝わった押圧力は、長尺状のインナー部材1における本体部13及び本体部23の本体部全体に均等に伝わり易くなり、本体部13及び本体部23に形成された複数のパネル係合部25と突出部材4のパネル係合部46とを取付孔105の開口縁106に確実に係合させることできる。
【0051】
また、本体部13及び本体部23の長円開口20における長手方向の略中央位置で対向壁として合わされた本体部13と本体部23との間に架け渡されるようにアーチ状に形成された突出部材4は、長円開口20を有する長円筒状に形成されたことにより剛性が低下した本体部13及び本体部23の略中央位置の剛性を上げ、本体部13及び本体部23の変形を抑えることができる。そこで、パネル100の取付孔105に嵌入された本体部13及び本体部23が内側に変形し、パネル係合部25が取付孔105の開口縁106に係合できなくなってしまうことを防止できる。
【0052】
図8は、本発明の第2実施形態に係るインナー付きグロメットにおけるインナー部材1Aの組立途中を示す斜視図である。図9は、図8に示したインナー部材1Aを組み立てた状態の斜視図である。なお、本第2実施形態に係るに係るインナー部材1Aにおける上記第1実施形態のインナー部材1と同様の構成については、同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
本発明の第2実施形態に係るインナー部材1Aは、図8に示すように、長い長円形状の開口を有する偏平な筒体を嵌入方向(取付孔105の中心軸X方向)に沿って長手方向に二分割された第1半割部11Aと第2半割部21Aとで構成される。
第1半割部11Aにおける本体部13Aの後端側には、電線収容部53の天井54aの天井内面に沿って延びる第1押圧支持部(押圧支持部)45Aを有する第1突出部(突出部材)4Aが設けられている。
【0054】
第1突出部4Aは、装着されたグロメット5の電線収容部53の天井54aに向かって突出するとともに、天井54aの天井内面に沿って延びる第1押圧支持部45Aの先端が突出方向(図8中、下方向)と反対方向に折り返された第1折り返し部41Aを有して略U字形状に形成され、本体部13Aに一体成形されている。この第1折り返し部41Aの先端部には、第2半割部21Aにおける本体部23Aの後端側に設けられた支持段部48に係合する係合段部47が形成されている。
【0055】
そして、図8に示すように、第1半割部11A及び第2半割部21Aの他端部同士が離れた状態における本体部13Aの固定部17には、グロメット5に先通しされたワイヤハーネス33の端末に接続されたコネクタ31が固定される。この際、コネクタ31から導出されたワイヤハーネス33は、第1突出部4Aの第1折り返し部41A内に配索されて纏められるので、作業性がよい。
【0056】
次に、図9に示すように、第1半割部11A及び第2半割部21Aの一端部同士が近づけられ、係止突部18が係止凹部19に係止されることで、ワイヤハーネス33がインナー部材1Aの長円開口20に挿通された状態となる。
係止突部18と係止凹部19とが係止された状態の第1半割部11A及び第2半割部21Aは、対向壁として本体部13Aと本体部23Aとが合わされることで、第1折り返し部41Aの係合段部47が支持段部48に係合する。支持段部48は、係合段部47が係合することで、第1突出部4Aの第1押圧支持部45Aに押圧力が作用した際、第1折り返し部41Aに伝わった押圧力を本体部23Aに伝えることができる。
【0057】
そして、本第2実施形態に係るインナー部材1Aは、上記第1実施形態に係るインナー部材1と同様に、インナー部材1Aのフランジ部15がパネル密着部51のフランジ嵌合溝52に挿し込まれ、フランジ部15が全周にわたりフランジ嵌合溝52によって覆われた状態とされることで、インナー部材1Aに対するグロメット5の装着が完了する。
【0058】
従って、インナー部材1Aにグロメット5が装着された本第2実施形態に係るンナー付きグロメットによれば、インナー部材1Aにおける本体部13A及び本体部23Aの後端側に突出して設けられた第1突出部(突出部材)4Aの第1押圧支持部(押圧支持部)45Aが、グロメット5における電線収容部53の天井54aの天井内面に沿って配設されている。
【0059】
そこで、パネル組付け時には、電線収容部53の天井54aを上方から指で押すことで、弾性変形した電線収容部53の天井54aの天井内面が第1突出部4Aの第1押圧支持部45Aに当接し、押圧力が第1突出部4Aに伝わる。即ち、作業者によるインナー付グロメットに対する押圧力は、第1突出部4A介して本体部13A及び本体部23Aのパネル係合部25に確実に伝わる。
【0060】
従って、電線収容部53の天井54aを指で押すことで、パネル係合部25は取付孔105の開口縁106に確実に係合することができる。そこで、本第2実施形態に係るンナー付きグロメットは、上記第1実施形態のインナー付きグロメット10と同様に、取付け箇所のパネル形状に係わらずパネル100への取付作業を容易に行うことができる。
【0061】
図10は、本発明の第3実施形態に係るインナー付きグロメットにおけるインナー部材1Bの組立途中を示す斜視図である。図11は、図10に示したインナー部材1Bを組み立てた状態の斜視図である。なお、本第3実施形態に係るに係るインナー部材1Bにおける上記第1実施形態のインナー部材1と同様の構成については、同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0062】
本発明の第3実施形態に係るインナー部材1Bは、図10に示すように、長い長円形状の開口を有する偏平な筒体を嵌入方向(取付孔105の中心軸X方向)に沿って長手方向に二分割された第1半割部11Bと第2半割部21Bとで構成される。
【0063】
第1半割部11Bにおける本体部13Bの後端側には、電線収容部53の天井54aの天井内面に沿って延びる第1押圧支持部(押圧支持部)45Baを有する第1突出部(突出部材)4Baが設けられている。
第1突出部4Baは、装着されたグロメット5の電線収容部53の天井54aに向かって突出するとともに、天井54aの天井内面に沿って延びる第1押圧支持部45Baの先端が突出方向(図10中、下方向)と反対方向に折り返された第1折り返し部41Bを有して略J字形状に形成され、本体部13Bに一体成形されている。
【0064】
第2半割部21Bにおける本体部23Bの後端側には、電線収容部53の天井54aの天井内面に沿って延びる第2押圧支持部(押圧支持部)45Bbを有する第2突出部(突出部材)4Bbが設けられている。
第2突出部4Bbは、装着されたグロメット5の電線収容部53の天井54aに向かって突出するとともに、天井54aの天井内面に沿って延びる第2押圧支持部45Bbの先端が突出方向(図10中、下方向)と反対方向に折り返されて第1押圧支持部45Baを覆っている第2折り返し部43Bを有して略J字形状に形成され、本体部23Bに一体成形されている。
【0065】
そして、図10に示すように、第1半割部11B及び第2半割部21Bの他端部同士が離れた状態における本体部13Bの固定部17には、グロメット5に先通しされたワイヤハーネス33の端末に接続されたコネクタ31が固定される。この際、コネクタ31から導出されたワイヤハーネス33は、第1突出部4Baの第1折り返し部41B内に配索されて纏められるので、作業性がよい。
【0066】
次に、図11に示すように、第1半割部11B及び第2半割部21Bの一端部同士が近づけられ、係止突部18が係止凹部19に係止されることで、ワイヤハーネス33がインナー部材1Bの長円開口20に挿通された状態となる。
係止突部18と係止凹部19とが係止された状態の第1半割部11B及び第2半割部21Bは、対向壁として本体部13Bと本体部23Bが合わされることで、第1突出部4Baにおける第1押圧支持部45Baと、第2突出部4Bbにおける第2押圧支持部45Bbとが重なる。
図12に示すように、これら第1押圧支持部45Baと第2押圧支持部45Bbとが重なることで、第2突出部4Bbの第2押圧支持部45Bbに押圧力が作用した際、第2押圧支持部45Bbに作用した押圧力を第1押圧支持部45Baに伝えることができる。そして、第1押圧支持部45Baに伝わった押圧力は、第1突出部4Baを介して本体部13Bに伝えることができる。
【0067】
そして、本第3実施形態に係るインナー部材1Bは、上記第1実施形態に係るインナー部材1と同様に、インナー部材1Bのフランジ部15がパネル密着部51のフランジ嵌合溝52に挿し込まれ、フランジ部15が全周にわたりフランジ嵌合溝52によって覆われた状態とされることで、インナー部材1Bに対するグロメット5の装着が完了する。
【0068】
従って、インナー部材1Bにグロメット5が装着された本第3実施形態に係るンナー付きグロメットによれば、インナー部材1Bにおける本体部13B及び本体部23Bの後端側に突出して設けられた第1突出部(突出部材)4Baの第1押圧支持部(押圧支持部)45Baと、第2突出部(突出部材)4Bbの第2押圧支持部(押圧支持部)45Bbとが、グロメット5における電線収容部53の天井54aの天井内面に沿って配設されている。
【0069】
そこで、パネル組付け時には、電線収容部53の天井54aを上方から指で押すことで、弾性変形した電線収容部53の天井54aの天井内面が第2突出部4Bbの第2押圧支持部45Bbに当接し、押圧力が第1押圧支持部45Baを介して第1突出部4Baにも伝わる。即ち、作業者によるインナー付グロメットに対する押圧力は、第1突出部4Ba及び第2突出部4Bb介して本体部13B及び本体部23Bのパネル係合部25に確実に伝わる。
【0070】
従って、電線収容部53の天井54aを指で押すことで、パネル係合部25は取付孔105の開口縁106に確実に係合することができる。そこで、本第3実施形態に係るンナー付きグロメットは、上記第1実施形態のインナー付きグロメット10と同様に、取付け箇所のパネル形状に係わらずパネル100への取付作業を容易に行うことができる。
【0071】
図13は、本発明の第4実施形態に係るインナー付きグロメット10Cにおけるインナー部材1Cの組立途中を示す斜視図である。図14は、図13に示したインナー部材1Cを組み立てた状態の斜視図である。図15は、図14のXV−XV線に沿った断面矢視図である。なお、本第4実施形態に係るに係るインナー部材1Cにおける上記第1実施形態のインナー部材1と同様の構成については、同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0072】
本発明の第4実施形態に係るインナー部材1Cは、図13に示すように、長い長円形状の開口を有する偏平な筒体を嵌入方向(取付孔105の中心軸X方向)に沿って長手方向に二分割された第1半割部11Cと第2半割部21Cとで構成される。
【0073】
第1半割部11Cにおける本体部13Cの後端側には、電線収容部53の天井54aの天井内面に沿って延びる第1押圧支持部(押圧支持部)45Caを有する第1突出部(突出部材)4Caが設けられている。
第1突出部4Caは、装着されたグロメット5の電線収容部53の天井54aに向かって突出するとともに、天井54aの天井内面に沿って延びる第1押圧支持部45Caの先端が突出方向(図13中、下方向)と反対方向に折り返された第1折り返し部41Cを有して略J字形状に形成され、本体部13Cに一体成形されている。
【0074】
第2半割部21Cにおける本体部23Cの後端側には、電線収容部53の天井54aの天井内面に沿って延びる第2押圧支持部(押圧支持部)45Cbを有する第2突出部(突出部材)4Cbが設けられている。
第2突出部4Cbは、装着されたグロメット5の電線収容部53の天井54aに向かって突出するとともに、天井54aの天井内面に沿って延びる第2押圧支持部45Cbの先端が突出方向(図13中、下方向)と反対方向に折り返されて第1押圧支持部45Caを覆っている第2折り返し部43Cを有して略J字形状に形成され、本体部23Cに一体成形されている。なお、ワイヤハーネス33が配索される第1折り返し部41Cは、第2折り返し部43Cよりも長く形成されている。
【0075】
そして、図13に示すように、第1半割部11C及び第2半割部21Cの他端部同士が離れた状態における本体部13Cの固定部17には、グロメット5に先通しされたワイヤハーネス33の端末に接続されたコネクタ31が固定される。この際、コネクタ31から導出されたワイヤハーネス33は、第1突出部4Caの第1折り返し部41C内に配索されて纏められるので、作業性がよい。
【0076】
更に、少なくとも第1突出部4Caの内壁面には、第1折り返し部41C内に配索されたワイヤハーネス33の一部の電線33Aが、図13中に想像線で示したように、第1折り返し部41Cから外へ出るのを規制する電線規制部49が突設されている。電線規制部49は、第1突出部4Caの内壁面からインナー部材1Cの後端側に斜め突出した突片である。なお、本第4実施形態に係るインナー部材1Cにおいては、電線規制部49が第2突出部4Cbの内壁面にも突設されている。
【0077】
次に、図14に示すように、第1半割部11C及び第2半割部21Cの一端部同士が近づけられ、係止突部18が係止凹部19に係止されることで、ワイヤハーネス33がインナー部材1Cの長円開口20に挿通された状態となる。
係止突部18と係止凹部19とが係止された状態の第1半割部11C及び第2半割部21Cは、対向壁として本体部13Cと本体部23Cが合わされることで、第1突出部4Caにおける第1押圧支持部45Caと、第2突出部4Cbにおける第2押圧支持部45Cbとが重なる。
図15に示すように、これら第1押圧支持部45Caと第2押圧支持部45Cbとが重なることで、第2突出部4Cbの第2押圧支持部45Cbに押圧力が作用した際、第2押圧支持部45Cbに作用した押圧力を第1押圧支持部45Caに伝えることができる。そして、第1押圧支持部45Caに伝わった押圧力は、第1突出部4Caを介して本体部13Cに伝えることができる。
【0078】
そして、本第4実施形態に係るインナー部材1Cは、上記第1実施形態に係るインナー部材1と同様に、インナー部材1Cのフランジ部15がパネル密着部51のフランジ嵌合溝52に挿し込まれ、フランジ部15が全周にわたりフランジ嵌合溝52によって覆われた状態とされる。これにより、インナー部材1Cに対するグロメット5の装着が完了し、インナー付きグロメット10Cの組付が完了する。
【0079】
従って、インナー部材1Cにグロメット5が装着された本第4実施形態に係るインナー付きグロメット10Cによれば、インナー部材1Cにおける本体部13C及び本体部23Cの後端側に突出して設けられた第1突出部(突出部材)4Caの第1押圧支持部(押圧支持部)45Caと、第2突出部(突出部材)4Cbの第2押圧支持部(押圧支持部)45Cbとが、グロメット5における電線収容部53の天井54aの天井内面に沿って配設されている。
【0080】
そこで、パネル組付け時には、電線収容部53の天井54aを上方から指で押すことで、弾性変形した電線収容部53の天井54aの天井内面が第2突出部4Cbの第2押圧支持部45Cbに当接し、押圧力が第1押圧支持部45Caを介して第1突出部4Caにも伝わる。即ち、作業者によるインナー付グロメットに対する押圧力は、第1突出部4Ca及び第2突出部4Cb介して本体部13C及び本体部23Cのパネル係合部25に確実に伝わる。
【0081】
従って、電線収容部53の天井54aを指で押すことで、パネル係合部25は取付孔105の開口縁106に確実に係合することができる。そこで、本第4実施形態に係るインナー付きグロメット10Cは、上記第1実施形態のインナー付きグロメット10と同様に、取付け箇所のパネル形状に係わらずパネル100への取付作業を容易に行うことができる。
【0082】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
上述した各実施形態におけるインナー部材1,1A,1B,1Cは、コネクタ31を固定するための複数の固定部17を備え、別体に構成された複数のコネクタ31が一体に組み合わされることで、多極のコネクタを構成している。本発明のインナー部材はこのような構成に限定されるものではなく、例えば、一つの多極コネクタに外装されるインナー部材として構成することもできる。
【0083】
ここで、上述した本発明に係るインナー付きグロメットの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] パネル(100)の取付孔(105)に嵌入される本体部(本体部13,13A,13B,13C及び本体部23,23A,23B,23C)と、前記本体部に形成されて前記取付孔の開口縁(106)に係合するパネル係合部(25)とを有するインナー部材(1,1A,1B,1C)と、
前記取付孔の開口縁部(107)にシール部(57)が密着する環状のパネル密着部(51)と、前記パネル密着部に連設されて前記取付孔の中心軸(X)に対して電線(ワイヤハーネス33)が屈曲されるように前記電線を覆う筒状の電線収容部(53)とを有し、前記インナー部材の後端側に取付けられるグロメット(5)と、
前記本体部の後端側に突出して設けられ、前記電線収容部の天井内面(天井54aの天井内面)に沿って延びる押圧支持部(45、45A、45Ba:45Bb、45Ca:45Cb)を有する突出部材(4、4A、4Ba:4Bb、4Ca:4Cb)と、
を備えたことを特徴とするインナー付きグロメット(10、10C)。
[2] 前記本体部(本体部13,13A,13B,13C及び本体部23,23A,23B,23C)の後端側における外周に突出するフランジ部(15)と、
前記パネル密着部(51)の内周に形成されて前記フランジ部が差し込まれるフランジ嵌合溝(52)と、
を備えたことを特徴とする上記[1]に記載のインナー付きグロメット(10、10C)。
[3] 長円形状の開口を有する前記取付孔(105)に嵌入される長円筒状に形成された前記本体部(本体部13,13B,13C及び本体部23,23B,23C)における前記突出部材(4、4Ba:4Bb、4Ca:4Cb)は、前記本体部の長円開口(20)に対して短手方向に架け渡されるように対向壁(本体部13,23、本体部13B,23B、本体部13C,23C)の後端側から突出したアーチ状に形成され、且つ前記本体部の長円開口における長手方向の略中央位置に少なくとも配置されていることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のインナー付きグロメット(10、10C)。
【符号の説明】
【0084】
1…インナー部材
4…突出部材
5…グロメット
10…インナー付きグロメット
13…本体部
23…本体部
25…パネル係合部
33…ワイヤハーネス(電線)
45…押圧支持部
51…パネル密着部
53…電線収容部
54a…天井
57…シール部
100…パネル
105…取付孔
106…開口縁
107…開口縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15