(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752461
(24)【登録日】2020年8月21日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】短繊維状物供給装置
(51)【国際特許分類】
B65G 65/48 20060101AFI20200831BHJP
B01J 4/02 20060101ALI20200831BHJP
B65D 88/68 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
B65G65/48 D
B01J4/02 E
B65D88/68 C
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-116148(P2017-116148)
(22)【出願日】2017年6月13日
(65)【公開番号】特開2019-1581(P2019-1581A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592096111
【氏名又は名称】株式会社ヨシカワ
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広治
(72)【発明者】
【氏名】大川 高寛
(72)【発明者】
【氏名】石田 健一
(72)【発明者】
【氏名】板山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】稲村 准一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和秀
【審査官】
板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−081442(JP,A)
【文献】
特開2012−086912(JP,A)
【文献】
特開2012−001368(JP,A)
【文献】
特開平11−322080(JP,A)
【文献】
特許第4817431(JP,B2)
【文献】
特開平11−059912(JP,A)
【文献】
実開平05−037779(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/48
B65D 88/68
B01J 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維状物を定量的に供給するための短繊維状物供給装置であって、
底板を有する円筒容器と、
前記円筒容器内に配置された複数の回転羽根と、
前記回転羽根に連結され、前記回転羽根を回転させるモーターとを備え、
前記底板は、短繊維状物の排出口を有しており、
前記円筒容器内に投入された短繊維状物を前記回転羽根の回転により前記排出口を通じて前記円筒容器外へ排出させるように構成され、
前記排出口は、回転しているときの前記回転羽根の前方サイドエッジが、該排出口の外周側縁と下流側縁との交点より該排出口の中心側縁と下流側縁との交点を先に通過する形状であり、前記中心側縁から前記外周側縁まで延びる前記排出口の下流側縁と、前記底板の上面とのなす角度は、90°未満であることを特徴とする短繊維状物供給装置。
【請求項2】
前記回転羽根は、平面視で双曲線または双曲線に近似した多角線を形成していることを特徴とする請求項1に記載の短繊維状物供給装置。
【請求項3】
前記排出口は、扇形状を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の短繊維状物供給装置。
【請求項4】
前記排出口は、回転しているときの前記回転羽根の前方サイドエッジが、該排出口の中心側縁と上流側縁との交点より該排出口の外周側縁と上流側縁との交点に先に到達する形状であることを特徴とする請求項3に記載の短繊維状物供給装置。
【請求項5】
前記モーターを正方向または逆方向に回転させる駆動制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の短繊維状物供給装置。
【請求項6】
前記モーターの駆動電流を検出する電流検出部をさらに備え、
前記駆動制御手段は、前記モーターの駆動電流が電流基準値よりも大きいときに、前記モーターを逆方向に回転させることを特徴とする請求項5に記載の短繊維状物供給装置。
【請求項7】
前記モーターの回転速度を検出する速度検出部をさらに備え、
前記駆動制御手段は、前記モーターの回転速度が速度基準値よりも低いときに、前記モーターを逆方向に回転させることを特徴とする請求項5に記載の短繊維状物供給装置。
【請求項8】
前記回転羽根は、その幅が該回転羽根の回転中心からの距離に従って徐々に小さくなるテーパー形状を有していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の短繊維状物供給装置。
【請求項9】
前記短繊維状物は、長さが0.1mm〜30mm、幅が1μm〜100μm、含水率が30〜80%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の短繊維状物供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設、し尿処理施設、その他排水処理施設から発生する汚泥を脱水する為に使用される短繊維状物を供給するための短繊維状物供給装置に関し、特に、容器に投入された短繊維状物を回転羽根により排出口から落下させて供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有底外筒の底板上に間隙を介して粉粒体貯留内筒を同心円に支持し、間隙から安息角を形成して内外筒間通路に上記粉粒体を排出し、底板の中心部に突設した回転軸に中央回転羽根を設け、上記回転羽根の先端に上記外筒に沿って設けた回転リングを接続し、該リングに底板の中央部に向う複数の回転羽根を設け、上記通路に排出口を開口してなる粉粒体を供給する装置が提案されている。
【0003】
しかしながら、
図11に示すように、長方形の回転羽根200が排出口201上を通過する際、該回転羽根200のエッジと、排出口201の縁との間に繊維状物(短繊維状物を含む)が圧密されてしまい、その結果、繊維状物の流動性が悪化し落下せずに留まり、回転羽根200と底板202の間に繊維状物が噛み込むという問題が発生している。特に、脱水助剤供給装置を使用し長さが短い短繊維状物を供給する場合に、底板202と回転羽根200の間に繊維状物が挟まることにより抵抗が増え、回転羽根200が停止したり、回転羽根200または回転羽根200を駆動するモーターや変速機に負荷がかかり、変形や破損を来すことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−35236号公報
【特許文献2】特許第4817431号公報
【特許文献3】特開2009−255000号公報
【特許文献4】特許第4011955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、紛体流体の供給装置については触れているが、繊維状物の供給装置には触れておらず、繊維状物を供給するのに適した回転羽根の形状や落とし口の形状、さらには運転方法については何ら言及されていない。
【0006】
上記特許文献2では、難脱水性の汚泥において、汚泥への分散がきわめて良好なため取扱いが容易で、少量の添加で安定して低含水率の脱水ケーキが得られ、且つ、加圧脱水の場合には脱水ケーキの剥離性を改善させることができ、特定性状の繊維を使用する脱水助剤及びそれを用いた汚泥の脱水方法と装置を提供することを目的とした提案がなされている。しかし、底板の中心部に設けた回転軸に回転羽根を設け、上記通路に繊維状物の排出口を開口して、繊維状物を回転羽根により排出口から落下させ供給する装置については何ら言及されていない。
【0007】
上記特許文献3は、ホッパの内部に投入された水分を含む短繊維状物が、ホッパ内に具備されたパドル羽根の回転に伴って、ホッパの中央部に掻き集められてスクリューフィーダ部の近傍に運ばれ、スクリューフィーダ部の回転に伴って、ホッパの排出部から定量的に順次排出されるものである。特許文献3で開示されているパドル羽根は、短繊維状物をホッパの中央部に掻き集める目的で具備されているものであり、回転羽根で繊維状物を直接的に排出させるためのものではない。
【0008】
上記特許文献4には、回転テーブルを用いて貯槽内に収容された粉粒体などの収容物を連続的にかつ定量的に供給する装置であるテーブルフィーダ、特に短繊維の供給に好適なテーブルフィーダ、並びにテーブルフィーダを備えた排水、汚泥、液状廃棄物の処理システムが開示されている。この特許文献4の処理システムは、回転テーブル及び撹拌羽根を有するものであり構造が複雑であり、また短繊維の場合、排出口での撹拌羽根の引っ掛かりを確実になくすことは困難であった。
【0009】
このように、より簡単な構成で、排出口や撹拌羽根の構造を改良することにより短繊維の詰りや引っ掛かりを確実に防ぐごとが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、下記対策をとることにより、安定して短繊維状物を供給できることを見出した。
1.排出口は、回転羽根が排出口上を通過する際、回転羽根の前方サイドエッジが、排出口の外周側縁と下流側縁との交点より該排出口の中心側縁と下流側縁との交点を先に通過する形状であること。
排出口をこのような形状とすることにより、回転羽根と底板の間に短繊維状物が入りこむことがなく、安定して繊維状物を供給できることが実験により確認された。その理由については、回転羽根と排出口との間で短繊維状物が圧密し難くなったためであると推測される。
【0011】
2.排出口の下流側縁の断面が鋭角であること。
回転羽根と底板の間に短繊維状物が挟まり、回転羽根の回転により短繊維状物を引きずる場合がある。このような場合、排出口の下流側縁の断面を鋭角とすること(すなわち、底板の上面と下流側縁との角度を90°未満とすること)により、回転羽根が排出口上を通過する際、回転羽根の前方サイドエッジと、排出口の下流側縁とにより、回転羽根に引きずられている短繊維状物に対しせん断力が作用する結果、短繊維状物を排出口に落下させることができる。このため、回転羽根と底板の間に発生する短繊維状物の噛み込みを軽減できる。
【0012】
3.回転羽根のサイドエッジは平面視で双曲線または双曲線に近似した多角形状とすること。
図4(a)乃至(c),
図5,
図6に示すように、隣り合う2つの回転羽根のサイドエッジを双曲線形状または双曲線に近似した多角形にすることにより、
図11に示す従来の矩形状と比較し、短繊維状物が排出口に落下し易くなり安定供給が可能になる。本現象のメカニズムについては、回転羽根のサイドエッジを双曲線形状または双曲線に近似した多角形にすることにより、短繊維状物を回転中心側から外側に掃き出す効果が高まったことによると推測される。従来、排出口よりも内側に位置する回転羽根の部位と底板との間に入り込んだ短繊維状物は吐き出されづらく、挟まれる短繊維状物が徐々に増えて回転羽根が浮き上がる現象があった。双曲線形状または双曲線に近似した多角形にすることで回転羽根6の回転中心側は太くなり、回転軸の周辺は回転羽根で覆われるので、短繊維状物が入り込みづらくなる。また、回転羽根の強度が高くなるため、浮き上がりづらい構造となった。
【0013】
4.回転羽根を正回転のみならず逆回転もさせながら運転すること。
回転羽根と底板の間に短繊維状物が挟まった場合に、正回転で運転を継続すると、咬みこんだ短繊維状物は脱離され難く、短繊維状物が噛みこむ量は増えていく。しかし、短繊維状物が回転羽根と底板の間に噛みこんだ状態で、正回転から逆回転に切り替えることにより、短繊維状物の噛み込みが解消できる。
【0014】
以下に説明する本発明によれば、底板と回転羽根の間に短繊維状物が挟まることがなく、スムーズに短繊維状物を排出口から排出できる短繊維状物供給装置が提供される。
【0015】
本発明の一態様は、短繊維状物を定量的に供給するための短繊維状物供給装置であって、底板を有する円筒容器と、前記円筒容器内に配置された複数の回転羽根と、前記回転羽根に連結され、前記回転羽根を回転させるモーターとを備え、前記底板は、短繊維状物の排出口を有しており、前記円筒容器内に投入された短繊維状物を前記回転羽根の回転により前記排出口を通じて前記円筒容器外へ排出させるように構成され、前記排出口は、回転しているときの前記回転羽根の前方サイドエッジが、該排出口の外周側縁と下流側縁との交点より該排出口の中心側縁と下流側縁との交点を先に通過する形状であ
り、前記中心側縁から前記外周側縁まで延びる前記排出口の下流側縁と、前記底板の上面とのなす角度は、90°未満であることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記回転羽根は、平面視で双曲線または双曲線に近似した多角線を形成していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記排出口は、扇形状を有していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記排出口は、回転しているときの前記回転羽根の前方サイドエッジが、該排出口の中心側縁と上流側縁との交点より該排出口の外周側縁と上流側縁との交点に先に到達する形状であることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記モーターを正方向または逆方向に回転させる駆動制御手段をさらに備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記モーターの駆動電流を検出する電流検出部をさらに備え、前記駆動制御手段は、前記モーターの駆動電流が電流基準値よりも大きいときに、前記モーターを逆方向に回転させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記モーターの回転速度を検出する速度検出部をさらに備え、前記駆動制御手段は、前記モーターの回転速度が速度基準値よりも低いときに、前記モーターを逆方向に回転させることを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記回転羽根は、その幅が該回転羽根の回転中心からの距離に従って徐々に小さくなるテーパー形状を有していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、短繊維状物は、長さが0.1mm〜30mm、幅が1μm〜100μm、含水率が30〜80%の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、排出口は、回転羽根が排出口上を通過する際、回転羽根の前方側エッジが、排出口の外周側縁と下流側縁との交点より該排出口の中心側縁と下流側縁との交点を先に通過する形状を有するので、短繊維状物は、回転羽根の前方側エッジによって、排出口の下流側縁上を外側に送られながら、排出口に落下する。従って、底板と回転羽根の間に短繊維状物が挟まることがなく、短繊維状物はスムーズに排出口から排出される。また、底板と回転羽根の間に短繊維状物が挟まることがないので、回転羽根を駆動するモーターや変速機に過大な負荷が掛かることを防止することができ、安全運転が連続的に可能となる。さらに、回転羽根の変形および破損を防ぐこともできる。このように、本発明によれば、短繊維状物を定量的に供給できるため、下水処理施設、し尿処理施設、その他排水処理施設から発生する汚泥に短繊維状物を添加して脱水等の処理を施すにあたり、処理効果を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】繊維状物を定量的に供給することができる短繊維状物供給装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)乃至
図3(c)は、回転羽根が排出口を通過する様子を示す図である。
【
図4】
図4(a)乃至
図4(c)は、回転羽根の実施形態を示す図である。
【
図11】従来の繊維状物供給装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、短繊維状物を定量的に供給することができる短繊維状物供給装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、短繊維状物供給装置は、短繊維状物収容部1と、底板3を有する円筒容器4と、円筒容器4内に配置された複数の回転羽根6と、回転羽根6に連結され、回転羽根6を回転させるモーター8とを備えている。回転羽根6は、回転軸11に固定されており、モーター(M)8には、回転軸11および変速機12を介して回転羽根6が連結されている。モーター8が駆動されると、モーター8のトルクは変速機12および回転軸11を通じて回転羽根6に伝達され、回転羽根6が回転軸11を中心に回転する。
【0022】
短繊維状物収容部1内の短繊維状物は、連続的または断続的に円筒容器4に送られるようになっている。円筒容器4の上端は開口しており、この開口部から円筒容器4の内部に短繊維状物を投入可能となっている。回転羽根6は、円筒容器4の底板3の上に配置されており、回転羽根6は底板3の上面に接触している。回転羽根6と底板3との間には微小な隙間が形成されてもよい。底板3は、短繊維状物の排出口5を有している。円筒容器4内に投入された短繊維状物は、回転羽根6の回転により排出口5を通じて円筒容器4外へ排出される。その単位時間当たりの排出量は、回転羽根6の回転速度によって制御することができる。
【0023】
短繊維状物供給装置は、円筒容器4の排出口5を通じて排出された短繊維状物を受け取るコンベア20と、コンベア20から送られた短繊維状物を貯留する貯留槽21をさらに備えている。円筒容器4の排出口5はシュート25に接続されており、コンベア20はシュート25の下方に配置される。排出口5から排出された短繊維状物はシュート25を通ってコンベア20上に落下し、コンベア20によって貯留槽21に運ばれ、貯留槽21に貯留される。貯留槽21の形状は特に限定されないが、直胴型が好ましい。
【0024】
前記短繊維状物供給装置は、モーター8の駆動電流を検出する電流検出部31と、モーター8の回転速度を検出する速度検出部32と、モーター8を正方向または逆方向に回転させる駆動制御手段35を備えている。一実施形態では、電流検出部31または速度検出部32のいずれか一方のみを設けてもよい。駆動制御手段35は、モーター8の駆動電流を電流基準値と比較し、さらにモーター8の回転速度を速度基準値と比較する比較部37と、比較部37の比較結果に基づいてモーター8の回転方向を変えるモーター制御部38とを備えている。
【0025】
モーター制御部38は、モーター8の駆動電流が電流基準値よりも大きい場合、またはモーター8の回転速度が速度基準値よりも低い場合は、モーター8に制御信号を発して該モーター8を逆方向に回転させる。短繊維状物が回転羽根6と排出口5にひっかかりモーター8の回転速度が低下した場合、或いはモーター8の過負荷でモーター8の駆動電流が増大した場合、回転羽根6を逆方向に回転させることで短繊維状物のひっかかりを解消することが可能であり、短繊維状物供給装置の運転を継続することができる。
【0026】
上述した電流基準値および速度基準値は、正常運転時のモーター8の駆動電流および回転速度であってもよい。または、短繊維状物が排出口5にひっかかる前の回転羽根6に付着したことによるモーター8の回転速度の低下や変動を解消するために、上述した電流基準値は、正常運転時のモーター8の駆動電流よりも低い値であってもよい。同様の理由により、上述した速度基準値は、正常運転時のモーター8の回転速度よりも高い値であってもよい。さらに、モーター8および回転羽根6の正転・逆転を短時間に数回行い、ひっかかった短繊維状物を振り落して後、通常運転に戻してもよいし、その制御は任意に設定可能である。
【0027】
更に、短繊維状物の付着によるひっかかりを生じる前兆の回転速度の変動を検出することによって回転羽根6の回転方向を変更したり、回転速度を変更したりして、例えば回転羽根6の短繊維状物の付着を剥がして、ひっかかりの発生を未然に防ぐ制御を行うことも可能である。
【0028】
図2は、
図1に示す短繊維状物供給装置のA−A線断面図である。
図2に示すように、本実施形態では4つの回転羽根6が設けられており、それぞれ回転軸11に固定されている。排出口5は回転羽根6の下方に位置しており、中心側縁5aと、外周側縁5bと、上流側縁5cと、下流側縁5dとから形成されている。外周側縁5bは、底板3の半径方向において中心側縁5aよりも外側に位置している。中心側縁5aおよび外周側縁5bは、円弧形状を有しており、外周側縁5bは中心側縁5aよりも長く、上流側縁5cは、中心側縁5aの一端から外周側縁5bの一端まで延びており、下流側縁5dは、中心側縁5aの他端から外周側縁5bの他端まで延びている。本実施形態では、排出口5は扇形状である。
【0029】
前記排出口5は、回転羽根6が排出口5上を通過する際、該回転羽根6の前方サイドエッジが、該排出口5の外周側縁5bと下流側縁5dとの交点より該排出口5の中心側縁5aと下流側縁5dとの交点を先に通過する形状を有している。短繊維状物は、回転羽根6の前方サイドエッジ6aによって、排出口5の下流側縁5dの上を外側に送られながら、前記中心側縁5aの他端から外周側縁5bの他端へ向かって排出口5に落下する。従って、底板3と回転羽根6の間に短繊維状物が挟まることがなく、短繊維状物はスムーズに排出口5から排出され回転羽根6を駆動するモーター8や変速機12に過大な負荷が掛かることを防止することができ、安定運転が連続的に可能となる。さらに、例えば短繊維状物引っ掛かりによる回転羽根6の変形および破損を防ぐこともできる。
【0030】
前記回転羽根6は、
図2に示す様に、平面視でその幅が該回転羽根6の回転中心からの距離に従って徐々に小さくなるテーパー形状を有している。さらに、隣り合う2つの回転羽根6のサイドエッジ6a,6bは、双曲線または双曲線に近似した多角線を形成している。より具体的には、隣り合う2つの回転羽根6のうちの一方の前方サイドエッジ6aと、他方の回転羽根6の後方サイドエッジ6bは、双曲線または双曲線に近似した多角線を形成する。このような形状によれば、回転する回転羽根6は、短繊維状物を外側に押し出しやすくなり、短繊維状物の詰まりを防止することができる。
【0031】
次に
図3を用いて回転羽根6の動作を詳細に説明する。
図3(a)乃至
図3(c)は、回転羽根6が排出口5を通過する様子を示す図である。
図3(a)矢印に示すように、回転する回転羽根6の前方サイドエッジ6aは、排出口5の中心側縁5aと上流側縁5cとの交点より排出口5の外周側縁5bと上流側縁5cとの交点に先に到達する。
【0032】
更に、回転羽根6が回転するにつれて、回転羽根6は排出口5の中心側縁5aおよび外周側縁5b上を進行し、この時、例えば底板3の中心付近に存在する短繊維状物は前方サイドエッジ6aの前記テーパー形状(双曲線または双曲線に近似した多角線形状)により底板3上の外側へ、押し出して移動させられる。これによって、前記底板3の中心付近に存在する短繊維状物は前記排出口5へ落下することになる。
【0033】
そして、回転羽根6がさらに回転すると、
図3(b)に示すように、回転羽根6の前方サイドエッジ6aは、排出口5の中心側縁5aと下流側縁5dとの交点を通過し、前記落下されなかった短繊維状物を、前記中心側縁5aの他端から外周側縁5bの他端へ向かう排出口5の開口部分に追い込んでいき、落下させることが可能となる。この時、短繊維状物を回転羽根6のサイドエッジ6aで切断して、排出口5に落下させることができる。また、排出口5の下流側縁5d付近に付着した短繊維状物を、回転羽根6の回転により回転羽根6のサイドエッジ6aで切断し、回転羽根6が一周回って排出口5へ落下させることもできる。
その後、
図3(c)に示すように、その回転羽根6は、排出口5の外周側縁5bと下流側縁5dとの交点を通過する。この様にして、複数の回転羽根6の回転によって繰り返し短繊維状物を、下流側縁5d上を半径方向外側に送りながら、排出口5内に落下させることができる。
【0034】
図4(a)乃至
図4(c)は、回転羽根6の実施形態を示す図である。いずれの実施形態でも、図に示す様に隣り合う2つの回転羽根6のうちの一方のサイドエッジ6aと、他方のサイドエッジ6bは、平面視で双曲線または双曲線に近似した多角線を形成している。また、回転羽根6は、その幅が該回転羽根6の回転中心からの距離に従って徐々に小さくなるテーパー形状を有している。
尚、
図2〜
図4(a)乃至
図4(c)に示す例では、回転羽根6は4本であるが、
図5に示すように、回転羽根6のサイドエッジ6a,6bは、曲線ではなく直線を用いて構成された双曲線に近似した多角線を形成してもよい。
また、
図6に示すように、サイドエッジ6a,6bが双曲線または双曲線に近似した多角線であれば、回転羽根6は3本でもよい。さらに、図示しないが、サイドエッジ6a,6bが双曲線または双曲線に近似した多角線であれば、回転羽根6は2本でも、1本でも良い。
【0035】
図7は、
図2に示す底板3の排出口5のB−B線断面図である。
図7に示すように、排出口5の下流側縁5dは、鋭角の断面を有する。より具体的には、排出口5の下流側縁5dと底板3の上面とのなす角度は、90°未満である。このような鋭角の断面形状を有する下流側縁5dは、短繊維状物が回転羽根6によって下流側縁5dに押されるときに、短繊維状物を切断することができる。切断された短繊維状物は排出口5内に落下するので、短繊維状物による詰まりを防止することができる。回転羽根6を逆回転させたときに、短繊維状物を回転羽根6のサイドエッジ6bと排出口5の上流側縁5cとで挟み込んで切断して落下させるために、上流側縁5cと底面3の上面とのなす角度を90°未満としてもよい。
【0036】
本発明で対象となる短繊維状物は、長さが0.1mm〜30mmであり、材質は特に限定されないが、紙の解砕物、わら、オガクズ等のセルロース類、ビスコース、レーヨン、ビスコースレーヨン、ナイロン、ポリエステル[ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など]、ポリアクリロニトリルなどのアクリル化合物、ビニロンなどのポリビニルアルコール系化合物、ポリオレフィン系化合物[ポリエチレン、ポリプロピレン]、ポリウレタン系化合物の繊維状物が挙げられる。
図8は、本発明の短繊維状物供給装置に使用される繊維状物の代表性状を示す。
【0037】
短繊維状物の幅は特に限定されないが、1μm〜100μmの幅の繊維状物が汚泥の脱水処理用途として好適に用いられる。また、短繊維状物の含水率を30〜80%の範囲に保つことにより、水分を有する汚泥などの被処理対象物との親和性が高まり、被処理対象物中での分散性が向上し、少量の添加で安定して低含水率の脱水ケーキが得られる。しかし、長さが0.1mm〜30mmであり、幅が1μm〜100μm、含水率が30〜80%の繊維状物は、水分を含んでいることが影響し付着性が強く、安息角が高く、圧密し易い性状を持つため、流動性が低い。このため、従来の装置では、繊維状物を安定して供給することが難しかった。
【0038】
[実験例]
以下に示す仕様の供給装置を使用して、
図8の項目Bに記載の短繊維状物の供給を行い、
図9に示す実施例1〜実施例7、比較例8の条件下で実験を実施した。各条件下での実験結果を
図10に示す。
短繊維状物供給装置の仕様は以下の通りである。
モーター8: 0.1kW、100V
回転羽根6の直径:200mm
円筒容器4の直径:250mm
排出口5の外周長さ:200mm
排出口5の幅:90mm
【0039】
図10に示す実験結果から、本発明の実施形態に係る排出口5および回転羽根6を用いることにより、短繊維状物の噛み込み量が低減されることが分かる。さらに、回転羽根6の正逆回転と、排出口5の下流側縁5dの鋭角断面との組み合わせにより、短繊維状物の噛み込み量がさらに低減されることが分かる。
【符号の説明】
【0040】
1 繊維状物収容部
3 底板
4 円筒容器
5 排出口
6 回転羽根
8 モーター
11 回転軸
12 変速機
20 コンベア
21 貯留槽
25 シュート
31 電流検出部
32 速度検出部
35 駆動制御手段
37 比較部
38 モーター制御部