(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752502
(24)【登録日】2020年8月21日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20200831BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20200831BHJP
C08F 6/00 20060101ALI20200831BHJP
C08F 220/56 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q1/00
C08F6/00
C08F220/56
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-30810(P2016-30810)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-149649(P2017-149649A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】阿部 峰大
(72)【発明者】
【氏名】松村 正人
【審査官】
岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−218728(JP,A)
【文献】
特開平09−067244(JP,A)
【文献】
特開2010−254974(JP,A)
【文献】
特開2015−209494(JP,A)
【文献】
特開2009−137915(JP,A)
【文献】
特表2014−521810(JP,A)
【文献】
特表2004−501993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
A61Q 1/00
C08F 6/00
C08F 299/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料用樹脂を含み、
前記化粧料用樹脂は、N−置換アクリルアミド誘導体及び(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールを重合することで得られる構造により水中で下限臨界溶液温度型温度応答性を示し、
前記(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールが、メタクリル酸メトキシ−ジエチレングリコール、アクリル酸メトキシ−トリエチレングリコール、メタクリル酸ブトキシ−ジエチレングリコール、アクリル酸2−エチルヘキシル−ジエチレングリコール、及びアクリル酸エトキシ−ジエチレングリコールの群れから選ばれる少なくとも一つを含み、
カルボキシル基を有することによりpH応答性を示す皮膜を形成することが可能な、
化粧料。
【請求項2】
前記化粧料用樹脂の1質量%水溶液における下限臨界溶液温度が0℃以上40℃以下の範囲内である請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記化粧料用樹脂の1質量%水溶液におけるpHが3以上5以下の範囲内である請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記N−置換アクリルアミド誘導体が、N−イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドの群れから選ばれる少なくとも一つである請求項1乃至3いずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールが、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールである請求項1乃至3いずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記N−置換アクリルアミド誘導体が、N−イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド又はジメチルアクリルアミドの群れから選ばれる少なくとも一つであり、
前記(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールが、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールである請求項1乃至3いずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
前記化粧料用樹脂における前記カルボキシル基が、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート及びアクリル酸ω−カルボキシ−ジカプロラクトンを重合することで得られる構造由来である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
前記化粧料用樹脂における前記カルボキシル基を有する構成単位の含有量が、全構成単位に対して1質量%以上、30質量%以下である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項9】
前記化粧料用樹脂が、さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合することで得られる構造を有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、(メタ)アクリル酸n−ブチルである請求項9に記載の化粧料。
【請求項11】
前記化粧料用樹脂の重量平均分子量がポリスチレン換算で5,000以上200,000以下の範囲内である請求項1乃至10のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項12】
肌用化粧料である請求項1乃至11のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜形成剤として用いられる化粧料用樹脂及びこれを配合する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料には、皮膜形成等の目的のため、樹脂成分が配合されている。このような化粧料用樹脂に求められる性質として、皮膜が汗や水で落ちないように耐水性が求められると同時に、洗浄剤等によって皮膜を容易に洗い落とすことができるように洗浄性が求められる。疎水性の高い皮膜を形成する樹脂は耐水性に優れるが、洗浄性に劣るという欠点がある一方、親水性の高い皮膜を形成する樹脂は、洗浄性に優れるが耐水性に劣るという欠点がある。
【0003】
これらの性質を同時に実現する皮膜を形成する樹脂として特許文献1には、カルボキシル基含有ジオールを共重合させたポリエーテルポリウレタンが開示されているが、耐水性及び洗浄性の両立という点で未だ満足のいくものではない。
【0004】
近年、洗顔とメイク落としを同時に行いたいという要望により、弱酸性の環境下において疎水性を示し、弱塩基性の環境下において水溶性を示す皮膜を形成することが可能な化粧料用樹脂が望まれている。このような化粧料用樹脂を化粧料に配合することによって、耐水性が求められる場合、すなわち化粧料を適用している間は、汗や皮脂等によって弱酸性の環境となるために皮膜は疎水性を示す。一方、洗浄性が求められる場合、すなわち化粧料を洗い落とす際は、石けん等によって弱塩基性の環境となるため、皮膜を容易に洗い落とすことができる。
【0005】
上記の性質を有する樹脂として、11−メタクリルアミドウンデカン酸と2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウムの共重合体が例示されている(例えば非特許文献1を参照)。この共重合体はpH応答性を示すため、皮膜を化粧料用粉体に被覆することで弱酸性の環境下では耐水性を示し、弱塩基性の環境下では容易に洗い落とすことのできる性能が付与されることが提案されている。しかし、この共重合体は、陰イオン性官能基の荷電状態のみによってpH応答性を制御するため、環境によっては、充分に効果が発揮されないおそれがある。
【0006】
一方、pH応答性とともに温度応答性を示す樹脂として特定の構造を有する不飽和アミドと不飽和カルボン酸及び架橋成分からなるマイクロビーズが例示されている(例えば特許文献2を参照)。このマイクロビーズは35℃以上かつ弱塩基性領域で親水性が向上し、水への膨潤性が向上する。pH応答性と温度応答性の双方を有することで、疎水性から親水性への変化が臨界的挙動に近くなっている点で、耐水性及び洗浄性の両立という性能が大きく期待できるが、この構造体は皮膜形成剤として使用することはできない。
【0007】
また、別のpH応答性と温度応答性を示す樹脂として、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートが例示されている(例えば特許文献3を参照)。この樹脂は皮膚や粘膜へ適用可能な皮膜剤として用いることができる記載があるが、低いpH領域かつ低い温度領域で水溶性を示すため、耐水性及び洗浄性の両立という性能は期待できない。また、皮膚の粘膜へ塗布した際の、有機溶媒やペースト状基剤等の他の成分による感触(刺激、密着性等)についての記載は検証されているが、樹脂が形成する皮膜自身の感触についての言及は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO1999/47072号公報
【特許文献2】特開平9−136921号公報
【特許文献3】特開2001−181131号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】フレグランスジャーナル2010/7号26−30頁(フレグランスジャーナル社刊行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は温度応答性とpH応答性を示すことで、上述のような耐水性と洗浄性を併せ持つ皮膜を形成し、かつ皮膚に適用した際に感触に優れた化粧料用樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る化粧料用樹脂は、水中で下限臨界溶液温度型温度応答性を示し、カルボキシル基を有することによりpH応答性を示す皮膜を形成することが可能である。
【0012】
本発明に係る化粧料用樹脂は、前記化粧料用樹脂の1質量%水溶液における下限臨界溶液温度が0℃以上40℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る化粧料用樹脂は、前記化粧料用樹脂の1質量%水溶液におけるpHが3以上5以下の範囲内であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る化粧料用樹脂は、N−置換アクリルアミド誘導体及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールを重合することで得られる構造によって、水中で下限臨界溶液温度を示すことが好ましい。
【0015】
本発明に係る化粧料用樹脂は、前記N−置換アクリルアミド誘導体が、N−イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドの群れから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0016】
本発明に係る化粧料用樹脂は、前記(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールが、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールであることが好ましい。
【0017】
本発明に係る化粧料用樹脂は、前記N−置換アクリルアミド誘導体が、N−イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド又はジメチルアクリルアミドの群れから選ばれる少なくとも一つであり、前記(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールが、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る化粧料用樹脂は、前記カルボキシル基が、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート及びアクリル酸ω−カルボキシ−ジカプロラクトンを重合することで得られる構造由来であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る化粧料用樹脂は、前記カルボキシル基を有する構成単位の含有量が、全構成単位に対して1質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る化粧料用樹脂は、さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合することで得られる構造を有することが好ましい。
【0021】
本発明に係る化粧料用樹脂は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、(メタ)アクリル酸n−ブチルであることが好ましい。
【0022】
本発明に係る化粧料用樹脂は、重量平均分子量がポリスチレン換算で5,000以上200,000以下の範囲内であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る化粧料は、前記化粧料用樹脂を含有することを特徴とする。
【0024】
本発明に係る化粧料は、肌用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る化粧料用樹脂は、洗浄に適した温度応答性及びpH応答性に優れるとともに、感触に優れる皮膜を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0027】
[化粧料用樹脂について]
本実施形態の化粧料用樹脂は、温度及びpHに応じて、水への溶解性が変化するものであって、温度応答性とpH応答性の両方を有するものである。例えば、下限臨界溶液温度(以下、LCSTと記載する)型温度応答性を示す樹脂に、陰イオン性官能基を導入することにより、温度応答性とpH応答性を示す樹脂となる。本実施形態の化粧料用樹脂は、低いpHで低いLCSTを有し、高いpHで高いLCSTを有する。従って、この化粧料用樹脂は、温度が一定の場合に、あるpH以下では水に不溶(疎水性)となり、あるpH以上では水に溶解(親水性)する。この性質によって、本実施形態の化粧料用樹脂は、弱酸性の汗などには耐久性を示し、弱アルカリ性の石鹸水などで容易に洗い落とすことができる皮膜が形成可能となる。
【0028】
本実施形態の化粧料用樹脂は、温度応答性の指標として、中和剤の非存在下で、1質量%水溶液におけるLCSTが0℃以上40℃以下の範囲内であることが好ましい。このLCSTが0℃未満の場合は、高pH領域におけるLCSTも低くなるため、化粧料用樹脂を使用する0〜40℃において、すべてのpH領域において充分な水溶性が得られないおそれがある。また、このLCSTが40℃を越える場合は、化粧料用樹脂を使用する0〜40℃において、すべてのpH領域で化粧料用樹脂は水溶性となり、化粧料用樹脂としてのpH応答性の意義が失われる。
【0029】
本実施形態の化粧料用樹脂は、pH応答性の指標として、中和剤の非存在下で、1質量%水溶液におけるpHが3以上5以下の範囲内であることが好ましい。このように非中和の化粧料用樹脂が3以上5以下の範囲でpHを持つことにより、所望のpH応答性を有することになる。すなわち、非中和の化粧料用樹脂が3未満のpHを有する場合は、陰イオン性が高すぎるために低いpHの環境下でも水溶性となり、理想的なpH応答性が得られないおそれがあり、非中和の化粧料用樹脂が5を超えるpHを有する場合は、陰イオン性が低すぎるためにpH応答性が低くなるおそれがある。
【0030】
本実施形態の化粧料用樹脂は、N−置換アクリルアミド誘導体及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールを重合することで得られる構造によって、水中で下限臨界溶液温度を示すことが好ましい。すなわち、本実施形態の化粧料用樹脂は、N−置換アクリルアミド誘導体を重合した構造、又は(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールを重合した構造、又はN−置換アクリルアミド誘導体と(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールとを併用して重合した構造を有し、この構造の親水性が温度によって変動することで、化粧料用樹脂が0℃以上40℃以下の範囲内のLCSTを有しやすくなる。特に、化粧料用樹脂から形成される皮膜が、優れた感触となるように、硬い皮膜を形成するN−置換アクリルアミド誘導体と柔軟な皮膜を形成する(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールとを併用することが好ましい。併用比は望む感触とpH応答性に従って任意に選択可能である。
【0031】
N−置換アクリルアミド誘導体としては、N−イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドの群れから選ばれる一種または複数種が使用可能である。N−イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドを用いることで、0℃以上40℃以下の範囲内のLCSTを有しやすくなるとともに、生体親和性に優れた皮膜を形成することができる。(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールとしては、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールが使用可能である。メタクリル酸メトキシジエチレングリコールを用いることで、0℃以上40℃以下の範囲内のLCSTを有しやすくなるとともに、他の(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールと比較してべたつきの少ない柔軟な皮膜を形成することができる。N−置換アクリルアミド誘導体と(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールとを併用する場合も、N−イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドの群れから選ばれる一種または複数種と、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールとが使用可能である。この場合、特に肌用化粧料に最適である、つっぱらず、かつ、適度なハリ感を与えることのできる皮膜を形成することができる。尚、本明細書では、「(メタ)アクリ((meth)acry−)」は、「アクリ(acry−)」および/または「メタクリ(methacry−)]を意味する。
【0032】
N−置換アクリルアミド誘導体の使用量は、化粧料用樹脂を形成するために使用する不飽和単量体の全量に対して70質量%以上99質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールの使用量は、化粧料用樹脂を形成するために使用する不飽和単量体の全量に対して15質量%以上30質量%以下であることが好ましい。N−置換アクリルアミド誘導体と(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールとを併用する場合は、それらの質量比は、N−置換アクリルアミド誘導体:(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコール=85:15〜50:50とすることが好ましい。
【0033】
本実施形態の化粧料用樹脂から形成される皮膜は、通常人体が暴露されるpHで使用されるため、水に溶解/非溶解の境界となるpHが6〜8の範囲内であることが好ましい。これにより、化粧料用樹脂から形成される皮膜は、弱酸性の汗などには耐久性を示し、弱アルカリ性の石鹸水などで容易に洗い落とすことができる。特にpH7〜8の範囲内であることが好ましい。
【0034】
本実施形態の化粧料用樹脂は、カルボキシル基が、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート及びアクリル酸ω−カルボキシ−ジカプロラクトンを重合することで得られる構造由来であることが好ましい。これにより、化粧料用樹脂がpH応答性を示すことになる。pH応答性を付与するために化粧料用樹脂に導入される陰イオン性官能基として、カルボキシル基を採用した場合、環境のpHが6〜8でpH応答性を示すようになる。すなわち、化粧料用樹脂の水に溶解/非溶解となる境界がpH6〜8に存在するようになる。カルボキシル基が(メタ)アクリル酸等の上記不飽和単量体の由来であることが特に好ましい。この場合、より好ましいpH領域であるpH7〜8でpH応答性を示すようになり、化粧料用樹脂として使用しやすくなる。尚、カルボキシル基を導入するための上記不飽和単量体は一種または複数種を使用することが可能である。
【0035】
本実施形態の化粧料用樹脂は、カルボキシル基を有する構成単位の含有量が、全構成単位に対して1質量%以上、30質量%以下であることが好ましい。カルボキシル基を有する構成単位の含有量が、化粧料用樹脂の全構成単位に対して1質量%より少ない場合、化粧料用樹脂のpH応答性(すなわち感受性)が低くなるおそれがある。カルボキシル基を有する構成単位の含有量が、全構成単位に対して30質量%を超える場合、化粧料用樹脂の陰イオン性が高すぎるために低pHの環境下でも水溶性となり、目的とするpH応答性が得られないおそれがある。
【0036】
本実施形態の化粧料用樹脂は、N−置換アクリルアミド誘導体及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシポリエチレングリコールからなる不飽和単量体と、カルボキシル基を有する不飽和単量体とに、さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体を共重合することで得られる構造を有することが好ましい。この場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを由来とする疎水性構造が化粧料用樹脂に導入される。このような疎水性構造が化粧料用樹脂に導入されるとLCSTが下降し、化粧料用樹脂が0℃以上40℃以下の範囲にLSCTを持ちやすくなる。但し、所望の化粧料用樹脂の特性により疎水性構造が必要ではない場合もある。従って、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを由来とする構成単位は化粧料用樹脂の全構成単位に対して、0質量%以上20質量%以下とすることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、(メタ)アクリル酸n−ブチルであることが好ましい。アクリル酸n−ブチルの場合、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールと同程度の柔軟さを皮膜に付与するため、感触を損なわずに導入しやすい。メタクリル酸n−ブチルの場合、それ自体が化粧料用樹脂として使用してもつっぱり感などの不快感のない硬さの皮膜を形成するため、感触を損なわずに導入しやすい。
【0037】
本実施形態の化粧料用樹脂は、重量平均分子量が5,000以上200,000以下が好ましい。化粧料用樹脂の重量平均分子量が5,000未満の場合、化粧料用樹脂から形成される皮膜のハリ付与性、ヘアセット性などの特性が充分に得られないおそれがある。化粧料用樹脂の重量平均分子量が200,000を超える場合、化粧料用樹脂から形成される皮膜が過剰なつっぱり感や過剰な硬さになりやすく、使用感の悪い化粧料となるおそれがある。
【0038】
[化粧料について]
本実施形態の化粧料は、上記の化粧料用樹脂を含有している。本実施形態の化粧料は、肌用化粧料等として形成される。肌用化粧料としては、ファンデーション、化粧下地、口紅、アイライナー、アイシャドー等のメーキャップ化粧料や、化粧水、乳液、モイスチャークリーム、パック、マッサージクリーム等のスキンケア化粧料、制汗剤、防臭剤、紫外線防御剤等が例示される。本実施形態の化粧料は、その他の化粧料、例えば、毛髪用化粧料、睫毛用化粧料、爪用化粧料等として形成してもよい。
【0039】
本実施形態の化粧料は、上記の化粧料用樹脂の他に、溶媒を含有し、さらに、必要に応じて、添加剤が含まれた組成物として調製される。化粧料に対する化粧料用樹脂の含有量は、特に制限されないが、例えば、化粧料の全成分の総量に対して、0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%である。このような範囲であれば、化粧料用樹脂の機能を充分に得ることができる。
【0040】
本実施形態の化粧料に含まれる溶媒としては、従来から化粧料に使用されているものであれば、特に制限されるものではなく、水、エタノールなどが例示される。
【0041】
本実施形態の化粧料に含まれる添加剤としては、従来から化粧料に使用されている原材料であれば、特に制限されるものではなく、例えば、体質顔料、色剤(着色顔料)、パール剤、ラメ剤、油分、ワックス、保湿剤、多価アルコール等が挙げられる。
【0042】
体質顔料としては、マイカ、セリサイト、タルク、カオリンなどの粘度鉱物の粉砕品、無水ケイ酸、酸化セリウム、シリカ、ステアリン酸亜鉛、含フッ素金雲母、合成タルク、硫酸バリウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、炭酸マグネシウム等が例示される。
【0043】
色剤としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、赤酸化鉄、群青、酸化チタン、酸化亜鉛、コンジョウなどを挙げることができる。
【0044】
パール剤としては、二酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン処理雲母チタン、コンジョウ処理雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ処理雲母チタン、酸化クロム処理雲母チタン、黒酸化チタン雲母チタン、アクリル樹脂被覆アルミニウム末、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化チタン被覆ガラス粉、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等が例示される。
【0045】
ラメ剤としては、樹脂や金属粉末を使用することができ、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム積層末、ポリエチレンテレフタレート・金積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレン・ポリエステル積層末、ポリエチレン・ポリエチレンテレフタレート積層末、アクリル樹脂被覆アルミニウム末等が例示される。さらに、これらの粉末を法定色素または無機顔料で着色したものを用いることもできる。
【0046】
油分としては、炭化水素油、エステル油、シリコーン油などが例示され、具体的には、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素油、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、バチルアルコール等の高級アルコール、セチルー2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、2−オクチルドデシルミリステート、ネオペンチルグリコールー2−エチルヘキサノエート、トリオクタン酸グリセリル、テトラオクタン酸ペンタエリスリトール、ステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、イソプロピルミリステート、ミリスチルミリステート、トリオレイン酸グリセリル等のエステル油、オリーブ油、アボカド油、ホホバ油、ヒマワリ油、サフラワー油、椿油、マカデミアナッツ油、ミンク油、ラノリン、液状ラノリン、酢酸ラノリン、ヒマシ油等の油脂、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン系油分、フッ素変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、パーフロロポリエーテル、パーフロロカーボン等のフッ素系油分等が含まれる。
【0047】
ワックスとしては、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ビースワックス、モクロウ、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィンワックス等が例示される。
【0048】
保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、尿素、ソルビトール、ベタイン、アミノ酸及びその塩、ピロリドンカルボン酸及びその塩、乳酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩、ワセリン等が例示される。
【0049】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)、糖アルコール類(キシリトール、ソルビトール等)等が例示される。
【0050】
本実施形態の化粧料は、上記添加剤の他、ジメチコン、メチコン、シランカップリング剤、アルキル変性シリコーン、シリコーンレジンなどのシリコーン化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステルとその塩、パーフルオロアルキルシラン、テフロン(登録商標)、パーフルオロアルキルカルボン酸などのフッ素化合物、PEG10−ジメチコンなどのジメチコン由来の界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、紫外線防止剤、毛髪栄養剤、植物油、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖類、乳化剤、増粘剤等が含まれていてもよい。上記シリコーン化合物は、エモリエント剤として使用することができる。また、本実施形態の化粧料には、その効果が阻害されない程度であれば、化粧料用樹脂以外の樹脂やオリゴマー成分が含まれていてもよい。
【0051】
本実施形態の化粧料の調製方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、各原材料を各々混合し、必要に応じて溶剤などに分散又は溶解させて、湿式成型することで、化粧料を調製することができる。化粧料用樹脂を配合させるにあたっては、固形状の状態で混合させてもよいし、溶液又は分散液の状態で混合させてもよい。また、化粧料用樹脂の重合反応後の反応液をそのまま用いても構わない。
【0052】
本実施形態の化粧料は上記化粧料用樹脂が含まれていることで、弱酸性の汗などには耐久性を示し、弱アルカリ性の石けんなどで容易に洗い落とすことができるとともに、例えば肌用化粧料の内、メーキャップ化粧料では、長時間にわたって良好な使用感が持続し、また、化粧崩れもしにくく、化粧持ちに優れるものとなり、スキンケア化粧料では、長時間にわたって肌のハリ感が持続し、同時にべたつき感も抑制される。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
〔化粧料用樹脂の製造〕
表1および表2に示す不飽和単量体(質量%)の混合物100質量部とエタノール250部を、窒素ガス導入管、温度計、撹拌装置、冷却器を備えた1L容量の四つ口フラスコに仕込み、系中を窒素ガスで置換した。昇温し、還流状態となった後、1.4質量部の2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)を添加することで反応を開始させた。4時間後、溶媒を除去し、50質量%の化粧料用樹脂溶液を得た。
【0054】
なお、表1および表2に示す不飽和単量体の略称は以下の通りである。
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド
DEAA:ジエチルアクリルアミド
DMAA:ジメチルアクリルアミド
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
ITCA:イタコン酸
CEA:アクリル酸β−カルボキシエチル
HEA−SC:2−アクリロイルオキシエチルコハク酸
HEA−DCP:アクリル酸ω−カルボキシ−ジカプロラクトン
HEA−PH:フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート
MDE−MA:メタクリル酸メトキシ−ジエチレングリコール
MTE−A:アクリル酸メトキシ−トリエチレングリコール
BDE−MA:メタクリル酸ブトキシ−ジエチレングリコール
EHDE−A:アクリル酸2−エチルヘキシル−ジエチレングリコール
EDE−A:アクリル酸エトキシ−ジエチレングリコール
BMA:メタクリル酸n−ブチル
BA:アクリル酸n−ブチル
EA:アクリル酸エチル
HEA:アクリル酸2―ヒドロキシエチル
DE−A:アクリル酸ジエチレングリコール
ST:スチレン
HEMA−P:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル−リン酸エステル
AMPS:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
〔pHおよびLCSTの評価〕
各実施例及び比較例にて得られた化粧料用樹脂溶液に樹脂固形分として1質量%となるように水を添加し、4℃で撹拌・溶解させた。得られた水溶液のpHを測定した後、この水溶液を昇温し、濁りがみとめられる温度をLCSTとして判定した。4℃で溶解しない場合、0℃に冷却して分散させた液のpHを測定した。
〔重量平均分子量の測定〕
各実施例及び比較例にて得られた化粧料用樹脂溶液から溶媒を蒸発させて乾固し、固形状の樹脂を得た。これをテトラヒドロフランに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(昭和電工株式会社製 SHODEX GPC SYSTEM 11)により重量平均分子量を測定した。測定条件の詳細は下記の通りである。
・カラム:GPC KF−800P、GPC KF−805、GPC KF−803、GPC KF−801(昭和電工株式会社製)の4本直列
・移動相:テトラヒドロフラン
・流速:1mL/分
・カラム温度:40℃
・検出器:示差屈折率検出器
・分子量換算:ポリスチレン
〔皮膜のpH応答性の評価〕
各実施例及び比較例にて得られた化粧料用樹脂溶液をエタノールに溶解した液をPETフィルム上に塗工し、80℃で3時間、熱風乾燥させることで樹脂皮膜を作成した。作成した皮膜をpH5〜8に調節した緩衝液に25℃の環境下、30分間浸漬し、皮膜の溶解性を目視で評価し、結果は以下に示す評価基準で表1に示した。なお、緩衝液は以下に示す緩衝液を用いた。
pH5〜5.5:0.5mol/L 酢酸緩衝液
pH6〜8:0.3mol/L リン酸緩衝液
[評価基準]
pH6〜8の間に溶解/非溶解のはっきりとした境界がある。:○
pH6〜8の間に溶解/非溶解のややはっきりとした境界がある。:△
pH6〜8の間に溶解/非溶解の境界がない。:×
〔肌用化粧料としてのpH応答性の評価〕
各実施例及び比較例の樹脂溶液12質量部、エタノール88質量部、VICTORIA BLUE R(青色染料)0.005質量部を混合することで、評価用樹脂溶液を調製した。得られた評価用樹脂溶液を前腕内側部に塗布し、乾燥後の25℃における洗浄性を以下の評価基準に従って評価した。
[評価基準]
水で青色に着色された皮膜が落ちるはっきりとした境界がpH6〜8の間に存在する。:○
水で青色に着色された皮膜が落ちるややはっきりとした境界がpH6〜8の間に存在する。:△
水で青色に着色された皮膜が落ちる境界がpH6〜8の間に存在しない。(pH6〜8いずれの水に対して落ちない又は落ちる。):×
〔肌用化粧料としての感触の評価〕
各実施例及び比較例の樹脂溶液12質量部、エタノール88質量部を混合することで、評価用樹脂溶液を調製した。得られた評価用樹脂溶液を前腕内側部に塗布し、乾燥後の25℃における感触を以下の評価基準に従って評価した。
[評価基準:ハリ]
過度につっぱらずににハリを感じる。:○
ややつっぱりを感じる。:△
過度につっぱる。:×
[評価基準:べたつき]
べたつかない。:○
ややべたつく。:△
過度にべたつく。:×
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
LCSTを示す構造とカルボキシル基をもつ実施例1〜27の化粧料用樹脂は、皮膜のpH応答性、皮膜の感触、肌用化粧料としての性能評価のいずれも、pH応答性樹脂として充分な性能をもつことがわかった。一方、構造内にカルボキシル基を有さない比較例1、3、4、及びLCSTを有さない比較例2の樹脂はpH応答性を示す化粧料用樹脂としての性能が充分でないことがわかった。