特許第6752509号(P6752509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752509
(24)【登録日】2020年8月21日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】温度検出装置を備えたガスコンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20200831BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   F24C3/12 X
   F24C3/12 J
   A47J27/00 109L
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-90635(P2016-90635)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-198405(P2017-198405A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】石川 善克
(72)【発明者】
【氏名】徳永 昌之
(72)【発明者】
【氏名】谷野 涼
(72)【発明者】
【氏名】藤井 拓
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 秀明
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−122944(JP,U)
【文献】 特開2010−092707(JP,A)
【文献】 特開2012−233601(JP,A)
【文献】 特開2005−140397(JP,A)
【文献】 特開2008−134046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00− 3/14
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスコンロ本体の上面のトッププレートに形成したバーナ用開口を経て、その外周に形成された炎孔部が前記トッププレートの上方に突出するように設けられた環状のコンロバーナと、
点消火操作部の操作に基づいて前記コンロバーナの点消火および火力の制御を行う制御部と、
前記コンロバーナにて加熱される調理用具の底面温度を検出する温度検出装置と、を備えたガスコンロであって、
前記温度検出装置が、前記ガスコンロ本体の任意の固定部に固定されて縦方向に伸びる固定側支持部材と、
前記固定側支持部材の外側に嵌挿されるとともに、上方に付勢され、かつ、上下動可能に支持された移動側支持筒と、
前記移動側支持筒の上端に配設され、前記調理用具の上下動に追随して上下動することにより、前記調理用具の底面に常時当接するように構成された当接体と、
前記当接体の下面側に、前記当接体と熱的に結合するような態様で配設された第1サーミスタおよび第2サーミスタと、を備え、
前記第1サーミスタおよび前記第2サーミスタとして、同一温度において、前記第1サーミスタの抵抗値が前記第2サーミスタの抵抗値より大きくなるような関係にある2つのサーミスタを用い、
前記制御部が、所定温度範囲である第1温度範囲において、前記第1サーミスタによって前記調理用具の底面温度を検出し、前記第1温度範囲より低温側に設定される温度範囲である第2温度範囲において、前記第2サーミスタによって前記調理用具の底面温度を検出するように構成されているとともに、
前記第1温度範囲と前記第2温度範囲とは、途切れることなく連続した一つの温度範囲を構成しており、
前記第1温度範囲より低温側の前記第2温度範囲における前記調理用具の底面温度を前記第2サーミスタにより検出し、前記第2温度範囲より高温側の前記第1温度範囲における前記調理用具の底面温度を前記第1サーミスタにより検出することで、前記第1温度範囲と前記第2温度範囲から構成される前記一つの温度範囲の全体にわたって一つのサーミスタで温度検出を行う場合に比べて温度検出の精度が高まるように構成されていること
を特徴とする温度検出装置を備えたガスコンロ。
【請求項2】
前記制御部が、所定の設定温度を目標値として、前記温度検出装置の検出温度が前記目標値より小さいときに、前記コンロバーナの火力を所定の大火力とし、前記温度検出装置の検出温度が前記目標値より大きいときに前記コンロバーナの火力を所定の設定最小火力とする、自動温度調節機能を備え、
前記所定の設定温度を180℃以上にすることができ、かつ、前記所定の設定温度を70℃以下にすることができるように構成されていること
を特徴とする請求項1記載の温度検出装置を備えたガスコンロ。
【請求項3】
前記第1温度範囲に含まれ、かつ、前記第2温度範囲に含まれる温度を、前記第1サーミスタ、および、前記第2サーミスタが検出した場合において、前記第1サーミスタによる検出温度と前記第2サーミスタによる検出温度の差が所定の値以上のとき、前記コンロバーナによる加熱を行わないように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の温度検出装置を備えたガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに関し、詳しくは、調理中の鍋などの調理用具の温度を検出するための温度検出装置を備えたガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロの中には、調理中の鍋などの調理用具の温度を検出するための温度検出装置を備えたガスコンロがあり、そのようなガスコンロに用いられる温度検出装置の一つに、例えば特許文献1に記載されているような温度検出装置がある。
【0003】
この温度検出装置は、ガスコンロやガステーブルなどの調理機器に載置された鍋などの調理用具の温度を検出するための温度検出装置であって、調理機器の任意の固定部に固定されて縦方向に伸びる固定側支持部材と、固定側支持部材の外側に嵌挿され、上下動可能に支持された移動側支持筒と、移動側支持筒の上端に配設され、調理用具の上下動に追随して上下動することにより、調理用具の底面に常時当接するように構成された当接体と、当接体の下面側に、当接体と熱的に結合するような態様で配設されたサーミスタとを備えている。
【0004】
この温度検出装置を構成するサーミスタが制御部に接続された調理機器を用いて調理を行う場合、調理用具(鍋)の底面の温度によってサーミスタの抵抗値が変化し、このサーミスタの抵抗値の変化によって調理用具(鍋)の底面の温度が検出されることになる。
【0005】
ところで、近年は、サーミスタを用いた温度検出装置によって調理用具底面の温度を検出し、その検出温度に応じて制御部が調理機器の加熱力を自動的に調節して揚げ物調理を行う、いわゆる自動温度調節による揚げ物調理機能を備えた調理機器が普及してきている。
【0006】
そして、自動温度調節による揚げ物調理機能を備えた調理機器の場合、自動温度調節に係る設定温度は通常160℃〜200℃程度の範囲にあり、一つのサーミスタによって調理用具の底面の温度を検出した場合にも、160℃の低温側から200℃の高温側まで実用上問題のない精度で温度を検出することができるため、特に不都合はないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−233601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、自動温度調節に係る設定温度が例えば、50℃から200℃と広くなると、温度に対するサーミスタの抵抗値の変化特性が非線形であることから、検出精度を維持することが困難になる。
【0009】
一般的に、制御部にはマイクロコンピュータが用いられ、制御部において、サーミスタの抵抗値が電圧に変換され、その電圧が、マイクロコンピュータが備えるA/Dコンバータによってデジタルデータに変換される。しかしながら、温度に対するサーミスタの抵抗値の変化特性が非線形であるため、広い温度範囲に亘って精度よくA/D変換することが困難であり、温度の検出精度が低下するという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するもので、広い温度範囲に亘って精度よく調理用具の底面温度を検出することが可能な温度検出装置を備えたガスコンロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる温度検出装置を備えたガスコンロは、
ガスコンロ本体の上面のトッププレートに形成したバーナ用開口を経て、その外周に形成された炎孔部が前記トッププレートの上方に突出するように設けられた環状のコンロバーナと、
点消火操作部の操作に基づいて前記コンロバーナの点消火および火力の制御を行う制御部と、
前記コンロバーナにて加熱される調理用具の底面温度を検出する温度検出装置と、を備えたガスコンロであって、
前記温度検出装置が、前記ガスコンロ本体の任意の固定部に固定されて縦方向に伸びる固定側支持部材と、
前記固定側支持部材の外側に嵌挿されるとともに、上方に付勢され、かつ、上下動可能に支持された移動側支持筒と、
前記移動側支持筒の上端に配設され、前記調理用具の上下動に追随して上下動することにより、前記調理用具の底面に常時当接するように構成された当接体と、
前記当接体の下面側に、前記当接体と熱的に結合するような態様で配設された第1サーミスタおよび第2サーミスタと、を備え、
前記第1サーミスタおよび前記第2サーミスタとして、同一温度において、前記第1サーミスタの抵抗値が前記第2サーミスタの抵抗値より大きくなるような関係にある2つのサーミスタを用い、
前記制御部が、所定温度範囲である第1温度範囲において、前記第1サーミスタによって前記調理用具の底面温度を検出し、
前記第1温度範囲より低温側に設定される温度範囲である第2温度範囲において、前記第2サーミスタによって前記調理用具の底面温度を検出するように構成されているとともに、
前記第1温度範囲と前記第2温度範囲とは、途切れることなく連続した一つの温度範囲を構成しており、
前記第1温度範囲より低温側の前記第2温度範囲における前記調理用具の底面温度を前記第2サーミスタにより検出し、前記第2温度範囲より高温側の前記第1温度範囲における前記調理用具の底面温度を前記第1サーミスタにより検出することで、前記第1温度範囲と前記第2温度範囲から構成される前記一つの温度範囲の全体にわたって一つのサーミスタで温度検出を行う場合に比べて温度検出の精度が高まるように構成されていること
を特徴としている。
【0012】
本発明の温度検出装置を備えたガスコンロにおいては、
前記制御部が、所定の設定温度を目標値として、前記温度検出装置の検出温度が前記目標値より小さいときに、前記コンロバーナの火力を所定の大火力とし、前記温度検出装置の検出温度が前記目標値より大きいときに前記コンロバーナの火力を所定の設定最小火力とする、自動温度調節機能を備え、
前記所定の設定温度を180℃以上にすることができ、かつ、前記所定の設定温度を70℃以下にすることができるように構成されていること
が好ましい。
【0013】
また、前記第1温度範囲に含まれ、かつ、前記第2温度範囲に含まれる温度を、前記第1サーミスタ、および、前記第2サーミスタが検出した場合において、前記第1サーミスタによる検出温度と前記第2サーミスタによる検出温度の差が所定の値以上のとき、前記コンロバーナによる加熱を行わないように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明(請求項1)の温度検出装置を備えたガスコンロは、温度検出装置が、第1サーミスタおよび第2サーミスタを備えるととも、第1サーミスタおよび第2サーミスタとして、同一温度において、第1サーミスタの抵抗値が第2サーミスタの抵抗値より大きくなるような関係にある2つのサーミスタを用い、制御部が、所定温度範囲である第1温度範囲において、第1サーミスタによって前記調理用具の底面温度を検出し、第1温度範囲より低温側に設定される温度範囲である第2温度範囲において、第2サーミスタによって調理用具の底面温度を検出するようにしているので、広い温度範囲に亘って精度よく調理用具の底面温度の検出が可能な、温度検出装置を備えたガスコンロを提供することが可能になる。
また、第1温度範囲と第2温度範囲とが途切れることなく連続した一つの温度範囲を構成しており、高温側の第1温度範囲における調理用具の底面温度を、同一温度での抵抗値が前記第2サーミスタの抵抗値より大きい前記第1サーミスタにより測定し、低温側の第2温度範囲における調理用具の底面温度を、同一温度での抵抗値が第1サーミスタの抵抗値より小さい第2サーミスタにより測定するようにしているので、一つのサーミスタで、第1温度範囲と第2温度範囲から構成される一つの温度範囲の全体にわたって温度検出を行うようにした場合に比べて温度検出の精度を向上させることができる。
【0016】
また、制御部が、所定の設定温度を目標値として、温度検出装置の検出温度が目標値より小さいときに、コンロバーナの火力を所定の大火力とし、温度検出装置の検出温度が目標値より大きいときにコンロバーナの火力を所定の設定最小火力とする、自動温度調節機能を備え、所定の設定温度を180℃以上にすることができ、かつ、所定の設定温度を70℃以下にすることができるように構成した場合、自動温度調節機能を用いて種々の調理が行うことが可能になり、使い勝手のよい温度検出装置を備えたガスコンロを提供することが可能になる。
なお、上述の所定の設定温度は、通常は、40℃〜200℃の範囲で設定できるように構成されていることが望ましい。
【0017】
また、第1温度範囲に含まれ、かつ、第2温度範囲に含まれる温度を、第1サーミスタ、および、第2サーミスタが検出した場合において、第1サーミスタによる検出温度と第2サーミスタによる検出温度の差が所定の値以上のとき、コンロバーナによる加熱を行わないように構成した場合、安全性を向上させることができる。
【0018】
すなわち、第1温度範囲に含まれ、かつ、第2温度範囲に含まれる温度を第1サーミスタまたは第2サーミスタの両方が検出したときに、第1サーミスタによる検出温度と第2サーミスタによる検出温度の差が所定の値(この実施形態では5K)以上のとき、つまり、第1サーミスタおよび第2サーミスタのいずれか一方の故障が疑われるときに、コンロバーナによる加熱を行わないようにした場合、安全性が確保される。
【0019】
例えば、第1温度範囲と第2温度範囲の両方に含まれる温度は、第1温度範囲と第2温度範囲の境界近傍にあって、第1サーミスタと第2サーミスタのいずれもが精度の高い温度検出を行うことができると推測される場合において、検出温度に大きな差がある場合、第1サーミスタおよび第2サーミスタのいずれかの故障が強く疑われるが、そのような場合に、コンロバーナによる加熱を行わないようにすることで、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態にかかる、温度検出装置を備えたガスコンロを示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる、温度検出装置を備えたガスコンロを構成するガスバーナ周辺を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる、温度検出装置を備えたガスコンロを構成する温度検出装置の要部縦断面図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる、温度検出装置を備えたガスコンロの制御部の要部を示す回路図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる、温度検出装置を備えたガスコンロを構成する温度検出装置の出力電圧を示す図である。
図6】本発明の一実施形態にかかる、温度検出装置を備えたガスコンロを構成する温度検出装置の抵抗値を示す図である。
図7】本発明の一実施形態にかかる、温度検出装置を備えたガスコンロの付加機能操作・表示部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を示して、その特徴とするところを詳しく説明する。
【0022】
[実施形態1]
図1は、本発明の一実施例にかかる温度検出装置を備えたガスコンロ(ガステーブルコンロ)Aを示す図である。この実施形態のガスコンロ(ガステーブルコンロ)Aは、図1に示すようにガスコンロ本体01の上面がトッププレート02で覆われており、円筒状の構造(この実施形態では外径66mm)を有する左バーナ31および右バーナ32の2つのガスバーナを備えている。
【0023】
左および右のガスバーナ31,32は、トッププレート02に形成したバーナ用開口(図示せず)を介して、その炎孔部33をトッププレート02の上方に突出させている。なお、炎孔部33は、各ガスバーナ31,32を構成する、円環状の構造部の外周に形成されている。
【0024】
この温度検出装置を備えたガスコンロ(ガステーブルコンロ)Aにおいて、左バーナ31および右バーナ32より前方側に位置している、ガスコンロ本体01の前面01aには、左バーナ31の点消火操作を行うための左点消火操作部41および右バーナ32の点消火操作を行うための右点消火操作部42が設けられている。
【0025】
また、ガスコンロ本体01内には、左点消火操作部41および右点消火操作部42の操作に基づいて、図示しないガスバルブの開閉および図示しないイグナイタの発停により左バーナ31および右バーナ32の点消火の制御を行い、また、図示しないステッピングモータ駆動によるガス量調整バルブの開度調節を行って左バーナ31および右バーナ32に供給されるガス量を調節して左バーナ31および右バーナ32の火力の制御を行う制御部(図示せず)を備えている。
【0026】
また、ガステーブルコンロAはガスグリル部(図示せず)を備えており、ガスコンロ本体10の前面01aには、ガスグリル部の扉(図示せず)を開閉するためのグリル取っ手44およびガスグリル部の点消火操作を行うためのグリル点消火操作部43を備えおり、ガスグリル部における調理に伴う排気はトッププレート02の後方に設けたグリル排気口45から排出される。
なお、ガスグリル部についての詳細な説明は省略する。
【0027】
また、トッププレート02上における左バーナ31および右バーナ32のそれぞれの炎孔部33の周囲には、コンロバーナ(左バーナ31、右バーナ32)によって加熱される調理用具60を載置する五徳50が配置されている(図1図2)。
【0028】
五徳50は、炎孔部33の周囲に複数放射状に配置された、調理用具60を載置するための五徳爪51と、円環状の五徳リング52とを備えており、各五徳爪51の下端を、円環状の五徳リング52に一体に結合することにより形成されている。
【0029】
なお、ガステーブルコンロAは左バーナ31および右バーナ32の2つのコンロバーナを備えるものであるが、左バーナ31および右バーナ32ともに本発明の実施形態としては同様の形態を有するものであるため、以下、左バーナ31の実施形態について詳しく説明し、右バーナ32についての詳細な説明は省略する。
【0030】
このガステーブルコンロAは、五徳50上に載置された鍋などの調理用具60の底面に接触して調理用具60の底面の温度を検出する温度検出装置72を備えており、温度検出装置72を構成する、移動側支持筒53、固定側支持部材56が、左バーナ31の中心を下から上に貫通するように設けられている(図1図2)。
【0031】
そして、温度検出装置72の移動側支持筒53は、五徳50への調理用具60の載置と連動して上下に移動するように構成されている(図3)。
【0032】
また、移動側支持筒53の上端には、調理用具60の上下動に追随して上下動することにより、調理用具60の底面に常時当接するように構成された当接体57が配設されている。
【0033】
詳しく説明すると、温度検出装置72は、図3に示すように、ガスコンロ本体01の任意の固定部(図示せず)に固定されて縦方向に伸びる固定側支持部材56と、固定側支持部材56の外側に嵌挿され、スプリング54によって上方に付勢され上下動可能に支持された移動側支持筒53と、移動側支持筒53の上端に配設され、調理用具60の上下動に追随して上下動することにより、調理用具60の底面に常時当接するように構成された当接体57とを備えた構造を有している。
【0034】
そして、当接体57の下面側には、当接体57と熱的に結合するような態様で配設された第1サーミスタ101および第2サーミスタ102とが配設され、サーミスタ固定部材58によって固定されている。
【0035】
第1サーミスタ101と、第2サーミスタ102とは、両者を同一温度に維持したときに、第1サーミスタ101の抵抗値Rth1が、第2サーミスタ102の抵抗値Rth2より大きくなるように構成されている。
【0036】
具体的には、第1サーミスタ101は、表1に示すように、200℃における抵抗値が1.829kΩ、100〜200℃におけるB定数が4200Kであり、第2サーミスタ102は、表2に示すように、50℃における抵抗値が4.278kΩ、0〜100℃におけるB定数が3450である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
温度変化に伴う、第1サーミスタ101および第2サーミスタ102の抵抗値の変化を図示すると、図6に示すようになる。
【0040】
因みに、第1サーミスタ101および第2サーミスタ102を100℃に維持したとき、第1サーミスタ101の抵抗値Rth1は19.773kΩであり、第2サーミスタ102の抵抗値Rth2は1.022kΩであって、第1サーミスタ101の抵抗値Rth1が、第2サーミスタ102の抵抗値Rth2より大きくなるように構成されている。
【0041】
そして、制御部は、所定範囲の第1温度範囲(この実施形態では、100℃から200℃の温度範囲)において、第1サーミスタ101によって調理用具60の底面温度を検出し、第1温度範囲より低温側に設定される第2温度範囲(この実施形態では、0℃から100℃の温度範囲)において、第2サーミスタ102によって調理用具60の底面温度を検出するように構成されている。
【0042】
さらに説明すると、図4に示すように、制御部は、第1サーミスタ101と直列に接続される第1固定抵抗器R1を備え、第2サーミスタ102と直列に接続される第2固定抵抗器R2を備えている。
【0043】
そして、基準電圧となる電源電圧Vpが第1固定抵抗器R1と第1サーミスタ101とによって分圧された電圧(出力電圧)Vth1が、マイクロコンピュータが備えるA/Dコンバータの第1入力IAD1に入力され、また、基準電圧となる電源電圧Vpが第2固定抵抗器R2と第2サーミスタ102とによって分圧された電圧(出力電圧)Vth2が、マイクロコンピュータが備えるA/Dコンバータの第2入力IAD2に入力され、調理用具60の底面温度が検出される。
【0044】
図5に、温度変化に伴う、基準電圧となる電源電圧Vpが第1固定抵抗器R1と第1サーミスタ101とによって分圧された電圧(出力電圧)Vth1、および、基準電圧となる電源電圧Vpが第2固定抵抗器R2と第2サーミスタ102とによって分圧された電圧(出力電圧)Vth2を示す。
【0045】
図5に示すように、この実施形態のガステーブルコンロAでは、第1温度範囲(この実施形態では、100℃から200℃の温度範囲)および第2温度範囲(0℃から100℃の温度範囲)に亘って、上述の出力電圧の勾配がほぼ変わらないことから、高分解能で、調理用具60の底面温度を検出できることがわかる。
【0046】
したがって、上述のように構成されたこの実施形態のガステーブルコンロAは、広い温度範囲に亘って精度よく調理用具の底面温度を検出することができるものであることがわかる。
【0047】
また、この実施形態のガステーブルコンロAにおいては、制御部が、ガスコンロ本体01の前面01aの、左点消火操作部41の近傍領域にに配設された付加機能操作・表示部46(図7)において設定される所定の設定温度(例えば、50℃、67℃、160℃、180℃、200℃)を目標値として、温度検出装置72の検出温度が目標値より小さいときに、コンロバーナ31の火力を所定の大火力(この実施形態では、4000kcal/時)とし、温度検出装置の検出温度が目標値より大きいときにコンロバーナ31の火力を所定の設定最小火力(この実施形態では、300kcal/時)とする、自動温度調節機能を備えている。なお、付加機能操作・表示部46は図1には示されていない。
【0048】
この実施形態のガステーブルコンロAは、上述のような特性を備えた第1サーミスタ101および第2サーミスタ102を用いて、第1温度範囲および第2温度範囲における調理用具60の底面の温度を検出するように構成されているので、第1温度範囲および第2温度範囲において、調理用具60の底面の温度を精度よく検出することが可能である。
その結果、自動温度調節機能を利用して、付加機能操作・表示部46(図7)により設定温度を160℃、180℃、200℃などに設定して調理を行うことで、フライやてんぷらなどの揚げ物調理を、容易かつ確実に行うことができる。
【0049】
また、この実施形態のガステーブルコンロAによれば、卵を湯水中にて加熱調理したとき、黄身が固まる温度が65℃〜70℃であり、白身が固まる温度が75℃〜78℃程度であることを利用して、付加機能操作・表示部46による設定温度を67℃として、温泉卵を簡単に作ることができる。つまり、設定温度を67℃として自動温度調節機能を利用した調理を実行することで、白身が固まらず黄身だけが固まった温泉卵を簡単に作ることができる。
【0050】
また、この実施形態のガステーブルコンロによれば、付加機能操作・表示部46による設定温度を50℃として、日本酒の熱燗を短時間で行うことができる。
【0051】
上述のように、この実施形態のガステーブルコンロAでは、自動温度調節機能に関する設定温度を180℃以上の温度に設定することが可能で、かつ、設定温度を70℃以下の温度に設定する頃ができるように構成されているので、自動温度調節機能を用いて種々の調理を行うことが可能で、使い勝手のよいガスコンロを実現することができる。
【0052】
なお、自動温度調節機能に関する設定温度を180℃以上に設定することができるようにし、かつ、設定温度を70℃以下に設定することができるようにした構成は、任意の構成であり、自動温度調節機能に関する設定温度は種々変更することが可能である。
【0053】
また、この実施形態のガスコンロでは、第1温度範囲と第2温度範囲に関し、100℃の温度が第1温度範囲と、第2温度範囲の両方に含まれている。そして、例えば、
(a)第1サーミスタ101の検出温度が100℃であるときに、第2サーミスタ102の検出温度が105℃以上である場合、または、
(b)第1サーミスタ101の検出温度が100℃であるときに、第2サーミスタ102の検出温度が95℃以下の場合、
つまり、第1温度範囲と第2温度範囲の両方に含まれる温度を第1サーミスタ101が検出したときに、第1サーミスタ101による検出温度と第2サーミスタ102による検出温度との差が所定の値(この実施形態では5K)以上のとき、コンロバーナ31による加熱を行わないように構成されている(なお、ここで、「コンロバーナ31による加熱を行わない」とは、コンロバーナ31による加熱が行われている場合において加熱を停止することはもちろん、加熱を停止している場合において、加熱を開始しないことを含む概念である)。
【0054】
なお、第2サーミスタ102の検出温度が100℃のときに、第1サーミスタ101の検出温度が105℃以上の場合、または、第1サーミスタ101の検出温度が95℃以下の場合、つまり、第1温度範囲と第2温度範囲の両方に含まれる温度を第2サーミスタ102が検出したときに、第1サーミスタ101の検出温度と第2サーミスタ102の検出温度との差が所定の値以上のとき、コンロバーナ31による加熱を行わないように構成してもよい。
【0055】
上述のように、第1温度範囲と第2温度範囲の両方に含まれる温度を第1サーミスタ101および第2サーミスタ102が検出したときに、第1サーミスタ101による検出温度と第2サーミスタ102による検出温度の差が所定の値(この実施形態では5K)以上のとき、つまり、第1サーミスタ101および第2サーミスタ102のいずれか一方の故障が疑われるときに、コンロバーナ31による加熱を行わないようにした場合、故障の状態で加熱が行われることによる危険性を排除して、安全性を確保することができる。
【0056】
例えば、第1温度範囲に含まれ、かつ、第2温度範囲に含まれる温度は、第1温度範囲と第2温度範囲の境界近傍にあって、第1サーミスタ101と第2サーミスタ102のいずれもがそれなりに精度の高い温度検出を行うことができると推測される温度において、検出温度に大きな差がある場合、第1サーミスタ101および第2サーミスタ102のいずれか一方の故障が強く疑われるが、そのような場合に、コンロバーナ31による加熱を行わないようにすることで、安全性を向上させることができる。
【0057】
ただし、上述のように、第1サーミスタ101と第2サーミスタ102の温度検出値に所定の値以上の差がある場合に、コンロバーナ31による加熱を行わないようにした構成は任意の構成である。
【0058】
また、上記実施形態ではガスコンロとして、ガステーブルコンロを例にとって説明したが、本発明はドロップインコンロにも適用することが可能である。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
A ガスコンロ(ガステーブルコンロ)
01 ガスコンロ本体
01a ガスコンロ本体の前面
02 トッププレート
31 左バーナ
32 右バーナ
33 炎孔部
41 左点消火操作部
42 右点消火操作部
43 グリル点消火操作部
44 グリル取っ手
45 グリル排気口
46 付加機能操作・表示部
50 五徳
51 五徳爪
52 五徳リング
53 移動側支持筒
54 スプリング
56 固定側支持部材
57 当接体
58 サーミスタ固定部材
60 調理用具
72 温度検出装置
101 第1サーミスタ
102 第2サーミスタ
1 第1固定抵抗器
2 第2固定抵抗器
th1 第1サーミスタの抵抗値
th2 第2サーミスタの抵抗値
th1、th2 電圧(出力電圧)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7