(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752511
(24)【登録日】2020年8月21日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】電子式電力量計
(51)【国際特許分類】
H01R 13/24 20060101AFI20200831BHJP
G01R 22/06 20060101ALI20200831BHJP
G01R 11/04 20060101ALI20200831BHJP
H01R 12/55 20110101ALI20200831BHJP
【FI】
H01R13/24
G01R22/06 130H
G01R11/04 B
H01R12/55
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-143811(P2016-143811)
(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公開番号】特開2018-14273(P2018-14273A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000205661
【氏名又は名称】大崎電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】西川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】須藤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 亘
【審査官】
藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3762883(JP,B2)
【文献】
実開平06−005132(JP,U)
【文献】
実開昭49−026043(JP,U)
【文献】
実開平07−018362(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00−12/91
13/15
13/24
24/00−24/86
G01R 22/00−22/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーとベースとで構成される筐体内に、各相の電源端子および負荷端子間を接続する電流線と電子回路基板とを収納して構成される電子式電力量計において、
前記電流線および前記電子回路基板間に延在して前記ベースに一体に複数形成された軸状体と、
各前記軸状体の並びの両側に位置する前記ベースに突出して形成された一対の支持柱と、
前記軸状体に沿わされて一端が前記電子回路基板に形成されたパッドに、他端が前記電流線に、伸張力に応じた接触圧で電気的に接触する導電性を有する複数のコイルバネとを備え、
前記パッドは、各前記コイルバネが当接する前記電子回路基板の裏面における一対の前記支持柱に挟まれる複数箇所に並んで形成され、それぞれの大きさが、前記軸状体の中心に中心が一致する位置に位置する前記コイルバネの外径から前記パッドの端までの寸法が、前記コイルバネと前記軸状体とのガタ寸法よりも大きく設定され、
前記電子回路基板は、各前記パッドの並びの両側に位置する辺に張り出して形成され、一対の前記支持柱に嵌合する一対の突起を備える
ことを特徴とする電子式電力量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に導体と電子回路基板とを収納して構成される
電子式電力量計に関し、特に、導体と電子回路基板との電気的接続構造に
特徴を有する電子式電力量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気的接続構造としては、例えば、
図1に示される電力量計における端子金具1と電子回路基板2とを電気的に接続する構造がある。端子金具1は電力量計のベース3に形成された端子ブロック部3aに整列して配置されている。電子回路基板2には、圧着端子4が設けられたリード線5の端部がフロー方式でハンダ付けされている。端子金具1と電子回路基板2とは、圧着端子4がネジ6によって端子金具1に締結されることで、電気的に接続される。この電気接続により、リード線5を介して端子金具1から電子回路基板2に動作電圧が入力され、また、電気信号が入出力される。
【0003】
また、従来、この種の電気的接続構造として、
図2に示される電力量計における導体7と電子回路基板2とを電気的に接続する構造もある。導体7は電流線を構成し、電力量計のベース3に載置される。電子回路基板2には板ばね8が取り付けられ、電子回路基板2がベース3に取り付けられると、板ばね8の遊動端がベース3に載置された導体7に電気的に接触する。板ばね8は電子回路基板2に形成されたパッドに電気的に接触しており、板ばね8が導体7に電気的に接触することで、導体7と電子回路基板2とは電気的に接続される。
【0004】
また、従来、この種の電気的接続構造として、特許文献1に開示された電力量計における導体と電子回路基板とを電気的に接続する構造もある。この構造では、細長い板状の導電体が折り曲げられて形成された電圧線の一端が、電子回路基板にハンダにより固着されている。この電圧線の他端は、電流線を構成する導体の立ち上げ部折り曲げ箇所に形成された開口に挿通され、導体の端子部の裏面と端子ナットの上面との間に挟まれる。この状態で端子ネジが端子ナットにねじ込まれて固定されると、電圧線の他端が導体の端子部の裏面に堅固に電気接触して、導体と電子回路基板とは電圧線を介して電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3762883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図1に示す上記従来の端子金具1と電子回路基板2との電気的接続構造においては、圧着端子4が付いたリード線5、および圧着端子4を締結するネジ6等の部品代が必要になると共に、ネジ6を螺合させるタップを端子金具1に形成する工賃等が必要になる。また、リード線5を電子回路基板2にフロー方式でハンダ付け実装したり、ネジ6を端子金具1に締め付ける工数等も必要になる。このため、
図1に示す上記従来の電気的接続構造を用いると、電気機器の製品コストは高くなる。
【0007】
また、組基板の状態で各電子回路基板2に電圧を同時に印加し、基板の不具合の有無等を試験するとき、圧着端子4が固定されていなくて遊動すると、電子回路基板2における他の電子部品等に圧着端子4が接触してショートする可能性がある。ここで、電子回路基板2は、複数の電子回路基板2を1つの基板に形成した組基板から、ルーターカット等によって個々の電子回路基板2に分割することで、得られる。したがって、試験中には圧着端子4を基板上で固定する必要があり、また、試験終了後には圧着端子4の固定を解く必要が生じる。このため、圧着端子4の脱着作業が基板試験とは別途に必要になり、基板試験時に手間が掛かる。
【0008】
また、
図2に示す上記従来の、板ばね8を使った導体7と電子回路基板2との電気的接続構造においては、部品代および工数は削減出来るが、板ばね8の部品輸送時や電力量計の組立時に、板ばね8に意図しない力が加わることで板ばね8が変形し易い。また、板ばね8の製造に専用の金型が必要になり、この点で板ばね8の部品コストが高くなる。
【0009】
また、特許文献1に開示された導体と電子回路基板との電気的接続構造においても、細長い板状の導電体が折り曲げられて形成された電圧線が、同様に変形し易く、
図2に示す上記従来の電気的接続構造と同様な問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
カバーとベースとで構成される筐体内に、各相の電源端子および負荷端子間を接続する電流線と電子回路基板とを収納して構成される電子式電力量計において、
電流線および電子回路基板間に延在
してベースに一体に複数形成された軸状体と、
各軸状体の並びの両側に位置するベースに突出して形成された一対の支持柱と、
軸状体に沿わされて一端が電子回路基板に形成されたパッドに、他端が電流線に、伸張力に応じた接触圧で電気的に接触する導電性を有する
複数のコイルバネとを備え、
パッド
は、各コイルバネが当接する電子回路基板の裏面における一対の支持柱に挟まれる複数箇所に並んで形成され、それぞれの大きさが、軸状体の中心に中心が一致する位置に位置するコイルバネの外径からパッドの端までの寸法が、コイルバネと軸状体とのガタ寸法よりも大きく設定され
、
電子回路基板は、各パッドの並びの両側に位置する辺に張り出して形成され、一対の支持柱に嵌合する一対の突起を備えることを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、軸状体に
コイルバネを沿わして
電流線と電子回路基板とを
電子式電力量計の筐体に組み付けることで、
電流線と電子回路基板とは
コイルバネを介して電気的に接続される。したがって、
電流線と電子回路基板との電気的接続には、軸状体と
コイルバネの部品コストと、軸状体を
電流線および電子回路基板間に延在させる工数と
コイルバネを軸状体に沿わす工数だけしか掛からない。このため、
電子式電力量計の製品コストは、圧着端子が設けられたリード線を使う従来の電気的接続構造を用いる場合に比べ、低減することが可能となる。また、遊動する圧着端子は使わないので、組基板の状態で電子回路基板の試験を行う際、従来のように圧着端子の脱着作業を基板試験とは別途に行う必要はなくなり、基板試験時の手間が軽減する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の
電子式電力量計によれば、
電子式電力量計の製品コストを低減させることが可能となる。また、組基板の状態で電子回路基板の試験を行う際に必要とされる手間が軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の従来の電気的接続構造を示す平面図である。
【
図2】第2の従来の電気的接続構造を示す斜視図である。
【
図3】(a)は、本発明の一実施の形態による電気的接続構造が用いられた電子式電力量計のカバーを外した状態の斜視図、(b)は、(a)に示す状態から電子回路基板を取り外した状態の斜視図である。
【
図4】
図3(b)に示す状態の各部品を分解して示す斜視図である。
【
図5】(a)は、
図3(a)に示す電子回路基板の平面図、(b)は、電子回路基板の裏面に形成されたパッドとコイルバネとボスとの間における寸法を説明する図である。
【
図6】一実施形態の変形例による電気的接続構造を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明による電気機器における導体と電子回路基板との電気的接続構造を電子式電力量計に適用した、本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
図3(a)は、本発明の一実施の形態による、導体11と電子回路基板12との電気的接続構造が用いられた電子式電力量計のカバーを外した状態の斜視図である。
図3(b)は、
図3(a)に示す状態から電子回路基板12を取り外した状態の斜視図である。
【0019】
電気機器の一種である電子式電力量計は、図示しないカバーとベース13とで構成される筐体内に、導体11と電子回路基板12とを収納して構成される。導体11は、各相の電源端子および負荷端子間を接続する電流線であり、左右の導体11には通電電流を検出するCT14が通されている。また、電子回路基板12には電子部品15が実装されている。電子回路基板12は、水平方向に張り出して形成された突起12aが、ベース13に突出して形成された支持柱13aに嵌合することで、
図3(a)に示すように、各導体11と一定の距離を保ってベース13に支持されている。各導体11と電子回路基板12との間には、導電性を有する弾性体であるコイルバネ16が設けられている。
【0020】
導体11が載置される部分のベース13には、
図4に示すように、ボス13bが立設されている。
図4は、
図3(b)に示す状態の各部品を分解して示す斜視図である。このボス13bは、ベース13を形成する樹脂によってベース13と一体に成形されている。また、各導体11には、ボス13bが貫通する大きさの穴11aが形成されている。各ボス13bは、軸状体を構成し、穴11aを貫通して、導体11および電子回路基板12間に延在する。各導体11は、穴11aにボス13bが通されてベース11に固定される。ボス13bは、導体11の固定や仮固定のための位置決め部材として、使用することが出来る。各コイルバネ16は、ボス13bに挿入されることでボス13bに沿わされて、各導体11と電子回路基板12との間に設けられる。
【0021】
図5(a)は電子回路基板12の平面図である。電子回路基板12のコイルバネ16が当接する裏面の3箇所には、パッド17が形成されている。各コイルバネ16は、上記のように設けられることで、一端が電子回路基板12に形成されたパッド17に、他端が導体11に、伸張力に応じた接触圧で電気的に接触する。
【0022】
各パッド17の大きさは、
図5(b)に示す、コイルバネ16の外径からパッド17の端までの寸法Aが、コイルバネ16とボス13bとのガタ寸法Bよりも大きく(A>B)なるように、設定される。この寸法設定により、コイルバネ16は、その端面の全面が確実にパッド17に接触する。
【0023】
このような本実施形態による導体11と電子回路基板12との電気的接続構造によれば、ボス13bにコイルバネ16を沿わして導体11と電子回路基板12とを図示しないカバーとベース13で構成される筐体に組み付けることで、導体11と電子回路基板12とはコイルバネ16を介して電気的に接続される。したがって、導体11と電子回路基板12との電気的接続には、コイルバネ16の部品コストと、コイルバネ16をボス13bに差し込んで沿わす工数だけしか掛からない。このため、電子式電力量計の製品コストは、圧着端子4が設けられたリード線5を使う
図1に示す従来の電気的接続構造を用いる場合に比べ、低減することが可能となる。また、遊動する圧着端子4は使わないので、組基板の状態で電子回路基板12の試験を行う際、従来のように圧着端子4の脱着作業を基板試験とは別途に行う必要はなくなり、基板試験時の手間が軽減する。
【0024】
また、コイルバネ16をボス13bに沿わせる工程は、コイルバネ16をボス13bに差し込むだけの作業になるので、ロボットを使用した自動組み立てに展開することも容易である。また、ボス13bをコイルバネ16のガイドにすることにより、確実に電子回路基板12のパッド17にコイルバネ16を接触させることが出来る。また、コイルバネ16の多少の曲がりはボス13bによって矯正することが出来る。
【0025】
また、本実施形態による導体11と電子回路基板12との電気的接続構造では、弾性体がコイルばね16として構成される。このような構成によれば、
図2に示す従来の電気的接続構造における板ばね8や、特許文献1に示す従来の電気的接続構造における、細長い板状の導電体が折り曲げられて形成された電圧線を用いる場合に比べて、弾性体が部品変形するのを大幅に防止することが出来る。このため、本実施形態による弾性体は、意図しない力が加わっても変形し難くなり、部品輸送時における部品の梱包形態を簡素化することが出来る。また、電子式電力量計の組立時における、弾性体の部品の取り扱いが容易になる。また、弾性体の製造に専用の金型は不要になり、この点で弾性体の製造設備費用を低減することが出来る。また、コイルばね16は板ばね8に比較してへたり難く、撓みを大きくとることが出来る。したがって、電子回路基板12に形成されたパッド17および導体11との接触圧を強くすることが出来る。
【0026】
なお、上記の実施形態では、軸状体を、ベース13の一部として導体11が載置される部分にボス13bとして立設することで、軸状体の部品代、並びに軸状体を導体11および電子回路基板12間に延在させる工数が削減され、電子式電力量計の製品コストは大きく低減された。しかし、軸状体は、例えば、
図6の斜視図に示すように、導体11に一端がカシメ等で固定される軸18として、導体11に立設するように構成してもよい。この場合、軸18が、ボス13bと同様に、導体11および電子回路基板12間に延在させられる。この構成では、軸18の部品コストと、軸18を導体11および電子回路基板12間に延在させるためのカシメ等の工数が増えるが、圧着端子4が設けられたリード線5を使う
図1に示す従来の電気的接続構造を用いる場合に比べ、電子式電力量計の製品コストを低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
上記の実施形態では、本発明による電気的接続構造を電子式電力量計に適用し、電力量計における電子回路基板12への電圧入力や、電気信号の入出力に、本発明による電気的接続構造を用いた場合について、説明した。しかし、本発明による電気的接続構造は、電力量計への適用に限定されるものではなく、導体と電子回路基板を筐体に収容する構造を備える、タイムスイッチ等の他の配電機器や、一般の電気機器にも同様に適用することができ、同様な作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0028】
11…導体
12…電子回路基板
12a…突起
13…ベース(筐体)
13a…支持柱
13b…ボス(軸状体)
14…CT
15…電子部品
16…コイルばね(弾性体)
17…パッド
18…軸(軸状体)