(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752521
(24)【登録日】2020年8月21日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】換気装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20200831BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20200831BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
F24F7/06 101Z
F24F13/14 E
F24F7/10 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-209853(P2016-209853)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-71849(P2018-71849A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】森本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】谷野 涼
(72)【発明者】
【氏名】秋山 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】安田 明彦
【審査官】
八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−346423(JP,A)
【文献】
実開昭49−044523(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/10
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ファンを駆動することにより、排気路を経て室内の空気を室外に排出するように構成された換気装置であって、
少なくとも所定領域が強磁性体材料から形成され、閉止状態において、前記排気路から前記換気ファンへの空気の流れである逆流を規制する逆風止めと、
直流電流の通電により生じる磁力によって、前記逆風止めの前記強磁性体材料から形成された前記所定領域を吸着して、前記逆風止めを前記閉止状態に維持する電磁石と、を備え、
前記電磁石への前記直流電流の通電を停止して、前記電磁石に生じる磁力を解除することにより、前記逆流止めが開放状態となって、前記換気ファンの駆動により室内の空気が前記排気路を通流して室外に排出されることを許容するように構成されているとともに、
前記電磁石は、前記逆風止めに向かって突出する突出部を備えており、前記突出部は、前記逆風止めと当接する尖った先端部を有していること
を特徴とする換気装置。
【請求項2】
前記突出部を複数備えていることを特徴とする請求項1記載の換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気装置に関し、詳しくは、例えば、調理機器などとともに用いられる換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空気を室外に排出する目的で用いられる換気装置には、室外から室内への空気の逆流を防止するための逆風止めを備えた構造を有する換気装置が広く用いられている。
【0003】
そして、そのような換気装置として、特許文献1には、換気ファンから室外への排気路に、逆風止めを設けた換気装置(ミスト浴装置)が開示されている。
【0004】
この特許文献1には、逆風止めについての詳細な説明はないが、換気ファンから室外への排気路に逆風止めを備えることで、室外から室内への空気の流入を抑制、防止することが可能になるものと考えられる。
【0005】
通常、上述の室外は、屋外であることが多く、特許文献1の換気装置によれば、冬季において屋外からの低温の空気が室内に流入することを抑制、防止することができて有意義である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−004095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の換気装置において、換気ファンが停止している場合、屋外において強風が吹いた場合などにおいては、室内(屋内)の圧力が室外(屋外)の圧力より高くなる場合がある。そして、そのような場合、使用者が希望しないにもかかわらず、室内(屋内)の空気が室外(屋外)に排出されてしまう事態が生じうる。すなわち、逆風止めは、室外(屋外)から空気が室内(屋内)に流入する機能は果たすが、室内(屋内)から室外(屋外)に空気が流出することを抑制、防止する機能は備えていない。
【0008】
そして、例えば、冬季において室内(屋内)を暖房している場合に、室内(屋内)の空気が室外(屋外)に排出されてしまうと、暖房にかかるエネルギロスが生じることになり好ましくないという問題点がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、換気ファンの停止中に室内の圧力が室外の圧力より高くなった場合にも、使用者の意図に反して、室内の空気が室外に排出されてしまうことを抑制することが可能な換気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の換気装置は、
排気ファンを駆動することにより、排気路を経て室内の空気を室外に排出するように構成された換気装置であって、
少なくとも所定領域が強磁性体材料から形成され、閉止状態において、前記排気路から前記換気ファンへの空気の流れである逆流を規制する逆風止めと、
直流電流の通電により生じる磁力によって、前記逆風止めの前記強磁性体材料から形成された前記所定領域を吸着して、前記逆風止めを前記閉止状態に維持する電磁石と、を備え、
前記電磁石への前記直流電流の通電を停止して、前記電磁石に生じる磁力を解除することにより、前記逆流止めが開放状態となって、前記換気ファンの駆動により室内の空気が前記排気路を通流して室外に排出されることを許容するように構成されているとともに、
前記電磁石は、前記逆風止めに向かって突出する突出部を備えており、前記突出部は、前記逆風止めと当接する尖った先端部を有していること
を特徴としている。
【0011】
また、本発明の換気装置においては、前記突出部を複数備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の換気装置は、上述のように、逆風止めと電磁石とを備え、電磁石への直流電流の通電により生じる磁力によって、逆風止めを吸着して、逆風止めを閉止状態に維持するように構成されているので、換気ファンの停止中に、室内の圧力が室外の圧力より高くなる状態が生じたときにも、使用者の意図に反して、室内の空気が室外に排出されてしまうことを抑制することが可能になる。
しかも、逆風止めに当接する前記電磁石の当接部が、尖った先端部を有する突出部を備えているので、逆風止めと電磁石との間に小さなゴミが入り込んだり、逆風止めや、電磁石の逆風止めとの当接部などに油膜のような汚れが付着したりしたような場合にも、上記突出部の尖った先端部において、電磁石が逆風止めに確実に当接するため、電磁石(磁力)による逆風止めの吸着保持の信頼性を向上させることができる。
【0013】
したがって、本発明によれば、換気ファンの停止中に、室内の圧力が室外の圧力より高くなる状態が生じたときにも、使用者の意図に反して、室内の空気が室外に排出されてしまうことを抑制することが可能な換気装置を提供することができるようになる。
【0014】
なお、本発明において、逆風止めは、少なくとも所定領域が、電磁石の磁力により吸着される強磁性体から形成されていればよく、他の部分は強磁性体から形成されていなくてもよい。ただし、本発明は、逆風止めの全体が強磁性体から形成されている場合を排除するものではなく、逆風止めの全体が強磁性体から形成された構成も本発明に含まれる。
【0015】
また、本発明において、前記電磁石の逆風止めに向かって突出する突出部が備える「逆風止めと当接する尖った先端部」とは、例えば、円錐や角錐の頂点のような尖端部を意味するものであるが、その具体的な形状は、必ずしも円錐や角錐の頂点を含む先端領域のような整った形状でなくてもよく、逆風止めと電磁石との間に小さなゴミが入り込んだり、逆風止めと電磁石に油膜のような汚れが付着したりしたような場合にも、電磁石と逆風止めとの当接を確実ならしめることができるような形状であればよい。
【0016】
また、本発明の換気装置において、突出部と逆風止めとの当接をより確実なものとすることが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる換気装置(レンジフード)の切欠き正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる換気装置(レンジフード)の逆風止めの閉止状態における排気ダクト周辺の正断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる換気装置(レンジフード)の逆風止めの開放状態における排気ダクト周辺の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0019】
[実施形態]
この実施形態では、レンジフードとして用いられる換気装置を例にとって説明する。
【0020】
本発明の実施形態にかかる換気装置(レンジフード)110は、
図1に示すように、ガスコンロ(図示せず)とともに、台所に設置されて用いられるものである。
そして、このレンジフード110を作動させるための電源としては、商用電源(AC100V)が使用されている。
【0021】
レンジフード110は、換気ファン101、換気ファン101を駆動するモータ107、台所内の空気の吸い込み口であるフード部103、および、排気ダクト106を備えている。
【0022】
そして、換気ファン101を駆動するモータ107に通電して、換気ファン101を駆動することにより、フード部103から吸い込んだ台所内の空気が、排気路を経由して、台所の外部(屋外)に排出されるように構成されている。
【0023】
なお、この実施形態にかかる換気装置(レンジフード)では、レンジフード110の排気ダクト106に延長用排気筒(図示せず)が接続され、レンジフード110のフード部103から吸引された台所内の空気は、排気ダクト106から上記延長用排気筒を経て、台所の外部に排出される。したがって、上記の排気ダクト106およびそれに接続された延長用排気筒などが本発明における排気路を構成する。
【0024】
<特徴的構成>
次に、本発明の実施形態にかかる換気装置(レンジフード)110の特徴的な構成について説明する。
【0025】
本発明の実施形態にかかる換気装置(レンジフード)110は、排気路を構成する排気ダクト106内に逆風止め111を備える。
【0026】
逆風止め111は支軸112に軸支されており、支軸112を中心に揺動可能に構成されている(
図2、
図3参照)。
この逆風止め111は、その閉止状態において排気ダクト(排気路)106を略閉塞し(
図2参照)、排気ダクト(排気路)106から換気ファン101への空気の通流、すなわち逆流を規制する機能を果たす。
【0027】
この逆風止め111は強磁性体(例えば、アルミめっき鋼板、SUS430など)から構成されている。
【0028】
さらに、この実施形態にかかる換気装置(レンジフード)110は、直流電流の通電により磁力を生じる電磁石113を備えている(
図2、
図3参照)。この電磁石113は、直流電流の通電により生じる磁力によって逆風止め111を吸着して、逆風止め111を閉止状態に維持する機能を果たす。
なお、電磁石113の逆風止め111と当接する当接部には、逆風止め111と当接する尖った先端部(以下、単に「尖端部」ともいう)115を備えた突出部114が設けられている。
【0029】
上述のように、この実施形態においては、逆風止め111は強磁性体から構成されているが、これは、電磁石113の磁力によって吸着して逆風止め111を維持することができるようにするためである。ただし、逆風止め111は、電磁石113により吸着される所定領域が強磁性体から形成されていればよく、その他の部分は強磁性体から形成されていなくてもよい。
【0030】
そして、電磁石113への通電を停止して電磁石113に生じる磁力を解除し、換気ファン101を駆動することにより、排気ダクト106内での空気の流れ、圧力の上昇が発生し、それらが駆動力となって、逆風止め111が支軸112を中心に揺動し、空気の通流を許容する開放状態(
図3参照)に移行するように構成されている。
【0031】
そして、この実施形態にかかる換気装置(レンジフード)110において、
電磁石113は、上述のように、逆風止め111と当接する尖った先端部(尖端部)115を有する突出部114を複数備えている。
また、上述の電磁石113には、逆風止め111に向かって突出した突出部114が設けられており、この突出部114の、逆風止め111と対向する先端には、鋭角に尖った先端部である尖端部115が形成されている。
【0032】
この実施形態にかかる換気装置(レンジフード)110のように、電磁石113が備える突出部114の先端側に、鋭角に尖った尖端部115を設けることにより、逆風止め111と電磁石113との間に小さなゴミが入り込んだり、逆風止め111や、電磁石113の逆風止め111との当接部などに油膜のような汚れが付着したりしたような場合にも、電磁石113がその尖端部115において、逆風止め111に確実に当接する。
【0033】
この実施形態の換気装置(レンジフード)110は上述のように構成されており、強磁性体で形成された逆風止め111と、突出部114の先端側に尖端部115を有する電磁石113とを組み合わせて用いるようにしているので、換気ファン101が停止し、逆風止め111が閉止状態にある場合に、電磁石113の吸着力により、逆風止め111の閉止状態を確実に維持して、室内の圧力が室外の圧力より高くなる状態が生じたときにも、使用者の意図に反して、室内の空気が室外に排出されてしまうことを抑制することが可能になる。
【0034】
しかも、逆風止め111に当接する電磁石113の突出部114の先端側に、鋭角に尖った尖端部115を設けるようにしているので、逆風止め111と電磁石113との間に小さなゴミが入り込んだり、逆風止め111や、電磁石113の逆風止め111との当接部などに油膜のような汚れが付着したりしたような場合にも、電磁石113の上記尖端部115を介して、逆風止め111を確実に吸着する(閉止状態を維持する)ことができる。
【0035】
その結果、ゴミや油膜のような汚れなどが付着した場合にも、逆風止め111を電磁石113により吸着して、逆風止め111を確実に閉止状態に維持することが可能な信頼性の高い換気装置(レンジフード)を提供することが可能になる。
【0036】
また、この実施形態の換気装置(レンジフード)は、上述のように、電磁石が、尖端部115を有する突出部114を複数備えているので、電磁石113による逆風止め111の吸着をより確実に行うことが可能になり、より信頼性の高い換気装置(レンジフード)を提供することができる。
【0037】
なお、本発明は、レンジフードに限らず、換気機能を有する浴室暖房乾燥機など、レンジフード以外の機器にも適用することが可能である。
【0038】
本発明はさらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
101 排気ファン
103 フード部
106 排気ダクト
107 モータ
110 換気装置(レンジフード)
111 逆風止め
112 支軸
113 電磁石
114 突出部
115 突出部の尖った先端(尖端部)