特許第6752746号(P6752746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6752746
(24)【登録日】2020年8月21日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】光パルス試験装置及び光パルス試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   G01M11/00 G
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-65514(P2017-65514)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-169235(P2018-169235A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】牧 達幸
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−40817(JP,A)
【文献】 特開平11−326126(JP,A)
【文献】 特開平4−104032(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0124246(US,A1)
【文献】 吉田 寛美ら,「高性能・多機能な小型OTDRの開発」,横河技報,2012年 9月30日,Vol.55, No.1,pp.19-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00−11/02
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ(31,32,33,34)がそれぞれ近端と遠端とを持って並んで敷設され、前記複数の光ファイバのうちの第1の光ファイバの前記近端を除く各光ファイバの前記近端同士又は前記遠端同士が接続されてなる1の被測定光ファイバにおける、前記第1の光ファイバの前記近端を光パルスの入射端に用い、前記被測定光ファイバにおける後方散乱光を測定する測定部(11)と、
前記測定部の測定した測定波形から光損失地点を検出する反射検出部(23)と、
距離の等しい隣接する区間を検出し、当該区間の前の区間と当該区間の後の区間との距離が等しい場合、当該隣接する区間の境界位置を前記複数の光ファイバの折り返し点であると判定する折り返し点検出部(25)と、
を備える光パルス試験装置(10)。
【請求項2】
前記測定部が測定した測定波形のうち、前記折り返し点検出部の検出した奇数番目の折り返し点を始点とする偶数番目の光ファイバの測定波形について、前記遠端に位置する始点と前記近端に位置する終点とを相互に反転させ、第1の反転波形を生成する波形反転部(21)と、
前記波形反転部の生成した波形を表示する表示部(13)と、
をさらに備える請求項1に記載の光パルス試験装置。
【請求項3】
前記波形反転部は、前記偶数番目の光ファイバの前記遠端での光強度が前記偶数番目の光ファイバの近端での光強度に一致し、前記偶数番目の光ファイバの前記近端での光強度が前記偶数番目の光ファイバの前記遠端での光強度に一致するように、前記第1の反転波形をさらに反転させ、第2の反転波形を生成する、
請求項2に記載の光パルス試験装置。
【請求項4】
前記表示部に表示されている波形の少なくとも一部を、光強度軸において平行移動させる波形移動部(22)をさらに備える、
請求項3に記載の光パルス試験装置。
【請求項5】
前記折り返し点検出部の検出した奇数番目の折り返し点を始点とする偶数番目の光ファイバの前記遠端及び前記近端を特定し、前記偶数番目の光ファイバの前記遠端から前記近端までの光損失地点の配列を、前記偶数番目の光ファイバの前記近端から前記遠端までの光損失地点の配列に反転させるアイコン反転部(24)と、
前記複数の光ファイバの前記近端での光損失地点を一方に、前記複数の光ファイバの前記遠端での光損失地点を他方にして、前記複数の光ファイバの前記近端から前記遠端までの光損失地点が配列されたアイコンを表示する表示部(13)と、
をさらに備える請求項1に記載の光パルス試験装置。
【請求項6】
測定部(11)が、複数の光ファイバ(31,32,33,34)がそれぞれ近端と遠端とを持って並んで敷設され、前記複数の光ファイバのうちの第1の光ファイバの前記近端を除く各光ファイバの前記近端同士又は前記遠端同士が接続されてなる1の被測定光ファイバにおける、前記第1の光ファイバの前記近端を光パルスの入射端に用い、前記被測定光ファイバにおける後方散乱光を測定する測定手順と、
反射検出部(23)が、前記測定部の測定した測定波形から光損失地点を検出する反射検出手順と、
折り返し点検出部(25)が、距離の等しい隣接する区間を検出し、当該区間の前の区間と当該区間の後の区間との距離が等しい場合、当該隣接する区間の境界位置を前記複数の光ファイバの折り返し点であると判定する折り返し点検出手順と、
を実行する光パルス試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光パルス試験装置及び光パルス試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信需要の拡大により、通信を支える媒体の主役は同軸ケーブルから光ファイバケーブルに取って代わってきた。光ファイバケーブルは、幹線系からアクセス系まで用いられており、あらゆる場所に敷設されている。
【0003】
最近では、データセンタ内の通信配線やモバイルアクセスの通信装置とアンテナの配線に用いられる媒体は光ファイバケーブルが主流となっている。これらの光ファイバケーブルは敷設効率を上げて大容量通信を実現するため、単心ではなく多心の光ファイバケーブルが敷設されている。工事時には、すべての光ファイバケーブルの敷設状態を光パルス試験装置で測定しなければならないため、測定の効率化が求められている。
【0004】
光ファイバケーブルに備わる各光ファイバを一度に測定するためのコネクタが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1のコネクタは、光ファイバケーブルに備わる光ファイバ同士を1本に接続する。これにより、多心の光ファイバケーブルを1本の光ファイバとして光パルス試験装置で測定可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−238592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ファイバ同士を1本に接続した場合、光パルス試験装置からの距離と各光ファイバの測定波形との対応関係が分かりにくくなる問題があった。そこで、本開示は、多心の光ファイバケーブルに備わる各光ファイバを接続して1本の光ファイバとして光パルス試験を行った場合であっても、光パルス試験装置からの距離と各光ファイバの測定波形との対応関係を分かりやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本開示の光パルス試験装置(10)は、
複数の光ファイバ(31,32,33,34)がそれぞれ近端と遠端とを持って並んで敷設され、前記複数の光ファイバのうちの第1の光ファイバの前記近端を除く各光ファイバの前記近端同士又は前記遠端同士が接続されてなる1の被測定光ファイバにおける、前記第1の光ファイバの前記近端を光パルスの入射端に用い、前記被測定光ファイバにおける後方散乱光を測定する測定部(11)と、
前記測定部の測定した測定波形から光損失地点を検出する反射検出部(23)と、
距離の等しい隣接する区間を検出し、当該区間の前の区間と当該区間の後の区間との距離が等しい場合、当該隣接する区間の境界位置を前記複数の光ファイバの折り返し点であると判定する折り返し点検出部(25)と、
を備える。
【0008】
本開示の光パルス試験装置では、前記測定部が測定した測定波形のうち、前記折り返し点検出部の検出した奇数番目の折り返し点を始点とする偶数番目の光ファイバの測定波形について、前記遠端に位置する始点と前記近端に位置する終点とを相互に反転させ、第1の反転波形を生成する波形反転部(21)と、前記波形反転部の生成した波形を表示する表示部(13)と、をさらに備えていてもよい。
前記波形反転部は、前記偶数番目の光ファイバの前記遠端での光強度が前記偶数番目の光ファイバの近端での光強度に一致し、前記偶数番目の光ファイバの前記近端での光強度が前記偶数番目の光ファイバの前記遠端での光強度に一致するように、前記第1の反転波形をさらに反転させ、第2の反転波形を生成してもよい。
また、前記表示部に表示されている波形の少なくとも一部を、光強度軸において平行移動させる波形移動部(22)をさらに備えていてもよい。
【0009】
本開示の光パルス試験装置では、前記折り返し点検出部の検出した奇数番目の折り返し点を始点とする偶数番目の光ファイバの前記遠端及び前記近端を特定し、前記偶数番目の光ファイバの前記遠端から前記近端までの光損失地点の配列を、前記偶数番目の光ファイバの前記近端から前記遠端までの光損失地点の配列に反転させるアイコン反転部(24)と、前記複数の光ファイバの前記近端での光損失地点を一方に、前記複数の光ファイバの前記遠端での光損失地点を他方にして、前記複数の光ファイバの前記近端から前記遠端までの光損失地点が配列されたアイコンを表示する表示部(13)と、をさらに備えていてもよい。
【0010】
本開示の光パルス試験方法は、
測定部(11)が、複数の光ファイバ(31,32,33,34)がそれぞれ近端と遠端とを持って並んで敷設され、前記複数の光ファイバのうちの第1の光ファイバの前記近端を除く各光ファイバの前記近端同士又は前記遠端同士が接続されてなる1の被測定光ファイバにおける、前記第1の光ファイバの前記近端を光パルスの入射端に用い、前記被測定光ファイバにおける後方散乱光を測定する測定手順と、
反射検出部(23)が、前記測定部の測定した測定波形から光損失地点を検出する反射検出手順と、
折り返し点検出部(25)が、距離の等しい隣接する区間を検出し、当該区間の前の区間と当該区間の後の区間との距離が等しい場合、当該隣接する区間の境界位置を前記複数の光ファイバの折り返し点であると判定する折り返し点検出手順と、
を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、複数の光ファイバの折り返し点を判定するため、多心の光ファイバケーブルに備わる各光ファイバを接続して1本の光ファイバとして光パルス試験を行った場合であっても、光パルス試験装置からの距離と各光ファイバの測定波形との対応関係を分かりやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係る光パルス試験方法の適用例を示す。
図2】光ファイバケーブルの第1例を示す。
図3】実施形態1に係る光パルス試験装置の構成例である。
図4】測定波形の第1例である。
図5】第1の反転波形の1例である。
図6】第2の反転波形の1例である。
図7】実施形態2に係る光パルス試験装置の構成例である。
図8】第2の反転波形の移動例である。
図9】実施形態3に係る光パルス試験装置の構成例である。
図10】光損失地点の第1の検出例である。
図11】光損失地点の配置の調整における光ファイバの分離例である。
図12】光損失地点の配置の調整における光ファイバの反転例である。
図13】光ファイバケーブルの第2例を示す。
図14】光ファイバケーブルの第3例を示す。
図15】実施形態4に係る光パルス試験装置の構成例である。
図16】測定波形の第2例である。
図17】測定波形の第3例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0014】
本開示は、複数の光ファイバを備える光ファイバケーブルを効率的に測定するためになされたものである。本実施形態では、光ファイバケーブルに備わる光ファイバが2本の場合で説明する。光パルス試験装置は、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)波形を測定することで光ファイバケーブルの特性を測定する装置である。OTDR波形は、光ファイバの入射端から光パルスを入射し、光ファイバ中で散乱する後方散乱光の光強度を入射端で測定することで得られる。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本開示に係る光パルス試験方法の適用例を示す。鉄塔42の上のアンテナ41があり、アンテナ41まで多心の光ファイバケーブルである光ファイバケーブル3が敷設されている。この場合、複数のうちの2本を送信と受信で用いるケースが多い。本開示の光パルス試験方法は、端部36にて2本の光ファイバをパッチコードで接続した光ファイバケーブル3を被測定光ファイバとし、光ファイバケーブル3に備わる1本の光ファイバの端部35に光パルス試験装置10を接続して、光ファイバケーブル3の光パルス試験を行う。
【0016】
図2に、光ファイバケーブル3の一例を示す。2本の光ファイバ31及び32のうち光ファイバ31の端部35に光パルス試験装置10を接続し、光ファイバ31の端部36と光ファイバ32の端部36を光ファイバパッチコード5で接続する。この状態で光パルス試験を実施することで、光ファイバケーブル3に備わる全ての光ファイバの光パルス試験を連続的に一度に測定することが出来る。
【0017】
以下の本実施形態において、端部35を近端と呼び、端部36を遠端と呼び、光ファイバ31及び32が2か所の接続点C及びCで接続されている場合を示す。また、光ファイバパッチコード5の長さは任意であるが、例えば1m程度のパッチコードを用いることができる。
【0018】
図3は、本実施形態に係る光パルス試験装置の一例を示す。光パルス試験装置10は、測定部11と、信号処理部12と、表示部13と、を備える。信号処理部12は、波形反転部21を備える。
【0019】
本実施形態に係る光パルス試験方法は、光パルス試験装置10が、測定手順と、波形反転手順と、表示手順と、を順に実行する。測定手順では、測定部11が光ファイバケーブル3のOTDR波形を測定する。波形反転手順では、波形反転部21が、光パルス試験装置10からの現実の距離に一致するよう、各光ファイバ31及び32のOTDR波形を調整する。
【0020】
図4に、測定手順で得られるOTDR波形の一例を示す。距離P1〜P4が光ファイバ31の測定結果を、距離P4〜P7が光ファイバ32の測定結果を示す。ここでは、光ファイバパッチコードが1mと短いために、反射が距離P4の1カ所しか見えていないものとする。OTDR波形では、光ファイバ32の近端での反射が距離P7に位置し、光ファイバ31の遠端での反射が距離P4に位置する。このため、このOTDR波形では、光ファイバ32の近端が光ファイバ31の遠端よりも遠方に存在するように、表示部13に表示されることになる。
【0021】
波形反転手順では、波形反転部21が、光ファイバ32のOTDR波形の距離軸上で近端と遠端とを相互に鏡面反転させた第1の反転波形を生成する。光ファイバ32の始点は、光ファイバ32の遠端に位置する距離P4である。光ファイバ32の終点は、光ファイバ32の近端に位置する距離P7である。そこで、波形反転部21は、測定部11が測定したOTDR波形のうちの光ファイバ32に該当する部位の始点と終点、つまりは光ファイバ32の遠端と近端とで相互に反転させる。図5に、第1の反転波形の一例を示す。第1の反転波形は、距離P4〜P7のうちの距離P7での反射位置が距離P1と一致し、かつ、距離P4〜P7のうちの距離P4での反射位置を折り返し点として折り返されている。このように、第1の反転波形における光ファイバ32のOTDR波形は、光ファイバ32の現実の位置と一致している。
【0022】
ここで、光ファイバ32の近端及び遠端すなわち光ファイバパッチコード5の位置は、後述する実施形態4の方法を用いて特定する。
【0023】
第1の反転波形の光強度は、距離P4からP1にかけて光強度がΔL減少するため、光ファイバ32の近端から光パルスを入射した場合のOTDR波形とは光強度の減少向きが異なる。そこで、波形反転手順では、さらに、波形反転部21が、第1の反転波形をさらに光強度軸上で鏡面反転させた第2の反転波形を生成するようにしてもよい。図6に、第2の反転波形の一例を示す。
【0024】
第2の反転波形では、光ファイバ32の遠端での光強度が光ファイバ32の近端での光強度に一致し、光ファイバ32の近端での光強度が光ファイバ32の遠端での光強度に一致する。すなわち、第1の反転波形における光ファイバ31と32との折り返し点での光強度L1を光強度L2とし、第1の反転波形における距離P1での光強度L2を光強度L1とする。これにより、第2の反転波形は、距離P1からP4にかけて光強度がΔL減少する、光ファイバ32の近端から光パルスを入射したものと同様のOTDR波形となる。
【0025】
表示手順では、表示部13に、光パルス試験の結果として、第1の反転波形又は第2の反転波形のいずれかを表示する。これにより、光パルス試験装置10は、光ファイバ31と光ファイバ32をそれぞれ一回ずつ測定したかのように半分の位置(光ファイバパッチコード5の位置)で分割した第1の反転波形を測定結果として表示する。第1の反転波形における光ファイバ32のOTDR波形は、光ファイバ32の現実の位置と一致している。このため、光パルス試験装置10は、測定時間を半減し、測定結果は所望のものを得ることが可能である。
【0026】
さらに、第2の反転波形は、光ファイバ31及び光ファイバ32のOTDR測定を個別に実施したものと同様の波形である。このため、光ファイバ31と光ファイバ32のOTDR波形を比較することが容易になる。なお、光パルス試験装置10は、図4に示す処理前のOTDR波形を表示部13に表示可能であってもよい。
【0027】
なお、表示部13は、OTDR波形、第1の反転波形又は第2の反転波形を表示部13に表示する際に、各光ファイバ31−1、31−2、31−3、32−1、32−2、32−3での損失を表示してもよい。
【0028】
(実施形態2)
図7に、本実施形態に係る光パルス試験装置の一例を示す。本実施形態に係る光パルス試験装置10は、信号処理部12が波形移動部22をさらに備える。また、本実施形態に係る光パルス試験方法は、波形反転手順の後に波形移動手順をさらに備える。
【0029】
波形移動手順では、波形移動部22が、表示部13に表示されている波形の少なくとも一部を平行移動させる。表示部13に表示されている波形は、例えば、第1又は第2の反転波形である。波形の少なくとも一部は、例えば、光ファイバ31又は32のOTDR波形、或いは、これらの一部である。平行移動は、距離軸方向であってもよいし、光強度軸方向であってもよいし、これらの両方であってもよい。移動方法は、任意であるが、例えば、表示部13に表示されている光ファイバ32のOTDR波形を選択し、スライドさせることで行う。
【0030】
例えば、図8に示すように、第2の反転波形を光強度軸上で平行移動させる。これにより、光ファイバ31のOTDR波形と光ファイバ32のOTDR波形とを重ね合わせて傾きを比較することで、光ファイバ31における光損失の状態と光ファイバ32における光損失の状態との比較を容易にすることができる。
【0031】
上述の実施形態において説明したように、本開示に係る光パルス試験装置10及び光パルス試験方法は、多心の光ファイバケーブル3を構成する各光ファイバ31及び32を接続して1本の光ファイバとして光パルス試験を行った場合であっても、光パルス試験装置10からの距離と各光ファイバ31及び32のOTDR波形との対応関係が一致するよう表示可能にすることができる。
【0032】
なお、3本以上の場合でも、それぞれの光ファイバの端部35及び36を光ファイバパッチコード5で接続することで、一本のファイバとし、測定を一回で実施し、形態情報を光パルス試験装置10に入力することで測定結果をそれぞれの光ファイバケーブル3の結果と分割し、保存、レポートすることで効率の良い工事を実施することが可能となる。
【0033】
また、以上の実施形態では、光ファイバ31及び32を含んでなる多心の光ファイバケーブル3を敷設するとして説明してきたが、これに限定されるものではなく、本開示は各個独立した光ファイバ2本を並べて敷設した場合であっても、適用可能であることは言うまでもない。
【0034】
(実施形態3)
図9は、本実施形態に係る光パルス試験装置の一例を示す。光パルス試験装置10は、測定部11と、信号処理部12と、表示部13と、を備える。信号処理部12は、反射検出部23と、アイコン反転部24と、を備える。
【0035】
本実施形態に係る光パルス試験方法は、光パルス試験装置10が、測定手順と、反射検出手順と、アイコン反転手順と、表示手順と、を順に実行する。測定手順では、測定部11が光ファイバケーブル3のOTDR波形を測定する。図4に、測定手順で得られるOTDR波形の一例を示す。これを基に、以下処理を行ったものとする。
【0036】
反射検出手順では、反射検出部23が、測定部11の測定したOTDR波形から光損失地点であるイベント発生地点を検出する。図10に、変換前の全体配列として、検出した各イベントをアイコンで示した一例を示す。右に向うほど遠方となる表示となっており、No.1と7のアイコンが光ファイバの“端”を表わし、No.2〜6のアイコンがコネクタ接続点などの“フレネル反射”を表わしている。光ファイバ32の近端での反射がNo.7に位置し、光ファイバ31の遠端での反射がNo.4に位置する。このため、光ファイバ32の近端が光ファイバ31の遠端よりも遠方に存在するように、表示部13に表示されることになる。
【0037】
アイコン反転手順では、アイコン反転部24が、光パルス試験装置10からの現実の距離に一致するよう、各光ファイバ31及び32の光損失地点の配置を調整する。例えば、検出したNo.1〜No.7の光損失地点のなかから光ファイバ32の遠端に位置するNo.4及び近端に位置するNo.7を特定し、図11に示すように、これらを分離する。そして、図12に示すように、No.5からNo.7までのイベントの配列を、No.7からNo.5の配列に反転させる。これにより、光ファイバ32のイベント発生地点のアイコンの配列を、光ファイバ32の現実の位置と一致させることができる。
【0038】
ここで、光ファイバ32の近端及び遠端すなわち光ファイバパッチコード5の位置は、後述する実施形態4の方法を用いて特定する。
【0039】
表示手順では、図12に示すように、表示部13は、光ファイバ31のイベント発生地点を示すNo.1からNo.4のアイコンと、光ファイバ32のイベント発生地点を示すNo.7からNo.5のアイコンと、を変換後の分離配列として表示する。表示部13には、光ファイバ31と光ファイバ32をそれぞれ一回ずつ測定したかのように半分の位置(光ファイバパッチコード5の位置)で分割したイベント発生地点が測定結果として表示されている。No.7からNo.5のアイコンの配列は現実の距離に一致する。このため、光パルス試験装置10は、測定時間を半減し、測定結果は所望のものを得ることが可能である。ここで、光ファイバ31が送信用であり、光ファイバ32が受信用である場合、表示部13は、No.1からNo.4のアイコンは送信側(Tx)であり、No.7からNo.5のアイコンは受信側(Rx)である旨を表示することが好ましい。
【0040】
また、図12において、No.4のアイコンを光ファイバの“端”を表わすアイコンに変えて表示させるようにしてもよい。これにより、操作者は各光ファイバの区切りであることがよりイメージしやすくなる。さらには、図10に示す変換前の全体配列と図12に示す変換後の分離配列とを一緒に表示させるようにしてもよい。
【0041】
表示部13は、No.1〜No.7のイベント発生地点の間に、各光ファイバ31−1、31−2、31−3、32−1、32−2、32−3での損失を表示してもよい。
【0042】
また、前述の実施形態において、光ファイバケーブル3を構成する光ファイバの数は任意である。例えば、図13に示すように、4本の光ファイバ31、32、33、34が共に近端と遠端とを持って並んで敷設される場合、光ファイバ31は第1の光ファイバとして機能し、光ファイバ31及び32の遠端を光ファイバパッチコード5−1で接続し、光ファイバ32及び33の近端を光ファイバパッチコード5−2で接続し、光ファイバ33及び34の遠端を光ファイバパッチコード5−3で接続すればよい。この場合、実施形態1及び実施形態2における波形反転手順では、波形反転部21が、光パルス試験装置10から奇数番目に接続されている光ファイバ31及び33のOTDR波形は反転させず、偶数番目に接続されている光ファイバ32及び34のOTDR波形を反転させる。実施形態3における反転手順では、アイコン反転部24が、光パルス試験装置10から奇数番目に接続されている光ファイバ31及び33のアイコンの配置は反転させず、偶数番目に接続されている光ファイバ32及び34のアイコンの配置を反転させる。
【0043】
また別の態様として、例えば、図14に示すように、3本の光ファイバ31、32、33が共に近端と遠端とを持って並んで敷設される場合、光ファイバ31は第1の光ファイバとして機能し、光ファイバ31及び32の遠端を光ファイバパッチコード5−1で接続し、光ファイバ32及び33の近端を光ファイバパッチコード5−2で接続すればよい。この場合、実施形態1及び実施形態2における波形反転手順では、波形反転部21が、光パルス試験装置10から奇数番目に接続されている光ファイバ31及び33のOTDR波形は反転させず、偶数番目に接続されている光ファイバ32のOTDR波形を反転させる。実施形態3における反転手順では、アイコン反転部24が、光パルス試験装置10から奇数番目に接続されている光ファイバ31及び33のアイコンの配置は反転させず、偶数番目に接続されている光ファイバ32のアイコンの配置を反転させる。
【0044】
(実施形態4)
図15に、本実施形態に係る光パルス試験装置の一例を示す。本実施形態に係る光パルス試験装置10は、実施形態1で説明した信号処理部12が反射検出部23及び折り返し点検出部25をさらに備える。また、本実施形態に係る光パルス試験方法は、実施形態1及び2の測定手順と波形反転手順との間に、反射検出手順と、折り返し点検出手順とをさらに備える。
【0045】
まず、図13に示すような、偶数本の光ファイバが共に近端と遠端とを持って並んで敷設され、各光ファイバの近端又は遠端が互いに接続されてなる被測定光ファイバへの適用例について説明する。図16は、図13に示す光ファイバケーブルの例を被測定光ファイバとして測定されたOTDR波形の一例を示す。
【0046】
反射検出手順では、反射検出部23が、測定部11の測定したOTDR波形から光損失地点であるイベント発生地点を検出する。これにより、イベント発生地点である距離P1〜P13が検出される。そして、折り返し点検出手順では、折り返し点検出部25が、イベント発生地点同士の区間D1〜D12を用いて、光ファイバパッチコードで接続されている折り返し点を検出する。
【0047】
折り返し点検出部25は、隣接する区間の距離が等しいか否かを判定する。例えば、区間D1と区間D2が等しいか否かを判定する。区間D1と区間D2が異なる場合、区間D2と区間D3が等しいか否かを判定する。このように、区間の等しいイベント発生地点が検出されるまで、隣接するイベント発生地点間の距離が等しいか否かを順に判定する。
【0048】
区間D3と区間D4が等しい場合、区間D4の1つ後の区間D5と区間D3の1つ前の区間D2とが等しく、区間D5の1つ後の区間D6と区間D2の1つ前の区間D1とが等しいか否かを判定する。図16に示す構成では、区間D5と区間D2とが等しく、区間D6と区間D1とが等しい。これにより、折り返し点検出部25は、区間D3と区間D4の境界位置のイベント発生地点である距離P4を折り返し点と判定する。
【0049】
つまり、距離P4は、距離P1から距離P7までをなす光ファイバの折り返し点である。引き続き、折り返し点検出部25は、区間D7以降について、前の距離P4〜P7との距離が等しいか否かを判定する。
【0050】
例えば、区間D7と区間D6とが等しく、区間D8と区間D5とが等しく、区間D9と区間D4とが等しいか否かを判定する。図16に示す構成では、区間D7と区間D6とが等しく、区間D8と区間D5とが等しく、区間D9と区間D4とが等しい。これにより、折り返し点検出部25は、区間D6と区間D7の境界位置のイベント発生地点である距離P7を折り返し点と判定する。
【0051】
つまり、距離P7は、距離P4から距離P10までをなす光ファイバの折り返し点である。引き続き、折り返し点検出部25は、区間D10以降について、前の距離P7〜P10との距離が等しいか否かを判定する。
【0052】
例えば、区間D10と区間D9とが等しく、区間D11と区間D8とが等しく、区間D12と区間D7とが等しいか否かを判定する。図16に示す構成では、区間D10と区間D9とが等しく、区間D11と区間D8とが等しく、区間D12と区間D7とが等しい。これにより、折り返し点検出部25は、区間9と区間D10の境界位置のイベント発生地点である距離P10を折り返し点と判定する。
【0053】
このように、距離の等しい区間D3及び区間D4、区間D6及び区間D7、区間D9及び区間D10が検出されたとき、その前後の区間D1〜D3と区間D4〜D6の各々の距離が等しいか否か、区間D4〜D6と区間D7〜D9の各々の距離が等しいか否か、区間D7〜D9と区間D10〜D12の各々の距離が等しいか否か、に基づいて、折り返し点であるか否かを判定する。
【0054】
最後の区間の組み合わせである区間D11及び区間D12の判定を行った後、折り返し点検出部25は、特定した折り返し点を用いて、偶数番目の光ファイバを特定する。例えば、図16では、距離P4,P7,P10が折り返し点と判定されている。この場合、奇数番目である1番目の折り返し点を始点とする距離P4から距離P7、すなわち区間D4〜D6までを2番目の光ファイバ32−3,32−2,32−1と判定し、奇数番目である3番目の折り返し点を始点とする距離P10から距離P13、すなわち区間D10〜D12までを4番目の光ファイバ34−3,34−2,34−1と判定する。
【0055】
次に、図14に示すような、奇数本の光ファイバが共に近端と遠端とを持って並んで敷設され、各光ファイバの近端又は遠端が互いに接続されてなる被測定光ファイバへの適用例について説明する。図17は、図14に示す光ファイバケーブルの例を被測定光ファイバとして測定されたOTDR波形の一例を示す。この場合も、距離の等しい区間D3及び区間D4、区間D6及び区間D7が検出され、その前後の区間D1〜D3と区間D4〜D6の距離が等しいか否か、区間D4〜D6と区間D7〜D9の距離が等しいか否か、に基づいて、折り返し点であるか否かを判定する。
【0056】
この場合、折り返し点検出部25は、距離P4及びP7を折り返し点と判定する。奇数番目である1番目の折り返し点を始点とする距離P4から距離P7、すなわち区間D4〜D6までを2番目の光ファイバ32−3,32−2,32−1と判定することができる。
【0057】
本実施形態は、実施形態1に記載の信号処理部12が反射検出部23と折り返し点検出部25を備える例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、実施形態2で説明した信号処理部12が反射検出部23と折り返し点検出部25をさらに備えていてもよいし、実施形態3で説明した信号処理部12が折り返し点検出部25をさらに備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10:光パルス試験装置
11:測定部
12:信号処理部
13:表示部
21:波形反転部
22:波形移動部
23:反射検出部
24:アイコン反転部
25:折り返し点検出部
3:光ファイバケーブル
31−1、31−2、31−3、32−1、32−2、32−3、33、34:光ファイバ
35、36:端部
41:アンテナ
42:鉄塔
5、5−1、5−2、5−3:光ファイバパッチコード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17