(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1から第3圧力センサの前記検出圧力に加え、充電運転中と発電運転中のいずれであるかに基づいて、前記流路切換部を制御する、請求項1に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
前記制御部は、前記充電運転中、前記第1圧力センサの前記検出圧力が、前記第1基準圧力よりも高く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも高ければ、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させる、請求項2に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
前記制御部は、前記充電運転中、前記2圧力センサの前記検出圧力が、前記第2基準圧力よりも低く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも低ければ、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させるように、前記流路切換部を制御する、請求項2又は請求項3に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
前記制御部は、前記発電運転中、前記第1圧力センサの前記検出圧力が、前記第1基準圧力よりも低く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも低ければ、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させるように、前記流路切換部を制御する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
前記制御部は、前記発電運転中、前記第2圧力センサの前記検出圧力が、前記第2基準圧力よりも高く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも高ければ、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させるように、前記流路切換部を制御する、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
前記制御部は、前記第1液面高さセンサの検出液面高さが上昇傾向にあるとき、前記第1圧力センサの前記検出圧力が、前記第1基準圧力よりも高く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも高ければ、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させる、請求項7に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
前記制御部は、前記第1液面高さセンサの検出液面高さが降下傾向にあるとき、前記第1圧力センサの前記検出圧力が、前記第1基準圧力よりも低く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも低ければ、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させる、請求項7又は請求項8に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
前記制御部は、前記第2液面高さセンサの検出液面高さが上昇傾向にあるとき、前記第2圧力センサの前記検出圧力が、前記第2基準圧力よりも高く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも高ければ、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させる、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
前記制御部は、前記第2液面高さセンサの検出液面高さが降下傾向にあるとき、前記第2圧力センサの前記検出圧力が、前記第2基準圧力よりも低く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも低ければ、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させる、請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温熱媒タンクと低温熱媒タンクに不活性ガスを供給することで、熱媒の劣化を抑制できる。しかし、特許文献1を含む圧縮空気貯蔵発電装置に関する先行技術文献は、不活性ガスの消費量の低減について、特段の教示を含まない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧縮空気貯蔵発電装置において、熱媒の劣化を抑制するための不活性ガスの消費量を低減することを課題とする。
【0007】
本発明の第1の態様は、変動する入力電力により駆動される電動機と、前記電動機と機械的に接続され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機により生成された圧縮空気を貯蔵する蓄圧部と、前記蓄圧部と流体的に接続され、前記蓄圧部から供給される前記圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機と機械的に接続された発電機と、前記圧縮機で生成された前記圧縮空気と熱媒とで熱交換し、前記熱媒を昇温させる第1熱交換部と、前記第1熱交換部と流体的に接続され、前記第1熱交換部での熱交換後の前記熱媒を貯蔵する高温蓄熱部と、前記高温蓄熱部と流体的に接続され、前記高温蓄熱部から供給される前記熱媒と、前記蓄圧部から前記膨張機に供給される前記圧縮空気とで熱交換し、前記圧縮空気を昇温させる第2熱交換部と、前記第2熱交換部と流体的に接続され、前記第2熱交換部での熱交換後の熱媒を貯蔵する低温蓄熱部と、不活性ガスが充填された前記高温蓄熱部の気相部と、前記不活性ガスが充填された前記低温蓄熱部の気相部と、前記不活性ガスが充填された調整部と、前記調整部を前記高温蓄熱部の前記気相部に流体的に接続する第1流路と、前記調整部を前記低温蓄熱部の前記気相部に流体的に接続する第2流路とを少なくとも備える不活性ガス流路系と、前記調整部と前記高温蓄熱部の前記気相部との間の前記第1流路を介した連通と遮断の切換と、前記調整部と前記低温蓄熱部の前記気相部との間の前記第2流路を介した連通と遮断の切換とを少なくとも実行可能な流路切換部と、前記高温蓄熱部の前記気相部の圧力を検出する第1圧力センサと、前記低温蓄熱部の前記気相部の圧力を検出する第2圧力センサと、前記調整部の圧力を検出する第3圧力センサと、前記第1及び第2流路を介した前記調整部への前記不活性ガスの流出と、前記第1及び第2流路を介した前記調整部からの前記不活性ガスの流入とによって、前記高温蓄熱部の前記気相部が第1基準圧力に維持され、かつ前記低温蓄熱部の前記気相部が第2基準圧力に維持されるように、少なくとも前記第1から第3圧力センサの検出圧力に基づいて前記流路切換部を制御する制御部とを備える、圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【0008】
前記調整部への前記不活性ガスの流出と、前記調整部からの前記不活性ガスの流入とによって、前記高温蓄熱部の前記気相部が前記第1基準圧力に維持され、かつ前記低温蓄熱部の前記気相部が前記第2基準圧力に維持される。よって、前記第1基準圧力に維持するための、前記高温蓄熱部の前記気相部に対する前記不活性ガス流路系外からの前記不活性ガスの供給と、前記不活性ガス流路系外への前記不活性ガスの排出とを、不要ないしは量的に抑制できる。また、前記第2基準圧力に維持するための、前記低温蓄熱部の前記気相部に対する前記不活性ガス流路系外からの前記不活性ガスの供給と、前記不活性ガス流路系外への前記不活性ガスの排出とを、不要ないしは量的に抑制できる。つまり、不活性ガスの消費量を低減できる。
【0009】
具体的には、前記制御部は、前記第1から第3圧力センサの前記検出圧力に加え、充電運転中と発電運転中のいずれであるかに基づいて、前記流路切換部を制御してもよい。
【0010】
より具体的には、前記制御部は、前記充電運転中、前記第1圧力センサの前記検出圧力が、前記第1基準圧力よりも高く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも高ければ、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させてもよい。
【0011】
この構成によれば、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させることで、前記高温蓄熱部の前記気相部から前記調整部へ前記不活性ガスが流出し、前記高温蓄熱部の前記気相部が減圧される。その結果、前記高温蓄熱部の前記気相部の圧力は、前記第1基準圧力に近づく。
【0012】
また、前記制御部は、前記充電運転中、前記2圧力センサの前記検出圧力が、前記第2基準圧力よりも低く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも低ければ、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させるように、前記流路切換部を制御してもよい。
【0013】
この構成によれば、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させることで、前記低温蓄熱部の前記気相部に前記調整部から前記不活性ガスが流入し、前記低温蓄熱部の前記気相部が昇圧される。その結果、前記低温蓄熱部の前記気相部の圧力は、前記第2基準圧力に近づく。
【0014】
さらに、前記制御部は、前記発電運転中、前記第1圧力センサの前記検出圧力が、前記第1基準圧力よりも低く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも低ければ、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させるように、前記流路切換部を制御してもよい。
【0015】
この構成によれば、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させることで、前記高温蓄熱部の前記気相部に前記調整部から前記不活性ガスが流入し、前記高温蓄熱部の前記気相部が昇圧される。その結果、前記高温蓄熱部の前記気相部の圧力は、前記第1基準圧力に近づく。
【0016】
さらにまた、前記制御部は、前記発電運転中、前記第2圧力センサの前記検出圧力が、前記第2基準圧力よりも高く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも高ければ、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させるように、前記流路切換部を制御してもよい。
【0017】
この構成によれば、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させることで、前記低温蓄熱部の前記気相部から前記調整部に前記不活性ガスが流出し、前記低温蓄熱部の前記気相部が減圧される。その結果、前記低温蓄熱部の前記気相部の圧力は、前記第2基準圧力に近づく。
【0018】
代案としては、前記高温蓄熱部内の前記熱媒の液面高さを検出する第1液面高さセンサと、前記低温蓄熱部内の前記熱媒の液面高さを検出する第2液面高さセンサとをさらに備え、前記制御部は、前記第1から第3圧力センサの前記検出圧力に加え、前記第1及び第2液面高さセンサの検出液面高さに基づいて、前記流路切換部を制御してもよい。
具体的には、前記制御部は、前記第1液面高さセンサの検出液面高さが上昇傾向にあるとき、前記第1圧力センサの前記検出圧力が、前記第1基準圧力よりも高く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも高ければ、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させてもよい。
【0019】
この構成によれば、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させることで、前記高温蓄熱部の前記気相部から前記調整部へ前記不活性ガスが流出し、前記高温蓄熱部の前記気相部が減圧される。その結果、前記高温蓄熱部の前記気相部の圧力は、前記第1基準圧力に近づく。
【0020】
また、前記制御部は、前記第1液面高さセンサの検出液面高さが降下傾向にあるとき、前記第1圧力センサの前記検出圧力が、前記第1基準圧力よりも低く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも低ければ、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させてもよい。
【0021】
この構成によれば、前記高温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させることで、前記高温蓄熱部の前記気相部に前記調整部から前記不活性ガスが流入し、前記高温蓄熱部の前記気相部が昇圧される。その結果、前記高温蓄熱部の前記気相部の圧力は、前記第1基準圧力に近づく。
【0022】
さらに、前記制御部は、前記第2液面高さセンサの検出液面高さが上昇傾向にあるとき、前記第2圧力センサの前記検出圧力が、前記第2基準圧力よりも高く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも高ければ、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させてもよい。
【0023】
この構成によれば、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させることで、前記低温蓄熱部の前記気相部から前記調整部から前記不活性ガスが流出し、前記低温蓄熱部の前記気相部が減圧される。その結果、前記低温蓄熱部の前記気相部の圧力は、前記第2基準圧力に近づく。
【0024】
さらにまた、前記制御部は、前記第2液面高さセンサの検出液面高さが降下傾向にあるとき、前記第2圧力センサの前記検出圧力が、前記第2基準圧力よりも低く、かつ前記第3圧力センサの前記検出圧力よりも低ければ、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させてもよい。
【0025】
この構成によれば、前記低温蓄熱部の前記気相部と前記調整部とを流体的に連通させることで、前記低温蓄熱部の前記気相部に前記調整部から前記不活性ガスが流入し、前記低温蓄熱部の前記気相部が昇圧される。その結果、前記低温蓄熱部の前記気相部の圧力は、前記第2基準圧力に近づく。
【0026】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、前記高温蓄熱部の前記気相部に流体的に接続された第1不活性ガス源と、前記低温蓄熱部の前記気相部に流体的に接続された第2不活性ガス源とをさらに備えてもよい。
【0027】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、前記高温蓄熱部の前記気相部を大気と連通する状態と大気から遮断された状態とに切換可能な第1排出部と、前記低温蓄熱部の前記気相部を大気と連通する状態と大気から遮断された状態とに切換可能な第2排出部とをさらに備えてもよい。
【0028】
本発明の第2の態様は、変動する入力電力により駆動される電動機と、前記電動機と機械的に接続され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機により生成された圧縮空気を貯蔵する蓄圧部と、前記蓄圧部と流体的に接続され、前記蓄圧部から供給される前記圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機と機械的に接続された発電機と、前記圧縮機で生成された前記圧縮空気と熱媒とで熱交換し、前記熱媒を昇温させる第1熱交換部と、前記第1熱交換部と流体的に接続され、前記第1熱交換部での熱交換後の前記熱媒を貯蔵する高温蓄熱部と、前記高温蓄熱部と流体的に接続され、前記高温蓄熱部から供給される前記熱媒と、前記蓄圧部から前記膨張機に供給される前記圧縮空気とで熱交換し、前記圧縮空気を昇温させる第2熱交換部と、前記第2熱交換部と流体的に接続され、前記第2熱交換部での熱交換後の熱媒を貯蔵する低温蓄熱部と、不活性ガスが充填された前記高温蓄熱部の気相部と、前記不活性ガスが充填された前記低温蓄熱部の気相部と、前記不活性ガスが充填された調整部と、前記調整部を前記高温蓄熱部の前記気相部に流体的に接続する第1流路と、前記調整部を前記低温蓄熱部の前記気相部に流体的に接続する第2流路とを少なくとも備える不活性ガス流路系と、前記不活性ガス流路系を、前記調整部と前記高温蓄熱部の前記気相部との間の前記第1流路を介した連通と遮断の切換と、前記調整部と前記低温蓄熱部の前記気相部との間の前記第2流路を介した連通と遮断の切換とを少なくとも実行可能な流路切換部とを備える圧縮空気貯蔵発電装置を準備し、前記第1及び第2流路を介した前記調整部への前記不活性ガスの流出と、前記第1及び第2流路を介した前記調整部からの前記不活性ガスの流出とによって、前記高温蓄熱部の前記気相部が第1基準圧力に維持され、かつ前記低温蓄熱部の前記気相部が第2基準圧力に維持されるように、前記高温蓄熱部の前記気相部の圧力、前記低温蓄熱部の前記気相部の圧力、及び前記調整部の圧力に少なくとも基づいて、前記流路切換部を制御する、圧縮空気貯蔵発電方法を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、圧縮空気貯蔵発電装置における、熱媒の劣化を抑制するための不活性ガスの消費量を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
図1を参照すると、圧縮空気貯蔵(CAES:compressed air energy storage)発電装置1は、再生可能エネルギーを利用して発電する発電装置2の出力変動を平準化して電力系統3に電力を供給すると共に、電力需要の変動に合わせた電力を電力系統3に供給する。
【0032】
本実施形態のCAES発電装置1は、空気流路系4、熱媒流路系5、及び不活性ガス流路系6を備える。
【0033】
(空気流路系)
空気流路系4には、圧縮機8、第1熱交換器(第1熱交換部)9、蓄圧タンク(蓄圧部)10、第2熱交換器(第2熱交換部)11、及び膨張機12が設けられている。空気流路系4は、空気流路13a〜13dを備える。
【0034】
圧縮機8には、電動機14が機械的に接続されている。電動機14には、発電装置2が電気的に接続されている。発電装置2は、風力、太陽光、太陽熱、波力のような再生可能エネルギーにより発電する。電動機14は、発電装置2からの変動する入力電力によって駆動される。電動機14は電力系統から給電されるものでもよい。圧縮機8の吸込口8aは、吸気のための空気流路13aに流体的に接続されている。圧縮機8の吐出口8bは、空気流路13bを介して蓄圧タンク10に流体的に接続されている。空気流路13bには、第1熱交換器9が設けられている。
【0035】
本実施形態の圧縮機8は、スクリュ式である。スクリュ式の圧縮機8は、回転数制御可能であるため、不規則に変動する入力電力に応答性良く追従でき、CAES発電装置1の構成要素として好ましい。圧縮機8は、スクロール式、ターボ式、レシプロ式のようなスクリュ式以外のものでもよい。
【0036】
蓄圧タンク10は、圧縮空気を貯蔵してエネルギーとして蓄積できる。蓄圧タンク10は、空気流路13cによって膨張機12の給気口12aと流体的に接続されている。空気流路13cには、第2熱交換器11が設けられている。
【0037】
膨張機12には、発電機15が機械的に接続されている。発電機15は電力系統3に電気的に接続されている。膨張機12の排気口12bは、排気のための空気流路13dに流体的に接続されている。
【0038】
本実施形態の膨張機12は、スクリュ式である。スクリュ式の膨張機12は、回転数制御可能である点で、CAES発電装置1の構成要素として好ましい。膨張機12は、スクロール式、ターボ式、レシプロ式のようなスクリュ式以外のものでもよい。
【0039】
(熱媒流路系)
熱媒流路系5には、第1熱交換器9、高温熱媒タンク(高温蓄熱部)17、第2熱交換器11、及び低温熱媒タンク(低温蓄熱部)18が順に設けられている。熱媒流路系5は、熱媒流路19a,19bを備える。後述するポンプ21A,21Bにより、熱媒流路系5を液体の熱媒が循環している。熱媒の種類は特に限定されないが、例えば鉱物油系、グリコール系、または合成油系の熱媒を使用できる。
【0040】
高温熱媒タンク17の内部には、熱媒が貯蔵された部分(液相部17a)と、熱媒が貯蔵されておらずN2ガス(不活性ガス)が充填された気相部17bとがある。同様に、低温熱媒タンク18の内部には、熱媒が貯蔵された液相部18aと、N2ガスが充填された気相部18bとがある。
【0041】
熱媒流路19aは、高温熱媒タンク17の液相部17aと低温熱媒タンク18の液相部18aとを流体的に接続している。熱媒流路19aでは、後に詳述するように、低温熱媒タンク18から高温熱媒タンク17へ熱媒が流れる。熱媒流路19aには、第1熱交換器9が設けられている。熱媒流路19aは、低温熱媒タンク18と第1熱交換器9との間に、後述の制御装置37により開閉制御可能な弁V7と、ポンプ21Aとを備える。また、熱媒流路19aは、第1熱交換器9と高温熱媒タンク17との間に、逆止弁22Aを備える。逆止弁22Aは、高温熱媒タンク17に向かう熱媒の流れを許容するが、それとは逆向きの熱媒の流れを遮断する。
【0042】
熱媒流路19bは、高温熱媒タンク17の液相部17aと低温熱媒タンク18の液相部18aとを流体的に接続している。熱媒流路19bでは、後に詳述するように、高温熱媒タンク17から低温熱媒タンク18へ熱媒が流れる。熱媒流路19bには、第2熱交換器11が設けられている。熱媒流路19bは、高温熱媒タンク17と第2熱交換器11との間に、開閉制御可能な弁V8と、ポンプ21Bとを備える。また、熱媒流路19bは、第2熱交換器11と低温熱媒タンク18との間に、逆止弁22Bを備える。逆止弁22Bは、低温熱媒タンク18に向かう熱媒の流れを許容するが、それとは逆向きの熱媒の流れを遮断する。
【0043】
(不活性ガス流路系)
不活性ガス流路系6は、高温熱媒タンク17の気相部17b、低温熱媒タンク18の気相部18b、2個のN2ボンベ(不活性ガス源)25A,25B、及び調整タンク(調整部)24を備える。不活性ガス流路系6には、N2ボンベ25A,25Bにより供給されるN2ガスが充填されている。特に、高温熱媒タンク17の気相部17bと低温熱媒タンク18の気相部18bとに充填されたN2ガスにより、これらの熱媒タンク17,18に貯蔵された熱媒の酸化劣化が抑制ないし防止されている。N2ボンベ25に代えて、ArのようなN2以外の不活性ガスを供給する不活性ガス源を採用してもよい。つまり、N2以外の不活性ガスを不活性ガス流路系6に充填してもよい。
【0044】
一方のN2ボンベ25Aは不活性ガス流路26aを介して高温熱媒タンク17の気相部17bに流体的に接続され、他方のN2ボンベ25Bは不活性ガス流路26bを介して低温熱媒タンク18の気相部18bに流体的に接続されている。
【0045】
高温熱媒タンク17には、気相部17bの圧力、すなわち充填されているN2ガスの圧力を検出するための圧力センサ31Aが設けられている。同様に、低温熱媒タンク18には、気相部18bの圧力、すなわち充填されているN2ガスの圧力を検出するための圧力センサ31Bが設けられている。以下の説明では、圧力センサ31Aの検出圧力を圧力Phと呼び、圧力センサ31Bの検出圧力を圧力Plと呼ぶ。
【0046】
高温熱媒タンク17には、気相部17bを大気に連通する状態と大気から遮断された状態とに切換可能な弁V5(第1排出部)が設けられている。同様に、低温熱媒タンク18には、気相部18bを大気に連通する状態と大気から遮断された状態とに切換可能な弁V6(第2排出部)が設けられている。
【0047】
調整タンク24にはN2ガスが充填されている。調整タンク24は、不活性ガス流路26c(第1流路)を介して高温熱媒タンク17の気相部17bと流体的に接続されている。また、調整タンク24は、不活性ガス流路26d(第2流路)を介して低温熱媒タンク18の気相部18bと流体的に接続されている。調整タンク24の容積は、特に限定されないが、高温熱媒タンク17と低温熱媒タンク18の容積等に応じて、後述する制御が可能となるように設定される。本実施形態では、不活性ガス流路系6は単一の調整タンク24を備えるが、互いに流体的に連通された複数の調整タンクを備えていてもよい。
【0048】
調整タンク24には、調整タンク24内の圧力、すなわち充填されているN2ガスの圧力を検出するための圧力センサ31Cが設けられている。以下の説明では、圧力センサ31Cの検出圧力を圧力Pbと呼ぶ。
【0049】
(流路切換部)
不活性ガス流路系6の連通状態を切り換えるために、流路切換部28が設けられている。流路切換部28は、いずれも開閉制御可能な弁である弁V1〜V4を備える。
【0050】
弁V1は、調整タンク24と高温熱媒タンク17の気相部17bを接続する不活性ガス流路26cに介装されている。弁V1が開弁すると調整タンク24と高温熱媒タンク17の気相部17bが不活性ガス流路26cを介して連通し、弁V1が閉弁すると連通が遮断される。弁V1の開弁時には、高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが調整タンク24の圧力Pbよりも高ければ、高温熱媒タンク17内のN2ガスが不活性ガス流路26cを介して調整タンク24に流出する。また、弁V1の開弁時には、高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが調整タンク24の圧力Pbよりも低ければ、不活性ガス流路26cを介して調整タンク24から高温熱媒タンク17にN2ガスが流入する。
【0051】
弁V2は、調整タンク24と低温熱媒タンク18の気相部17bを接続する不活性ガス流路26dに介装されている。弁V2が開弁すると調整タンク24と低温熱媒タンク18の気相部18bが不活性ガス流路26dを介して連通し、弁V2が閉弁すると連通が遮断される。弁V2の開弁時には、低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが調整タンク24の圧力Pbよりも高ければ、低温熱媒タンク18内のN2ガスが不活性ガス流路26dを介して調整タンク24に流出する。また、弁V2の開弁時には、低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが調整タンク24の圧力Pbよりも低ければ、不活性ガス流路26dを介して調整タンク24から低温熱媒タンク18にN2ガスが流入する。
【0052】
弁V3は、N2ボンベ25Aと高温熱媒タンク17の気相部17bを接続する不活性ガス流路26aに介装されている。弁V3の開弁時には、N2ボンベ25Aが高温熱媒タンク17の気相部17bに連通し、N2ボンベ25Aから高温熱媒タンク17にN2ガスが供給される。弁V3の閉弁時には、高温熱媒タンク17の気相部17bはN2ボンベ25Aに対して流体的に遮断される。つまり、弁V3の閉弁時には、高温熱媒タンク17に対してN2ガスは供給されない。
【0053】
弁V4は、N2ボンベ25Bと低温熱媒タンク18の気相部18bを接続する不活性ガス流路26bに介装されている。弁V4の開弁時には、N2ボンベ25Bが低温熱媒タンク18の気相部18bに連通し、N2ボンベ25Bから低温熱媒タンク18にN2ガスが供給される。弁V4の閉弁時には、低温熱媒タンク18の気相部18bはN2ボンベ25Bに対して流体的に遮断される。つまり、弁V4の開弁時には、低温熱媒タンク18に対してN2ガスは供給されない。
【0054】
(圧縮機ユニット)
圧縮機8、電動機14、第1熱交換器9、及びポンプ21Aは、圧縮機ユニット34を構成する。圧縮機ユニット34は、複数台の圧縮機を備える多段式であって、複数の第1熱交換器を備えていてもよい。
【0055】
(発電機ユニット)
膨張機12、発電機15、第2熱交換器11、及びポンプ21Bは、発電機ユニット35を構成する。発電機ユニット35は、複数台の膨張機を備える多段式であって、複数の第2熱交換器を備えていてもよい。
【0056】
(制御装置)
制御装置37は、種々の入力(例えば、圧力センサ31A,31B,31Cが検出した圧力Ph,Pl,Pb)に基づいて、CAES発電装置1は種々の構成要素を統括的に制御する。このような要素には、圧縮機8を駆動する電動機14、ポンプ21A,21B、弁V1〜V8が含まれる。制御装置37は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)のような記憶装置を含むハードウェアと、それに実装されたソフトウェアにより構築できる。
【0057】
(充電運転)
図9を参照すると、充電運転時には、ポンプ21Aが作動し、ポンプ21Bは非作動である。また、バルブV7が開弁され、バルブV8は閉弁される。
【0058】
充電運転時には、発電装置2から入力される変動する電力により電動機14が駆動され、電動機14によって圧縮機8が駆動される。圧縮機8は空気流路13aを介して供給される空気を吸込口8aから吸い込んで圧縮し、圧縮空気を生成する。圧縮機8の吐出口8bから吐出された圧縮空気は、空気流路13bを通って蓄圧タンク10に圧送され、蓄圧タンク10に貯蔵される。つまり、蓄圧タンク10は、圧縮空気を貯蔵してエネルギーとして蓄積する。圧縮空気は、蓄圧タンク10に圧送される前に、第1熱交換器9を通過する。
【0059】
充電運転時には、ポンプ21Aによって、低温熱媒タンク18に貯蔵された熱媒が、熱媒流路19aを通って高温熱媒タンク17に送られる。熱媒は、高温熱媒タンク17に送られる前に、第1熱交換器9を通過する。
【0060】
圧縮機8の吐出口8bから吐出された圧縮空気は、圧縮の際に生じる圧縮熱により高温となっている。第1熱交換器9では、熱媒と圧縮空気の間の熱交換により、圧縮空気は冷却され、熱媒は加熱される。従って、蓄圧タンク10には、第1熱交換器9における熱交換によって降温した圧縮空気が貯蔵される。また、高温熱媒タンク17には、第1熱交換器9での熱交換後の昇温した熱媒が貯蔵される。
【0061】
(発電運転)
図11を参照すると、発電運転時には、ポンプ21Bが作動し、ポンプ21Aは非作動である。また、バルブV8が開弁され、バルブV7は閉弁される。
【0062】
発電運転時には、蓄圧タンク10から送出された圧縮空気が、空気流路13cを通って膨張機12の給気口12aに供給される。圧縮空気は、膨張機12に供給される前に、第2熱交換器11を通過する。給気口12aに給気された圧縮空気によって膨張機12が作動し、発電機15が駆動される。発電機15で発電した電力は電力系統3に供給される。膨張機12で膨張された空気は、排気口12bから空気流路13dを通って排気される。
【0063】
発電運転時には、ポンプ21Bによって、高温熱媒タンク17に貯蔵された熱媒が、熱媒流路19bを通って低温熱媒タンク18に送られる。熱媒は、高温熱媒タンク17に送られる前に、第2熱交換器11を通過する。
【0064】
膨張機12では、膨張時の吸熱により空気の温度が低下する。そのため、膨張機12に給気される圧縮空気は、高温であることが好ましい。第2熱交換器11では、熱媒と圧縮空気の間の熱交換により、圧縮空気は加熱され、熱媒は冷却される。従って、膨張機12には、第2熱交換器11における熱交換によって昇温した圧縮空気が供給される。また、低温熱媒タンク18には、第2熱交換器11での熱交換後の降温した熱媒が貯蔵される。
【0065】
(不活性ガス流路系の制御)
以下、不活性ガス流路系6の制御、より具体的には制御装置37による流路切換部28を構成する弁V1〜V6の開閉制御を説明する。後述する制御H1,H2,L1,L2のいずれの開始時にも、弁V1〜V6は閉弁に設定されている。
【0066】
本実施形態の制御装置37は、以下に基づいて弁V1〜V6の開閉状態を制御する(主制御)。
・CAES発電装置1が充電運転と発電運転のいずれを実行中であるか。
・圧力センサ31Aにより検出された高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが、基準圧力Phst(第1基準圧力)と圧力センサ31Cにより検出された調整タンク24の圧力Pbとに対して高いか否か。
・圧力センサ31Bにより検出された低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが、基準圧力Plst(第2基準圧力)と圧力センサ31Cにより検出された調整タンク24の圧力Pbとに対して高いか否か。
【0067】
基準圧力Phstは、高温熱媒タンク17の気相部17bの標準的な圧力である。言い換えれば、圧力Phが基準圧力Phstを大きく上回らず、かつ大きく下回らなければ、高温熱媒タンク17内に適切な量のN2ガスが充填されているとみなせる。また、基準圧力Plstは、低温熱媒タンク18の気相部18bの標準的な圧力であり、圧力Plが基準圧力Plstを大きく上回らず、かつ大きく下回らなければ、低温熱媒タンク18内に適切な量のN2ガスが充填されているとみなせる。
【0068】
制御装置37は、主として、不活性ガス流路26c,26dを介した調整タンク24へのN2ガスの流出と、不活性ガス流路26c,26dを介した調整タンク24からのN2ガスの流入とを、弁V1,V2の開閉により制御する。制御装置37は、この制御を通じて、高温熱媒タンク17の気相部17bを基準圧力Phstに維持し、かつ低温熱媒タンク18の気相部18bを基準圧力に維持しようとする。
【0069】
以下、
図2から
図6のフローチャートを参照し、制御装置37によって実行される主制御をより具体的に説明する。以下の説明では、不活性ガス流路系6と流路切換部28の構成要素のうち、高温熱媒タンク17、調整タンク24、N2ボンベ25A、及びこれらに関する不活性流路26a,26cと弁V1,V3,V5を総称して「高温熱媒タンク系」と呼ぶ場合がある。また、不活性ガス流路系6と流路切換部28の構成要素のうち、低温熱媒タンク18、調整タンク24、N2ボンベ25B、及びこれらに関する流路26b,26dと弁V2,V4,V6を総称して「低温熱媒タンク系」と呼ぶ場合がある。
【0070】
図2を参照すると、ステップS201においてCAES発電装置1が充電運転中であれば、高温熱媒タンク系について制御H1を実行し、低温熱媒タンク系について制御L1を実行する。制御H1,L1は、並行して実行される。一方、ステップS201においてCAES発電装置1が発電運転中であれば、高温熱媒タンク系について制御H2を実行し、低温熱媒タンク系について制御L2を実行する。制御H2,L2は、並行して実行される。
【0071】
CAES発電装置1が充電運転中は、通常、高温熱媒タンク17には熱媒が流入するので液相部17aの液面高さは上昇傾向にあり、気相部17bの圧力Phは上昇傾向にある。また、CAES発電装置1が充電運転中は、通常、低温熱媒タンク17から熱媒が流出するので液相部17aの液面高さは低下傾向にあり、気相部17bの圧力Phは低下傾向にある。制御H1(ステップS202)は、上昇傾向にある高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力を低下させて基準圧力Phstに近付ける制御である。また、制御L1(ステップS203)は、低下傾向にある低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力を上昇させて基準圧力Plstに近付ける制御である。
【0072】
図3は、
図2のステップS202の制御H1、つまり充電運転中の高温熱媒タンク系の制御を示す。高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが、基準圧力Phstを上回り(ステップS301)、かつ調整タンク24の圧力Pbを上回る場合(ステップS302)、ステップS303の処理が実行される。ステップS303では、高温熱媒タンク17の気相部17bと調整タンク24を接続する流路26cに介装された弁V1が開弁される。その結果、高温熱媒タンク17の気相部17bから調整タンク24へN2ガスが流出し、高温熱媒タンク17の気相部17bが減圧される。
図9は、ステップS303における、弁V1〜V6の開閉状態の一例を示す。この例では、弁V2は閉弁であるが、後述する制御L1によって弁V2が開弁していてもよい。ステップS304において高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが基準圧力Phst以下であれば、ステップS305において弁V1を閉弁した後、ステップS301に戻る。一方、ステップS304で圧力Phが基準圧力Phst以下でなければ、ステップS306において弁V1を閉弁した後、ステップS307において弁V5を開弁する。弁V5の開弁により、高温熱媒タンク17内のN2ガスが大気中に放出され、高温熱媒タンク17の気相部17bがさらに減圧される。ステップS308において高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが基準圧力Phst以下であれば、ステップS309において弁V5を開弁した後、ステップS301に戻る。
【0073】
図4は、
図2のステップS203の制御L1、つまり充電運転中の低温熱媒タンク系の制御を示す。低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが、基準圧力Plstを下回り(ステップS401)、かつ調整タンク24の圧力Pbを下回る場合(ステップS402)、ステップS403の処理が実行される。ステップS403では、低温熱媒タンク18の気相部18bと調整タンク24を接続する流路26dに介装された弁V2が開弁される。その結果、調整タンク24から低温熱媒タンク18の気相部18bへN2ガスが流入し、低温熱媒タンク18の気相部18bが昇圧される。
図10は、ステップS403における、弁V1〜V6の開閉状態の一例を示す。この例では、弁V1は閉弁であるが、前述の制御H1によって弁V1が開弁していてもよい。ステップS404において低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが基準圧力Plst以上であれば、ステップS405において弁V2を閉弁した後、ステップS401に戻る。一方、ステップS404で圧力Plが基準圧力Plst以上でなければ、ステップS406において弁V2を閉弁する。また、ステップS407において、N2ボンベ25Bと低温熱媒タンク18の気相部18bを接続する不活性ガス流路26bに介装された弁V4を開弁する。弁V4の開弁により、N2ボンベ25Bから低温熱媒タンク18にN2ガスが供給され、低温熱媒タンク18の気相部18bがさらに昇圧される。ステップS408において低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが基準圧力Plst以上であれば、ステップS409において弁V4を開弁した後、ステップS401に戻る。
【0074】
図5は、
図2のステップS204の制御H2、つまり発電運転中の高温熱媒タンク系の制御を示す。高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが、基準圧力Phstを下回り(ステップS501)、かつ調整タンク24の圧力Pbを下回る場合(ステップS502)、ステップS503の処理が実行される。ステップS503では、高温熱媒タンク17の気相部17bと調整タンク24を接続する流路26cに介装された弁V1が開弁される。その結果、調整タンク24から高温熱媒タンク17の気相部17bへN2ガスが流入し、高温熱媒タンク17の気相部17bが昇圧される。
図11は、ステップS503における、弁V1〜V6の開閉状態の一例を示す。この例では、弁V2は閉弁であるが、後述する制御L2によって弁V2が開弁していてもよい。ステップS504において高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが基準圧力Phst以上であれば、ステップS405において弁V1を閉弁した後、ステップS501に戻る。一方、ステップS504で圧力Phが基準圧力Phst以上でなければ、ステップS506において弁V2を閉弁する。また、ステップS507において、N2ボンベ25Aと高温熱媒タンク17の気相部17bを接続する不活性ガス流路26bに介装された弁V3を開弁する。弁V3の開弁により、N2ボンベ25Aから高温熱媒タンク17にN2ガスが供給され、高温熱媒タンク17の気相部17bがさらに昇圧される。ステップS508において高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Plが基準圧力Phst以上であれば、ステップS509において弁V3を開弁した後、ステップS501に戻る。
【0075】
図6は、
図2のステップS205の制御L2、つまり発電運転中の低温熱媒タンク系の制御を示す。低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが、基準圧力Plstを上回り(ステップS601)、かつ調整タンク24の圧力Pbを上回る場合(ステップS602)、ステップS603の処理が実行される。ステップS603では、低温熱媒タンク18の気相部18bと調整タンク24を接続する流路26dに介装された弁V2が開弁される。その結果、低温熱媒タンク18の気相部18bから調整タンク24へN2ガスが流出し、低温熱媒タンク18の気相部18bが減圧される。
図12は、ステップS603における、弁V1〜V6の開閉状態の一例を示す。この例では、弁V1は閉弁であるが、前述の制御H2によって弁V1が開弁していてもよい。ステップS604において低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが基準圧力Plst以下であれば、ステップS605において弁V2を閉弁した後、ステップS601に戻る。一方、ステップS604で圧力Plが基準圧力Plst以下でなければ、ステップS606において弁V2を閉弁した後、ステップS607において弁V6を開弁する。弁V6の開弁により、低温熱媒タンク18内のN2ガスが大気中に放出され、低温熱媒タンク18の気相部18bがさらに減圧される。ステップS608において低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが基準圧力Plst以下であれば、ステップS609において弁V6を開弁した後、ステップS301に戻る。
【0076】
以上の主制御においては、調整タンク24へのN2ガスの流出(ステップS303,603)と、調整タンク24からのN2ガスの流入(ステップS403,S503)とによって、高温熱媒タンク17の気相部17bが基準圧力Phstに維持され、低温熱媒タンク18の気相部18bが基準圧力Plstに維持される。よって、基準圧力Phstに維持するための、高温熱媒タンク17の気相部17bに対するN2ボンベ25AからのN2ガスの供給(S507)と、大気へのN2ガスの排出(S307)とを、不要ないしは量的に抑制できる。また、基準圧力Plstに維持するための、低温熱媒タンク18の気相部18bに対するN2ボンベ25BからのN2ガスの供給と、大気へのN2ガスの排出とを、不要ないしは量的に抑制できる。つまり、N2ガスの消費量を低減できる。
【0077】
制御装置37は、主制御に加え、
図7及び
図8に示す補助制御を実行する。これらの補助制御は、高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phと、低温熱媒タンク18の気相部18bが過度に上昇又は低下するのを防止するためのものである。また、これらの制御は、CAES発電装置1が充電運転、発電運転、並びにこれらのいずれにも該当してない運転状態の際に実行される。
【0078】
図7に示す高温熱媒タンク系の補助制御は、高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが、上限圧力Phulmt(基準圧力Phstよりも大幅に高い)を上回ることと、加減圧力Phllmt(基準圧力Phstよりも大幅に低い)を下回ることとを防止する制御である。
【0079】
図7のステップS701において、高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが上限圧力Phulmtを上回ると、ステップS702において弁V5を開弁する。弁V5の開弁により、高温熱媒タンク17内のN2ガスが大気中に放出され、高温熱媒タンク17の気相部17bが減圧される。ステップS703において高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが基準圧力Phst以下であれば、ステップS704において弁V5を開弁した後、ステップS701に戻る。一方、ステップS701において高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが上限圧力Phulmt以下である場合は、ステップS705に移行する。ステップS705において、高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが下限圧力Phllmtを下回ると、弁3を開弁する。弁V3の開弁により、N2ガスボンベ25Aから高温熱媒タンク17にN2ガスが供給され、高温熱媒タンク17の気相部17bが昇圧される。ステップS707において、高温熱媒タンク17の気相部17bが基準圧力Phst以上となると、ステップS708において弁V3を閉弁した後、ステップS701に戻る。
【0080】
図8に示す高温熱媒タンク系の補助制御は、低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが、上限圧力Plulmt(基準圧力Plstよりも大幅に高い)を上回ることと、加減圧力Plllmt(基準圧力Plstよりも大幅に低い)を下回ることとを防止する制御である。
【0081】
図8のステップS801において、高温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが上限圧力Plulmtを上回ると、ステップS802において弁V6を開弁する。弁V6の開弁により、低温熱媒タンク18内のN2ガスが大気中に放出され、低温熱媒タンク18の気相部18bが減圧される。ステップS803において高温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが基準圧力Plst以下であれば、ステップS804において弁V6を開弁した後、ステップS801に戻る。一方、ステップS801において高温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが上限圧力Phulmt以下である場合は、ステップS805に移行する。ステップS805において、低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが下限圧力Plllmtを下回ると、弁4を開弁する。弁V4の開弁により、N2ガスボンベ25Bから低温熱媒タンク18にN2ガスが供給され、低温熱媒タンク18の気相部18bが昇圧される。ステップS807において、低温熱媒タンク18の気相部18bが基準圧力Phst以上となると、ステップS808において弁V4を閉弁した後、ステップS801に戻る。
【0082】
(第2実施形態)
図13に示す第2実施形態に係るCAES発電装置1は、高温熱媒タンク17内の熱媒の液面高さを検出する液面高さセンサ41A(第1液面高さセンサ)と、低温熱媒タンク18内の熱媒の液面高さを検出する液面高さセンサ41B(第2液面高さセンサ)とを備えている。本実施形態では、制御装置37はCASE発電装置1の運転状態(充電運転又は発電運転)に代えて、液面高さセンサ41Aの検出液面高さと液面高さセンサ41Bの検出液面高に基づいて、弁V1〜V6の開閉状態を制御する。
【0083】
具体的には、本実施形態の制御装置37は、以下に基づいて弁V1〜V6の開閉状態を制御する。
・液面高さセンサ41Aの検出液面高さh1(高温熱媒タンク17の熱媒の液面高さ)が、上昇傾向、降下傾向、又はそれらのいずれにも該当しないか。
・液面高さセンサ41Bの検出液面高さh2(低温熱媒タンク18の熱媒の液面高さ)が、上昇傾向、降下傾向、又はそれらのいずれにも該当しないか。
・圧力センサ31Aにより検出された高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力Phが、基準圧力Phst(第1基準圧力)と圧力センサ31Cにより検出された調整タンク24の圧力Pbとに対して高いか否か。
・圧力センサ31Bにより検出された低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力Plが、基準圧力Plst(第2基準圧力)と圧力センサ31Cにより検出された調整タンク24の圧力Pbとに対して高いか否か。
【0084】
以下、
図14及び
図15のフローチャートを参照し、制御装置37によって実行される主制御をより具体的に説明する。
【0085】
図14は、高温熱媒タンク系についての制御を示す。ステップS141において液面高さセンサ41Aの検出液面高さh1(高温熱媒タンク17の熱媒の液面高さ)が上昇傾向であれば、ステップS142において制御H1(
図3)を実行する。つまり、高温熱媒タンク17の熱媒の液面高さが上昇傾向にあるとき、まず高温熱媒タンク17から調整タンク24へNSガスを流出させる。また、それによっても高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力が基準圧力Phstに近付かない場合には、弁V5の開弁により高温熱媒タンク17から大気中にN2ガスを排出する。一方、ステップS141において液面高さセンサ41Aの検出液面高さh1が降下傾向であれば、ステップS143において制御H2(
図5)を実行する。つまり、高温熱媒タンク17の熱媒の液面高さが降下傾向にあるとき、調整タンク24から高温熱媒タンク17へNSガスを流入させる。また、それによっても高温熱媒タンク17の気相部17bの圧力が基準圧力Phstに近付かない場合には、弁V1の開弁によりN2ボンベ25Aから高温熱媒タンク17にN2ガスを供給する。
【0086】
図15は、低温熱媒タンク系についての制御を示す。ステップS151において液面高さセンサ41Bの検出液面高さh2(低温熱媒タンク18の熱媒の液面高さ)が上昇傾向であれば、ステップS152において制御L2(
図6)を実行する。つまり、低温熱媒タンク18の熱媒の液面高さが上昇傾向にあるとき、まず低温熱媒タンク18から調整タンク24へNSガスを流出させる。また、それによっても低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力が基準圧力Plstに近付かない場合には、弁V6の開弁により低温熱媒タンク18から大気中にN2ガスを排出する。一方、ステップS151において液面高さセンサ41Bの検出液面高さh2が降下傾向であれば、ステップS153において制御L1(
図4)を実行する。つまり、低温熱媒タンク18の熱媒の液面高さが降下傾向にあるとき、調整タンク24から低温熱媒タンク18へNSガスを流入させる。また、それによっても低温熱媒タンク18の気相部18bの圧力が基準圧力Plstに近付かない場合には、弁V2の開弁によりN2ボンベ25Bから低温熱媒タンク18にN2ガスを供給する。
【0087】
以上のようにCAES発電装置の運転状態に代えて高温熱媒タンク17及び低温熱媒タンク19の液面高さの変化の傾向に基づいて弁V1〜V6を制御することによっても、N2ガスの消費量を低減できる。
【0088】
本実施形態における制御装置37も、第1実施形態と同様の補助制御(
図7及び
図8)参照を実行してもよい。
【0089】
第2実施形態のその他の構成及び作用は、第1実施形態と同様であり、同一又は同様の要には同一の符号を付して説明を省略する。