(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導体含有層を構成する材料の成分としてのシリコンの含有率は、前記高硬度層を構成する材料の成分としてのシリコンの含有率よりも高い、請求項1から8のいずれか一項記載のコイル部品。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例1に係る電子部品の透視斜視図である。
図2(a)は、実施例1に係る電子部品の上面断面図、
図2(b)は、側面断面図、
図2(c)は、端面断面図である。
図1から
図2(c)のように、実施例1の電子部品100は、絶縁体からなる素体部10と、内部導体30と、外部電極50と、を備える。
【0024】
素体部10は、第2の面である上面12と、第1の面である下面14と、1対の端面16と、1対の側面18と、を有し、X軸方向に幅方向、Y軸方向に長さ方向、Z軸方向に高さ方向の各辺を有する直方体形状をしている。下面14は実装面であり、上面12は下面14に対向する面である。端面16は上面12及び下面14の1対の辺(例えば短辺)に接続された面であり、側面18は上面12及び下面14の1対の辺(例えば長辺)に接続された面である。素体部10は、例えば幅寸法が0.05mm〜0.3mm、長さ寸法が0.1mm〜0.6mm、高さ寸法が0.05mm〜0.5mmである。例えば高さ寸法を長さ寸法及び幅寸法に比べて小さくした場合であっても、部品の機械的な強度を高めることができる。なお、素体部10は、完全な直方体形状である場合に限られず、例えば各頂点が丸みを帯びている場合や、各稜(各面の境界部のこと)が丸みを帯びている場合や、各面が曲面を有している場合などの略直方体形状でもよい。すなわち、直方体形状には、上述のような略直方体形状も含まれる。なお、各頂点の丸みは、素体部10の短辺の長さの20%未満の曲率半径Rであってもよい。下面14と端面16がなす稜部の丸みについては、高硬度層22部分の丸みが導体含有層20部分の丸みに比べて小さくなっていてもよい。これにより、実装時の姿勢の安定性が高まる。各面の平滑性は、実装基板への実装時の安定性の点から、一平面での凹凸の大きさが30μm以下であってもよい。
【0025】
内部導体30は素体部10の内部に設けられている。素体部10は、内部導体30のうちの電気的性能を発揮する機能部が少なくとも設けられた導体含有層20と、内部導体30のうちの機能部が設けられていない高硬度層22と、を有する。導体含有層20と高硬度層22とは、X軸方向(幅方向)に並んで設けられている。高硬度層22は、X軸方向(幅方向)から導体含有層20を挟むように設けられていて、側面18を構成している。X軸方向において、導体含有層20は高硬度層22よりも厚くなっている。
【0026】
ここで、素体部10の機械的強度は、主に高硬度層22によるものである。このため、高硬度層22を高く(Z軸方向を長く)することで機械的強度を確保できることを踏まえ、高硬度層22の各寸法は用いる材料に応じて決められる。また、高硬度層22の各寸法は、電子部品の長さ(Y軸方向の長さ)及び幅(X軸方向の長さ)も考慮することになる。一例として、電子部品の幅より長さが長く、素体部10の幅方向(X軸方向)に導体含有層20と高硬度層22とが並んでいる場合、高硬度層22の高さは幅より長い方が好ましい。つまり、高硬度層22の高さにより機械的強度を確保できる分、幅を短くでき、これにより、内部導体30の機能部を内蔵する導体含有層20の割合を大きくできる。
【0027】
例えば、X軸方向における導体含有層20の厚さは0.17mmであり、高硬度層22の厚さは合わせて0.03mmである。Y軸方向及びZ軸方向における高硬度層22の長さ及び高さは、高さに対する長さの割合が小さい方がよい。この割合が2以下であれば、上記のような導体含有層20と高硬度層22の厚さの割合とすることができる。
【0028】
Y軸方向及びZ軸方向における導体含有層20の長さ及び高さは、高硬度層22の長さ及び高さと同じにするか、又は僅かに小さく形成してもよい。これにより、導体含有層20は、高硬度層22に保護されるようになる。導体含有層20の長さ及び高さは、高硬度層22の長さ及び高さより、それぞれ0μm〜−60μmとすることで、実装基板への実装時のノズル吸着及び実装性への影響が小さくなる。
【0029】
導体含有層20及び高硬度層22は、例えば樹脂を主体とする絶縁材料で形成されている。樹脂としては、熱、光、化学反応などにより硬化する樹脂が用いられ、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、又は液晶ポリマなどが用いられる。また、導体含有層20及び高硬度層22は、ガラスを主成分とした絶縁材料で形成されていてもよいし、フェライト、誘電体セラミックス、軟磁性合金粒子を用いた磁性体、又は磁性体粉を混合した樹脂で形成されていてもよい。
【0030】
導体含有層20を樹脂又はガラスなどで形成した場合、導体含有層20より高硬度層22の色を濃くしたり、又は高硬度層22より導体含有層20の透過度を高くしたり、絶縁材料の視覚的な違いを出すこともできる。このようにすることで、画像による色の識別や、透過度による絶縁材料の識別や、光の透過による内部導体方向の識別などにより、電子部品の方向を識別できるようになる。これにより、生産工程での整列作業が容易にでき、また実装基板への実装時の不具合を低減することができる。
【0031】
高硬度層22は、導体含有層20よりも高い硬度を有する。例えば、高硬度層22は、微小な面積での硬度測定が可能なビッカース硬度又はヌープ硬度が導体含有層20よりも高い。一例として、高硬度層22のビッカース硬度は650N/mm
2であり、導体含有層20のビッカース硬度は400N/mm
2である。硬度と強度は相関があることから、高硬度層22が導体含有層20よりも高い硬度を有するということは、高硬度層22は導体含有層20よりも高い強度(機械的強度)を有することを意味する。
【0032】
導体含有層20と高硬度層22とは、高硬度層22が導体含有層20よりも硬度が高ければ、同じ絶縁材料で形成されていてもよいし、異なる絶縁材料で形成されていてもよい。例えば、高硬度層22は、導体含有層20よりも金属酸化物及び酸化シリコン(SiO
2)の少なくとも一方からなるフィラーの含有率(例えば体積パーセント)が高いことで、導体含有層20よりも高い硬度を有する。ここで、フィラーとは、絶縁材料中に粒子として添加された強度部材のことを言う。添加されたフィラーは、ガラスや樹脂などの非晶質部分の内部に粒子として存在し、SEM(Scanning Electron Microscope)分析やTEM(Transmission Electron Microscope)分析によりその存在を観察できる。2つの層を同一倍率にて観察した画面上にて粒子状のフィラーが占める面積の割合を、各々求めることで2つの層のフィラー含有量を比較することができる。硬度を高くすることに寄与する金属酸化物として、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化チタン(TiO
2)などが挙げられる。なお、導体含有層20は、金属酸化物及びSiO
2の少なくとも一方からなるフィラーを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0033】
導体含有層20及び高硬度層22は、それぞれ同じ主成分の材料を用いたり、又は異なる主成分の材料を用いたりすることが可能である。異なる材料を用いる場合、導体含有層20と高硬度層22は互いに材料同士が影響しないように焼成プロセスの調整や焼成後に接着による貼り合わせなどの方法で素体部10が形成される。また、導体含有層20と高硬度層22に同じ主成分の材料を用いる場合、導体含有層20と高硬度層22の界面での密着性を確保し易く、またそれぞれの線膨張係数の差を小さくできる。これにより、素体部10全体としての強度確保、またヒートサイクル試験などの信頼性を確保できる。また、外部電極50を導体含有層20と高硬度層22にわたって形成する場合にも、導体含有層20と高硬度層22に対する外部電極50の評価を同じ評価により行うことができ、外部電極50の選定が容易になるだけでなく、当然ながら密着性を確保し易くなる。これは、特に信頼性の点についても同様の効果が得られる。
【0034】
導体含有層20は、高硬度層22よりも誘電率が小さい。例えば、導体含有層20を構成する材料の成分としてのシリコン(Si)(すなわち、フィラーとしてのSiO
2などのSiではない)の含有率(例えば重量パーセント)が高硬度層22を構成する材料の成分としてのSiの含有率(例えば重量パーセント)よりも高いことで、導体含有層20は高硬度層22よりも誘電率が小さい。例えば、導体含有層20を構成するガラスや樹脂などの成分としてのSiの含有率が高硬度層22を構成するガラスや樹脂などの成分としてのSiの含有率よりも高い。
【0035】
内部導体30は複数の第1の導体32と複数の第2の導体34とを有し、これら複数の第1の導体32と複数の第2の導体34が接続されることでコイル導体36が形成されている。すなわち、コイル導体36は、複数の第1の導体32と複数の第2の導体34とを含んで構成されてスパイラル状を呈しており、所定の周回単位を有すると共に周回単位によって規定される面と略直交するコイル軸を有する。コイル導体36は内部導体30のうちの電気的性能を発揮する機能部である。
【0036】
複数の第1の導体32は概略Y軸方向に相互に対向する2つの導体群で構成されている。2つの導体群それぞれを構成する第1の導体32は、Z軸方向に沿って延び、X軸方向に所定の間隔をおいて配列されている。複数の第2の導体34は、XY平面に平行に形成され、Z軸方向に相互に対向する2つの導体群で構成されている。2つの導体群それぞれを構成する第2の導体34は、Y軸方向に沿って延び、X軸方向において間隔をおいて配列され、第1の導体32の間を個々に接続している。これにより、素体部10の内部にX軸方向にコイル軸を有する開口が矩形形状のコイル導体36が形成されている。すなわち、コイル導体36は、素体部10の下面14に略平行な方向にコイル軸を有し、縦巻きとなっている。なお、略平行とはX軸方向から僅かに傾いている場合も含むものである。
【0037】
外部電極50は、表面実装用の外部端子であり、Y軸方向に対向して2つ設けられている。外部電極50は、素体部10の下面14から端面16に延在して設けられ、下面14の一部及び端面16の一部を被覆している。すなわち、外部電極50はL字型形状をしている。外部電極50は、例えば導体含有層20の表面にのみ形成されていて、高硬度層22の表面には形成されていない。又、外部電極50は、例えば導体含有層20の表面及び高硬度層22の表面にまたがって形成されることもできる。
【0038】
内部導体30は、複数の第1の導体32及び複数の第2の導体34からなる機能部としてのコイル導体36に加えて、非機能部である引き出し導体38をさらに有する。引き出し導体38は、素体部10の下面14側に位置する第2の導体34と同一のXY平面上に配置されていて、Y軸方向に平行に設けられている。コイル導体36は、引き出し導体38を介して、素体部10の下面14(実装面)もしくは端面16で外部電極50に電気的に接続されている。
【0039】
内部導体30は、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、白金(Pt)、又はパラジウム(Pd)などの金属材料、又はこれらを含む合金金属材料で形成されている。外部電極50は、例えば銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、又はニッケル(Ni)などの金属材料、若しくは銀(Ag)、銅(Cu)又はアルミニウム(Al)とニッケル(Ni)メッキと錫(Sn)メッキとの積層膜、或いはニッケル(Ni)と錫(Sn)メッキとの積層膜で形成されている。
【0040】
次に、実施例1の電子部品100の製造方法について説明する。実施例1の電子部品100は、ウエハレベルで複数個同時に作製され、作製後に素子毎に個片化される。また、実施例1の電子部品100は、素体部10の上面12側から順に形成される。
【0041】
図3(a)から
図4(d)は、実施例1に係る電子部品の製造方法を示す断面図である。
図3(a)から
図3(c)、
図4(a)、
図4(b)は、実施例1の電子部品の側面断面に相当する図、
図3(d)から
図3(f)、
図4(c)、
図4(d)は、端面断面に相当する図である。
図3(a)及び
図3(d)のように、例えばシリコン基板、ガラス基板、又はサファイア基板などの支持基板90上に、例えば樹脂材料を印刷又は塗布、或いは樹脂フィルムを粘着させることで、導体含有層20の第1層20aと第1層20aを挟んで第1層20aに接する高硬度層22の第1層22aとを形成する。導体含有層20の第1層20a上に、スパッタリング法により内部導体30の第2の導体34を形成すると共に、第2の導体34を被覆する導体含有層20の第2層20bを形成する。高硬度層22の第1層22a上に、導体含有層20の第2層20bを挟んで第2層20bに接する高硬度層22の第2層22bを形成する。導体含有層20の第2層20b及び高硬度層22の第2層22bは、樹脂材料を印刷又は塗布、或いは樹脂フィルムを粘着させることで形成する。その後、導体含有層20の第2層20b及び高硬度層22の第2層22bに対して研磨処理を施すことで、第2の導体34の上面を露出させる。
【0042】
次いで、導体含有層20の第2層20b及び高硬度層22の第2層22b上にシード層(不図示)を形成した後、シード層上に開口を有するレジスト膜92を形成する。レジスト膜92の形成後、開口内のレジスト残渣を除去するデスカム処理を行ってもよい。その後、電気めっき法によってレジスト膜92の開口内に第1の導体32の上側部分32aを形成する。
【0043】
図3(b)及び
図3(e)のように、レジスト膜92及びシード層を除去した後、第1の導体32の上側部分32aを被覆する導体含有層20の第3層20cと第3層20cを挟んで第3層20cに接する高硬度層22の第3層22cとを形成する。導体含有層20の第3層20c及び高硬度層22の第3層22cは、樹脂材料を印刷又は塗布、或いは樹脂フィルムを粘着させることで形成する。その後、導体含有層20の第3層20c及び高硬度層22の第3層22cに対して研磨処理を施すことで、第1の導体32の上側部分32aの表面を露出させる。
【0044】
図3(c)及び
図3(f)のように、導体含有層20の第3層20c上に、第1の導体32の下側部分32bと、第1の導体32の下側部分32bを被覆する導体含有層20の第4層20dと、を形成する。高硬度層22の第3層22c上に、導体含有層20の第4層20dを挟んで第4層20dに接する高硬度層22の第4層22dを形成する。第1の導体32の下側部分32bは、第1の導体32の上側部分32aに接続するように形成される。第1の導体32の下側部分32b、導体含有層20の第4層20d、及び高硬度層22の第4層22dは、第1の導体32の上側部分32a、導体含有層20の第3層20c、及び高硬度層22の第3層22cと同様の方法によって形成することができる。
【0045】
図4(a)及び
図4(c)のように、導体含有層20の第4層20d及び高硬度層22の第4層22d上にシード層(不図示)と開口を有するレジスト膜94とを形成し、レジスト膜94の開口内に電気めっき法によって第2の導体34と引き出し導体38(不図示)とを形成する。
【0046】
図4(b)及び
図4(d)のように、レジスト膜94及びシード層を除去した後、第2の導体34及び引き出し導体38を被覆する導体含有層20の第5層20eと第5層20eを挟んで第5層20eに接する高硬度層22の第5層22eとを形成する。その後、導体含有層20の第5層20e及び高硬度層22の第5層22e上に、導体含有層20の第6層20f及び高硬度層22の第6層22fを形成する。導体含有層20は、第1層20aから第6層20fにより構成される。高硬度層22は、第1層22aから第6層22fにより構成される。その後、素体部10の表面に外部電極50を形成する。これにより、実施例1の電子部品100が形成される。
【0047】
図5は、比較例1に係る電子部品の透視斜視図である。
図5のように、比較例1の電子部品1000では、素体部10は、高硬度層22を有さず、実施例1において高硬度層22が設けられた部分に相当する部分に導体含有層20を有する。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0048】
発明者は、実施例1及び比較例1の電子部品に対して、たわみ試験を行った。たわみ試験は、電子部品を実装基板の上面に実装し、実装基板の下面から力を加えて実装基板をたわませ、そのときに電子部品にクラックが発生するか否かを試験することで行った。たわみ試験を行った電子部品の大きさは、実施例1及び比較例1共に、幅が0.2mm、長さが0.4mm、高さが0.2mmである。また、実施例1においては、厚さ0.17mm、ビッカース硬度400N/mm
2の導体含有層20の両側に厚さ0.015mm、ビッカース硬度650N/mm
2の高硬度層22が設けられている。
【0049】
表1に、たわみ試験の試験結果を示す。表1のように、実装基板のたわみ量を2mmにした場合、実施例1では試験を行った10チップ全てでクラックが発生しなかったのに対し、比較例1では10チップ中3チップでクラックが発生した。実装基板のたわみ量を4mmにした場合では、実施例1では10チップ全てでクラックが発生しなかったのに対し、比較例1では10チップ全てでクラックが発生した。このように、実施例1は、比較例1に比べて、クラックの発生が抑えられた結果となった。これは、実施例1では、導体含有層20に並んで高硬度層22が設けられているためと考えられる。
【表1】
【0050】
以上のように、実施例1によれば、素体部10は、コイル導体36(機能部)が設けられた導体含有層20と、素体部10の下面14(実装面)に平行な方向で導体含有層20に並んで設けられた高硬度層22と、を有する。このように、導体含有層20よりも高い硬度を有する高硬度層22が素体部10の下面14に平行な方向で導体含有層20に並んで設けられることで、表1で説明したように、たわみ試験でのクラックの発生を抑えることができ、素体部10の機械的強度を向上させることができる。
【0051】
また、実施例1によれば、高硬度層22は、導体含有層20よりも金属酸化物及びSiO
2の少なくとも一方からなるフィラーの含有率が高い。これにより、高硬度層22の硬度を導体含有層20よりも容易に高くできるため、素体部10の機械的強度を容易に向上させることができる。
【0052】
また、実施例1によれば、コイル導体36は、導体含有層20の内部に設けられていて、高硬度層22の内部には設けられていない。これにより、導体含有層20をコイル導体36の電気特性に適した材料で形成して電気特性を改善しつつ、素体部10の機械的強度を向上させることができる。
【0053】
また、実施例1によれば、コイル導体36を内部に有する導体含有層20は、高硬度層22よりも誘電率が低い。これにより、コイル導体36の導体間での寄生容量を低下させ、自己共振周波数を向上させることができるため、Q値を向上させることができる。例えば、導体含有層20は、高硬度層22よりも層を構成する材料の成分としてのSiの含有率が高いことで、高硬度層22よりも誘電率が低くなっていてもよい。また、導体含有層20の誘電率が高硬度層22よりも低い場合、Q値の向上の点から、コイル導体36は導体含有層20の内部に設けられ、高硬度層22の内部には設けられていないことが好ましい。
【0054】
また、実施例1によれば、コイル導体36は、素体部10の下面14(実装面)に略平行な方向にコイル軸を有する。例えば、素体部10の下面14(実装面)に垂直な方向にコイル軸がある場合、コイル導体を流れる交流による磁束の変化によって、電子部品が実装される実装基板上に渦電流が生じてしまう場合がある。この場合、Q値が低下してしまう。しかしながら、素体部10の下面14(実装面)に略平行な方向にコイル軸がある場合は、実装基板上に渦電流が生じることが抑制され、Q値の低下を抑制できる。
【0055】
図6は、実施例1の変形例1に係る電子部品の透視斜視図である。
図6のように、実施例1の変形例1の電子部品110では、外部電極50は素体部10の下面14のY軸方向両端にのみ設けられ、端面16には設けられていない。コイル導体36は、引き出し導体38を介して、素体部10の下面14で外部電極50に電気的に接続されている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0056】
実施例1では、
図1のように、コイル導体36は、引き出し導体38を介して、素体部10の端面16で外部電極50に電気的に接続されていたが、実施例1の変形例1のように、コイル導体36は、引き出し導体38を介して、素体部10の下面14(実装面)で外部電極50に電気的に接続されていてもよい。また、外部電極50を素体部10の下面14にのみ設け、コイル導体36を素体部10の下面14で外部電極50に電気的に接続させることで、外部電極50と内部導体30との間の寄生容量を小さくすることができる。
【0057】
なお、図示は省略するが、コイル導体36は、引き出し導体38を介して、素体部10の側面18で外部電極50に電気的に接続されていてもよい。
【0058】
図7(a)から
図7(c)は、実施例1の変形例2から変形例4に係る電子部品の上面断面図である。
図7(a)のように、実施例1の変形例2の電子部品120では、導体含有層20が素体部10の1対の側面18のうちの一方に寄って設けられている。したがって、導体含有層20を挟む高硬度層22のうちの一方は他方に比べて、X軸方向における厚さが薄くなっている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0059】
実施例1では、導体含有層20は素体部10の1対の側面18の間の中央に設けられている場合を例に示したが、実施例1の変形例2のように、導体含有層20は1対の側面18のうちの一方に寄って設けられていてもよい。この場合、導体含有層20を挟む高硬度層22の厚さの差異によって電子部品の方向の識別が可能となる。
【0060】
図7(b)のように、実施例1の変形例3の電子部品130では、コイル導体36(機能部)を内部に有する導体含有層20は素体部10の内部に設けられ、導体含有層20の周りを覆って高硬度層22が設けられている。内部導体30のうちの非機能部である引き出し導体38は高硬度層22に設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0061】
実施例1では、導体含有層20は素体部10の1対の端面16の一方から他方に延在して設けられている場合を例に示したが、実施例1の変形例3のように、導体含有層20は素体部10の内部に設けられていてもよい。この場合、導体含有層20を囲んで高硬度層22が設けられるため、機械的強度を更に向上できる。また、非機能部である引き出し導体38が高硬度層22に設けられていても、電気特性への影響は小さい。
【0062】
図7(c)のように、実施例1の変形例4の電子部品140では、X軸方向において、導体含有層20が高硬度層22よりも薄くなっている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0063】
実施例1では、X軸方向において、導体含有層20が高硬度層22よりも厚い場合を例に示したが、実施例1の変形例4のように、X軸方向において、導体含有層20が高硬度層22よりも薄くてもよい。導体含有層20が高硬度層22よりも厚い場合、コイル導体36を大きくできるのでインダクタンス値を大きくできる。一方、高硬度層22が導体含有層20よりも厚い場合は、素体部10の機械的強度を高くできる。
【実施例2】
【0064】
図8は、実施例2に係る電子部品の透視斜視図である。
図8のように、実施例2の電子部品200では、導体含有層20の片側にのみ高硬度層22が設けられ、実施例1において高硬度層22が設けられた他方側に相当する部分には導体含有層20が設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0065】
発明者は、実施例2の電子部品に対して、たわみ試験を行った。たわみ試験は実施例1で説明した方法と同じ方法で行い、電子部品の寸法などは実施例1の場合と同じにした。表2に、たわみ試験の試験結果を示す。なお、比較のために、表1に示した比較例1の試験結果も示している。
【表2】
表2のように、実装基板のたわみ量を2mmにした場合、実施例2では試験を行った10チップ全てでクラックが発生しなかった。実装基板のたわみ量を4mmにした場合、実施例2では10チップ中2チップでクラックが発生した。
【0066】
実施例2のように、素体部10の下面14(実装面)に平行な方向で導体含有層20に並んで高硬度層22が設けられていれば、導体含有層20の片側にだけ高硬度層22が設けられている場合でも、素体部10の機械的強度を向上させることができる。また、表1及び表2の試験結果から、素体部10の機械的強度を向上させる点から、導体含有層20を挟んで高硬度層22を設けることが好ましいことが分かる。
【実施例3】
【0067】
図9は、実施例3に係る電子部品の透視斜視図である。なお、
図9において、内部導体30は、実施例1と同じ構造をしているため、
図9では図示を省略している。
図9のように、実施例3の電子部品300では、外部電極50は、素体部10の下面14から端面16を経由して上面12に延在し且つ端面16から側面18に延在して設けられている。すなわち、外部電極50は、端面16の全面と、上面12、下面14、及び側面18の一部と、を被覆している。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0068】
発明者は、実施例3の電子部品に対して、たわみ試験を行った。たわみ試験は実施例1で説明した方法と同じ方法で行い、電子部品の寸法などは実施例1の場合と同じにした。表3に、たわみ試験の試験結果を示す。なお、比較のために、表1に示した比較例1の試験結果も示している。
【表3】
表3のように、実装基板のたわみ量が2mm、4mmのいずれの場合でも、実施例3では試験を行った10チップ全てでクラックが発生しなかった。
【0069】
実施例1から実施例3のたわみ試験の結果から、素体部10の下面14(実装面)に平行な方向で導体含有層20に並んで高硬度層22が設けられていれば、外部電極50がどのような形状をしていても、素体部10の機械的強度を向上できることが分かる。
【実施例4】
【0070】
図10(a)は、実施例4に係る電子部品の透視斜視図、
図10(b)は、上面断面図である。
図10(a)及び
図10(b)のように、実施例4の電子部品400では、内部導体30は、導体パターン40とビアホール導体42と引き出し導体38とを有する。また、端面16において、導体含有層20は高硬度層22よりも凹んでいる。その他の構成は実施例1と同じであるため、以下では内部導体30について説明し、その他については説明を省略する。
【0071】
内部導体30において、ビアホール導体42は、複数の導体パターン40を電気的に接続する。導体パターン40は、例えばC字状パターン44とI字状パターン46とを含む。
【0072】
図11は、C字状パターンとI字状パターンを説明する図である。
図11のように、C字状パターン44は、3つ以上の頂点を持つ多角形の導体パターンである。例えば、C字状パターン44は、略矩形形状であって4つの頂点を有し且つ当該略矩形形状の一辺の一部を欠くものである。なお、略矩形形状には、
図11のような矩形形状に限らず、楕円形状のものなど矩形近似可能な形状が含まれる。
図11の場合のように、4つの頂点を含む場合や、略矩形形状が明確な頂点を持たない場合における矩形近似したときに頂点であると認識しうる箇所を含む場合を含む。なお、
図11における点線は、ビアホール導体42が形成される位置を示している。
【0073】
I字状パターン46は、略矩形形状におけるC字状パターン44にて欠けた一辺の一部を補う。略矩形形状の実際の形状に適合して、I字状パターン46は、
図11に示すような直線であってもいし、或いは、楕円形状の一部をなす曲線形状であってもよい。C字状パターン44とI字状パターン46との組み合わせの使用により、コイル導体の寸法安定化が増し、インダクタンスの狭公差化が可能となる。I字状パターン46の長さは、C字状パターン44にて欠けた部分の長さよりも長い場合が好ましい。これにより、電気的接続がより確実になる。
【0074】
次に、実施例4に係る電子部品400の製造方法について説明する。
図12は、実施例4に係る電子部品の製造方法を示す図である。なお、実施例4の電子部品400は、素体部10の1対の側面18の一方から他方にかけて絶縁性材料からなるグリーンシートを積層していくことで形成される。
【0075】
図12のように、素体部10を構成する絶縁体層の前駆体であるグリーンシートG1からG10を用意する。グリーンシートは、例えばガラスなどを主原料とする絶縁性材料スラリーをドクターブレード法などによりフィルム上に塗布することで形成される。なお、絶縁性材料として、ガラスを主成分とした材料の他、フェライト、誘電体セラミックス、軟磁性合金材料を用いた磁性体、又は磁性体粉を混合した樹脂などを用いてもよい。グリーンシートの厚みは特に限定はなく、例えば5μm〜60μmであり、一例として20μmである。グリーンシートは、金属酸化物からなるフィラー及びシリコンの含有率を異ならせた複数種を用意する。金属酸化物からなるフィラーの含有率が高いグリーンシートがグリーンシートG1、G10であり、シリコンの含有率が高いグリーンシートがグリーンシートG2〜G9である。
【0076】
グリーンシートG3〜G7の所定の位置、すなわちビアホール導体42が形成される予定の位置に、レーザ加工などによってスルーホールを形成する。そして、グリーンシートG3〜G8に印刷法を用いて導電性材料を印刷することでC字状パターン44、I字状パターン46、及びビアホール導体42を形成する。導電性材料の主成分としては、銀、銅などの金属が挙げられる。
【0077】
続いて、グリーンシートG1〜G10を所定の順序で積層し、積層方向に圧力を加えてグリーンシートを圧着する。そして、圧着したグリーンシートをチップ単位に切断した後、所定温度(例えば700℃〜900℃程度)にて焼成を行って、素体部10を形成する。この際、グリーンシートG1、G10とグリーンシートG2〜G9の金属酸化物からなるフィラー及びシリコンの含有率が異なるため、焼成時の収縮率が異なり、その結果、
図10(a)及び
図10(b)のように、導体含有層20が高硬度層22に対して凹んだ形状となる。
【0078】
続いて、素体部10の所定の位置に外部電極50を形成する。外部電極50は、銀や銅などを主成分とする電極ペーストを塗布し、所定温度(例えば600℃〜900℃程度)で焼付けを行い、さらに電気めっきを施すことなどにより形成される。この電気めっきとしては、例えば銅、ニッケル、又は錫などを用いることができる。これにより、実施例4の電子部品400が形成される。
【0079】
発明者は、実施例4の電子部品に対して、実装基板上への実装試験を行った。
図13(a)及び
図13(b)は、電子部品の実装試験について説明する図である。
図13(a)は、電子部品400を実装基板のランド70に半田を用いて接合させることで、電子部品400が適切な位置に実装された場合を示している。これに対し、実装試験では、
図13(b)のように、ランド70に対して故意に50μmずらした位置に電子部品400を実装し、そのときの実装状態を確認することで行った。なお、ランド70は、縦が0.2mm、横が0.15mmの長方形形状をしている。電子部品400の大きさは、幅が0.2mm、長さが0.4mm、高さが0.2mmである。
【0080】
表4に、実装試験の試験結果を示す。なお、比較のために、比較例1の電子部品1000を実装基板上に実装した場合の試験結果についても示している。なお、比較例1の電子部品1000の大きさは、実施例4の電子部品400と同じである。表4のように、実施例4では実装不良発生率が0%であったのに対し、比較例1では実装不良発生率が2.25%であった。なお、実装不良とは、チップ立ち現象(マンハッタン現象やツームストーン現象など)のような場合のことをいう。
【表4】
【0081】
このように、実施例4は、比較例1に比べて、実装不良が減少した。これは以下の理由によるものと考えられる。すなわち、電子部品の外部電極50を実装基板のランド70に半田によって接合することで電子部品を実装基板に実装する場合、実装時に溶けた半田からの張力が駆動力となり、素体部10の各面に設けられた外部電極50に生じる張力がバランスするように電子部品を実装位置中央に移動させるセルフアライメント効果が生じる。このセルフアライメント効果によって、実装時の電子部品の実装面に対する水平方向の回転の抑制及び部品立ち(片側のランドから電子部品が外れてもう一方のランド側で直立するような現象)の抑制ができる。
【0082】
セルフアライメント効果(セルフアライメント力)は、半田の量が多いほど大きく、また、半田は外部電極50を濡れ広がることから外部電極50の面積が大きいほど大きくなる。比較例1では導体含有層20の端面16は平坦面であるのに対し、実施例4では導体含有層20の端面16は高硬度層22に対して凹んだ形状をしている。このため、実施例4では、比較例1に比べて、ランド70に供給可能な半田の量を多くでき且つ半田が接合する外部電極50の面積が大きいために、セルフアライメント効果が大きくなる。また、実施例4では、素体部10の端面16において導体含有層20が高硬度層22に対して凹んだ曲面形状をしていることから、導体含有層20に設けられた外部電極50は曲面形状となっている。このため、セルフアライメント力が実装位置中央に向かって働くようにより、電子部品が適切な位置に移動し易くなる。これらのことから、実施例4は比較例1に比べて実装不良が減少したものと考えられる。
【0083】
実施例4によれば、素体部10の端面16において、導体含有層20は高硬度層22に対して凹んでいる。外部電極50は、素体部10の下面14から端面16に延在し、端面16において少なくとも導体含有層20に設けられている。これにより、電子部品を実装基板に実装する際のセルフアライメント性を向上させることができる。なお、実施例4のように、外部電極50は、端面16において導体含有層20にのみ設けられ高硬度層22には設けられていない場合が好ましい。また、導体含有層20が高硬度層22に対して凹んでいるため、導体含有層20に外部電極50を形成する際に、外部電極50が高硬度層22にまで広がって形成されることを抑制できる。すなわち、導体含有層20の表面にだけ外部電極50を形成し、高硬度層22には外部電極50を形成しないことを容易に実現できる。
【0084】
図14(a)は、実施例4の変形例1に係る電子部品の透視斜視図、
図14(b)は、上面側から見た図、
図14(c)は、端面側から見た図である。
図14(a)から
図14(c)のように、実施例4の変形例1の電子部品410では、外部電極50は、素体部10の下面14及び端面16において導体含有層20と高硬度層22の両方に設けられている。端面16において、外部電極50は、導体含有層20で曲面形状になっていることに加え、Z軸方向の高さが高硬度層22で導体含有層20よりも高くなるような湾曲した形状となっている。また、下面14においても同様に外部電極50は湾曲した形状となっている。なお、外部電極50は、素体部10の側面18にはみ出していてもよい。その他の構成は、実施例4と同じであるため説明を省略する。実施例4の変形例1の場合でも、実施例4と同様に、セルフアライメント性を向上させることができる。
【0085】
図15は、実施例4の変形例2に係る電子部品の上面断面図である。
図15のように、実施例4の変形例2の電子部品420では、導体含有層20の片側にのみ高硬度層22が設けられている。その他の構成は、実施例4と同じであるため説明を省略する。
【0086】
発明者は、実施例4の変形例2の電子部品に対して、実装基板上への実装試験を行った。実装試験は実施例4で説明した方法と同じ方法で行い、電子部品の寸法などは実施例4の場合と同じにした。表5に、実装試験の試験結果を示す。なお、比較のために、表4に示した比較例1の試験結果も示している。
【表5】
表5のように、実施例4の変形例2では実装不良発生率が0.75%であった。
【0087】
実施例4の変形例2のように、導体含有層20の片側にだけ高硬度層22が設けられている場合でも、セルフアライメント性を向上させることができる。表4及び表5の試験結果から、セルフアライメント性の向上の点からは、導体含有層20を挟んで高硬度層22を設けることが好ましいことが分かる。
【実施例5】
【0088】
図16(a)は、実施例5に係る電子部品の上面断面図、
図16(b)は、側面断面図、
図16(c)は、端面断面図である。
図16(a)から
図16(c)のように、実施例5の電子部品500では、コイル導体36は、Y軸方向(長さ方向)にコイル軸を有し且つ開口が矩形形状になっている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0089】
実施例1から実施例4では、コイル導体36はコイル軸がX軸方向の縦巻きである場合を例に示したが、実施例5のように、コイル導体36はコイル軸がY軸方向の縦巻きの場合でもよい。
【実施例6】
【0090】
図17(a)は、実施例6に係る電子部品の上面断面図、
図17(b)は、側面断面図、
図17(c)は、端面断面図である。
図17(a)から
図17(c)のように、実施例6の電子部品600では、Z軸方向(高さ方向)にコイル軸を有し、開口形状が矩形形状のコイル導体36が設けられている。すなわち、コイル導体36は、水平巻きとなっている。コイル導体36は、Z軸方向における素体部10の中央から上面12側に寄って設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0091】
図18から
図19(b)は、実施例6に係る電子部品の製造方法を示す図である。
図19(a)及び
図19(b)は、実施例6の電子部品の上面断面に相当する図である。
図18のように、導体含有層20の前駆体である複数枚の絶縁性のグリーンシートG11〜G16を用意する。グリーンシートについては実施例4で説明しているためここでは説明を省略する。
【0092】
グリーンシートG12〜G15の所定の位置に、レーザ加工などによってスルーホールを形成する。そして、グリーンシートG12〜G16に印刷法を用いて導電性材料を印刷することで内部導体30を形成する。
【0093】
続いて、グリーンシートG11〜G16を所定の順序で積層し、積層方向に圧力を加えてグリーンシートを圧着する。そして、圧着したグリーンシートをチップ単位に切断した後、所定温度(例えば700℃〜900℃程度)にて焼成を行う。これにより、
図19(a)のように、内部導体30を内部に有する導体含有層20が形成される。
【0094】
続いて、
図19(b)のように、導体含有層20の両側に、例えばスラリーやペースト、インクなどを印刷したり、ディップしたり又はシート状に加工したものを接着したりするなどによって、高硬度層22を形成する。これにより、導体含有層20を挟んで高硬度層22が設けられた素体部10が形成される。その後、素体部10の所定の位置に外部電極50を形成する。これにより、実施例6の電子部品600が形成される。
【0095】
導体含有層20の形成には、上述のようにグリーンシートにスルーホールを形成し、さらに内部導体部を形成した後、コイルを形成するように所定の順序にてグリーンシートを積層、圧着したものを焼成して作製する方法、絶縁層に樹脂などを用いて内部導体などを薄膜法により作製して焼成しない方法、内部導体となる導体をコイル状に巻いた後、樹脂などで固めた焼成しない方法を取ることが可能である。また、コイルの巻き方向も、実装面に垂直にコイル軸がある水平巻き、実装面に平行にコイル軸があり、実装面の長さ方向又は幅方向にコイル軸が略一致している2種類の縦巻きがあり、この3種類のどの巻き方を適用してもよい。
【0096】
高硬度層22の形成については、印刷、ディップ、又はシートの接着などで行うことができるが、それらに使用される、スラリーやペースト、インクや接着剤、バインダーなどによっては、焼成を行うことができる場合とできない場合がある。焼成を行うことができる場合、導体含有層20の作製で焼成が行われる場合に同時に焼成を行う工程手順とすることも、各々の焼成を別々に行う工程手順とすることもできる。焼成を行うことができない場合、導体含有層20の作製において焼成が行われるか否かにかかわらず、導体含有層20の完成を待って、その後、高硬度層22の形成を行う。
【0097】
導体含有層20に高硬度層22を付加、形成する際に、複数の導体含有層20を粘着シートなどに整列配置することにより、個片化されている場合の個々に高硬度層22を付加、形成することに比べて、効率的に付加、形成を行うことができる。
【0098】
実施例1から実施例5ではコイル導体36は縦巻きであったが、実施例6のようにコイル導体36は水平巻きであってもよい。また、実施例6によれば、コイル導体36は素体部10の上面12側に寄って設けられている。これにより、コイル導体36は実装面である下面14から離れて配置されているため、電子部品を実装基板に搭載した後にコイル導体36が実装基板から受ける寄生容量の影響を低減でき、特性の変化を抑制することができる。
【実施例7】
【0099】
図20(a)は、実施例7に係る電子部品の上面断面図、
図20(b)は、側面断面図、
図20(c)は、端面断面図である。
図20(a)から
図20(c)のように、実施例7の電子部品700では、内部導体30は複数の平坦電極60を含む。複数の平坦電極60が互いに重なる領域が、内部導体30のうちの電気的性能を発揮する機能部となるコンデンサ部62である。複数の平坦電極60のうちの互いに重ならない領域は、コンデンサ部62を外部電極50に電気的に接続する引き出し部に相当する。すなわち、内部導体30は、複数の平坦電極60が互いに重なる領域からなる機能部としてのコンデンサ部62と、複数の平坦電極60のうちの互いに重ならない領域である非機能部と、を有する。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0100】
実施例1から実施例6では、内部導体30が機能部としてコイル導体36を含む場合、すなわち電子部品がインダクタ素子である場合を例に示したが、これに限られない。実施例7のように、内部導体30が機能部としてコンデンサ部62を含む場合、すなわち電子部品がコンデンサ素子の場合でもよい。また、機能部としてコンデンサ部62を含む場合でも、
図6と同様にコンデンサ部62は引き出し導体によって素体部10の下面14で外部電極50に電気的に接続されていてもよし、素体部10の側面18で外部電極50に電気的に接続されていてもよい。
【実施例8】
【0101】
図21(a)は、実施例8に係る電子部品の透視斜視図、
図21(b)は、実施例8の変形例1に係る電子部品の透視斜視図である。
図21(a)のように、実施例8の電子部品800では、高硬度層22は、Y軸方向(長さ方向)で導体含有層20に並んで設けられている。高硬度層22は、Y軸方向(長さ方向)から導体含有層20を挟んで導体含有層20の両側に設けられ、素体部10の端面16を構成している。Y軸方向において、導体含有層20の厚さは、高硬度層22よりも厚くなっている。内部導体30のうちのコイル導体36(機能部)は、導体含有層20の内部に設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
図21(b)のように、実施例8の変形例1の電子部品810では、素体部10の幅(X軸方向の長さ)が長さ(Y軸方向の長さ)よりも長くなっている。その他の構成は、実施例8と同じであるため説明を省略する。
【0102】
実施例1から実施例7では、高硬度層22はX軸方向で導体含有層20に並んでいる場合を例に示したが、高硬度層22は素体部10の下面14(実装面)に平行な方向で導体含有層20に並んでいれば、実施例8及び実施例8の変形例1のように、高硬度層22がY軸方向で導体含有層20に並んでいる場合でもよい。
【0103】
電子部品を実装基板に実装した場合、外部電極50の端の部分と内部導体30の端の部分に応力が集中し易いため、この間でクラックが発生し易い。したがって、高硬度層22がこの部分にあることで、クラックの発生を抑制することができる。また、実施例8の変形例1では、素体部10の機械的強度は、高硬度層22の高さだけでなく、長さと幅が大きく関係する。例えば、実施例8の変形例1のように電子部品の幅が長さよりも大きい場合、素体部10の長さ方向に導体含有層20と高硬度層22とが並んでいることで、素体部10の幅方向の強度を確保できる。
【0104】
実施例1から実施例8では、外部電極50は、素体部10の下面14から端面16に延在したL字型形状をしていて且つ素体部10の幅(X軸方向の幅)よりも狭い場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではない。
図22(a)から
図22(n)は、外部電極の形状の他の例を示す透視斜視図である。外部電極50は、
図22(a)のように下面にのみ設けられてもよいし、
図22(b)のように端面の下側にのみ設けられてもよいし、
図22(c)のように端面全面に設けられてもよい。
図22(d)のように下面から端面を経由して上面に延在して設けられてもよいし、
図22(e)のようにさらに側面に延在していてもよし、
図22(f)、
図22(g)のように上面での長さが下面より短くてもよい。
図22(h)のように下面から端面の一部まで延在して設けられてもよいし、
図22(i)のように下面から端面全面に延在して設けられてもよい。
図22(j)、
図22(k)のように下面の端に三角柱形状で設けられてもよいし、
図22(l)のように下面の一部と側面の一部と端面の一部とを覆って設けられてもよいし、
図22(m)、
図22(n)のように下面の一部と側面の一部と端面の全面とを覆って設けられてもよい。なお、
図22(a)から
図22(n)においても、外部電極50は、素体部10の幅よりも狭い場合でもよい。
【0105】
なお、実施例1では、電気めっきを用いて電子部品を製造する場合を示し、実施例4、5では、シートを積層することで電子部品を製造する場合を示したが、実施例1から実施例8において、電子部品は電気めっき又はシートの積層のいずれで製造してもよい。また、本発明の構造が得られる方法であれば、その製造方法は上述の方法に限定されるものではなく、またいくつかの方法を組み合わせる製造方法であってもよい。
【実施例9】
【0106】
図23(a)は、実施例9に係る電子部品の透視斜視図、
図23(b)は、上面断面図である。なお、
図23(a)においては、図の明瞭化のためにコイル導体36などの図示を省略している(後述の
図24(a)及び
図24(b)も同様)。
図23(a)及び
図23(b)のように、実施例9の電子部品900では、素体部10の内部にマーカー部80が設けられている。例えば、マーカー部80は、高硬度層22の内部に設けられていて、高硬度層22と比べて色の三属性(色相、彩度、及び明度)の少なくとも1つが異なっている。すなわち、マーカー部80はその位置が識別できるようになっている。マーカー部80は、高硬度層22と異なる材料で形成されていてもよいし、高硬度層22と同じ材料で形成され且つ高硬度層22と異なる色となるような色素を含有していてもよい。また、マーカー部80は、高硬度層22と同様に、導体含有層20よりも高い硬度を有していてもよい。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0107】
実施例9によれば、素体部10にマーカー部80が設けられている。これにより、電子部品900の方向を識別できるようになる。よって、生産工程での整列作業が容易にでき、また実装基板への実装時の不具合を低減することができる。
【0108】
図24(a)は、実施例9の変形例1に係る電子部品の透視斜視図、
図24(b)は、実施例9の変形例2に係る電子部品の透視斜視図である。
図24(a)の実施例9の変形例1の電子部品910のように、マーカー部80は素体部10の側面18(すなわち、高硬度層22の表面)に設けられていてもよい。
図24(b)の実施例9の変形例2の電子部品920のように、マーカー部80は導体含有層20と高硬度層22にまたがって素体部10の表面に設けられていてもよい。マーカー部80が導体含有層20と高硬度層22にまたがって設けられている場合、マーカー部80は導体含有層20及び高硬度層22の両方と比べて色の三属性の少なくとも1つが異なっている場合が好ましい。なお、
図24(b)では、マーカー部80は、素体部10の上面12に設けられている場合を例に示しているが、下面14又は端面16に設けられていてもよい。素体部10の表面のマーカー部80は、例えば印刷によって形成されてもよい。
【0109】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。