【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は、特に断りのない限り「重量%」を示す。実施例及び比較例に記載した物性の測定方法、ならびに平均繊維径の測定方法を以下に示した。
【0034】
1)坪量
JIS P8124記載の方法にて測定した。単位はg/m2である。
【0035】
2)厚み
JIS P8118記載の方法にて測定した。単位はμmである。
【0036】
3)通気度
JIS L1096記載の方法にて測定した。測定機には、株式会社東洋精機製作所製の通気性試験機No.869を用いた。単位はcm3/cm2/secである。
【0037】
4)ガーレ剛度
JIS L1096、JIS L1085記載の方法にて測定した。測定機には、株式会社東洋精機製作所製のガーレ剛軟度試験機No.825を用いた。単位はmgである。
【0038】
5)MD方向(紙の流れ方向)の引張強さ
JIS P8113記載の方法に準拠してMD方向の引張強さを測定した。具体的には、15mm幅×250mm長さ(長さ方向がMD方向)の短冊サンプルの引張強さを測定した。単位はkN/mである。
【0039】
6)MD方向(紙の流れ方向)の湿潤引張強さ
JIS P8135記載の方法に準拠してMD方向の湿潤引張強さを測定した。15mm幅×250mm長さ(長さ方向がMD方向)の短冊サンプルを25℃の純水に3分浸漬する。浸漬処理した短冊サンプル4片をまとめて湿潤引張強さを測定し、短冊サンプル4片まとめて測定したデータから1片当たりの値を算出した。単位はkN/mである。
【0040】
7)焼成前保液量
100mm×100mmサイズのサンプルの乾燥重量(W1)を測定する。バットに張った25℃の純水に15秒間浸漬して取り出し、ガラス棒で表面の水滴を掻き落とした後、湿潤重量(W2)を測定し、W1とW2から保液量を求めた。単位はg/m2である。この無機繊維紙は、焼成前保液量が100g/m2以上である。
【0041】
8)平均繊維径
ISO−16065−2に準拠した方法にて測定した。測定機にはメッツォオートメーション株式会社製のファイバー分析計Metso FS5を用いた。単位はμmである。
【0042】
実施例1〜5、比較例1〜7の無機繊維紙について、各成分の配合を表1に示し、上述した評価試験により評価した結果を表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例1)
表1に示すように、生体溶解性セラミック繊維(組成:SiO2/CaO/MgO=65/30/5;平均繊維径3μm×長さ600μm、45μm以上ショット含有率10%)、ガラス繊維として6μm径×6mm長のチョップドストランドガラス繊維、有機繊維としてNBKP(平均繊維径20μm、400mlCSF)をそれぞれ40/40/20とする配合で水中に順次添加混合し、さらに、無機バインダーとしてポリ塩化アルミニウム(以下、PACと称する)を繊維重量の合計量に対して0.5%添加し、セピオライト粉体平均粒径7μm)を繊維重量の合計量に対して45%添加し、3%濃度の原料スラリーを調成した。この原料スラリーを用いてウェブを長網抄紙機で希釈抄造し、湿式ウェブをプレスロールで脱水した後、130℃で加熱乾燥処理し、実施例1の無機繊維紙を得た。
【0046】
(実施例2)
生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維の配合比をそれぞれ95/0/5とし、セピオライト粉体を繊維重量の合計量に対して55%添加した以外は実施例1と同じ方法で抄造を行い、実施例2の無機繊維紙を得た。
【0047】
(実施例3)
有機繊維として平均繊維径が17μmのNBKPを用い、生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維の配合比をそれぞれ20/25/55とした以外は実施例1と同じ方法で抄造を行い、実施例3の無機繊維紙を得た。
【0048】
(実施例4)
有機繊維として、平均繊維径が25μmのPVA(繊維長3mm)を用いた以外は実施例1と同じ方法で抄造を行い、実施例4の無機繊維紙を得た。
【0049】
(実施例5)
生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維の配合比をそれぞれ10/70/20とした以外は実施例1と同じ方法で抄造を行い、実施例5の無機繊維紙を得た。
【0050】
(比較例1)
セピオライト粉体に代えてカオリン粉体を添加した以外は実施例3と同じ方法で抄造を行い、比較例1の無機繊維紙を得た。
【0051】
(比較例2)
セピオライト粉体に代えてタルク粉体を添加した以外は実施例3と同じ方法で抄造を行い、比較例2の無機繊維紙を得た。
【0052】
(比較例3)
セピオライト粉体に代えてウォラストナイト粉体を添加した以外は実施例3と同じ方法で抄造を行い、比較例3の無機繊維紙を得た。
【0053】
(比較例4)
有機繊維として平均繊維径が10μmのLBKPを用いた以外は実施例1と同じ方法で抄造を行い、比較例4の無機繊維紙を得た。
【0054】
(比較例5)
有機繊維として、平均繊維径が40μmのPVA(繊維長3mm)を用い、生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維の配合比をそれぞれ40/50/40とするとともに、セピオライト粉体を繊維重量の合計量に対して20%添加した以外は実施例1と同じ方法で抄造を行い、比較例5の無機繊維紙を得た。
【0055】
(比較例6)
有機繊維として平均繊維径が17μmのNBKPを用い、生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維の配合比をそれぞれ20/25/55とするとともに、セピオライト粉体を添加しなかったこと以外は実施例1と同じ方法で抄造を行い、比較例6の無機繊維紙を得た。
【0056】
(比較例7)
有機繊維として平均繊維径が7μmのエスパルトを用い、生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維の配合比をそれぞれ20/25/55とした以外は実施例1と同じ方法で抄造を行い、比較例7の無機繊維紙を得た。
【0057】
表2に示すように、実施例1〜5では、密度が好適な範囲に調整され、焼成前の含浸性に優れていることがわかる。また、有機繊維として、NBKPに代えてPVAを配合した実施例4では、引張強さがやや低くなっており、有機繊維としては、セルロース繊維のみを配合する方がより好ましいことがわかる。
【0058】
一方、セピオライトに代えてカオリンを添加した比較例1と、セピオライトに代えてタルクを添加した比較例2は、共に密度が高くなりすぎて、焼成前の保液量100g/m2以上を満足せず含浸性に劣ることがわかる。また、セピオライトに代えてウォラストナイトを添加した比較例3と、セピオライトを添加しない比較例6は、密度と焼成前の保液量100g/m2以上を満足しているが、通気度が非常に高く、シール性が要求される製品に適用することが難しいことがわかる。
【0059】
比較例4と比較例7は、共に有機繊維の平均繊維径が17μm未満であり、密度が高くなりすぎて、焼成前の保液量100g/m2以上を満足せず含浸性に劣ることがわかる。一方、有機繊維の平均繊維径が25μmを超える比較例5は、焼成前の保液量100g/m2以上は満足するものの、密度が0.25g/cm3未満になり、湿潤引張強さが非常に低く、通気度も高くなってしまい、さらにガーレ剛度が400mgを越えてしまうことがわかる。
【0060】
以上説明した無機繊維紙は、生体溶解性セラミック繊維と、
繊維分における配合比が0重量%以上70重量%以下のガラス繊維と、
平均繊維径が17μm以上25μm以下の有機繊維と、
硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、カチオン性コロイダルシリカ、アルミナゾルから選ばれる少なくとも1種以上のカチオン性無機バインダーと、
セピオライトと、を用いて湿式抄造することにより得られるシート化した基材であって、
密度が0.25g/cm3以上0.40g/cm3未満、焼成前の保液量が100g/m2以上であることを特徴とする。
【0061】
この無機繊維紙によれば、密度を0.40g/cm3未満に抑えることで、焼成前の保液量を100g/m2以上として焼成前の含浸性を向上させることができる。さらに、密度が0.25g/cm3以上であるため切断や打ち抜きなどの加工性の悪化を抑えることができる。また、前記有機繊維の平均繊維径を17μm以上とすることで密度が高くなりすぎることを抑える一方、該有機繊維の平均繊維径を25μm以下にすることで密度が低くなりすぎることを防ぐことができる。
【0062】
前記セピオライトは、密度が高くなりすぎることを抑えるとともに通気度を低くする無機バインダーである。前記ガラス繊維は、密度を低くする点で有効であるが、耐熱性が必要な場合には、繊維分における配合比を0重量%とすることができる。なお、前記繊維分には、生体溶解性セラミック繊維、ガラス繊維および有機繊維が含まれる。
【0063】
また、この無機繊維紙において、前記有機繊維が、セルロース繊維のみからなるものであることが好ましい。
【0064】
前記有機繊維を前記セルロース繊維のみから構成し合成樹脂繊維を配合しないことにより、物理的強度(引張強さや湿潤引張強さ)の低下や材料コストを抑えることができる。
【0065】
さらに、この無機繊維紙において、ガーレ剛度が、400mg以下であることが好ましい。
【0066】
ガーレ剛度を400mg以下にすることで、折り曲げ加工がしやすくなる。
【0067】
また、この無機繊維紙において、通気度が、3.5cm3/cm2/sec以下であることが好ましい。
【0068】
こうすることで、特にシール性が必要な製品により好適に用いることができる。
【0069】
さらに、この無機繊維紙において、含浸液を含浸させたものであってもよい。
【0070】
ここでいう含浸液は、揮発性有機化合物(VOC)、アンモニア等の塩基性ガス、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、塩素等の酸性ガスを除去するための触媒や吸着剤等の機能剤の粒子における分散体や、無機結合剤の分散体等である。具体的には、シリカゾル、ケイ酸塩水溶液、アルミナゾル、ジルコニアゾル等を例示することができる。