(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753025
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/512 20060101AFI20200831BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
A61F13/512 300
A61F13/511 400
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-65523(P2016-65523)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-176329(P2017-176329A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】椎野 雄一郎
【審査官】
▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−345357(JP,A)
【文献】
特開2016−019616(JP,A)
【文献】
特開2009−006002(JP,A)
【文献】
特開2010−119741(JP,A)
【文献】
特開2008−148807(JP,A)
【文献】
特開2008−093290(JP,A)
【文献】
特開2015−213618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/512
A61F 13/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記トップシートは、少なくとも2枚の液透過性の不織布シートから構成され、
前記各不織布シートには、前記吸収性物品の長手方向に沿って、前記不織布シートを貫通する複数の直線状のスリットが間欠部によって間欠的に隔てられ、
上下に積層した前記不織布シートのそれぞれに設けられた前記スリットは、上下方向に全く重なっておらず、前記各スリットの位置は上下方向にズレて設定されており、前記各スリットは引き伸ばされず、楕円形状にされず、直線状のスリットの形状で用いられ、
前記スリットの前記間欠部は、前記トップシートの幅方向に直線的に並んでいる、吸収性物品。
【請求項2】
積層した前記不織布シートのうち、身体側最上層の不織布シートのスリットは、長さが5mm以上30mm以下であり、長手方向に隣接するスリットが5mm以上50mm以下の間隔で離間している、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
積層した前記不織布シートのうち、下層に位置する不織布シートのスリットは、長さが5mm以上30mm以下であり、長手方向に隣接するスリットが5mm以上50mm以下の間隔で離間しており、
少なくとも2枚の前記不織布シートを積層した状態において、身体側最上層の不織布シートのスリットと、下層に位置する不織布シートのスリットとは、幅方向に2mm以上15mm以下離間している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
積層した前記不織布シートに設けられるスリットの幅は、0.5mm以上2.5mm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
積層した前記不織布シートのうち、下層に位置する不織布シートの坪量が、18g/m2以上40g/m2以下であり、身体側最上層に位置する不織布シートの坪量が、13g/m2以上30g/m2以下である、請求項1から4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
積層した前記不織布シートのうち、下層に位置する不織布シートの坪量が、身体側最上層の不織布シートの坪量よりも高い、請求項1から5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
トップシートを構成する不織布シートが、エアスルー不織布である、請求項1から6のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収速度が速く、逆戻り量の少ない吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に大人用紙おむつには、テープ止めタイプ、尿取りパッド、パンツタイプ等があり、これらの紙おむつは着用対象者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
ここで、吸収性物品の吸収性能については、(1)吸収速度が速いこと、及び(2)逆戻り量が少ないこと、の2点が重要であるといわれている。これらの2つの性能を向上させるため、例えば、吸収体の構造や高吸収性ポリマーの配合態様に工夫を加えたり、吸収体にエンボスを設けたり、トップシートにスリットを入れたりする、といった技術が知られている。しかしながら、一般には、上記の2つの性能を同時に最大化させることは困難であり、一方の性能を向上させた場合には、他方の性能が低下するというような問題が従来指摘されていた。
【0004】
例えば、吸収性物品において逆戻り量を最小化したい場合、吸収体に高吸収性ポリマーを多量に配合するか、高吸収性ポリマーの位置をトップシート側に調整する、というような方法を採用することができるが、その反動として、高吸収性ポリマーによるゲルブロックが発生して吸収速度が低下してしまうことが知られている。また、逆に、吸収性物品において、吸収速度を増大させたい場合、フラッフパルプの量を増やしたり、液拡散シートを配置したりする等といった方法が採用できるが、その反動として、加圧したときの逆戻り量が増加してしまうことが知られていた。さらに、高吸収性ポリマーやフラッフパルプの量をともに増大させることにより、吸収速度の増大と逆戻り量の抑制の両者を、ある程度まで改善することも可能であるが、各種材料の使用量の増大に伴い、コスト高となるおそれがあった。
【0005】
他方、トップシートやセカンドシートにスリットや開孔を設けて、吸収性物品の吸収性能を向上させる技術が、以下の特許文献に開示されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、少なくとも身体側表面側に配置され、トップシート及び複数の開孔を有するメッシュシートを粘着することにより形成されている表面シートと、外面側に配置されているバックシートと、両シート間に介在される吸収体とにより構成される吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、トップシートとバックシートとこれらの間に配された吸収体とを有するとともに、トップシートと吸収体との間にセカンドシートが配されて、このセカンドシートが、トップシート側から不織布層とプラスチックフィルム層とを有する積層体から構成され、複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−149457号公報
【特許文献2】特開2016−019616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のいずれの吸収性物品についても、吸収速度を増大させ、逆戻り量を低減させる、という2つの性能を同時に且つ十分に向上させることはできない。さらに、これらの吸収性物品を構成するトップシートやセカンドシートに、肌触り性やクッション性を付与するために嵩高な不織布を使用する場合、吸収した体液がトップシートやセカンドシートの厚さ方向に残存してしまい、これが液戻りにつながってしまうという懸念もある。
【0009】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、吸収速度が増大されるとともに、逆戻り量が低減され、トップシート内に吸収した体液が残留しにくい、吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、トップシートと、バックシートと、吸収体と、を有する吸収性物品において、トップシートを少なくとも2枚の液透過性の不織布シートから構成するものとし、各不織布シートに所定のスリットを設けて、上下に積層した不織布シートのそれぞれに設けられたスリットを、上下方向に重ならないように構成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記トップシートは、少なくとも2枚の液透過性の不織布シートから構成され、前記
各不織布シートには、前記吸収性物品の長手方向に沿って、前記不織布シートを貫通する
複数の直線状のスリットが間欠部によって間欠的に隔てられ、上下に積層した
前記不織布シートのそれぞれに設けられた
前記スリットは、上下方向に
全く重なって
おらず、前記各スリットの位置は上下方向にズレて設定されており、前記各スリットは引き伸ばされず、楕円形状にされず、直線状のスリットの形状で用いられ、前記スリットの前記間欠部は、前記トップシートの幅方向に直線的に並んでいる、吸収性物品である。
【0012】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、積層した前記不織布シートのうち、身体側最上層の不織布シートのスリットは、長さが5mm以上30mm以下であり、長手方向に隣接するスリットが5mm以上50mm以下の間隔で離間していることを特長とするものである。
【0013】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、積層した前記不織布シートのうち、下層に位置する不織布シートのスリットは、長さが5mm以上30mm以下であり、長手方向に隣接するスリットが5mm以上50mm以下の間隔で離間しており、少なくとも2枚の前記不織布シートを積層した状態において、身体側最上層の不織布シートのスリットと、下層に位置する不織布シートのスリットとは、幅方向に2mm以上15mm以下離間していることを特徴とするものである。
【0014】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、積層した前記不織布シートに設けられるスリットの幅は、0.5mm以上2.5mm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、積層した前記不織布シートのうち、下層に位置する不織布シートの坪量が、18g/m
2以上40g/m
2以下であり、身体側最上層に位置する不織布シートの坪量が、13g/m
2以上30g/m
2以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品であって、積層した前記不織布シートのうち、下層に位置する不織布シートの坪量が、身体側最上層の不織布シートの坪量よりも高いことを特徴とするものである。
【0017】
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載の吸収性物品であって、トップシートを構成する不織布シートが、エアスルー不織布であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の吸収性物品は、トップシートを、少なくとも2枚の液透過性の不織布シートから構成したので、2枚の不織布シートにより、吸収体からの液戻りが遮られ、逆戻り量を低減することができる。また、本発明の吸収性物品は、不織布シートにスリットを設けたので、このスリットを介して吸収体に体液を吸収させることができる。このため、体液の吸収速度を増大させることができるとともに、不織布シートに体液が残留することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】身体側最上層の不織布シートと下層に位置する不織布シートを積層させてトップシートとする際の態様を示す図面である。
【
図2】不織布シートに設けられるスリットの寸法を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態においては、同一の部材には同一の符号を付している。
【0021】
<吸収性物品>
本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、身体側表面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1の用途は、特に限定されるものではなく、一般には、幼児用又は成人用を問わず、テープ止めタイプの使い捨ておむつ、パンツタイプの使い捨ておむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド、生理用品等であってもよい。
【0022】
吸収性物品1は、身体側表面に配された液透過性のトップシート21と、トップシート21に対向して配置された液不透過性のバックシートと、トップシート21とバックシートとの間に少なくとも1層配置された吸収体と、を備えている。
【0023】
また、吸収性物品1には、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート21上の幅方向両端部に、立体ギャザー用弾性部材を有する一対の立体ギャザーを備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザーの外端は、バックシートに固定され、その内端はトップシート21に固着され、その中央はトップシート21に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシートが配される。立体ギャザー用弾性部材を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザーが起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は不透液性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0024】
[トップシート]
トップシート21は、体液が吸収体へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布等から形成される。また、トップシート21には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート21には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート21を構成する不織布1枚あたりの坪量は、13g/m
2以上50g/m
2以下であることが好ましい。トップシート21の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体へと誘導するために必要とされる、吸収体を覆う形状であればよい。
【0025】
図1は、身体側最上層の不織布シート212と下層に位置する不織布シート213を積層させてトップシート21とする際の態様を示す図面である。本発明の吸収性物品1においては、トップシート21は少なくとも2枚の不織布シートから構成されている。トップシート21を構成する不織布シートの枚数は、2枚以上4枚以下とすることが好ましく、2枚以上3枚以下とすることがより好ましい。また、トップシート21を構成する2枚以上の不織布シートの組み合わせとしては、同一の種類の不織布シートを組み合わせて用いてもよいし、異なる種類の不織布シートを組み合わせて用いてもよい。トップシート21を構成する不織布シートとしては、エアスルー不織布から構成される不織布シートであることが好ましい。トップシート21を構成する2枚の不織布シートの坪量は、下層に位置する不織布シート213の坪量が、身体側最上層の不織布シート212の坪量よりも高いことが好ましく、身体側最上層の不織布シート212の坪量が、13g/m
2以上30g/m
2以下であることが好ましく、下層に位置する不織布シート213の坪量が、18g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。
【0026】
(スリット)
本発明の吸収性物品1においては、トップシート21を構成する不織布シートに、吸収性物品1の長手方向に沿って、不織布シートを貫通する直線状のスリット214が間欠的に設けられている。そして、上下に積層した少なくとも2枚の不織布シートのそれぞれに設けられたスリット214は、上下方向には重ならないようになっている。不織布シートにスリット214を設けることにより、トップシート21上に排泄された体液は、スリット214を介して吸収体に吸収されるので、体液の迅速な吸収が担保されて吸収速度が増大するとともに、不織布シートの内部に体液が残留することを防止することもできる。
【0027】
本発明においては、不織布シートのそれぞれに設けられたスリット214は、長手方向に沿って直線状かつ、間欠的に配置されていることが好ましい。不織布シートのそれぞれに設けられるスリット214を直線状かつ、間欠的に配置することにより、上下に積層した不織布シートのスリットが互いに重ならない構成を、コストをかけずに容易に実現することができる。
【0028】
図2は、不織布シートに設けられるスリット214の寸法を示す図面である。本発明において、積層した不織布シートのうち、身体側最上層の不織布シート212のスリット214の長さは、スリット214の1本あたり、5mm以上30mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがより好ましい。また、長手方向に隣接するスリット214は、5mm以上50mm以下の間隔で互いに離間していることが好ましく、15mm以上30mm以下の間隔で互いに離間していることがより好ましい。スリット214の幅は、0.5mm以上2.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。身体側最上層の不織布シート212のスリット214の幅方向の離間距離は、5mm以上30mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがより好ましい。身体側最上層の不織布シート212のスリット214の寸法を、上記の範囲内のものとすることにより、体液の迅速な吸収を担保しつつ、不織布シートに残留する体液の量を低減することができる。
【0029】
また、積層した不織布シートのうち、下層に位置する不織布シート213のスリット214の長さは、スリット214の1本あたり、5mm以上30mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがより好ましい。また、長手方向に隣接するスリット214は、5mm以上50mm以下の間隔で互いに離間していることが好ましく、15mm以上30mm以下の間隔で互いに離間していることがより好ましい。スリット214の幅は、0.5mm以上2.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。下層に位置する不織布シート213のスリット214の寸法を、上記の範囲内のものとすることにより、体液の迅速な吸収を担保しつつ、不織布シートに残留する体液の量を低減することができる。
【0030】
本発明においては、少なくとも2枚の不織布シートを積層した状態において、身体側最上層の不織布シート212のスリット214と、下層に位置する不織布シート213のスリット214とは、幅方向に2mm以上15mm以下離間していることが好ましい。下層に位置する不織布シート213のスリット214は、上下の不織布シートを積層した状態において、身体側最上層の不織布シート212のスリット214の幅方向両側に、2mm以上15mm以下の離間距離をおいて設けられていてもよく、身体側最上層の不織布シート212のスリット214の片側のみに、2mm以上15mm以下の離間距離をおいて設けられていてもよい。上下の不織布シートを積層した状態において、不織布シートに設けられたスリット214が上下方向に重なっていないことにより、トップシート21の下層に位置する吸収体が直接肌に触れることを防止することができ、体液の逆戻りを抑制することができる。
【0031】
[バックシート]
バックシートは、吸収体が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0032】
強度及び加工性の点から、バックシートの坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシートは、通気性を持たせることが好ましい。バックシートに通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシートにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0033】
[吸収体]
吸収体は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)と、を含有することが好ましい。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m
2以上800g/m
2以下の坪量とすることが好ましい。
【0034】
吸収体の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m
2以上500g/m
2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上60質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0035】
吸収体において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したもの、あるいは、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートとしたものであることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体の形状の安定化の目的から、吸収体をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0036】
吸収体は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであることが好ましい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の長さは、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さより長くてもよく、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さと同じであってもよく、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さより短くてもよい。
【0037】
本発明の吸収性物品1は、吸収体に加え、2枚の不織布シートに高吸収性ポリマーを挟持したSAPシートを有していてもよい。このようなSAPシートを用いることにより、吸収性物品1の吸収性能をより向上させることができる。
【0038】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法は、周知の方法を採用することができ、例えば、(A)吸収性繊維を高吸収性ポリマーとともに積繊して吸収体マットを作成し、吸収体を形成する工程、(B)トップシート21と立体ギャザーをホットメルト系接着剤で固定・一体化する工程、(C)トップシート21、立体ギャザー、及びバックシートの内側にホットメルト系接着剤を塗工する工程、(D)集合ドラムにおいて、吸収体の上部にトップシート21を、吸収体の下部にバックシートを配置し、各構成部材を固定・一体化する工程、(E)吸収性物品1の半製品をカッター装置により製品寸法でカットし、個々の吸収性物品1を切り離す工程、を有する製造方法等を挙げることができる。そして、本発明においてトップシート21を吸収体と積層するに先立って、任意のカッター等により、スリット214が形成された不織布シートを、所定の位置に積層して、トップシート21として用いればよい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
<実施例1>
(吸収体の作製)
パルプシートを粉砕して解繊したフラッフパルプ6gと、高吸収性ポリマー7gとをともに積繊した吸収体マットを準備し、長さ330mm、幅105mmにカットした。この吸収体をトップシート及びバックシートとともに積層するとともに、1対の横漏れ防止用立体ギャザーを形成し、長さ400mm、幅320mmの吸収性物品を作製し、実施例1のサンプルとした。なお、トップシートを構成する不織布シートのうち、身体側最上層の不織布シート(エアスルー不織布)の坪量は、18g/m
2であり、下層に位置する不織布シート(エアスルー不織布)の坪量は20g/m
2であって、各不織布シートに長さ10mm、幅1mmのスリットを、各スリットの長手方向の間隔が15mmとなるように形成した。身体側最上層の不織布シートに形成したスリットの幅方向の間隔は10mm、下層に位置する不織布シートに形成したスリットと、身体側最上層に位置する不織布シートとの幅方向の離間距離は5mmとした。バックシートとしては、通気性ポリエチレンフィルム(坪量18g/m
2)を用いた。得られた吸収性物品の吸収速度、液戻り量を以下に従って測定・評価した。
【0041】
(吸収速度)
外径80mmの円柱の中央に内径30mmの穴が開いており、重さ2000gとした測定治具を、トップシートを上に向けた状態で、吸収性物品の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水40ml(温度36±3℃)を投下し、生理食塩水が吸収性物品に接触した時点から、測定治具中央円内の円周に生理食塩水が完全に吸い込まれるまでを終点として時間を計測し、吸収速度とした。吸収性物品に生理食塩水が完全に吸収された後、3分間放置して、同様の吸収試験を計3回繰り返した。
【0042】
(液戻り量)
吸収性物品の中央に生理食塩水300ml(温度36±3℃)を注入し、10分経過後に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製No.2ろ紙、直径55mm)10枚を注入部の中心に置き、ろ紙の上にアクリルプレートと錘を載せた(圧力;35gf/cm
2)。錘を載せてから10分経過後に、ろ紙の重量を測り、試験前後のろ紙の重量差(g)を液戻り量とした。液戻り量は、N=10サンプルについて行ったものの平均値とした。液戻り量が少ないほど吸収性能に優れる。
【0043】
(総合判定)
○:吸収速度が速く、逆戻り量が少ない
△:吸収速度が遅く、逆戻り量が多い
【0044】
<実施例2>
身体側最上層の不織布シートと下層に位置する不織布シートに長さ20mm、幅1mmのスリットを、各スリットの長手方向の間隔が25mmとなるように形成し、身体側最上層の不織布シートに形成したスリットの幅方向の間隔を20mm、下層に位置する不織布シートに形成したスリットと、身体側最上層に位置する不織布シートとの幅方向の離間距離を10mmとした点以外は、実施例1と同様に吸収性物品を作製した。
【0045】
<比較例1>
身体側最上層の不織布シートにスリットを形成せず、下層に位置する不織布シートに形成したスリットの幅方向の離間距離を20mmとした点以外は、実施例1と同様に吸収性物品を作製した。
【0046】
<比較例2>
トップシートにスリットを一切設けなかった点以外は、実施例1と同様に吸収性物品を作製した。
【0047】
以上の結果を表1に示す。
【表1】
【0048】
表1に示すように、実施例1及び2の吸収性物品においては、トップシートを構成する不織布シートにスリットが多数形成されているため、吸収速度が増大するとともに、スリットが形成されていることにより、不織布シートの保水量が低下して、逆戻り量も低減した。実施例1及び比較例1の吸収速度及び逆戻り量についての数値は、身体側最上層の不織布シートにスリットを設けていない比較例1や、スリットを一切設けなかった比較例2よりも、有意に改善されたものとなった。このような結果より、本発明によれば、吸収速度が増大されるとともに、逆戻り量が低減され、トップシート内に吸収した体液が残留しにくい吸収性物品が提供できることが分かった。
【符号の説明】
【0049】
1 吸収性物品
21 トップシート
212 身体側最上層の不織布シート
213 下層に位置する不織布シート
214 スリット
Y 長手方向
X 幅方向