特許第6753066号(P6753066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753066
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20200831BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20200831BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   H01L29/78 657A
   H01L29/78 652D
   H01L29/78 652K
   H01L29/78 655A
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 655F
   H01L29/06 301V
   H01L29/06 301G
   H01L29/78 658G
   H01L29/91 A
   H01L29/91 C
   H01L29/06 301F
   H01L29/91 L
   H01L29/78 658F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-22660(P2016-22660)
(22)【出願日】2016年2月9日
(65)【公開番号】特開2017-143136(P2017-143136A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2019年1月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−028110(JP,A)
【文献】 特開2013−033970(JP,A)
【文献】 特開2012−054378(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/099079(WO,A1)
【文献】 特開2008−177250(JP,A)
【文献】 特開2011−066184(JP,A)
【文献】 特開2010−212292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/329
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/739
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板のおもて面側に素子絶縁膜を形成する絶縁膜形成段階と、
前記素子絶縁膜に溝部を形成する溝部形成段階と、
前記素子絶縁膜の前記溝部に半導体素子を形成する素子形成段階と、
前記絶縁膜形成段階と前記溝部形成段階との間に、前記半導体基板のおもて面にマスク用絶縁膜を形成するマスク形成段階と
を備え、
前記溝部形成段階において、前記溝部を形成するのと同時に前記マスク用絶縁膜に開口を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁膜形成段階において、前記半導体素子よりも前記半導体基板の外側にフィールド絶縁膜を、前記素子絶縁膜と同時に形成する
請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁膜形成段階よりも前に、前記半導体基板のおもて面に1以上のリセス部を形成するリセス形成段階を更に備え、
前記絶縁膜形成段階において、前記素子絶縁膜の少なくとも一部を前記リセス部に形成する
請求項またはに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記リセス形成段階において、前記リセス部を等方性エッチングで形成する
請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT等の半導体素子が形成された半導体基板上に絶縁膜を設け、当該絶縁膜上に温度検知用のダイオード等の半導体素子を設ける構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2002−270841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、半導体基板上に設けた絶縁膜の上に更に半導体素子を形成すると、半導体基板上における段差が大きくなる。半導体基板上の段差が大きくなると、当該段差の近傍に微細な構造を形成することが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体基板と、素子絶縁膜と、半導体素子とを備える半導体装置を提供する。素子絶縁膜は、半導体基板のおもて面側に形成され、且つ、溝部を有してよい。半導体素子は、素子絶縁膜の溝部に設けられてよい。
【0005】
半導体装置は、活性領域を備え、活性領域よりも外側に耐圧構造部を更に備えてよい。半導体素子は活性領域内に備えてよい。また、耐圧構造部は、半導体基板のおもて面に形成されたフィールド絶縁膜を有してよい。素子絶縁膜の溝部が設けられていない領域の膜厚は、フィールド絶縁膜の膜厚と同一でよい。
【0006】
半導体基板は、おもて面に1以上のリセス部を有してよい。素子絶縁膜の少なくとも一部分は、リセス部に設けられてよい。素子絶縁膜の全体が、リセス部に設けられてよい。半導体素子のおもて面は、半導体基板のおもて面と同一またはより低い位置に設けられてよい。
【0007】
フィールド絶縁膜の少なくとも一部分は、素子絶縁膜とは異なるリセス部に設けられてよい。フィールド絶縁膜の全体が、リセス部に設けられてよい。
【0008】
半導体装置は、半導体基板のおもて面側に形成されたゲート電極およびゲート絶縁膜を更に備えてよい。素子絶縁膜の溝部が設けられていない領域の膜厚が、ゲート絶縁膜の膜厚より大きくてよい。
【0009】
素子絶縁膜の溝部が設けられた領域の膜厚が、ゲート絶縁膜の膜厚より大きくてよい。素子絶縁膜の溝部が設けられた領域の膜厚が、300nm以上であってよい。素子絶縁膜の溝部が設けられていない領域の幅が、ゲート絶縁膜の膜厚より大きくてよい。
【0010】
半導体基板のおもて面側にはゲートトレンチが形成されてよい。ゲート電極およびゲート絶縁膜は、ゲートトレンチの内部に形成されてよい。素子絶縁膜の溝部の幅は、ゲートトレンチの幅よりも大きくてよい。
【0011】
本発明の第2の形態においては、絶縁膜形成段階と、溝部形成段階と、素子形成段階とを備える半導体装置の製造方法を提供する。絶縁膜形成段階は、半導体基板のおもて面側に素子絶縁膜を形成してよい。溝部形成段階は、素子絶縁膜に溝部を形成してよい。素子形成段階は、素子絶縁膜の溝部に半導体素子を形成してよい。
【0012】
絶縁膜形成段階において、半導体素子よりも半導体基板の外側にフィールド絶縁膜を、素子絶縁膜と同時に形成してよい。製造方法は、絶縁膜形成段階と溝部形成段階との間に、半導体基板のおもて面にマスク用絶縁膜を形成するマスク形成段階を更に備えてよい。溝部形成段階において、溝部を形成するのと同時にマスク用絶縁膜に開口を形成してよい。
【0013】
製造方法は、絶縁膜形成段階よりも前に、半導体基板のおもて面に1以上のリセス部を形成するリセス形成段階を更に備えてよい。絶縁膜形成段階において、素子絶縁膜の少なくとも一部をリセス部に形成してよい。リセス形成段階において、リセス部を等方性エッチングで形成してよい。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の概要を示す上面図である。
図2図1におけるA−A'断面を示す図である。
図3】素子絶縁膜24、フィールド絶縁膜28およびゲートトレンチ46の概要を示す断面図である。
図4】半導体装置100の製造工程の一例を部分的に説明する図である。
図5】半導体装置100の製造工程の他例を部分的に説明する図である。
図6】半導体装置100の製造工程の他例を部分的に説明する図である。
図7】溝部26に形成されるダイオード18の配置例を示す上面図である。
図8A】比較例としての半導体装置300を示す図である。
図8B】比較例としての半導体装置300を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の概要を示す上面図である。図1は、ダイオード18が設けられた半導体装置100のおもて面を示している。半導体装置100は、シリコン等の半導体基板10を備える。半導体基板10は、活性領域14および耐圧構造部12を有する。活性領域14には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子が形成される。
【0018】
活性領域14には、温度検出用のダイオード18が設けられる。ダイオード18は、半導体素子の一例である。本例のダイオード18は、活性領域14の中央近傍に配置される。ダイオード18は、素子絶縁膜24上に設けられる。素子絶縁膜24は、半導体基板10のおもて面側に形成される。素子絶縁膜24は、半導体基板10のおもて面に接して形成されてよく、一部が半導体基板10に埋め込まれていてもよく、半導体基板10のおもて面との間に他の層が介在していてもよい。
【0019】
耐圧構造部12は、活性領域14を囲むように設けられる。耐圧構造部12は、ダイオード18および活性領域14よりも、半導体基板10の外側に設けられる。本例の耐圧構造部12は、半導体基板10の縁に沿って設けられる。耐圧構造部12は、ガードリングまたはフィールドプレート等を有しており、活性領域14の終端に電界が集中することを抑制して、半導体装置100の耐圧を向上させる。
【0020】
また、半導体基板10のおもて面には、パッド領域16が設けられる。パッド領域16にはダイオード18に接続されるパッド22、および、活性領域14に設けられた他の半導体素子に接続されるパッド等が形成される。パッド領域16内には、ダイオードやトランジスタ等の半導体素子やこれらのパッドが形成される場合もある。また、半導体基板10のおもて面の上方には、ダイオード18およびパッド22を接続する配線20が形成される。なお、パッド22および配線20は、ダイオード18のカソードおよびアノード毎に設けられるが、図1では一組のパッド22および配線20だけを模式的に示している。配線20およびパッド22と、半導体基板10のおもて面との間には、絶縁膜が設けられる。当該絶縁膜の少なくとも一部は、素子絶縁膜24であってよい。
【0021】
図2は、図1におけるA−A'断面を示す。ただし図2においては、耐圧構造部12の一部を省略している。本例において素子絶縁膜24は、半導体基板10のおもて面を局所的に酸化して形成したLOCOS(Local Oxidation of Silicon)膜である。
【0022】
本例において半導体基板10はN型(またはN−型)の基板である。半導体基板10のおもて面側には、IGBT等のパワー半導体素子の少なくとも一部分が形成される。半導体基板10の一部の領域は、おもて面およびうら面の間でキャリアが移動するドリフト領域32として機能する。半導体基板10のうら面側において、ドリフト領域32の下にはN+型のフィールドストップ層34、P型のコレクタ層36およびコレクタ電極38が形成される。
【0023】
素子絶縁膜24のおもて面には、溝部26が形成されている。溝部26は、素子絶縁膜24を貫通しないように設けられた凹部である。溝部26には、ダイオード18が形成される。ダイオード18は、全体が溝部26の内部に形成されてよく、一部が溝部26の内部に形成されてもよい。ダイオード18は、おもて面以外が素子絶縁膜24に覆われていてよい。
【0024】
このような構成により、溝部を有さない素子絶縁膜にダイオード等の半導体素子を載置する構成に比べて、半導体基板10のおもて面から、ダイオード等の半導体素子が突出する高さを低減できる。このため半導体基板10のおもて面における平坦性を向上することができ、微細な構造を形成できる面積を確保することができる。また、IGBT等のパワー半導体素子の活性領域14と、ダイオード18等の半導体素子との間を近づけることができ、半導体装置の小型化が実現できる。
【0025】
ダイオード18のおもて面は、層間絶縁膜48により覆われる。層間絶縁膜48には、ダイオード電極50とダイオード18とを接続するコンタクトホールが設けられる。ダイオード電極50は、配線20を介してパッド22に接続される。ダイオード電極50は、カソードおよびアノードのそれぞれに対して設けられる。
【0026】
耐圧構造部12には、フィールド絶縁膜28が局所的に形成される。フィールド絶縁膜28は、一例としてLOCOS膜である。隣接する2つのフィールド絶縁膜28の間には、P型のガードリング30が形成されてよい。フィールド絶縁膜28およびガードリング30上には、層間絶縁膜48が形成される。層間絶縁膜48上には、電極54が形成される。電極54は、ガードリング30と電気的に接続されてよい。また、フィールド絶縁膜28上には、フィールドプレートが設けられていてもよい。
【0027】
ダイオード18と耐圧構造部12の間には、IGBT等の半導体素子が形成される。本例では、複数のゲートトレンチ46を含むIGBTが形成されている。隣接するゲートトレンチ46の間のメサ部には、半導体基板10のおもて面側から順番に、N+型のエミッタ領域40、P型のベース領域44およびN型のドリフト領域32が形成される。一例として、ゲートトレンチ46の幅は1.5μm以下であり、隣接するゲートトレンチ46の間隔は5μm以下である。
【0028】
また、エミッタ領域40の一部にはP+型のコンタクト領域42が形成される。コンタクト領域42は、半導体基板10のおもて面から、ベース領域44まで形成される。半導体基板10のおもて面の上方には、エミッタ電極52が設けられる。層間絶縁膜48は、ゲートトレンチ46とエミッタ電極52との間に形成されて、両者を絶縁する。また、層間絶縁膜48には、それぞれのメサ部において、エミッタ領域40およびコンタクト領域42を露出させるコンタクトホールが形成されている。エミッタ電極52は、当該コンタクトホールを介してエミッタ領域40およびコンタクト領域42と電気的に接続する。
【0029】
上述したように、本例の半導体装置100は、ダイオード18が半導体基板10のおもて面から突出する高さを抑制できる。このため、ダイオード18の近傍に積層する各層の平坦性を向上することができ、ダイオード18とIGBT等の半導体素子とを狭い間隔で形成できる。従って、IGBT等の半導体素子を形成できる面積を増大させ、または、チップサイズを縮小することができる。
【0030】
図3は、素子絶縁膜24、フィールド絶縁膜28およびゲートトレンチ46の概要を示す断面図である。本例において素子絶縁膜24において溝部26が設けられていない領域における膜厚T1は、フィールド絶縁膜28の膜厚T2と同一である。なお、膜厚T1およびT2は、半導体基板10のおもて面およびうら面を結ぶ深さ方向における厚みを指す。また、膜厚T1およびT2は、深さ方向における各絶縁膜の厚みの最大値を指してよい。
【0031】
このような構造により、素子絶縁膜24をフィールド絶縁膜28と同一の工程で形成できる。このため、半導体装置の製造コストを低減することができる。また、本明細書において、膜厚等のサイズが同一と称した場合、厳密に同一な場合に加え、製造バラツキ等により生じる誤差を有する場合も含まれる。例えば±10%以下の誤差を有する場合を同一とする。
【0032】
なお、素子絶縁膜24の溝部26が設けられた領域において、残った絶縁膜の膜厚T4は、ダイオード18と半導体基板10との間で十分な耐圧を確保できる厚みを有する。膜厚T4は、ゲートトレンチ46のゲート絶縁膜56の膜厚T3よりも大きい。ゲート絶縁膜56の膜厚T3は、ゲート絶縁膜56のうち、最も絶縁膜が厚い部分の膜厚であってよい。また、素子絶縁膜24の膜厚T1は、膜厚T4よりも大きいので、膜厚T1もゲート絶縁膜56の膜厚T3よりも大きい。膜厚T4は、膜厚T3の10倍以上であってよく、50倍以上であってもよい。また、膜厚T4は、300nm以上であってよい。なお、膜厚T4は、溝部26が設けられた領域のうち、最も絶縁膜が薄い部分の膜厚であってよい。
【0033】
ゲートトレンチ46は、トレンチ内壁を覆うゲート絶縁膜56と、ゲート絶縁膜56に囲まれて形成されたゲート電極58を有する。ゲート絶縁膜56は、トレンチ内壁を酸化することで形成できる。また、ゲート電極58は、例えば不純物が添加されたポリシリコンで形成される。ゲート電極58を形成するポリシリコンは、ダイオード18を形成するポリシリコンよりも下方に形成される。
【0034】
また、素子絶縁膜24の溝部26が設けられていない領域の幅W1も、ダイオード18と半導体基板10との間で十分な耐圧を確保できる長さを有する。幅W1は、ゲートトレンチ46のゲート絶縁膜56の膜厚T3よりも大きい。幅W1は、膜厚T3の10倍以上であってよく、50倍以上であってもよい。また、幅W1は、300nm以上であってよい。なお、幅W1は、溝部26が設けられていない領域の、半導体基板10のおもて面と平行な方向における最大長さを指してよい。
【0035】
また、溝部26の幅W2は、温度検出用のダイオード18等の半導体素子が形成できる程度に大きい。例えば溝部26の幅W2は、ゲートトレンチ46の幅W3よりも大きい。幅W2は、幅W3の10倍以上であってよく、50倍以上であってもよい。
【0036】
半導体装置100においてはダイオード18等の半導体素子が、素子絶縁膜24の溝部26に設けられている。このため上述したように、素子絶縁膜24の端部と、ゲートトレンチ46との距離D1を小さくして、IGBT等のパワー半導体素子を形成できる面積を増大できる。距離D1は、複数のゲートトレンチ46のうち、素子絶縁膜24との距離が最も近いゲートトレンチ46と、素子絶縁膜24との距離を指す。
【0037】
図4は、半導体装置100の製造工程の一例を部分的に説明する図である。まず、絶縁膜形成段階S200において、半導体基板10のおもて面に素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28を形成する。
【0038】
本例において素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28はLOCOS膜である。素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28は同時に形成される。例えば、半導体基板10のおもて面に素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28に対応するマスク部材を設けて、半導体基板10のおもて面を局所的に酸化して、素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28を同時に成長させる。本例の素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28は同一の厚みを有する。素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28の幅は異なっていてよい。
【0039】
次に、溝部形成段階S202において、素子絶縁膜24に溝部26を形成する。溝部26は、素子絶縁膜24のおもて面をエッチングすることで形成できる。当該エッチングは異方性エッチングであることが好ましい。
【0040】
なお、絶縁膜形成段階S200と溝部形成段階S202との間に、マスク形成段階を更に備えてよい。マスク形成段階においては、半導体基板10のおもて面に、ゲートトレンチ46を形成するためのマスク用絶縁膜60を形成する。マスク用絶縁膜60は、半導体基板10のおもて面を酸化することで形成できる。マスク用絶縁膜60は、フィールド絶縁膜28および素子絶縁膜24上にも成長し得るが、半導体基板10のおもて面が露出している部分に形成されるマスク用絶縁膜60よりも膜厚は小さい。図4の例では、フィールド絶縁膜28および素子絶縁膜24上の絶縁膜を省略している。マスク用絶縁膜60は、CVD等の方法により形成してもよい。
【0041】
半導体基板10のおもて面にマスク用絶縁膜60を形成した後、ゲートトレンチ46に対応するマスク用絶縁膜60の領域をエッチングして開口62を形成する。本例では、溝部26を形成するのと同時に、マスク用絶縁膜60に開口62を形成する。例えば、マスク用絶縁膜60および素子絶縁膜24上に、溝部26および開口62に対応するエッチングマスクを形成して、マスク用絶縁膜60および素子絶縁膜24をエッチングする。
【0042】
溝部26の深さは、開口62の深さと同一であってよく、開口62より深くてもよい。マスク用絶縁膜60および素子絶縁膜24をエッチングするエッチャントは、絶縁膜と半導体基板10との選択比が十分高い材料を用いることが好ましい。開口62が形成された後もエッチングを続けることで、開口62よりも深い溝部26を形成することができる。溝部26の底部は、半導体基板10のおもて面よりも、半導体基板10の内側に形成されてよい。
【0043】
次に、トレンチ形成段階S204において、開口62の位置にゲートトレンチ46を形成する。S204においては、まず、開口62の位置にトレンチを形成した後、トレンチ内壁を酸化してゲート絶縁膜56を形成する。更に、トレンチ内にポリシリコン等の導電部材を充填して、ゲート電極58を形成する。そして、マスク用絶縁膜60を除去する。
【0044】
トレンチ形成のエッチングにおいては、半導体基板10と素子絶縁膜24の間のエッチング選択比が30以上であることが好ましい。これにより、溝部26の下方の素子絶縁膜24の厚みを容易に確保できる。
【0045】
次に、素子形成段階S206において、素子絶縁膜24の溝部26にダイオード18を形成する。S206においては、まず、溝部26の中にポリシリコン等の半導体材料を形成する。フォトリソグラフィーおよびエッチングにより、半導体材料を所定の形状にパターニングしてもよい。次に、当該半導体材料に所定の不純物を注入して、P型領域およびN型領域を形成する。
【0046】
また、ゲートトレンチ46の間のメサ部に所定の不純物を注入して、エミッタ領域40、コンタクト領域42およびベース領域44を形成する。ダイオード18を形成するための不純物注入と、メサ部への不純物注入は、同時に行ってよい。例えば、ベース領域44およびコンタクト領域42への不純物注入工程のいずれかと、ダイオード18のP型領域への不純物注入工程とは同一工程である。また、エミッタ領域40への不純物注入工程と、ダイオード18のN型領域への不純物注入工程とは同一工程である。また、ダイオード18のP型領域への不純物注入工程は、ガードリング30への不純物注入工程と同一工程であってもよい。
【0047】
このような工程により、素子絶縁膜24の溝部26にダイオード18等の半導体素子を形成できる。また、素子絶縁膜24、溝部26およびダイオード18の形成工程の少なくとも一部を、他の工程と同一工程とすることで、製造工程を短縮することができる。
【0048】
図5は、半導体装置100の製造工程の他例を部分的に説明する図である。本例では、リセス形成段階S208において、半導体基板10のおもて面に1以上のリセス部64を形成する。リセス部64は、フィールド絶縁膜28および素子絶縁膜24を設けるべき位置に形成される。
【0049】
S208においては、半導体基板10のおもて面を局所的にエッチングしてリセス部64を形成する。当該エッチングは、等方性エッチングが好ましい。異方性エッチングでリセス部64を形成した場合、リセス部64の側壁の角度が急峻になる。このため、リセス部64の内部に絶縁膜を形成すると、リセス部64の縁周辺で絶縁膜が上方に盛り上がって形成されてしまう場合がある。
【0050】
リセス部64の縁周辺は、IGBT等のパワー半導体素子と距離が近いので、当該箇所に凹凸が生じると、パワー半導体素子を形成すべき領域への影響が大きい。このため、パワー半導体素子をリセス部64に接近して形成することが困難になる。これに対して等方性エッチングでリセス部64を形成することで、リセス部64の側壁をなだらかに形成することができ、リセス部64の縁周辺で絶縁膜が上方に盛り上がることを抑制できる。
【0051】
次に、絶縁膜形成段階S210において、素子絶縁膜24の少なくとも一部を、リセス部64の内部に形成する。素子絶縁膜24は、全体がリセス部64の内部に形成されてもよい。つまり、素子絶縁膜24のおもて面は、半導体基板10のおもて面と同一またはより低い位置に形成されてよい。半導体基板10のおもて面より低い位置とは、半導体基板10のおもて面よりも、半導体基板10の内側の位置を指す。他の例では、素子絶縁膜24の一部は、半導体基板10のおもて面よりも上方に突出していてもよい。素子絶縁膜24において、半導体基板10のおもて面よりも上方に突出する部分は、当該おもて面よりも下方の部分よりも薄いことが好ましい。
【0052】
一例として、リセス部64の深さは500nm以下である。また、素子絶縁膜24の厚みは1200nm以下である。素子絶縁膜24の厚みは、リセス部64の深さと同一であってもよい。
【0053】
なお、図4に示した絶縁膜形成段階S200と同様に、S210においても、素子絶縁膜24とフィールド絶縁膜28とを同時に形成してよい。フィールド絶縁膜28の少なくとも一部分は、素子絶縁膜24とは異なるリセス部64の内部に形成されてよい。本例では、フィールド絶縁膜28の全体がリセス部64の内部に形成される。
【0054】
素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28は、LOCOS膜であってよく、CVD等で形成した膜であってもよい。本例の素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28は、LOCOS膜である。
【0055】
次に、溝部形成段階S212で、素子絶縁膜24に溝部26を形成する。図4に示した溝部形成段階S202と同様に、溝部26は、マスク用絶縁膜60の開口62と同時に形成してよい。マスク用絶縁膜60は、CVD等により形成してよい。また、マスク用絶縁膜60に開口62を形成した後、図4に示したトレンチ形成段階S204と同様に、ゲートトレンチ46を形成する。
【0056】
次に、素子形成段階S214で、素子絶縁膜24の溝部26にダイオード18を形成する。また、ゲートトレンチ46の間のメサ部にエミッタ領域40、コンタクト領域42およびベース領域44を形成するとともに、ガードリング30を形成する。なお、図4に示した素子形成段階S200と同様に、S214においても、ダイオード18を形成するための不純物注入と、ゲートトレンチ46の間のメサ部への不純物注入またはガードリング30を形成するための不純物注入は、同時に行ってよい。また、CMP等により、素子絶縁膜24およびダイオード18のおもて面の位置を、半導体基板10のおもて面の位置と同一にしてもよい。
【0057】
本例の製造工程で製造される半導体装置100によれば、リセス部64に素子絶縁膜24を形成するので、半導体基板10のおもて面における凹凸を更に低減できる。なお、ダイオード18のおもて面は、半導体基板10のおもて面と同一またはより低い位置に設けられてよい。つまり、ダイオード18は、全体が半導体基板10の内側に形成されてよい。これにより、半導体基板10のおもて面における凹凸を更に低減できる。
【0058】
図6は、半導体装置100の製造工程の他例を部分的に説明する図である。本例においては、素子絶縁膜24をリセス部64に形成する一方、フィールド絶縁膜28は半導体基板10のおもて面上に形成する。つまり、フィールド絶縁膜28はリセス部64に形成しない。
【0059】
まず、リセス形成段階S216において、素子絶縁膜24に対応するリセス部64を形成する。ただし、フィールド絶縁膜28に対応するリセス部64は形成しない。
【0060】
次に、絶縁膜形成段階S218において、素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28を形成する。図4に示した絶縁膜形成段階S200と同様に、S218においても、素子絶縁膜24とフィールド絶縁膜28とを同時に形成してよい。本例では、素子絶縁膜24を、フィールド絶縁膜28よりも低く形成することができる。
【0061】
絶縁膜形成段階S218においては、例えば半導体基板10のおもて面全体に絶縁膜を形成した後に、素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28となる部分を残して絶縁膜を除去する。なお、図4から図6に示した各例において、素子絶縁膜24およびフィールド絶縁膜28は、LOCOS法で形成してよく、半導体基板10のおもて面全体に形成した絶縁膜をパターニングして形成してもよい。
【0062】
次に、溝部形成段階S220で、素子絶縁膜24に溝部26を形成する。図4に示した溝部形成段階S202と同様に、溝部26は、マスク用絶縁膜60の開口62と同時に形成してよい。マスク用絶縁膜60は、CVD等により形成してよい。なお、開口62を形成した後の工程は、図4または図5に示した例と同様である。本例の製造工程で製造される半導体装置100によれば、リセス部64に素子絶縁膜24を形成するので、半導体基板10のおもて面における凹凸を低減できる。
【0063】
図7は、溝部26に形成されるダイオード18の配置例を示す上面図である。本例では、直列に接続された複数のダイオード18が、溝部26に配置される。溝部26内には、複数のダイオード18どうしを接続する配線も形成されてよい。両端に設けられたダイオード18が、それぞれ第1の配線20−1または第2の配線20−2を介して、第1のパッド22−1または第2のパッド22−2に接続する。第1の配線20−1および第2の配線20−2も、溝部26の内部に配置されてよい。
【0064】
図8Aおよび図8Bは、比較例としての半導体装置300を示す図である。図8Aおよび図8Bでは、半導体装置300のおもて面側の構造の概要を示しており、金属電極およびうら面側の構造を省略している。半導体装置300は、ダイオード118が、溝部を有さない素子絶縁膜124の上に配置されている。図8Aの例では、耐圧構造部12にLOCOS法で形成したフィールド絶縁膜28が配置されている。図8Bの例では、耐圧構造部12に半導体基板のおもて面上に形成されたフィールド絶縁膜28が配置されている。
【0065】
このため、半導体基板のおもて面に対するダイオード118の高さが大きくなり、ダイオード118近傍の層間絶縁膜148等の平坦性が悪くなる。このため、ダイオード118の近傍には微細パターンを形成することが困難であり、IGBT等のパワー半導体素子と、ダイオード118との距離D2を大きくしなければならない。この結果、パワー半導体素子を形成できる面積が減少してしまうか、または、チップサイズが増大してしまう。また、平坦性の劣化に起因して、パワー半導体素子における寸法バラツキ等が増大してしまう。
【0066】
特に温度検出用のダイオードは、温度検出精度を向上させるべくチップの中央に形成されることが多い。このため、温度検出用のダイオードの高さが大きくなると、周囲への影響が大きくなり、チップサイズが増大してしまう。
【0067】
これに対して半導体装置100によれば、半導体基板10のおもて面に対するダイオード18の高さを抑制できるので、IGBT等のパワー半導体素子と、ダイオード118との距離D1を小さくできる。
【0068】
また、素子絶縁膜124の厚みを減少させれば、ダイオード118の高さを低減できるが、素子絶縁膜124の厚みを減少させる工程を追加しなければならない。図4から図6に示した製造工程によれば、少ない工程で半導体装置100を製造することができる。
【0069】
以上の例においては、素子絶縁膜24の溝部26にダイオード18を配置する例を説明したが、溝部26に配置する素子はダイオード18に限定されない。例えばポリシリコンで形成したゲート電極等を溝部26に配置してよく、その他の素子を配置してもよい。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0071】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0072】
10・・・半導体基板、12・・・耐圧構造部、14・・・活性領域、16・・・パッド領域、18・・・ダイオード、20・・・配線、22・・・パッド、24・・・素子絶縁膜、26・・・溝部、28・・・フィールド絶縁膜、30・・・ガードリング、32・・・ドリフト領域、34・・・フィールドストップ層、36・・・コレクタ層、38・・・コレクタ電極、40・・・エミッタ領域、42・・・コンタクト領域、44・・・ベース領域、46・・・ゲートトレンチ、48・・・層間絶縁膜、50・・・ダイオード電極、50a・・・ダイオード電極、50b・・・ダイオード電極、52・・・エミッタ電極、54・・・電極、56・・・ゲート絶縁膜、58・・・ゲート電極、60・・・マスク用絶縁膜、62・・・開口、64・・・リセス部、100・・・半導体装置、118・・・ダイオード、124・・・素子絶縁膜、148・・・層間絶縁膜、300・・・半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B