(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選別工程は、高炉スラグの塩基度が、前記式(1)により算出される塩基度Bu(7日)の値以上である高炉スラグを高活性度高炉スラグとして選別し、前記式(1)により算出される塩基度Bu(7日)の値未満である高炉スラグを低活性度高炉スラグとして選別する工程を含む、請求項1又は2記載の高炉スラグの選別方法。
前記選別工程は、高炉スラグの塩基度が、前記式(2)により算出される塩基度Bu(28日)の値以上である高炉スラグを高活性度高炉スラグとして選別し、前記式(2)により算出される塩基度Bu(28日)の値未満である高炉スラグを低活性度高炉スラグとして選別する工程を含む、請求項4又は5記載の高炉スラグの選別方法。
高炉スラグの塩基度Bu(7日)もしくは塩基度Bu(28日)を算出する指標算出工程と、前記塩基度Bu(7日)もしくは前記塩基度Bu(28日)に基づいて高炉スラグを低活性スラグと高活性スラグとに選別する選別工程と、前記低活性スラグと前記高活性スラグとセメントとを混合する混合工程とを含む高炉セメントの製造方法であって、
前記指標算出工程が、モルタル材齢7日の活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を下記式(1)
Bu(7日)=(CaO+a×MgO+b×Al2O3)/SiO2−c×TiO2−d×MnO・・・(1)
(但し、式(1)中、CaO、Al2O3、MgO、SiO2、TiO及びMnOは高炉スラグ中の各化学成分の含有量(質量%)であり、aは0.05〜0.65、bは0.05〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する工程と、
モルタル材齢28日の活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を下記式(2)
Bu(28日)=(CaO+a×MgO+b×Al2O3)/SiO2−c×TiO2−d×MnO・・・(2)
(但し、式(2)中、CaO、Al2O3、MgO、SiO2、TiO2及びMnOは高炉スラグ中の各化学成分の含有量(質量%)であり、aは0.05〜0.65、bは−0.40〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する工程との少なくともいずれか一方を含み、
前記選別工程が、0〜1.70の範囲で設定した塩基度Bu(7日)の閾値により低活性スラグと高活性スラグとに選別する工程と、−0.2〜1.70の範囲で設定した塩基度Bu(28日)の閾値により低活性スラグと高活性スラグとに選別する工程との少なくともいずれか一方を含み、
前記混合工程が、前記塩基度Bu(7日)もしくは前記塩基度Bu(28日)が前記閾値以上となるように、前記低活性スラグと前記高活性スラグとを配合する工程を更に含むことを特徴とする、
高炉セメントの製造方法。
高炉スラグの塩基度Bu(7日)もしくは塩基度Bu(28日)を算出する指標算出工程と、前記塩基度Bu(7日)もしくは前記塩基度Bu(28日)に基づいて高炉スラグから低活性スラグを選別する選別工程と、前記低活性スラグとセメントとを混合する混合工程と、強度補完工程とを含む高炉セメントの製造方法であって、
前記指標算出工程が、モルタル材齢7日の活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を下記式(1)
Bu(7日)=(CaO+a×MgO+b×Al2O3)/SiO2−c×TiO2−d×MnO・・・(1)
(但し、式(1)中、CaO、Al2O3、MgO、SiO2、TiO及びMnOは高炉スラグ中の各化学成分の含有量(質量%)であり、aは0.05〜0.65、bは0.05〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する工程と、
モルタル材齢28日の活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を下記式(2)
Bu(28日)=(CaO+a×MgO+b×Al2O3)/SiO2−c×TiO2−d×MnO・・・(2)
(但し、式(2)中、CaO、Al2O3、MgO、SiO2、TiO2及びMnOは高炉スラグ中の各化学成分の含有量(質量%)であり、aは0.05〜0.65、bは−0.40〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する工程との少なくともいずれか一方を含み、
前記算出工程における低活性スラグの塩基度Bu(7日)が0〜1.70もしくはBu(28日)が−0.20〜1.70のいずれかの値であり、
前記選別工程が、0〜1.70の範囲で設定した塩基度Bu(7日)の閾値により低活性スラグを選別する工程と、−0.2〜1.70の範囲で設定した塩基度Bu(28日)の閾値により低活性スラグを選別する工程との少なくともいずれか一方を含む事を特徴とする、
高炉セメントの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の式(A)により算出される指標(Bm)や非特許文献1〜3の式(B)〜(F)により算出される塩基度(B
B)〜(B
F)よりも更に精度よく活性度指数を予測する指標が産業界から望まれている。
そこで、本発明は、高炉スラグを用いたセメントの活性度指数を精度よく予測することができ、優れた活性度指数を有するセメント原料としての高炉スラグを選別する指標となる塩基度を導き出す式を提案し、この指標となる塩基度に基づく、高炉スラグの選別方法及び高炉セメントの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、混合セメントには、更なる強度発現性の向上と、将来の混合材利用量増加に対応するための低活性混合材の有効利用とが求められている。そこで、本発明は、前記指標により選別された高炉スラグを使用しながらより強度発現性に優れた高炉セメントを提供する事と、前記指標により選別された低活性なスラグも有効利用して強度発現性の良好な高炉セメントを提供する事も目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、高炉スラグのTiO
2及びMnOとともに、JIS A6206に定められている塩基度((CaO+MgO+Al
2O
3)/SiO
2)に示される各化学成分のセメントの活性度指数に及ぼす影響を見直すことで、高炉スラグを選別する指標となる塩基度が算出される式を導き出すことができ、高炉スラグを用いたセメントの活性度指数を精度良く予測でき、優れた活性度指数を有するセメント原料として高炉スラグを選別し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は、モルタル材齢7日のセメントの活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を下記式(1)
Bu(7日)=(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnO・・・(1)
(但し、式(1)中、aは0.05〜0.65、bは0.05〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する指標算出工程と、指標となる塩基度Bu(7日)に基づいて高炉スラグを選別する選別工程を含む、高炉スラグの選別方法に関する。
本発明は、前記式(1)により算出される塩基度Bu(7日)が0〜1.70のいずれかの値である、高炉スラグの選別方法に関する。
本発明は、前記選別工程が、高炉スラグの塩基度が、前記式(1)により算出される塩基度Bu(7日)の値以上である高炉スラグを高活性度高炉スラグとして選別し、前記式(1)により算出される塩基度Bu(7日)の値未満である高炉スラグを低活性度高炉スラグとして選別する工程を含む、高炉スラグの選別方法に関する。
【0017】
本発明は、モルタル材齢28日のセメントの活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を下記式(2)
Bu(28日)=(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnO・・・(2)
(但し、aは0.05〜0.65、bは−0.40〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する指標算出工程と、指標となる塩基度Bu(28日)に基づいて高炉スラグを選別する選別工程を含む、高炉スラグの選別方法に関する。
本発明は、前記式(2)により算出される塩基度Bu(28日)が−0.20〜1.70のいずれかの値である、高炉スラグの選別方法に関する。
本発明は、前記選別工程が、高炉スラグの塩基度が、前記式(2)により算出される塩基度Bu(28日)の値以上である高炉スラグを高活性度高炉スラグとして選別し、前記式(2)により算出される塩基度Bu(28日)の値未満である高炉スラグを低活性度高炉スラグとして選別する工程を含む、高炉スラグの選別方法に関する。
【0018】
本発明は、モルタル材齢7日の高炉スラグの活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を下記式(1)
Bu(7日)=(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnO・・・(1)
(但し、式(1)中、aは0.05〜0.65、bは0.05〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する指標算出工程と、指標となる塩基度Bu(7日)に基づいて高炉スラグを選別する選別工程と、前記選別された高炉スラグとセメントとを混合し高炉セメントを製造する製造工程とを含み、前記式(1)により算出される高炉スラグの塩基度Bu(7日)が0〜1.70のいずれかの値であり、前記選別工程において、高炉スラグの塩基度が、前記塩基度Bu(7日)の値以上である高炉スラグを高活性度高炉スラグとして選別し、前記塩基度Bu(7日)の値未満である高炉スラグを低活性度高炉スラグとして選別する工程を含む、高炉セメントの製造方法に関する。
【0019】
本発明は、モルタル材齢28日のセメントの活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を下記式(2)
Bu(28日)=(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnO・・・(2)
(但し、式(2)中、aは0.05〜0.65、bは−0.40〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する指標算出工程と、指標となる塩基度Bu(28日)に基づいて高炉スラグを選別する選別工程と、前記選別された高炉スラグとセメントとを混合し高炉セメントを製造する製造工程とを含み、前記式(2)により算出された高炉スラグの塩基度Bu(28日)が−0.20〜1.70のいずれかの値であり、前記選別工程において、高炉スラグの塩基度が、前記塩基度Bu(28日)の値以上である高炉スラグを高活性度高炉スラグとして選別し、前記塩基度Bu(28日)の値未満である高炉スラグを低活性度高炉スラグとして選別する工程を含む、高炉セメントの製造方法に関する。
【0020】
本発明は、高炉スラグの塩基度Bu(7日)もしくは塩基度Bu(28日)を算出する指標算出工程と、前記塩基度Bu(7日)もしくは前記塩基度Bu(28日)に基づいて高炉スラグを低活性スラグと高活性スラグとに選別する選別工程と、前記低活性スラグと前記高活性スラグとセメントとを混合する混合工程とを含む高炉セメントの製造方法であって、
前記指標算出工程が、モルタル材齢7日の活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を前記式(1)により算出する工程と、モルタル材齢28日の活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を前記式(2)により算出する工程との少なくともいずれか一方を含み、
前記選別工程が、0〜1.70の範囲で設定した塩基度Bu(7日)の閾値により低活性スラグと高活性スラグとに選別する工程と、−0.2〜1.70の範囲で設定した塩基度Bu(28日)の閾値により低活性スラグと高活性スラグとに選別する工程との少なくともいずれか一方を含み、
前記混合工程が、前記塩基度Bu(7日)もしくは前記塩基度Bu(28日)が前記閾値以上となるように、前記低活性スラグと前記高活性スラグとを配合する工程を更に含むことを特徴とする、高炉セメントの製造方法に関する。
【0021】
本発明は、高炉スラグの塩基度Bu(7日)もしくは塩基度Bu(28日)を算出する指標算出工程と、前記塩基度Bu(7日)もしくは前記塩基度Bu(28日)に基づいて高炉スラグから低活性スラグを選別する選別工程と、前記低活性スラグとセメントとを混合する混合工程と、強度補完工程とを含む高炉セメントの製造方法であって、
前記指標算出工程が、モルタル材齢7日の活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を前記式(1)により算出する工程と、モルタル材齢28日の活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を前記式(2)により算出する工程との少なくともいずれか一方を含み、
前記算出工程における低活性スラグの塩基度Bu(7日)が0〜1.70もしくはBu(28日)が−0.20〜1.70のいずれかの値であり、
前記選別工程が、0〜1.70の範囲で設定した塩基度Bu(7日)の閾値により低活性スラグを選別する工程と、−0.2〜1.70の範囲で設定した塩基度Bu(28日)の閾値により低活性スラグを選別する工程との少なくともいずれか一方を含む事を特徴とする、高炉セメントの製造方法に関する。
【0022】
本発明は、前記高炉セメントの製造方法において、前記強度補完工程が、高炉スラグの粉末度を調整する工程と、ポルトランドセメントの粉末度を調整する工程と、高炉セメントの粉末度を調整する工程とからなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の工程を含むことを特徴とする、高炉セメントの製造方法に関する。
本発明は、前記高炉セメントの製造方法において、前記強度補完工程が、塩素を含む無機物質の添加量を調整する工程を含むことを特徴とする、高炉セメントの製造方法に関する。
本発明は、前記高炉セメントの製造方法において、前記強度補完工程が、石膏の添加量を調整する工程を含むことを特徴とする、高炉セメントの製造方法に関する。
本発明は、前記高炉セメントの製造方法において、前記強度補完工程が、石灰石の添加量を調整する工程を含むことを特徴とする、高炉セメントの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の高炉スラグの選別方法によれば、高炉スラグの品質がばらついても、モルタル活性度指数を精度良く予測でき、優れた活性度指数を有するセメント原料として使用可能な良好な高炉スラグを選別する方法を提供することができる。また、本発明の高炉セメントの製造方法によれば、良好な高炉スラグを選別し、選別した高炉スラグをセメント原料として使用することによって、品質の良い高炉セメントを製造する製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0026】
<高炉スラグの選別方法>
本実施形態の高炉スラグの選別方法は、高炉スラグの化学成分に基づき、モルタル材齢7日のセメントの活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を式(1)により算出する指標算出工程と、その指標となる塩基度Bu(7日)に基づいて高炉スラグを選別する選別工程とを含む。
Bu(7日)=(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnO・・・(1)
(但し、式(1)中、aは0.05〜0.65、bは0.05〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
【0027】
高炉スラグの化学成分は、高炉スラグを原料として用いたセメントの強度発現性に影響を及ぼす。高炉スラグを原料として用いたセメントの強度発現性の指標として、例えば、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」にモルタルの活性度指数が示されている。活性度指数は、標準モルタルの圧縮強度に対する試験モルタルの圧縮強度の比を百分率で表した数値である。標準モルタルは、通常、普通ポルトランドセメントを使用したモルタルである。試験モルタルは、高炉スラグ(高炉水砕スラグ(微粉末))と普通ポルトランドセメントを1:1で配合した高炉セメントを使用したモルタルである。この高炉セメントを使用した試験モルタルの圧縮強度S1(N/mm
2)と、普通ポルトランドセメントを使用した標準モルタルの圧縮強度S(N/mm
2)から下記式(3)に示すように、活性度指数(%)を算出することができる。
活性度指数(%)=S1(試験モルタルの圧縮強度)/S(標準モルタルの圧縮強度)×100・・・(3)
【0028】
高炉スラグを原料として用いたセメントの強度発現性等の活性度指数を予測する指標として、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」には、高炉スラグの化学成分に基づいて算出される下記式(S)で示すJIS塩基度(B
JIS)が示されている。このJIS塩基度は、高炉スラグを原料として用いたセメントの活性度指数の代表的な指標として、知られている。JIS塩基度(B
JIS)は、高炉スラグ中の化学成分のうち、CaO、MgO、SiO
2及びAl
2O
3の含有量から求めることができる。
JIS塩基度(B
JIS)=(CaO+MgO+Al
2O
3)/SiO
2・・・(S)
【0029】
本明細書において、高炉スラグのCaO、MgO、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、MnO等の化学成分の含有量は、JIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」又はJIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」に準拠して測定することができる。
【0030】
高炉スラグのJIS塩基度(B
JIS)と、この高炉スラグを原料として用いたセメントの活性度指数との相関は、ばらつきが大きく、JIS A 6202「コンクリート用高炉スラグ微粉末」では、塩基度が1.60以上と下限値が高めに設定されている。高炉スラグのJIS塩基度(B
JIS)と活性度指数との関係では、活性度指数が十分に高い場合であっても、高炉スラグのJIS塩基度(B
JIS)の下限値が高めに設定されているため、高めに設定されたJIS塩基度(B
JIS)の下限値を下回る高炉スラグは、セメント原料として使用することができない。
【0031】
活性度指数と相関の強い塩基度群を予測して高炉スラグを選別するために、高炉スラグ中のTiO
2量及びMnO量の活性度指数への影響を考慮し、下記式(A)により算出した指標(Bm)を選別基準に用いた高炉スラグの選別方法が提案されている。
指標(Bm)=(CaO+MgO+Al
2O
3)/SiO
2−0.13×TiO
2−MnO・・・(A)
【0032】
しかしながら、式(A)により算出された指標(Bm)を選別基準に用いた場合、活性度指数と指標(Bm)との関係にはばらつきが見られる。そのため活性度指数と相関の強い指標が求められている。本発明は、セメントの活性度指数と相関が強く、優れた活性度指数を有するセメントの原料としての高炉スラグを選別することができる指標として、式(1)により算出される塩基度Bu(7日)又は式(2)により算出される塩基度Bu(28日)を規定し、この指標となる塩基度Bu(7日)又は塩基度Bu(28日)に基づいて、高炉スラグを精度よく選別することができる。
【0033】
本発明は、高炉スラグを選別する指標として用いる塩基度を導く式において、セメントの活性度指数に強く影響する高炉スラグの化学成分を見出した。本発明は、高炉スラグを用いたセメントの活性度指数と強い相関を有する高炉スラグの塩基度群を予測することができ、活性度の高いセメントの原料として使用し得る高炉スラグを精度よく選別し得る式(1)及び式(2)を規定した。
【0034】
本発明の指標算出工程において、下記式(1)により算出する塩基度Bu(7日)群は、モルタル材齢7日の活性度指数と相関が強く、活性度指数を精度よく予測するための指標として用いることができる。本発明の指標算出工程は、下記式(1)により高炉スラグの塩基度Bu(7日)を算出し、この塩基度Bu(7日)の値から、優れた活性度指数を有する高炉セメントを得るための高炉スラグを選別することができる。
Bu(7日)=(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnO ・・・(1)
(但し、式(1)中、aは0.05〜0.65、bは0.05〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
【0035】
式(1)中、CaO、Al
2O
3、MgO、SiO
2、TiO及びMnOは高炉スラグ中の各化学成分の含有量である。また、式(1)中、aは0.05〜0.65、好ましくはaは0.20〜0.60、より好ましくはaは0.35〜0.55、最も好ましくはaは0.37〜0.50である。式(1)中、bは0.05〜0.95、好ましくはbは0.10〜0.70、より好ましくはbは0.20〜0.60、最も好ましくはbは0.20〜0.31である。式(1)中、cは0.15〜2.00、好ましくはcは0.25〜1.00、より好ましくはcは0.30〜0.55、最も好ましくはcは0.35〜0.52である。式(1)中、dは0.05〜0.95、好ましくはdは0.08〜0.50、より好ましくはdは0.13〜0.35、最も好ましくはdは0.15〜0.35である。
【0036】
式(1)中、MgO量の係数aが0.05〜0.65、最も好ましくは0.37〜0.50、Al
2O
3量の係数bが0.05〜0.95、最も好ましくは0.20〜0.31、TiO
2量の係数cが0.15〜2.00、最も好ましくは0.35〜0.52、MnO量の係数dが0.05〜0.95、最も好ましくは0.15〜0.35であると、モルタル材齢7日において、優れた活性度指数を有するセメントの原料として高炉スラグを選別することができる。本発明は、高炉スラグの少量の化学成分であるTiO
2量及びMnO量を考慮するとともに、MgO量及びAl
2O
3量が、高炉セメントの活性度指数に及ぼす影響を見直し、活性度指数を精度よく予測するための指標を新たに見出した。本発明は、塩基度Bu(7日)を導く式(1)において、高炉スラグのTiO
2量及びMnO量がセメントの活性度指数に及ぼす影響を考慮して、TiO
2量の係数c及びMnO量の係数dを新たに見出した。また、本発明は、塩基度Bu(7日)を導く式(1)において、高炉スラグのMgO量及びAl
2O
3量が、セメントの活性度指数へ及ぼす影響を見直し、活性度指数を精度よく予測するためのMgO量の係数a及びAl
2O
3量の係数bを新たに見出した。本発明は、モルタル材齢7日の活性度指数と強い相関がある高炉スラグの塩基度Bu(7日)を式(1)により算出することができ、この高炉スラグの塩基度Bu(7日)を指標として、優れた活性度指数を有するセメントの原料として、良好な高炉スラグを選別することができる。
【0037】
高炉スラグ中のMnOは、高炉スラグの活性低下に影響する。式(1)中の高炉スラグのMnO量の係数dが0.05〜0.95であると、高炉スラグの活性低下に影響するMnO量のモルタル材齢7日の活性度指数への影響を考慮し、活性度指数と強い相関があり、活性度指数のばらつきが最も小さくなる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を導き出すことができる。式(1)の高炉スラグのMnO量の係数dは、従来の式(A)により算出される指標(Bm)におけるMnO量の係数よりも小さい値である。
【0038】
高炉スラグ中のTiO
2は、高炉スラグの活性低下に影響する。式(1)中の高炉スラグのTiO
2量の係数cが0.15〜2.00であると、高炉スラグの活性低下に影響するTiO
2量のモルタル材齢7日の活性度指数への影響を考慮し、活性度指数と強い相関があり、活性度指数のばらつきが最も小さくなる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を導き出すことができる。高炉スラグ中のTiO
2量の活性度指数への影響は大きく、式(1)の高炉スラグのTiO
2量の係数cは、従来の式(A)により算出される指標(Bm)におけるTiO
2量の係数よりも大きな値である。
【0039】
高炉スラグ中のMgOは、高炉スラグの活性向上に寄与する。式(1)中の高炉スラグのMgO量の係数aが0.05〜0.65であると、高炉スラグの活性向上に寄与するMgO量のモルタル材齢7日の活性度指数への影響を考慮し、活性度指数と強い相関があり、活性度指数のばらつきが最も小さくなる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を導き出すことができる。式(1)の高炉スラグのMgO量の係数aは、従来の式(S)より算出されるJIS塩基度(B
JIS)におけるMgO量の係数又は式(A)により算出される指標(Bm)におけるMgO量の係数よりも小さい値である。
【0040】
高炉スラグ中のAl
2O
3は、高炉スラグの活性向上に寄与する。式(1)中の高炉スラグのAl
2O
3量の係数bが0.05〜0.95であると、高炉スラグの活性向上に寄与するAl
2O
3量のモルタル材齢7日の活性度指数への影響を考慮し、活性度指数と強い相関があり、活性度指数のばらつきが最も小さくなる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を導き出すことができる。式(1)の高炉スラグのAl
2O
3量の係数bは、従来の式(S)により算出されるJIS塩基度(B
JIS)又は式(A)により算出される指標(Bm)におけるAl
2O
3量の係数よりも小さい値である。
【0041】
例えば、式(1)の係数が、a=0.43、b=0.28、c=0.46、d=0.27のときに算出される塩基度Bu(7日)を横軸に、モルタル材齢7日の活性度指数を縦軸にとった場合の回帰直線と実測値との活性度指数の差(活性度指数のばらつき)は−6.8〜5.6%であり、Buは活性度指数と強い相関を示す。
【0042】
式(1)により算出される塩基度Bu(7日)は、0〜1.70であることが好ましい。式(1)により算出される塩基度Bu(7日)は、より好ましくは0.60〜1.30、さらに好ましくは0.80〜1.30、特に好ましくは0.90〜1.30である。式(1)により算出される塩基度Bu(7日)が、さらに好ましくは0.80〜1.30であると、セメントの活性度指数と高炉スラグの塩基度の相関が強く、高い活性度を有するセメントを得るための原料として、品質が良く、均質な高炉スラグを選別することができる。
【0043】
式(1)により算出される塩基度Bu(7日)が0〜1.70である場合は、CaO/SiO
2、MgO/SiO
2、Al
2O
3/SiO
2、TiO
2、MnOの各項を独立変数とし、セメントの活性度指数を従属変数とした場合の重回帰分析の結果から式(1)におけるMgOの係数a、Al
2O
3の係数b、TiO
2の係数c、MnOの係数dを定めることができる。式(1)により算出される塩基度Bu(7日)は、例えば、係数がa=0.43、b=0.28、c=0.46、d=0.27のとき、この塩基度Bu(7日)と活性度指数との回帰直線から実測値を引いた値が−6.8〜5.6%であり、活性度指数と強い相関を有し、良好な高炉スラグを選別する指標として用いることができる。
【0044】
本実施形態の高炉スラグの選別方法は、高炉スラグの化学成分に基づき、モルタル材齢28日のセメントの活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を式(2)により算出する指標算出工程と、その指標となる塩基度Bu(28日)に基づいて高炉スラグを選別する選別工程とを含む。
Bu(28日)=(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnO・・・(2)
(但し、式(2)中、aは0.05〜0.65、bは−0.40〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
【0045】
本発明の指標算出工程において、式(2)により算出する塩基度Bu(28日)群は、モルタル材齢28日の活性度指数と相関が強く、活性度指数を精度よく予測するための指標として用いることができる。本発明の指標算出工程は、式(2)により高炉スラグの塩基度Bu(28日)を算出し、この塩基度Bu(28日)の値から、高い活性度指数を有する高炉セメントを得るための高炉スラグを選別することができる。
【0046】
式(2)中、CaO、Al
2O
3、MgO、SiO
2、TiO
2及びMnOは高炉スラグ中の各化学成分の含有量である。また、式(2)中、aは0.05〜0.65、好ましくはaは0.25〜0.55、より好ましくはaは0.35〜0.50、最も好ましくはaは0.37〜0.50である。式(2)中、bは−0.40〜0.95、好ましくはbは−0.30〜0.90、より好ましくはbは−0.25〜0.85、最も好ましくはbは−0.25〜0.31である。式(2)中、cは0.15〜2.00、好ましくはcは0.40〜1.30、より好ましくはcは0.50〜0.85、最も好ましくはcは0.50〜0.80である。式(2)中、dは0.05〜0.95、好ましくはdは0.08〜0.50、より好ましくはdは0.10〜0.25、最も好ましくはdは0.10〜0.23である。
【0047】
式(2)中、MgO量の係数aが0.05〜0.65、最も好ましくはaが0.37〜0.50、Al
2O
3量の係数bが−0.40〜0.95、最も好ましくはbが−0.25〜0.31、TiO
2量の係数cが0.15〜2.00、最も好ましくはcが0.50〜0.80、MnO量の係数dが0.05〜0.95、最も好ましくはdが0.10〜0.23であると、モルタル材齢28日において、優れた活性度指数を有するセメントの原料として高炉スラグを選別することができる。本発明は、高炉スラグの微量の化学成分であるTiO
2量及びMnO量を考慮するとともに、MgO量及びAl
2O
3量が、高炉セメントの活性度指数に及ぼす影響を見直し、活性度指数を精度よく予測するための指標を新たに見出した。本発明は、塩基度Bu(28日)を導く式(2)において、高炉スラグのTiO
2量及びMnO量がセメントの活性度指数に及ぼす影響を考慮して、TiO
2量の係数c及びMnO量の係数dを新たに見出した。また、本発明は、塩基度Bu(28日)を導く式(2)において、高炉スラグのMgO量及びAl
2O
3量が、セメントの活性度指数へ及ぼす影響を見直し、活性度指数を精度よく予測するためのMgO量の係数a及びAl
2O
3量の係数bを新たに見出した。本発明は、モルタル材齢28日の活性度指数と強い相関がある高炉スラグの塩基度Bu(28日)を式(2)により算出することができ、この高炉スラグの塩基度Bu(28日)を指標として、活性度指数の優れたセメントの原料として、良好な高炉スラグを選別することができる。
【0048】
高炉スラグ中のMnOは、高炉スラグの活性低下に寄与する。式(2)中の高炉スラグのMnO量の係数dが0.05〜0.95であると、高炉スラグの活性低下に寄与するMnO量のモルタル材齢28日の活性度指数への影響を考慮し、活性度指数と強い相関があり、活性度指数のばらつきが最も小さくなる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を導き出すことができる。式(2)の高炉スラグのMnO量の係数dは、従来の式(A)により算出される指標(Bm)におけるMnO量の係数よりも小さい値である。
【0049】
高炉スラグ中のTiO
2は、高炉スラグの活性低下に寄与する。式(2)中の高炉スラグのTiO
2量の係数cが0.15〜2.00であると、高炉スラグの活性低下に寄与するTiO
2量のモルタル材齢7日の活性度指数への影響を考慮し、活性度指数と強い相関があり、活性度指数のばらつきが最も小さくなる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を導き出すことができる。高炉スラグ中のTiO
2量の活性度指数への影響は大きく、式(2)の高炉スラグのTiO
2量の係数cは、従来の式(A)により算出される指標(Bm)におけるTiO
2量の係数よりも大きな値である。
【0050】
高炉スラグ中のMgOは、高炉スラグの活性向上に寄与する。式(2)中の高炉スラグのMgO量の係数aが0.05〜0.65であると、高炉スラグの活性向上に寄与するMgO量のモルタル材齢28日の活性度指数への影響を考慮し、活性度指数と強い相関があり、活性度指数のばらつきが最も小さくなる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を導き出すことができる。式(2)の高炉スラグのMgO量の係数aは、従来の式(S)より算出されるJIS塩基度(B
JIS)又は式(A)により算出される指標(Bm)におけるMgO量の係数よりも小さい値である。
【0051】
高炉スラグ中のAl
2O
3は、高炉スラグの活性向上に寄与する。式(2)中の高炉スラグのAl
2O
3量の係数bが−0.40〜0.95であると、高炉スラグの活性向上に寄与するAl
2O
3量のモルタル材齢28日の活性度指数への影響を考慮し、活性度指数と強い相関があり、活性度指数のばらつきが最も小さくなる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を導き出すことができる。式(2)の高炉スラグのAl
2O
3量の係数bは、従来の式(S)により算出されるJIS塩基度(B
JIS)又は式(A)により算出される指標(Bm)におけるAl
2O
3量の係数よりも小さい値である。
【0052】
例えば、式(2)の係数が、a=0.42、b=−0.16、c=0.60、d=0.14のときに算出される塩基度Bu(28日)を横軸に、モルタル材齢28日の活性度指数を縦軸にとった場合の回帰直線から実測値を引いた値が−5.2〜5.2%であり、Buは活性度指数と強い相関を示す。
【0053】
式(2)により算出される塩基度Bu(28日)は、−0.20〜1.70であることが好ましい。式(2)により算出される塩基度Bu(28日)は、より好ましくは0.60〜1.30、さらに好ましくは0.65〜1.20、特に好ましくは0.65〜1.10である。式(2)により算出される塩基度Bu(28日)が、さらに好ましくは0.65〜1.20であると、セメントの活性度指数と高炉スラグの塩基度の相関が強く、高い活性度を有するセメントを得るための原料として、品質が良く、均質な高炉スラグを選別することができる。
【0054】
式(2)により算出される塩基度Bu(28日)が−0.20〜0〜1.70である場合は、CaO/SiO
2、MgO/SiO
2、Al
2O
3/SiO
2、TiO
2、MnOの各項を独立変数とし、セメントの活性度指数を従属変数とした場合の重回帰分析の結果から式(2)におけるMgOの係数a、Al
2O
3の係数b、TiO
2の係数c、MnOの係数dを定めることができる。式(2)により算出される塩基度Bu(28日)は、例えば、係数がa=0.42、b=−0.16、c=0.60、d=0.14のとき、この塩基度Bu(28日)と活性度指数との回帰直線から実測値を引いた値が−5.2〜5.2%であり、活性度指数と強い相関を有し、良好な高炉スラグを選別する指標として用いることができる。
【0055】
本発明の選別工程において、式(1)により算出される塩基度Bu(7日)又は式(2)により算出される塩基度Bu(28日)に基づいて、高炉スラグを選別することができる。式(1)により算出される塩基度Bu(7日)又は式(2)により算出される塩基度Bu(28日)から、高炉スラグを用いたセメントの活性度指数を予測することができ、高い活性度指数を有するセメントの原料として高炉スラグを選別することができる。本発明の選別工程によれば、品質が良く、均質な高炉スラグを選別することが可能となる。選別工程における高炉スラグの選別は、任意の高炉スラグをサンプリングし、塩基度Buを求めた後、良好な塩基度Buを示した高炉スラグと同一のロットの高炉スラグを選別する等の方法が挙げられる。
【0056】
<高炉セメントの製造方法>
次に、本発明の高炉セメントの製造方法について説明する。
高炉セメントの製造方法は、選別工程までは、上述した高炉スラグの選別方法と同じ工程を経れば良い。
【0057】
本発明は、モルタル材齢7日のセメントの活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(7日)を下記式(1)
Bu(7日)=(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnO・・・(1)
(但し、式(1)中、aは0.05〜0.65、bは0.05〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する指標算出工程と、指標となる塩基度Bu(7日)に基づいて高炉スラグを選別する選別工程と、前記選別された高炉スラグとセメントとを混合し高炉セメントを製造する製造工程とを含む。
【0058】
本発明の高炉セメントの製造方法は、式(1)により算出される高炉スラグの塩基度Bu(7日)が0〜1.70のいずれかの値であり、選別工程において、高炉スラグの塩基度が、塩基度Bu(7日)の値以上である高炉スラグを高活性度高炉スラグとして選別し、塩基度Bu(7日)の値未満である高炉スラグを低活性度高炉スラグとして選別する工程を含む。本発明の高炉セメントの製造方法によれば、高炉セメントに要求される活性度指数に応じて、高活性度高炉スラグと低活性度高炉スラグとの配合量を調整して、要求される活性度指数を有する高炉セメントを製造することができる。例えば、式(1)により算出される塩基度Bu(7日)が0〜1.70のいずれかの値であり、この値未満の塩基度である低活性度高炉スラグは、塩基度Bu(7日)の値以上の塩基度である高活性度高炉スラグと混合して用いることができる。
【0059】
本発明は、モルタル材齢28日のセメントの活性度指数の指標となる高炉スラグの塩基度Bu(28日)を下記式(2)
Bu(28日)=(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnO・・・(2)
(但し、式(2)中、aは0.05〜0.65、bは−0.40〜0.95、cは0.15〜2.00、dは0.05〜0.95である。)
により算出する指標算出工程と、指標となる塩基度Bu(28日)に基づいて高炉スラグを選別する選別工程と、前記選別された高炉スラグとセメントとを混合し高炉セメントを製造する製造工程とを含む。
【0060】
本発明の高炉セメントの製造方法は、式(2)により算出された高炉スラグの塩基度Bu(28日)が−0.20〜1.70のいずれかの値であり、選別工程において、高炉スラグの塩基度が、塩基度Bu(28日)の値以上である高炉スラグを高活性度高炉スラグとして選別し、塩基度Bu(28日)の値未満である高炉スラグを低活性度高炉スラグとして選別する工程を含む。本発明の高炉セメントの製造方法によれば、高炉セメントに要求される活性度指数に応じて、高活性度高炉スラグと低活性度高炉スラグとの配合量を調整して、要求される活性度指数を有する高炉セメントを製造することができる。例えば、式(2)により算出される塩基度Bu(28日)が−0.20〜1.70のいずれかの値であり、この値未満の塩基度である低活性度高炉スラグは、塩基度Bu(28日)の値以上の塩基度である高活性度高炉スラグと混合して用いることができる。
【0061】
本発明のセメントの製造工程の実施形態としては、選別した高炉スラグを粉砕した後、セメントを混合して高炉セメントを製造する方法や、選別された高炉スラグとセメントの混合と粉砕とを同時に行い高炉セメントを製造する方法等が挙げられる。セメント製造工程において、セメントと混合する高炉スラグの量を調整することによって、モルタル活性度指数を調節することも可能である。
【0062】
本発明の高炉セメントの製造方法は、さらに強度補完工程を含むことで、高炉セメントの強度発現性をより高めるとともに、塩基度Buの低い高炉スラグをも有効利用することができる。前記強度補完工程としては、高炉スラグの粉末度を調整する工程、ポルトランドセメントの粉末度を調整する工程、高炉セメントの粉末度を調整する工程、塩素を含む無機物質の添加量を調整する工程、石膏の添加量を調整する工程や石灰石の添加量を調整する工程などがあり、これらの2つ以上を組み合わせることもできる。なお、粉末度の調整には各種の粉砕方法を用いる事ができるが、例えばチューブミルや振動ミル、竪型ミル等を使用できる。
【0063】
前記塩素を含む無機物質とは、塩素バイパスダストや電気集塵ダスト、NaCl、KCl、CaCl
2等、塩素を含有するものである。
無機物質の添加量は、高炉セメント中の塩素含有量が好ましくは30〜350mg/kg、より好ましくは40〜320mg/kg、さらに好ましくは50〜300mg/kg、特に好ましくは60〜250mg/kgになるよう調整する。
【0064】
本発明の高炉セメントの製造方法によって得られる高炉セメントは、ブレーン比表面積が、好ましくは3000〜4800cm
2/g、より好ましくは3100〜4700cm
2/g、さらに好ましくは3200〜4600cm
2/g、特に好ましくは3300〜4500cm
2/gである。
高炉セメントのブレーン比表面積は、強度発現性に影響し、本発明の製造方法によって得られる高炉セメントのブレーン比表面積がさらに好ましくは3200〜4600cm
2/gとなるように、十分粉砕することによって、活性度指数の良好な高炉セメントを得ることができる。
【0065】
本発明の高炉セメントの製造方法においては、高炉スラグと混合するセメントとして種々のポルトランドセメントを使用することができるが、入手のし易さから、普通ポルトランドセメントを用いることが好ましい。また、セメントのブレーン比表面積の下限値は、強度発現性の観点から、好ましくは2800cm
2/g、より好ましくは3000cm
2/g、さらに好ましくは3300cm
2/g、特に好ましくは3500cm
2/gである。また、セメントのブレーン比表面積の上限値は、流動性保持の観点から、好ましくは5000cm
2/g、より好ましくは4500cm
2/g、特に好ましくは4000cm
2/gである。
【0066】
本発明の高炉セメントの製造方法によって得られる高炉セメントは、強度発現性の観点から、高炉スラグのブレーン比表面積の下限値が好ましくは3000cm
2/g、より好ましくは3500cm
2/g、さらに好ましくは4100cm
2/g、特に好ましくは4300cm
2/gである。また、流動性保持の観点から、その上限値は好ましくは9000cm
2/g、より好ましくは7000cm
2/g、さらに好ましくは5000cm
2/g、特に好ましくは4600cm
2/gである。
【0067】
本発明の高炉セメントの製造方法は、セメントクリンカーを製造する工程と、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグとを混合し、粉砕してセメントを得る工程を含んでいてもよい。セメントを得る工程において使用される高炉スラグは、式(1)により算出された塩基度Bu(7日)又は式(2)により算出された塩基度Bu(28日)を指標として選別された高炉スラグを除く。
【0068】
本発明の高炉セメントの製造方法によって得られる高炉セメントは、石膏の添加量がSO
3ベースで1.4〜2.3%、好ましくは1.45〜2.0質量%、より好ましくは1.5〜1.8%、さらに好ましくは1.55〜1.7質量%である。この範囲であれば強度発現性に優れる高炉セメントを提供することができる。
【0069】
本発明の高炉セメントの製造方法として、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグを混合する工程において、さらに少量の混合材を添加してもよい。混合材は、JIS R 5211「高炉セメント」に規定される高炉スラグ、JIS R 5212「シリカセメント」に規定されるシリカ質混合材、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるフライアッシュ、JIS R 5210「ポルトランドセメント」に規定される石灰石を利用することができる。
【0070】
本発明の高炉セメントの製造方法によって得られる高炉セメントは、石灰石の添加量が1〜6質量%、好ましくは1.5〜5.5質量%、より好ましくは2〜5質量%、さらに好ましくは2.5〜4.5質量%である。この範囲であれば強度発現性に優れる高炉セメントを提供することができる。
【0071】
セメントクリンカーを製造する工程は、石灰石、硅石、石炭灰、粘土、高炉スラグ、建設発生土、下水汚泥、銅からみ及び焼却灰からなる群より選ばれる原料を混合し、焼成してセメントクリンカーを製造する。
【0072】
セメントクリンカーは、SP方式(多段サイクロン予熱方式)又はNSP方式(仮焼炉を併設した多段サイクロン予熱方式)等の既存のセメント製造設備を用いて、製造することができる。
【0073】
本発明のセメントクリンカーと石膏と高炉スラグと少量混合物などを混合する方法としては、特に制限されるものではなく、セメントクリンカーと石膏と高炉スラグとを混合粉砕する方法や、セメントクリンカーと石膏とを混合粉砕後、別粉砕したスラグとを混合する方法等があげられる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0075】
○試製スラグでの評価
1.試製の水砕スラグの製造
表1に示す化学成分が異なる水砕スラグを電気炉で加熱して作製した。表1の化学成分は、水砕スラグを製造するための試薬の量(質量%)である。水砕スラグの原料には試薬を用い(CaCO
3、Al
2O
3、SiO
2、Fe
2O
3、MgO、TiO
2、MnO、Na
2O、K
2O)、調合した原料はカーボン坩堝に入れてカーボン製の蓋をし、1000℃で15分間脱炭酸した後、50℃/分で1500℃まで昇温し、その温度で30分間加熱した。その後、溶融した試料を水中に投入し、水砕スラグとした。水中から取り出した水砕スラグは105℃で乾燥し、ブレーン比表面積が4300±100cm
2/gとなるようにボールミルで粉砕した。製造した水砕スラグは試製スラグとした。
本例において、試製スラグの化学成分は、試薬の量(質量%)を表1に示したが、水砕スラグの化学成分の含有量は、JIS R 5202「ポルトランドセメントの化学分析方法」又はJIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」に準拠して測定することができる。
【0076】
2.試製スラグを用いた高炉セメントの製造
各試製スラグと市販のポルトランドセメントを1:1の割合で混合し、各高炉セメントを製造した。高炉セメントは、ブレーン比表面積が4300±100cm
2/gである。
【0077】
3.モルタル活性度指数
各試製スラグを用いて製造した高炉セメントに、更に砂、水を加え混合してモルタルを製造した。砂は、セメント試験用標準砂を使用した。水は、水道水を使用した。高炉セメント450g、砂1350g、水225gを配合し、モルタルを製造した。材齢7日モルタル、材齢28日モルタルの活性度指数は、JIS A 6206:2013「コンクリート用高炉スラグ微粉末」の付属書に記載されている「高炉スラグ微粉末のモルタルによる活性度指数およびフロー値比の試験方法」に準拠して測定した。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
各試製スラグの各化学成分に基づき、CaO/SiO
2、MgO/SiO
2、Al
2O
3/SiO
2、TiO
2、MnOの各項を独立変数とし、モルタル材齢7日の活性度指数又はモルタル材齢28日の活性度指数を従属変数として重回帰分析を行った。重回帰分析から求めた独立変数の各項の係数について、CaO/SiO
2の係数ですべての項の係数を除し、その値を(CaO+a×MgO+b×Al
2O
3)/SiO
2−c×TiO
2−d×MnOの係数として、モルタル材齢7日又はモルタル材齢28日に分けて、それぞれ求めた。式(1)は、モルタル材齢7日の活性度指数を使用して重回帰分析から各化学成分の係数を求めた。式(2)は、モルタル材齢28日の活性度指数を使用して重回帰分析から各化学成分の係数を求めた。式(1)により算出される塩基度Bu(7日)又は式(2)により算出される塩基度Bu(28日)は、JIS A 6202に規定される式(S)により算出されるJIS塩基度(B
JIS)や従来の式(A)により算出される塩基度(Bm)よりも、MgOの係数a、Al
2O
3の係数b及びMnO係数dが小さいことから、これらの高炉スラグ中の化学成分の活性度指数に及ぼす影響は小さい。また、式(1)により算出される塩基度Bu(7日)又は式(2)により算出される塩基度Bu(28日)は、従来の式(A)により算出される塩基度(Bm)よりも、TiO
2の係数cが大きいことから、高炉スラグ中のTiO
2の活性度指数に及ぼす影響は大きい。
【0080】
Bu(7日)=(CaO+0.43×MgO+0.28×Al
2O
3)/SiO
2−0.46×TiO
2−0.27×MnO・・・(1’)
Bu(28日)=(CaO+0.42×MgO−0.16×Al
2O
3)/SiO
2−0.60×TiO
2−0.14×MnO・・・(2’)
【0081】
試製スラグは、試製スラグの各化学成分の含有量及び式(1’)により、塩基度Bu(7日)を求めた。また、試製スラグは、試製スラグの各化学成分の含有量及び式(2’)により、塩基度Bu(28日)を求めた。また、試製スラグは、試製スラグの各化学成分の含有量と各式に基づき、式(S)によりJIS塩基度(B
JIS)、式(A)により指標(Bm)、式(B)により塩基度(B
B)、式(C)により塩基度(B
C)、式(D)により塩基度(B
D)、式(F)によりモルタル材齢7日の塩基度(B
F7)、式(F)によりモルタル材齢28日の塩基度(B
F28)を求めた。表2に各式により算出された各試製スラグの塩基度を示す。
【0082】
JIS塩基度(B
JIS)=(CaO+MgO+Al
2O
3)/SiO
2・・・(S)
指標(Bm)=(CaO+MgO+Al
2O
3)/SiO
2−0.13×TiO
2−MnO・・・(A)
塩基度(B
B)=CaO+(2/3)×MgO−SiO
2−Al
2O
3・・・(B)
塩基度(B
C)=(CaO+0.7×MgO)/(0.94×SiO
2+0.18×Al
2O
3)・・・(C)
塩基度(B
D)=(CaO+Al
2O
3+MgO+Na
2O+S)/(SiO
2+TiO
2)・・・(D)
塩基度(B
E)=(CaO+MgO+(1/3)×Al
2O
3)/(SiO
2+(2/3)×Al
2O
3)・・・(E)
塩基度(B
F7)=(Kc×CaO+Ka×Al
2O
3+Km×MgO+Kn×Na
2O+Ksu×S)/(SiO
2+Kt×TiO
2)・・・(F)
(但し、材齢7日の場合、Kcは1.42、Kaは1.29、Kmは1.75、Ktは4.99、Knは3.33、Ksuは2.69である。)
塩基度(B
F28)=(Kc×CaO+Ka×Al
2O
3+Km×MgO+Kn×Na
2O+Ksu×S)/(SiO
2+Kt×TiO
2)・・・(F)
(但し、材齢28日の場合、Kcは0.24、Kaは0.42、Kmは0.23、Ktは2.63、Knは0.99、Ksuは0.45である。
【0083】
【表2】
【0084】
図1は、本発明の式(1’)により算出される各試製スラグの塩基度Bu(7日)とモルタル材齢7日の活性度指数の関係と、本発明の式(2’)により算出される各試製スラグの塩基度Bu(28日)とモルタル材齢28日の活性度指数の関係とを示すグラフである。
図1に示すように、式(1’)により算出される塩基度Bu(7日)と、モルタル材齢7日の活性度指数とは、回帰直線から実測値を引いた値が−6.8〜5.6%であり、活性度指数との相関が強く、本発明の式(1)により算出される塩基度Bu(7日)を指標として、精度よくモルタル材齢7日の活性度指数を予測することができ、優れた活性度指数を有するセメント原料として使用可能な良好な高炉スラグを選別できることが確認できた。
図1に示すように、式(2’)により算出される塩基度Bu(28日)と、モルタル材齢28日の活性度指数とは、回帰直線から実測値を引いた値が−5.2〜5.2%であり、活性度指数との相関が強く、本発明の式(2)により算出される塩基度Bu(28日)を指標として、精度よくモルタル材齢28日の活性度指数を予測することができ、優れた活性度指数を有するセメント原料として使用可能な良好な高炉スラグを選別できることが確認できた。
【0085】
図2は、式(S)により算出されるJIS塩基度(B
JIS)と、モルタル材齢7日の活性度指数及びモルタル材齢28日の活性度指数の関係を示すグラフである。
式(S)により算出されるJIS塩基度(B
JIS)とモルタル材齢7日の活性度指数又はモルタル材齢28日の活性度指数との関係では、
図2中、丸で囲ったデータはJIS塩基度(B
JIS)に対してモルタル材齢7日の活性度指数又はモルタル材齢28日の活性度指数が低く、JIS塩基度(B
JIS)と活性度指数とのばらつきが大きく、JIS塩基度(B
JIS)から活性度指数を予測できず、要求される活性度指数を示す高炉セメントの原料として使用される高炉スラグを式(S)により算出されるJIS塩基度(B
JIS)に基づいて選別できない場合がある。
【0086】
図3は、式(A)により算出される指標(Bm)と、モルタル材齢7日の活性度指数及びモルタル材齢28日の活性度指数の関係を示すグラフである。
式(A)により算出される指標(Bm)とモルタル材齢7日の活性度指数又はモルタル材齢28日の活性度指数との関係では、
図3中、丸で囲ったデータは式(A)により算出される指標(Bm)に対してモルタル材齢7日の活性度指数又はモルタル材齢28日の活性度指数が高く、式(A)により算出される指標(Bm)と活性度指数とのばらつきが大きく、式(A)により算出される指標(Bm)から活性度指数を的確に予測できず、求められる活性度指数を示す高炉セメントの原料として使用される高炉スラグを式(A)により算出される指標(Bm)に基づいて選別できない場合がある。
【0087】
図4は、式(B)により算出される塩基度(B
B)と、モルタル材齢7日の活性度指数及びモルタル材齢28日の活性度指数の関係を示すグラフである。
図4に示すように、式(B)により算出される塩基度(B
B)と、モルタル材齢7日の活性度指数とは、回帰直線から実測値を引いた値が−11.7〜18.7%であり、材齢28日では−6.3〜14.8%であり、式(B)により算出される塩基度(B
B)と活性度指数とのばらつきが、本発明の式(1)により算出される塩基度Bu(7日)又は本発明の式(2)により算出される塩基度Bu(28日)よりも大きく、式(B)により算出される塩基度(B
B)から活性度指数を的確に予測できず、求められる活性度指数を示す高炉セメントの原料として使用される高炉スラグを式(B)により算出される塩基度(B
B)に基づいて選別できない場合がある。
【0088】
図5は、式(C)により算出される塩基度(B
C)と、モルタル材齢7日の活性度指数及びモルタル材齢28日の活性度指数の関係を示すグラフである。
図5に示すように、式(C)により算出される塩基度(B
C)と、モルタル材齢7日の活性度指数とは、回帰直線から実測値を引いた値が−9.9〜18.8%であり、材齢28日では−6.4〜14.8%であり、式(C)により算出される塩基度(B
C)と活性度指数とのばらつきが、本発明の式(1)により算出される塩基度Bu(7日)又は本発明の式(2)により算出される塩基度Bu(28日)よりも大きく、式(C)により算出される塩基度(B
C)から活性度指数を的確に予測できず、求められる活性度指数を示す高炉セメントの原料として使用される高炉スラグを式(C)により算出される塩基度(B
C)に基づいて選別できない場合がある。
【0089】
図6は、式(D)により算出される塩基度(B
D)と、モルタル材齢7日の活性度指数及びモルタル材齢28日の活性度指数の関係を示すグラフである。
図6に示すように、式(D)により算出される塩基度(B
D)と、モルタル材齢7日の活性度指数とは、回帰直線から実測値を引いた値が−8.3〜15.8%であり、材齢28日では−7.1〜12.9%であり、式(D)により算出される塩基度(B
D)と活性度指数とのばらつきが、本発明の式(1)により算出される塩基度Bu(7日)又は本発明の式(2)により算出される塩基度Bu(28日)よりも大きく、式(D)により算出される塩基度(B
D)から活性度指数を的確に予測できず、求められる活性度指数を示す高炉セメントの原料として使用される高炉スラグを式(D)により算出される塩基度(B
D)に基づいて選別できない場合がある。
【0090】
図7は、式(E)により算出される塩基度(B
E)と、モルタル材齢7日の活性度指数及びモルタル材齢28日の活性度指数の関係を示すグラフである。
図7に示すように、式(E)により算出される塩基度(B
E)と、モルタル材齢7日の活性度指数とは、回帰直線から実測値を引いた値が−10.8〜18.6%であり、材齢28日では−6.4〜14.7%であり、式(E)により算出される塩基度(B
E)と活性度指数とのばらつきが、本発明の式(1)により算出される塩基度Bu(7日)又は本発明の式(2)により算出される塩基度Bu(28日)よりも大きく、式(E)の塩基度(B
E)から活性度指数を的確に予測できず、求められる活性度指数を示す高炉セメントの原料として使用される高炉スラグを式(E)により算出される塩基度(B
E)に基づいて選別できない場合がある。
【0091】
図8は、式(F)のモルタル材齢7日の塩基度(B
F7)とモルタル材齢7日の活性度指数の関係を示すグラフである。
図8に示すように、式(F)により算出されるモルタル材齢7日の塩基度(B
F7)と、モルタル材齢7日の活性度指数とは、回帰直線から実測値を引いた値が−7.9〜8.5%であり、式(F)により算出されるモルタル材齢7日の塩基度(B
F7)とモルタル活性度指数とのばらつきが、本発明の式(1)により算出される塩基度Bu(7日)よりも大きく、式(F)により算出されるモルタル材齢7日の塩基度(B
F7)から活性度指数を的確に予測できず、求められる活性度指数を示す高炉セメントの原料として使用される高炉スラグを式(F)により算出されるモルタル材齢7日の塩基度(B
F7)に基づいて選別できない場合がある。
【0092】
図9は、式(F)のモルタル材齢28日の塩基度(B
F28)とモルタル材齢28日の活性度指数の関係を示すグラフである。
図9に示すように、式(F)のモルタル材齢28日の塩基度(B
F28)と、モルタル材齢28日の活性度指数とは、回帰直線から実測値を引いた値が−7.4〜11.1%であり、式(F)のモルタル材齢28日の塩基度(B
F28)とモルタル活性度指数とのばらつきが、本発明の式(2)の塩基度Bu(28日)よりも大きく、式(F)のモルタル材齢28日の塩基度(B
F28)から活性度指数を的確に予測できず、求められる活性度指数を示す高炉セメントの原料として使用される高炉スラグを式(F)により算出されるモルタル材齢28日の塩基度(B
F28)に基づいて選別できない場合がある。
【0093】
本発明は、高炉スラグの各化学成分の活性度指数への影響を見直し、JIS塩基度(B
JIS)を導き出す式(S)や従来の指標(Bm)を導き出す式(A)における各化学成分の係数に比べて、塩基度Bu(7日)を導き出す式(1)又は塩基度Bu(28日)を導き出す式(2)におけるMgOの係数a、Al
2O
3の係数b、MnOの係数dを小さくし、TiO
2の係数cを大きくしたことで、高炉スラグを用いたセメントの活性度指数を予測する精度が高まったと考えられる。また、従来の塩基度(B
B)を導く式(B)、塩基度(B
C)を導く式(C)、モルタル材齢28日の塩基度(B
F28)を導く式(F)では、MgOの係数やAl
2O
3の係数を1よりも小さくしているものもあるが、本発明の塩基度Bu(7日)を導く式(1)又は塩基度Bu(28日)を導く式(2)では、MgOの係数a及びAl
2O
3の係数bを、従来の式(B)、式(C)又は式(F)よりも小さくすることによって、高炉スラグを用いたセメントの活性度指数の予測精度をより高めることができた。
【0094】
○Buを用いた高炉セメントの製造方法
1.低活性スラグと高活性スラグを混合した高炉セメントの試験方法
選別された低活性スラグを利用するための方法として、表3に示すBuが低い高炉スラグ(No.1)とBuが高い高炉スラグ(No.2)をBu(7日)が1.00以上となるように1:1で混合した場合、Buは7日で1.07、28日で0.84となり、活性度指数は、7日で82.5%、28日で103.0%となる。低活性スラグと高活性スラグの両者を組み合わせることで、低活性スラグ単独の場合よりもBuが高まり、強度発現性が良好な高炉セメントを得ることができる。更に、塩基度Buを用いることで活性度指数を精度よく予測することが可能となり、低活性スラグをより有効に使いこなすことができる。
【0095】
【表3】
【0096】
2.各種補完策による高炉セメントの強度改善
各種補完策を実施した場合の高炉セメントの強度改善への影響を調査した。
【0097】
2.1 試験方法
評価は、高炉スラグ粉とポルトランドセメント(NC)とを別々に製造する分離粉砕の水準と、高炉スラグ、クリンカー、石膏及び石灰石を混合して同時に粉砕する混合粉砕の水準とで評価した。
【0098】
本試験に使用した材料のキャラクターを表4〜7に示す。また、表8および表9に分離粉砕および混合粉砕の粉砕時における材料の配合を示す。これらの材料に対して、粉砕助剤を添加し、所定のボールミルで粉砕した。強度補完策としては、粉末度の増加(分離粉砕:Nとスラグ,混合粉砕:高炉セメント)や石膏添加量、石灰石添加量を調製することによって強度改善を試みた。混合粉砕では、予めスラグをブレーン比表面積が3600cm
2/gとなるように粉砕し、その他材料と混合して粉砕を行った。分離粉砕の場合は、製造した高炉スラグ粉をポルトランドセメントに対して44.5質量%添加した。
これらの作製したセメントを用いて、JIS R 5201:1997「セメントの物理試験方法」に準拠して、モルタル供試体の作製および圧縮強さ(材齢7日、28日)の測定を行い、モルタル圧縮強さの基準との比によって強度発現性を評価した。
強度発現性は、分離粉砕と混合粉砕でそれぞれ基準(No.1とNo.9)に対する強さ比で評価した。
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
【表7】
【0103】
【表8】
【0104】
【表9】
【0105】
2.2 試験結果
(1)分離粉砕時の補完策
図10〜12にそれぞれ、高炉スラグもしくはポルトランドセメントのブレーン比表面積の影響(丸のプロットは高炉スラグのブレーンを増加した場合、三角のプロットはNCのブレーンを増加した場合を示す)、石膏添加量の影響、石灰石添加量の影響を調べた結果を示す。スラグもしくはNCの粉末度を大きくすることで、高炉セメントの強度発現性は高くなった。特に、スラグの粉末度を高めた方が強度改善の効果は大きかった。また、石灰石添加量が増加するほど強度発現性は大きくなる傾向であった。石膏添加量の影響は、SO
3基準で1.6質量%付近が最大となった。
【0106】
(2)混合粉砕時の補完策
図13〜15にそれぞれ、高炉セメントのブレーン比表面積の影響、石膏添加量の影響、石灰石添加量の影響を調べた結果を示す。粉末度を大きくすることで、強度発現性は高くなった。石膏添加量の影響は、SO
3基準で1.6質量%付近が最大となった。また、石灰石添加量の影響は、添加量の増加に従って強度発現性は大きくなる傾向であり、特に材齢7日では優れた強度改善効果が認められた。