(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トリガ荷重増加機構は、前記免震柱が特定方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構の弾性部材のバネ定数を、前記免震柱が特定方向以外の方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構の弾性部材のバネ定数より大きくすることによって構成される請求項2記載の免震装置。
前記トリガ荷重増加機構は、前記免震柱が特定方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構の弾性部材の設置数を、前記免震柱が特定方向以外の方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構の弾性部材の設置数より大きくすることによって構成される請求項2記載の免震装置。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の免震装置の第一実施例を示す概要構成図であって、(a)は正面図、(b)は
図1(a)のIb−Ib断面図(平断面図)、(c)は側面図、(d)は
図1(b)のId−Id断面図(正断面図)である。
【
図2】本発明の免震装置の第一実施例における大規模な地震発生時の状態を示す正断面図である。
【
図3】本発明の免震装置の第一実施例における水平変位と復元力との関係を示す線図である。
【
図4】(a)は本発明の免震装置を適用する構造物の一例である立体倉庫の正面図、(b)は側面図である。
【
図5】本発明の免震装置の第一実施例の変形例を示す概要構成図であって、(a)は正面図、(b)は
図1(a)のIVb−IVb断面図(平断面図)、(c)は側面図、(d)は
図1(b)のIVd−IVd断面図(正断面図)である。
【
図6】本発明の免震装置の第一実施例の変形例における大規模な地震発生時の状態を示す正断面図である。
【
図7】本発明の免震装置の第二実施例を示す概要構成図であって、(a)は正面図、(b)は
図7(a)のVIIb−VIIb断面図(平断面図)、(c)は側面図、(d)は
図7(b)のVIId−VIId断面図(正断面図)である。
【
図8】本発明の免震装置の第二実施例における大規模な地震発生時の状態を示す正断面図であって、(a)は免震柱が特定方向(スタッカクレーン側)へ傾斜する状態を示す図、(b)は免震柱が特定方向以外の方向(反スタッカクレーン側)へ傾斜する状態を示す図である。
【
図9】本発明の免震装置の第二実施例における水平変位と復元力との関係を示す線図である。
【
図10】本発明の免震装置の第二実施例の変形例における大規模な地震発生時の状態を示す正断面図であって、(a)は免震柱が特定方向(スタッカクレーン側)へ傾斜する状態を示す図、(b)は免震柱が特定方向以外の方向(反スタッカクレーン側)へ傾斜する状態を示す図である。
【
図11】本発明の免震装置の第二実施例の他の変形例を示す概要構成図であって、(a)は正面図、(b)は
図11(a)のXIb−XIb断面図(平断面図)、(c)は側面図である。
【
図12】本発明の免震装置の第二実施例の他の変形例における大規模な地震発生時の状態を示す正断面図であって、(a)は免震柱が特定方向(スタッカクレーン側)へ傾斜する状態を示す図、(b)は免震柱が特定方向以外の方向(反スタッカクレーン側)へ傾斜する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1〜
図4は本発明の免震装置の第一実施例である。
【0018】
図4(a)及び
図4(b)は本発明の免震装置を適用する構造物の一例である立体倉庫を示しており、構造物としての立体倉庫100は、複数の鋼鉄製の柱1と複数段の鋼鉄製の梁2を備えることにより複数のラック3(棚)が立体的に組み立てられた構成を有している。立体倉庫100は、スタッカクレーン4を挟むように立設され、該スタッカクレーン4の走行方向に沿って延びる長さを有しており、スタッカクレーン4の走行方向と直交する方向には、格納される荷の大きさに対応した、前記長さと比較して短い幅を有している。前記立体倉庫100を構成する複数の柱1は、ラック3に格納される荷の重量を支持するために高い強度を有している。
【0019】
そして、
図4の立体倉庫100を構成する複数の柱1に本発明の免震装置5を設ける。該免震装置5は、
図4に示す如く、立体倉庫100に備えられる柱1の同一高さ位置に設けられる。前記免震装置5は、該免震装置5より上部の立体倉庫100全体がロッキングする挙動を発生させないために、上から1/3〜1/2程度の高さ位置に設置することが好ましい。このように、前記免震装置5を立体倉庫100の上部に設置しても、免震の効果により、免震装置5より上側の揺れが小さくなることで、結果的に免震装置5より下側の構造物の揺れも小さくなることが本発明者等の研究により判明している。
【0020】
第一実施例の場合、前記免震装置5は、
図1〜
図4に示す如く、免震柱6と、トリガ締結機構70と、弾性補助機構80とを備えている。
【0021】
前記免震柱6は、上側部材としての水平フランジ1Aと下側部材としての水平フランジ1Bとの間に、傾斜自在に配設されている。前記免震柱6の上下端部には、張出部としてのフランジ10及びフランジ11が形成されている。前記上側部材としての水平フランジ1Aは、免震柱6の上方に位置する柱1の下端部に設けられ、前記下側部材としての水平フランジ1Bは、免震柱6の下方に位置する柱1の上端部に設けられている。尚、前記柱1及び免震柱6は、水平断面が矩形形状を有する中空の角型鋼材であるが、該角型鋼材に限定されるものではなく、H型鋼材、I型鋼材、Z型鋼材、円筒型鋼材であっても良い。
【0022】
前記トリガ締結機構70は、前記免震柱6の張出部としてのフランジ10と上側部材としての水平フランジ1Aとの間並びに前記免震柱6の張出部としてのフランジ11と下側部材としての水平フランジ1Bとの間を弾性部材71を介して締結することにより、前記免震柱6が傾斜し始めるトリガ荷重を設定するようになっている。前記弾性部材71としては、例えば、
図1に示すような皿バネ、或いは圧縮コイルバネやゴム等を用いることができる。前記弾性部材71には、テンションロッド72によって圧縮力が与えられている。該テンションロッド72は、水平フランジ1A及びフランジ10と、水平フランジ1B及びフランジ11とをそれぞれ貫通し、その貫通孔(図示せず)は、テンションロッド72の径より大径としてあり、免震柱6の傾斜を許容するようになっている。尚、前記トリガ締結機構70は、
図1(a)、
図1(b)及び
図1(c)に示す如く、矩形形状のフランジ10、11の四隅部に配置してあるが、この配置に関しては適宜選定することができる。
【0023】
前記弾性補助機構80は、復元補助係止片81と、復元補助弾性体82とを備えている。前記復元補助係止片81は、前記上側部材としての水平フランジ1Aから下方へ延びる復元補助縦壁部81aと、該復元補助縦壁部81aの先端から前記張出部としてのフランジ10と平行に延びる復元補助横壁部81bとを備えている。前記復元補助係止片81は、上下反転する形で、下側部材としての水平フランジ1Bにも設けられている。前記復元補助弾性体82は、前記復元補助係止片81の復元補助横壁部81bとの間に初期隙間δ(
図1(d)参照)が形成されるよう配設されており、前記免震柱6の傾斜角度が設定値を超えた際に圧縮が開始されるようになっている。因みに、前記復元補助弾性体82は、前記張出部としてのフランジ10の下面と、前記張出部としてのフランジ11の上面とに接着されている。これにより、前記弾性補助機構80は、前記免震柱6の傾斜角度が設定値を超えた際に圧縮が開始されるよう配設され且つ前記免震柱6に対し傾斜状態から直立状態への復元力を付与するようになっている。尚、前記弾性補助機構80は、
図1(a)及び
図1(b)に示す如く、前記トリガ締結機構70の中間位置における四箇所に配置してあるが、この配置に関しては適宜選定することができる。又、前記弾性補助機構80は、必要に応じて上側部材としての水平フランジ1Aと下側部材としての水平フランジ1Bとのいずれか一方のみに設けるようにしても良い。
【0024】
次に、上記第一実施例の作用を説明する。
【0025】
地震が発生していない平常時には、
図1に示す如く、免震柱6は鉛直に保持され、該免震柱6の上側の柱1に掛かる荷重は、水平フランジ1Aから、上下両端にフランジ10,11が設けられた免震柱6を介して下側の柱1に伝達される。
【0026】
但し、
図1において、中小規模の地震の発生により柱1に水平方向の比較的小さい加速度の揺れが発生した場合にも、前記免震柱6は鉛直に保持される。
【0027】
即ち、柱1に掛かる荷重と、トリガ締結機構70の弾性部材71の反発力とによって、前記水平フランジ1A及び水平フランジ1Bに対し免震柱6のフランジ10,11は圧着される。このとき、前記水平フランジ1A及び水平フランジ1Bには、免震柱6のフランジ10,11を締結するトリガ締結機構70が設けられているので、免震柱6が水平方向へ移動することは防止される。従って、中小規模の地震によって、水平方向に比較的小さい加速度の揺れが発生しても、免震柱6は鉛直に保持される。これは、水平方向の加速度により免震柱6を傾けようとするモーメントが、免震柱6によって支持されている鉛直方向の荷重と、前記トリガ締結機構70の弾性部材71の反発力とにより免震柱6を鉛直状態に保持しようとするモーメントを超えない限り、免震柱6は傾くことができないトリガ機能によるものである。
【0028】
一方、大規模な地震の発生によって、水平方向へ大きな加速度の揺れが発生した場合、上側の柱1が慣性によりその場にとどまろうとするのに対し、下側の柱1は水平方向へ相対移動した状態となる。このとき、免震柱6のフランジ11は、前記トリガ締結機構70により水平方向へ移動することができない。しかし、前記免震柱6のフランジ10,11にトリガ荷重の範囲を超えた負荷が作用した場合には、
図2に示す如く、前記免震柱6は、フランジ11の下端面の辺と、フランジ10の上端面の辺とを支点として傾きを開始する。このように免震柱6が傾く免震の効果により、水平左右方向(幅方向或いは奥行方向)への大きな地震力の伝達が低減される。
【0029】
ここで、
図1(a)及び
図1(b)に示す如く、前記トリガ締結機構70の中間位置における四箇所には、復元補助係止片81と復元補助弾性体82とを備えた弾性補助機構80が配置されている。前記復元補助弾性体82は、前記復元補助係止片81の復元補助横壁部81bとの間に初期隙間δ(
図1(d)参照)が形成されるよう配設されており、前記免震柱6の傾斜角度が設定値を超えた際に圧縮が開始される。このため、前記免震柱6が過大に傾斜しようとしても、前記復元補助弾性体82が復元補助横壁部81bに接触して圧縮されることにより、前記免震柱6に対し傾斜状態から直立状態への復元力が付与される。これにより、免震柱6が限界傾斜角度位置を超えて傾斜することが阻止される。この結果、免震柱6が倒れる心配はなく、元の位置に確実に復帰可能となる。
【0030】
因みに、
図3に示す如く、前記免震柱6単独の場合、水平変位が増加する(傾斜角度が大きくなる)に従って、免震柱6の傾斜状態から直立状態への復元力は減少していく。これに対し、前記水平変位が増加する(傾斜角度が大きくなる)に従って、弾性部材71は圧縮されるため、該弾性部材71の復元力はバネ定数に応じて増加していく。又、前記水平変位が増加しても(傾斜角度が大きくなっても)、前記初期隙間δが0になるまでは、復元補助弾性体82は圧縮されないため、該復元補助弾性体82の復元力は0であるが、前記初期隙間δが0になった後は、前記復元補助弾性体82は圧縮されるため、該復元補助弾性体82の復元力はバネ定数に応じて増加していく。これらを合成すると、totalとして示す線となり、トリガ荷重を一定に保持し、大規模な地震発生時に振動による入力を抑えつつ、フランジ10,11を大きくせずに免震柱6の過度な傾斜を抑制可能となる。又、変位が大きくなる場合には、弾性部材71による復元力に加えて復元補助弾性体82による復元力を作用させることで、大変形を抑制できる。更に又、前記復元補助係止片81の復元補助横壁部81bと張出部としてのフランジ10,11との間に配設される復元補助弾性体82の初期隙間δを調節することでトリガの範囲を任意に設定できる。
【0031】
こうして、簡単な構成で構造物に作用する揺れを、大変位時には復元力を大きくして免震柱6の過度な傾斜を抑えつつ免震できる。
【0032】
図5及び
図6は本発明の免震装置の第一実施例の変形例であって、図中、
図1〜
図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は
図1〜
図4に示す第一実施例と同様である。
【0033】
第一実施例の変形例では、前記復元補助弾性体82を、前記張出部としてのフランジ10の下面と、前記張出部としてのフランジ11の上面とに接着する(
図1及び
図2参照)代わりに、
図5(a)、
図5(b)及び
図5(c)に示す如く、復元補助横壁部81bの側に接着し、前記張出部としてのフランジ10,11と復元補助弾性体82との間に初期隙間δ(
図5(d)参照)が形成されるようにしてある。
【0034】
図5及び
図6に示す第一実施例の変形例の場合、前記免震柱6が過大に傾斜しようとしても、前記復元補助横壁部81bの側に接着された復元補助弾性体82が張出部としてのフランジ10,11に接触して圧縮されることにより、前記免震柱6に対し傾斜状態から直立状態への復元力が付与される。これにより、免震柱6が限界傾斜角度位置を超えて傾斜することが阻止される。この結果、免震柱6が倒れる心配はなく、元の位置に確実に復帰可能となる。
【0035】
こうして、第一実施例の変形例においても、簡単な構成で構造物に作用する揺れを、大変位時には復元力を大きくして免震柱6の過度な傾斜を抑えつつ免震できる。
【0036】
図7〜
図9は本発明の免震装置の第二実施例であって、図中、
図1〜
図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は
図1〜
図4に示す第一実施例と同様である。
【0037】
第二実施例の場合、
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)及び
図7(d)に示す如く、前記免震柱6が特定方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を前記免震柱6が特定方向以外の方向へ傾斜し始めるトリガ荷重より大きくするトリガ荷重増加機構90を備えた点を特徴としている。前記特定方向とは、
図8(a)に示す如く、前記免震柱6がスタッカクレーン4の側へ傾斜する方向である。又、特定方向以外の方向とは、
図8(b)に示す如く、前記免震柱6が反スタッカクレーン4の側へ傾斜する方向、並びに立体倉庫100の奥行方向(
図7(c)参照)である。尚、免震装置5は立体倉庫100以外の構造物に設けることも可能であり、該構造物に接触を回避すべき隣接物が存在する場合、前記特定方向は、スタッカクレーン4を含む隣接物対峙方向となる。
【0038】
前記トリガ荷重増加機構90は、傾斜抑制係止片91と、傾斜抑制弾性体92とを備えている。前記傾斜抑制係止片91は、前記上側部材としての水平フランジ1Aから下方へ延びる傾斜抑制縦壁部91aと、該傾斜抑制縦壁部91aの先端から前記張出部としてのフランジ10と平行に延びる傾斜抑制横壁部91bとを備えている。傾斜抑制係止片91は、上下左右反転する形で、下側部材としての水平フランジ1Bにも設けられている。前記傾斜抑制弾性体92は、前記傾斜抑制係止片91の傾斜抑制横壁部91bと張出部としてのフランジ10,11との間に介装されている。尚、前記トリガ荷重増加機構90は、必要に応じて、特定方向側における上側部材としての水平フランジ1Aと、反特定方向側における下側部材としての水平フランジ1Bとのいずれか一方のみに設けるようにしても良い。
【0039】
次に、上記第二実施例の作用を説明する。
【0040】
地震が発生していない平常時には、
図7に示す如く、免震柱6は鉛直に保持され、該免震柱6の上側の柱1に掛かる荷重は、水平フランジ1Aから、上下両端にフランジ10,11が設けられた免震柱6を介して下側の柱1に伝達される。
【0041】
但し、
図7において、中小規模の地震の発生により柱1に水平方向の比較的小さい加速度の揺れが発生した場合にも、前記免震柱6は鉛直に保持される。
【0042】
即ち、柱1に掛かる荷重と、トリガ締結機構70の弾性部材71の反発力とによって、前記水平フランジ1A及び水平フランジ1Bに対し免震柱6のフランジ10,11は圧着される。このとき、前記水平フランジ1A及び水平フランジ1Bには、免震柱6のフランジ10,11を締結するトリガ締結機構70が設けられているので、免震柱6が水平方向へ移動することは防止される。従って、中小規模の地震によって、水平方向に比較的小さい加速度の揺れが発生しても、免震柱6は鉛直に保持される。これは、水平方向の加速度により免震柱6を傾けようとするモーメントが、免震柱6によって支持されている鉛直方向の荷重と、前記トリガ締結機構70の弾性部材71の反発力とにより免震柱6を鉛直状態に保持しようとするモーメントを超えない限り、免震柱6は傾くことができないトリガ機能によるものである。
【0043】
一方、大規模な地震の発生によって、水平方向へ大きな加速度の揺れが発生した場合、上側の柱1が慣性によりその場にとどまろうとするのに対し、下側の柱1は水平方向へ相対移動した状態となる。このとき、免震柱6のフランジ11は、前記トリガ締結機構70により水平方向へ移動することができない。しかし、前記免震柱6のフランジ10,11に前記トリガ締結機構70によるトリガ荷重の範囲を超えた負荷が作用した場合、特定方向以外の方向(反スタッカクレーン4側)には、
図8(b)に示す如く、前記免震柱6は、フランジ11の下端面の辺と、フランジ10の上端面の辺とを支点として傾きを開始する。このように免震柱6が傾く免震の効果により、特定方向以外の方向(反スタッカクレーン4側)への大きな地震力の伝達が低減される。尚、前記特定方向以外の方向としては、反スタッカクレーン4側だけではなく、
図7(c)に示す如く、立体倉庫100の奥行方向も含まれ、該奥行方向への大きな地震力の伝達も低減される。
【0044】
これに対し、特定方向(スタッカクレーン4側)には、
図8(a)に示す如く、トリガ荷重増加機構90の傾斜抑制係止片91の傾斜抑制横壁部91bと張出部としてのフランジ10,11との間に介装された傾斜抑制弾性体92によってトリガ荷重が大きく設定されているため、前記免震柱6は傾斜しにくくなる。つまり、スタッカクレーン4側への大変位を抑制することができる。又、前記傾斜抑制弾性体92によるトリガ荷重の調節も行いやすくなる。
【0045】
因みに、
図9に示す如く、前記免震柱6単独の場合、水平変位が増加する(傾斜角度が大きくなる)に従って、免震柱6の傾斜状態から直立状態への復元力は減少していく。これに対し、前記水平変位が増加する(傾斜角度が大きくなる)に従って、弾性部材71は圧縮されるため、該弾性部材71の復元力はバネ定数に応じて増加していく。又、前記水平変位が特定方向へ増加する(傾斜角度が大きくなる)に従って、傾斜抑制弾性体92は圧縮されるため、該傾斜抑制弾性体92の復元力はバネ定数に応じて増加していく。但し、前記水平変位が特定方向以外の方向へ増加しても(傾斜角度が大きくなっても)、傾斜抑制弾性体92は圧縮されないため、該傾斜抑制弾性体92の復元力は0のまま変化しない。これらを合成すると、totalとして示す線となり、特定方向についてのみトリガ荷重を増加させ、大規模な地震発生時にスタッカクレーン4側への免震柱6の過度な傾斜を積極的に抑制可能となり、柱1や水平フランジ1Aがスタッカクレーン4に接触することが避けられる。又、特定方向以外の方向に関しては、柱1や水平フランジ1Aがスタッカクレーン4に接触する虞がないことから、前記トリガ荷重増加機構90の傾斜抑制弾性体92は作用しないように配置されているため、免震性能を維持できる。
【0046】
こうして、第二実施例においては、簡単な構成で構造物に作用する揺れを、特定方向への免震柱6の過度な傾斜を積極的に抑えつつ免震できる。
【0047】
図10は本発明の免震装置の第二実施例の変形例であって、図中、
図7〜
図9と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は
図7〜
図9に示す第二実施例と同様である。
【0048】
第二実施例の変形例では、前記免震柱6が特定方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構70の弾性部材71のバネ定数を、前記免震柱6が特定方向以外の方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構70の弾性部材71のバネ定数より大きくすることによって、前記トリガ荷重増加機構90が構成されるようにしてある。
【0049】
図10に示す第二実施例の変形例のように、トリガ荷重増加機構90を兼ねるトリガ締結機構70の弾性部材71のバネ定数を変化させても、特定方向(スタッカクレーン4側)には、
図10(a)に示す如く、トリガ荷重が大きく設定されることになるため、前記免震柱6は傾斜しにくくなり、スタッカクレーン4側への大変位を抑制することができる。しかも、前記弾性部材71のバネ定数を変化させるだけで済み、部品点数を削減して構造を更にシンプル化する上で非常に有効となる。
【0050】
尚、前記免震柱6のフランジ10,11に前記トリガ締結機構70によるトリガ荷重の範囲を超えた負荷が作用した場合、特定方向以外の方向(反スタッカクレーン4側)には、
図10(b)に示す如く、前記免震柱6がフランジ11の下端面の辺とフランジ10の上端面の辺とを支点として傾きを開始するため、該免震柱6が傾く免震の効果により、特定方向以外の方向(反スタッカクレーン4側)への大きな地震力の伝達が低減される。
【0051】
こうして、第二実施例の変形例においても、簡単な構成で構造物に作用する揺れを、特定方向への免震柱6の過度な傾斜を積極的に抑えつつ免震できる。
【0052】
図11及び
図12は本発明の免震装置の第二実施例の他の変形例であって、図中、
図7〜
図9と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は
図7〜
図9に示す第二実施例と同様である。
【0053】
第二実施例の他の変形例では、
図11(a)、
図11(b)、
図11(c)及び
図12に示す如く、前記免震柱6が特定方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構70の弾性部材71の設置数を、前記免震柱6が特定方向以外の方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構70の弾性部材71の設置数より大きくすることによって、前記トリガ荷重増加機構90が構成されるようにしてある。
【0054】
図11及び
図12に示す第二実施例の他の変形例のように、トリガ荷重増加機構90を兼ねるトリガ締結機構70の弾性部材71の設置数を変化させても、特定方向(スタッカクレーン4側)には、
図12(a)に示す如く、トリガ荷重が大きく設定されることになるため、前記免震柱6は傾斜しにくくなり、スタッカクレーン4側への大変位を抑制することができる。しかも、前記弾性部材71の設置数を変化させるだけで済み、弾性部材71自体は同じものを使用できるため、組み立て時の管理等も行いやすくなる。
【0055】
尚、前記免震柱6のフランジ10,11に前記トリガ締結機構70によるトリガ荷重の範囲を超えた負荷が作用した場合、特定方向以外の方向(反スタッカクレーン4側)には、
図12(b)に示す如く、前記免震柱6がフランジ11の下端面の辺とフランジ10の上端面の辺とを支点として傾きを開始するため、該免震柱6が傾く免震の効果により、特定方向以外の方向(反スタッカクレーン4側)への大きな地震力の伝達が低減される。
【0056】
こうして、第二実施例の他の変形例においても、簡単な構成で構造物に作用する揺れを、特定方向への免震柱6の過度な傾斜を積極的に抑えつつ免震できる。
【0057】
そして、第一実施例及び第一実施例の変形例においては、前記弾性補助機構80は、前記上側部材としての水平フランジ1Aと下側部材としての水平フランジ1Bの少なくとも一方から上下方向へ延びる復元補助縦壁部81aと、該復元補助縦壁部81aの先端から前記張出部としてのフランジ10,11と平行に延びる復元補助横壁部81bとを備えた復元補助係止片81を備えている。更に、前記復元補助係止片81の復元補助横壁部81bと張出部としてのフランジ10,11との間に初期隙間δが形成されるよう配設され且つ前記免震柱6の傾斜角度が設定値を超えた際に圧縮が開始される復元補助弾性体82を備えている。このように構成すると、大規模な地震発生時に変位が大きくなる場合には、弾性部材71による復元力に加えて復元補助弾性体82による復元力を作用させることで、大変形を抑制できる。又、前記復元補助係止片81の復元補助横壁部81bと張出部としてのフランジ10,11との間に配設される復元補助弾性体82の初期隙間δを調節することでトリガの範囲を任意に設定できる。
【0058】
又、第二実施例においては、前記免震柱6が特定方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を前記免震柱6が特定方向以外の方向へ傾斜し始めるトリガ荷重より大きくするトリガ荷重増加機構90を備えている。このように構成すると、特定方向には、トリガ荷重増加機構90によってトリガ荷重が大きく設定されるため、前記免震柱6は傾斜しにくくなる。特に、立体倉庫100に適用すれば、スタッカクレーン4側への大変位を抑制することができ、柱1や水平フランジ1Aがスタッカクレーン4に接触することが避けられる。
【0059】
又、第二実施例において、前記トリガ荷重増加機構90は、前記上側部材としての水平フランジ1Aと下側部材としての水平フランジ1Bの少なくとも一方から上下方向へ延びる傾斜抑制縦壁部91aと、該傾斜抑制縦壁部91aの先端から前記張出部としてのフランジ10,11と平行に延びる傾斜抑制横壁部91bとを備えた傾斜抑制係止片91を備えている。更に、前記傾斜抑制係止片91の傾斜抑制横壁部91bと張出部としてのフランジ10,11との間に介装される傾斜抑制弾性体92を備えている。このように構成すると、特定方向には、トリガ荷重増加機構90の傾斜抑制係止片91の傾斜抑制横壁部91bと張出部としてのフランジ10,11との間に介装される傾斜抑制弾性体92によってトリガ荷重を大きく設定でき、その調節も行いやすくなる。
【0060】
一方、第二実施例の変形例において、前記トリガ荷重増加機構90は、前記免震柱6が特定方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構70の弾性部材71のバネ定数を、前記免震柱6が特定方向以外の方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構70の弾性部材71のバネ定数より大きくすることによって構成される。このように構成すると、特定方向への免震柱6の傾斜抑制を前記弾性部材71のバネ定数の変化のみで実現でき、部品点数を削減して構造を更にシンプル化する上で非常に有効となる。
【0061】
又、第二実施例の他の変形例において、前記トリガ荷重増加機構90は、前記免震柱6が特定方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構70の弾性部材71の設置数を、前記免震柱6が特定方向以外の方向へ傾斜し始めるトリガ荷重を設定する前記トリガ締結機構70の弾性部材71の設置数より大きくすることによって構成される。このように構成すると、特定方向への免震柱6の傾斜抑制を前記弾性部材71の設置数の変化のみで実現でき、弾性部材71自体は同じものを使用できるため、組み立て時の管理等も行いやすくなる。
【0062】
尚、本発明の免震装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。