(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1除去段階において、前記封止部と、前記流体が噴射される位置との間に設けられ、前記封止部を前記流体から保護する保護部を用いて、前記流体を前記リードフレームに噴射する
請求項1から7のいずれか一項に記載の除去方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、半導体装置100の概要を説明する図である。
図1においては、半導体装置100の端部近傍の上面図および断面図を示している。上面図に示すように、半導体装置100は、封止部10およびリードフレーム20を備える。断面図に示すように、封止部10の内部には、1以上の半導体チップ50およびワイヤ40が収容される。
【0014】
半導体チップ50は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)またはパワーMOSFET等の半導体素子を含む。ただし半導体チップ50に形成される半導体素子は、パワー半導体素子に限定されない。
【0015】
半導体チップ50は、基板22に載置される。基板22は、導電板であってよく、絶縁基板に導電パターンが形成された基板であってもよい。基板表面および裏面の間で電流が流れる縦型の半導体素子が半導体チップ50に形成されている場合、半導体チップ50の対向する2つの主面にそれぞれ電極が形成される。基板22と対向する電極は、半田等により基板22と電気的に接続される。
【0016】
ワイヤ40は、金、銅、およびアルミニウムを含む金属等の導電材料で形成され、リードフレーム20と、半導体チップ50の少なくとも一つの電極とを電気的に接続する。リードフレーム20は、例えば銅、およびアルミニウムを含む金属等の導電材料で形成される。リードフレーム20は、基板22と同じ材質の導電板であってもよい。また、リードフレーム20は基板22とは分離して設けられるものと、リードフレーム20と基板22が一体となっているものを両方、もしくはどちらか一方を備えてもよい。
【0017】
なお、封止部10の内部の構造は、上記の例に限定されない。半導体チップ50には横型の半導体素子が形成されていてよい。また、半導体チップ50は絶縁基板上に載置され、それぞれのリードフレーム20と、半導体チップ50がワイヤ40で接続されていてもよい。また、ワイヤ40に代えて、バスバー等で半導体チップ50とリードフレーム20とを電気的に接続してよく、導電ポストおよび配線基板を用いて半導体チップ50およびリードフレーム20を電気的に接続してもよい。
【0018】
封止部10は、半導体チップ50およびワイヤ40の全体を覆って、半導体チップ50およびワイヤ40を保護する。本例の封止部10は、絶縁性の熱硬化性樹脂で形成される。半導体チップ50等が発生した熱を放熱すべく、封止部10はエポキシ系樹脂等の熱伝導性のよい樹脂で形成されることが好ましい。
【0019】
リードフレーム20は、一部分が封止部10の外側まで突出して設けられる。なお、
図1に示した基板22の端辺とは逆側の端辺にも、リードフレーム20が設けられている。当該逆側のリードフレーム20および基板22は一体に形成されても分離されていてもよい。当該逆側のリードフレーム20は、
図1に示すリードフレーム20とは逆側から、封止部10の外側に延伸する。
【0020】
半導体装置100の製造工程において、封止部10の外側に露出したリードフレーム20の表面には、封止部10の材料が付着したバリ30が形成される場合がある。例えば、リードフレーム20の表面のうち、封止部10と隣接する領域にバリ30が形成されやすい。バリ30が残ったままだと、半導体装置100の絶縁性等に影響がでるので、バリ30は除去することが好ましい。
【0021】
図2は、バリ30を除去する第1除去段階の一例を説明する図である。
図2は、リードフレーム20の近傍を拡大した斜視図である。第1除去段階では、リードフレーム20を加熱し、且つ、リードフレーム20に流体を噴射してバリ30を除去する。
【0022】
第1除去段階では、バリ30を除去するためにリードフレーム20に噴射する流体を加熱してよい。加熱した流体がリードフレーム20に噴射されることで、リードフレーム20が加熱される。他の例では、リードフレーム20に対して、バリ取り用の流体以外からエネルギーを供給してリードフレーム20を加熱してもよい。例えば、リードフレーム20を高温雰囲気に載置してよく、リードフレーム20に高温の物体を接触させてよく、リードフレーム20に電流等の熱以外のエネルギーを供給して、リードフレーム20を発熱させてもよい。
【0023】
また、リードフレーム20に噴射する流体は、霧状、滴状または流水状の液体、蒸気、若しくは、不活性ガスを含んだ気体である。流体は、上述した液体、蒸気または気体を少なくとも一つ含んでよい。液体は、水であってよく、水以外であってもよい。水以外の液体を用いる場合、バリ30を除去した後に、水を用いた洗浄を行ってもよい。
【0024】
リードフレーム20を加熱することで、リードフレーム20に付着した樹脂等の密着強度を低下させることができる。この状態で、リードフレーム20に流体を噴射するので、バリ30を容易に除去することができる。
【0025】
図3は、エポキシ系樹脂における、温度と密着強度との関係を示す図である。
図3においては、2種類のエポキシ系樹脂の特性を示している。いずれの樹脂も、温度の上昇とともに密着強度が低下していることがわかる。
【0026】
特に、温度が100度程度になるまで、エポキシ系樹脂の密着強度が急激に低下することがわかる。リードフレーム20に加熱した流体を噴射する場合、流体を90度以上に加熱した状態で噴射することが好ましい。ただし、流体の温度は、封止部10を形成する樹脂のアフターキュア温度以下に制御する。本例の樹脂のアフターキュア温度は、180度程度である。
【0027】
また、温度が120度程度になると、エポキシ系樹脂の密着強度がほとんど無くなることがわかる。流体の温度は、120度以上であってもよい。一方で、温度が130度以上になると、温度を上げても樹脂の密着強度はほとんど変化しない。このため、流体の温度は、130度以下であってよい。また、流体の温度は、樹脂のガラス転移温度の±10度の範囲であってもよい。
図3に示した樹脂のガラス転移温度は、120±10度である。
【0028】
なお、流体を加熱せずに、リードフレーム20を高温雰囲気に載置する場合、リードフレーム20の周囲温度を上述した流体の温度と同等の温度に制御する。また、リードフレーム20を直接加熱する場合、リードフレーム20の温度を上述した流体の温度と同等の温度に制御する。
【0029】
図4は、
図2に示した第1除去段階の後の、第2除去段階を説明する図である。第1除去段階では、流体をリードフレーム20に噴射するので、噴射領域を精度よく制御することが比較的に困難である。このため、封止部10の近傍まで流体を噴射しようとすると、封止部10にまで流体が噴射されてしまい、封止部10が削れてしまう場合がある。
【0030】
このため、第1除去段階では、封止部10の近傍には流体を噴射しないことが好ましい。例えば封止部10、および、封止部10の近傍のリードフレーム20を流体からマスクした状態で、リードフレーム20に流体を噴射する。この結果、マスクされたリードフレーム20の領域にはバリ30が残ってしまう。
【0031】
第2除去段階では、封止部10の近傍におけるリードフレーム20のバリ30を除去する。第2除去段階では、第1除去段階で流体を噴射したリードフレーム20の範囲よりも狭い範囲におけるバリ30を除去する。例えば第1除去段階では、リードフレーム20の先端(すなわち、封止部10とは逆側の端部)から所定の長さの範囲R1に、流体を噴射する。このとき、残りの範囲R2にはバリ30が残存する。
【0032】
リードフレーム20の延伸方向に沿った範囲R2の長さは、範囲R1の長さの1/3以下であってよく、1/5以下であってもよい。範囲R2は、第1除去段階における流体が封止部10にかからない程度の長さがあればよい。
【0033】
第2除去段階では、第1除去段階よりも精度よく除去範囲を制御できる方法で、バリ30を除去する。本例の第2除去段階では、リードフレーム20にレーザーを局所的に照射してバリ30を除去する。レーザーの径は、リードフレーム20の長さより小さくてよく、リードフレーム20の幅より小さくてもよい。リードフレーム20の幅とは、板状のリードフレームの主面において、リードフレーム20の延伸方向とは垂直な方向における幅を指す。一例として、リードフレーム20の長さは1mm以上であり、幅は0.2mm以上、0.4mm以下程度である。また、封止部10の厚みは5mm程度である。
【0034】
第2除去段階では、リードフレーム20の範囲R2内をレーザーで走査してもよい。また、第2除去段階では、第1除去段階で流体を噴射した領域R1において、範囲R2と隣接する一部の領域にもレーザーを照射してよい。
【0035】
本例における除去方法では、大部分のバリ30を第1除去段階で除去する。このため、効率よくバリ30を除去することができる。また、封止部10の近傍におけるバリ30をレーザー等で除去する。このため、レーザー等によるリードフレーム20へのダメージを低減しつつ、精度よくバリ30を除去することができる。
【0036】
なお、第2除去段階では、レーザー以外の方法でバリ30を除去してもよい。例えば、微細なブラシ等で範囲R2のバリ30を除去できる。
【0037】
図5は、半導体装置100の製造工程の一部を説明する図である。半導体装置100を製造する工程においては、複数の半導体装置100のリードフレーム20が、共通のダムバー60と一体に形成されている。それぞれの半導体装置100は、アフターキュア前の封止部10を有する。
【0038】
複数の半導体装置100が共通のダムバー60に接続された状態で、バリ30の除去装置70に搬入される。バリ30が除去された後に、封止部10を加熱してアフターキュアする。アフターキュア後に、切断線Aに沿ってリードフレーム20を切断して、それぞれの半導体装置100を分離する。
【0039】
図6は、第1除去段階の他の例を説明する断面図である。本例の第1除去段階においては、封止部10と、流体が噴射される位置との間に設けられ、封止部10を流体から保護する保護部72を用いる。本例の保護部72は、一端がリードフレーム20の表面に接触する板状部材を有する。
【0040】
保護部72をリードフレーム20の表面に接触させた状態で、ノズル32からリードフレーム20に向けて流体を噴射する。また、保護部72は、リードフレーム20の表面からわずかに離れていてもよい。ノズル32とリードフレーム20との距離は、保護部72の高さより小さくてよい。また、リードフレーム20の裏面からも流体を噴射する場合、リードフレーム20の裏面側にも保護部72を配置する。
【0041】
保護部72は、封止部10よりも高い位置まで形成されてよい。保護部72および封止部10の高さは、リードフレーム20の表面に垂直な方向における高さを指す。保護部72の高さは、封止部10の高さの2倍以上であってよい。
【0042】
第2除去段階においては、保護部72により流体から保護された領域のバリ30を除去する。第2除去段階においては、保護部72を用いない。
【0043】
保護部72の厚みW1は、流体が封止部10に到達しない程度に厚いことが好ましい。例えば保護部72の厚みW1は、リードフレーム20の厚みW2の1倍以上であってよい。
【0044】
また、保護部72の厚みW1を大きくしすぎると、第2除去段階においてレーザー等でバリ30を除去する範囲が大きくなってしまう。このため、保護部72の厚みW1は、リードフレーム20の厚みW2の2倍以下程度が好ましい。
【0045】
一例として、リードフレーム20の厚みW2は0.1mm以上、0.2mm以下程度である。これに対して、保護部72の厚みW1は、0.15mm以上、0.3mm以下であってよい。
【0046】
図7は、半導体装置100の製造工程の一例を示す図である。本例の製造工程では、封止部形成段階S404と、アフターキュア段階S408の間に、第1除去段階S406を備える。より具体的には、封止部形成段階S404と、第2除去段階S408の間に、第1除去段階S406を有する。
【0047】
まず、回路形成段階S400において、半導体チップ50を含む電子回路を形成する。回路形成段階S400では、半導体チップ50を基板22上にボンディングし(S401)、半導体チップ50とリードフレーム20とを接続するワイヤ40をボンディングする(S402)。
【0048】
次に、封止部形成段階S404において、半導体チップ50を含む電子回路と、半導体チップ50に接続するリードフレーム20の一部とを封止する、樹脂等の封止部10を形成する。S404においては、封止部10をアフターキュア温度より低い温度で硬化させてもよい。
【0049】
また、封止部形成段階S404では、樹脂を硬化させた後に、リードフレーム20の間に形成された樹脂を打ち抜いて除去してよい。このとき、リードフレーム20の表面に残った樹脂がバリ30となる。
【0050】
次に、第1除去段階S406において、リードフレーム20を加熱して流体を噴射する熱バリ取り工程を行う。加熱した水、または水蒸気をリードフレーム20に噴射する場合、水、または水蒸気の吐出圧力は2MPa〜10MPaの範囲とすることが好ましく、2.5MPa〜7.5MPaの範囲としてもよい。ノズル径0.5〜1.5mmの噴射口からリードフレーム20までの距離は5cm以下の距離になるように調整し、1つの半導体装置100当たりに対する噴射時間は0.5秒〜2.0秒程度とする。
【0051】
また、加熱した窒素ガスをリードフレーム20に噴射する場合、窒素ガスの吐出圧力は2MPa〜10MPaの範囲とすることが好ましく、2.5MPa〜7.5MPaの範囲としてもよい。ノズル径0.5〜1.5mmの噴射口からリードフレーム20までの距離は5cm以下の距離になるように調整し、1つの半導体装置100当たりに対する噴射時間は0.5秒〜2.0秒程度とする。
【0052】
次に、第2除去段階S408において、リードフレーム20の封止部10近傍の領域にレーザー等を照射して、バリ30を除去する。第1除去段階S406および第2除去段階S408の処理は、
図1から
図6において説明した処理と同一である。
【0053】
次に、アフターキュア段階S410において、封止部10をアフターキュアする。次に、切断段階S412において、ダムバー60とリードフレーム20とを切断して、それぞれの半導体装置100をダムバー60から分離する。
【0054】
次に、個片化段階S414において、個々の半導体装置100を完成させる。例えばS414においては、リードフレーム20の表面をメッキする工程、封止部10の形状を整形する工程等が含まれてよい。本例における製造方法によれば、バリ30が精度よく除去され、且つ、バリ取りによるダメージが少ない半導体装置100を、効率よく製造することができる。
【0055】
半導体装置100は、リードフレーム20または封止部10におけるダメージが少ないので、長期的な信頼性も確保できる。このため、例えばハイブリッド自動車、電気自動車の電力変換装置、または、電力変換制御装置に用いることができる。
【0056】
図8は、
図3に示した樹脂の密着強度を測定する測定装置300の一例を示す。測定装置300は、樹脂載置部306、下側治具302、上側治具304および加熱部310を備える。
【0057】
測定装置300は、下側治具302の表面に固定された樹脂載置部306の表面に、測定対象の樹脂308を付着させる。樹脂載置部306は、リードフレーム20と同一の金属材料で形成されている。
【0058】
加熱部310は、下側治具302の裏面に設けられ、下側治具302および樹脂載置部306を介して測定対象の樹脂308を加熱する。また、測定装置300は、樹脂308の温度を測定する温度検出部を更に備えることが好ましい。
【0059】
上側治具304は、樹脂載置部306の上方から、樹脂載置部306の表面に沿って下方に移動可能に設けられる。上側治具304が下方に移動するのに伴い、樹脂308には下向きの力が印加される。上側治具304が樹脂308に印加する力を徐々に増加させて、樹脂308が樹脂載置部306から剥がれたときの力を検出する。このような測定を、樹脂308の温度毎に行うことで、
図3に示した特性を測定した。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0061】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。