(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753089
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】タイヤ用ブラダー
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20200831BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20200831BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20200831BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-55388(P2016-55388)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-165074(P2017-165074A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有二
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−035213(JP,A)
【文献】
特開2015−223776(JP,A)
【文献】
特開2012−240465(JP,A)
【文献】
特開2014−097791(JP,A)
【文献】
特開2007−301899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 35/00−35/18
B29D 30/00−30/72
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ製造過程において使用されるタイヤ用ブラダーにおいて、円筒状をなすブラダー本体と、該ブラダー本体の表面に装着された第1の機械的留め具とを備え、該第1の機械的留め具はこれと対をなす第2の機械的留め具に対して機械的に結合自在の構造を有し、前記第2の機械的留め具を備えた任意の付属物が前記第1の機械的留め具と前記第2の機械的留め具との相互結合により前記ブラダー本体の表面に装着され、前記付属物として、温度センサ又は歪みセンサを備えることを特徴とするタイヤ用ブラダー。
【請求項2】
前記第1の機械的留め具が複数の留め具部材から構成され、これら留め具部材がゴムシートを挟んだ状態で一体的に組み立てられ、前記第1の機械的留め具が前記ゴムシートと共に前記ブラダー本体の表面に装着されたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ブラダー。
【請求項3】
前記第1の機械的留め具の前記ブラダー本体からの突出高さが0mm〜3mmであり、かつ前記第1の機械的留め具の前記ブラダー本体から露出している部分の外径が4mm〜12mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ用ブラダー。
【請求項4】
前記付属物として、伸縮自在の網状支持体と、該網状支持体に取り付けられた温度センサとを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ブラダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造過程において使用されるタイヤ用ブラダーに関し、更に詳しくは、ブラダー本体の表面に任意の付属物を簡単かつ安定的に設置することを可能にしたタイヤ用ブラダーに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを成形する工程において、ブラダーをグリーンタイヤの内側に配置し、そのブラダーの中に内圧を充填することにより、グリーンタイヤを支持したり、グリーンタイヤそのものを変形させたりすることが行われている。また、加硫工程においては、グリーンタイヤの内側でブラダーを膨らませることにより、グリーンタイヤを金型の成形面に対して押圧すると共に、ブラダー内部に充填された熱媒体によりグリーンタイヤを加熱することが行われている。
【0003】
このようにして使用されるタイヤ用ブラダーの膨らみ方、即ち、歪み分布が不均一であると、それが製品タイヤの品質に対して直接的に悪影響を与えることになる。そのため、タイヤ製造過程においてブラダーの膨らみ方を観測することは重要である。ところが、ブラダーはグリーンタイヤの内側に配置されるため、タイヤの外側からブラダーの膨らみ方を確認することはできない。
【0004】
一方、加硫工程においては、歪み分布のみならず、ブラダー内部に充填された熱媒体の温度を観測することも重要である。しかし、ブラダー内部に充填された熱媒体の温度をタイヤの外側から観測することは更に困難である。
【0005】
このような問題を解決するために、歪みや温度を計測するためのセンサをブラダーの表面に設置することが有効である。しかしながら、ブラダーは厚さが比較的薄くゴム主体で構成されているため、センサをブラダーに対して安定的に設置することは困難である。
【0006】
これに対して、空気入りタイヤの加硫工程において、ブラダー内部の温度を測定する方法として、ブラダー内面に突起を一体的に成形し、その突起に温度センサを装着することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ブラダー内面に成形された突起を利用してセンサ等の付属物を装着する場合、その装着作業が煩わしく、しかも付属物を安定的に設置することは難しいのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−223776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ブラダー本体の表面に任意の付属物を簡単かつ安定的に設置することを可能にしたタイヤ用ブラダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のタイヤ用ブラダーは、タイヤ製造過程において使用されるタイヤ用ブラダーにおいて、円筒状をなすブラダー本体と、該ブラダー本体の表面に装着された第1の機械的留め具とを備え、該第1の機械的留め具はこれと対をなす第2の機械的留め具に対して機械的に結合自在の構造を有
し、前記第2の機械的留め具を備えた任意の付属物が前記第1の機械的留め具と前記第2の機械的留め具との相互結合により前記ブラダー本体の表面に装着され、前記付属物として、温度センサ又は歪みセンサを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ブラダー本体の表面に第1の機械的留め具を備え付けることにより、これと対をなす第2の機械的留め具を備えた任意の付属物を第1の機械的留め具と第2の機械的留め具との相互結合によりブラダー本体の表面に対して簡単かつ安定的に設置することができる。そして、ブラダー本体の表面に対して付属物が安定的に設置されるので、タイヤ製造過程において付属物を有効に活用することができる。例えば、付属物を温度センサとした場合、タイヤ製造過程においてブラダーの内部温度を測定することができ、付属物を歪みセンサとした場合、タイヤ製造過程においてブラダー本体の歪みを検出することができる。
【0011】
本発明において、第1の機械的留め具は複数の留め具部材から構成され、これら留め具部材がゴムシートを挟んだ状態で一体的に組み立てられ、第1の機械的留め具がゴムシートと共にブラダー本体の表面に装着されることが好ましい。これにより、第1の機械的留め具をブラダー本体に対して強固に固定することができる。
【0012】
第1の機械的留め具のブラダー本体からの突出高さは0mm〜3mmであり、かつ第1の機械的留め具のブラダー本体から露出している部分の外径は4mm〜12mmであることが好ましい。第1の機械的留め具の突出高さ及び外径を上記範囲に設定することにより、付属物を安定して保持することが可能となり、しかもブラダー本体の伸縮を実質的に阻害することがない。
【0013】
第2の機械的留め具を備えた任意の付属物は、第1の機械的留め具と第2の機械的留め具との相互結合によりブラダー本体の表面に装着される。このような付属物としては、上述のような温度センサや歪みセンサを例示することができる。また、付属物として、伸縮自在の網状支持体と、該網状支持体に取り付けられた温度センサとを備えることも可能である。この場合、例えば、網状支持体をブラダー本体の子午線断面に沿って配置し、温度センサを網状支持体の任意の位置に配置することにより、ブラダーの内部温度の測定位置を適宜選択することができる。また、網状支持体に対して複数の温度センサを取り付けた場合、複数の温度センサを網状支持体と共に同時に着脱することができるという利点もある。
【0014】
本発明において、第1の機械的留め具及び第2の機械的留め具とは、結合と分離を反復的に行うことを許容する機械的な連結構造を有するものを意味する。その代表的なものとして、ホック又はスナップと呼ばれる機械的留め具があり、衣料業界等では、より具体的には、スナップボタン、リングスナップ、リングホック、アメリカンスナップ、アメリカンホック、アイレットホック、バネホック、又は、ジャンパーホックと呼ばれるものである。また、機械的留め具は結合部が小面積(例えば、好ましくは1mm
2〜115mm
2、更に好ましくは4mm
2〜90mm
2)である点状の留め具である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明が適用されるタイヤ用ブラダー(成形用)の一例を示す子午線断面図である。
【
図2】本発明が適用されるタイヤ用ブラダー(加硫用)の一例を示す子午線断面図である。
【
図3】本発明の実施形態からなるタイヤ用ブラダーを示す子午線断面である。
【
図4】本発明の実施形態からなるタイヤ用ブラダーを示す切り欠き斜視図である。
【
図5】ゴムシートを挟んだ状態で一体的に組み立てられる第1の機械的留め具を示す斜視図である。
【
図6】ゴムシートを挟んだ状態で一体的に組み立てられた第1の機械的留め具を備えたタイヤ用ブラダーを示す切り欠き斜視図である。
【
図7】ブラダー本体の表面に装着された第1の機械的留め具を示す斜視面である。
【
図8】本発明の他の実施形態からなるタイヤ用ブラダーを示す子午線断面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明が適用されるタイヤ用ブラダーの一例を示すものである。
図1において、ブラダー10はグリーンタイヤGの成形工程において使用されるものである。このブラダー10は円筒状をなし、一対ビード支持部材20,20により支持されたグリーンタイヤGの内側に同軸的に挿入される。そして、ブラダー10をグリーンタイヤGの内側で膨らませることにより、グリーンタイヤGを所望の形状に変形させるように機能する。
【0017】
図2は本発明が適用されるタイヤ用ブラダーの他の例を示すものである。
図2において、ブラダー10はグリーンタイヤGの加硫工程において使用されるものである。このブラダー10は円筒状をなし、金型30内に投入されたグリーンタイヤGの内側に同軸的に挿入される。そして、ブラダー10をグリーンタイヤGの内側で膨らませることにより、グリーンタイヤGを金型30の成形面に対して押圧するように機能する。
図2において、金型30は下型31、上型32及びセクター33から構成されている。また、ブラダー10の下端部は下型31と下側クランプリング34との間に把持され、ブラダー10の上端部は上側クランプリング35と補助リング36との間に把持されている。
【0018】
図3は本発明の実施形態からなるタイヤ用ブラダーを示すものであり、
図1に示すタイヤ成形用ブラダー又は
図2に示すタイヤ加硫用ブラダーとして使用される。
図3に示すように、ブラダー10は、円筒状に成形されたブラダー本体11と、ブラダー本体11の内表面に装着された第1の機械的留め具12とを備えている。ブラダー本体11の軸方向の両端部にはそれぞれフランジ部が形成されている。一方、ブラダー本体11の内表面に装着されるべき付属物13には第1の機械的留め具12と対をなす第2の機械的留め具14が装着されている。第1の機械的留め具12と第2の機械的留め具14とは機械的に結合自在の構造を有している。これら機械的留め具12,14を互いに結合させることにより、ブラダー本体11の内表面に対して付属物13が設置される。
【0019】
上述したタイヤ用ブラダー10によれば、ブラダー本体11の内表面に第1の機械的留め具12を備え付けることにより、これと対をなす第2の機械的留め具14を備えた任意の付属物12を第1の機械的留め具12と第2の機械的留め具14との相互結合によりブラダー本体11の表面に対して簡単かつ安定的に設置することができる。付属物13を温度センサとした場合、タイヤ製造過程においてブラダー10の内部温度を測定することができる。また、付属物13を歪みセンサとした場合、タイヤ製造過程においてブラダー本体11の歪みを検出することができる。例えば、一対の機械的留め具12を跨ぐように該一対の機械的留め具12に対して導電性部材を装着し、その抵抗値の変化を測定することにより、歪みセンサを構成することができる。
【0020】
上記タイヤ用ブラダー10において、第1の機械的留め具12の設置箇所は適宜選択することができる。例えば、
図4においては、複数の第1の機械的留め具12がブラダー本体11の周方向に沿って間隔をおいて配置されている。また、複数の第1の機械的留め具12がブラダー本体11の軸方向に沿って間隔をおいて配置されていても良い。
【0021】
図5はゴムシートを挟んだ状態で一体的に組み立てられる第1の機械的留め具を示し、
図6はそのような第1の機械的留め具を備えたタイヤ用ブラダーを示すものである。
図5において、第1の機械的留め具12は複数の留め具部材12A,12Bから構成されている。これら留め具部材12A,12Bはゴムシート15を挟んだ状態で一体的に組み立てられて第1の機械的留め具12を構成する。このように組み立てられた第1の機械的留め具12は、
図6に示すように、ゴムシート5と共にブラダー本体11の内表面に装着される。これにより、第1の機械的留め具12をブラダー本体11に対して強固に固定することができる。
【0022】
上述したゴムシート5は、適宜の縫合部材や係止部材や接着剤を用いてブラダー本体11に対して固定することができ、或いは、加硫接着によりブラダー本体11に対して一体的に固定することができる。また、ゴムシート15を用いることなく、第1の機械的留め具12を接着剤等によりブラダー本体11に対して直接接着することも可能である。
【0023】
図7はブラダー本体の表面に装着された第1の機械的留め具を示すものである。
図7に示すように、第1の機械的留め具12のブラダー本体11からの突出高さHは0mm〜3mmであり、かつ第1の機械的留め具12のブラダー本体11から露出している部分の外径Dは4mm〜12mmであると良い。第1の機械的留め具12の突出高さH及び外径Dを上記範囲に設定することにより、付属物13を安定して保持することが可能となり、しかもブラダー本体11の伸縮を実質的に阻害することがない。第1の機械的留め具12が小さ過ぎると付属物13を安定して保持することが困難になり、逆に大き過ぎるとブラダー本体11の伸縮を阻害する恐れがある。なお、第1の機械的留め具12をブラダー本体11に埋没させることにより、その突出高さHを0mmとすることが許容される。
【0024】
図8は本発明の他の実施形態からなるタイヤ用ブラダーを示すものである。
図8においては、付属物13として、伸縮自在の網状支持体16と、該網状支持体16に取り付けられた複数の温度センサ17とが使用されている。より具体的には、ブラダー本体11の内表面には複数の第1の機械的留め具12がブラダー本体11の軸方向に沿って並ぶように配置されており、網状支持体16にはそれに対応する複数の第2の機械的留め具14が取り付けられている。また、温度センサ17は網状支持体16の任意の位置に配置されている。このような網状支持体16はブラダー本体11の子午線断面に沿って配置され、第1の機械的留め具12と第2の機械的留め具14との相互結合によりブラダー本体11の内表面に装着される。そのため、網状支持体16における温度センサ17の取り付け位置に基づいて、ブラダー10の内部温度の測定位置を適宜選択することができる。また、網状支持体16に対して複数の温度センサ17を取り付けた場合、複数の温度センサ17を網状支持体16と共に同時に着脱することができるという利点もある。なお、網状支持体16は伸縮性を有する素材で構成されているので、ブラダー本体11の膨張に追従することができる。
【0025】
上述した実施形態では、ブラダー本体11の内表面に第1の機械的留め具12を装着した場合について説明したが、本発明では第1の機械的留め具12をブラダー本体11の外表面に装着することも可能である。第1の機械的留め具12をブラダー本体11の外表面に装着した場合、付属物13がグリーンタイヤGと接触することになるが、例えば、タイヤ製造に関する試験工程においては何ら不都合を生じるものではない。
【0026】
また、本発明は上述のようにタイヤ内側に挿入されるブラダーに適用することが好ましいが、例えば、タイヤ製造過程においてカーカス部材をターンナップする際に使用されるブラダーにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 ブラダー
11 ブラダー本体
12 第1の機械的留め具
12A,12B 留め具部材
13 付属物
14 第2の機械的留め具
15 ゴムシート
16 網状支持体
17 温度センサ