特許第6753099号(P6753099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6753099光ファイバテープ心線の製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753099
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】光ファイバテープ心線の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20200831BHJP
【FI】
   G02B6/44 391
   G02B6/44 371
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-58707(P2016-58707)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-173517(P2017-173517A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 登志久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】石川 正彦
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−252196(JP,A)
【文献】 特開2003−241041(JP,A)
【文献】 実開昭59−009052(JP,U)
【文献】 特開2013−003516(JP,A)
【文献】 米国特許第05530782(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00−6/02
G02B 6/04−6/08
G02B 6/10
G02B 6/16−6/22
G02B 6/44
C03B 37/00−37/16
C03C 25/00−25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線を並行に並べてパスラインを走行させ、前記パスラインの途中で、前記光ファイバ心線のうちの隣り合う心線の間に長手方向に間欠的に接着樹脂を塗布する工程と、該接着樹脂を硬化させる工程を有する間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造する製造方法であって、
前記間欠的に接着樹脂を塗布する工程は、前記パスライン中に設置された円盤状のファイバローラーと、直径が円周方向で均一かつ前記ファイバローラーよりも直径が大きく、かつ周縁部近傍の円周方向の一部に前記接着樹脂を保持するための空隙部を有する円盤状の仕切り板と、を交互に積層してなる接着樹脂搬送ローラーを、回転させながら硬化していない前記接着樹脂に浸して前記空隙部に前記接着樹脂を保持させた後、走行中の前記光ファイバ心線の間に前記仕切り板を挟み込むようにして前記光ファイバ心線を前記仕切り板に接触させ、前記空隙部に保持した前記接着樹脂を前記光ファイバ心線に長手方向に間欠的に塗布する工程である、光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項2】
前記空隙部は、前記仕切り板の周縁部近傍に設けられたスリットである、請求項1に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項3】
前記空隙部は、前記仕切り板の周縁部近傍に設けられた、少なくとも一つ以上の孔である、請求項1に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項4】
前記接着樹脂搬送ローラーは、動力で駆動されて回転する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項5】
前記接着樹脂搬送ローラーよりも前記パスラインの上流側に光ファイバ心線の走行速度を検出するセンサが配置され、
前記センサが検出した走行速度の情報を用いて、前記接着樹脂搬送ローラーの回転速度を制御する、請求項4に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項6】
前記接着樹脂搬送ローラーは、動力により駆動されずに、前記光ファイバ心線とローラーとの摩擦により回転する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造方法。
【請求項7】
複数の光ファイバ心線を並行に並べてパスラインを走行させ、前記パスラインの途中に、前記光ファイバ心線のうちの隣り合う心線の間に長手方向に間欠的に接着樹脂を塗布する装置と、該接着樹脂を硬化させる装置と、を有する間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造する製造装置であって、
前記間欠的に接着樹脂を塗布する装置は、
前記パスライン中に設置された円盤状のファイバローラーと、直径が円周方向で均一かつ前記ファイバローラーよりも直径が大きく、かつ周縁部近傍の円周方向の一部に接着樹脂を保持するための空隙部を有する円盤状の仕切り板と、を交互に積層してなる接着樹脂搬送ローラーと、
接着樹脂を貯留する接着樹脂槽と、からなる、光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項8】
前記空隙部は、前記仕切り板の周縁部近傍に設けられたスリットである、請求項7に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項9】
前記空隙部は、前記仕切り板の周縁部近傍に設けられた、少なくとも一つ以上の孔である、請求項7に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項10】
前記接着樹脂搬送ローラーを回転させる駆動部を備える、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項11】
前記接着樹脂搬送ローラーよりも前記パスラインの上流側に配置され前記光ファイバ心線の走行速度を検出するセンサと、
前記センサにより検出された前記走行速度の情報を用いて、前記駆動部を制御する制御部を備える、請求項10に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【請求項12】
前記接着樹脂搬送ローラーは、前記光ファイバ心線との摩擦により回転するように設置されている、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の光ファイバテープ心線の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープ心線の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容易に単心分離することができる光ファイバテープ心線として、隣接する光ファイバ同士を長手方向に間欠的に連結した間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造する方法が知られている。例えば、特許文献1には、平行に配列した状態で走行する光ファイバ線間を保持する仕切り片に、樹脂を吐出する吐出口を設けて、樹脂の吐出量・吐出タイミングを制御して、間欠的に光ファイバ同士を連結する方法が開示されている。特許文献2には、側面に間欠的に接着樹脂を付けたローラーを走行する平行に並べた光ファイバ心線に押し付けて、接着樹脂を光ファイバ心線に転写することにより間欠的に光ファイバ心線同士を接着する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5469044号公報
【特許文献2】特許第5759795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示された方法では、仕切り片に設けられた吐出口に対して樹脂を間欠的に供給する必要があるが、樹脂は粘性を持つために供給と停止を繰り返す時間周期にはおのずと上限がある。このため、光ファイバ心線を高速に走行させて間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造することが難しく、製造時間がかかるため製造コストが高くなる。また、特許文献2に開示された方法では、不要な個所に接着剤が付着し、所望の間欠連結の形状が得られないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、製造コストを高くすることなく、光ファイバ心線を高速に走行させて所望の形状に間欠的に連結した間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造することができる光ファイバテープ心線の製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光ファイバテープ心線の製造方法は、複数の光ファイバ心線を並行に並べてパスラインを走行させ、前記パスラインの途中で、前記光ファイバ心線のうちの隣り合う心線の間に長手方向に間欠的に接着樹脂を塗布する工程と、該接着樹脂を硬化させる工程を有する間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造する製造方法であって、
前記間欠的に接着樹脂を塗布する工程は、前記パスライン中に設置された円盤状のファイバローラーと、直径が円周方向で均一かつ前記ファイバローラーよりも直径が大きく、かつ周縁部近傍の円周方向の一部に前記接着樹脂を保持するための空隙部を有する円盤状の仕切り板と、を交互に積層してなる接着樹脂搬送ローラーを、回転させながら硬化していない前記接着樹脂に浸して前記空隙部に前記接着樹脂を保持させた後、走行中の前記光ファイバ心線の間に前記仕切り板を挟み込むようにして前記光ファイバ心線を前記仕切り板に接触させ、前記空隙部に保持した前記接着樹脂を前記光ファイバ心線に長手方向に間欠的に塗布する工程である。
【0007】
複数の光ファイバ心線を並行に並べてパスラインを走行させ、前記パスラインの途中に、前記光ファイバ心線のうちの隣り合う心線の間に長手方向に間欠的に接着樹脂を塗布する装置と、該接着樹脂を硬化させる装置と、を有する間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造する製造装置であって、
前記間欠的に接着樹脂を塗布する装置は、
前記パスライン中に設置された円盤状のファイバローラーと、直径が円周方向で均一かつ前記ファイバローラーよりも直径が大きく、かつ周縁部近傍の円周方向の一部に接着樹脂を保持するための空隙部を有する円盤状の仕切り板と、を交互に積層してなる接着樹脂搬送ローラーと、
接着樹脂を貯留する接着樹脂槽と、からなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造コストを高くすることなく、光ファイバ心線を高速に走行させて所望の形状に間欠的に連結した間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置の概略図である。
図2】接着樹脂搬送ローラーと接着樹脂槽の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)はG−G断面図である。
図3】各仕切り板の構成を示す平面図である。
図4】接着樹脂搬送ローラーの回転による接着樹脂の塗布を説明する領域AからFの各断面図である。
図5】線間に所望の間隔で接着樹脂が間欠的に塗布された複数の光ファイバ心線の平面図である。
図6図5の断面図である。
図7】仕切り板の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造方法は、
(1) 複数の光ファイバ心線を並行に並べてパスラインを走行させ、前記パスラインの途中で、前記光ファイバ心線のうちの隣り合う心線の間に長手方向に間欠的に接着樹脂を塗布する工程と、該接着樹脂を硬化させる工程を有する間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造する製造方法であって、
前記間欠的に接着樹脂を塗布する工程は、前記パスライン中に設置された円盤状のファイバローラーと、直径が円周方向で均一かつ前記ファイバローラーよりも直径が大きく、かつ周縁部近傍の円周方向の一部に前記接着樹脂を保持するための空隙部を有する円盤状の仕切り板と、を交互に積層してなる接着樹脂搬送ローラーを、回転させながら硬化していない前記接着樹脂に浸して前記空隙部に前記接着樹脂を保持させた後、走行中の前記光ファイバ心線の間に前記仕切り板を挟み込むようにして前記光ファイバ心線を前記仕切り板に接触させ、前記空隙部に保持した前記接着樹脂を前記光ファイバ心線に長手方向に間欠的に塗布する工程である。
なお、上記の「直径が円周方向で均一」とは、円周方向の直径が厳密に均一であることを意味するものではなく、均一とみなされる範囲であれば本発明の効果を奏する範囲で幅を持つ意味である。
【0011】
上記(1)の光ファイバテープ心線の製造方法によれば、走行中の光ファイバ心線を仕切り板とファイバローラーに接触させるが、仕切り板の空隙部を設けた部分では、この仕切り板に隣接する光ファイバ心線の側面に、空隙部に保持された接着樹脂が塗布される。このため、仕切り板で空隙部を設けた部分と設けられていない部分とを光ファイバ心線に接触させることで、光ファイバ心線間に間欠的に接着樹脂を塗布することができる。
また、光ファイバ心線の位置は接着樹脂搬送ローラーで固定されるので、位置決め精度を上げるための精密な機構は必要ない。
また、接着樹脂搬送ローラーを回転させながら硬化していない接着樹脂に浸すことで接着樹脂を供給するだけなので、接着樹脂を間欠的に供給する機構は必要がなく、このため、光ファイバを高速に走行させながら間欠的に樹脂を塗布できる。
よって、製造コストを高くすることなく、光ファイバ心線を高速に走行させて所望の形状に間欠的に連結した間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造することができる。
【0012】
(2) (1)の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記空隙部は、前記仕切り板の周縁部近傍に設けられたスリットである。
仕切り板の周縁部近傍に設けられたスリットに接着樹脂を保持できるので、仕切り板でスリットを設けた部分と設けられていない部分とを光ファイバ心線に接触させて、光ファイバ心線間に間欠的に接着樹脂を塗布することができる。
【0013】
(3) (1)の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記空隙部は、前記仕切り板の周縁部近傍に設けられた、少なくとも一つ以上の孔である。
仕切り板の周縁部近傍に設けられた孔に接着樹脂を保持できるので、仕切り板で孔を設けた部分と設けていない部分とを光ファイバ心線に接触させて、光ファイバ心線間に間欠的に接着樹脂を塗布することができる。また、空隙部が孔の場合、仕切り板の遠心力による保持された接着樹脂の飛び出しを防ぐことができるので、光ファイバ心線をより高速に走行させることができる。また、孔をあける加工は比較的簡単なため、加工費を低減できる。
【0014】
(4) (1)から(3)のいずれか一の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記接着樹脂搬送ローラーは、動力で駆動されて回転する。
接着樹脂搬送ローラーが動力で駆動されているので、ローラーの径を変えなくても、間欠連結ピッチを任意に変えることができる。
【0015】
(5) (4)の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記接着樹脂搬送ローラーよりも前記パスラインの上流側に光ファイバ心線の走行速度を検出するセンサが配置され、
前記センサが検出した走行速度の情報を用いて、前記接着樹脂搬送ローラーの回転速度を制御する。
テープ心線の走行速度を検知して、その情報に基づいて接着樹脂搬送ローラーの回転速度を制御することで、光ファイバ心線の走行速度が変動しても、所望の間欠連結ピッチを安定して実現できる。
【0016】
(6) (1)から(3)のいずれか一の光ファイバテープ心線の製造方法において、前記接着樹脂搬送ローラーは、動力により駆動されずに、前記光ファイバ心線とローラーとの摩擦により回転する。
接着樹脂搬送ローラーを動力により駆動せず、光ファイバ心線との摩擦で回転させることで、ローラーと光ファイバ心線間の滑りが最小になり、光ファイバ心線表面が損傷するのを抑えられる。また、光ファイバ心線の走行速度が変わっても、ローラーの回転速度も追随して変わるため、間欠連結ピッチが安定する。
【0017】
本発明の実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置は、
(7) 複数の光ファイバ心線を並行に並べてパスラインを走行させ、前記パスラインの途中に、前記光ファイバ心線のうちの隣り合う心線の間に長手方向に間欠的に接着樹脂を塗布する装置と、該接着樹脂を硬化させる装置と、を有する間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造する製造装置であって、
前記間欠的に接着樹脂を塗布する装置は、
前記パスライン中に設置された円盤状のファイバローラーと、直径が円周方向で均一かつ前記ファイバローラーよりも直径が大きく、かつ周縁部近傍の円周方向の一部に接着樹脂を保持するための空隙部を有する円盤状の仕切り板と、を交互に積層してなる接着樹脂搬送ローラーと、
接着樹脂を貯留する接着樹脂槽と、からなる。
なお、上記の「直径が円周方向で均一」とは、円周方向の直径が厳密に均一であることを意味するものではなく、均一とみなされる範囲であれば本発明の効果を奏する範囲で幅を持つ意味である。
【0018】
上記(7)の光ファイバテープ心線の製造装置によれば、走行中の光ファイバ心線を仕切り板とファイバローラーに接触させるが、仕切り板の空隙部を設けた部分では、この仕切り板に隣接する光ファイバ心線の側面に、空隙部に保持された接着樹脂が塗布される。このため、仕切り板で空隙部を設けた部分と設けられていない部分とを光ファイバ心線に接触させることで、光ファイバ心線間に間欠的に接着樹脂を塗布することができる。
また、光ファイバ心線の位置は接着樹脂搬送ローラーで固定されるので、位置決め精度を上げるための精密な機構は必要ない。
また、接着樹脂搬送ローラーを回転させながら硬化していない接着樹脂に浸すことで接着樹脂を供給するだけなので、接着樹脂を間欠的に供給する機構は必要がなく、このため、光ファイバを高速に走行させながら間欠的に樹脂を塗布できる。
よって、製造コストを高くすることなく、光ファイバ心線を高速に走行させて所望の形状に間欠的に連結した間欠連結型の光ファイバテープ心線を製造することができる。
【0019】
(8) (7)の光ファイバテープ心線の製造装置において、前記空隙部は、前記仕切り板の周縁部近傍に設けられたスリットである。
仕切り板の周縁部近傍に設けられたスリットに接着樹脂を保持できるので、仕切り板でスリットを設けた部分と設けられていない部分とを光ファイバ心線に接触させて、光ファイバ心線間に間欠的に接着樹脂を塗布することができる。
【0020】
(9) (7)の光ファイバテープ心線の製造装置において、上記空隙部は、前記仕切り板の周縁部近傍に設けられた、少なくとも一つ以上の孔である。
仕切り板の周縁部近傍に設けられた孔に接着樹脂を保持できるので、仕切り板で孔を設けた部分と設けていない部分とを光ファイバ心線に接触させて、光ファイバ心線間に間欠的に接着樹脂を塗布することができる。また、空隙部が孔の場合、仕切り板の遠心力による保持された接着樹脂の飛び出しを防ぐことができるので、光ファイバ心線をより高速に走行させることができる。また、孔をあける加工は比較的簡単なため、加工費を低減できる。
【0021】
(10) (7)から(9)のいずれか一の光ファイバテープ心線の製造装置において、前記接着樹脂搬送ローラーを回転させる駆動部を備える。
接着樹脂搬送ローラーが駆動部により駆動されているので、ローラーの径を変えなくても、間欠連結ピッチを任意に変えることができる。
【0022】
(11) (10)の光ファイバテープ心線の製造装置において、前記接着樹脂搬送ローラーよりも前記パスラインの上流側に配置され前記光ファイバ心線の走行速度を検出するセンサと、
前記センサにより検出された前記走行速度の情報を用いて、前記駆動部を制御する制御部を備える。
センサにより光ファイバ心線の走行速度を検知でき、その走行速度の情報に基づいて接着樹脂搬送ローラーの回転速度を制御部により制御することができる。これにより、光ファイバ心線の走行速度が変動しても、所望の間欠連結ピッチを安定して実現できる。
【0023】
(12) (7)から(9)のいずれか一の光ファイバテープ心線の製造装置において、前記接着樹脂搬送ローラーは、前記光ファイバ心線との摩擦により回転するように設置されている。
接着樹脂搬送ローラーは光ファイバ心線との摩擦により回転するように設置されているので、ローラーと光ファイバ心線間の滑りが最小になり、テープ心線表面が損傷するのを抑えられる。また、光ファイバ心線の走行速度が変わっても、接着樹脂搬送ローラーの回転速度も追随して変わるため、間欠連結ピッチが安定する。また、接着樹脂搬送ローラーを駆動する装置が必要ないので、より安価な装置構成が可能となる。
【0024】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造方法および製造装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
図1は、本実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置1の概略構成図である。光ファイバテープ心線の製造装置1は、サプライボビン群2、センサ3、制御部4、駆動部5、上流側配列矯正ローラー6、接着樹脂搬送ローラー7、接着樹脂槽8、樹脂除去部材9、下流側配列矯正ローラー10、接着樹脂硬化装置11、巻取ボビン12により構成されている。
【0026】
サプライボビン群2は、複数のサプライボビン2a〜2dからなり、光ファイバ心線21〜24がそれぞれ巻かれている。複数の光ファイバ心線21〜24は、それぞれのサプライボビン2a〜2dから同一の走行速度となるように供給され、例えば、センサ3によって走行速度が検出される。これらの走行速度の情報は制御部4に送信される。
【0027】
上流側配列矯正ローラー6は、複数の光ファイバ心線21〜24を平行に並べて配列させるために設けられたものである。この上流側配列矯正ローラー6を通過することにより、パスラインPを走行する複数の光ファイバ心線21〜24は、平行な配列となるように矯正される。
【0028】
制御部4は、例えば光ファイバ心線21〜24の走行速度の情報に基づいて駆動部5を制御する。駆動部5は、接着樹脂搬送ローラー7を駆動する。接着樹脂搬送ローラー7は、接着樹脂槽8に貯留されている硬化していない接着樹脂8aを光ファイバ心線21〜24の線間に所望の間隔で塗布するためのローラーである。接着樹脂搬送ローラー7による接着樹脂の塗布の仕方の詳細については後述する。
【0029】
下流側配列矯正ローラー10は、接着樹脂搬送ローラー7によって、線間に所望の間隔で接着樹脂が塗布された光ファイバ心線21〜24を、接着樹脂硬化装置11に送るまで平行な配列を保つように矯正させるものである。
【0030】
接着樹脂硬化装置11は、接着樹脂8aを硬化させるための装置である(例えば、接着樹脂8aが紫外線硬化樹脂である場合は、紫外線照射装置等である)。
巻取ボビン12は、製造された間欠連結型の光ファイバテープ心線20を巻き取るためのローラーである。
【0031】
次に、本実施形態において、接着樹脂搬送ローラー7による接着樹脂8aの塗布の方法について図を参照して詳細に説明する。図2は、接着樹脂搬送ローラー7と接着樹脂槽8の構成図である。
【0032】
接着樹脂搬送ローラー7は、図1および図2に示すように、接着樹脂槽8に貯留されている硬化していない接着樹脂8a(例えば、液状の紫外線硬化樹脂)に、その一部が浸されるように設置されている。
【0033】
図2の(a)およびそのG−G断面図である(b)に示すように、接着樹脂搬送ローラー7は、円盤状のファイバローラー72(72a〜72d)と、ファイバローラー72よりも直径が大きく、かつ周縁部近傍の一部に接着樹脂8aを保持するための空隙部74を有する円盤状の仕切り板73(73a〜73c)と、が交互に積層されている。さらに、両端のファイバローラー72a,72dの外側面は、それぞれ円盤状のガイドローラー71a、71bに挟まれている。
【0034】
接着樹脂搬送ローラー7は、図2の(a)の矢印Hで示した方向に回転するように、例えば駆動部5によって駆動されている。すなわち、接着樹脂搬送ローラー7はその一部が図2の(a)の右側から接着樹脂槽8の接着樹脂8aに浸され、左側から接着樹脂槽8の外へ出るように回転する。
【0035】
また、例えば接着樹脂槽8の左側上方には、接着樹脂搬送ローラー7が接着樹脂槽8の外へ出た際に、ファイバローラー72(72a〜72d)の周縁部に押接されて接着樹脂8aを除去する樹脂除去部材9(例えば、へら状の部材)が設けられている。
【0036】
次に、仕切り板73(73a〜73c)の構成について説明する。
図3は、各仕切り板の構成図である。例えば図3に示すように、仕切り板73(73a〜73c)は、周縁部を周方向に複数の領域(例えば、領域A〜F)に分けて、その一部の領域に開放されたスリット74a(例えば、幅0.1mm程度のスリット)が空隙部74として設けられている。例えば、仕切り板73(73a〜73c)のサイズの一例として、直径が32.0mm、厚さ0.2mm、スリット74aの深さが0.4mmである。この場合、仕切り板の円周は約100mmとなる。
【0037】
図3の例では、光ファイバ心線21と22の間の仕切り板73aの領域Aに空隙部74が設けられている。
また、製造する光ファイバテープ心線の間欠連結ピッチ(特定の隣り合う2心の光ファイバ心線間の連結されている部分の長さと、連結されていない部分の長さの和)は、仕切り板の円周長に等しくなる。
さらに、特定の隣り合う2心の光ファイバ心線間の連結部長と非連結部長(例えば光ファイバ心線21と22の間の場合、それぞれ図5のA部の長さと、B,C,D,E,F部の長さの和)は、図3の仕切り板73aで空隙部74が設けられた領域(例えば、角度θ1=72°)と設けられていない領域(360°−θ1=288°)との周方向の長さによって設定できる。例えば、上記のように、仕切り板の円周を約100mmとし、上記角度θ1=72°とした場合は、連結部長(領域Aの長さ)は20mm、非連結部長(領域B、C、D、E、Fの長さの和)は80mmとなる。
光ファイバ心線22と23の間の仕切り板73b、光ファイバ心線23と24の間の仕切り板73cも73aと同様の構造とすることにより、光ファイバ心線21と22の間と同じ連結部長、非連結部長とすることができる。このように、仕切り板73a、73b、73cの間の角度差を適切に設定することで、図5のような間欠連結型光ファイバテープ心線を製造することができる。
【0038】
次に、本実施形態の光ファイバテープ心線の製造装置1を用いて、所望の形状に間欠的に連結した間欠連結型の光ファイバテープ心線20を製造する製造方法について説明する。図4は、接着樹脂搬送ローラー7の回転による接着樹脂8aの塗布を説明する領域AからFの各断面図である。
【0039】
図1で示したように、複数の光ファイバ心線21〜24は、上流側配列矯正ローラー6によって並行に並べられて、接着樹脂搬送ローラー7に送られる。接着樹脂搬送ローラー7では、図4に示すように、接着樹脂搬送ローラー7の回転に伴い、光ファイバ心線21〜24の各線間に、仕切り板73(73a〜73c)の領域AからFが順に挟み込まれる。
【0040】
領域Aでは、光ファイバ心線21と22の間に挟み込まれた仕切り板73aのみに空隙部74が設けられている。各ファイバローラー72(72a〜72d)の周縁部は、接着樹脂搬送ローラー7が接着樹脂槽8の外へ出た際に、樹脂除去部材9が押接されて接着樹脂8aは除去されている。ところが、仕切り板73aの空隙部74には、接着樹脂8aが保持されているので、領域Aでは、光ファイバ心線21と22との間に接着樹脂8aが浸みだして、光ファイバ心線21と22との間に塗布される。
【0041】
領域Bでは、仕切り板73a〜73cには空隙部74が存在しないので、各光ファイバ心線には、接着樹脂8aは塗布されない。
領域Cでは、光ファイバ心線23と24との間に接着樹脂8aが浸みだして、光ファイバ心線23と24との間に塗布される。
領域Dでは、仕切り板73a〜73cには空隙部74が存在しないので、各光ファイバ心線には、接着樹脂8aは塗布されない。
領域Eでは、光ファイバ心線22と23との間に接着樹脂8aが浸みだして、光ファイバ心線22と23との間に塗布される。
領域Fでは、仕切り板73a〜73cには空隙部74が存在しないので、各光ファイバ心線には、接着樹脂8aは塗布されない。
【0042】
接着樹脂搬送ローラー7が1回転すると、再び領域A〜Fによる接着樹脂8aの塗布が行われ、以降繰り返される。
接着樹脂搬送ローラー7によって接着樹脂8aが塗布された光ファイバ心線21〜24は、図5および図6のように線間に所望の間隔で接着樹脂が間欠的に塗布された状態となって、下流側配列矯正ローラー10に送られる。
下流側配列矯正ローラー10を通過することにより、光ファイバ心線21〜24は、平行な配列に矯正された状態となり、接着樹脂硬化装置11に送られる。
【0043】
平行な配列に矯正された光ファイバ心線21〜24は、接着樹脂硬化装置11により、塗布された接着樹脂8aが硬化される(例えば、接着樹脂8aが紫外線硬化樹脂である場合は、光ファイバ心線21〜24に接着樹脂硬化装置11から紫外線が照射されることにより、接着樹脂8aが硬化される)。
【0044】
接着樹脂硬化装置11によって接着樹脂8aが硬化された光ファイバ心線21〜24は、図5に示すような所望の形状に間欠的に連結した間欠連結型の光ファイバテープ心線20として、巻取ボビン12に巻き取られる。
【0045】
以上、詳述した本実施形態に係る光ファイバテープ心線の製造装置1および製造方法によれば、走行中の光ファイバ心線21〜24を仕切り板73とファイバローラー72に接触させるが、ファイバローラー72の周縁部は樹脂除去部材9により接着樹脂8aが除去されているため、ファイバローラー72に対する光ファイバ心線21〜24の接触面には接着樹脂8aが塗布されない。
【0046】
ところが、仕切り板73の空隙部74を設けた部分では、この仕切り板73に隣接する光ファイバ心線21〜24の側面に、空隙部74に保持された接着樹脂8aが塗布される。このため、仕切り板73で空隙部74を設けた部分と設けられていない部分とを光ファイバ心線21〜24に接触させることで、光ファイバ心線間に間欠的に接着樹脂8aを塗布することができる。
【0047】
また、光ファイバ心線21〜24の位置は接着樹脂搬送ローラー7で固定されるので、位置決め精度を上げるための精密な機構は必要ない。また、接着樹脂搬送ローラー7を回転させながら、接着樹脂槽8に貯留された硬化していない接着樹脂8aに浸すことで接着樹脂8aを供給するだけなので、接着樹脂8aを間欠的に供給する機構は必要がなく、このため、光ファイバ心線21〜24を高速に走行させながら間欠的に接着樹脂8aを塗布できる。
【0048】
よって、製造コストを高くすることなく、光ファイバ心線21〜24を高速に走行させて所望の形状に間欠的に連結した間欠連結型の光ファイバテープ心線20を製造することができる。
【0049】
また、上記空隙部74として、仕切り板73の周縁部近傍に設けられた開放されたスリット74aに接着樹脂8aを保持できるので、仕切り板73でスリット74aを設けた部分と設けられていない部分とを光ファイバ心線21〜24に接触させて、光ファイバ心線間に間欠的に接着樹脂8aを塗布することができる。
【0050】
上記実施形態では、空隙部74を開放されたスリットとして設けられているものを示したが、空隙部74は図7の変形例に示すように、例えば仕切り板73の周縁部近傍に設けられた少なくとも一つ以上の孔74b(例えば、直径0.5mm程度の略円形状の孔)であってもよい。なお、図7では、仕切り板73aのみを示すが、他の仕切り板73b,73cの空隙部74も同様である。また、図7では、孔74bは略円形状であるが他の形状であってもよい。
【0051】
上記変形例によれば、仕切り板73の周縁部近傍に設けられた孔74bに接着樹脂8aを保持できるので、仕切り板73で孔74bを設けた部分と設けていない部分とを光ファイバ心線21〜24に接触させて、光ファイバ心線間に間欠的に接着樹脂を塗布することができる。また、接着樹脂搬送ローラー7の回転による遠心力が、仕切り板73に作用しても接着樹脂8aが孔74bの中に留まる。このため、接着樹脂8aが外部へ飛び出すのを防ぐことができるので、光ファイバ心線21〜24をより高速に走行させることができる。また、孔74bをあける加工は比較的簡単なため、加工費を低減できる。
【0052】
また、接着樹脂搬送ローラー7を回転させる駆動部5を備え、接着樹脂搬送ローラー7が動力で駆動されているので、ローラーの径を変えなくても、光ファイバテープ心線20の間欠連結ピッチを任意に変えることができる。
【0053】
また、接着樹脂搬送ローラー7よりもパスラインPの上流側に光ファイバ心線21〜24の走行速度を検出するセンサ3を配置して、センサ3が検出した走行速度の情報を用いて、接着樹脂搬送ローラー7の回転速度を制御しても良く、その場合、光ファイバ心線21〜24の走行速度が変動しても、光ファイバテープ心線20の所望の間欠連結ピッチを安定して実現できる。
【0054】
なお、接着樹脂搬送ローラー7は、駆動部5によって駆動されずに、複数の光ファイバ心線21〜24との摩擦により回転するように設置されたものでもよい。
この場合、接着樹脂搬送ローラー7を動力により駆動せずに、複数の光ファイバ心線21〜24との摩擦で回転させるので、ローラーと光ファイバ心線間の滑りが最小になり、光ファイバ心線表面が損傷するのを抑えられる。また、光ファイバ心線21〜24の走行速度が変わっても、接着樹脂搬送ローラー7の回転速度も追随して変わるため、間欠連結ピッチが安定する。
【0055】
なお、上記実施形態では、複数の光ファイバ心線は光ファイバが4本のものを示したが、複数であれば、4本以外であってもよく、その場合、接着樹脂搬送ローラー7は、光ファイバ心線の本数に合わせた構成(ファイバローラー72、仕切り板73の数を合わせる)とすればよい。また、仕切り板73はA〜Fの領域に分割したが、領域の数および分割の仕方はこれ以外のものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 製造装置
2 サプライボビン群
2a〜2d サプライボビン
3 センサ
4 制御部
5 駆動部
6 上流側配列矯正ローラー
7 接着樹脂搬送ローラー
8 接着樹脂槽
8a 接着樹脂
9 樹脂除去部材
10 下流側配列矯正ローラー
11 接着樹脂硬化装置
12 巻取ボビン
20 光ファイバテープ心線
21〜24 光ファイバ心線
71a、71b ガイドローラー
72、72a〜72d ファイバローラー
73、73a〜73c 仕切り板
74 空隙部
74a スリット
74b 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7