(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂Aを主成分とするフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層した積層フィルムであって、少なくとも1層に紫外線吸収剤、可視光線吸収色素のうち少なくとも1種類以上を含有し、波長380〜410nmにおける光線透過率が10%以下、波長440nmにおける光線透過率が80%以上であり、前記樹脂Aを主成分とするフィルムが紫外線吸収剤を含み、前記樹脂B層が可視光線吸収色素を含む、光学フィルム。
前記樹脂Aが、アクリル、シクロオレフィンコポリマー、トリアセチルセルロース、ポリエステル、ポリカーボネートのいずれかから選択された請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
前記可視光線吸収色素の少なくとも1種類が、アントラキノン、アゾメチン、インドール、トリアジン、ナフタルイミド、フタロシアニンのいずれかの骨格を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
樹脂Aを主成分とするフィルムであって、紫外線吸収剤、可視光線吸収色素のうち少なくとも1種類以上を含有し、波長380〜410nmにおける光線透過率が10%以下、波長440nmにおける光線透過率が80%以上であり、前記可視光線吸収色素の少なくとも1種類が、アントラキノン、アゾメチン、インドール、トリアジン、ナフタルイミド、フタロシアニンのいずれかの骨格を有する、光学フィルム。
樹脂Aを主成分とするフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層した積層フィルムであって、少なくとも1層に紫外線吸収剤、可視光線吸収色素のうち少なくとも1種類以上を含有し、波長380〜410nmにおける光線透過率が10%以下、波長440nmにおける光線透過率が80%以上であり、前記可視光線吸収色素の少なくとも1種類が、アントラキノン、アゾメチン、インドール、トリアジン、ナフタルイミド、フタロシアニンのいずれかの骨格を有する、光学フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光学フィルムについて詳細に説明する。
本発明の光学フィルムは、一つの態様として、樹脂Aを主成分とするフィルムであって、紫外線吸収剤、可視光線吸収色素のうち少なくとも1種類以上含有し、波長380〜410nmにおける光線透過率が10%以下、波長440nmにおける光線透過率が80%以上を示すものである。
本発明で述べるところの樹脂Aとは、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂のいずれでもよい。また、ホ
モ樹脂、共重合樹脂または2種類以上の樹脂のブレンドであってもよく、より好ましくは、成形性が良好という観点から、熱可塑性樹脂である。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ(1−ブテン),ポリ(4−メチルペンテン),ポリイソブチレン,ポリイソプレン,ポリブタジエン,ポリビニルシクロヘキサン,ポリスチレン,ポリ(α−メチルスチレン),ポリ(p−メチルスチレン),ポリノルボルネン,ポリシクロペンテンなどに代表されるポリオレフィン系樹脂、ナイロン6,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン66などに代表されるポリアミド系樹脂、エチレン/プロピレンコポリマー,エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー,エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー,エチレン/アルキルアクリレートコポリマー,エチレン/アクリルメタクリレートコポリマー,エチレン/ノルボルネンコポリマー,エチレン/酢酸ビニルコポリマー,プロピレン/ブタジエンコポリマー,イソブチレン/イソプレンコポリマー,塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマーなどに代表されるビニルモノマーのコポリマー系樹脂、ポリアクリレート,ポリメタクリレート,ポリメチルメタクリレート,ポリアクリルアミド,ポリアクリロニトリルなどに代表されるアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレンオキシド,ポリプロピレンオキシド,ポリアクリレングリコールに代表されるポリエーテル系樹脂、ジアセチルセルロース,トリアセチルセルロース,プロピオニルセルロース,ブチリルセルロース,アセチルプロピオニルセルロース,ニトロセルロースに代表されるセルロースエステル系樹脂、ポリ乳酸,ポリブチルサクシネートなどに代表される生分解性ポリマー、その他、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリシロキサン、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどを用いることができる。
【0012】
本発明に用いられる樹脂Aとしては、合成ポリマーであることが好ましく、ポリオレフィン系、アクリル系、ポリエステル系、セルロースエステル系、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォンがより好ましい。中でも、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系、アクリル系、ポリエステル系、トリアセチルセルロースが、成形性のみならず、後述の手法でフィルム化した場合の均質性、耐候性などの光学フィルムとしての要求特性を備えている観点から特に好ましい。また、これらは1種類単独で利用しても、2種類以上のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとして利用してもよい。特に、ポリエステル系は強度や耐熱性、透明性および汎用性の観点から、多岐にわたる用途に利用することが出来るため最も好ましい。
以下に、好ましいフィルム基材であるポリエステル系樹脂の態様について記述する。
本発明で述べるところのポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールとを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られる縮重合体のことである。ポリエステルの工業的製造方法としては、公知の如く、エステル交換反応(エステル交換法)や直接エステル化反応(直接重合法)が用いられる。ここで、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4´−ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも高い屈折率を発現するテレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく用いられる。ジカルボン酸成分はこれらのうち1種類を用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種類のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
さらに、ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることも出来る。このとき、共重合成分としては、前記のジカルボン酸成分およびジオール成分が、それぞれ1種類以上、共重合されていることが好ましい。
本発明における樹脂Aは主成分であれば良く、樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが、本来の光学フィルムの特性を損なわない程度に添加されていてもよい。
【0013】
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤、可視光線吸収色素のうち少なくとも1種類以上含有していることが必要である。上述した樹脂Aの中には、たとえばポリエチレンナフタレートなど、樹脂の共役構造により紫外線や可視光線を吸収するものが存在するが、信頼性試験や屋外の長期暴露に際し、強度の大きい光線が連続的に照射されることで樹脂が劣化し、光学フィルム本来の力学特性が著しく損なわれてしまうことから、樹脂の劣化を抑制する観点からも、本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤、可視光線吸収色素のうち少なくとも一種類以上含有することが必要である。
【0014】
本発明で述べるところの紫外線吸収剤とは、300〜380nmの紫外線領域に極大波長を有する添加剤の事を指す。一方、可視光線吸収色素とは、380nmを超えて430nm以下の波長領域に極大波長を有する添加剤のことを指す。本発明でいうところの極大波長とは、複数の極大ピークを有する場合、最大の吸光度を有するピーク波長を指す。紫外線吸収剤および可視光線吸収色素は、互いの領域の一部を吸収する性能を有してもよい。例えば、375nmと390nmに極大を有する添加剤において、375nmの極大が最大である場合は紫外線吸収剤であり、390nmの極大が最大である場合は可視光線吸収色素と定義される。
本発明の光学フィルムは、波長380nm〜410nmにおける光線透過率が10%以下であることが必要である。本光学フィルムの光線透過率が380nm〜410nmにおいて10%以下でなければ、本発明の光学フィルムをディスプレイ用途として利用した場合に、内部の液晶層および発光層の変質や劣化を効果的に防止することが出来ない。波長380〜410nmにおける光線透過率は、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であるが、0%に限りなく近いことが最たる好適条件である。
【0015】
本発明の光学フィルムは、波長300〜380nmの紫外線領域における光線透過率が最大値で10%以下であることがより好ましい。当該領域に関しては、ディスプレイ内部の偏光子や液晶、発光素子など画像表示の要となる部分の劣化に大きく関与する波長領域であるため、強く光線カットすることが望ましい。たとえば、液晶画像表示装置に利用されている偏光子は、特定の振動方向のみを有する光を透過させる機能を有するものであり、ヨウ素や二色性染料などで染色したポリビニルアルコール(PVA)系フィルムが主に使用されている。この偏光子は、有機材料により構成されており、特に、280〜380nmの波長の紫外線を照射することで劣化が起こるため、この領域における紫外線を偏光子に届く手前で遮蔽することにより、偏光子の劣化、あるいは液晶分子の劣化を防止することが可能となるものである。このことから、波長300nm〜380nmにおける光線透過率は、最大値が5%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは3%以下である。無論、0%に限りなく近いことが最たる好適条件である。
【0016】
本発明の光学フィルムは、波長440nmにおける光線透過率が80%以上であることが必要である。波長440nmにおける光線透過率が80%を下回る場合は、可視光短波長領域の光線がカットされることにより、光学フィルム自体が強く黄色味を呈し、優れた透明性を発現することができない。波長440nmにおける光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。
本発明で述べるところの光学フィルムとは、フラットパネルディスプレイ用途では、偏光板を構成する偏光子保護フィルムや位相差フィルム、アンチグレアやクリアハードコート有するディスプレイ前面に位置する各種表面処理フィルム、その他輝度向上フィルム、視野角向上フィルム、透明導電性フィルムなどが挙げられる。ディスプレイ用途以外では、光学機器として利用される透明電波遮断フィルム、建築用途であるウ
ィンドウフィルム、人工灯などに利用される紫外線遮断フィルム、電子デバイス用途ではフォトリソ材料の工程・離型フィルム、その他食品、医療、インクなどの分野においても、内容物の光劣化抑制などを目的としたフィルム用途が挙げられる。特に、光学フィルムとしては、ディスプレイ用途での利用が主流であり、本発明の光学フィルムは、外光をカットする目的で利用されるディスプレイ部材に好適な特性を有するものであり、アンチグレアフィルムや偏光子保護フィルム、位相差フィルムとして最も好適に利用することが出来る。
【0017】
本発明の光学フィルムは、フィルム厚みが40μm以下であることが好ましい。光学フィルム、特にディスプレイ用途の光学フィルムは、近年のスマートフォンやタブレット端末などの中小型ディスプレイの利用拡大や車載用途などの曲面ディスプレイへの適用に伴い、曲面追従性に対応できる薄膜フィルムが要求されている。フィルムの厚みは、20μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは15μm以下である。一方で、フィルム厚みが8μmより薄い場合、光学性能を付与するためには紫外線吸収剤や可視光線吸収色素の含有量を多くする必要があるため、ブリードアウト抑制効果が低下する場合があるほか、フィルムにコシがなく搬送性が低下したり、さらに後述の硬化性樹脂B層を設けた際に、硬化処理に際し光学フィルムに強くカールを生じる場合がある。
【0018】
紫外線吸収剤は、一般的に380nm以下の波長領域の紫外線を吸収する能力に特化しており、紫外線領域と可視光領域の境界近傍(380〜400nm付近)や、可視光短波長領域(400nm〜430nm)の光線を吸収する能力は優れていない。そのため、紫外線吸収剤を含有させることのみで、紫外線領域と可視光領域の境界近傍(380〜400nm付近)や可視光短波長領域(400〜430nm)の光線をカットするためには、後述する一部の長波長紫外線吸収を除いて、高濃度に含有させる必要がある。紫外線領域、および、可視光短波長領域(380nm〜430nm)の波長カットを、単独の紫外線吸収剤により達成可能な紫外線吸収剤としては、あくまで一例であるが、市販の紫外線吸収剤としては2−(5−クロロ
−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−第三ブチル−4−メチルフェノールや、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの構造で記される化合物などが挙げられる。
【0019】
一方、可視光線吸収色素は、一般に可視光短波長領域のカット性能に優れるが、紫外線領域のカット能力に乏しい。そのため、可視光線吸収色素を含有させることのみで、紫外線領域の光線をカットするためには、後述する一部の可視光線吸収色素を除いて、高濃度に含有させる必要がある。また、可視光線吸収色素は、一般的に広範囲にわたる波長領域をブロードにカットする性質のものが多く、高濃度に含有させる場合、目的とする波長領域よりもさらに長波長側の可視光領域を吸収するため、優れた透明性を実現できない問題点を有する。また、特に波長380〜440nmの領域における可視光線を狭帯域でカットする性質を有する可視光線吸収色素は種類が多くなく、特定の構造をもつ可視光線吸収色素を選定して使用することが望まれる。紫外線領域、および、可視光短波長領域(380nm〜430nm)の波長カットを、単独添加により達成可能な可視光線吸収色素としては、たとえば、BASF(株)製の「LumogenF Violet570」などが挙げられる。紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素にはそれぞれ得意とする領域が存在していることから、高濃度添加によるブリードアウト、それに伴う工程汚染を防ぐためには、1種類以上の紫外線吸収剤と1種類以上の可視光線吸収色素を効果的に組み合わせる手法がより好ましい。
【0020】
本発明の光学フィルムは、1種類以上の紫外線吸収剤と、1種類以上の可視光線吸収色素を含有させると、透明性、ブリードアウト抑制性を維持したまま、前述の光線透過率を容易に達成できるため好ましい。本発明の光学フィルムにおいて、1種類以上の紫外線吸収剤と、1種類以上の可視光線吸収色素を組み合わせて、前述の光線透過率を達成する場合において利用可能な紫外線吸収剤としては、前述の2種類の紫外線吸収剤以外にも、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、トリアジン系、ベンゾオキサジノン系、サリチル酸系、ベンゾオキサジン系をはじめとする、多種骨格構造の紫外線吸収剤を利用することが出来る。2種以上の紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素を併用する場合は、互いに同じ骨格構造の紫外線吸収剤であってもよく、異なる骨格構造を有する紫外線吸収剤を組み合わせてもよい。以下より具体例を例示するが、極大波長が320nm〜380nmの波長領域に存するものに対しては化合物名の後に(※)を付している。本発明で利用する紫外線吸収剤は、波長320〜380nmの間に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤であることが好ましい。極大波長が320nmより小さい場合、長波長側の紫外線領域を十分にカットすることは難しく、また、380nmを超えて430nm以下の可視光短波長領域に最大となる極大波長を有する色素との組み合わせを行った場合であっても、波長300〜380nmにおける領域内において10%以上の光線透過率を示す領域が発生してしまうことが多い。そのため、波長300〜380nmの紫外線領域における光線透過率の最大値を10%以下とするためには(※)を付した紫外線吸収剤を利用することが好ましい。
【0021】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(※)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(※)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(※)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(※)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(※)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(※)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール(※)、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−第三ブチル−4−メチルフェノール(※)、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール(※)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール(※)、などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン(※)、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)、などが挙げられる。
【0022】
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ第三ブチルフェニル−3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0023】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジビフェニル−s−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−s−トリアジン(※)、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(4−イソオクチルオキシカルボニルエトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−s−トリアジン−2−イル)−5−(2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ)フェノールなどが挙げられる。
【0024】
ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤としては、等に限定されないが、2,2’−p−フェニレンビス(4H−3,1−ベンゾオキサジンー4−オン)(※)、2,2’−p−フェニレンビス(6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(6−クロロ−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(※)、2,2’−p−フェニレンビス(6−メトキシ−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(6−ヒドロキシ−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(ナフタレン−2,6−ジイル)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(※)、2,2’−(ナフタレン−1,4−ジイル)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(※)、2,2’−(チオフェン−2,5−ジイル)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(※)などを挙げることができる。
【0025】
その他の紫外線吸収剤として、サリチル酸系では、たとえば、フェニルサリチレート、t−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等、その他では、天然物系(たとえば、オリザノール、シアバター、バイカリン等)、生体系(たとえば、角質細胞、メラニン、ウロカニン等)なども利用することが出来る。これらの紫外線吸収剤には、安定剤としてヒンダードアミン系化合物も併用することが出来る。無機系の紫外線吸収剤はベースとなる樹脂と相溶せず、光拡散を引き起こしてヘイズの上昇につながり、画像表示した際の視認性を悪化させるため、本発明の光学フィルムにおいて利用することは好ましくない。
本発明において用いられる紫外線吸収剤は、少なくとも1種類がトリアジン骨格構造を有する紫外線吸収剤であることが好ましい。トリアジン骨格構造は、その他一般的に紫外線吸収剤に利用されるベンゾトリアゾール骨格構造やベンゾフェノン骨格構造と比較して熱分解温度が高く、長期の安定性に優れることが知られており、長期で性能保持が要求されるディスプレイ用途の光学フィルムに好適である。また、融点が低いことから紫外線吸収剤自身の固体成分としての表面析出が抑制されるだけでなく、オリゴマーやその他昇華性の高い紫外線吸収剤を析出させにくくする効果を奏することから好ましく利用することができる。
【0026】
本発明の光学フィルムにおいて、1種類以上の紫外線吸収剤と1種類以上の可視光線吸収色素を組み合わせて、上述の光線透過率を達成する場合において利用可能な可視光線吸収色素として、先に述べた可視光線吸収色素以外も選択可能である。本発明に用いられる可視光線吸収色素としては、後述の硬化性樹脂Bへの添加目的として、溶剤に溶解可能で彩度に優れた染料を利用しても良く、樹脂への練り混み目的として、染料よりも耐熱性や耐湿熱性に優れている顔料を用いてもよい。顔料は、有機顔料、無機顔料、クラシカル顔料に大別することが出来るが、添加対象である熱可塑性樹脂や硬化性樹脂との相溶性の観点から鑑みて、有機顔料を利用することが好ましい。可視光線吸収色素の構造としては、特に限定されないが、βナフトール系,ナフトールAS系,アセト酢酸アリールアミド系,アセト酢酸アリールアミド系,ピラゾロン系,βオキシナフトエ酸系などのアゾ系、銅フタロシアニン,ハロゲン化銅フタロシアニン,無金属フタロシアニン,銅フタロシアニンレーキなどのフタロシアニン系、その他、アゾメチン系、アニリン系、アリザリン系、アントラキノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、インドール系、キナクリドン系、キノフタロン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、トリアジン系、ナフタルイミド系、ニトロン系、ペリノン系、ペリレン系、ベンゾオキサジン系、ベンゾトリアゾール系、その他天然有機色素が挙げられる。
【0027】
本発明の光学フィルムに用いる可視光線吸収色素は、390nm以上420nm以下に極大波長を有することがより好ましい。430nmより長波長領域に極大波長を有するものを選択した場合、非常に狭帯域のカット性能を有する色素を選択しない限り、440nmにおける光線透過率が80%を下回るため、現実的でない。390nm以上420nm以下の波長帯域に極大波長を有し、狭い帯域で吸収性能を発揮可能な可視光線吸収色素としては、アントラキノン系、アゾメチン系、インドール系、トリアジン系、ナフタルイミド系、フタロシアニン系を好ましく用いることが出来る。
【0028】
本発明の光学フィルムに含有させる紫外線吸収剤、可視光線吸収色素の処方として、紫外線吸収剤と可視光線吸収色素の含有量の和c[wt%]とフィルム厚みt[μm]との積で表される吸収性能の指標c×tが、80[wt%・μm]以下を満足することが好ましい。より好ましくは50[wt%・μm]以下、さらに好ましくは30[wt%・μm]以下である。80wt%よりも含有量が多い場合、薄膜フィルムの場合には、紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素の添加濃度が高いために光線透過率が低下してフィルムの白濁度(ヘイズ値)が上昇し、液晶画像表示装置などに実装した場合に視認性悪化の問題点を生じる。一方、白濁度を抑制するために添加濃度を薄くする場合、フィルム厚みが厚くなるため薄膜化トレンドに見合う光学フィルムを得ることが出来ないため好ましくない。紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素の吸収性能の指標c×tは、フィルム厚みや各種添加剤の光線吸収能に伴い変化させるものであるために下限の設定はないものの、画像表示装置にフィルムを実装した際に、表示装置の偏光子、液晶分子や発光層、およびフィルムを構成する樹脂が紫外線により劣化することを十分に防ぐだけの量を含むことが求められる。
【0029】
次に、本発明の光学フィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるものではない。
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、熱風中あるいは真空下で乾燥された後、押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギ
アポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルター等を介して異物や変性した樹脂などが取り除かれる。これらの樹脂はダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。そして、ダイから吐出されたシートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させたり、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させたりする方法も好ましい。
このようにして得られたキャスティングフィルムは、つづいて長手方向および幅方向に二軸延伸されることが好ましい。延伸は、逐次に二軸延伸しても良いし、同時に二軸延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
【0030】
逐次二軸延伸の場合についてまず説明する。ここで、長手方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施され、この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行っても良い。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、光学フィルムを構成する樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては光学フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+100℃の範囲内に設定することが好ましい。
このようにして得られた一軸延伸されたフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
つづいて幅方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸をいい、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、フィルムを構成する樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして二軸延伸されたフィルムは、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、低配向角およびフィルムの熱寸法安定性を付与するために熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理などを併用してもよい。
【0031】
同時二軸延伸の場合について次に説明する。同時二軸延伸の場合には、得られたキャストフィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能を備えたプライマー層をインラインコーティングにより付与してもよい。
次に、キャストフィルムを、同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6〜50倍が好ましく、光学フィルムを構成する樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8〜30倍が特に好ましく用いられる。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率を同一とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度〜ガラス転移温度+120℃が好ましい。
こうして同時二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/または直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。このようにして熱処理された後、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行っても良い。熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理する。
以上のようにして得られた光学フィルムは、巻き取り装置を介して必要な幅にトリミングされ、巻き取り皺が付かないようにロールの状態で巻き取られる。なお、巻き取り時に巻姿改善のためにフィルム両端部にエンボス処理を施しても良い。
【0032】
本発明の光学フィルムは、もう一つの態様として、樹脂Aを主成分とするフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層した積層フィルムであって、少なくとも1層に紫外線吸収剤、可視光線吸収色素のうち少なくとも1種類以上含有し、波長380〜410nmにおける光線透過率が10%以下、波長440nmにおける光線透過率が80%以上を示す光学フィルムである。
もう一つの態様としての光学フィルムは、硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層することで、樹脂の組成に応じて、耐擦傷や寸法安定性などの機能を付加することができ、ディスプレイ用途の光学フィルムとして偏光板を構成する偏光子であるPVAや偏光板自体と密着させるための接着剤および粘着剤の役割を付加することも出来る。これらの硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層することにより、硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層は架橋性が高いため、樹脂Aの内部に含まれているオリゴマーや添加剤などの析出を抑制することが出来る。特に、ディスプレイ用途光学フィルムの場合、過酷な条件での長期信頼性試験においてフィルムの性状が変化しないことが要求される。具体的に、過酷な条件での長期信頼性試験とは、後述する85℃の促進耐熱試験および60℃90%RHでの促進耐湿熱試験を指す。本発明の一つの態様である樹脂Aのみから構成される光学フィルムに比べて、硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層することで耐擦傷性や寸法安定性をさらに良好にできるため、フィルムを貼り合わせた後のディスプレイの性能を悪化させる問題を抑制することができる。硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層は樹脂Aを主成分とするフィルムの上に直接コーティングされてもよく、前述の製造方法に記載の通り、易滑性や易接着性などの機能を付与できるプライマー層を設けた上に積層されてもよい。
硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層は片面に設けてもよいが、オリゴマーなどの析出は一般にフィルムの両面より発生し、さらに片面のみに積層する場合は積層面側に硬化による収縮応力が強く働き、樹脂B層の積層厚みに応じて自身が著しくカールする恐れがある。そのため、樹脂B層を、樹脂Aを主成分とするフィルムの両面に塗布してなることが最も好ましい。
上述のプライマー層は、易滑性や易接着性などの機能を付与できるだけでなく、硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層する際に、樹脂Aからなるフィルムとの密着性を向上させる効果を奏するため塗布することが好ましい。特に、後述の実施例のように、樹脂Aとしてポリエチレンテレフタレート、硬化性樹脂Bとしてアクリル樹脂を用いる場合、前者は屈折率が1.65程度、後者は屈折率が1.50程度と屈折率差が大きくなることから、層間密着性の悪化を引き起こす。そのため、該プライマー層の屈折率は1.50〜1.60の値を有することが好ましく、より好ましくは1.55〜1.58の屈折率である。
【0033】
本発明の光学フィルムに用いる硬化性樹脂Bは、高透明で耐久性があるものが好ましく、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッソ系樹脂、シリコン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂を単独または混合して使用できる。硬化性や可撓性、生産性の点において、硬化性樹脂Bはポリアクリレート樹脂に代表されるアクリル樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂からなることが好ましい。また、フレキシブルディスプレイ用フィルムとして適用する場合に求められる、折り曲げ時の耐擦傷性を付加する場合、硬化性樹脂Bは熱硬化性のウレタン樹脂からなることが好ましい。
【0034】
硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層の構成成分として用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂は、該活性エネルギー線硬化型樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(メタクロイルチオフェニル)スルフィド、2,4−ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3,5−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、ビス(4− (メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ジ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェートなどの多官能(メタ)アクリル系化合物を用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いることが出来る。
【0035】
また、これら多官能(メタ)アクリル系化合物とともに、活性エネルギー線硬化型樹脂の硬度、透明性、強度、屈折率などをコントロールするため、スチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルピロリドン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジメタリルフタレート、ジアリルビフェニレート、あるいはバリウム、鉛、アンチモン、チタン、錫、亜鉛などの金属と(メタ)アクリル酸との反応物などを用いることができる。これらは1種もしくは2種以上を用いてもよい。
【0036】
活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させる方法として、例えば、紫外線を照射する方法を用いることができるが、この場合、前記硬化性樹脂に対し、0.01〜10重量部程度の光重合開始剤を加えることが望ましい。
本発明に用いる活性エネルギー線硬化型樹脂には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の効果を損なわない範囲において、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなどの有機溶剤を配合することができる。
本発明において活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波を意味し、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点から有利である。硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層の厚みは、使用方法により適切に調整されるべきであるが、先述のとおり樹脂Aを主成分とするフィルムの厚みが40μm以下であり、かつ硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層の性能を発揮する観点から鑑みると、通常は1〜6μmであることが好ましく、より好ましくは1〜3μmであり、さらに好ましくは1〜1.5μmの範囲である。硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層の厚みが6μmより厚い場合、コーティング基材を硬化させる際に積層フィルムが力学的強度に劣り、積層フィルムのカールが強く発生する場合がある。
【0037】
耐擦傷性を付加するために硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層の構成成分として用いられる熱硬化性ウレタン樹脂としては、ポリカプロラクトンセグメントならびにポリシロキサンセグメントおよび/またはポリジメチルシロキサンセグメントを有する共重合体樹脂を、イソシアネート基を有する化合物と熱反応により架橋させた樹脂が好ましい。熱硬化性ウレタン樹脂を適用することで、硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を強靭にすると同時に弾性回復性を助長することが可能となり、耐擦傷性を光学フィルムに付加することが可能となる。
【0038】
熱硬化性ウレタン樹脂を構成するポリカプロラクトンセグメントは、弾性回復の効果を奏するものであり、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオールや、ラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレートなどのラジカル重合性ポリカプロラクトンを用いることが出来る。
【0039】
熱硬化性ウレタン樹脂を構成するポリシロキサンおよび/またはポリジメチルシロキサンセグメントは、これらの成分が表面配位することで表面の潤滑性を向上し、摩擦抵抗を低減する効果を奏する。ポリシロキサンセグメントを有する樹脂としては、テトラアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどを用いることができる。一方、ポリジメチルシロキサンセグメントを有する樹脂としては、ポリジメチルシロキサンセグメントに種々のビニルモノマー、たとえば、メチルアクリレート、イソブチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、などが共重合された共重合体を好ましく用いることが出来る。
熱硬化性ウレタン樹脂からなる樹脂B層は、任意の温度で樹脂や化合物同士を連結反応させ、層内の溶媒を揮発させると同時に熱架橋することで形成される。樹脂B層の熱架橋反応を促進させるため、加熱工程における温度は150℃以上であることが好ましく、より好ましくは160℃以上である。加熱温度は高温であることが好ましいが、基材の熱収縮による収縮シワの発生などを考慮すると170℃以下で熱処理することが好ましい。加熱時間は、1分間以上、好ましくは2分間以上であり、上限は特に定められるものではないが、樹脂Aを主成分とするフィルムの寸法安定性や透明性の観点から5分間以内とすることが好ましい。このようにして、高温で短時間熱処理された光学フィルムは、20℃〜80℃の温度で3日以上、より好ましくは7日以上エージング処理を行うことが、ウレタン結合を増やして光学フィルムの伸度を向上させる点で好ましい。
【0040】
接着性・密着性を付加するために利用される硬化性樹脂Bとしては、ディスプレイ用光学フィルムとして、特に偏光子との貼り合わせとして用いる場合には、PVAとの密着において良好な効果を奏する、脂環式エポキシ基を有する化合物、ポリオールのポリアクリレート、オキセタン化合物、アルキルアクリレートを単量体単位とする重合体の4種の組み合わせで構成される光硬化性樹脂を用いることが好ましい。
脂環式エポキシ基を有する化合物としては、エポキシ基を2〜5個程度有するものが低粘度、硬化性、接着力の観点から好ましく、3,4−エポキシシクロへキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどが挙げられる。
ポリオールのポリアクリレートとしては、炭素数が2〜10個程度有するものが粘度を下げながらも偏光子への密着性が向上させるため好ましく、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレートなどが挙げられる。
オキセタン化合物としては、光照射後の接着発現速度を向上することが出来、相対湿度が変動する環境下においても接着力を発現することができる。3−エタン−3−オキセタンメタノール、3,3´−(オキシビスメチレン)ビス(3−エチルオキセタン)などを好ましく用いることが出来る。
アクリルアクリレートを単量体とする重合体としては、促進耐湿熱試験後の接着力を良好にする効果を奏するものであり、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートをはじめとする炭素数1〜10のアルキルメタクリレートを用いることが好ましく、中でも炭素数1〜4の範囲内のアクリルメタクリレートを用いることが最も好ましい。
以上の各成分を適量配合し、光カチオン重合開始剤として前述の各種活性エネルギー線により常温で硬化することが可能となる。光カチオン重合開始剤としては、ベンゼンジアゾニウムなどの芳香族ジアゾニウム塩、トリフェニルスルフォニウムなどの芳香族スルフォニウム塩、ジフェニルジヨードニウムなどの芳香族ヨードニウム塩、もしくはこれらの2種類以上の組み合わせを用いることが出来る。また、少ない光照射量で十分な架橋反応性を発揮するために光ラジカル重合開始剤を利用することも可能である。
【0041】
本発明における光学フィルムが樹脂Aを主成分とするフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層した積層フィルムである場合、紫外線吸収剤、可視光線吸収色素は、樹脂Aからなるフィルム、硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層のいずれに含有させても良い。硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層は架橋性が強いため、樹脂B層の内部に添加した場合に紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素の析出が抑制されるだけでなく、樹脂Aからなるフィルム内部に紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素を添加した場合でも、樹脂B層が当該添加剤の析出抑制のための蓋としての効果を奏するため、硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層すること自体でディスプレイ用途に実装した場合に視認性を悪化させる問題は発生しにくくなる。
本発明の光学フィルムに、紫外線吸収剤、可視光線吸収色素を添加する場合、紫外線吸収剤、可視光線吸収色素を、樹脂Aを主成分とするフィルムと硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層とに分けて含有させることが好ましい。樹脂Aを主成分とするフィルムに紫外線吸収剤を含み、前記樹脂B層に可視光線吸収色素を含んでなることがより好ましい。各添加剤の吸収性能は、先に述べたとおり、ランベルトベール則に従い、フィルム厚みと紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素の添加濃度の積c×tに依存することが知られているため、いずれの層に単独添加する手法でも原理的には光線透過率の目標を達成することは可能となる。但し、薄膜フィルムに適用する場合、一部の層に局所的に高濃度の紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素を添加することとなり、フィルムの熱処理時や、信頼性試験後のフィルム品位の悪化の問題点が生じる。そのため、個々の層に紫外線吸収剤および/または可視光線吸収剤をフィルム全体での総添加濃度が一定となるように分けて添加することが好ましい。但し、この手法を用いる場合、紫外線吸収剤および可視光線吸収色素はそれぞれ練り混み用途、塗布用途で得意・不得意が存在しているため、主として練り混みを必要とする樹脂Aを主成分とするフィルム、ならびに溶剤として塗布してから硬化させる硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層とに同時に適用できる吸収剤は多くない。そのため、樹脂Aを主成分とするフィルムに練り混みに強い耐熱性のある紫外線吸収剤、樹脂B層に溶剤用途に適した可視光線吸収色素を添加して含有せしめる手法、もしくは樹脂Aを主成分とするフィルムに練り混みに強い耐熱性のある可視光線吸収色素、樹脂B層に溶剤用途に適した紫外線吸収剤を添加して含有せしめる手法のいずれかを用いることが好ましい。特に、樹脂Aを主成分とするフィルムの押出製膜での生産効率、塗布時の積層フィルムの生産効率、可視光線吸収色素が紫外線吸収剤と比較して一般的に高価であることなどを鑑みると、樹脂Aを主成分とするフィルムに練り混みに強い高耐熱性の紫外線吸収剤を、硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層に塗布用途として適した可視光線吸収色素を添加して含有せしめる手法が最も好ましい。樹脂Aを主成分とするフィルムの少なくとも片面に硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を積層した光学フィルムに含有させる紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素の含有量は、フィルムおよび樹脂B層のそれぞれに添加される、紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素の各層の含有濃度をcA,cB[wt%]、各層の厚みをtA、tB[μm]とした場合、和の形で表記される吸収性能の指標cA×tA+cB×tBが、80[wt%・μm]以下を満足することが好ましい。より好ましくは50[wt%・μm]以下、さらに好ましくは30[wt%・μm]以下である。添加量は、添加剤の吸収性能や各層の厚みを鑑みて適宜調節されるべきであるが、80[wt%・μm]を超える場合、薄膜要求を満足しない、もしくは信頼性試験において各種添加剤の表面析出による光学性能への影響が懸念されるため、好ましくない。
本発明の光学フィルムにおいて、ディスプレイ用途として用いる場合に、硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を樹脂Aを主成分とするフィルムに積層し、硬化性樹脂Bとは異なる組成を有する硬化性樹脂Cを主成分とする樹脂C層を樹脂B層と反対面の樹脂Aを主成分とするフィルム上に積層することが好ましい。樹脂B層と樹脂C層の関係としては、硬化性樹脂の種類が全く異なっていても良く、硬化性樹脂Cが硬化性樹脂Bと同じ樹脂の成分で紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素の種類が異なる、または添加有無が異なるという関係であってもよい。異なる2種の硬化性樹脂を積層する場合のより好ましい様態としては、樹脂Aを主成分とするフィルムの片面に紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素を添加していない耐擦傷性や寸法安定性を有する硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層を、樹脂Aを主成分とするフィルムの反対面に、紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素を有する接着性を有する硬化性樹脂Cを主成分とする樹脂C層を積層するものである。この場合、樹脂C層を偏光板側に向けて光学フィルムを貼り合わせることとなり、耐擦傷性や寸法安定性を有する樹脂B層がディスプレイの外側に必ず位置するため、目的の効果を十分に発揮することが出来る。
また、前述の異なる2種の硬化性樹脂を両面に積層する場合、紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素は樹脂B層および/または樹脂C層に添加してよいが、ディスプレイの外側に位置する、耐擦傷性や寸法安定性を有する樹脂B層に紫外線吸収剤を、接着性の効果を有する樹脂C層に可視光線吸収色素を添加することが最も好ましい。可視光線吸収色素は外部から侵入する紫外線を受けることで劣化し光学フィルムの品位を低下する可能性があるため、可視光線吸収色素の劣化に繋がる紫外線を外側に位置する樹脂B層に紫外線吸収剤を添加して遮断することにより、可視光線吸収色素の機能を長期にわたり保持することが出来るため好ましい。
【0042】
本発明の光学フィルムは、85℃250時間の促進耐熱試験後のヘイズ値が1.5以下であることが好ましい。85℃の促進耐熱試験はディスプレイ用途での一般的な信頼性試験条件であるが、高温なため内部に添加している紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素、樹脂由来のオリゴマーなどが熱運動によりフィルム表面に析出しやすくなる。この条件にてヘイズ値が1.5以下でないと、光学フィルム自体が白くぼやけて実装した際の光線透過性が悪化し、視認性に問題を生じる。促進耐熱試験後のヘイズ値としてより好ましくは1.0以下であり、さらに好ましくは0.5である。
本発明の光学フィルムは、画像表示装置、特に車載用ディスプレイ用途をはじめとする屋外で利用する画像表示装置に好適に利用される。ディスプレイ用光学フィルムをディスプレイの偏光板前面位置で利用する場合、偏光板内の偏光子PVAを外光に含まれる紫外線から保護する役割が第一に求められるが、屋外で長期的に紫外線に曝される場合は410nmまでの可視光波長領域の光線を急峻にカットする性能を有する本発明の光学フィルムを利用することで、視認性への影響を最小限に抑えて紫外線による劣化を長期にわたり防ぐ効果を奏するため、好ましい。
【0043】
以下、実施例に沿って本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、各特性は、以下の手法により測定した。
但し、実施例1〜6及び実施例8は参考例とする。
【0044】
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0045】
(1)層構成確認、層厚み
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H−7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を観察し、断面写真を撮影、層構成および各層厚みを測定した。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、RuO
4やOsO
4による染色技術を用いた。また、1枚の画像に取り込められるすべての層の中で最も厚みの薄い層(薄膜層)の厚みにあわせて、薄膜層厚みが50nm未満の場合は10万倍、薄膜層厚みが50nm以上500nm未満である場合は4万倍、500nm以上である場合は1万倍の拡大倍率にて観察を実施した。
【0046】
(2)光線透過率
日立製の分光光度計U−4100を使用した。積分球を取り付け、酸化アルミニウム標準白色板(本体付属)の反射を100%としたときの、300〜500nm波長範囲での相対透過率を測定した。波長440nmに対しては、該波長での透過率の値を読み取り、波長300〜380nmおよび波長380〜410nmの範囲に対しては、該範囲での最大の透過率を読み取った。条件として、スキャン速度を600nm/min,サンプリングピッチを1nmに設定し、連続的に測定した。
【0047】
(3)ヘイズ測定
スガ試験機(株)製 ヘイズメーター(HGM−2DP)を用いた。サンプルをフィルム幅方向中央部から10cm×10cmで切り出し、旧JIS−K−7105に準じて測定を行うことで全光線透過率ならびにヘイズ値を測定した。フィルム幅方向に対して等間隔で3点測定し、その平均値を測定結果とした。
【0048】
(4)耐ブリードアウト性の評価
製膜時に口金から出てきたポリマーの幅方向エッジ付近をライトで照射し、白煙の発生(口金からの揮散)有無を確認した。白煙の発生(口金からの揮散)が無いことが、耐ブリードアウト性に優れると評価した。
【0049】
(5)促進耐熱試験
作成した光学フィルムをフィルム幅方向中央部から長手方向10cm×幅方向10cmで切り出し、85℃の無風炉型オーブン内に静置し、熱処理後の光学フィルムのヘイズ値を評価した。ヘイズ測定は、上述の通りスガ試験機(株)製 ヘイズメーター(HGM−2DP)を用い、旧JIS−K−7105に準じて測定を行った。フィルム幅方向に対して等間隔で3点測定し、その平均値を測定結果とした。
◎:ヘイズ値が 0.5%未満
○:ヘイズ値が 0.5%以上1.0%未満
△:ヘイズ値が 1.0%以上1.5%未満
×:ヘイズ値が 1.5%以上
(6)硬化性樹脂層(活性エネルギー線硬化型樹脂、ハードコート塗布)
後述する実施例9〜18に記載の紫外線吸収剤および/または可視光線吸収色素を添加した、硬化性樹脂層を構成する活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂(アイカ工業(株)製 アイカアイトロンZ−850L[屈折率:1.50〜1.51])を、樹脂Aを主成分とするフィルムの最表面上にバーコーターを用いて均一に塗布した。ハードコート剤の固形分濃度は全体で30wt%となるようにメチルエチルケトン溶媒を加えることで適宜調整した。作成したハードコート剤をワイヤーバーで塗布後、80℃で保たれたオーブン内で1〜2分間乾燥してメチルエチルケトン溶媒を揮発させ、次いで、硬化性樹脂層の表面から13cmの高さにセットした120W/cm
2の照射強度を有する集光型高圧水銀灯(アイグラフィックス(株)製 H04−L41)で、積算照射強度が180mJ/cm
2となるように紫外線を照射し、硬化させ、積層フィルム上にハードコート層が積層された積層フィルムを得た。なお、紫外線の積算照射強度測定には工業用UVチェッカー(日本電池(株)製UVR−N1)を用いた。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
樹脂Aとして、融点が258℃のポリエチレンテレフタレート(PET)をベースに用いた。樹脂A内には、分子量が700g/molのトリアジン系紫外線吸収剤(2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−s−トリアジン)を、樹脂Aを主成分とするフィルムを構成する樹脂組成物全体に対して8wt%となるように添加し、さらに、酸化防止剤としてリン系酸化防止剤を、フィルムを構成する樹脂組成物全体に対して0.1wt%となるように添加した。準備した樹脂Aを単軸押出機に投入し、280℃で溶融させて混練した。次いで、FSSタイプのリーフディスクフィルタを7枚介した後、ギアポンプにて計量しながらTダイに供給し、シート状に成形した。シート状の成形体を、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度が25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸のキャストフィルムを得た。
得られたキャストフィルムを、100℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、フィルム長手方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。つづいて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、そのフィルム両面の処理面に、#4のメタバーで易滑層となる粒径100nmのコロイダルシリカを3wt%含有した酢酸ビニル・アクリル系樹脂を含有した水系塗剤を両面にコーティングし(以後、コーティングを行うとは、前記内容を意味する。)、透明・易滑・易接着を有するプライマー層を両面に形成した。
【0051】
この一軸延伸フィルムをテンターに導き、90℃の熱風で予熱後、140℃の温度でフィルム幅方向に3.3倍延伸した。ここでの延伸速度と温度は一定とした。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で200℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に3%の弛緩処理を施し、その後巻き取ることで、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムは、表1に示すとおりの性能を示すものであった。得られた光学フィルムの厚みは30μmであり、波長410nm、440nmにおける光線透過率はそれぞれ、10%、89%と目標値を満足した。厚みはやや厚く、紫外線吸収剤含有量が8wt%であるために促進耐熱試験後のヘイズがやや高めであったものの、ディスプレイ用途としての使用に耐えうるものであった。
【0052】
(比較例1)
実施例1において、紫外線吸収剤を添加せずに同様の手法でフィルムを作成した。無色透明の積層フィルムを得たが、紫外線領域および可視光短波長領域の光線カット性能を有していないため、ディスプレイに実装した際に、紫外線透過に伴う偏光子や発光層の劣化が著しかった。偏光子を保護する目的でのディスプレイ部材としては適さないフィルムであった。
【0053】
(比較例2)
実施例1において、紫外線吸収剤として分子量が650g/molのベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)を、樹脂Aを主成分とするフィルムの全重量に対して10wt%となるように添加した以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。押出し時のブリードアウトが著しく、さらに該ベンゾトリアゾール系が長波長カット性に乏しいことから、ディスプレイに搭載した際の表示パネル部の性能劣化が発生した。また、長期耐熱試験においてもフィルムの白化が強く、光学用途には適さないフィルムであった。
【0054】
(実施例2)
樹脂Aとして融点が230℃のアクリル樹脂を利用し、実施例1に記載のトリアジン系紫外線吸収剤を、樹脂Aを主成分とするフィルムを構成する樹脂組成物全体に対して8wt%となるよう添加した。さらに、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤を、フィルムを構成する樹脂組成物全体に対して0.05wt%ずつ添加した。樹脂Aを単軸押出機に投入し250℃で溶融させて、実施例1と同様にしてシート状にした。このシートをステンレス製ポリシングロール(70℃)に両面を完全に接着させるようにして冷却し、フィルム厚み30μmのアクリル樹脂フィルムを得た。得られた積層フィルムは、樹脂が非晶である点から、促進耐熱試験おいて添加した紫外線吸収剤が表面に析出しやすくなっており、実施例1と比較してやや白っぽく見えるものの、光学用途に使用できる性能を有していた。実施例1と比較して、アクリル樹脂本来の特性により、光学フィルムとしての性能への影響は異なるものの、紫外線吸収剤その他添加剤による光学性能への影響は、PET樹脂を利用した実施例1と大きな差異はなかった。
【0055】
(実施例3)
ガラス転移温度が160℃を有するノルボルネン系重合樹脂に、実施例1で記載のトリアジン系紫外線吸収剤を8wt%、リン系酸化防止剤を0.1wt%添加したものを樹脂Aとして利用した。準備した樹脂Aを単軸押出機に投入して280℃で溶融混練した。次いで、FSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて計量しながらTダイに供給しシート状に成形した。シート状の成形体を、ワイヤーで7kVの静電印可電圧をかけながら、150℃に保たれたキャスティングドラム上で冷却固化し、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、促進耐熱試験おいて添加した紫外線吸収剤が表面に析出する傾向があったものの、光学フィルムとして利用するに足る性能を有していた。実施例1と比較して、ノルボルネン系重合樹脂の特性により、光学フィルムとしての性能への影響は異なるものの、紫外線吸収剤その他添加剤による光学性能への影響は、PET樹脂を利用した実施例1と大きな差異はなかった。
【0056】
(実施例4)
セルロースアセテートプロピオネートならびにポリメチルメタクリレートを1:4の比率で混合した樹脂に、実施例1で記載したトリアジン系紫外線吸収剤を10wt%、実施例2で記載したフェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤0.75wt%ずつを混合した。この混合物をスクリュー長さとスクリュー直径の比(L/D)が30の二軸押出機に投入し、ニーディングディスク直前の位置でプランジャーポンプを用いてメタノールを樹脂組成物に対して5%となるように供給し、230℃で加熱溶融し、樹脂Aを得た。100℃で6時間乾燥した樹脂Aを窒素雰囲気下の単軸押出機中に投入し、250℃で溶融混練した後、Tダイに供給してシート状とした。このシートを、表面温度が120℃に保たれたキャストロールにて引きとり、常温まで冷却して平均110μmのフィルムに成形した。次いで、165℃に加熱したロール群でフィルム長手方向に2.1倍延伸し、その後165℃でフィルム幅方向に2.1倍に延伸し巻き取ることで、厚さ25μmのフィルムを得た。得られたフィルムは、実施例1〜3と同様に促進耐熱試験おいて添加した紫外線吸収剤が表面に析出する傾向があったものの、光学フィルムとして利用するに足る性能を有していた。実施例1と比較して、セルロースアセテート樹脂の特性により、光学フィルムとしての性能への影響は異なるものの、紫外線吸収剤その他添加剤による光学性能への影響は、PET樹脂を利用した実施例1と大きな差異はなかった。
【0057】
(実施例5)
実施例1において、トリアジン系紫外線吸収剤の添加量を2wt%とし、可視光線吸収色素として極大波長が393nmであるインドール系色素を、フィルムを構成する樹脂組成物全体に対して1wt%となるように添加し、厚みを13μmとした以外は、実施例1と同様の手法で光学フィルムを得た。可視光線吸収色素を別途添加したことで、可視光短波長領域のカットが容易となり、添加剤の総添加量も大きく抑えることが出来たため、促進耐熱試験後の添加剤の表面析出も抑えることが出来た。
【0058】
(実施例6)
実施例5において、トリアジン系紫外線吸収剤の添加量を1wt%とし、さらに比較例2で使用したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の添加量を、フィルムを構成する樹脂組成物全体に対して1wt%となるように添加した以外は、実施例5と同様にして光学フィルムを得た。比較例2において高濃度添加で著しく析出したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であるが、トリアジン系紫外線吸収剤と併用することで、促進耐熱試験後の析出が大きく抑制される結果を得た。促進耐熱試験後のヘイズとしては、1.1程度と少し高めの値ではあったものの、光学フィルムとしての性能は良好なものであった。
【0059】
(実施例7)
実施例5において、トリアジン系紫外線吸収剤を3wt%添加し、実施例5と同様にして樹脂Aを主成分とするフィルムを作成した。その後、実施例5に用いたインドール系可視光線吸収色素を活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂Bに、硬化性樹脂B層を構成する樹脂組成物全体に対して3wt%となるように添加してハードコート剤を作成し、先述のハードコート塗布手法に従ってフィルム上に塗布することで15μmの積層光学フィルムを得た。樹脂Aを主成分とするフィルムの添加剤濃度が少なくなったことで、ブリードアウトは最小限に抑えられ、かつ架橋性の強い硬化性樹脂B層塗布により、促進耐熱試験後の添加剤の表面析出は大きく抑えられた。410〜440nm付近の急峻カット性にも優れており、ディスプレイに搭載した際の視認性も良好であった。
【0060】
(実施例8)
実施例7において、紫外線吸収剤として2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−s−トリアジンを硬化性樹脂Bを主成分とする樹脂B層に3wt%添加し、可視光線吸収色素として極大波長が378nmのアゾメチン系色素を樹脂Aを主成分とするフィルム内に3wt%添加した以外は、実施例7と同様にして厚さ15μmの積層光学フィルムを得た。色素を樹脂に添加したことで、製造コスト面でやや高くなったものの、性能は目標値を満足しており、促進耐熱試験においても表面析出なく、長期にわたりディスプレイ用光学フィルムとして用いることが出来る性能を有していた。
【0061】
(実施例9)
実施例7において、紫外線吸収剤として、実施例1で利用したトリアジン系紫外線吸収剤ならびに比較例2で利用したベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、それぞれ樹脂Aを主成分とするフィルムを構成する樹脂組成物全体に対して1wt%ずつとなるように添加した以外は実施例7と同様の手法を用いて積層光学フィルムを得た。性能としては、実施例7で得られた光学フィルムの性能と類似しており、促進耐熱試験においては、トリアジン系紫外線吸収剤の併用の効果により、析出性の高いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いた場合でも、ヘイズが低く視認性が良好な結果となった。
【0062】
(実施例10)
実施例9において、可視光線吸収色素として、インドール系可視光線吸収色素の添加量を1wt%とし、さらに極大波長が384nmのアントラキノン系可視光線吸収色素を7wt%となるように添加した以外は、実施例9と同様にして積層光学フィルムを得た。アントラキノン系可視光線吸収色素ならびにインドール系可視光線吸収色素はそれぞれ狭帯域の波長をカットすることに優れているため、実施例9と比較して、より本来の目的に近い急峻なカット性を有する光学フィルムとなった。アントラキノン系を高濃度添加しているものの、促進耐熱試験後のフィルムはディスプレイに実装した際に視認性を悪化させることなく、良好なものであった。
【0063】
(実施例11)
実施例9において、硬化性樹脂Bとして熱硬化性ウレタン樹脂を利用した以外は、実施例9と同様にして積層光学フィルムを得た。熱硬化性ウレタン樹脂の製造方法は下記の通りである。テトラエトキシシラン320質量部ならびにエタノール106質量部、脱イオン水21質量部、および1wt%の塩酸1質量部を仕込み、昇温によりエタノールを回収しながら180℃の温度で3時間保持することでポリシロキサンを得た。一方、トルエン50質量部、メチルイソブチルケトン50質量部、ポリジメチルシロキサン系高分子重合開始剤(和光純薬株式会社製 VPS−0501)20質量部、メタクリル酸メチル30質量部、メタクリル酸ブチル26質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23質量部、メタクリル酸1質量部、および1−チオグリセリン0.5質量部を仕込み、80℃で8時間反応させてポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体を得た。重合したポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体78質量部、ポリシロキサン9.1質量部、水酸基を有するポリカプロラクトントリオール(ダイセル化学工業株式会社製 プラクセル308)13質量部を配合した原料100質量部に対し、ジヘキサメチレンイソシアネート体(武田薬品工業株式会社製 タケネートD−170N)を25質量部添加し、さらにメチルエチルケトンを用いて希釈することで、固形分濃度32wt%の熱硬化性ウレタン樹脂を得た。実施例9と同種・同量の色素を添加してハードコート剤を調製し、エージング工程後の硬化性樹脂B層の厚みが3μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布後、150℃で2分間熱風オーブン内で乾燥した。その後、20℃で14日間エージング処理を行い、熱硬化性樹脂Bを積層した積層フィルムを得た。光学性能は十分満足しており、促進耐熱試験においても良好な結果となった。耐擦傷性を有することから、ディスプレイ用光学フィルムとして好適なものとなった。
【0064】
(実施例12)
実施例9において、活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂Bに添加するインドール系可視光線吸収色素の添加濃度を1.5wt%とし、ハードコートを両面に塗布した以外は、実施例9と同様にして15μmの積層光学フィルムを作成した。透過型電子顕微鏡を用い、得られた積層フィルムの断面を観察したところ、両面の硬化性樹脂B層の厚みがそれぞれ1μm、基材としての樹脂Aを主成分とするフィルムの厚みが13μmである事を確認した。実施例9と同様に、フィルムの光学性能はディスプレイ光学用途として良好なものとなった。
【0065】
(実施例13)
実施例12において、樹脂B層に添加するインドール系可視光線吸収色素を3wt%とし、さらに、インドール系可視光線吸収色素を添加していない実施例11に記載の熱硬化型ウレタン系樹脂を樹脂C層として、樹脂Aを主成分とするフィルムAに対して樹脂B層と反対面に積層した以外は、実施例12と同様にして厚さ15μmの積層光学フィルムを得た。透過型電子顕微鏡を用い、得られた光学フィルムの断面を観察したところ、樹脂B層および樹脂C層の厚みがそれぞれ1μm、基材としての樹脂Aを主成分とするフィルムの厚みが13μmである事を確認できた。得られた光学フィルムの特性は実施例12と同等であったものの、本光学フィルムをディスプレイに実装する際に、樹脂B層がディスプレイの外側、樹脂C層が内側を向くように貼り合わせたところ、添加したインドール系可視光線吸収色素の劣化が実施例12と比較して著しく抑制され、ディスプレイ用途の光学フィルムとしてより好ましいものであった。
【0066】
(実施例14)
実施例12において、可視光線吸収色素として、インドール系可視光線吸収色素の添加量を0.5wt%とし、さらにアントラキノン系可視光線吸収色素を4wt%となるように添加した以外は、実施例12と同様にして積層光学フィルムを得た。アントラキノン系可視光線吸収色素ならびにインドール系可視光線吸収色素はそれぞれ狭帯域の波長をカットすることに優れているため、実施例12と比較して、より本来の目的に近い急峻なカット性を有する光学フィルムとなった。ディスプレイに実装した際にも、視認性が全ての実施例の中で最も良好なものとなった。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】