(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前面に放電空間を形成する凹所を有し、当該凹所の内表面に反射面が形成された柱状の胴体と、前記放電空間において互いに対向して配置された陰極および陽極と、前記胴体における凹所の開口に設けられた窓部材とを備えてなるショートアーク型放電ランプ、
前記窓部材の前方に配置された光学部材、並びに
内部に前記光学部材を保持する筒体よりなるホルダー
を備えてなり、
前記ショートアーク型放電ランプは、前記窓部材を支持する窓支持部材を有し、
前記窓支持部材は、窓部材の外周面に固定された筒状の内部リング部と、この内部リング部を取り囲む、当該内部リング部よりも大径の筒状の外部リング部と、前記内部リング部および前記外部リング部とを連結する連結部とよりなる断面U字状の二重リング構造を有し、
前記ホルダーは、その一端に前記ショートアーク型放電ランプに装着される装着部を有し、当該装着部は、前記内部リング部の外径に適合する内径を有すると共に、前記外部リング部の内径より小さい外径を有し、
前記ホルダーは、前記装着部が前記内部リング部と前記外部リング部との間の筒状空間に摺合せにより挿入されて前記ショートアーク型放電ランプに装着されていることを特徴とする放電ランプ装置。
【背景技術】
【0002】
ショートアーク型放電ランプ(以下、単に「放電ランプ」ともいう。)の一形態として、ランプ本体(胴体)が、例えばセラミックなどの不透明の絶縁部材によって形成され、光取り出し部(窓部材)のみが光透過性材料によって形成された反射鏡一体型のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このような反射鏡一体型の放電ランプは、全体の外観形状が柱状であって、取り扱いが容易であり、安全であるなどのことから、医療用のファイバー照明用光源、ソーラーシミュレータや半導体の検査装置の光源などとして広い分野で利用されている。
【0003】
図8は、従来の反射鏡一体型のショートアーク型放電ランプの構成の一例を示す説明用断面図である。
この放電ランプ40は、前面に凹所を有し、当該凹所の内表面に反射面50aが形成された胴体50と、当該胴体50における凹所の開口よりなる前面開口50bを塞ぐための窓部材60とを有し、胴体50の反射面50aに囲まれて形成される放電空間Sには、キセノンガスなどの希ガスよりなる発光ガスが封入されると共に、陰極52および陽極53が互いに対向して配置されている。
【0004】
窓部材60は、窓支持部材65によって固定支持されており、これにより、窓部材60および窓支持部材65よりなる窓組立体66が構成されている。具体的に説明すると、窓支持部材65は、筒状の内部リング部65aと、当該内部リング部65aの外径よりも大きい内径を有する筒状の外部リング部65bと、内部リング部65aおよび外部リング部65bを連結する連結部65cとよりなる断面U字状の二重リング構造を有する。そして、窓部材60は、窓支持部材65の内部リング部65aの内周面と窓部材60の外周面とが接着によって気密に接着されることにより、当該窓支持部材65によって支持されている。
このような窓組立体66は、窓支持部材65における連結部65cが、胴体50における前面開口50bの周辺部、すなわち胴体50における円環状の前面に、セラミックスペーサリング56および陰極給電用の金属リング55を介して重ねられた状態で配置されている。また、胴体50の前端部の外周面には、当該胴体50の外径に適合する内径を有する円筒状の金属筒体58が、当該胴体50の前端から突出するよう配置されている。この金属筒体58の前端部の内周面に、窓支持部材65における外部リング部65bの外周面が気密に固定されている。
図8において、57は、陰極52を所定の位置に配置するための導電性支持部材、59は、胴体50を金属ブロック51に固定するための金属筒体である。
【0005】
この放電ランプ40は、点灯中に発生する熱を放熱するために、
図9に示すように、放熱フィン43,44が取り付けられた絶縁物よりなるケーシング(図示省略)内に配置されて用いられる。具体的には、ケーシングには、放電ランプ40が配置されるべきランプ配置領域40aの周囲に、放電ランプ40の金属筒体58および金属ブロック51にそれぞれ接触する状態に放熱フィン43,44が取り付けられると共に、放電ランプ40の窓部材60と対向する位置に光取り出し窓42が設けられている。
図9において、45は、フィルタであり、46は、当該フィルタ45を押えると共に光取り出し窓42の周側面に接触して固定する枠部材である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような放電ランプ40においては、陰極52と陽極53との間の輝点から放射された光は、反射面50aによって反射され、平行光として窓部材60から出射される。
然るに、上記の放電ランプ40においては、反射面50aの光軸に沿って、陰極52および陽極53が配置されており、また、反射面50aの中央部には、陽極53を挿通する筒孔50hが形成されているため、窓部材60から出射される光には、中心位置における光の強度が低い、いわゆる中抜けの現象が生じる、という問題がある。
【0008】
このような問題を解決するためには、窓部材60の前方位置に、レンズなどの光学部材を配置して放電ランプ装置を構成することが考えられる。
しかしながら、光学部材を有する放電ランプ装置を構成する場合には、以下のような問題がある。
上記の放電ランプ装置を簡単な構造で作製する場合には、光学部材を放熱器の内部若しくは外部に保持させる構造が採られている。しかし、このような構造の放電ランプ装置を作製するときには、放電ランプの光軸と放熱器の軸とを一致させる調整を行うことが必要であり、組立作業が煩雑となる、という問題がある。
【0009】
本発明の目的は、反射鏡一体型のショートアーク型放電ランプと、光学部材とを有する放電ランプ装置において、光軸調整が不要で、簡単に光学部材を取り付けることができる放電ランプ装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の目的に加えて更に、強度分布が均一な光を出射することができる放電ランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放電ランプ装置は、前面に放電空間を形成する凹所を有し、当該凹所の内表面に反射面が形成された胴体と、前記放電空間において互いに対向して配置された陰極および陽極と、前記胴体における凹所の開口に設けられた窓部材とを備えてなるショートアーク型放電ランプ、
前記窓部材の前方に配置された光学部材、並びに
内部に前記光学部材を保持する筒体よりなるホルダー
を備えてなり、
前記ショートアーク型放電ランプは、前記窓部材を支持する窓支持部材を有し、
前記窓支持部材は、窓部材の外周面に固定された筒状の内部リング部と、この内部リング部を取り囲む、当該内部リング部よりも大径の筒状の外部リング部と、前記内部リング部および前記外部リング部とを連結する連結部とよりなる断面U字状の二重リング構造を有し、
前記ホルダーは、その一端に前記ショートアーク型放電ランプに装着される装着部を有し、当該装着部は、前記内部リング部の外径に適合する内径を有すると共に、前記外部リング部の内径より小さい外径を有し、
前記ホルダーは、前記装着部が前記内部リング部と前記外部リング部との間の筒状空間に摺合せにより挿入されて前記ショートアーク型放電ランプに装着されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の放電ランプ装置においては、前記胴体の反射面は回転放物面であり、前記光学部材は、円錐状若しくは円錐台状の凸面よりなる光入射面と、円錐状若しくは円錐台状の凹面よりなる光出射面を有するコーン状レンズよりなることが好ましい。
また、前記胴体の反射面は回転放物面であり、前記光学部材は、集光レンズよりなる構成であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の放電ランプ装置においては、ホルダーの装着部は、窓支持部材における内部リング部の外径に適合する内径を有するため、ホルダーの装着部を、窓支持部材における内部リング部と外部リング部との間の筒状空間に摺合せにより挿入するだけで、ショートアーク型放電ランプに対して光学部材を固定位置に配置することができる。
従って、本発明の放電ランプ装置によれば、ヒートコンパウンドによる光学部材への汚染が無く、光軸調整が不要で、光学部材を簡単に取り付けることができる。
また、胴体の反射面は回転放物面であり、光学部材として、円錐状若しくは円錐台状の凸面よりなる光入射面と、円錐状若しくは円錐台状の凹面よりなる光出射面を有するコーン状レンズが設けられた構成によれば、強度分布が均一な光を出射することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の放電ランプ装置の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の放電ランプ装置の一例における概略の構成を示す説明用断面図である。この放電ランプ装置は、反射鏡一体型のショートアーク型放電ランプ(以下、単に「放電ランプ」ともいう。)10と、この放電ランプ10から出射された光を補正する光学部材70と、内部に光学部材70を保持する筒体よりなるホルダー75と、放電ランプ10およびホルダー75の各々の外周面に設けられた、それぞれ放電ランプ10およびホルダー75を冷却するヒートシンク80,81とを有する。
【0015】
図2は、
図1に示す放電ランプ装置におけるショートアーク型放電ランプの構成を示す説明用断面図であり、
図3は、
図2に示すショートアーク型放電ランプにおける窓組立体を部分的に拡大して示す説明用断面図である。
この放電ランプ10は、外観形状が円柱状であって、前面(
図1における上面)に凹所を有する胴体20と、この胴体20を支持する柱状の金属ブロック15とを有する。胴体20の凹所は、前面開口20bが円形であり、当該凹所の内表面には反射面20aが形成されている。
【0016】
胴体20は、多結晶アルミナ(Al
2 O
3 )等のセラミックなどの絶縁材料よりなり、凹状に湾曲した反射面20aを内部に有する反射部21と、反射部21の光出射方向後方側に連続して反射面20aの光軸方向に伸びるよう形成された、筒孔24を有する後方円筒部22と、反射部21の光出射方向前方側に連続して反射面20aの光軸方向に伸びるよう形成された前方円筒部23とを有する。そして、前方円筒部23における光出射方向前方の内端縁により、胴体20の前面開口20bが形成されている。
【0017】
反射面20aは、凹状に湾曲した形状を有するものである。図示の例では、反射面20aは回転放物面とされているが、本発明の放電ランプ装置においては、用途や要求される機能などに応じて、回転楕円面、非球面とされていてもよい。
また、反射面20aは、銀による金属蒸着膜によって形成されている。
また、胴体20の外周面には、後述する金属筒体28および金属筒体29とロー剤によって接着される領域に、メタライズ加工が施されている。
【0018】
胴体20の光出射方向前方(
図2における上方)には、窓組立体36が後述するセラミックスペーサリング26および金属リング25を介して胴体20の凹所の前面開口20bを塞ぐよう設けられている。これにより、窓組立体36と、胴体20の反射面20aとに囲まれた放電空間Sが形成されている。
窓組立体36は、例えばサファイアなどよりなる透光性の円板状の窓部材30と、この窓部材30をその周側面において支持する、例えば常温付近での熱膨張率が低いコバールなどの合金よりなる窓支持部材35とにより構成されている。
【0019】
窓部材30は、
図2に示すように、窓支持部材35と共に前面開口20bを挟み込めるよう、前面開口20bよりも小径であって、反射面20aの前端縁21aによって構成される開口(以下、「反射面開口」ともいう。)に適合した形状を有するものであることが好ましい。
また、窓部材30の厚みは、2.5〜5.0mmであることが好ましい。
図示の例において、窓部材30は、前面開口20bの径よりも小径であって反射面開口の径と略同等の外径を有するものであり、前面開口20bの光出射方向前方において、反射面開口と対向するように配置されている。
【0020】
この図の例において、窓部材30には、面取り加工がなされることによって斜面30b,30cが形成されている。
具体的には、窓部材30には、光出射面である外表面30d(
図2における上面)と周側面との間に、その全周にわたって、窓部材30の半径方向外方に傾斜する斜面30bが形成されている。また、窓部材30における内表面30e(
図1における下面)と周側面30aとの間には、その全周にわたって、窓部材30の半径方向外方に傾斜する斜面30cが形成されている。
【0021】
窓支持部材35は、窓部材30の外径に適合する内径を有する円形の内部リング部35aと、この内部リング部35aの外径よりも大きい内径を有する円形の外部リング部35bと、内部リング部35aにおける光出射方向後方側の端部および外部リング部35bにおける光出射方向後方側の端部を連結する連結部35cとよりなる、断面U字状の二重リング構造を有するものである。この図の例において、窓支持部材35における外部リング部35bは、胴体20の外径と略同等の外径を有する。また、窓支持部材35における内部リング部35aには、窓部材30よりも光出射方向前方において当該窓部材30の半径方向内方に向かって折り曲げられた形状の前縁部分35dが形成されている。前縁部分35dは、窓部材30に接触しない状態とされることが好ましい。
窓支持部材35における内部リング部35aと外部リング部35bとの間のギャップ、すなわち内部リング部35aと外部リング部35bとの間の筒状空間の厚みgは、1mm以上であることが好ましく、より好ましくは1〜3mmである。
そして、窓部材30は、窓支持部材35の内部リング部35aの内周面と窓部材30の周側面30aとが接着剤によって気密に接着されることにより、当該窓支持部材35によって支持されている。
【0022】
図示の例では、窓支持部材35における内部リング部35aの内周面に包囲された空間内に窓部材30が配置されている。また、
図4に示すように、内部リング部35aの内周面と窓部材30の周側面30aとの間に接着剤が導入されて接着層37が形成されることにより、窓部材30が支持固定されている。接着剤としては、銀ロー剤などのロー剤を用いることができる。
接着層37は、窓部材30の周側面30aと内部リング部35aの内周面との間の全周にわたって、窓部材30の厚み方向に伸びるように形成されている。また、接着層37は、窓部材30の周側面30aの全面と、斜面30b,30cにおける一部の当該周側面30aに連続する周側面側領域とを覆うように形成され、略円環状の形状を有している。
【0023】
このような窓組立体36は、窓支持部材35における連結部35cの光出射方向後方側の表面が、胴体20における前面開口20bの周辺部、すなわち胴体20における円環状の前端面に、セラミックスペーサリング26およびコバールなどよりなる陰極給電用の金属リング25を介して重ねられた状態で配置されている。窓支持部材35における連結部35cと胴体20の前端面との間に、金属リング25およびセラミックスペーサリング26が配置されることにより、放電空間S内において、後述する導電性支持部材27を収容するための領域が形成されている。
【0024】
金属リング25の外径は、
図2に示すように、当該金属リング25の外周面と後述する金属筒体28の内周面との間に、その全周にわたって間隙が形成されるよう、金属筒体28の内径よりも僅かに小径であることが好ましい。
また、金属リング25の内径は、
図2に示すように、当該金属リング25によって光の進行が阻害されることのないよう、反射面開口の径および窓部材30の外径と略同等であることが好ましい。
また、金属リング25と胴体20の前端面との間に配置されたセラミックスペーサリング26は、金属リング25の内径よりも僅かに大きく、かつ、前面開口20bの径よりも僅かに小さい内径を有すると共に、金属筒体28の内径に適合する外径を有するものである。
【0025】
胴体20における前方円筒部23の前端部の外周面には、当該胴体20の外径に適合する内径を有する円筒状の金属筒体28が、当該胴体20の前端から突出するよう配置されている。この金属筒体28は、例えばコバールなどよりなり、ロー剤によって胴体20の前端部の外周面に気密に接着されている。
この金属筒体28の前端部の内周面には、窓支持部材35における外部リング部35bの外周面が例えば溶接により気密に固定されている。
以上のように、窓支持部材35における内部リング部35aと窓部材30とが気密に接着され、金属筒体28と窓支持部材35における外部リング部35bが例えば溶接により気密に固定され、更に金属筒体28が胴体20における前方円筒部23の前端部の外周面に気密に接着されていることにより、放電空間Sの気密状態が保たれている。
【0026】
窓部材30の周側面30aは、当該窓部材30がサファイアなどよりなるものであり、窓支持部材25がコバールなどの金属よりなるものであることから、窓部材30と窓支持部材35との接着性を向上させるために、例えばモリブデンおよびマンガンの混合物からなる金属によって被覆されることによって、メタライズ加工が施されている。
具体的に説明すると、
図4に示すように、窓部材30の周側面30aの全領域および斜面30b,30cにおける周側面側領域にメタライズ加工が施されることにより、これらの領域がメタライズ層38に被覆され、これにより、窓部材30と接着層37との間にメタライズ層38が介在されることとなる。
【0027】
窓部材30と窓支持部材35との接着方法、すなわち窓組立体36の製造方法としては、Mo−Mnメタライズ法を用いる手法が挙げられる。
具体的に、Mo−Mnメタライズ法を用いて窓組立体36を製造する手法においては、例えば、先ず、窓部材30の周側面30aおよび斜面30b,30cにおける窓支持部材35と接着すべき領域に、モリブデンとモリブデン酸化物およびマンガンとマンガン酸化物を混合したスラリーを塗布し、その塗膜を湿潤水素雰囲気において温度1500℃の条件で焼成することにより、メタライズ層38を形成する。次いで、窓部材30におけるメタライズ層38が形成された領域と窓支持部材35とを銀ロー剤によってロー付けする。以って、窓組立体36が製造される。
【0028】
放電空間Sには、それぞれ反射面20aの光軸に沿って伸びるロッド状の陰極12およびロッド状の陽極13が、互いに離間して対向し、かつ、陰極12と陽極13との間に、反射面20aの焦点が位置するよう配置されている。
【0029】
陰極12は、易電子放出物質を含むタングステン等の高融点金属よりなり、先端に向かって小径となるテーパー状の先端部を有する棒状のものである。陰極12の基端部は、放電空間Sにおいて、胴体20の凹所の周方向に等間隔で配設された、当該凹所の半径方向に伸びる3つの導電性支持部材27によって支持されている。具体的には、導電性支持部材27の先端部が陰極12の基端部にロー付け等によって溶接されている。また、導電性支持部材27の基端部はロー付け等によって金属リング25の内周面に電気的に接続された状態で固定されている。
導電性支持部材27を構成する材料としては、耐熱性および溶接性の観点から、モリブデンなどを用いることが好ましい。
また、金属リング25は、光出射方向前方側の表面において窓支持部材35を介して金属筒体28に電気的に接続されている。このようにして、陰極12は、導電性支持部材27、金属リング25、窓支持部材35および金属筒体28を介して外部給電部材(図示省略)に電気的に接続されている。
このようにして、陰極12が、導電性支持部材27によって支持固定され、この導電性支持部材27、金属リング25および金属筒体28により、放電空間Sの気密性を保った状態で外部給電部材に電気的に接続されている。
【0030】
陽極13は、先端に向かって小径となるテーパー状の先端部を有する略柱状のものであり、易電子放出物質を含むタングステン等の高融点金属によって構成されている。
この陽極13の基端部は、後方円筒部22の筒孔24に挿通され、更に、金属ブロック15にその中心軸に沿って形成された貫通孔15aに嵌挿されて気密に固定され、金属ブロック15を介して外部給電部材(図示省略)に電気的に接続されている。
【0031】
金属ブロック15は、胴体20に接する大径部15bと、この大径部15bよりも小径の外径の小径部15cとを有する。金属ブロック15における大径部15bは胴体20の外径と同等の外径を有する。
金属ブロック15には、胴体20における後面方開口20cを介して後方円筒部22の筒孔24に連通する、軸方向に伸びる貫通孔15aが形成されている。この貫通孔15aは、陽極13を支持固定することができるよう、陽極13の外径に適合する内径を有するものである。
金属ブロック15を構成する材料としては、電気伝導性および熱伝導性の観点から、コバールを用いることが好ましい。
【0032】
金属ブロック15には、胴体20の外径および金属ブロック15の大径部15bの外径に適合する内径を有する筒状の金属筒体29を介して、胴体20が固定されている。具体的には、金属ブロック15の大径部15bの外周面の全面と金属筒体29の内周面における光出射方向後方側部分とが溶接され、胴体20の外周面における光出射方向後方側部分と金属筒体29の内周面における光出射方向前方側部分とが接着剤によって接着されている。
ここに、金属筒体29を構成する材料としては、例えばコバールなどを用いることができる。また、胴体20と金属筒体29とを接着する接着剤としては、銀ロー剤などのロー剤を用いることができる。
このようにして、胴体20の後面開口20cが、僅かな間隙を介して、陽極13を支持した状態の金属ブロック15によって密閉されている。
【0033】
放電空間Sには、例えばキセノンガスなどの希ガスよりなる発光ガスが封入されている。発光ガスの封入圧は、静圧で例えば2MPaである。
【0034】
上記の放電ランプ10の具体的な仕様の一例を挙げると、以下の通りである。
胴体20においては、全長が20mm、外径が32mmである。
陰極12においては、全長が14mm、ロッド径が1.5mm、先端のテーパー角が50°であり、また陽極13においては、全長が23mm、直径が4mmである。また、陽極13と陰極12との電極間距離は1.4mmである。
窓部材30においては、外径が25.4mm、厚みが3mmである。また、窓部材30の、窓支持部材35の光出射方向先端からの距離は0.7mmである。
窓支持部材35においては、高さhが5.65mmであり、外部リング部35bの外径が31.5mm、内部リング部35aの外径が26.3mm、厚みwが0.65mmである。また、窓部材30の外表面(光出射面)と窓支持部材35の前縁部分35dの内面との距離dは0.05mmである。
また、放電ランプ10の定格電流は20A、消費電力は300Wである。
【0035】
この例の放電ランプ装置においては、光学部材70として、円錐台状の凸面よりなる光入射面71と、円錐状の凹面よりなる光出射面72とを有するコーン状レンズが用いられている。
この光学部材70において、その光軸に対する光入射面71の角度と、光軸に対する光出射面72の角度とは同等である。これらの角度の値は、放電ランプ10の具体的な仕様に応じて適宜設定されるが、通常、70〜50°である。
光学部材70を構成する材料としては、テンパックス(登録商標)、パイレックス(登録商標)などの耐熱ガラスを用いることが好ましい。
【0036】
ホルダー75は、内部に光学部材70を保持する光学部材保持部76を有すると共に、一端に放電ランプ10に装着される装着部77を有する。ホルダー75を構成する材料としては、アルミニウム、真鍮等の熱伝導率の高い金属材料を用いることが好ましい。
【0037】
光学部材保持部76は、光学部材70の外径に適合する内径を有する。図示の例では、内部リング部35aの外径に適合する内径を有するホルダー基材を用い、ホルダー基材の内周面に例えば切削による段削り加工を施すことによって、光学部材保持部76が形成されている。
この光学部材保持部76内には、光学部材70が保持されている。具体的には、光学部材保持部76内において、光学部材70の光軸がホルダー75を構成する筒体の中心軸上に位置するよう光学部材70が配置され、光学部材70の周側面と光学部材保持部76とが接着剤によって接着されている。接着剤としてはシリコーン系接着剤を用いることか好ましい。シリコーン系接着剤を用いれば、当該シリコーン系接着剤が有する弾性により、放電ランプ10の点灯中において、光学部材70を構成する材料とホルダー75を構成する材料との線熱膨張率の差に起因して光学部材70とホルダー75との間に生ずる歪みを抑制することができる。
【0038】
装着部77は、窓支持部材35における内部リング部35aの外径に適合する内径を有すると共に、外部リング部35bの内径より小さい外径を有する。図示の例では、ホルダー基材の一端部の外周面に例えば切削による段削り加工を施すことによって、装着部77が形成されている。装着部77は、その肉厚が窓支持部材35における内部リング部35aと外部リング部35bとの間の筒状空間の厚みより小さいものとされるが、装着部77の肉厚は1mm以上であることが好ましく、より好ましくは1〜3mmである。
そして、ホルダー75は、
図5にも拡大して示すように、装着部77が窓支持部材35における内部リング部35aと外部リング部35bとの間の筒状空間に摺合せにより挿入されることによって、放電ランプ10に装着されている。
【0039】
上記の放電ランプ装置においては、放電ランプ10の放電空間Sにおける陰極12と陽極13との間に生じた光が、光反射面20aによって反射されることにより、平行光として窓部材30から出射される。このとき、放電ランプ10においては、反射面20aの光軸に沿って、陰極12および陽極13が配置されており、また、反射面20aの中央部には、陽極13を挿通する筒孔24が形成されているため、窓部材30から出射される光には、
図6に示すように、中心位置における光の強度が低い、いわゆる中抜けの現象が生じている。そして、窓部材30から出射された光は、光学部材70の入射面71において収束するよう屈折し、光学部材70の光出射面71において平行光となるよう屈折して出射される。これにより、光学部材70の光出射面71から出射した光は、強度分布が均一なものとなる。
【0040】
本発明の放電ランプ装置においては、ホルダー75の装着部77は、窓支持部材35における内部リング部35aの外径に適合する内径を有するため、ホルダー75の装着部77を、窓支持部材35における内部リング部35aと外部リング部35bとの間の筒状空間に摺合せにより挿入するだけで、放電ランプ10に対して光学部材70を固定位置に配置することができる。
従って、放電ランプ装置によれば、光軸調整が不要で、光学部材70を簡単に取り付けることができる。
また、胴体20の反射面20aは回転放物面であり、光学部材70として、円錐台状の凸面よりなる光入射面71と、円錐状の凹面よりなる光出射面72を有するコーン状レンズが設けられているため、強度分布が均一な光を出射することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば光学部材70は、コーン状レンズよりなるものに限定されず、放電ランプ10の用途や要求される機能に応じて種々のものを用いることかできる。例えば
図7に示すように、光学部材70として、凸面よりなる光入射面71および平面よりなる光出射面72を有する集光レンズよりなるものを用いることができる。また、光学部材70は、レンズに限定されず、光学フィルターであってもよい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の放電ランプ装置の具体的な実施例について説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[放電ランプ]
図2〜
図4に示す構成に従って、下記の仕様の放電ランプを製造した。この放電ランプの製造において、窓組立体(36)は、Mo−Mnメタライズ法により、円盤状の窓部材(30)の周側面(30a)にメタライズ層(38)を形成し、この窓部材(30)と窓支持部材(35)とを銀ロー剤によってロー付けして接着層(37)を形成することによって作製した。
【0044】
〔電極〕
陰極(12)の材質:トリエーテッドタングステン
陰極(12)の全長:14mm
陰極(12)のロッド径:1.5mm
陰極(12)の先端のテーパー角:50°
陽極(13)の材質:純タングステン
陽極(13)の全長:23mm
陽極(13)の直径:4mm
陰極(12)と陽極(13)との電極間距離:1.4mm
【0045】
〔胴体(20)〕
胴体(20)の材質:多結晶アルミナ
胴体(20)の全長:20mm
胴体(20)の外径:35mm
胴体(20)の反射面(20a):回転放物面
胴体(20)の凹所の前面開口(20b)の径:27mm
【0046】
〔窓部材(30)〕
窓部材(30)の材質:サファイア
窓部材(30)の外径:25.4mm
窓部材(30)の厚み:3mm
【0047】
〔窓支持部材(35)〕
窓支持部材(35)の高さ(h):5.65mm
内部リング部(35a)の外径:26.3mm
内部リング部(35a)の内径:25.0mm
外部リング部(35b)の外径:31.5mm
外部リング部(35b)の内径:30.2mm
内部リング部(35a)および外部リング部(35b)の厚み(w):0.65mm
筒状空間の厚み(g):1.95mm
【0048】
〔その他〕
発光ガス:キセノンガス
発光ガスの封入圧:2MPa
定格電流:20A
消費電力:300W
【0049】
[光学部材(70)およびホルダー(75)]
図1に示す構成に従い、下記の仕様の光学部材(70)およびホルダー(75)を作製し、ホルダー(75)における光学部材保持部(76)の内部に、光学部材(70)をシリコーン系接着剤によって固定した。
【0050】
[光学部材(70)]
光学部材(70)の種類:コーン状レンズ
光学部材(70)の材質:耐熱ガラス
光学部材(70)の外径:26mm
光学部材(70)の肉厚:8mm
光入射面(71)における頂部面(円錐台の上底面)の径:5mm
光軸(C)に対する光入射面(71)の角度:60°
光軸(C)に対する光出射面(72)の角度:60°
【0051】
[ホルダー(75)]
ホルダー(75)の材質:アルミニウム
光学部材保持部(76)の外径:33mm
光学部材保持部(76)の内径:32mm
装着部(77)の外径:28.3mm
装着部(77)の内径:26.3mm
装着部(77)の肉厚(t):1mm
【0052】
そして、上記の放電ランプの窓支持部材における内部リング部と外部リング部との間の筒状空間に、光学部材が保持されたホルダーの装着部を摺合せにより挿入したところ、放電ランプの光軸と光学部材の光軸とが一致しており、光軸調整が不要であることが確認された。