特許第6753189号(P6753189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6753189
(24)【登録日】2020年8月24日
(45)【発行日】2020年9月9日
(54)【発明の名称】歪み式腐食センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20200831BHJP
   G01N 3/20 20060101ALI20200831BHJP
【FI】
   G01N17/00
   G01N3/20
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-147132(P2016-147132)
(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-17577(P2018-17577A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】今福 健一郎
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−065783(JP,A)
【文献】 特開2001−026782(JP,A)
【文献】 特開2015−163840(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0283619(US,A1)
【文献】 特開2014−173926(JP,A)
【文献】 米国特許第07387031(US,B1)
【文献】 米国特許第06144026(US,A)
【文献】 特開2008−261652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 − 3/62
G01N 17/00 −17/04
G01N 33/2045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食環境中に暴露される被腐食面を有する梁状の被検体と、前記被検体に曲げ歪みを付与する歪み付与機構と、前記被検体の歪みを検出する歪みセンサとを有する歪み式腐食センサであって、前記被検体は、少なくとも片面が前記被腐食面とされたフランジと、前記フランジに連続するウェブとを有し、前記ウェブは、前記フランジの幅方向の厚みが前記フランジの幅よりも狭く形成され、前記歪みセンサは、前記被腐食面にそった区間であって、前記被腐食面を有する前記フランジの前記被腐食面とは反対側の面、前記ウェブに連続しており、かつ、前記被腐食面を有する前記フランジとは別であるフランジ、または前記曲げ歪を付与される方向における前記ウェブの端部のいずれかに装着されており、
前記歪み付与機構は、互いに離れた2点で前記被検体に係合して前記被腐食面と交差方向に力を加える一対の端部支持部と、前記端部支持部の中間に配置されかつ前記端部支持部とは逆向きの力を前記被検体に加える中間支持部とを有し、
前記歪み付与機構は、前記端部支持部と前記中間支持部との少なくとも一方が、前記被検体に加える力を調整する調整機構を有し、
前記調整機構は、前記被検体に加える力を一定に制御する制御装置を有することを特徴とする歪み式腐食センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪み式腐食センサに関し、腐食環境中に曝される金属材料の腐食の進行を測定するためのセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の金属材料部分が腐食環境中に曝される場合、当該金属材料の腐食の進行を監視したいという要求がある。
このような要求に対して、監視対象と同じ金属製の被検体を、監視対象がおかれる同じ腐食環境中に配置し、被検体の表面(腐食環境により腐食される被腐食面)の腐食状態を経時的に測定することで、代替的に監視対象の腐食状態を推定する腐食測定方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に類する腐食測定方法では、監視対象と同じ金属製の被検体を用い、被検体に初期応力を導入したうえで腐食環境中に暴露し、歪みセンサにより被検体の応力変化を監視する。腐食環境によって被検体の腐食が進行すると、その断面積の減少によって応力が変化する。応力の変化は、歪みセンサの出力信号の変化として検出することができ、これにより腐食度合いを測定することができる。
【0004】
このような腐食測定方法に基づく歪み式腐食センサとして、被検体に曲げ歪みを付与した状態で腐食させるものが知られている(特許文献2参照)。
特許文献2の腐食測定方法では、板状の暴露材を支持材に支持し、弾性曲げを生じさせた状態の暴露材(被検体)の表面を腐食雰囲気に暴露させるとともに、暴露材の裏側に装着された歪みゲージにより、暴露材の腐食に伴う歪みを検出し、腐食度合いを測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−65783号公報
【特許文献2】特開2008−261652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献2の歪み式腐食センサでは、被検体として短冊状の板材を用いていたが、腐食量が非常に小さい場合、曲げ歪みの変化が小さく計測できないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、同じ腐食量でも曲げ歪みの変化が大きく、高い分解能が得られる歪み式腐食センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歪み式腐食センサは、腐食環境中に暴露される被腐食面を有する梁状の被検体と、前記被検体に曲げ歪みを付与する歪み付与機構と、前記被検体の歪みを検出する歪みセンサとを有する歪み式腐食センサであって、前記被検体は、少なくとも片面が前記被腐食面とされたフランジと、前記フランジに連続するウェブとを有し、前記ウェブは、前記フランジの幅方向の厚みが前記フランジの幅よりも狭く形成され、前記歪みセンサは、前記被腐食面にそった区間であって、前記被腐食面を有する前記フランジの前記被腐食面とは反対側の面、前記ウェブに連続しており、かつ、前記被腐食面を有する前記フランジと別であるフランジ、または前記曲げ歪を付与される方向における前記ウェブの端部のいずれかに装着されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、歪み付与機構により被検体に曲げ歪みを付与した状態で、被検体の被腐食面を腐食環境に暴露させ、被検体の曲げ歪みを歪みセンサで監視する。腐食に伴って被検体の曲げ歪みが変化すると、この変化が歪みセンサで検出される。
本発明において、被検体は、表面が被腐食面とされるフランジと、このフランジに接続されたウェブとで構成された長尺材つまり梁状とされる。具体的な被検体としては、例えば断面形状がT字状、π字状、横向きのH字状(カタカナのエ字状)、□型(角筒状)、カタカナのコ字状の形鋼など、1枚または複数のウェブの端縁の、片側または両側にフランジが接続された軸状の部材が利用できる。このため、本発明の被検体では、例えば同一桁高・同一幅の充実断面の鋼材などと比べて、フランジに設けられた被腐食面が同一量腐食した際に、フランジの断面減少が曲げ剛性の変化に及ぼす影響度が大きい。その結果、被検体の曲げ歪みの変化が大きくなり、つまり同一腐食量に対する歪みの変化量が大きくなるため、計測感度・分解能が向上する。
【0010】
また、歪みセンサを前述した部分、つまり、被腐食面にそった区間であって、被腐食面を有するフランジの被腐食面とは反対側の面、ウェブに連続しており、かつ、被腐食面を有するフランジとは別であるフランジ、または曲げ歪を付与される方向におけるウェブの端部(被腐食面を有するフランジから離れた側の端部)のいずれかに装着することで、フランジやウェブの端部では初期に導入される曲げ歪みが大きいとともに、腐食に伴う曲げ歪みの変化量を大きくできる。このため、このような部位に歪みセンサを配置することで計測感度・分解能が向上する。
【0011】
また、歪みセンサの被腐食面にそった方向(梁軸方向)の装着位置は、被腐食面にそった区間であって、梁軸方向において発生する曲げモーメントが発生する位置であればよい。なかでも、発生する曲げモーメントが大きい位置、すなわち、曲げモーメントが最大値となる位置が好ましい。
また、曲げ歪を付与される方向におけるウェブの端部の装着位置は、曲げ歪を付与される方向におけるウェブの全長に対して、端部であることが好ましい。
【0012】
なお、本発明における被検体のフランジおよびウェブとしては、元々一体の部材であってもよく、別体の部材を接合して一体化してもよい。例えば、角棒状の部材の両側を凹溝状に切削して上下のフランジとその間のウェブを形成してもよい。圧延や押出成形によりフランジとウェブを有する被検体を製造してもよい。長尺板状のフランジおよびウェブを互いに溶接等により接合して被検体を製造してもよい。フランジおよびウェブは、それぞれ一定厚みの板状である必要はなく、被検体の断面形状において厚さが変化するものでもよい。
【0013】
本発明の歪み式腐食センサにおいて、前記歪み付与機構は、互いに離れた2点で前記被検体に係合して前記被腐食面と交差方向に力を加える一対の端部支持部と、前記端部支持部の中間に配置されかつ前記端部支持部とは逆向きの力を前記被検体に加える中間支持部とを有することが好ましい。
【0014】
本発明では、一対の端部支持部とその間の中間支持部とにより、被検体を支持しつつ曲げ歪みを付与することができる。
なお、歪み付与機構の端部支持部および中間支持部は、被検体を曲げるための力を各部位に付与できればよく、被検体の表面(例えば被腐食面、ウェブの被腐食面から離れた側の辺縁あるいは当該ウェブに接続された他のフランジの表面)に当接ないし押圧されるもの、被検体に形成された孔(フランジの孔、ウェブの被腐食面と交差方向の面に形成された孔)に挿通されるものや、凹凸形状(フランジやウェブの被腐食面と交差方向の面に形成された凹み、突起ほか)に接続されるもの、被検体の端部を挟持するように係合されるものなど、各種の係合形態を採用することができる。
【0015】
本発明の歪み式腐食センサにおいて、前記歪み付与機構は、前記端部支持部と前記中間支持部との少なくとも一方が、前記被検体に加える力を調整する調整機構を有し、前記調整機構は、前記被検体に加える力を一定に制御する制御装置を有することが好ましい。
【0016】
本発明では、調整機構により、被検体の腐食が進行しても、被検体に加える力を一定に維持(荷重制御)することができる。
歪み付与機構が、被検体のボルト締め付け等で拘束する構成である場合、被検体に曲げ変形が与えられ、この変形は被検体の腐食が進行しても一定の状態である(変位制御)。
この方式では、被検体の変形が一定であるため、被検体の腐食が進行することで、歪みの変化として検出できる一方で、歪みが徐々に緩和されてゆき、やがて検出不能になる。
これに対し、荷重制御を行う場合、被検体の腐食が進行にともない、被検体に対する歪みを追加することになるため、歪みの緩和を防止し、検出できる腐食の程度(腐食試験の利用可能期間)を延長することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、腐食に応じた被検体の曲げ歪みの変化を大きくすることができ、つまり同じ腐食量でも大きな曲げ歪みの変化が大きくでき、高い分解能を得ることができる。すなわち、同じ腐食量に対する計測感度を向上させることができ、わずかな腐食に対しても高精度に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態の被検体を示す斜視図。
図2】第1実施形態の歪み式腐食センサの組立状態を示す正面図。
図3】第1実施形態の歪み式腐食センサの組立状態を示す側面図。
図4】本発明の第2実施形態の被検体を示す斜視図。
図5】第2実施形態の歪み式腐食センサの組立状態を示す正面図。
図6】第2実施形態の歪み式腐食センサの組立状態を示す側面図。
図7】本発明の第3実施形態の歪み式腐食センサを示す正面図。
図8】第3実施形態の歪み式腐食センサの組立状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
図1から図3の各図には、本発明の第1実施形態である歪み式腐食センサ1が示されている。
図1に示すように、本実施形態では、被検体10として断面が横倒しのH字型の鋼材(いわゆるH型鋼)を用いる。
【0020】
被検体10は、平行に配置された上側のフランジ11および下側のフランジ13を有し、各々の対向面の中間部どうしがウェブ12で接続されている。
フランジ11は、その上面(ウェブ12が接続されない側の表面)のうち、両端近傍の当接領域(後述する歪み付与機構20の上側ローラ211,221が当接される領域)の間が、被腐食面2として腐食環境に暴露される。
【0021】
図2および図3に示すように、被検体10は歪み付与機構20に装着され、所定の曲げ歪みを付与される。
さらに、被検体10には、歪みセンサ30が装着されている。歪みセンサ30の出力は、外部の図示しない測定装置に接続されており、これにより被腐食面2の腐食による被検体10の歪みの変化が検出できる。
【0022】
歪み付与機構20は、被検体10の両端近傍に配置された一対の端部支持部21,22と、これらの中間に配置された中間支持部23とを備える。
さらに、歪み付与機構20は、これらの端部支持部21,22および中間支持部23を支持するために、ベース部材24を備えている。
ベース部材24は、被検体10の下面側に沿って延びる板状の部材である。
【0023】
端部支持部21は、被検体10の一端側に配置され、被検体10の上面(被腐食面2が形成される表面)に係合し、被腐食面2と交差する下向きに力を加えることができる。
被検体10の上面には上側ローラ211が載置され、その上に押圧部材212が配置されている。
上側ローラ211は、丸棒状の部材で形成されている。押圧部材212には、上側ローラ211の一部を収容可能な円筒状の凹溝が形成されている。上側ローラ211および押圧部材212は、それぞれ被検体10の上面の幅寸法に合わせて形成され、被検体10の上面の全幅にわたって接触可能である。
【0024】
押圧部材212は、被検体10の両側に2本ずつ計4本の締め付けボルト213により、ベース部材24に対して締め付け固定される。締め付けボルト213は、被検体10の各側において、一対が上側ローラ211を挟んで配置されている。
これらの締め付けボルト213の各々を、それぞれ徐々に締め付けてゆくことで、上側ローラ211は押圧部材212によって、被検体10の上面に押し付けられた状態で固定される。
【0025】
端部支持部22は、上側ローラ221、押圧部材222、締め付けボルト223を備えている。これらは前述した端部支持部21の上側ローラ211、押圧部材212、締め付けボルト213と同様な構成であり、重複する説明は省略する。
これらの端部支持部21,22により、被検体10はその両側において、それぞれ被検体10の上面(被腐食面2が形成される表面)に交差する下向きに力を加えられている。
【0026】
中間支持部23は、端部支持部21,22の中間に配置され、端部支持部21,22とは逆向きである上向きの力を被検体10に加えるものである。
ベース部材24の上面には、円筒状の凹溝が2本平行に形成され、各凹溝には丸棒状の鋼材で形成された下側ローラ231,232が収容されている。
下側ローラ231,232は、それぞれ被検体10の上面の幅寸法に合わせて形成され、被検体10の下面の全幅にわたって接触可能である。下側ローラ231,232は、各々を結ぶ線分の中点が、端部支持部21,22を結ぶ線分の中点に一致するように配置されている。
【0027】
被検体10は、下側ローラ231,232の上に載置されたうえ、両端側を端部支持部21,22で下向きに押圧されている。その結果、下側ローラ231,232との接触部分で上向きに押圧され、中間が上向きに曲げられる。
これらにより歪み付与機構20が構成され、歪み付与機構20により被検体10に曲げ歪みを付与した状態で、被検体10の被腐食面2の腐食測定を行うことができる。
【0028】
被腐食面2の腐食測定においては、前述のように、歪みセンサ30の出力を参照して、被腐食面2の腐食による被検体10の歪みの変化を検出する。
歪みセンサ30は、被検体10の下側のフランジ13下面の、下側ローラ231,232の中点位置であって(図2参照)、下面の幅方向の中央(図3参照)に張られている。
【0029】
なお、本実施形態において、被検体10の被腐食面2以外の表面は塗装等で防食されている。また、歪み付与機構20の各部や各ローラも、塗装などで防食されているか、腐食しない材料で構成されている。なかでも、被検体10に接触する部分あるいは部材については、被検体10の腐食等に影響を及ぼさない材料あるいは塗料等で防食されていることが好ましい。
【0030】
このような本実施形態においては、歪み付与機構20により被検体10に曲げ歪みを付与した状態で、被検体10の被腐食面2を腐食環境に暴露させ、被検体10の曲げ歪みを歪みセンサ30で監視する。腐食に伴って被検体10の曲げ歪みが変化すると、この変化が歪みセンサ30で検出される。
【0031】
ここで、被検体10においては、被腐食面2を有する上側のフランジ11、フランジよりも幅の狭いウェブ12および下側のフランジ13とで構成されている。この断面の構成は同じ幅および高さの充実断面(矩形断面)の梁と比較すると、フランジよりも幅の狭いウェブで構成されているため、上側のフランジ11の被腐食面2が同じ量腐食した場合でも、曲げ剛性の変化が大きく、結果として歪みセンサ30で計測する歪みの変化を大きくすることができる。また、曲げ歪みが最も大きく生じる下側のフランジ13の下面に歪みセンサが設置されているので、さらに歪みセンサで計測する歪みの変化量を大きくすることができる。
【0032】
従って、本実施形態によれば、腐食に応じた被検体10の曲げ歪みの変化を大きくすることができ、つまり同じ腐食量でも大きな曲げ歪みを得ることができる。そして、歪みセンサ30による検出信号の解像度を高め、歪み式腐食センサ1としての高精度化が図れる。
【0033】
〔第2実施形態〕
図4から図6の各図には、本発明の第2実施形態である歪み式腐食センサ1Aが示されている。
図4に示すように、本実施形態では、断面T字状の鋼材(いわゆるT型鋼)を被検体10Aとして用いる。
被検体10Aは、フランジ11の上面に被腐食面2が形成され、フランジ11の下面にはウェブ12が接続されている。
【0034】
被検体10Aは、前述した第1実施形態の被検体10(H型鋼で形成)に対して、下側のフランジ13がない。ただし、歪み付与機構20の下側ローラ231,232を受けるために、ウェブ12の下縁に補強板121が固定されている。また、補強板121に沿って補強リブ122が設置され、補強リブ122は三方の辺縁をそれぞれ補強板121、ウェブ12およびフランジ11に接合されている。
【0035】
図5および図6に示すように、被検体10Aには、歪み付与機構20および歪みセンサ30が装着されている。
これらの構成は、前述した第1実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
このような本実施形態の歪み式腐食センサ1Aによっても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、被検体10Aが断面T字状であり、第1実施形態よりもさらにウェブ12の応力を軽減できる。
【0036】
〔第3実施形態〕
図7および図8には、本発明の第3実施形態である歪み式腐食センサ1Bが示されている。
本実施形態では、被検体10として、前述した第1実施形態と同じH型鋼を用いる。ただし、前述した第1実施形態では、被検体10の両端側を下向きに押圧し、中間部を上向きに押圧したが、本実施形態では逆に、被検体10の両端側を上向きに押圧し、中間部を下向きに押圧する。
【0037】
本実施形態では、下側のフランジ13の下面に被腐食面2が形成される。そして、下側のフランジ13の上面に、ウェブ12および上側のフランジ11が接続され、上側のフランジ11の中央に歪みセンサ30が設置される。
本実施形態の歪み付与機構20Bは、被検体10の両端側を上向きに押圧し、中間部を下向きに押圧する構成であるとともに、中間部の押圧力が一定になるように荷重制御する調整機構25を備えている。
【0038】
歪み付与機構20Bは、被検体10の両端近傍に配置された一対の端部支持部21B,22Bと、これらの中間に配置された中間支持部23Bとを備える。
さらに、歪み付与機構20は、これらの端部支持部21B,22Bおよび中間支持部23Bを支持するために、ベース部材24Bを備えている。
【0039】
端部支持部21B,22Bは、それぞれベース部材24Bに載置された支持ブロック214,224を有し、各々には上面の凹溝に下側ローラ211B,221Bが載置されている。これらの下側ローラ211B,221Bによって、それぞれ被検体10の両端部近傍の下面側が支持され、被腐食面2と交差方向である上向きに押圧されている。
中間支持部23Bは、被検体10の上面に接触する上側ローラ231B,232Bを有し、各々は押圧部材233の凹溝に収容されている。
【0040】
押圧部材233は、ロードセル251およびジャッキ252を介してフレーム234に支持されている。
フレーム234は、被検体10を跨ぐような門型に形成され、ベース部材24Bに固定されている。
ロードセル251は、押圧部材233からフレーム234に伝達される力の大きさを検出し、外部へ出力可能である。
ジャッキ252は、外部から入力される指令信号に応じて、伸長または収縮し、フレーム234に対する押圧部材233の高さ位置を調整可能である。
ロードセル251およびジャッキ252には、制御装置253が接続されている。
【0041】
制御装置253は、予め荷重目標値が設定されており、ロードセル251で検出された荷重が目標値に維持されるように、ジャッキ252を調整する。これにより、押圧部材233から被検体10の中間部分に加えられる押圧力は、常に一定に維持される。
例えば、被検体10が腐食され、被検体10を曲げ変形させるために既に印加されていた荷重が減少した場合など、制御装置253が、ロードセル251により荷重の減少を検出し、ジャッキ252を伸長させて荷重を目標値に復帰させる。
これらの制御装置253、ロードセル251およびジャッキ252により、調整機構25が構成されている。
【0042】
このような本実施形態の歪み式腐食センサ1Bにおいては、前述した第1実施形態とは被検体10に対する力の方向が逆であるが、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、本実施形態では、制御装置253を有する調整機構25により、被検体10の腐食が進行しても、被検体10に加える力を一定に維持(荷重制御)することができる。
このため、被検体10の腐食が進行しても、被検体10に対する荷重を追加することができ、腐食の進行に伴う歪みの緩和を防止し、検出できる腐食の程度(腐食試験の利用可能期間)を延長することができる。
【0043】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは、本発明に含まれる。
例えば、前述した第1実施形態および第3実施形態では被検体10としてH型鋼を用い、第2実施形態では被検体10AとしてT型鋼を用い、これらの被検体10,10Aにおいてフランジ11,13およびウェブ12が一体化されていた。しかし、これらは別体のものを接合して形成してもよく、腐食試験が必要な材料から形成されたフランジ11に対して、別体のウェブ12あるいはフランジ13を適宜選択して接合してもよい。
例えば、被検体としては、断面形状がT字状、π字状、横向きのH字状(カタカナのエ字状)、□型(角筒状)、カタカナのコ字状の形鋼など、1枚または複数のウェブの端縁の、片側または両側にフランジが接続された軸状の部材が利用できる。
また、歪みセンサを装着する位置は、被腐食面にそった区間であって、被腐食面を有するフランジの被腐食面とは反対側の面、被腐食面を有するフランジとは別のフランジのウェブと連続する面、被腐食面を有するフランジとは別のフランジのウェブとは反対側の面、曲げ歪を付与される方向におけるウェブの端部であってもよい。
【0044】
さらに、歪み付与機構20,20Bの端部支持部21,22,21B,22Bおよび中間支持部23,23Bは、被検体10,10Aを曲げるための力を各部位に付与できればよく、前述した各実施形態のように、被検体10,10Aの表面に当接ないし押圧されるもののほか、被検体10に形成された孔に挿通して係合されるもの、凹凸形状に接続されるもの、被検体の端部を挟持するように係合されるものなど、各種の係合形態を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、歪み式腐食センサ、とくに腐食環境中に曝される金属材料の腐食の進行を測定するためのセンサとして利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1,1A,1B…歪み式腐食センサ、2…被腐食面、10,10A…被検体、121…補強板、122…補強リブ、11,13…フランジ、12…ウェブ、20,20B…歪み付与機構、21,21B,22,22B…端部支持部、211,221,231B,232B…上側ローラ、211B,221B,231,232…下側ローラ、212,222,233…押圧部材、213,223…締め付けボルト、214…支持ブロック、23,23B…中間支持部、234…フレーム、24,24B…ベース部材、25…調整機構、251…ロードセル、252…ジャッキ、253…制御装置、30…歪みセンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8