(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭酸エステル及び酸性物質を含む第1溶液と金属アルコラートのアルコール溶液とを混合して、前記酸性物質と前記金属アルコラートとの反応生成物を含む混合液を得るアルカリ処理工程と、
前記混合液から、前記反応生成物に含まれる金属塩を除去して前記炭酸エステルを含む第2溶液を得る除去工程と、
前記第2溶液から前記炭酸エステルとは沸点が異なる成分を除去する蒸留工程と、を有し、
前記第1溶液における炭酸エステルの含有量は、98.0〜99.998質量%であり、
前記アルコール溶液における前記金属アルコラートの含有量が5〜15質量%である、炭酸エステルの精製方法。
炭酸エステル及び酸性物質を含む第1溶液と金属アルコラートのアルコール溶液とを混合して、前記酸性物質と前記金属アルコラートとの反応生成物を含む混合液を得るアルカリ処理工程と、
前記混合液から、前記反応生成物に含まれる金属塩を除去して、前記炭酸エステルを含む第2溶液を得る除去工程と、
前記第2溶液から前記炭酸エステルとは沸点が異なる成分を除去して炭酸エステル溶液を得る蒸留工程と、を有し、
前記第1溶液における炭酸エステルの含有量は、98.0〜99.998質量%であり、
前記アルコール溶液における前記金属アルコラートの含有量が5〜15質量%である、炭酸エステル溶液の製造方法。
炭酸エステル及び酸性物質を含む第1溶液と金属アルコラートのアルコール溶液とを混合して、前記酸性物質と前記金属アルコラートとの反応生成物を含む混合液を得る処理部と、
前記混合液から、前記反応生成物に含まれる金属塩を除去して第2溶液を得る分離部と、
前記第2溶液から前記炭酸エステルとは沸点が異なる成分を除去して炭酸エステル溶液を得る蒸留部を備え、
前記第1溶液における炭酸エステルの含有量は、98.0〜99.998質量%であり、
前記アルコール溶液における前記金属アルコラートの含有量が5〜15質量%である、炭酸エステルの精製装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の炭酸エステルの製造方法では、炭酸エステルに同伴する水及びアルコール等を除去するために、蒸留塔で水及びアルコール等を留出して、炭酸エステル溶液に含まれる不純物を低減している。しかしながら、このようなプロセスで得られる炭酸エステル溶液には、副反応に由来する、蒸留塔で低減することが困難な微量の不純物が含まれている。
【0007】
一方、炭酸エステルは、医農薬等の合成原料のみならず、リチウムイオン電池の電解液等、種々の分野に用いることが検討されている。このため、不純物が十分に低減された炭酸エステル溶液の製造技術を確立することが求められている。
【0008】
本発明は、一つの側面において、不純物を低減することが可能な炭酸エステルの精製方法、及び、炭酸エステルの精製装置を提供することを目的とする。また、本発明は、別の側面において、不純物が低減された炭酸エステル溶液を製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一つの側面において、炭酸エステル及び酸性物質を含む第1溶液と金属アルコラートのアルコール溶液とを混合して、酸性物質と金属アルコラートとの反応生成物を含む混合液を得るアルカリ処理工程と、混合液から、反応生成物に含まれる金属塩を除去して炭酸エステルを含む第2溶液を得る除去工程と、第2溶液を分留して、第2溶液から炭酸エステルとは沸点が異なる成分を除去する蒸留工程と、を有し、アルコール溶液における金属アルコラートの含有量が5〜18質量%である、炭酸エステルの精製方法を提供する。
【0010】
上述の精製方法では、金属アルコラートを含むアルコール溶液を用いてアルカリ処理工程を行っている。アルカリ処理工程では、酸性物質と金属アルコラートとの反応生成物として金属塩が生成する。除去工程では、金属塩を除去することによって、第1溶液よりも酸性物質の含有量が低減された第2溶液を得ることができる。また、蒸留工程では、第2溶液から炭酸エステルとは異なる不純物を低減することができる。そして、上記アルコール溶液における金属アルコラートの含有量が、所定の範囲にあるため、酸性物質と金属アルコラートとの反応を十分に進行させつつ、第2溶液において不純物となる副生物の生成を抑制することができる。したがって、炭酸エステルの不純物を低減することができる。
【0011】
本発明は、別の側面において、炭酸エステル及び酸性物質を含む第1溶液と金属アルコラートのアルコール溶液とを混合して、酸性物質と金属アルコラートとの反応生成物を含む混合液を得るアルカリ処理工程と、混合液から、反応生成物に含まれる金属塩を除去して、炭酸エステルを含む第2溶液を得る除去工程と、第2溶液を分留して、第2溶液から炭酸エステルとは沸点が異なる成分を除去して炭酸エステル溶液を得る蒸留工程と、を有し、アルコール溶液における金属アルコラートの含有量が5〜18質量%である、炭酸エステル溶液の製造方法を提供する。
【0012】
上述の製造方法では、金属アルコラートを含むアルコール溶液を用いてアルカリ処理工程を行っている。アルカリ処理工程では、酸性物質と金属アルコラートとを反応させて金属塩にすることができる。除去工程では、金属塩を除去することによって、第1溶液よりも酸性物質の含有量が低減された第2溶液を得ることができる。蒸留工程では、第2溶液から炭酸エステルとは異なる不純物を低減することができる。そして、上記アルコール溶液における金属アルコラートの含有量が、所定の範囲にあるため、酸性物質と金属アルコラートとの反応を十分に進行させつつ、不純物となる副生物の生成を抑制することができる。したがって、不純物が低減された炭酸エステル溶液を製造することができる。
【0013】
上述の炭酸エステル溶液の製造方法は、幾つかの実施形態において、炭酸エステル溶液におけるメトキシメチルメチルカーボネートの含有量が2質量ppm未満であってもよい。このように、メトキシメチルメチルカーボネートの含有量を十分に低減することによって、炭酸エステル溶液を種々の用途に用いることができる。
【0014】
本発明は、別の側面において、炭酸エステル及び酸性物質を含む第1溶液と、金属アルコラートのアルコール溶液とを混合して、酸性物質と金属アルコラートとの反応生成物を含む混合液を得る処理部と、混合液から、反応生成物に含まれる金属塩を除去して第2溶液を得る分離部と、第2溶液を分留して、第2溶液から炭酸エステルとは沸点が異なる成分を除去する蒸留部と、を備え、アルコール溶液における金属アルコラートの含有量が5〜18質量%である、炭酸エステルの精製装置を提供する。
【0015】
上述の精製装置では、第1溶液と金属アルコラートを含むアルコール溶液と混合する処理部を備えている。処理部では、酸性物質と金属アルコラートとを反応させて金属塩を生成させることができる。分離部では、金属塩を除去することによって、第1溶液よりも酸性物質の含有量が低減された第2溶液を得ることができる。蒸留部では、第2溶液を分留して、第2溶液から炭酸エステルとは異なる不純物を一層低減することができる。そして、上記アルコール溶液における金属アルコラートの含有量が、所定の範囲にあるため、処理部において、酸性物質と金属アルコラートとの反応を十分に進行させつつ、第2溶液において不純物となる副生物の生成を抑制することができる。したがって、炭酸エステルの不純物を低減することができる。
【0016】
炭酸エステルの精製装置は、幾つかの実施形態において、炭酸エステル溶液におけるメトキシメチルメチルカーボネートの含有量が2質量ppm未満であってもよい。このように、メトキシメチルメチルカーボネートの含有量を十分に低減することによって、炭酸エステルを種々の用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一つの側面において、不純物を低減することが可能な炭酸エステルの精製方法、及び、炭酸エステルの精製装置を提供することができる。また、別の側面において、不純物が低減された炭酸エステル溶液を製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を、場合により図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、炭酸エステルを精製する精製装置の一実施形態を模式的に示す図である。炭酸エステルの精製方法、及び、炭酸エステル溶液の製造方法の一実施形態は、
図1に示す炭酸エステルの精製装置200(炭酸エステル溶液の製造装置200)を用いることができる。
【0021】
本実施形態の炭酸エステルの精製方法は、炭酸エステル及び酸性物質を含む第1溶液と、金属アルコラートのアルコール溶液とを混合して、酸性物質と金属アルコラートとの反応生成物を含む混合液を得るアルカリ処理工程と、混合液から、反応生成物に含まれる金属塩を除去して炭酸エステルを含む第2溶液を得る除去工程と、第2溶液を分留して、第2溶液から炭酸エステルとは沸点が異なる成分を除去する蒸留工程を有する。蒸留工程は、第1蒸留工程及び第2蒸留工程を有する。
【0022】
炭酸エステルの精製装置200は、アルカリ処理工程を行う処理部100と、除去工程を行う分離部110と、蒸留工程を行う第1蒸留部101及び第2蒸留部102とを備える。第1溶液は、白金族金属系固体触媒の存在下、一酸化炭素と亜硝酸エステルとを気相反応させて得られた生成物を凝縮して得ることができる。第1溶液は、主成分である炭酸エステルに加えて、副成分として、アルコール及びエーテル等の有機化合物、並びに、塩素化合物及び硝酸化合物等の酸性物質を含有する。第1溶液における副成分のうち、炭酸エステルとの沸点差が大きい副成分の濃度は、蒸留塔等を用いて調整することができる。
【0023】
炭酸エステルは、例えば炭酸ジアルキルである。炭酸ジアルキル分子中の2つのアルキル基は、同一でも異なっていてもよい。炭酸ジアルキルとしては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジヘプチル、炭酸ジオクチル、炭酸ジノニル、炭酸エチルメチル、及び炭酸エチルプロピル等が挙げられる。
【0024】
炭酸ジアルキルの中でも、エステル交換反応の反応速度及び副生成するアルキルアルコールの除去のしやすさの観点から、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する炭酸ジアルキルが好ましく、炭酸ジメチル又は炭酸ジエチルがより好ましい。
【0025】
第1溶液における炭酸エステルの含有量は、例えば、98.0〜99.998質量%である。第1溶液は、炭酸エステル以外に、酸性物質、又は酸性物質のエステル等を含有する。酸性物質としては、塩酸、硝酸、亜硝酸、及びギ酸、並びにこれらの混合物が挙げられる。酸性物質のエステルとしては、硝酸エステル、クロロギ酸エステル等が挙げられる。
【0026】
第1溶液における塩素化合物及び硝酸化合物(亜硝酸化合物を含む)の合計含有量は、Cl、及びNO
3又はNO
2に換算して、例えば、それぞれ5〜100質量ppmである。第1溶液は、1〜100質量ppm程度のアルコールを含んでいてもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール及びエタノール等が挙げられる。
【0027】
金属アルコラートとしては、酸性物質及び酸性物質のエステルとの反応性を高くする点から、アルカリ金属のアルコラートを用いることが好ましい。アルカリ金属のアルコラートとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、又は、カリウムメトキシド等が挙げられる。これらの一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
金属アルコラートのアルコール溶液は、上述の金属アルコラートをアルコールに溶解させたものである。アルコールとしては、種々のものを用いることが可能であり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等のモノアルコールを用いることができる。これらの一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
アルコール溶液における金属アルコラートの含有量は、5〜18質量%であり、好ましくは5〜10質量%である。金属アルコラートの含有量が高くなり過ぎると、アルカリ処理工程において、副反応が進行し易くなる。これによって、炭酸エステルとは異なる不純物の生成し易くなる傾向にある。一方、金属アルコラートの含有量が低くなり過ぎると、酸性物質を中和するためのアルコール溶液の量が多くなり過ぎて、炭酸エステルとアルコールとを分離するための蒸留塔の負荷が増加する傾向にある。
【0030】
処理部100は、第1溶液と金属アルコラートのアルコール溶液とを混合する処理槽10を備える。処理槽10には、配管13,14が接続されている。処理槽10には熱媒を流通させるジャケット12が設けられている。第1溶液は、配管13を流通して処理槽10に供給される。金属アルコラートのアルコール溶液は、配管14を流通して処理槽10に供給される。処理槽10では、攪拌器16によって第1溶液と金属アルコラートのアルコール溶液とが混合される。処理槽10では、混合液が、例えば、アルコールの沸点以下の温度に加熱される。第1溶液に含まれる塩素化合物及び硝酸化合物等の酸性物質と金属アルコラートのアルコール溶液とが中和反応する。このようにして、アルカリ処理工程では酸性物質等を低減することができる。
【0031】
酸性物質を十分に低減する観点から、金属アルコラートのアルコール溶液は、第1溶液に含まれる酸性物質を中和するために必要な量(中和当量)以上となるように、第1溶液と混合することが好ましい。アルコール溶液に含まれるアルコールは、下流側に設けられた蒸留塔で除去することができる。
【0032】
アルカリ処理工程では、処理槽10に、酸性物質と金属アルコラートとの中和反応によって、反応生成物が生じる。反応生成物としては、無機塩化物及び無機硝酸化合物等の金属塩が挙げられる。金属塩は、処理槽10の混合液を、例えば30℃程度に冷却すると、固形分として析出する。除去工程では、固形分と炭酸エステルとを含む混合液から、固形分を除去して、炭酸エステルを含む第2溶液を得る。
【0033】
除去工程では、混合液が、処理槽10の底部に接続された配管18及びポンプ19を流通して、分離部110に導入される。処理部100と分離部110との間には、冷却器が設けられていてもよい。分離部110は、フィルターを有する濾過器17を有する。分離部110は、混合液に含まれる固形物を除去することが可能な構成であれば、特に限定されない。分離部110では、固形分を除去することによって、主成分として炭酸エステルを含有する第2溶液が得られる。第2溶液は、アルコール及び水等の不純物を含んでいてもよい。不純物としては、第1溶液に含まれる微量成分を含む場合もある。第2溶液における炭酸エステルの含有量は、例えば、90〜99.998質量%である。すなわち、第2溶液は、0.002〜10質量%程度の不純物を含んでいてもよい。不純物としては、硝酸化合物及び有機化合物等が挙げられる。
【0034】
第1蒸留工程及び第2蒸留工程では、分留によって、第2溶液に含まれる不純物を除去する。これによって、炭酸エステルとは異なる沸点を有する不純物を、除去することができる。第1蒸留工程及び第2蒸留工程は、通常の蒸留塔を用いて行うことができる。本実施形態では、二基の蒸留塔を用いて、第1蒸留工程及び第2蒸留工程を行っているが、蒸留塔は、二基に限定されず、一基のみを用いて一つの蒸留工程を行ってもよく、三基以上を用いて3つ以上の蒸留工程を行ってもよい。
【0035】
除去工程で得られた第2溶液は、配管15を流通して、第1蒸留部101の第1蒸留塔20に導入される。第1蒸留塔20において、アルコール等の不純物と炭酸エステルとは、沸点差によって分留される。炭酸エステルよりも低い沸点を有するアルコールを含む留出物は、第1蒸留塔20の塔頂部20aから、第1蒸留塔20に設けられる還流部20Aに導入される。還流部20Aは、留出物を冷却するコンデンサ22、タンク24、ポンプ27、及びこれらの機器を接続する配管を備える。
【0036】
第1蒸留塔20の塔頂部20aから配管21によって排出される留出物は、コンデンサ22で冷却されて凝縮液になった後、タンク24に貯留される。タンク24のアルコール等を含む凝縮液は、タンク24からポンプ27及び配管26を経由して、第1蒸留塔20の上部に戻される。このようにして、凝縮液をリフラックスとして用いることによって、第1蒸留塔20における分留を効率よく行うことができる。
【0037】
タンク24の凝縮液の一部は、ポンプ27及び配管25を経由して、連続的又は断続的に第1蒸留塔20の外部に排出される。配管25からの排出液は、例えば、主成分として炭酸エステルを含有し、副成分としてアルコール、エーテル、及び水等を含有してもよい。排出液の組成は、還流部20Aを循環する還流液の組成と同一である。排出液における炭酸ジメチルとは異なる有機化合物の含有量は、例えば、0.01〜10質量%である。排出液における炭酸エステルの含有量は、例えば90〜99.3質量%である。配管25を経由して排出される塔頂部20aからの排出液は、後述する
図2の製造装置300の配管316又は配管319を流通するアルコールに合流させてもよい。
【0038】
第1蒸留塔20での分留によって、第1蒸留塔20の塔底部20bに連結された配管30から炭酸エステルを含む第3溶液が排出される。第3溶液は、第1溶液よりも低沸点分が低減されている。このため、第3溶液における炭酸エステルの純度は、第1溶液よりも高くなっている。
【0039】
第3溶液の炭酸エステルの純度は、例えば、99.99質量%以上である。すなわち、第3溶液では、第1溶液に比べて、酸性物質、アルコール及びエーテル等の微量成分の含有量が、十分に低減されている。このような炭酸エステル溶液は、微量成分を十分に低減することが必要な用途(例えば、リチウムイオン電池の電解液等)に特に有用である。
【0040】
第1蒸留塔20の塔底部20bから排出される第3溶液は、水及びアルコール等の微量成分を含んでいてもよい。このような微量成分は、第2蒸留工程で低減することができる。第3溶液は、配管30、ポンプ34及び配管36を経由して、第2蒸留部102の第2蒸留塔40に供給される。第3溶液の一部は、熱交換器32で熱媒との熱交換で加熱された後、第1蒸留塔20の熱源として第1蒸留塔20の下部に戻されてもよい。
【0041】
第2蒸留工程では、第2蒸留塔40において、第3溶液に含まれる炭酸エステルと微量成分とが、沸点差によって分留される。炭酸エステルよりも高い沸点を有する微量成分を含む流体は、第2蒸留塔40の塔底部40bに接続された配管60を流通し、ポンプ64及び配管66を経由して排出される。この流体の一部は、熱交換器62で熱媒との熱交換で加熱された後、第2蒸留塔40の熱源として第2蒸留塔40の下部に戻されてもよい。炭酸エステルよりも高い沸点を有する微量成分としては、水が挙げられる。
【0042】
第3溶液が、アルコール等の炭酸エステルよりも低い沸点を有する微量成分(例:アルコール)を含有する場合、これらの微量成分は、第2蒸留塔40の塔頂部40aに接続されるコンデンサ42及びタンク44を有する還流部40Aに導入される。具体的には、第2蒸留塔40の塔頂部からの流体は、コンデンサ42で冷却されて凝縮液になった後、タンク44に貯留される。タンク44のアルコール等の微量成分を含む凝縮液は、タンク44からポンプ47及び配管46を経由して、第2蒸留塔40に還流される。タンク44の凝縮液の一部は、配管50を流通させて、処理槽10に戻してもよいし、他の用途に用いてもよい。
【0043】
第3溶液に含まれる炭酸エステルは、第2蒸留塔40の中央部と塔頂部との間に接続された配管49によってサイドカットで抜き出される。サイドカットで抜き出された炭酸エステル溶液は、配管49に接続された熱交換器48で冷却される。このようにして、炭酸エステルとは異なる不純物の含有量を十分に低減することができる。第2蒸留塔40で得られる炭酸エステル溶液の炭酸エステルの純度は、例えば、99.995質量%以上である。
【0044】
第2蒸留部102の第2蒸留塔40を用いて、第3溶液を分留することによって、第3溶液よりも不純物の含有量が低減された炭酸エステル溶液を得ることができる。炭酸エステルの精製装置200は、処理槽10、濾過器17、第1蒸留塔20及び第2蒸留塔40を直列に配置していることから、純度の高い炭酸エステル溶液を連続的に効率よく製造することができる。そして、処理槽10では、第1溶液に含まれる酸性物質をアルカリ処理するために、金属アルコラートの含有量が所定の範囲にあるアルコール溶液を用いている。これによって、アルカリ処理工程において、メトキシメチルメチルカーボネート等の副生物の生成を抑制することができる。このように、炭酸エステルと同程度の沸点を有する副生物の生成が抑制されていることから、不純物の含有量が十分に低減された炭酸エステル溶液を製造することができる。炭酸エステル溶液におけるメトキシメチルメチルカーボネートの含有量は、例えば2質量ppm未満であってよく、1質量ppm未満であってもよい。このように不純物が十分に低減された炭酸エステル溶液は、微量成分を十分に低減することが必要な用途(例えば、リチウムイオン電池の電解液等)に特に有用である。
【0045】
本実施形態のように二基の蒸留塔を用いることは必須ではなく、第1蒸留部101、又は第2蒸留部102の一方のみでも、不純物の含有量が十分に低減された炭酸エステル溶液を製造することができる。
【0046】
図2は、炭酸エステルとホルムアルデヒドを含む第1溶液を製造する装置の一例である。第1溶液の製造装置300は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルとを反応させて、炭酸ジアルキルと一酸化窒素とを生成する触媒を有し、一酸化炭素と亜硝酸アルキルと一酸化窒素とを含有する第1ガスから炭酸ジアルキルと一酸化窒素とを含有する第2ガスを生成する第1反応器310と、第2ガスと炭酸ジアルキルを吸収する吸収液とを接触させて、炭酸ジアルキルを含む凝縮液と、一酸化窒素を含有する非凝縮ガスとに分離する吸収塔320と、非凝縮ガス及び分子状酸素の混合ガスとアルコールとを導入し、一酸化窒素、分子状酸素及びアルコールを反応させて、亜硝酸アルキルと一酸化窒素とを含有する第3ガスを生成する第2反応器330とを備える。
【0047】
第1反応器310は、一酸化炭素と亜硝酸アルキルとを反応させて、炭酸エステルと一酸化窒素を生成させる炭酸エステル製造用触媒を有する。炭酸エステル製造用触媒としては、例えば、白金族金属及び/又はその化合物が担体に担持されている固体触媒が挙げられる。固体触媒における白金族金属及びその化合物の担持量は、担体に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜2重量%である。担体としては、活性炭、アルミナ(γ―アルミナ等)、ゼオライト、モレキュラーシーブ、スピネル(リチウムアルミネートスピネル等)等の不活性担体が挙げられる。白金族金属及びその化合物は、含浸法又は蒸発乾固法等の公知の方法を用いて担体に担持される。
【0048】
白金族金属及びその化合物としては、例えば、白金金属、パラジウム金属、ロジウム金属、イリジウム金属などが挙げられる。白金族金属の化合物としては、これらの金属の無機酸塩(硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、ハロゲン化物(塩化物、臭化物等)、有機酸塩(酢酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩等)、錯体(テトラクロロパラジウム酸リチウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム等)などが挙げられる。これらの中でも、塩化パラジウム又はパラジウムの塩素含有錯体が好ましい。担体への白金族金属及び/又はその化合物の担持量としては、0.01〜10質量%が好ましく、0.2〜2質量%がより好ましい。
【0049】
炭酸エステル製造用触媒には、白金族金属及びその化合物の他に、銅、鉄、ビスマス又はこれらの化合物を含有させることができる。これらの中でも、塩化物(塩化第一銅、塩化第二銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化ビスマス等)が好ましい。担体へのこれらの担持量は、「白金族金属及びその化合物」:「銅、鉄、ビスマス及びこれらの化合物」(金属原子のモル比)として、1:0.1〜1:50が好ましく、1:1〜1:10がより好ましい。
【0050】
触媒の調製法は特に限定されず、例えば、白金族金属化合物を、含浸法又は蒸発乾固法などの公知の方法によって担体に担持させ、次いで、その担体を乾燥して調製することができる。
【0051】
上述の触媒を有する第1反応器310に、一酸化炭素と亜硝酸アルキルを含有する第1ガスを導入する。これによって、下記式(
1)に示す気相反応が進行する。式(
1)中、Rは、アルキル基を示す。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3である。
【0052】
CO+2RONO → ROC(=O)OR+2NO (
1)
【0053】
第1ガスにおける一酸化窒素の含有量は、一酸化炭素、亜硝酸アルキル及び一酸化窒素の合計を基準として、例えば5〜50体積%である。このように、第1ガスには、分子状酸素よりも高い濃度で一酸化窒素を含有する。このため、第1ガス中の一酸化窒素の濃度を、容易に且つ高い精度で検出することができる。第1ガスにおける一酸化炭素の含有量は、一酸化炭素、亜硝酸アルキル及び一酸化窒素の合計を基準として、例えば30〜70体積%である。第1ガスにおける亜硝酸アルキルの含有量は、一酸化炭素、亜硝酸アルキル及び一酸化窒素の合計を基準として、例えば10〜50体積%である。第1ガスは、一酸化炭素、亜硝酸アルキル及び一酸化窒素とともに、不活性ガスを含有していてもよい。この場合、第1ガスにおける一酸化窒素の濃度は、第1ガス全体を基準として、1〜20体積%であることが好ましい。また、第1ガスにおける一酸化炭素の濃度は、第1ガス全体を基準として、例えば10〜40体積%である。
【0054】
上記式(1)に示す反応によって、第1反応器310では、炭酸エステルと一酸化窒素とを含有する第2ガスが生成する。第2ガスにおける炭酸エステルの濃度は、第2ガス全体を基準として、例えば1〜50体積%であり、一酸化窒素の濃度は、例えば1〜20体積%である。本明細書における体積%は、標準状態(25℃、100kPa)における体積比率を示す。
【0055】
第1反応器310で生成した第2ガスは、配管312を通って吸収塔320に導入される。吸収塔320は、気液接触が可能なものであればよく、例えば、シーブトレイ、泡鐘トレイ、又はバルブトレイ等の棚段式、或いは、ポールリング又はラシッヒリング等の不規則充填材、シート状若しくはガーゼ状の板又はこれらを合わせた複合板等の規則充填材が充填されている充填塔式の吸収塔が挙げられる。
【0056】
第1反応器310から配管312を経由して吸収塔320の下部に導入された第2ガスは、吸収塔320の上部から導入される炭酸エステル吸収用吸収液(以下、単に「吸収液」という)と向流接触する。このようにして、第2ガスと吸収液とを気液接触させて、第2ガスに含まれる炭酸エステルの少なくとも一部が吸収液に吸収される。これによって、炭酸エステルを吸収した凝縮液と、一酸化窒素を含有する非凝縮ガスとが得られる。
【0057】
吸収塔320で用いられる吸収液としては、例えば炭酸エステルのアルキル基に対応するアルコール、炭酸エステル、及びシュウ酸エステルなどが挙げられる。
【0058】
吸収塔320への吸収液の供給量は第2ガスにおける炭酸エステルに対して、質量基準で例えば1〜30%である。アルコールとしては、メタノール又はエタノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコールが好ましい。回収の容易性の観点から、第1反応器310に一酸化炭素とともに導入される亜硝酸アルキルと同一のアルキル基を有するアルコールが好ましい。
【0059】
吸収塔320で得られた、吸収液と炭酸エステルとを含有する凝縮液は、吸収塔320の底部に連結された配管314から抜き出される。凝縮液は、配管314を通って蒸留塔360に導入される。蒸留塔360では、沸点差によって、吸収液を含む溶液と炭酸エステルを含む第1溶液とに分離される。吸収液としてメタノール又はエタノールなどの低沸点のアルコールを用いた場合、蒸留塔360の塔頂部に連結された配管362からアルコールが、蒸留塔360の底部に連結された配管13からは第1溶液が排出される。
【0060】
第1溶液は、
図1における処理槽10に供給してもよいし、第1蒸留塔20に供給してもよい。蒸留塔360の運転条件を調整することによって、第1溶液におけるアルコールの含有量を変更することができる。第1溶液における炭酸エステルの含有量は、例えば、98.0〜99.998質量%である。
【0061】
吸収塔320で得られた、一酸化炭素を含有する非凝縮ガスは、吸収塔320の上部に連結された配管313を流通する。配管313には、分子状酸素を導入するための配管322が連結されている。配管322から供給される分子状酸素は、非凝縮ガスと混合されて混合ガスとなる。混合ガスは、配管313を流通して第2反応器330に導入される。
【0062】
配管313を通過した混合ガスを第2反応器330の下方から導入すると、第2反応器330の上方に連結された配管316から導入されるアルコール(ROH)と向流接触して、以下の反応式(I)で表される反応が進行する。この反応によって、亜硝酸アルキル(RONO)が生成する。式(I)中、Rはアルキル基を示す。Rは、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。製造装置300全体で見たときに、第2反応器330は、亜硝酸アルキルを再生する機能を有する。
【0063】
第2反応器330では、反応式(II)で表される副反応が進行してもよい。設備全体の効率性を向上する観点から、反応式(II)よりも反応式(I)を促進することが好ましい。混合ガスにおける一酸化窒素と分子状酸素との混合割合は、混合ガスに含まれる一酸化窒素1モルに対して0.08〜0.2モルの割合としてもよい。
【0064】
2NO+1/2O
2+2ROH→ 2RONO+H
2O (I)
NO+3/4O
2+1/2H
2O→ HNO
3 (II)
【0065】
配管316から導入されるアルコールは、製造装置300で製造する炭酸エステルのアルキル基を有するアルコールを用いる。そのようなアルコールとしては、メタノール又はエタノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコールが例示される。反応式(I)の反応を十分に進行させる観点から、第2反応器330へのアルコールの供給量は、混合ガスに含まれる一酸化窒素の供給量に対して、モル比で例えば0.5〜1.5である。
【0066】
第2反応器330における反応温度は、配管316から導入されるアルコールの種類に応じて適宜設定することができる。例えば、アルコールとしてメタノールを用いる場合、例えば0〜80℃である。反応圧力は、例えば0.1〜1MPaであり、気液接触の時間は、例えば0.5〜30秒間である。
【0067】
第2反応器330の上部から抜き出される第3ガスは、反応式(I)で生成した亜硝酸アルキルの他に、一酸化窒素、並びに一酸化二窒素及び二酸化炭素などの微量成分を含有する。これらの微量成分は、オフガスとして、配管311から分岐する配管317によって、適宜系外に排出することができる。第3ガスにおける一酸化窒素の含有量は、一酸化窒素と亜硝酸アルキルの合計に対して、例えば5〜50体積%である。
【0068】
第2反応器330の底部に連結された配管315からは、反応式(I)及び反応式(II)で示される反応で生成した水及び硝酸、並びに未反応のアルコールが排出される。これらの成分は、必要に応じて下流側に設けられる回収設備によって処理して再使用してもよい。このような回収設備としては、タンクに一旦貯留された水、硝酸及びアルコールを、濃縮塔に導入して水及びアルコールと硝酸とを分離し、硝酸とアルコールに一酸化窒素又は一酸化炭素を反応させて亜硝酸アルキルを生成させるものが挙げられる。このようにして得られる亜硝酸アルキルを、第2反応器330に導入してもよい。
【0069】
第3ガスは、配管311を第1反応器310に向けて流通する。配管311は、一酸化炭素を供給する配管318との合流部を有しており、合流部において第3ガスと一酸化炭素が混合される。これによって、第1ガスが得られる。第1ガスは、第1反応器310に供給される。
【0070】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明が上述の実施形態に限定されないことはいうまでもない。例えば、第1蒸留工程及び第2蒸留工程の2つの蒸留工程を行うことは必須ではなく、1つの蒸留工程であってもよい。
【実施例】
【0071】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
以下に述べる各実施例における分析装置及び分析方法は、次のとおりである。
有機化合物[炭酸ジメチル、メタノール、ジメチレングリコールジメチルエーテル(DMME)、メチルビニルカーボネート(MVC)、メトキシメチルメチルカーボネート(MMMC)]の含有量の分析には、株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフ GC−2014(商品名)を用いた。キャピラリーカラムは、アジレント・テクノロジー株式会社製のHP−INNOWAX(商品名)を用いた。
【0073】
水分の含有量の分析には、三菱化学株式会社製の微量水分測定装置 CA−05型(商品名)を用いた。塩素化合物の含有量の分析では、まず、株式会社東科精機製の酸水素炎式硫黄・ハロゲン定量装置を用いてサンプルの前処理を行った。その後、前処理を行ったサンプルを用いて、日本ダイオネクス株式会社製のイオンクロマトグラフ測定装置 ICS−1600(商品名)によって、Cl
−の含有量を測定した。分離カラムには、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のIon Pac AS12A(商品名)を用いた。この分析のCl
−の測定限界(下限)は、0.01質量ppmであった。
【0074】
硝酸化合物(亜硝酸化合物を含む)の分析は、サンプル中のNO
3−及びNO
2−を蒸留水で抽出した後、クロルの分析で用いたイオンクロマトグラフ測定装置を用いて行った。この分析の硝酸化合物(亜硝酸化合物を含む)の測定限界(下限)は、0.01質量ppmであった。金属(Fe)の分析では、まず、サンプルを石英皿で灰化した後、蒸留水及び高純度硝酸(含量:69〜70質量%)で灰化物を溶解して測定サンプルを調製した。この測定サンプルを、アジレント・テクノロジー株式会社製のICP−MS分析装置 Agilent 7700(商品名)を用いて分析した。
【0075】
(実施例1)
<アルカリ処理工程>
温度計と攪拌機を取り付けたステンレス製のジャケット付き処理槽(300L)に、表1に示す炭酸ジメチル溶液(第1溶液)を250L入れた。炭酸ジメチル溶液を攪拌しながら、ジャケットに温水を流通させて、液温を40℃に調整した。この炭酸ジメチル溶液にナトリウムメチラートの含有量が15質量%であるメタノール溶液(第1溶液の1.5質量ppmのClと等モルのNaを含む)を加えた後、攪拌を1時間継続して行った。得られた処理液の一部をサンプリングして濾過し、濾液を分析した。濾液の組成は、表1に示すとおりであった。
【0076】
表1に示すとおり、炭酸ジメチル溶液にアルカリ化合物を加えることによって、塩素化合物及び硝酸化合物を低減できることが確認された。また、塩素化合物及び硝酸化合物のみならず、メチルビニルカーボネート及びFe分も低減できることが確認された。
【0077】
<第1蒸留工程>
還流配管を備えるガラス製の蒸留塔(内径:25mm、充填物:スルザーEX(登録商標)、理論段数:16)を準備した。この蒸留塔の底部には300mlの丸底フラスコを取り付けた。表1の濾液200mlを丸底フラスコ内に入れた。
【0078】
丸底フラスコをオイルバスに浸漬し、オイルバスを加熱して炊き上げ、全還流させた。蒸留塔の全体の温度がほぼ一定となるまで全還流を継続して行った。蒸留塔の全体の温度がほぼ一定となったとき、還流液の温度は50〜55℃であった。表1に示す濾液を、蒸留塔の中段に連結された供給配管を用いて150ml/時間の流量で連続的に供給した。供給開始とともに、丸底フラスコの液面を一定に保つように丸底フラスコから液体を連続的に排出した。還流量を130〜150ml/時間、蒸留塔の塔頂温度を89℃以上に維持しながら、還流配管から還流液の一部を少しずつ排出して留出液を得た。塔頂からの留出液の排出量は2〜3ml/時間であった。塔頂から排出した留出液とボトムから排出した液体の分析結果を表1に示す。
【0079】
<第2蒸留工程>
第1蒸留工程で得られたボトムからの排出液を、規則充填物を備えた理論段16段の蒸留塔に供給して常圧下で炊き上げ、全還流させた。そして、塔頂温度を90℃以上に維持しながら、塔頂から留出液を徐々に排出した。供給した液量の3体積%程度を塔頂から排出した後、還流比を1.5に調整した。その後、蒸留塔の全高をHとしたときに、塔頂から、1/4H下がった位置(塔底から3/4Hの高さ)より、炭酸ジメチル溶液をサイドカットで留出させた。サイドカットで得られた炭酸ジメチル溶液の組成は、表1に示すとおりであった。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示すとおり、濾液、塔頂からの留出液、ボトムからの排出液及びサイドカットのいずれにも、メトキシメチルメチルカーボネート(MMMC)、及びメチルビニルカーボネート(MVC)が検出されなかった。これによって、実施例1の精製方法によって、不純物が十分に低減された炭酸ジメチルが製造できることが確認された。ボトムからの排出液における炭酸ジメチルの純度は99.997質量%であり、サイドカットの炭酸ジメチルの純度は99.998質量%であった。このことから、高純度の炭酸ジメチル溶液を製造できることが確認された。
【0082】
(実施例2)
ナトリウムメチラートの含有量が15質量%であるメタノール溶液に変えて、ナトリウムメチラートの含有量が5質量%であるメタノール溶液(第1溶液の1.5質量ppmのClと等モルのNaを含む)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、アルカリ処理工程、第1蒸留工程、及び第2蒸留工程を行った。分析結果は、表2に示すとおりであった。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すとおり、濾液、塔頂からの留出液、ボトムからの排出液及びサイドカットのいずれにも、メトキシメチルメチルカーボネート(MMMC)、及びメチルビニルカーボネート(MVC)が検出されなかった。これによって、実施例2の精製方法によって、不純物が十分に低減された炭酸ジメチルが製造できることが確認された。ボトムからの排出液における炭酸ジメチルの純度は99.997質量%であり、サイドカットの炭酸ジメチルの純度は99.998質量%であった。このことから、高純度の炭酸ジメチル溶液を製造できることが確認された。
【0085】
(比較例1)
ナトリウムメチラートの含有量が15質量%であるメタノール溶液に変えて、ナトリウムメチラートの含有量が20質量%であるメタノール溶液(第1溶液の1.5質量ppmのClと等モルのNaを含む)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、アルカリ処理工程、第1蒸留工程、及び第2蒸留工程を行った。分析結果は、表3に示すとおりであった。
【0086】
【表3】
【0087】
表3に示すとおり、アルカリ処理工程において、メトキシメチルメチルカーボネート(MMMC)が生成することが確認された。このMMMCは、第1蒸留工程で得られたボトムからの排出液、及び第2蒸留工程で得られたサイドカットに、残留していた。このように、一旦生成したMMMCは、蒸留工程で排除することができなかった。